JP7088061B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料ガス欠乏時におけるアノード触媒の劣化を抑制する燃料電池システムに関する。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(酸素ガス)の反応ガスを供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。この燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜電極接合体をセパレータによって挟持した単セルを構成単位とし、この単セルを複数積層してなるセルスタックを備えている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子電解質型燃料電池において、水素が供給されたアノード(燃料極)では下記(1)式の反応が進行する。
→ 2H + 2e ・・・(1)
上記(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。他方で、上記(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、電気浸透により固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは下記(2)式の反応が進行する。
2H + 1/2O + 2e → HO ・・・(2)
従って、電池全体では下記(3)式に示す化学反応が進行し、起電力が生じて外部負荷に対して電気的仕事がなされる。
+ 1/2O → HO ・・・(3)
このような構成の燃料電池においては、燃料電池の作動中に、供給される燃料ガス(水素)が欠乏した場合、アノードの触媒担体であるカーボン担体の腐食によりプロトンを発生させる反応が進行することがある。このようなカーボン担体の腐食は、カーボン担体に担持されている触媒金属の溶出をも引き起こし、結果として燃料電池の性能低下を低下させてしまう。
このような問題を抑制するために、燃料ガス欠乏時に、電池反応に必要となるプロトン(H)を補うために、アノードにおいて、生成水の電気分解反応を発生させることが提案されている。
具体的には、例えば、特許文献1~3では、アノードに水電解触媒を混合し、さらにはアノードに水を移動させ、燃料欠乏時において、水電解触媒によって生成水の電気分解反応を促進し、カーボン担体の劣化を抑制することが提案されている。
特開2007-265921号公報 特開2007-265929号公報 特開2007-305388号公報
上記のように、燃料欠乏時における触媒層の劣化を抑制するために触媒層に水電解触媒を添加することが行われていたが、氷点下及び低温時(例えば0℃~15℃)においては水電解触媒の反応活性は低いため、アノード触媒層の劣化を抑制しにくいという問題がある。
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、低温時においても燃料欠乏によるアノード触媒層におけるカーボン担体の劣化を抑制することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明は、以下の手段により上記目的を達成するものである。
<1>水電解触媒及びカーボン担体を含むアノード触媒層を備えた燃料電池セル、並びに
制御部
を備えている燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記燃料電池セルが燃料欠乏状態にあり、かつ前記燃料電池セルの温度が閾値より低い場合、前記燃料電池セルの温度を閾値より高温に上昇させる、燃料電池システム。
本発明によれば、燃料電池セルが燃料欠乏状態にあり、かつ燃料電池セルの温度が低く、それによって水電解触媒の活性が低いと判定された場合に、燃料電池セルの温度を昇温させて、水電解触媒の活性を向上させることによって、アノードの劣化を防ぐことができる。
燃料電池セルの断面図である。 本発明の燃料電池システムの概略図である。 燃料が欠乏している燃料電池セルの発電電圧を示す図である。 水電解触媒を含むアノード触媒の温度とアノード電位の関係を示す図である。 カソードストイキ比とセル電圧の関係を示す図である。 本発明の燃料電池システムの作用を説明するフローチャートである。
本発明の燃料電池システムは、
水電解触媒及びカーボン担体を含むアノード触媒層を備えた燃料電池セル、並びに
制御部
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池セルが燃料欠乏状態にあり、かつ前記燃料電池セルの温度が閾値より低い場合、前記燃料電池セルの温度を閾値より高温に上昇させる。
燃料電池では、種々の運転状況においてアノードの入り口や出口が閉塞してしまう不具合が発生することがある。一例として、氷点下始動時にアノードの出口部分が凍結し、閉塞するような状態に陥る場合がある。このような場合、電極面内に燃料水素が供給されず、燃料欠乏状態となる。この燃料欠乏状態では、下式(4)
C + 2HO → CO + 4H + 4e ・・・(4)
で表される反応が進行し、アノードにおいて触媒金属を担持しているカーボン担体や拡散層に含まれるカーボンが劣化する。
そこで、燃料欠乏対策として、水分解触媒をアノードに配置することが行われていた。このように水電解触媒をアノードに配置することにより、アノードが燃料欠乏状態に陥っても、下式(5)
2HO → O + 4H + 4e ・・・(5)
で表される反応を生じさせることができ、上記式(4)で表される反応を抑制し、アノードの構成材料であるカーボン担体等の劣化を抑制することができる。
