JP7067246B2 - 複合粒子、複合粒子の製造方法および乾燥粉体 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバー(以下、CNFとも称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10~50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用フィラーや吸着剤としての利用が期待されている。
このように、CNFを分散液の状態で取り扱うこと自体が事業性を損なう原因となるため、CNFを容易に取り扱うことができる新たな取り扱い様態を提供することが強く望まれている。
以上例示したように、カーボンニュートラル材料であるCNFまたはCSNFをはじめとする、微細化セルロースに新たな機能性を付与する高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。
本発明の一態様に係る複合粒子は、少なくとも一種類の生分解性を有した化合物を含む粒子と、前記生分解性を有した化合物を含む粒子の表面の少なくとも一部を覆う微細化セルロースとを有し、前記生分解性を有した化合物を含む粒子と前記微細化セルロースとが不可分の状態にある。
まず、本発明の実施形態に係る微細化セルロース/生分解性を有する化合物粒子の複合粒子5について説明する。図1はセルロースナノファイバー(以下、CNFもしくはセルロースとも称する)1を用いたO/W型ピッカリングエマルションと、エマルション内部の生分解性を有する化合物を固体化することで得られる複合粒子5の概略図である。なお、ここで言う「微細化セルロース」とは、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下の範囲内である繊維状セルロースを意味する。また、ここで言う「生分解性」とは、土壌や海水中などの地球環境において分解して消滅することを意味する。一般的に、土壌や海水中では微生物がもつ酵素によりポリマー等は分解され消滅するのに対し、生体内では酵素を必要とせず物理化学的な加水分解により分解され消滅する。
図1に示すように、分散液4に分散した生分解性を有する化合物を含んだ液滴である化合物液滴2の界面に微細化セルロース1が吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化し、安定化状態を維持したままエマルション内部の生分解性を有する化合物を固体化することによって、エマルションを鋳型とした複合粒子5が作成される。
また、複合粒子5は微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、複合粒子5の形状はO/W型エマルションに由来した真球状となることが特徴である。詳細には、真球状の生分解性を有する化合物粒子3の表面に微細化セルロース1からなる被覆層が比較的均一な厚みで形成された様態となる。被覆層の平均厚みは、例えば、複合粒子5を包埋樹脂で固定したものをミクロトームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の複合粒子5の断面像における被覆層の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。また、複合粒子5は比較的揃った厚みの被覆層で均一に被覆されていることが特徴であり、具体的には上述した被覆層の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。微細化セルロース1を含む被覆層の厚みの値の変動係数が0.5を超える場合には、例えば、複合粒子5の回収が困難となることがある。
次に、本実施形態の複合粒子の製造方法について説明する。本実施形態に係る複合粒子の製造方法は、セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース1の分散液4を得る工程(第1工程)と、微細化セルロース1の分散液4中において生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、生分解性を有する化合物液滴2をエマルションとして安定化させる工程(第2工程)と、生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、生分解性を有する化合物液滴2を固体化して生分解性を有する化合物粒子3とすることで、生分解性を有する化合物粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつ生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程(第3工程)と、を有する複合粒子5の製造方法である。
(第1工程)
第1工程はセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程である。まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。懸濁液中のセルロース原料の濃度が0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なう傾向があるため好ましくない。また、懸濁液中のセルロース原料の濃度が10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となる傾向があるため好ましくない。懸濁液作製に用いる溶媒としては、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%未満になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程において、微細化セルロース1の分散が阻害される傾向がある。また、水以外に含まれる溶媒としては親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒については特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース1の分散性を上げるために、例えば、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
また、微細化セルロース分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、複合粒子5の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
微細化セルロース1の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基がより好ましい。
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
N-オキシル化合物による酸化反応は、例えば、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、例えば、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nm前後の均一な繊維幅を有するセルロースシングルナノファイバー(CSNF)が得られる。CSNFを複合粒子5の微細化セルロース1の原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
第2工程は、微細化セルロース1の分散液4中において生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で被覆して、生分解性を有する化合物液滴2をエマルションとして安定化させる工程である。
具体的には第1工程で得られた微細化セルロース分散液に生分解性を有する化合物を添加し、さらに生分解性を有する化合物を微細化セルロース分散液中に液滴として分散させ、さらに生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1によって被覆し、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。
また、前述の生分解性を有する化合物としては、後述する重合性モノマーに溶解可能であることが好ましい。
第2工程で用いることのできる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と完全に相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性モノマーは多官能モノマーとも称する。重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等、)を用いることも可能である。
なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、重合性モノマーには予め重合開始剤が含まれていてもよい。一般的な重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤としては、例えばADVN、AIBNが挙げられる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。
