JP7008569B2 - 電子機器及びその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は電子機器及びその制御方法に関し、特に、例えば、シリアル型の記録装置のキャリッジ等の移動物体の駆動制御の技術に関する。
シリアル型プリンタにおいてモータにより往復移動するキャリッジの駆動はエンコーダを用いたPID制御などのフィードバック制御が一般的である。シリアル型のインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する記録ヘッドを搭載するキャリッジの走査を行う駆動部では、インク着弾位置の安定化のためにキャリッジ走査時の速度変動が重視されている。
しかしながら構成部品のばらつきによりキャリッジの速度変動がプリンタ個体ごとに異なることがある。特に、キャリッジモータの構造上、コギングトルクと呼ばれるトルク変動などは、速度変動を悪化させる要因であった。コギングトルクはキャリッジモータ個体でそれぞれ大きさなどが異なり、さらにその他の部品ばらつきの影響を受けるため、各プリンタで安定した速度変動を実現することが困難であった。
特許文献1では、スライディングモード制御を適用し、外乱抑圧性を向上させ、指令に対して追従性の良い制御性能向上を確保する制御方法を提案している。
特開平5-134758号公報
しかしながら特許文献1が提案する制御方法は、制御入力を高速でスイッチングすることが前提になっているが、演算遅れやフィードバック制御に必要な状態量の取得に遅延が存在した場合、スイッチングのタイミングがずれることがあった。そして、そのずれの量によってはキャリッジの速度変動をさらに悪化させることがあった。
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、制御対象物の速度変動を低減できる電子機器とその制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の電子機器は、以下の構成を備える。
即ち、対象物の移動を制御する電子機器であって、前記対象物の移動を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定手段と、前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、前記第2の推定手段により推定された前記第1状態量と前記第2状態量の2つの変数で定義される2次元空間が分割された複数の領域において、前記第1状態量と前記第2状態量がいずれの領域に位置するのかに従って、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を決定する第2の生成手段と、前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成手段とを有し、前記複数の領域は、第2の領域と、第3の領域と、前記第2の領域と前記第3の領域の間に設けられた第1の領域とを含み、前記第2の生成手段は、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第1の領域に位置する場合の前記第2操作量が、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第2の領域に位置する場合の前記第2操作量および前記第3の領域に位置する場合の前記第2操作量よりも小さくなるように、前記第2操作量を決定することを特徴とする。
また本発明を別の側面から見れば、対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、前記対象物の移動を検出する検出工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定工程と、前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、前記第2の推定工程において推定された前記第1状態量と前記第2状態量の2つの変数で定義される2次元空間が分割された複数の領域において、前記第1状態量と前記第2状態量がいずれの領域に位置するのかに従って、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を決定する第2の生成工程と、前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成工程とを有し、前記複数の領域は、第2の領域と、第3の領域と、前記第2の領域と前記第3の領域の間に設けられた第1の領域とを含み、前記第2の生成工程では、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第1の領域に位置する場合の前記第2操作量が、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第2の領域に位置する場合の前記第2操作量および前記第3の領域に位置する場合の前記第2操作量よりも小さくなるように、前記第2操作量を決定することを特徴とする制御方法を備える。
本発明によれば、制御対象物の速度変動を低減できるという効果がある。
