JP7088511B2 - フィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物及びその製造方法 - Google Patents
フィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
該コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム又はコンポジットゲルから選択され、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液よりコンポジット成形組成物を成形するステップ、
を含む製造方法で製造されるコンポジット成形組成物を提供する。
前記ステップ(i)、(ii)に加えて、さらに、
(iii) 前記(ii)で得られたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸し、乾燥するステップ、
を含む製造方法で製造される延伸コンポジット成形組成物を提供する。
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、混合物を調製するステップ、
(ii) 前記混合物に圧力を負荷し、加熱するステップ、
を含む製造方法で製造されるコンポジットモールド成形体であるコンポジット成形組成物を提供する。
(i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
(ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
から選択される場合がある。
[式I中、
(A)nモチーフは2~20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ、
(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が40%以上であり、
REPは2~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、
mは2~300の整数であり、
複数存在する(A)nモチーフは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよく、
複数存在するREPは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい]
コンポジット成形組成物である場合がある。
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液を紡糸又は延伸することにより前記コンポジット成形組成物を製造するステップ、
を含む製造方法を提供する。
(i) 粉状のフィブロイン由来タンパク質と、粉状のβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、混合体を調製するステップ、
(ii) 前記混合体に圧力を負荷し、加熱するステップ、
を含む製造方法を提供する。
(i) 前記の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸するステップ、
及び、
(ii) 延伸されたコンポジット成形組成物を乾燥させるステップ、
を含む製造方法を提供する。
(i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
(ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
から選択される場合がある。
[式I中、
(A)nモチーフは2~20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ、
(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が40%以上であり、
REPは2~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、
mは2~300の整数であり、
複数存在する(A)nモチーフは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよく、
複数存在するREPは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい]。
1-1.非延伸コンポジット成形組成物
本発明の実施形態の一つは、フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを含む組成物であり、特に、前記組成物は、コンポジット成形組成物であって、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合され、成形されている組成物である非延伸コンポジット成形組成物である。
フィブロインは、昆虫とクモ類等のシルクを構成し、その70%を占める繊維状のタンパク質の総称として知られる。本明細書において、「フィブロイン」とは、昆虫とクモ類の天然のシルク、及び、これらの天然のシルクの組成及び特性を模倣又は指向した人工的に製造される人工的なシルクも含む。本明細書において、「フィブロイン」は、下記のスピドロインI及びII等のスピドロインタンパク質も「フィブロイン」に含まれるが、これらのクモ糸由来のフィブロインのみならず、カイコの絹糸に由来するフィブロイン等も含まれる。天然のフィブロイン以外でも、フィブロインは、遺伝子組換え法により、例えば、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列を製造し、これを発現ベクターに組み込んで、組換え発現ベクターを公知の方法で作製し、細菌、酵母、哺乳動物細胞、植物、昆虫細胞等の適当な宿主に導入して形質転換体を作製し、これらを単離精製して利用することができる(国際公開公報WO2012/165476等)。また、フィブロインの一部は、商業的に利用可能であり、例えば、これらを入手して使用できる。
配列番号1 Araneus diadematusのアミノ酸配列