第2工程において用いることができる微細化セルロース分散液と生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液の重量比については特に限定されないが、微細化セルロース繊維100質量部に対し、生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液が1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と添加物の混合液が1質量部未満となると複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。また、生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液が50質量部を超えると生分解性を有する化合物液滴2を微細化セルロース1で均一に被覆することが困難となる傾向があり好ましくない。
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、第1工程にて得られた微細化セルロース分散液に対し重合性モノマーを添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm2以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
O/W型エマルション構造において、生分解性を有する化合物液滴2の表層に形成された微細化セルロース層(被覆層)の厚みは特に限定されないが、通常3nm~1000nm程度である。微細化セルロース層の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
第3工程は、生分解性を有する化合物液滴2を固体化して微細化セルロース1で生分解性を有する化合物粒子3が被覆された複合粒子5を得る工程である。より詳しくは、第3工程は、生分解性を有した化合物を含む化合物液滴2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、生分解性を有した化合物を含む化合物液滴2を固体化して生分解性を有する化合物粒子3とすることで、生分解性を有する化合物粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつ生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程である。
第2工程にて微細化セルロース分散液に開始剤を含む生分解性を有する化合物と重合性モノマーを混合したものを添加しエマルション化させる方法を用いた場合、生分解性を有する化合物と重合性モノマーを重合する方法については特に限定されず、用いた重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜選択可能である。前述の生分解性を有する化合物と重合性モノマーを重合する方法としては、例えば懸濁重合法が挙げられる。
上述の工程を経て、生分解性を有する化合物粒子3が微細化セルロース1によって被覆された真球状の複合粒子5を作製することができる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた複合粒子5を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
本実施形態に係る複合粒子5は、複合粒子5の表面の微細化セルロース1に由来した、生体親和性が高く溶媒中でも凝集することない良好な分散安定性を有する、新規な複合粒子である。
また、本実施形態に係る複合粒子5を含む乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られ、粒子同士の凝集がない。このため、乾燥粉体として得られた複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も複合粒子5の表面に結合された微細化セルロース1の被覆層に由来した分散安定性を示す。
また、本実施形態に係る複合粒子5の製造方法によれば、環境への負荷が低く、簡便な方法で提供することが可能な新規な複合粒子5の製造方法を提供することができる。
また、本実施形態に係る複合粒子5によれば、溶媒をほとんど除去することが可能なため、輸送費の削減、腐敗リスクの低減、添加剤としての添加効率の向上、疎水性樹脂への混練効率向上といった効果が期待できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の第一実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
(第1工程:セルロースナノファイバー分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。CSNF分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV-3600」)を用いて分光透過スペクトルの測定を行った結果を図2に示す。図2から明らかなように、CSNF水分散液は高い透明性を示した。また、CSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。さらに、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果を図3に示す。図3から明らかなように、CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
次に、生分解性を有する化合物であるセルロースアセテートブチレート(商品名CAB-551-0.2以下、CABとも称する。)1g、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)9gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させた。CAB/DVB/ADVN混合溶液全量を、CSNF濃度1%のCSNF分散液40gに対し添加したところ、CAB/DVB/ADVN混合溶液とCSNF分散液はそれぞれ透明性の高い状態で2層に分離した。
次に、上記2層分離した状態の混合液における上層の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1~数μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。得られた分散液に対し、遠心力75,000g(gは重力加速度)で5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで繰り返し洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価したところ平均粒径2.1μmであった。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図4および図5に示す。図4から明らかなように、O/W型エマルション液滴を鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルション液滴の形状に由来した、真球状の複合粒子5が無数に形成していることが確認された。さらに図5に示されるように、その表面は幅数nmのCNFによって均一に被覆されていることが確認された。また、ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、複合粒子5の表面は等しく均一に微細化セルロース1によって被覆されていることから、本実施形態の複合粒子5において、複合粒子5内部のモノマー(化合物粒子3)と微細化セルロース1であるCNFは結合している可能性があり、化合物粒子3と微細化セルロース1とが不可分の状態にあることが示された。
複合粒子5の乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、攪拌子で再分散させたところ、容易に再分散し、凝集も見られなかった。また、粒度分布計を用いて粒径を評価したところ、平均粒径は乾燥前と同様に2.1μmとなり、粒度分布計のデータにおいても凝集を示すようなシグナルは存在しなかった。
以上のことから、複合粒子5は、その表面がCNFで被覆されているにもかかわらず、乾燥によって膜化することなく粉体として得られ、かつ再分散性も良好であることが示された。
実施例1においてCBAの代わりにポリブチレンサクシネート(商品名BioPBS、三菱ケミカル、以下、PBSとも称する。)を、DVBの代わりにジエチレングリコールジアクリレート(商品名FA-222A、日立化成、以下、FA-222Aとも称する。)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例2に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例3>