記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。 制御対象としてキャリッジの速度プロファイルを示す図である。 本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の主要機構部分を示す斜視図である。 図3に示す記録装置の制御部を示すブロック図である。 図3~図4で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。 A相B相のエンコーダ信号を示す図である。 第1状態量と第2状態量により定義される2次元座標空間を切り替え線により分割する様子を示す図である。 従来の技術を用いたキャリッジ振動抑制の効果を示す図である。 この実施例に従うキャリッジ振動抑制の効果を示す図である。 図7に示した2次元座標空間を切り替え線により分割する別の例を示す図である。 図7に示した2次元座標空間を切り替え線により分割するさらに別の例を示す図である。
本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
以下の説明においては、電子機器の代表的な例としてシリアル型記録装置のキャリッジを移動させるモータの駆動制御を例に挙げる。しかし、記録装置のキャリッジに限らず、モータの駆動により物体を移動させるものであれば、本発明のモータ制御を適用することが可能である。例えば、その記録装置において、記録用紙などの記録媒体を搬送するために用いる搬送モータの駆動制御に適用することもできる。さらには、CCDラインスキャナやCISなどをモータを駆動して移動させながら原稿の画像を光学的に読取るスキャナ装置なども本発明に含まれる。
1.フィードバック制御の説明
図1は記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。図1において、(a)は一般的な制御構成を示す図であり、(b)はこの実施例において用いられる制御構成を示す図である。
まず、図1(a)を参照して一般的なフィードバック制御構成について説明する。
図1(a)に示すように、制御対象(例えば、キャリッジ)21の状態を検出した検出信号(キャリッジの位置、速度)が制御量推定部(例えば、CPU)23に出力され、位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部(例えば、キャリッジドライバ)22に出力され、制御対象21を目標値に収束させるための操作量が演算される。操作量が制御対象21に出力されることでフィードバック制御ループが構成される。
さて、制御対象を安定して動かすためには、制御対象の特性を鑑みつつ制御上の余裕度を確保して、諸々のパラメタ設定を行う必要がある。余裕度が足りないと振動が発生し、発振現象から制御不能に至る場合もある。一方、この余裕度を取りすぎると制御対象の追従性能が低下するが、振動抑制のために追従性能に制限をかけることは避けられない。
次に、図1(b)を参照してこの実施例で用いられるフィードバック制御構成について説明する。
図1(b)に示されているように、このフィードバック制御では、図1(a)で示したフィードバック制御ループに加えて、制御対象21からの検出信号を用いた別のフィードバック制御ループを形成する。即ち、制御対象21の状態を検出した検出信号が制御量推定部23に出力され、キャリッジの位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部22に出力され、第1制御部22で制御対象21を目標値に収束させるための第1操作量が演算される。次に、第1制御部21から第1操作量が出力され、合成部26を経て制御対象21に至ることで、第1のフィードバックループが形成される。
一方、制御対象21の状態を検出した検出信号は状態量推定部25にも出力され、状態量推定部25で第1状態量と第2状態量を推定する。第2状態量は第1状態量を時間微分した関係がある。具体的には、第1状態量と第2状態量は位置と速度の組み合わせ、もしくは速度と加速度の組み合わせからなる値となり、これらが第2制御部24に出力されるものとなる。そして、第2の制御部24で第2操作量が演算される。次に、第2制御部24から第2操作量が出力され、合成部26で第1操作量と第2操作量とが合成されて制御対象21に至る。このように、制御対象21→状態量推定部25→第2制御部24→合成部26→制御対象21という第2のフィードバックループが形成される。
第1操作量と第2操作量は非同期に更新されるものであり、これらのタイミングを調整しつつ合算するのが合成部26であり、合算値となる第3操作量を制御対象21に出力する。
ここで、図1(b)に示したフィードバック制御を、シリアル型記録装置において記録ヘッドを搭載して往復運動するキャリッジの速度制御に適用した例について説明する。
図2は制御対象としてキャリッジの速度プロファイルを示す図である。
図2において、横軸は時間(t)、縦軸はキャリッジの速度(v)である。図2はキャリッジがホームポジションからt=t1で移動開始し、加速して速度vcに達して定速移動に移行し、その後、減速してt=t2で停止する速度プロファイルを描かれている。しかしながら、現実のキャリッジ運動はそのような理想的なものではなく、定速移動中にも外乱などの影響でその速度は微小変動する。速度が微小変動するとは、非常に短い周期で+の加速度と-の加速度が発生することを意味する。
図2には破線で理想的な速度プロファイルを示し、太い実線で定速移動中の微小な速度変動を示している。
この実施例におけるフィードバック制御では、第1制御部22が破線で示す速度プロファイルの制御を担当し、制御対象のキャリッジを所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させる。第1制御部22は一般的に広く使われているPID制御演算を実行し、制御上の余裕度を鑑みつつ諸々のパラメタ設定が行われ、制御帯域が決定され、その制御帯域内において振動を抑えつつ、所望の動きを実現する。