配列番号2 Araneus diadematusのアミノ酸配列
配列番号3 Araneus diadematusのアミノ酸配列
配列番号4 recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1のアミノ酸配列
配列番号5 配列番号4よりHisタグのアミノ酸配列を削除した配列
配列番号6 Met-PRT313: Met-CRY1_L_A5のアミノ酸配列
配列番号7 Met-PRT399: Met-CRY1_L_A5_gizaのアミノ酸配列
配列番号8 Met-PRT380: Met-CRY1_L_A5_QQQのアミノ酸配列
配列番号9 Met-PRT410: Met-CRY1_L_A5_giza_QQQのアミノ酸配列
配列番号10 Met-PRT468: Met-CRY1_L_A7_giza_QQQのアミノ酸配列
配列番号11 Met-PRT799: Met-CRY1_200_A5_giza_QQQ_WHis6のアミノ酸配列
配列番号12 PRT313のアミノ酸配列
配列番号13 PRT399のアミノ酸配列
配列番号14 PRT380のアミノ酸配列
配列番号15 PRT410のアミノ酸配列
配列番号16 PRT468のアミノ酸配列
配列番号17 PRT799のアミノ酸配列
配列番号18 ADF3Kai_noNRのアミノ酸配列
配列番号19 配列番号18のアミノ酸配列よりHisタグを除いたアミノ酸配列
配列番号20 Hisタグ及びスタートコドンのアミノ酸配列
配列番号21 Hisタグのアミノ酸配列
本実施形態に係るタンパク質は、例えば、当該タンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
本発明のコンポジット成形組成物において、上記実施形態は、前記βシート構造を有するポリペプチド又はポリアミノ酸を配合する。この場合、ポリアミノ酸の例としてはポリアラニンが挙げられる。
本明細書において、「βシート構造を有するポリペプチド」とは、その二次元構造中で、βシート構造を有する限り任意のポリペプチドが含まれ、天然のポリペプチド及び人工的に製造されるポリペプチドが含まれ、好ましくは、人工的に製造されるポリペプチドをいい、より好ましくは下記のポリアミノ酸の配列を含むポリペプチドをいう。
本発明のもう1 つの実施形態は、延伸コンポジット成形組成物である。延伸コンポジット組成物は、前記コンポジット成形組成物の製造工程に、さらに延伸を行う工程を含めることにより製造され、非延伸のコンポジット成形組成物と比較して、より優れた物理特性をもたらすことができる。
該コンポジット成形組成物は、繊維又はフィルムから選択され、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、β シート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とをドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液よりコンポジット成形組成物を成形するステップ、
さらに、
(iii) 前記(ii)で得られたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸し、乾燥するステップ、
を含む製造方法で製造される延伸コンポジット成形組成物である。
2-1.非延伸コンポジット成形組成物の製造方法
本発明のもう1つの実施形態は、前記コンポジット成形組成物の製造方法である。より具体的には、本発明は、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された、繊維、フィルム、ゲルから選択されるコンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液を紡糸又は延伸することにより前記コンポジット成形組成物を製造するステップ、
を含む製造方法である。
本発明のもう1 つの実施形態は、本発明は、延伸コンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) 前記の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸するステップ、
及び、
(ii) 延伸されたコンポジッット成形組成物を乾燥させるステップ、
を含む製造方法である。
本発明のもう1つの好ましい実施形態は、フィブロイン等のポリペプチドからなるコンポジット成形組成物の引張強度、靭性及び伸展性等から選択される少なくとも1つの物理的特性を向上させる方法である。コンポジット成形組成物の例としては、ポリペプチドからなるコンポジットフィルム、コンポジット繊維、コンポジットゲル、コンポジット多孔質体、コンポジットパーティクル及びコンポジットモールド成形体などが挙げられる。
1.天然のカイコ・シルクフィブロインタンパク質にポリアラニンを配合したコンポジット成形フィルムの製造
以下に記載の方法で、polyAla(L-polyAla又はT-polyAla)を合成し、天然のカイコ・フィブロインタンパク質(Bombix mori)と下記の方法で製造したポリアラニン(L-polyAlaを5 wt%若しくは10 wt%又はT-polyAlaを1 wt%若しくは2.5 wt%)とを溶解したドープ液を調製し、該ドープ液よりキャスティング法によりコンポジット成形フィルムを製造し、張力変形試験を行い、物理的特性の変化を評価した。
(1) テレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)の合成
(i) ロイシンイニシエータ(Leu-initiator)を使用した合成
(a) ロイシンイニシエータの合成
