JP7147340B2 - 無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電気機器等に使用される電磁鋼板は、省エネルギー化の観点等から、高効率化が求められている。
例えば、エアコンのコンプレッサー、家電製品に使用される各種モーター、自動車においては駆動モーター、電動ターボ、電動コンプレッサー用途で小型化及び高効率化のために高速回転及び高周波励磁が行われるようになり、高磁束密度かつ異方性の小さい無方向性電磁鋼板の要請が高まっている。
このような状況から、無方向性電磁鋼板における高い磁束密度を目指して、従来から様々な技術が採用されている。
具体的には、熱延板焼鈍を省略しつつ磁気特性を向上させるために、仕上熱延後のコイルの保有熱で熱延板焼鈍を代替する自己焼鈍が採用されている。例えば、特許文献1には、自己焼鈍の技術が記載されている。
また、特許文献2には、自己焼鈍を行わず、仕上熱延を高温で仕上げ、その後巻取りまでの間に無注水時間を設定することで磁気特性を向上させる技術が記載されている。
また、特許文献3、4に記載されているように、熱延板焼鈍前に軽圧下圧延を施し、熱延板焼鈍中に歪誘起粒成長を行わせることで磁気特性を向上する技術が採用されている。
また、特許文献5には、自己焼鈍中の熱延板の結晶粒成長をSn添加で均一に冷間圧延前結晶粒径を粗大化し、かつ、Sn添加による仕上焼鈍時の集合組織制御の相乗効果で磁束密度を高める技術が開示されている。
特許文献6には、0.10mmから0.25mmの高周波用薄手無方向性電磁鋼板を製造するにあたり、最終冷間圧延率と冷間圧延前結晶粒径の関係を式で規定する技術が開示されている。また、熱延板焼鈍を施し、冷間圧延前結晶粒径と冷間圧延率の間に一定の関係式を満たすように冷間圧延前粒径を制御する技術、さらに無方向性電磁鋼板の表面粗度Raを0.5μm以下とする技術、鋼板の磁性を22.5°おきに測定し、その最大値と最小値の差である鉄損ΔW10/400が4.0W/kg以下かつ磁束密度ΔB50が0.08T以下に制御する技術が提案されている。
特許文献7には、質量%で、C:0.0005~0.010%、Mn:0.05~1.5%、Si:0.8~4.0%、Al:0.1~4.0%を含有し、かつ、Si、Al、Mnの含有量がSi+2Al-Mn≧2の関係を満たし、残部はFe及び不可避不純物元素より成る成分の鋼素材を熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで冷間圧延を施した後に再結晶焼鈍し、さらにスキンパス圧延を経て最終焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、熱延板の焼鈍温度Thを1000℃≦Th≦1150℃とし、冷間圧延の圧延率CRを85%≦CR≦93%とする、全周特性かつ加工性の良好な無方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献8には、重量%で、C≦0.01%、Si:0.1%~2.0%、Al≦2.0%、Si+2Al:0.1%~2.50%、Mn<1.0%、Ni:0.1%~4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる異方性の少ない無方向性電磁鋼板において、磁束密度B50値角度特性の最小値と最大値の差が0.025T以下となる、異方性の少ない無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許文献9には、熱延板焼鈍二回冷延法で無方向性電磁鋼板を製造するにあたり、第1回目の冷間圧延前の結晶粒径を10~60μmの範囲に制御し、中間焼鈍後の再結晶率を30~85%の範囲に制御し、第2回目の冷間圧延圧下率を3~30%とする技術が開示されている。
特許文献10には、800℃以上の温度での熱延板焼鈍後、1回又は中間焼鈍を含む2回の圧延工程において、50℃以上の温度域で少なくとも20%以上の圧下を施し、その後850℃以上の温度で仕上げ焼鈍を施す技術が開示されている。
特許文献11には、スイッチトリラクタンスモータにおいて、仕上焼鈍時の昇温速度、鋼板張力、雰囲気酸化性、降温速度等の条件を規定した製造方法が開示されている。
特許文献12には、回転速度が小さいパワーステアリング用のモジュラーモータにおいて、仕上焼鈍条件を規定した製造方法が開示されている。
特許文献13には、熱延板焼鈍一回冷延法が開示されている。
特公昭57-43132号公報 特開昭62-54023号公報 特開平2-213418号公報 特開平3-211258号公報 特開2002-294415号公報 特開2001-295003号公報 特開2008-45151号公報 特開平8-246108号公報 特開2001-49402号公報 特開2000-144348号公報 特開2005-240095号公報 特開2006-144036号公報 特開2005-307258号公報
しかし、特許文献1及び特許文献2の技術は、ライン焼鈍に及ばず、磁束密度の板面内異方性に改善の余地があり、特に昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には磁束密度の異方性低減の要請が高まっている。
特許文献3及び特許文献4の技術では、熱延板に軽圧下を施し熱延板焼鈍を施しており磁束密度の面内異方性に改善の余地があり、例えば通常の回転機、EIコア、額縁鉄心に使用する場合には磁束の流れの均一性を向上させる余地がある。さらに、昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には磁束密度の異方性低減により、使用時の騒音および振動の低減への要請が高まっている。
特許文献5の技術では、磁束密度の面内異方性に改善の余地があり、例えば通常の回転機、EIコア、額縁鉄心に使用する場合には磁束の流れの均一性をより向上させる余地がある。さらに、昨今の高速回転機に適用する場合には磁束密度の異方性低減により、使用時の騒音および振動の低減への要請が高まっている。とりわけ、昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機では騒音および振動の低減の点で磁束密度の異方性低減の要請が高まっている。