一方、第2制御部24が太い実線で示す微小な速度変動を抑える制御を担当する。第2制御部24は、第1制御部22の制御帯域を超えた高周波帯域での微小な振動現象(速度変動)を抑制する。このような速度変動を抑制するためには、発生する+の加速度に対しては-の加速度を操作量として与える一方、発生する-の加速度に対しては+の加速度を操作量として与える動作を速度変動の周期に対応した短い周期で行うことが必要である。従って、その制御性能を実現するために十分に短い制御周期が要求されるので、第2制御部24は少なくとも第1制御部22の制御周期よりも短い制御周期で制御が実行される。
このように制御周期が十分に短いことで、第2制御部24では高速なスイッチング動作が実現でき、第1制御部22の制御帯域を超えた領域まで振動抑制(速度変動抑制)が可能になる。従って、制御対象としてのキャリッジの状態が変化して第1制御部22によるフィードバック制御だけでは振動現象が発生するような場合でも、第2制御部24で振動を抑制することが可能になり、追従性を損なうことなく、安定な制御系を構築することができる。
まとめると、加速、定速、減速からなる速度プロファイルをもつ制御対象としてのキャリッジを目標位置に収束させるのが従来のフィードバック制御を行う第1制御部22の役割となる。第1制御部22ではキャリッジの位置と速度の情報からなる制御量を用い、PID制御によるフィードバックループ(第1のフィードバックループ)を構成する。一方、第1制御部22では対応できないキャリッジの微小な速度変動を抑制するのが第2制御部24の役割となる。第2制御部24では、位置と速度、又は、速度と加速度の組み合わせからなる状態量を用い、高速なスイッチング制御によるフィードバックループ(第2のフィードバックループ)を構成する。このため、第2のフィードバックループの制御は、第1のフィードバックループの制御よりも短い演算周期で実行される。
2.フィードバック制御の適用例の説明
ここでは、図1(b)を参照して説明したような2つのフィードバックループを形成する制御を適用するシリアル型の記録装置について説明する。
<記録装置の説明(図3~図4)>
図3は本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従ってインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した記録装置の構成を示す外観斜視図である。
記録ヘッド2を搭載するキャリッジ(移動物体)3はガイド軸4により摺動自在に支持されて、記録媒体(シート)1の上で往復移動する。キャリッジ3の移動範囲の一端にはプーリ付きのキャリッジモータ(DCモータ)5が配置され、他端にアイドルプーリ6が配置され、これらにタイミングベルト7が掛けまわされ、キャリッジ3とタイミングベルト7が連結されている。
また、ガイド軸4を中心としてキャリッジ3が回転するのを防ぐために、ガイド軸4と平行に延びて設置されたサポート部材8が設置され、キャリッジ3はサポート部材8によっても摺動自在に支持されている。また、記録ヘッド2には多数の記録素子が設けられており、記録装置の本体部から記録ヘッド2に記録素子の駆動信号を供給するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)11が配されている。FFC11は細長くかつ薄いフィルム形状をなしており、その内部または表面に駆動信号を伝達するための導体パターンが形成されており、キャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。
さらに、キャリッジ3の外にインクタンク(不図示)が配置され、インクタンク内に貯留されたインクを記録ヘッド2に供給するチューブ12が配されている。チューブ12はキャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。これらFFC11とチューブ12からなる接続部材10はキャリッジ3と記録装置本体の固定部9との間に接続されている。
また、キャリッジ3の位置情報を取得するために用いられるリニアスケール16は、キャリッジ移動方向(主走査方向)に沿って平行に配置され、キャリッジ3に取り付けられたエンコーダセンサ15で読取る構成となっている。さらに、記録媒体1の幅方向の両外側には記録ヘッド2の予備吐出したインクを回収する為のインク回収口14a、14bが設けられている。この予備吐出とは、記録開始直前もしくは記録実行中にノズル先端部に付着したインクを記録とは無関係な位置で排出する為の動作である。
このような構成により、キャリッジ3は矢印A方向(主走査方向)に往復移動する。また、記録媒体1は、搬送モータ(不図示)によってキャリッジ3と垂直に交差する矢印Bの方向(副走査方向)に搬送される。
図4は図3に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図4に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。
ASIC603は、キャリッジモータ5の制御、搬送モータ20の制御、及び、記録ヘッド2の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
また、図6において、610は画像データの供給源となるホスト装置である。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等を、例えば、USB規格に基づくプロトコルを用いて送受信する。
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、印刷の開始指示などを行うプリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、エンコーダセンサ15、温度センサ632等から構成される。
