JP6982784B2 - サイジング剤塗布炭素繊維、およびサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、ならびに炭素繊維強化樹脂組成物 - Google Patents

サイジング剤塗布炭素繊維、およびサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、ならびに炭素繊維強化樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂に対し高接着性を示し、サイジング剤塗布炭素繊維の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維、およびサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、ならびに炭素繊維強化樹脂組成物に関するものである。
炭素繊維は、軽量でありながら、強度および弾性率に優れるため、種々のマトリックス樹脂と組み合わせた複合材料として、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。炭素繊維を用いた複合材料の代表的な形態として、プリプレグを積層して得られるプリフォームをプレス成形(加圧力の下で脱泡し、賦形する成形方法)した成形品が挙げられる。このプリプレグは、連続した炭素繊維を一方向に配列させた炭素繊維基材に樹脂を含浸して製造する方法が一般的である。複雑な形状への形状追従性に優れ、短時間成形可能な不連続な炭素繊維(チョップド、ウェブ等)を用いた複合材料も提案されているが、比強度、比剛性などの力学特性や特性の安定性において、構造材としての実用性能はプリプレグが優れている。
近年、炭素繊維複合材料では、成形性、取扱い性、得られる成形品の力学特性に優れた成形材料が要求されるようになり、工業的にもより高い経済性、生産性が必要になってきている。その要求に対する答えの一つとして、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いたプリプレグの開発が進められている。
炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めることが重要である。炭素繊維束とマトリックス樹脂との界面接着性を向上させるため、通常、炭素繊維束に気相酸化や液相酸化等の酸化処理を施し、炭素繊維表面に酸素含有官能基を導入する方法が行われている。例えば、特許文献1では炭素繊維束に電解処理を施すことにより、界面接着性の指標である層間せん断強度を向上させる方法が提案されている。
炭素繊維の表面改質のみでは十分な界面接着性が得られない場合、サイジング処理を追加する試みがなされる。例えば、特許文献2〜4には、エポキシ基を有する化合物をサイジング剤として用いることで界面接着性を向上させる手法が提案されている。また、特許文献5、6では、アミノ基、アミド基を有するサイジング剤を用いることでサイジング剤を塗布した炭素繊維とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる手法が提案されている。
特開平04−361619号公報 特開昭63−14114号公報 特開平7−279040号公報 特開平8−113876号公報 特開2013−166922号公報 特開2006−89734号公報
以上のように、不連続な炭素繊維を用いた複合材料の分野においては、接着性の向上検討が行われている。一方、上記の技術をマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いたプリプレグの場合において、炭素繊維、サイジング剤、および樹脂の三つの観点から、サイジング剤を塗布した炭素繊維束の開繊性とマトリックス樹脂との高い接着性を両立させ、高粘度な熱可塑性樹脂の含浸性を向上させることで、含浸ムラやボイドの発生を抑制するという思想はなかった。 本発明は、熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を示し、かつ開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を提供することを目的とする。

上述した課題を解決するための本発明は、炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する酸素の組成比が2%以上である層が10nm以上存在し、かつ、下記(a)、(b)、および(c1)または(c2)を満たすサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維である。
(a)ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量Mwが650≦Mw≦1900。
(b)γSz > 35 mJ/m2(γSz:サイジング剤の表面自由エネルギー)。
(c1)アミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物のいずれかを含む。
(c2)3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる、炭素繊維に塗布される前のサイジング剤の重量平均分子量Mwが650以上であること、または、サイジング剤が塗布される前の炭素繊維のBET吸着面積が0.5m2/g以上であることを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、反応性官能基量が30μmol/g以上である熱可塑性樹脂を含むこと、または、エネルギー分散型X線分光法で観察した際に炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、熱可塑性樹脂由来元素が25%以上浸透している層が5nm以上であること、または、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーγrおよびサイジング剤の表面自由エネルギーγSzが下記式(e)および(f)
(e) γr > 38mJ/m2 (γr:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギー)。
(f)2(γp r・γp Sz)0.5+2(γd r・γd Sz)0.5 > 95 mJ/m2。
γp r:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性成分
γd r:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散成分
γp Sz:サイジング剤の表面自由エネルギーの極性成分
γd Sz:サイジング剤の表面自由エネルギーの分散成分
を満たすこと、または、炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する窒素の組成比が炭素繊維内部における窒素の組成比よりも0.5%以上多い層または全元素に対する酸素の組成比が炭素繊維内部における酸素の組成比よりも3%以上多い層が5nm以上存在することを特徴とする。

本発明によれば、熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を持ち、かつ開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を得ることができる。その結果、熱可塑性樹脂成形体中の繊維を均一にさせることが可能となり、成形体の力学特性も良好になる。