ロイシンイニシエータ(Leu-initiator)を使用したテレケリック型ポリアラニンの合成は、パパインを使用する化学酵素合成法で製造した。具体的には、L-ロイシンエチルエステル塩酸塩(6.07g)、トリエチルアミン(9.2 mL)及びジエチルエーテル(100mL)を0℃、窒素環境下のフラスコに添加し、この溶液に塩化スクシニル(1.7 mL)のジエチエルエーテル溶液(50 mL)を30分間で滴下し、0℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで温めた後、水を加え、水層がジエチルエーテルで抽出された。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。粗生成物を真空乾燥後、ヘキサン/酢酸エチル=5 : 1(v/v)で再結晶し、ロイシンイニシエータ(Leu-initiator)の黄色針状結晶3.57g(収率60%)を得た。
アラニンエチルエステル塩酸塩(0.645 g)、上記ロイシンイニシエータ(0.080 g)、リン酸緩衝液(2mL、1M、pH 8.0)及びエタノール(1 mL)がガラスチューブに添加され、全ての基質が溶解するまで40℃で撹拌された。この溶液に、パパイン(0.300 g)のリン酸緩衝液(2.2 mL)溶液を一時に注いだ。アラニン及びパパインの最終濃度は、各々0.7 M及び50 mg/mLであった。この混合物を40℃で6時間撹拌した。撹拌後の混合物を室温まで冷却し、遠心分離(7000 rpm、4℃、10分間)で沈殿させた。粗沈殿物を脱イオン水で2回洗浄し、凍結乾燥し、白色固体のオリゴペプチド0.071 gを得た。
(a) ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータの合成
ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータを使用した合成は、200 mLのフラスコに、アラニンエチルエステル塩酸塩(4.76 g)、トリエチルアミン(9.2 mL)及びクロロホルム(100 mL)を加え、この混合溶液に、塩化スクシニル(1.7 mL)のクロロホルム(50 mL)溶液を、0℃、窒素雰囲気下滴下した。この混合液を0℃、2時間撹拌した後、水を添加し反応を停止させた。この混合物を水、1 M炭酸水素ナトリウム水溶液、塩水(brine)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。粗生成物が、ヘキサン/酢酸エチルで再結晶され、白色の針状結晶3.58 gを得た(収率76%)。
赤外吸収スペクトル及びNMRスペクトル測定並びに燃焼元素分析の結果は以下のとおりである。
Infrared(IR) (neat): ν = 3301, 2991, 1729, 1639, 1545, 1356, 1238, 1204,1168, 1020 cm-1. 1H NMR (500 MHz, CDCl3, 25 °C, ppm): δ6.66(s, 2H), 4.53 (m, 2H) 4.20 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 2.57 (m, 4H), 1.40 (d,J = 7.1 Hz, 6H), 1.28 (t, J = 7.1 Hz, 6H). 13C NMR (125 MHz,CDCl3, 25 °C): δ 173.16, 171.73, 61.37, 48.18, 31.55, 17.97, 14.04.Anal. Calcd for C14H24N2O6: C, 53.15; H, 7.65; N, 8.86. Found: C, 53.08; H, 7.61; N, 8.85.
10 mLのガラスチューブにアラニンエチルエステル塩酸塩(0.922 g)、上記ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータ(0.190 g)、リン酸緩衝液(2.0 mL、1 M、pH 8.0)及びテトラヒドロフラン (1.0 mL)を加え、全ての基質が完全に溶解するまで40℃で撹拌した。パパイン(0.300 g)のリン酸緩衝液溶液(2.0 mL)を一時に注いだ。アラニンエチルエステルとパパインの最終濃度は、各々1 M及び50 mg/mLであった。この混合液を40℃で6時間撹拌した。撹拌後の混合物を室温まで冷却後、遠心分離(7000 rpm、4℃、10分間)で沈殿させた。粗生成物を脱イオン水及びメタノールで2回洗浄後、凍結乾燥し、白色粉末0.221 g(61%)を得た。
ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータのない条件以外、テレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)と同様の方法を使用してライナー型(直鎖状)ポリアラニン(L-polyAla)を合成した。
製造されたL-polyAla及びT-polyAlaの平均分子量をNMR(Varian NMR System 500、Varian Medical Systems, Palo Alto, CA、米国)で測定し、算出したところ、L-polyAlaの平均重合度が5.8、平均分子量は531であり、T-polyAlaの平均重合度が5.9、平均分子量は593であった。
改変クモ糸フィブロインタンパク質として、遺伝子組換えクモ糸シルクタンパク質(recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1;配列番号4、及び、ADF3Kai_noNR:配列番号:18)を公知の方法(特開2014-129639号公報)に従って製造し、コンポジット成形フィルムの製造に使用した。
上記のコンポジットフィルムに対して、上記天然フィブロインタンパク質のコンポジットフィルムと同様の方法で、張力変形試験を実施した。
上記のシルク(天然フィブロインタンパク質又は改変フィブロインタンパク質)にpolyAla(L-polyAla又はT-polyAla)を配合させたコンポジットフィルムを使用して、以下の方法により延伸を負荷して製造した延伸コンポジットフィルムに対して張力変形試験を行った。
100%延伸された、シルクのみフィルム及びpolyAlaを含むフィルムの広角X線回折(WAXD)は、BL45XU型ビームライン(SPring-8、播磨)で実施された。
(1)天然カイコ・フィブロインタンパク質のコンポジットフィルムに対する張力変形試験結果