特許文献6、特許文献7及び特許文献8の技術では、昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機では騒音および振動の低減の点で磁束密度の異方性低減の要請が高まっている。
特許文献9の技術では、特許文献6と同様に、プロセス条件を制御した二回法によってもその最終製品の磁束密度の面内異方性を低減させる余地があり、モータ騒音および振動の改善にも余地を残す。さらに、昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には異方性低減の要請が高まっている。
特許文献10の技術では、熱延板焼鈍を施した無方向性電磁鋼板の磁束密度の面内異方性を低減させる余地があり、モータ騒音および振動改善においても低減の余地がある。さらに、昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には異方性低減の要請が高まっている。
特許文献11の技術では、高効率モータに適用する場合に異方性の小さい無方向性電磁鋼板を製造する余地が残されている。さらに、当該技術では、昨今開発が進む、毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には異方性低減の要請が高まっている。
特許文献12の技術は、回転速度が小さいパワーステアリング用モジュラーモータを対象とし、一般の回転機ではパワーステアリングよりも回転数が高く、その騒音および振動を低減する要請が高まっている。さらに、昨今開発が進む、より高速回転の回転機に対しては異方性の低減の余地があり、例えば毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には異方性低減の要請が高まっている。
特許文献13の技術は、磁束密度の面内異方性を低減する余地があり、例えば、昨今開発が進む高速回転機に適用する場合には異方性低減の余地がある。さらに、最近開発が進行する毎分2万回転以上20万回転以下にも達する高速回転機に適用する場合には異方性低減の要請が高まっている。
以上の様に、従来技術では全周方向の磁束密度の異方性(つまり方向によって生じる磁束密度の大小の差)を低減することが容易でなく、磁束密度の異方性低減が求められていた。そして、回転機の鉄心に適用した場合に、騒音および振動の低減、最高回転数の向上などの達成が求められていた。
このような背景において、本発明者らは特定のパラメータで規定される磁束密度の異方性を制御することにより、モータ等の回転機に適用した場合の回転時のトルク変動が低減して騒音および振動が低減し、最高回転数の上昇が可能となることを知見した。
本発明は上記知見をもとになされたものであり、全周方向の磁束密度の異方性を低減した無方向性電磁鋼板を製造する製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決する手段は、以下の通りである。
<1>
スラブに熱間圧延を施し、熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
熱延鋼板に、800℃以上1080℃以下で5秒以上2分以下の熱延板焼鈍を施す熱延板焼鈍工程と、
熱延板焼鈍の冷却過程において、400℃以上700℃以下の温度域で圧下率3%以上75%以下の温間圧延を施す温間圧延工程と、
温間圧延後の圧延板に、仕上焼鈍を施す仕上焼鈍工程と、
を備え、
質量%で、Si:2.1~3.2%、Mn:0.1~2.5%、Al:0.3~1.2%を含有し、残部がFe及び不純物からなる組成で、圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5°、及び90°の角度の方向での、磁界強度5000A/mにおける磁束密度をそれぞれB50(0°)、B50(22.5°)、B50(45°)、B50(67.5°)、及びB50(90°)と表記した際に、下記式(1)で規定される異方性指標B50(anisotropy)が0.017以下である無方向性電磁鋼板を製造する、無方向性電磁鋼板の製造方法。
Figure 0007147340000001

式(1)
ここで、式(1)中、B50AVEは、下記式(2)で規定される。
Figure 0007147340000002

式(2)
<2>
前記温間圧延工程で前記温間圧延を施した前記温間圧延後の圧延板に、前記仕上焼鈍を施す前に、700℃超1080℃以下の温度で5秒以上2分以下の中間焼鈍を施す中間焼鈍工程をさらに備え、前記中間焼鈍の冷却過程において400℃以上700℃以下の温度域で温間圧延を施す、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
<3>
前記無方向性電磁鋼板は、圧延方向での磁界強度5000A/mにおける磁束密度B50(0°)と、圧延方向に対して直角となる方向での磁界強度5000A/mにおける磁束密度B50(90°)と、の算術平均である平均磁束密度B50(LC)が、1.64T以上である<1>又は<2>に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、全周方向の磁束密度の異方性を低減した無方向性電磁鋼板を製造する製造方法が提供される。
本発明は、無方向性電磁鋼板の磁束密度の異方性によりモータ回転時のトルク変動を制御して騒音および振動を低減させるものである。最初に、この技術知見に至った実験の結果について説明する。
(実験1)
鋼種Bのスラブを、加熱温度を1100℃として粗熱延を行い、次いで仕上温度900℃で仕上熱延を行い、熱延鋼板を2.0mm厚に仕上げ、これを650℃に冷却した後、コイラに巻き取った。この熱延鋼板から、以下の工程により2種の鋼板BAおよびBBを製造した。鋼種Bのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表1に示す。