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明のサイジング剤塗布炭素繊維は、炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する酸素の組成比が2%以上である層が10nm以上存在し、かつ、下記(a)、(b)、および(c1)または(c2)を満たすサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維である。
(a)ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量Mwが650≦Mw≦1900。
(b)γSz > 35 mJ/m2(γSz:サイジング剤の表面自由エネルギー)。
(c1)アミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物のいずれかを含む。
(c2)3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む。
本発明者らは、マトリックス樹脂との相互作用が強く、接着性が高い化合物をサイジング剤に用いた場合であってもサイジング剤の重量平均分子量が大きい場合、サイジング剤塗布炭素繊維束の開繊性が低下しやすく、プリプレグ作製時の含浸ムラやボイド発生が起こりやすいという課題があることが分かった。本課題に対して、炭素繊維表面における酸素組成比が高い層の厚みと、サイジング剤の分子量および表面自由エネルギーを制御することで、高い接着性と高い開繊性を両立可能であることを見いだした。
本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維においては、炭素繊維の長手方向と垂直な断面をエネルギー分散型X線分光法で観察した際に、酸素の組成比が2%以上である層(以下、酸化層と略記)が10nm以上存在することが必要である。酸化層の厚みが10nm以上である炭素繊維にサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維は、熱可塑性樹脂と優れた接着性を発現する。そのメカニズムは明確でないが、サイジング剤と樹脂が酸化層に浸透し、互いに結合することで、優れた接着性を発現すると考えられる。
本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維においては、炭素繊維に塗布されたサイジング剤の重量平均分子量Mwが650≦Mw≦1900であることが必要である。なお、上記の重量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記)法で測定され、ポリスチレンやプルラン等を標準物質として得られるものである。Mwが大きいほどサイジング剤の粘度が高くなるため、サイジング剤を介して粘着している炭素繊維同士を引き離すのに大きな力が必要となる。Mwを1900以下とすることで、サイジング剤の動きやすさの指標である粘度を低下させ、炭素繊維同士を拘束する力を弱めることによって、炭素繊維束の開繊性が向上する。Mwは1300以下であることがより好ましい。一方、分解の点では、Mwが大きいほど高温でのサイジング剤の揮発や分解を抑制できることから、炭素繊維に塗布された後のサイジング剤のMw下限は650以上であることが好ましく、700以上であることがさらに好ましい。サイジング剤はサイジング塗布時の乾燥工程において低分子量成分の揮発やサイジング剤同士の架橋により、サイジング塗布前よりもMwが増加することから、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維の製造に用いられる、炭素繊維に塗布される前のサイジング剤の重量平均分子量Mwが650以上であることが好ましい。
本発明を構成するサイジング剤は、サイジング剤の表面自由エネルギーγSzが35より大きいことが必要である。表面自由エネルギーが35以上であることで接着性が向上し、好ましくは45以上である。
本発明を構成するサイジング剤は、アミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物を含むか、あるいは3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含むかのいずれかであることが必要である。アミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物、もしくは、3官能以上のエポキシ基を有する化合物のいずれかを含むことで接着性が向上する。そのメカニズムは明確ではないが、アミノ基やアミド基を有する化合物は極性が高く、炭素繊維束表面や樹脂中のカルボキシル基、水酸基等の酸素含有官能基と水素結合等の強い相互作用をすることで、優れた接着性を発現すると考えられる。また、3官能以上のエポキシ基を有する化合物で接着性が高くなりやすい理由としては、官能基量が増えることで酸化層同士をサイジング剤が架橋し、炭素繊維の表面に強固な酸化層の皮膜を形成することで、そのアンカー効果により熱可塑樹脂との接着性が高くなりやすいことが考えられる。本発明を構成するサイジング剤は、上述のアミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物、および3官能以上のエポキシ基を有する化合物が、それぞれ2種類以上の混合物として含まれていても良く、2種類以上の官能基を有する化合物として含まれていても良い。
本発明を構成するサイジング剤はアミノ基を有する化合物を含み、かつそのアミノ基価が2〜200mmol/gであることが好ましい。アミノ基を有する化合物を含むサイジング剤を塗布した炭素繊維束は、アミノ基価が2mmol/g以上の場合、強化繊維表面との親和性が大きくなり、十分な界面接着性が得られる。アミノ基価の上限は特にないが、100mmol/g以上で接着性が飽和することがある。アミノ基価のより好ましい範囲は、15mmol/g以上であり、さらに好ましくは、20mmol/g以上である。
アミノ基価は、ASTM D2074に従って測定する1、2、3級アミンの総量を示す指標で、化合物(A)1gを中和するのに要する塩酸量に相当する水酸化カリウムのモル数を示す。
上述のアミノ基価が2〜200mmol/gである化合物としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物が挙げられる。 中でも、高接着性を示す観点から脂肪族アミン化合物が好ましい。脂肪族アミン化合物の接着性が高い理由として、他のアミノ基やアミド基を有する化合物と比較して極性が非常に高いことが考えられる。
脂肪族アミン化合物の具体的な例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ポリアミドアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ココアルキルアミン、牛脂アルキルアミン、オレイルアミン、硬化牛脂アルキルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン等の脂肪族モノアミン類;ポリエチレンイミン、ポリプロピレイミン、ポリブチレンイミン、1,1−ジメチル−2−メチルエチレンイミン、1,1−ジメチル−2−プロピルエチレンイミン、N−アセチルポリエチレンイミン、N−プロピオニルポリエチレンイミン、N−ブチリルポリエチレンイミン、N−パレリルポリエチレンイミン、N−ヘキサノイルポリエチレンイミン、N−ステアロイルポリエチレンイミン等のポリアルキレンアミン類;およびその誘導体、およびそれらの混合物等が挙げられる。