さらに、640はキャリッジ3を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータ5を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータ20を駆動させる搬送モータドライバである。
ASIC603は、記録ヘッドによる記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される操作パネル18が備えられている。また、装置実装上は、スイッチ群620が操作パネル18に含まれていても良い。
ASIC603は画像処理やアクチュエータ制御を行うため演算処理部として動作し、MPU601から命令を受けて演算処理を実行する。詳細は後述するが、ループバック制御演算の一部はASIC603で実行される。MPU601はキャリッジのフィードバック制御のための演算の一部を担当し、印刷シーケンスに従って、キャリッジモータ5の駆動演算を実行する。インタフェース611を経由してホスト装置610からプリント命令が発行された際、記録動作のためにキャリッジ3が往復動作する。
3.記録装置のキャリッジ制御のためのフィードバック制御構成の詳細
ここでは、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御構成を、図3~図4を参照して説明した記録装置のキャリッジ駆動制御への適用について詳細に説明する。
図5は図3~図4で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。
記録装置のキャリッジ制御には、記録ヘッド2による印刷品位を担保するために正確な位置にインクを着弾させるための精度が求められる。記録ヘッド2からのインク液滴の吐出タイミングはキャリッジ3の移動速度(v)から算出されるものであり、その速度変動を最小化することが重要になる。その為、この実施例に従うフィードバック制御における抑制すべき振動対象は、キャリッジ速度になる。従って、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御における第1状態量と第2状態量は、キャリッジの速度と加速度の組み合わせとなり、これらの状態量が第2制御部24に入力される。
また、フィードバック制御における制御対象はキャリッジ3となり、エンコーダセンサ15からエンコーダ信号が制御量推定部23と制御量推定部25に出力される。一般的にエンコーダ信号は、A相B相と呼ばれる位相が90度異なる2本のパルス信号が用いられる。この実施例においてもA相B相の2本のパルス信号をエンコーダ信号として用いる。
図6はA相B相のエンコーダ信号を示す図である。
制御量推定部23はこのパルス信号をカウントすることで位置情報を推定し、パルス信号のパルス幅を計測することで速度情報を推定する。この位置・速度情報等が制御量として、第1制御部22に相当するPID制御演算部36に出力される。
目標値演算部35は、キャリッジ3を所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させるための目標プロファイルを生成し、これを目標値として出力する。PID制御演算部35は、目標値演算部35からの目標値と制御量推定部23からの制御量とを用いてPID制御演算を行い、第1操作量として出力する。
エンコーダセンサ15からのエンコーダ信号は状態量推定部25にも出力される。状態量推定部25は、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値も入力される。レジスタ設定値は、目標値演算部35からの目標値を、前処理演算部38により状態量推定部内で使用する単位系に置換した値である。状態量推定部25は、エンコーダ信号から速度情報と加速度情報とを推定し、動作目標となるレジスタ設定値との誤差量を計算する。そして、その誤差量となる速度誤差量、加速度誤差量の2つが速度次元と加速度次元の状態量の組み合わせとして、第2制御部24に相当するスライディングモード制御演算部39に出力される。
さて、第1状態量と第2状態量は、例えば、キャリッジの速度(v)と加速度(a)の関係になるので、これら2つの状態量(2変数)の関係を2次元空間で表現できる。
スライディングモード制御演算部39では、速度誤差量、加速度誤差量の2変数から形成される2次元平面空間を、
速度誤差量 = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 定数
という一次関数によって定義される分割線(切り替え線)を用いて、複数の領域に分割する。そして、得られた速度誤差量、加速度誤差量が分割された複数の領域のいずれに存在するのかを判別する。そして、その領域判別結果に基づき、各領域ごとに定められた値を第2操作量として出力する。なお、スライディングモード制御演算部39により2次元平面空間の分割が行われなくてもよい。例えば、予め複数の領域に分割された2次元空間領域が、スライディングモード制御演算部39おいて定義されていてもよい。
図7は第1状態量と第2状態量により定義される2次元座標空間を切り替え線により分割する様子を示す図である。図7では、横軸に第1状態量を、縦軸に第2状態量を定義している。
図7に示されるように、その平面において、予め3分割の領域が定義され、その平面が上述した切り替え線と呼ばれる一次関数により3つの領域に分割される。この分割領域を領域1、領域2、領域3と呼ぶ。この切り替え線を表す関数は、第1状態量をS1、第2状態量をS2とすれば、S2=k×S1+K、S2=k×S1-Kという関係で表現される2つの一次関数である。ここで、kは切り替え係数である。