しかしながら、この水電解触媒は低温においては活性が低く、従って低温において燃料欠乏が発生した際には上記式(5)で表される反応を進行させることができず、上記式(4)で表される反応が進行し、アノードが劣化してしまうことになる。
そこで本発明においては、燃料電池セルが燃料欠乏状態にあり、かつ燃料電池セルの温度が閾値より低い場合、燃料電池セルの温度を閾値より高温に上昇させる。
燃料電池セルが燃料欠乏状態にある場合には、水電解触媒により上記(5)で表される反応を進行させることが必要であり、そのためには水電解触媒が活性を示すことが必要である。燃料電池セルの温度が、水電解触媒が活性を示すことができる温度よりも低い場合、燃料電池セルの温度を上昇させ、水電解触媒の活性を発揮させ、上記(5)で表される反応を進行させることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<燃料電池セルの構成>
図1に、本発明の燃料電池システムに含まれる燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの基本構造を示す。燃料電池セル10は、固体高分子材料で形成されたプロトン伝導性の電解質膜11の両面に触媒層12を形成し、さらに触媒層12の両面にガス拡散層13を形成し、それらを一体化してなる膜電極接合体14をセパレータ15によって挟持して構成されている。
セパレータ15は、ステンレス等の導電性材料から構成される。セパレータ15のガス拡散層13側の面には、燃料ガスが流動するための燃料ガス流路、又は酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス流路が形成されている。セパレータ15の厚さは、例えば、0.3mm程度である。
ガス拡散層13は、燃料ガス又は酸化剤ガスを拡散させるための層であり、カーボンペーパ等の導電性材料から構成される。ガス拡散層13の層厚は、250μm程度である。
触媒層12は、水素のプロトン化を促進する又はプロトンと酸素との反応を促進するためのPt(白金)、Pt合金等の触媒金属を含有する。また、一方の触媒層12(アノード触媒層)は、水の電気分解を促進するための水電解触媒を含有する。水電解触媒としては、Pt、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Au(金)、Ni(ニッケル)、Ag等の金属、Pt-Ru、Pt-Ir等の合金、RuO、IrO等の金属酸化物等を用いることができる。触媒層12は、例えば、カーボン粒子等のカーボン担体に担持された上記触媒金属に上記水電解触媒が添加され、混錬された構造を有する。
電解質膜11は、例えば、プロトン伝導性を有するパーフルオロスルフォン酸型ポリマーであるナフィオン(登録商標)等の固体高分子電解質からなる。電解質膜11の膜厚は、例えば、10μm~50μm程度である。
〈燃料電池システムの構成〉
図2は、本発明の一実施例としての燃料電池システム100の概略構成を示す説明図である。
図2に示す燃料電池システム100は、燃料電池20、及び制御部40を備えている。
燃料電池20は、燃料電池スタック31、ヒータ32、温度センサ33、及び電圧センサ34を備えている。燃料電池スタック31は、図1に示す燃料電池セル10が複数積層されて締結された構造を有する。ヒータ32は、燃料電池スタック31を覆っており、制御部40の指示に従って、燃料電池スタック31の温度を制御する。
電圧センサ34は、各燃料電池セル10の発電電圧を検出し、その検出結果を制御部40に与える。温度センサ33は、燃料電池セルから排出される冷却水の温度を検出し、その検出結果を制御部40に与える。制御部40は、この冷却水の温度測定結果に基づき、燃料電池セル10の温度を判定する。
制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部40は、温度センサ33及び電圧センサ34の検出結果に基づいて、ヒータ32を含む燃料電池システムの各部を制御する。
〈運転制御処理〉
続いて、制御部40による燃料電池システム100の制御について説明する。まず、制御部40は、燃料電池20に燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給されるように、図示していない燃料ガス供給手段及び酸化剤ガス供給手段を制御する。それにより、燃料電池20において発電が行われる。次に、制御部40は、燃料電池20において燃料が欠乏していないか否かを判定する。ここで、燃料が欠乏している燃料電池セル10においては、発電電圧がマイナスになる。図3を参照して詳細を説明する。
図3は、燃料が欠乏している燃料電池セル10の発電電圧を示す図である。図3の縦軸は燃料電池セル10の発電電圧を示し、図3の横軸は経過時間を示す。図3に示すように、燃料が欠乏すると急激に発電電圧が低下する。その後、発電電圧の低下幅は小さくなる。これは、水電解触媒を介して上記式(5)の反応が起こり、プロトンが継続して電解質膜3に供給されるからである。以上のことから、制御部40は、いずれかの燃料電池セル10の発電電圧が0V以下である場合に、その燃料電池セル10において燃料が欠乏していると判定することができる。
本発明の具体的な態様においては、燃料が欠乏していると判定された場合、制御部40は、燃料電池セル10の温度が閾値より低いか否かを判定する。この温度は、制御部40が、燃料電池セル10から排出される冷却水の温度を検出する温度センサ33の検出結果に基づいて判定する。