脂肪族アミン化合物の中でも1分子内に含まれる官能基量が2以上である化合物は、接着性が高くなりやすいため好ましく用いられる。特に、ポリアルキレンイミンは、1分子内に含まれる官能基量を増加させやすく、接着性を向上させやすいために好ましく用いられる。1分子内に含まれる官能基量が2以上である化合物の接着性が高くなりやすい理由として、官能基量が増えることで分子の極性が高くなりやすいことが考えられる。
芳香族アミンの具体的な例としては、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ベンジジン、トリアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、2,4,6−トリアミノフェノール、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノベンゼンおよびその誘導体、およびそれらの混合物等が挙げられる。

本発明を構成するサイジング剤はアミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物を含み、かつサイジング剤の表面自由エネルギーγSzが50より大きいことが好ましい。表面自由エネルギーγSzが50以上であることで接着性が向上し、好ましくは55以上である。
アミノ基を有する化合物やアミド基を有する化合物を含むサイジング剤を塗布した炭素繊維は、酸化層とサイジング剤がアミド結合を形成していることを特徴とする。酸化層とサイジング剤がアミド結合を形成していることで、酸化層どうしをサイジング剤が架橋し、炭素繊維の表面に強固な酸化層の皮膜を形成することで、そのアンカー効果により熱可塑樹脂との接着性が向上すると考えられる。
本発明を構成するサイジング剤は3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含み、かつサイジング剤のエポキシ等量が50〜1000g/eqであることが好ましい。エポキシ等量が1000以下であることで接着性が向上し、それを用いた熱可塑性樹脂成形体の物性も向上する。エポキシ等量が50より大きいことで化合物の熱的安定性が高くなり、加熱により分解しにくくなる。
また、上述の3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含むサイジング剤は、ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むことが好ましい。
ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むサイジング剤を塗布した炭素繊維束は熱可塑樹脂との優れた接着性を発現する。その結果、そのサイジング剤が塗布された炭素繊維束を用いた熱可塑性樹脂成形体の力学特性が向上する。そのメカニズムは明確ではないが、ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシ基は反応性が高く、炭素繊維束表面や樹脂中のカルボキシル基、水酸基等の酸素含有官能基と強い化学結合をすることで、優れた接着性を発現すると考えられる。
本発明において、ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシの具体例としては、例えば、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。また、グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。また、このグリシジルエーテル型エポキシ化合物として、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物も例示される。
本発明を構成するサイジング剤は3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含み、かつサイジング剤の表面自由エネルギーγSzが40より大きいことが好ましい。表面自由エネルギーγSzが40以上であることで接着性が向上し、好ましくは45以上である。
本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法において、サイジングが塗布される前の炭素繊維のBET吸着面積αが0.5m2/gであることが好ましい。BET吸着面積αが0.5m2/gであることで炭素繊維の表面積が増加し、接着性が向上する。
本発明にかかる炭素繊維強化樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、樹脂中の反応性官能基量が30μmol/g以上であることが好ましい。反応性官能基量が30μmol/g以上であることで、酸化層やサイジング剤との相互作用が強くなり、接着性が向上する。
本発明にかかる炭素繊維強化樹脂組成物は、エネルギー分散型X線分光法で観察した際に炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、熱可塑性樹脂由来元素が25%以上浸透している層が5nm以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂由来元素酸化層に浸透することで、酸化層やサイジング剤と樹脂との相互作用が強くなり、接着性が向上する。
本発明にかかる熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーγrおよびサイジング剤の表面自由エネルギーγSzは下記式(e)および(f)を満たすことが好ましい。
(e) γr > 38mJ/m2 (γr:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギー)。
(f)2(γp r・γp Sz)0.5+2(γd r・γd Sz)0.5 > 95 mJ/m2。
γp r:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性成分
γd r:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散成分
γp Sz:サイジング剤の表面自由エネルギーの極性成分
γd Sz:サイジング剤の表面自由エネルギーの分散成分。
本発明を構成する熱可塑性樹脂は、表面自由エネルギーγrが38より大きいことが好ましい。表面自由エネルギーγrが38より大きいことで酸化層やサイジング剤との相互作用が強くなり、接着性が向上する。接着性の更なる向上のためには、表面自由エネルギーγrは40より大きいことが更に好ましい。
式(f)の左辺はサイジング剤と熱可塑性樹脂の接着仕事Waであり、付着した2つの相を
引き離すために必要なエネルギーである。95mJ/m2を超える場合、サイジング剤と熱可塑樹脂の相互作用が強くなる。100mJ/m2以上であることが更に好ましい。
ここで、γp r、γd r、γp Sz、γd Szはそれぞれ熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性成分、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散成分、サイジング剤の表面自由エネルギーの極性成分、サイジング剤の表面自由エネルギーの分散成分を示す。表面自由エネルギーの極性成分とは極性官能基間に働く電気双極子に作用する相互作用の成分であり、分散成分とはファンデルワールス力に作用する相互作用の成分である。固体と液体とが接着した界面では、2つの相の同成分間に相互作用が働くと考えられる。したがって、その相互作用を強固にして、接着性を向上させるためには、表面自由エネルギーの極性成分がともに大きい炭素繊維束およびサイジング剤、または表面自由エネルギーの分散成分がともに大きい炭素繊維束およびサイジング剤を組み合わせたサイジング剤塗布炭素繊維束を用いることが接着性を高める観点から重要である。