天然カイコ・フィブロインタンパク質にライナー型ポリアラニン(L-polyAla)を5 wt%若しくは10 wt%又はテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)を1 wt%若しくは2.5 wt%配合して製造したフィルムの非延伸時の物理的特性の結果をそれぞれ表6、7及び図5に示した。
カイコシルクフィブロイン(Bombyx. mori fibroin)にL-polyAla 5 wt%又はT-polyAla 1wt%を配合したコンポジットフィルム(表3、5)、及び改変クモ糸タンパク質にL-polyAla 10 wt%又はT-polyAla 1wt%を配合したコンポジットフィルム(表4、6)について、張力変形測定を行い、その物理特性を比較した。
テレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)を5% 配合して製造したコンポジットフィルムの製造工程で、延伸率0、25、50、75又は100%の延伸をさらに負荷して製造したコンポジットフィルムに対して張力変形試験を行った結果を図6 に示した。延伸操作を行うことにより、テレケリック型ポリアラニンを添加しないコンポジットフィルムと比較した引張強度、ひずみ及び靭性は、より明確な増加を示した(図6)。
L-polyAla又はT-polyAlaを0、1、2.5、5又は10 wt%の割合で配合させたコンポジットフィルムを延伸率100%で延伸して製造した延伸コンポジットフィルムのWAXDの結果を、それぞれ図7 に示した。図7aはL-poyAlaを添加した場合、図7bは、T-polyAlaを添加した場合のWAXDの変化を表す。
T-、L-polyAも同様にβシート結晶に基づくピークを示すが、(210)面の面間隔dは0.43 nmであり、シルクのそれと異なっている。
1.実験材料及び方法
以下に記載する試薬以外の試薬及び溶媒は、和光純薬工業株式会社(大阪)より購入し、使用した。タンパク質粉末(配列番号17)は、下記の方法により取得した。ドープ液を調製する前に、タンパク質粉末を真空下、100℃で2時間乾燥した。ドープ液の溶媒としてギ酸を用いた。1型卓上型の紡糸装置(Spiber株式会社、山形)で、同装置のマニュアルに従って紡糸した。紡糸された繊維の直径、引張応力、引張歪み(ひずみ)、靭性が確認された。直径は、ニコン社製(東京)ECLIPSE LV100NDで測定した。応力と歪率は、INSTRON(東京)で測定し、評価した。靭性は、ブルーヒル・ソフトウェア(INSTRON、東京)を使用して計算した。
(クモ糸タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号17で示されるアミノ酸配列を有するクモ糸タンパク質(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris-HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris-HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収した。回収した凝集タンパク質から凍結乾燥機で水分を除き、PRT799の凍結乾燥粉末を得た。
(1)ドープ液の調製(L-polyAla及びT-polyAla非添加)
上記のタンパク質粉末を使用した。正確に3.6gの乾燥した粉末を秤量し、透明のバイアルに採取した。ギ酸11.1gをバイアルに添加し、40℃で終夜撹拌し、透明の深黄色の液体を得た。このドープ液においてタンパク質濃度は24 wt%である。
polyAla (L-polyAla又はT-polyAla)の0.036g (上記タンパク質粉末に対して1 wt%)をバイアルに採取し、ギ酸(11.364g)を添加し、40℃で1~2時間撹拌して溶解した。透明の液体を得た後、タンパク質粉末(3.6g)を添加した。タンパク質粉末が完全に溶解するまで、40℃で激しく撹拌した(通常8~12時間)。このドープ液においてタンパク質濃度は、24wt%である。
上記の卓上型紡糸装置を用い、紡糸した(図4参照)。その条件を表9と表10に示した。バス1には100%エタノール、バス2及び3には100%メタノール、バス4には水(水道水)を入れ、バス5、6は空の状態で紡糸した。紡糸した繊維は、バス4のみで延伸された。
バスドラフトにおける射出速度に対する引張速度の割合が0.6又は0.5であり、各引張速度割合で洗浄水バス中の引張速度が7.0倍又は7.8倍で紡糸した場合における繊維の直径、引張強度、ひずみ、靭性、引張応力の標準偏差及び引張歪(ひずみ)の標準偏差をそれぞれ表11及び12に示した。
上記で認められた結果は、天然フィブロインタンパク質、又は、人工的に改変され製造されたフィブロイン由来タンパク質のいずれに対しても、βシート構造を有するL-poyAla又はT-polyAlaなどのポリペプチド又はポリアミノ酸を配合させて、コンポジット成形組成物を作成することにより、引張張力、最大引張限界率及び靭性等の物理的特性を向上させることができることを示すものである。また、このコンポジット成形組成物の物理特性の向上は、使用するフィブロイン由来タンパク質の種類によって、最適な特性をもたらすには、βシート構造を有するポリペプチド又はポリアミノ酸の種類が異なることを示すものであった。さらに、引張張力、最大引張限界率及び靭性等の各物理的特性に対して、それぞれ至適な特性をもたらす配合量が相違することを示した。
Claims (38)
- フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリアミノ酸とを含み、前記ポリアミノ酸が1種又は2~5種のアミノ酸の共重合体からなることを特徴とする、組成物。
- 前記ポリアミノ酸の重合度が、5~50の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