図7に示されるように、第1の切り替え線(S2=k×S1+K)の上部領域(縦線でハッチング)が領域2、第2の切り替え線(S2=k×S1-K)の下部領域(斜め斜線でハッチング)が領域3、領域2と領域3の間が領域1となっている。なお、図7に示す例では、点線で示した基本的な切り替え線(S2=k×S1)に関して分割が対称となっているが、領域分割は対称でなくても良い。言い換えると、図7において、L1=L2である必要はなく、L1≠L2であっても良い。
また、領域ごとの値はどのようなものでもよいが、例えば、領域1の値をゼロに、領域2、領域3は符号の異なる同じ値というに決定できる。なお、切り替え係数も、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値により更新される。この様な操作量が第2操作量として第2制御部24の出力となり、合成部26を経て制御対象21に至る。
第1操作量はPID制御演算部36が実行される毎に更新される。図1(b)に示したフィードバック制御が適用される記録装置のキャリッジモータ駆動制御部(キャリッジモータドライバ)には、1KHz程度の周期で制御演算が実行されることが多い。これに対して、第2操作量はスライディングモード制御演算部39が実行される毎に更新される。ここでは、エンコーダ信号のパルス変化を想定しており、およそ数KHz~20KHz程度の周期で制御演算が実行される。このような非同期な関係な入力に対し、合成部26ではタイミングを調整しつつ合算する。合成部26では、操作量の合算結果に基づくPWM信号をモータドライバ640に出力する。そして、モータドライバ640によりキャリッジモータ5が回転し、タイミングベルト7を経由してキャリッジ3が移動する。
スライディングモード制御演算部39をエンコーダ信号のパルス変化に起因した高速演算を実現するため、ここではASIC等のハードウェアで実行することを想定している。
図6において、2点鎖線で囲まれた範囲がASIC603において実現される。図6から分かるように、ASIC603は、スライディングモード制御演算部39、状態量推定部23、状態量推定部25、合成部26の機能を担当する。これに対して、図6において、太い点線で囲まれた範囲はMPU601においてプログラムを実行することにより実現される。図6から分かるように、MPU601は、PID制御演算部36、目標値演算部35、前処理演算部38の機能を担当する。
このように、MPU601とASIC603とでフィードバック制御を分担するのは、ASIC603で実現される部分で扱われる情報の更新周期が、MPU601で実現される部分で扱われる情報の更新周期よりも短いためである。
目標値演算部35により目標値が更新される毎に前処理演算部38も実行され、ASIC603のレジスタ領域に、最新のレジスタ設定値が設定される。前処理部演算部38では、スライディングモード制御演算39で実行する切り替え線の演算や状態量推定部25の推定演算で時々刻々と変化する変数値の一部を、PID制御演算部36の演算周期の間のみパラメタ値として管理するための計算を行う。フィードバック制御全てをASICで実行することは集積回路の肥大化を招き、処理の柔軟性や融通性を欠くものとなるので、この実施例では、演算精度と回路規模で折り合いをつけ、計算の一部をMPUの前処理演算部38が更新タイミングで実行する。
また、スライディングモード制御演算部39で用いる制御パラメータを、キャリッジ3の動作状態により変更しても良い。その場合、目標値演算部35による目標値から、キャリッジ3が加速状態や定速状態や減速状態のうち、いずれの状態の区間にあるかの判別を行う。そして、その区間ごとに、切り替え線の算出に用いる切り替え係数を変更することで、キャリッジ動作条件に応じた適切な切り替え線を選択し、速やかな収束を実現する。
ここで、以上説明した実施例に従ったキャリッジ速度変動の抑制の効果を従来の制御による結果と比較して説明する。
図8は従来の技術を用いたキャリッジ振動抑制の効果を示す図であり、図9はこの実施例に従うキャリッジ振動抑制の効果を示す図である。図8~図9において、横軸は周波数を表し、縦軸は振動スペクトル振幅を表している。また、図8(a)と図9(a)とはキャリッジ振動の抑制制御を行わない場合のキャリッジ振動特性を示しており、両方の図とも同じ条件で得られた周波数特性を示している。これに対して、図8(b)と図9(b)はそれぞれ、従来のキャリッジ振動抑制制御を実行した場合の周波数特性と、この実施例に従うキャリッジ振動特性制御を実行した場合の周波数特性を示している。
図8(a)と図9(a)によれば、キャリッジ振動の抑制制御を行わない場合、周波数f1で、キャリッジ振動が発生する。
従来のキャリッジ振動抑制制御を実行した場合、図8(a)と図8(b)を比較すると分かるように、周波数f1でのキャリッジ振動は低減するが、別の周波数f2でキャリッジ振動が発生するという問題が発生している。
これに対して、この実施例に従うキャリッジ振動特性制御を実行した場合、図9(a)と図9(b)を比較すると分かるように、周波数f1でのキャリッジ振動は低減する一方で、周波数f2を含む他の周波数でのキャリッジ振動が増加することはない。
従って以上説明した実施例に従えば、第1制御部と第2制御部からなるフィードバック制御構成を記録装置のキャリッジ駆動制御に適用することで、キャリッジ速度振動を抑制することが可能になる。特に、キャリッジ速度誤差量と加速度誤差量との関係に基づいてスライディングモード制御演算部における第2の操作量の出力を適切に調整することで、キャリッジ速度変動を全ての周波数領域で適切に抑制することが可能になる。これにより、より安定したキャリッジ駆動が実現され、高品位な画像記録を実現することができる。