接着仕事Waは、以下の方法で算出される。
互いに接着している固体1と液体2との接触角をθ1/2とすれば式(1)に示すヤングの式が成立する。
cosθ1/2=(γ1−γ1/2)/γ2 ・・・(1)。
ここで、γ1、γ2はそれぞれ固体1、液体2の表面自由エネルギー、γ1/2は固体1と液体2が接着した状態の界面自由エネルギーを示す。ここで、表面自由エネルギーγは極性成分γpおよび分散成分γdの和であらわすことができる。
γ1=γp 1+γd 1 ・・・(2)
γ2=γp 2+γd 2 ・・・(3)。
また、互いに接着している固体1と液体2との接着仕事Waは接着前のエネルギーと接着後におけるエネルギーの差で定義され、デュプレの式(4)であらわすことができる。
Wa=γ1+γ2―γ1/2 ・・・(4)
式(1)、式(3)よりヤング−デュプレの式(5)が成立する。
Wa=γ2(1+cosθ1/2) ・・・(5)。
このWaに対して表面自由エネルギーの各成分の幾何平均則(6)を適用すると、式(7)が成立し、固体1を炭素繊維束、液体2をサイジング剤としてそれぞれの表面自由エネルギーの分散成分、極性成分を求めることにより、本発明で規定する接着仕事Waが算出できる。
γ1/2=γ1+γ2−2(γp 1・γp 2)0.5−2(γd 1・γd 2)0.5 ・・・(6)
Wa=2(γp 1・γp 2)0.5+2(γd 1・γd 2)0.5 ・・・(7)。
本発明において、熱可塑性樹脂、およびサイジング剤の表面自由エネルギーはオーエンスの近似式を用いて算出することができる。
オーエンスの近似式は、液体の表面自由エネルギーγL、表面自由エネルギーの極性成分γp L、表面自由エネルギーの分散成分γd L、および測定により得られる接触角θを式(8)〜式(10)に代入し、X、Yにプロットする。2種類以上の表面自由エネルギーの極性成分および分散成分が既知である液体を用いて作成したプロットの最小自乗法により直線近似した近似式の傾きaの2乗をγp CF、切片bの2乗をγd CFとして求めることができる。
Y=a・X+b ・・・(8)
X=(γp L)0.5/(γd L)0.5 ・・・(9)
Y=(1+cosθ)・(γL)/2(γd L)0.5 ・・・(10)。
熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーは、熱可塑性樹脂の平板上に表面自由エネルギーの極性成分および分散成分が既知である液体を滴下し、作製した液滴の形状から測定した接触角をもとに、前述のオーエンスの近似式より傾きaの2乗をγp r、切片bの2乗をγd rとして求めることができる。
サイジング剤の表面自由エネルギーは、前記方法により表面自由エネルギーを算出した熱可塑性樹脂平板上にサイジング剤を滴下し、作製した液滴の形状から測定した接触角をもとに、前述の式(8)〜式(10)のγp L、γd Lをそれぞれγp s、γd sに変更して算出することができる。
本発明にかかる炭素繊維強化樹脂組成物は、エネルギー分散型X線分光法で観察した際に炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する窒素の組成比が炭素繊維内部における窒素の組成比よりも0.5%以上多い層または全元素に対する酸素の組成比が炭素繊維内部における酸素の組成比よりも3%以上多い層が5nm以上存在することが好ましい。サイジング剤が酸化層に浸透することで、サイジング剤由来の窒素元素や酸素元素の組成比が多くなり、酸化層やサイジング剤と樹脂との相互作用が強くなることで接着性が向上すると考えられる。
次に、本発明で用いるサイジング剤塗布炭素繊維束を構成する成分について説明する。
本発明で用いられる炭素繊維束としては特に制限は無いが、力学特性の観点からは、ポリアクリロニトリル系炭素繊維が好ましく用いられる。本発明に用いられるポリアクリロニトリル系炭素繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維を酸化性雰囲気中で最高温度200〜300℃で耐炎化処理した後、不活性下雰囲気下中、最高温度500〜1200℃で予備炭化処理を行い、次いで不活性雰囲気中、最高温度1200〜2000℃で炭化処理することで得られる。
本発明において、炭素繊維束と熱可塑性樹脂との接着性を向上させるため、炭素繊維束に酸化処理を施すことで酸素含有官能基を表面に導入することが好ましい。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。
次に、本発明にかかるサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法について述べる。
まず、本発明を構成するサイジング剤の炭素繊維への塗布(付与)手段について述べる。
本発明において、サイジング剤は溶媒で希釈し、均一な溶液として用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミド等が挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
塗布手段としては、例えば、ローラーを介してサイジング剤溶液に炭素繊維束を浸漬する方法、サイジング剤溶液の付着したローラーに炭素繊維束を接する方法、サイジング剤溶液を霧状にして炭素繊維束に吹き付ける方法等があるが、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束を製造する上では、ローラーを介してサイジング剤溶液に炭素繊維束を浸漬する方法が好ましく用いられる。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。また、サイジング剤付与時に、炭素繊維束を超音波で加振させることも好ましい態様である。
本発明において、サイジング剤溶液を塗布した後、接触式乾燥手段によって、例えば、加熱したローラーに炭素繊維束を接触させることによりサイジング剤塗布炭素繊維束を得ることが好ましい。 加熱したローラーに導入された炭素繊維束は、張力によって加熱したローラーに押し付けられ、急速に乾燥されるため加熱したローラーで拡幅された炭素繊維束の扁平な形態がサイジング剤によって固定されやすい。扁平な形態となった炭素繊維束は、単繊維間の接触面積が小さくなるため、開繊性が高くなりやすい。
また、本発明において、予備乾燥工程として加熱したローラーを通過させた後、第2乾燥工程としてさらに熱処理を加えても良い。該第2乾燥工程としての熱処理には、接触方式、非接触方式のいずれの加熱方式を採用してもよい。該熱処理を行うことでサイジング剤に残存している希釈溶媒を更に除去し、サイジング剤の粘度を安定化することができるため、安定して開繊性を高めることができる。
また、前記熱処理は、マイクロ波照射および/または赤外線照射で行うことも可能である。