- 前記ポリアミノ酸の配合割合が、1~10.0%の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記組成物がコンポジット成形組成物であって、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリアミノ酸が配合され、成形されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記コンポジット成形組成物は、前記ポリアミノ酸由来のβシート構造が保持されていることを特徴とする、請求項4に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲル又はコンポジットモールド成形体から選択されることを特徴とする、請求項4又は5に記載のコンポジット成形組成物。
- フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリアミノ酸が配合されたコンポジット成形組成物であって、
前記ポリアミノ酸が1種又は2~5種のアミノ酸の共重合体からなり、
前記コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲルから選択され、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリアミノ酸とを溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液よりコンポジット成形組成物を成形するステップ、
を含む製造方法で製造されることを特徴とする、コンポジット成形組成物。 - 前記ポリアミノ酸の重合度が、5~50の範囲であることを特徴とする、請求項7に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記ポリアミノ酸の配合割合が、1~10.0%の範囲であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のコンポジット成形組成物。
- 延伸コンポジット成形組成物であって、該延伸コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維又はコンポジットフィルムから選択され、
請求項7に記載のステップ(i)、(ii)に加えて、さらに、
(iii) 前記(ii)で得られたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸し、乾燥するステップ、
を含む製造方法で製造されることを特徴とする、延伸コンポジット成形組成物。 - コンポジット成形組成物であって、前記コンポジット成形組成物は、コンポジットモールド成形体であって、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリアミノ酸とを混合し、混合物を調製するステップ、
(ii) 前記混合物に圧力を負荷し、加熱するステップ、
を含む製造方法で製造されるモールド成形体であり、
前記ポリアミノ酸が1種又は2~5種のアミノ酸の共重合体からなることを特徴とする、コンポジット成形組成物。 - 前記ポリアミノ酸の重合度が、5~50の範囲であることを特徴とする、請求項11に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記ポリアミノ酸の配合割合が、1~10.0%の範囲であることを特徴とする、請求項11又は12に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記フィブロイン由来タンパク質が、
(i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
(ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
から選択されることを特徴とする請求項4~13のいずれか1項に記載のコンポジット成形組成物。 - 前記天然のフィブロイン由来タンパク質が、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項14に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記改変されたフィブロイン由来タンパク質が、下記式(I)で表されるドメイン配列を含む改変されたフィブロイン由来タンパク質であることを特徴とする、請求項14に記載のコンポジット成形組成物;
ただし、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されており、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、改変フィブロインタンパク質:
[式I中、
(A)nモチーフは2~20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ、
(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が40%以上であり、
REPは2~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、
mは2~300の整数であり、
複数存在する(A)nモチーフは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよく、
複数存在するREPは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい]。 - 請求項16に記載の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(ただし、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を表す。)から選ばれる少なくとも1つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有し、かつグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