ここで、燃料電池セル10の温度の閾値について説明する。実車両セルを用い、アノード電位変動試験(0V~上限電位)を、低温における燃料欠乏を模擬する30℃、窒素パージにおいて行ったところ、電位変動試験1200サイクルで出力低下5%以下という耐久要件を満たすアノード上限電位は1.65Vであった。そしてこれ以上高い電位負荷の頻度が多くなると、電極におけるカーボンの酸化劣化が促進され、出力が大幅に低下し、車両走行に不具合が懸念される。
次に、水電解触媒を含むアノード触媒の温度とアノード電位の関係を説明する。図4に、水電解触媒としてIrRuをメタル目付0.01mg/cmで添加したアノード触媒の電流ホールド試験における温度-アノード電位の関係を示す。水電解触媒は一般に、高温ほど触媒活性が高く、アノード電位を低減することができる。図4は、水電解触媒としてIrRuをメタル目付0.01mg/cmで用いた場合、1.65Vのアノード上限電位以下とするには、セル温度は20℃以下とすることが必要であることを示している。このアノード電位を1.65V以下とする温度を閾値(T1)とする。そしてこの閾値は、アノード触媒層に含有する触媒種、触媒量によってあらかじめ実験的に求めることができる。例えば、水電解触媒としてIrOを用いた場合、この閾値は53℃であった。
このように、セル温度―アノード電位の関係から、アノード電位が1.65V以下となるセル温度を算出し、閾値(T1)とする。T1以下のセル温度では、水電解触媒活性が十分ではなく、アノード電位は1.65V以上に上昇し、カーボン担体の酸化が促進され、電池性能(出力)が大幅に低下する懸念がある。そこで、燃料電池セル10の温度が閾値より低いと判定された場合、制御部40は燃料電池セル10の温度を上昇させ、水電解触媒の活性を高める。
燃料電池セル10の温度を上昇させるには、例えば制御部40からの指示によりヒータ32を作動させ、燃料電池スタック31を加熱する。また、カソードのストイキ比を下げることによっても、燃料電池セル10の温度を上昇させることができる。
このカソードストイキ比を下げることにより燃料電池セルの温度を上昇させる方法について説明する。図5に示すように、カソードのストイキ比を下げる、すなわち空気欠乏状態とすると、濃度過電圧が上昇し、IV性能低下に伴いセル電圧は低下する。燃料電池では、発電に使われない過電圧分はすべて熱として放熱されるため、上昇した過電圧分の放熱により、セル温度は上昇する。図5に示す例では、1.0A/cm電流掃引時、カソードストイキ比を2.5から0.8に下げた場合の1秒間、セル1枚あたりの発熱量を計算すると、
ストイキ比2.5のとき:1.0A/cm×250cm×0.3V=75J
ストイキ比0.8のとき:1.0A/cm×250cm×0.5V=125J
従って、ストイキ比を下げたときの発熱効果は、
125/75=1.67(倍)
となり、約1.7倍速くセルを昇温させることが可能になる。
図6は、燃料電池20の発電中における制御部40による燃料電池システム100の制御の一例を示すフローチャートである。制御部40は、所定の周期で図6のフローチャートを実行する。図6に示すように、まず制御部60は、いずれかの燃料電池セル10が燃料欠乏状態にあるか否かを判定する(ステップS1)。この場合、制御部40は、電圧センサ34の検出結果に基づいて、いずれかの燃料電池セル10の発電電圧が0V以下であるか否かによって判定する。
ステップS1においていずれかの燃料電池セル10において燃料欠乏状態にあると判定された場合、制御部40は、その燃料電池セル10から排出される冷却水の温度が、あらかじめ算出しておいた閾値より低いかを判定する(ステップS2)。この場合、制御部40は、冷却水の温度を検出する温度センサ33の検出結果に基づいて判定する。ステップS2において冷却水の温度が閾値より低いと判定された場合、制御部40は、燃料電池セルの温度が閾値よりも低いと判断し、燃料電池セルの温度を上昇させる(ステップS3)。
次に、制御部40は、再び燃料電池セル10から排出される冷却水の温度が、あらかじめ算出しておいた閾値より低いかを判定する(ステップS4)。ステップS4において冷却水の温度が閾値よりも低いと判定された場合、制御部40は、ステップS3の動作から繰り返す。
なお、ステップS1においていずれかの燃料電池セル10が燃料欠乏状態にあると判定されなかった場合、ステップS2において冷却水の温度が閾値より低いと判定されなかった場合、及びステップS4において冷却水の温度が閾値よりも高いと判定された場合、制御部40は、動作を終了する。それにより、燃料電池20は、発電を継続する。ステップS4において冷却水の温度が閾値よりも高いと判定されなかった場合、制御部40は、ステップS3の動作から繰り返す。
このように、図6のフローチャートに従った制御によって、いずれかの燃料電池セル10において燃料が欠乏しかつ温度が低い場合であっても、水分解触媒の活性を維持しつつ、水の電気分解反応を継続させることができる。それにより、燃料極2の劣化を抑制することができ、燃料電池の性能低下を抑制することができる。
10 単セル
11 電解質膜
12 触媒層
13 ガス拡散層
14 膜電極接合体
15 セパレータ
20 燃料電池
31 セルスタック
32 ヒータ
33 温度センサ
34 電圧センサ
40 制御部

Claims (1)

  1. 水電解触媒及びカーボン担体を含むアノード触媒層を備えた燃料電池セル、並びに
    制御部
    を備えている燃料電池システムであって、
    前記制御部は、前記燃料電池セルが燃料欠乏状態にあり、かつ前記燃料電池セルの温度が、0℃以上であってアノード電位が1.65V以下となる温度である閾値より低い場合、前記燃料電池セルの温度を閾値より高温に上昇させる、燃料電池システム。
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