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維束は熱可塑性樹脂(B)と複合化させることで、炭素繊維強化樹脂組成物とすることが好ましい。本発明を構成する熱可塑性樹脂(B)としては、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケントン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましい。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
<重量平均分子量Mwの測定方法>
サイジング剤の重量平均分子量はGPCを用いてポリスチレンを標準物質とした公知の方法で測定できる。GPCの測定条件として、本発明では、以下の条件を採用するものとする。
測定装置:島津製作所製
検出器:屈折計(島津製作所製)
(サイジング剤として下記(A−2,A−3)以外を用いた場合)
使用カラム:TOSOH BIOSCIENCE製 TSKgel HXL−L + TSKgel α−3000
溶離液:ジメチルホルムアミド 0.01mol/L臭化リチウム溶液
標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
(サイジング剤として下記(A−2,A−3)を用いた場合)
使用カラム:昭和電工製 Shodex Asahipac GF−710HQ+GF−510HQ+GF−310HQ
溶離液:0.2モル%−モノエタノールアミン水溶液 (酢酸を添加してpH5.1に調整)
標準物質:プルラン(シグマアルドリッチ社製)。
<サイジング付着量の測定方法>
2.0±0.5gのサイジング塗布炭素繊維束を秤量(W1)(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm3)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、W1−W2によりサイジング付着量を求める。このサイジング付着量を炭素繊維束100質量部に対する質量部に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したサイジング剤の付着量(質量部)とした。測定は2回おこない、その平均値をサイジング剤の付着量とした。
<界面せん断強度の測定方法>
炭素繊維束から単糸を抜き出し、厚み0.4mm以上になるように積層した樹脂フィルムで上下方向から挟み、熱プレス装置にて、加熱加圧した後、加圧状態を維持しながら、常温まで冷却し、炭素繊維単糸を埋め込んだ成形板を得た。この成形板からSD型レバー裁断機を用いて、ダンベル形状のIFSS測定用試験片を打ち抜いた。
ダンベル形状の試料の両端部を挟み、繊維軸方向(長手方向)に引張力を与え、2.0mm/分の速度で歪みを12%生じさせた。その後、試験片中央部20mmを切り取り、ホットプレート上にガラス板間に挟んだ状態で熱可塑性樹脂の融点以上まで加熱した。加熱により透明化させた試料内部の断片化された繊維長を顕微鏡で観察した。さらに平均破断繊維長laから臨界繊維長lcを、lc(μm)=(4/3)×la(μm)の式により計算した。ストランド引張強度σと炭素繊維単糸の直径dを測定し、炭素繊維と樹脂界面の接着強度の指標である界面せん断強度(IFSS)を、次式で算出した。実施例では、測定数n=5の平均を試験結果とした。
IFSS(MPa)=σ(MPa)×d(μm)/(2×lc)(μm)
本発明において、下記の樹脂ごとに異なる基準でIFSSの好ましい範囲を4段階で評価し、◎と○を合格とした。
・樹脂:ポリフェニレンスルフィド
◎: IFSSが26より大きい
○: IFSSが24以上かつ26以下
△: IFSSが22以上かつ24未満
×: IFSSが22未満。
・樹脂:ポリフッ化ビニリデン
◎: IFSSが18より大きい
○: IFSSが15以上かつ18以下
△: IFSSが10以上かつ15未満
×: IFSSが10未満。
<開繊性(開繊保持率)の測定方法>
380mmの長さにカットした炭素繊維束を3本用意し、水平な作業台の上に置いた厚紙(幅300mm、長さ430mm)上に均等に3本並べる。次に、幅方向にはみ出した糸束の両端の上部の1/3をテープで固定する。そして、幅方向にはみ出した糸束の両端の下部の1/3を両手でつまみ、3秒間かけて平行に下部に向かって80mm引っ張り、手を離す。開繊性の良い糸束は糸幅が80mmのままであるが、開繊性の悪い糸束は糸幅が短くなる。これを3本繰り返した後、各糸束の糸幅を測定し、その平均値を求めた。最後に、糸幅の平均値を80mmで割ることで、開繊保持率を計算した。
下記の基準で開繊保持率を4段階で評価し、◎と○を合格とした。
◎: 開繊保持率が0.95以上
○: 開繊保持率が0.90以上かつ0.95未満
△: 開繊保持率が0.80以上かつ0.90未満
×: 開繊保持率が0.80未満。
<BET吸着比表面積の測定方法>
炭素繊維のBET吸着面積の測定はクリプトンガスを用いて、公知の方法で測定できる。BET吸着面積の測定として、本発明では、以下の条件を採用するものとする。
測定装置:日本ベル製 BELSORP−max
吸着質:Kr
測定温度:77K(液体窒素温度)
飽和蒸気圧:0.331kPa
前処理温度・時間:300℃・5時間 減圧脱気
比表面積解析法:BET多点法。
<酸化層厚みと元素の組成比、および、酸化層への樹脂の浸透度合いの測定方法>
炭素繊維の表面の酸素濃度が高い領域(酸化層)の厚みは以下の方法で測定した。
炭素繊維を断面方向に収束イオンビーム(FIB)を用いて約100nm厚みの薄片を作製した。また、アモルファスカーボンで炭素繊維表面の保護を行った。任意の3カ所を原子分解能分析電子顕微鏡装置で、0.2nm以下のスポット径で、検出器としてエネルギー分散型X線分光法を用いて測定した。炭素繊維の円周に対して垂直方向に、炭素繊維内部を測定開始点として、保護膜に向かって80nm幅で元素濃度の割合を測定した。そのラインプロファイルで酸素濃度が2%以上になる厚みを、炭素繊維の表面の酸素濃度が高い領域の厚みとした。
炭素繊維内部の各元素濃度の割合は、測定開始点から酸素濃度が増加し始める点の間の任意の5ヶ所の平均値から求めた。また、上記のラインプロファイルにおいて、炭素繊維内部の窒素の組成比(%)をN1、酸化層内部の窒素の組成比をN2としたとき、N1+0.5≦N2となる部分Z1、および、炭素繊維内部の酸素の組成比(%)をO1、酸化層内部の酸素の組成比をO2としたとき、O1+3≦O2となる部分Z2について、下記の基準を用いて2段階で評価し、○を合格とした。
○: Z1またはZ2が5nm以上である。
×: Z1とZ2のいずれも5nm未満である。
熱可塑性樹脂由来元素の酸化層への浸透厚みは以下の方法で測定した。
炭素繊維を断面方向に収束イオンビーム(FIB)を用いて約100nm厚みの薄片を作製した。任意の3カ所を原子分解能分析電子顕微鏡装置で、0.2nm以下のスポット径で、検出器としてエネルギー分散型X線分光法を用いて測定した。BF(明視野)像より、炭素繊維内部の結晶構造に由来する結晶格子縞を観察し、同視野でのEDX像から得られる元素マッピング像と重ね合わせた。結晶格子縞が観測されず、酸素濃度が濃化している部分を酸化層と定義した。続いて、炭素繊維内部を測定開始点として、炭素繊維の円周に対して垂直方向に、熱可塑性樹脂に向かって80nm幅で元素濃度の割合を測定した。そのラインプロファイルで、熱可塑性樹脂に固有の元素Xの元素濃度の割合のうち、炭素繊維内部と酸化層の境界線でのXの割合をW3、酸化層と熱可塑性樹脂の境界線でのXの割合をW4としたとき、(W3+W4)/4≦Y≦W4となる部分Yについて、下記の基準を用いて2段階で評価し、○を合格とした。
○: Yが5nm以上である。
×: Yが5nm未満である。
試料調整には以下の装置を使用した。
試料調整:FIB法