なお、以上説明した実施例では、図7に示すように、第1状態量と第2状態量の2変数の関係を表現した2次元空間を2つの切り替え線により3つの領域に分割し、速度誤差量と加速度誤差量が分割した、どの領域にあるのかに従って第2操作量を調整していた。しかしながら、本発明はこれによって限定されるものではない。
例えば、図10に示すように、4つの切り替え線により、5つの領域に分割し、速度誤差量と加速度誤差量が分割した、どの領域にあるのかに従って第2操作量を調整しても良い。このような領域分割の場合、例えば、領域1の値をゼロに、領域2、領域3は符号の異なる同じ値とし、領域4、領域5は、領域2、領域3での値よりは大きいが符号の異なるが同じ値というように定めても良い。このように、誤差量の大きい場合には、操作量を大きくすることでより短い時間でキャリッジ振動の影響を低減することができる。
また、図7や図10に示した領域分割の切り替え線は、全て一次関数で表現でき、さらに基本的な切り替え線に関して対称となるものであったが、本発明はこれによって限定されるものではない。
例えば、図11に示すように、切り替え線を曲線により定義しても良いし、その曲線が基本的な切り替え線(点線)に関して、対称形でも良いし、或いは、非対称形であっても良い。さらに、図7、図10に示す領域1に対応する操作量は0に限らない。例えば領域2、領域3に対応する操作量よりも小さく、且つ図7、図10の「基本的な切り替え線」で符号が異なる値が用いられてもよい。この場合でも、例えば「基本的な切り替え線」で領域2、領域3の2つの領域のみに分割された場合に比べて、演算遅れや状態量取得の遅延等の影響が小さくなる。
3.フィードバック制御の別の適用例の説明
本発明は上述のように、モータの駆動により物体を移動させるものであれば適用することが可能なので、例えば、多機能プリンタ(MFP)のスキャナユニットや単機能のスキャナ装置のCISやCCDセンサを移動させるスキャナモータの制御に適用できる。
スキャナユニットは、画像読取性能を担保するためにCISやCCDセンサの光源点灯タイミングとスキャナユニットの移動量を一致させて画像信号を取得する必要がある。通常、光源点灯タイミングは、スキャナユニットの移動速度が一定であることを前提としているので、スキャナユニットの速度変動を抑制することが重要である。このため、抑制すべき振動対象がスキャナユニットの移動速度になるので、速度と加速度の状態量の組み合わせを上述の第2制御部を適用する。そして、基本的には、図6を参照して説明したキャリッジ制御構成と同じ構成で制御すれば良い。
これにより、従来の制御のみでは抑えきれなかったスキャナユニットの高周波数での微小な振動を抑制するとともに、フィードバック制御追従性を改善することができる。その結果、高品位な画像読取が達成できる。
さらに本発明は図3~図4で説明したような記録装置の搬送ローラ駆動制御にも適用できる。記録装置ではキャリッジ走査ごとに搬送ローラを回転させて、記録媒体を間欠搬送するが、このときの搬送量変動を抑制するために本発明のフィードバック制御を適用することができる。この場合、制御対象物は記録媒体の搬送量(位置変動)となるので、搬送ローラの回転量を第1状態量とし、搬送ローラの回転速度を第2状態量として上述の第2制御部に入力すればよい。
これにより、より高精度な搬送制御を実現することが可能になる。
1 記録媒体、2 記録ヘッド、3 キャリッジ、4 ガイド軸、
5 キャリッジモータ、6 アイドルプーリ、7 タイミングベルト、
8 サポート部材、9 固定部、10 接続部材、11 FFC、12 チューブ、
13 サブフレーム、14a、14b インク回収口、15 エンコーダセンサ、
16 リニアスケール、35 目標値演算部、36 PID制御演算部、
38 前処理演算部、39 スライディングモード制御演算部、
640 キャリッジモータドライバ

Claims (12)

  1. 対象物の移動を制御する電子機器であって、
    前記対象物の移動を検出する検出手段と、
    前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、
    前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定手段と、
    前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、
    前記第2の推定手段により推定された前記第1状態量と前記第2状態量の2つの変数で定義される2次元空間が分割された複数の領域において、前記第1状態量と前記第2状態量がいずれの領域に位置するのかに従って、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を決定する第2の生成手段と、
    前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成手段とを有し、
    前記複数の領域は、第2の領域と、第3の領域と、前記第2の領域と前記第3の領域の間に設けられた第1の領域とを含み、
    前記第2の生成手段は、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第1の領域に位置する場合の前記第2操作量が、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第2の領域に位置する場合の前記第2操作量および前記第3の領域に位置する場合の前記第2操作量よりも小さくなるように、前記第2操作量を決定することを特徴とする電子機器。