- 請求項16又は17に記載の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、N末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としてとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が2~3.5となる前記隣り合う2つの[(A)nモチーフ-REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値をxとし、前記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)の最大値が20%以上であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
- 前記式(I)で表される改変されたフィブロイン由来タンパク質が、配列番号14~19で表されるアミノ酸配列を有する改変されたフィブロイン由来タンパク質であることを特徴とする、請求項16~18のいずれか1項に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記フィブロイン由来タンパク質が、請求項14~19のいずれか1項に記載のフィブロイン由来タンパク質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するフィブロイン由来タンパク質であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
- 前記βシート構造を有するポリアミノ酸がポリアラニンであることを特徴とする、請求項4~20のいずれか1項に記載のコンポジット成形組成物。
- 前記ポリアラニンが、ライナー型ポリアラニン又はテレケリック型ポリアラニンから選択されることを特徴とする、請求項21に記載のコンポジット成形組成物。
- フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリアミノ酸が配合された、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲルから選択されるコンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリアミノ酸を溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液を紡糸又は延伸することにより前記コンポジット成形組成物を製造するステップ、
を含み、
前記ポリアミノ酸が1種又は2~5種のアミノ酸の共重合体からなることを特徴とする、製造方法。 - 前記ポリアミノ酸の重合度が、5~50の範囲であることを特徴とする、請求項23に記載の製造方法。
- 前記ポリアミノ酸の配合割合が、1~10.0%の範囲であることを特徴とする、請求項23又は24に記載の製造方法。
- フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリアミノ酸が配合された、コンポジットモールド成形体の製造方法であって、
(i) 粉状のフィブロイン由来タンパク質と、粉状のβシート構造を有するポリアミノ酸とを混合し、混合体を調製するステップ、
(ii) 前記混合体に圧力を負荷し、加熱するステップ、
を含み、
前記ポリアミノ酸が1種又は2~5種のアミノ酸の共重合体からなることを特徴とする、製造方法。 - 前記ポリアミノ酸の重合度が、5~50の範囲であることを特徴とする、請求項23に記載の製造方法。
- 前記ポリアミノ酸の配合割合が、1~10.0%の範囲であることを特徴とする、請求項26又は27に記載の製造方法。
- 延伸コンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) 請求項23~28のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸するステップ、及び、
(ii) 延伸されたコンポジット成形組成物を乾燥させるステップ、
を含むことを特徴とする、製造方法。 - 前記フィブロイン由来タンパク質が、
(i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
(ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
から選択されることを特徴とする請求項23~29のいずれか1項に記載の製造方法。 - 前記天然のフィブロイン由来タンパク質が、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項30に記載の製造方法。
- 前記βシート構造を有するポリアミノ酸がポリアラニンであることを特徴とする、請求項23~31のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ポリアラニンが、ライナー型ポリアラニン又はテレケリック型ポリアラニンから選択されることを特徴とする、請求項32に記載の製造方法。
- フィブロイン由来タンパク質に、βシート構造を有するポリアミノ酸を配合させ、
前記ポリアミノ酸が1種又は2~5種のアミノ酸の共重合体からなることを特徴とする、コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法。 - 前記ポリアミノ酸の重合度が、5~50の範囲であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
- 前記ポリアミノ酸の配合割合が、1~10.0%の範囲であることを特徴とする、請求項34又は35に記載の方法。
- 請求項34~36のいずれか1項に記載の方法に、さらに、前記コンポジット成形組成物を溶媒中で延伸後、乾燥させることを特徴とする、コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法。
- 前記物理的特性の向上が、引張強度の増加、ひずみの増加及び/又は靭性の増加であることを特徴とする、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
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