SIINT製 SMI3200SE
日立製 FB−2000A−2 マイクロサンプリングシステム
FEI製 Strata400S
分析装置:原子分解能分析電子顕微鏡 JEOL製 JEM−ARM200F
EDX検出器 JEOL製 Centurio(100mm2シリコンドリフト(SDD)型)
測定条件:加速電圧 200kV。
<熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの評価方法>
以下の手順に従い、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーを求めた。
熱可塑性樹脂の平板上に溶媒2μlを静かに滴下した。このとき水滴の形状からθ/2法を用いて、接触角を算出した。接触角は各10点の平均値を用いた。溶媒として精製水、エチレングリコール、およびリン酸トリクレジルを用いて、以下のオーエンスの近似式を用いて表面自由エネルギーγr、表面自由エネルギーの極性成分γp r、および表面自由エネルギーの分散成分γd rを算出した。
オーエンスの近似式は、各溶媒固有の表面自由エネルギーの成分、接触角を代入し、X、Yにプロットした後、最小自乗法により直線近似したときの傾きaおよび、切片bの自乗により求めた。
Y=a・X+b
X=(γp L)0.5/(γd L)0.5
Y=(1+cosθ)・(γL)/2(γd L)0.5。
ここで、γL、γp L、γd Lは、それぞれ接触角を測定した溶媒の表面自由エネルギー、極性成分、および分散成分である。
γp r=a2
γd r=b2
γr=a2+b2。
なお、使用した液体の表面自由エネルギーの極性成分および分散成分は、以下の固有値を用いた。
・精製水
表面自由エネルギー72.8mJ/m2、極性成分51mJ/m2、分散成分21.8mJ/m2。
・エチレングリコール
表面自由エネルギー48.0mJ/m2、極性成分19.0mJ/m2、非極性成分29.0mJ/m2。
・リン酸トリクレジル
表面自由エネルギー40.9mJ/m2、極性成分1.7mJ/m2、非極性成分39.2mJ/m2。
<サイジング剤の表面自由エネルギー>
上記にて表面自由エネルギーを求めた熱可塑性樹脂平板にサイジング剤2μlを静かに滴下した。このとき水滴の形状からθ/2法を用いて、接触角を算出した。接触角は各10点の平均値を用いた。平板として、ポリエーテルイミド、ポリプロピレンおよびポリフェニレンスルフィドを用い、オーエンスの近似式を用いて表面自由エネルギーγSz、表面自由エネルギーの極性成分γp Sz、および表面自由エネルギーの分散成分γd Szを算出した。
<接着仕事の算出方法>
接着仕事Waは、上記で求めた熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性成分γp r、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散成分γd r、サイジング剤の表面自由エネルギーの極性成分γp Sz、サイジング剤の表面自由エネルギーの分散成分γd Szを用いて次式により求めた。
Wa=2(γp r・γp Sz)0.5+2(γd r・γd Sz)0.5
<樹脂官能基量の測定方法>
(熱可塑性樹脂として下記(B−1)を用いた場合)
試料を白金るつぼに秤取し、バーナーおよび電気炉で加熱灰化した。灰化物を硫酸および硝酸で加熱分解したのち希硝酸で加温溶解して定容とした。この溶液について原子吸光分析法でNaを測定し、試料中のカルボン酸ナトリウム基量(μmol/g)を算出した。
装置:原子吸光分析装置 日立ハイテクノロジーズ製 Z−2300。
(熱可塑性樹脂として下記(B−2)を用いた場合)
サンプル瓶に試料を50mg程度秤量し、1−クロロナフタレン7.5gと1%フェノールフタレインエタノール溶液を加え、250℃に加熱し、攪拌しながら試料を溶液に分散させた。250℃に加熱したホットスターラー上にサンプル瓶を設置し、攪拌子を回転させながらミクロビュレットを用いて、0.02mol/L KOH・エタノール溶液を滴下し、1−クロロナフタレン溶液が薄紫に変色した時点で滴下を終了した。滴下量からカルボキシル基量(μmol/g)を算出した。
(熱可塑性樹脂として下記(B−3)を用いた場合)
サンプル瓶に試料を50mg程度秤量し、N−メチル−2−ピロリドン7.5gと1%フェノールフタレインエタノール溶液を加え、100℃に加熱し、攪拌しながら試料を溶液に分散させた。100℃に加熱したホットスターラー上にサンプル瓶を設置し、攪拌子を回転させながらミクロビュレットを用いて、0.02mol/L KOH・エタノール溶液を滴下し、N−メチル−2−ピロリドン溶液が薄紫に変色した時点で滴下を終了した。滴下量からカルボキシル基量(μmol/g)を算出した。
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は下記の通りである。
(A)成分:サイジング剤
A−1:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(γs=51mJ/m2)
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール(登録商標)”Ex−521)
A−2:ポリエチレンイミン
(γs=61mJ/m2)
(BASFジャパン(株)製 “Lupasol(登録商標)”G20Waterfree)
A−3:ポリエチレンイミン
(γs=62mJ/m2)
(BASFジャパン(株)製 “Lupasol(登録商標)”FG)
A−4:ビスフェノールAエチレンオキシド付加物
(γs=49mJ/m2)
A−5:アミノエチル化アクリルポリマー
(γs=36mJ/m2)
(日本触媒(株)製“ポリメント(登録商標)”NK−350)。
A−6:ジグリセロールポリグリシジルエーテル
(γs=50mJ/m2)
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール(登録商標)”Ex−421)
A−7:グリセロールポリグリシジルエーテル
(γs=50mJ/m2)
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール(登録商標)”Ex−313)
A−8:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
(γs=50mJ/m2)
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール(登録商標)”Ex−832)。
A−9:ポリグリシジルメタクリレート
(γs=44mJ/m2)
(東レファインケミカル(株)製 試作品)。
(B)成分:熱可塑性樹脂
B−1:ポリフェニレンスルフィド
(ポリプラスチックス(株)製 “ジュラファイド(登録商標)”PPS W−540)
B−2:ポリフェニレンスルフィド
(東レ(株)製 “トレリナ(登録商標)”M2888)。
B−3:ポリフッ化ビニリデン
(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製 “ソレフ(登録商標)”9009)。
(実施例1)
本実施例は、次の第1〜4の工程からなる。
・第1の工程:原料となる炭素繊維束を製造する工程