  2. 前記第2の生成手段は、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第1の領域に位置する場合の前記第2操作量をゼロに決定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
  3. 前記第2のフィードバック制御のための前記第1状態量の目標値と前記第2状態量の目標値とを入力する入力手段をさらに有し、
    前記2次元空間は、前記入力手段により入力される前記第1状態量の目標値と前記第1状態量との第1の誤差と、前記入力手段により入力される前記第2状態量の目標値と前記第2状態量との第2の誤差とにより定義されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
  4. 前記第2の生成手段は、前記第1の誤差と前記第2の誤差とが大きい場合には、前記第2操作量の値を大きい値に決定することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
  5. 一次関数で定義される2つ以上の分割線により前記2次元空間が前記複数の領域に分割されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
  6. 曲線で定義される2つ以上の分割線により前記2次元空間が前記複数の領域に分割されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
  7. 前記電子機器は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であり、
    前記対象物は前記キャリッジであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子機器。
  8. 前記第1状態量は、前記キャリッジの速度であり、
    前記第2状態量は、前記キャリッジの加速度であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
  9. 前記検出手段は、前記キャリッジの位置を検出するエンコーダセンサを備え、
    前記エンコーダセンサから出力されるエンコーダ信号のパルス信号をカウントすることで前記キャリッジの位置を推定し、前記パルス信号のパルス幅を計測することで前記キャリッジの速度を推定することを特徴とする請求項7又は8に記載の電子機器。
  10. 前記第1の生成手段は、プログラムをCPUが実行することにより実現され、
    前記第1の推定手段と、前記第2の推定手段と、前記第2の生成手段と、前記合成手段とはASICにより実現されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の電子機器。
  11. 前記電子機器は、CIS又はCCDセンサを搭載したスキャナユニットを移動させて前記スキャナユニットにより原稿の画像を読取るスキャナ装置、又は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置に該スキャナ装置を備えた多機能プリンタであり、
    前記対象物は前記スキャナユニットであり、
    前記第1状態量は、前記スキャナユニットの速度であり、
    前記第2状態量は、前記スキャナユニットの加速度であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子機器。
  12. 対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、
    前記対象物の移動を検出する検出工程と、
    前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、
    前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量と該第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定工程と、
    前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、
    前記第2の推定工程において推定された前記第1状態量と前記第2状態量の2つの変数で定義される2次元空間が分割された複数の領域において、前記第1状態量と前記第2状態量がいずれの領域に位置するのかに従って、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を決定する第2の生成工程と、
    前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成工程とを有し、
    前記複数の領域は、第2の領域と、第3の領域と、前記第2の領域と前記第3の領域の間に設けられた第1の領域とを含み、
    前記第2の生成工程では、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第1の領域に位置する場合の前記第2操作量が、前記第1状態量と前記第2状態量が前記第2の領域に位置する場合の前記第2操作量および前記第3の領域に位置する場合の前記第2操作量よりも小さくなるように、前記第2操作量を決定することを特徴とする制御方法。
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