実施例1においてTEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた特許文献2に従いカルボキシメチル化(以下、CM化とも称する。)処理を行って得られたCM化CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例3に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例4>
実施例1においてTEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた非特許文献1に従いリン酸エステル化処理を行って得られたリン酸エステル化CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例4に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
生分解性を有する化合物としてポリ乳酸(商品名テラマックTE4000、以下、PLAと称する。)6gをジクロロメタン(沸点:39.6℃)4gに溶解させた。ポリ乳酸/ジクロロメタン混合溶液全量を、実施例1にて使用したCSNF分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液に対して実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、ジクロロメタンを揮発させた。8時間処理後に上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、実施例5に係る乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
<実施例6>
実施例5においてポリ乳酸の代わりにポリカプロラクトン(商品名TONE、UCC、以下、PCLとも称する。)を、ジクロロメタンの代わりにクロロホルムをそれぞれ用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、実施例6に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
生分解性を有する化合物としてステアリン酸(融点:69.6℃)10gを、実施例1にて使用したCSNF分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液を、ウォーターバスを用いて80℃に加温し、ステアリン酸を融解させた後、実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、室温まで冷却させた。
最後に、上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、実施例7に係る乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
<実施例8>
実施例7においてステアリン酸の代わりに、パラフィンワックス(商品名パラフィンワックス135°F、融点:57.2℃、山桂産業、以下、パラフィンとも称する。)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、実施例8に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
実施例1においてCSNF分散液の代わりに純水を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例1に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例2>
実施例1においてCSNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例2に係る複合粒子の作製を試みた。
本発明の複合粒子ではなく、市販のポリ乳酸微粒子(商品名トレパールPLA、東レ)を1%濃度で分散させた分散液を用いた以外実施例1と同様の条件で、比較例3に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例4>
実施例5においてジクロロメタンの代わりにキシレン(沸点144℃)を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、比較例4に係る複合粒子の作製を試みた。
実施例7においてステアリン酸の代わりにオレイン酸(融点:13.4℃)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、比較例5に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例6>
実施例7においてステアリン酸の代わりにアミド系ワックス(商品名ITOHWAX-J630、融点:135℃、山桂産業、以下ITOWAXと称する。)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、比較例6に係る複合粒子の作製を試みた。
表1において、第2工程の可否については、以下のように判定した。
○:O/W型エマルションの形成が可能
×:O/W型エマルションの形成が不可能
また、第3工程の可否については、以下のように判定した。
○:第3工程のエマルション鋳型とした真球状の粒子が得られた
×:上記粒子は得られなかった
また、再分散性に関しては、以下のように判定した。
○:得られた複合粒子が溶媒(水)に、凝集することなく分散した
×:分散せずに凝集した
〇:試験開始から28日後の生分解度が80%以上であった。
×:試験開始から28日後の生分解度が80%未満であった。
表1の実施例1~8の評価結果において明らかなように、微細化セルロース1の種類(TEMPO酸化CNF、CM化CNF、リン酸エステル化CNF)、または生分解性を有する化合物の種類や重合性モノマーの種類に拠らず、生分解性を有する複合粒子5を作製可能であり、本発明における課題解決に奏功することが確認された。
一方、比較例1においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー層とCNF分散液層が2層分離したままの状態となり、O/W型エマルションの作製自体が不可能であった。
また、比較例4においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。しかし、第3工程においてキシレンを除去するにあたり、CNF分散液に水を使用しているためにキシレンの沸点以上にすることができないため、生分解性を有する化合物液滴2を固体化することができず、複合粒子を得ることができなかった。
また、比較例6においては、第2工程においてCNF分散液に使用している水の沸点よりも高温にすることができず、ITOWAXを融解させることができないため、O/W型エマルションの形成することができなかった。
2 生分解性を有する化合物液滴(重合性モノマー液滴)
3 生分解性を有する化合物粒子
4 分散液
5 複合粒子
Claims (4)
- 少なくとも一種類の生分解性を有した化合物を含む粒子と、前記生分解性を有した化合物を含む粒子の表面の少なくとも一部を覆う微細化セルロースとを有し、前記生分解性を有した化合物を含む粒子と前記微細化セルロースとが不可分の状態にあることを特徴とする複合粒子。
- セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロースの分散液を得る第1工程と、
前記分散液中において生分解性を有した化合物を含む液滴の表面の少なくとも一部を前記微細化セルロースで覆い、前記生分解性を有した化合物を含む液滴をエマルションとして安定化させる第2工程と、
前記生分解性を有した化合物を含む液滴の表面の少なくとも一部が前記微細化セルロースで覆われた状態で、前記生分解性を有した化合物を含む液滴を固体化してポリマー粒子とすることで、前記ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を前記微細化セルロースで覆い、かつ前記ポリマー粒子と前記微細化セルロースとを不可分の状態にする第3工程と、を有することを特徴とする複合粒子の製造方法。 - 前記第2工程では、
前記微細化セルロースの分散液に開始剤を含む前記生分解性を有する化合物と重合性モノマーとを混合したものを添加しエマルション化させる工程、前記生分解性を有する化合物を前記微細化セルロースの分散液への相溶性が低い溶媒で溶解したものを前記微細化セルロースの分散液に添加しエマルション化させる工程、および、前記微細化セルロースの分散液に常温にて固体である前記生分解性を有する化合物を添加し前記生分解性を有する化合物の融点以上に加熱し融解させエマルション化させる工程のうちいずれかの工程を用いることを特徴とする請求項2に記載の複合粒子の製造方法。 - 請求項1に記載の複合粒子を含み、固形分率が80%以上であることを特徴とする乾燥粉体。
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