イタコン酸を共重合したアクリロニトリル共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、ストランド引張強度5.1GPa、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維束を得た。次いで、その炭素繊維束を、炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維束1g当たり80クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維束を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維束を得た。
・第2の工程:サイジング剤を炭素繊維束に付着させる工程
化合物(A)として(A−1)を用い、(A−1)と水を混合して、(A−1)が均一に溶解した水溶液を得た。この水溶液をサイジング剤水溶液として用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維束に塗布した後、予備乾燥工程としてホットローラーで120℃の温度で15秒間熱処理をし、続いて、第2乾燥工程として210℃の温度の加熱空気中で90秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の塗布量は表面処理されたサイジング剤塗布炭素繊維全量100質量部に対して、0.2〜0.5質量部となるように調整した。
・第3の工程:開繊性試験用サンプルの作製および評価
前記第2工程で得られた炭素繊維束を用いて、開繊性の評価方法に基づいて開繊保持率求めた。その結果、開繊保持率は0.95であり、開繊性が非常に高いことが分かった。
・第4の工程:IFSS測定用試験片の作製および評価
前工程で得られた炭素繊維束と、熱可塑性樹脂(B)として(B−1)を用いて、界面せん断強度の測定方法に基づき、IFSS測定用試験片を作製した。熱プレスの加熱加圧条件は320℃、2.0MPaであった。
続いて、得られたIFSS測定用試験片を用いて、IFSSを測定した。その結果、IFSSが26MPaであり、接着性が十分に高いことがわかった。以上の結果を表1にまとめた。
Figure 0006982784
(実施例2)
第4の工程において熱可塑性樹脂(B)として(B−2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例3)
第2の工程における化合物(A)として(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例4)
第2の工程における化合物(A)として(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例5)
第2の工程における化合物(A)として(A−6)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、熱分解性がやや高いものの、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例6)
第4の工程において熱可塑性樹脂(B)として(B−3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が高い炭素繊維束が得られた。
(実施例7)
第4の工程において熱可塑性樹脂(B)として(B−3)を用いた以外は、実施例3と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例8)
第4の工程において熱可塑性樹脂(B)として(B−3)を用いた以外は、実施例4と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(比較例1)
第1の工程にいて電解表面処理をおこなわなかった以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性は高いものの、接着性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例2)
第1の工程において電解液を硫酸水溶液に変更し、電気量を炭素繊維束1g当たり3クーロンに変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性は高いものの、接着性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例3)
第2の工程において第2乾燥工程の乾燥温度を240℃と変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性は非常に高いものの、開繊性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例4)
第2の工程における化合物(A)として(A−4)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性は高いものの、接着性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例5)
第2の工程における化合物(A)として(A−5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例6)
第2の工程における化合物(A)として(A−7)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性は非常に高いが接着性の低い炭素繊維束が得られた。
(比較例7)
第2の工程における化合物(A)として(A−8)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性は非常に高いが接着性の低い炭素繊維束が得られた。
(比較例8)
第2の工程における化合物(A)として(A−9)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性および接着性の低い炭素繊維束が得られた。
(比較例9)
第4の工程において熱可塑性樹脂(B)として(B−3)を用いた以外は、比較例2と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性は高いものの、接着性が低い炭素繊維束が得られた。
Figure 0006982784
(実施例9)
本実施例では、以下の手順でサイジング剤の熱安定性を評価した。
熱重量分析機を用いて、下記条件にて重量減少率△Wrの測定を行った。
ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むサイジング剤(A)として(A−1)を約10mg秤量し、30℃で1分保持した後、空気下で昇温速度10℃/分で30℃から450℃まで昇温した。30℃から450℃までの昇温過程において、30℃時の試料重量W1を基準として、250℃到達時の試料重量W2から式(e)を用いて重量減少率△Wrを算出した。
△Wr=(W1−W2)/W1×100 (e)。
下記の基準で熱安定性を3段階で評価し、◎と○を合格とした。
◎: △Wrが15以下
○: △Wrが15以上かつ30未満
×: △Wrが30以上
結果は表1にまとめた通りであり、重量減少率△Wrが12パーセントであり、高い熱安定性をもつことが分かった。
(実施例10)
ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むサイジング剤(A)として(A−6)を用いた以外は、実施例9と同様にしてサイジング剤の重量減少率△Wrを求めた。結果は表2にまとめた通りであり、高い熱安定性をもつことが分かった。
(比較例10)
ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むサイジング剤(A)として(A−7)を用いた以外は、実施例9と同様にしてサイジング剤の重量減少率△Wrを求めた。結果は表2にまとめた通りであり、熱安定性が低いことが分かった。
(A−7)をサイジング剤として用いた場合、乾燥工程において、サイジング剤が熱分解するため、目的のサイジング付着量にするためには、サイジング溶液の濃度を濃くする必要があり、プロセス面で不利であった。
(比較例11)
ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むサイジング剤(A)として(A−8)を用いた以外は、実施例9と同様にしてサイジング剤の重量減少率△Wrを求めた。結果は表2にまとめた通りであり、熱安定性が非常に低いことが分かった。
(A−8)をサイジング剤として用いた場合、乾燥工程において、サイジング剤が熱分解するため、目的のサイジング付着量にするためには、サイジング溶液の濃度を濃くする必要があり、プロセス面で不利であった。
本発明によれば、熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を示す場合であっても、サイジング剤塗布炭素繊維の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を提供することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその成形体は、軽量でありながら強度に優れることから、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に好適に用いることができる。

Claims (13)

  1. 炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する酸素の組成比が2%以上である層が10nm以上存在し、かつ、下記(a)、(b)および(c1)を満たすサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維。
    (a)ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量Mwが650≦Mw≦1900。
    (b)γSz > 35 mJ/m2(γSz:サイジング剤の表面自由エネルギー)。
    (c1)アミノ基を有する化合物またはアミド基を有する化合物のいずれかを含む。
  2. サイジング剤はアミノ基を有する化合物を含み、かつサイジング剤のアミノ基価が2〜200 mmol/gである、請求項1に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  3. 表面自由エネルギーγSzが50mJ/m2以上であるサイジング剤が塗布されてなる、請求項1または2に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  4. 全元素に対する酸素の組成比が2%以上である層とサイジング剤がアミド結合を形成している、請求項1〜3のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  5. 炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する酸素の組成比が2%以上である層が10nm以上存在し、かつ、下記(a)、(b)および(c2)を満たすサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維。
    (a)ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量Mwが650≦Mw≦1900。
    (b)γSz > 35 mJ/m2(γSz:サイジング剤の表面自由エネルギー)。
    (c2)3官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む。
  6. サイジング剤のエポキシ等量が50〜1000g/eqである、請求項5に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  7. ポリエーテル型あるいはポリオール型脂肪族エポキシを含むサイジング剤が塗布されてなる、請求項5または6に記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  8. サイジング剤が下記(d)を満たす、請求項5〜7のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
    (d)γSz > 40 mJ/m2
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維の製造方法であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる、炭素繊維に塗布される前のサイジング剤の重量平均分子量Mwが650以上である、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、反応性官能基量が30μmol/g以上である熱可塑性樹脂を含んでなる炭素繊維強化樹脂組成物。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、熱可塑性樹脂を含んでなる炭素繊維強化樹脂組成物であり、炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、熱可塑性樹脂由来元素が25%以上浸透している層が5nm以上である、炭素繊維強化樹脂組成物。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、熱可塑性樹脂を含んでなる炭素繊維強化樹脂組成物であり、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーγrおよびサイジング剤の表面自由エネルギーγSzが下記式(e)および(f)を満たす、炭素繊維強化樹脂組成物。
    (e) γr > 38mJ/m2 (γr:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギー)。
    (f)2(γp r・γp Sz)0.5+2(γd r・γd Sz)0.5 > 95 mJ/m2。
    γp r:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性成分
    γd r:熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散成分
    γp Sz:サイジング剤の表面自由エネルギーの極性成分
    γd Sz:サイジング剤の表面自由エネルギーの分散成分
  13. 請求項1〜8のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維と、熱可塑性樹脂を含んでなる炭素繊維強化樹脂組成物であり、炭素繊維断面をエネルギー分散型X線分光法で検出した際に炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する窒素の組成比が炭素繊維内部における窒素の組成比よりも0.5%以上多い層または全元素に対する酸素の組成比が炭素繊維内部における酸素の組成比よりも3%以上多い層が5nm以上存在する、炭素繊維強化樹脂組成物。
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