鋼板BAは、以下のように製造した。
熱延鋼板に975℃で60秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で、1パスで30%の圧延(温間圧延)を施し、1.4mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。このときの圧延は、スタンド入側温度が480℃、スタンド出側温度が410℃であった。
この温間圧延板を酸洗後、20℃(圧延開始温度)で追加圧延を施し0.25mm厚とした。追加圧延中の加工発熱による最高到達温度は75℃であった。その後、970℃20秒の仕上げ焼鈍を施した。
鋼板BBは、以下のように製造した。
熱延鋼板に975℃で60秒の熱延板焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。この熱延焼鈍板を酸洗後、20℃(圧延開始温度)で圧延を施し0.25mm厚とした。この圧延中の加工発熱による最高到達温度は75℃であった。その後、970℃20秒の仕上げ焼鈍を施した。
得られた鋼板BAおよびBBについて、圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行い、異方性指標B50(anisotropy)を得た。
鋼板BAのB50(anisotropy)は、0.008、鋼板BBのB50(anisotropy)は、0.019であった。
Figure 0007147340000003
また、鋼板BAまたはBBを用いてステータを作製し、ロータに板厚0.35mmで引張強さ750MPaの高張力鋼板を用いた最高出力5kWの永久磁石同期式高速回転モータを作製した。
それぞれのモータの回転数を変更したときの騒音を、JIS Z8731(1999)に基づき測定した。結果を表2に示す。
それぞれのモータの回転数を変更したときの振動を、JIS C1510(1995)に基づき基準振動加速度は10-5m/sとして、単位dBで評価した。結果を表3に示す。
Figure 0007147340000004
Figure 0007147340000005
これらの結果から、異方性指標B50(anisotropy)が小さい鋼板BAは、異方性指標B50(anisotropy)が大きい鋼板BBよりも、回転数の全領域において、騒音および振動が低減されていることが確認できる。
(実験2)
鋼種Dのスラブを、加熱温度を1100℃として粗熱延を行い、次いで仕上温度890℃で仕上熱延を行い、熱延鋼板を2.0mm厚に仕上げ、これを600℃に冷却した後、コイラに巻き取った。この熱延鋼板から、以下の工程により2種の鋼板DAおよびDBを製造した。鋼種Dのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表4に示す。
鋼板DAは、以下のように製造した。
熱延鋼板に950℃で30秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で、1パスで30%の圧延を施し、1.4mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。このときの圧延は、スタンド入側温度が295℃、スタンド出側温度が200℃であった。
この圧延板を酸洗後、26℃(圧延開始温度)で追加圧延を施し0.25mm厚とした。追加圧延中の加工発熱による最高到達温度は80℃であった。その後、970℃で30秒の仕上げ焼鈍を施した。
鋼板DBは、以下のように製造した。
熱延鋼板に950℃で30秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で、1パスで30%の圧延(温間圧延)を施し、1.4mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。このときの圧延は、スタンド入側温度が550℃、スタンド出側温度が470℃であった。
この温間圧延板を酸洗後、26℃(圧延開始温度)で追加圧延を施し0.25mm厚とした。追加圧延中の加工発熱による最高到達温度は80℃であった。その後、970℃で30秒の仕上げ焼鈍を施した。
得られた鋼板DAおよびDBについて、圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行い、異方性指標B50(anisotropy)を得た。
鋼板DAのB50(anisotropy)は、0.021、鋼板DBのB50(anisotropy)は、0.007であった。
Figure 0007147340000006
また、鋼板DAまたはDBを用いてステータを作製し、出力200Wの永久磁石式同期ブラシレス同期モータを作製した。鋼板はステータに使用し、ロータはネオジムボンド磁石を回転軸に取り付け、高速回転に耐えるように炭素繊維でネオジムボンド磁石の周囲を巻いて補強した。
それぞれのモータの回転数を変更したときの騒音を、JIS Z8731(1999)に基づき測定した。結果を表5に示す。
それぞれのモータの回転数を変更したときの振動を、JIS C1510(1995)に基づき基準振動加速度は10-5m/sとして、単位dBで評価した。結果を表6に示す。
Figure 0007147340000007
Figure 0007147340000008

これらの結果から、異方性指標B50(anisotropy)が小さい鋼板DBは、異方性指標B50(anisotropy)が大きい鋼板DAよりも、回転数の全領域において、騒音および振動が低減されていることが確認できる。この結果は、上述の実験1と同様であり、異方性指標B50(anisotropy)の制御による騒音および振動の低減効果は、モータ種類によらず得られることが確認できた。
次いで、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法、及びこの製造方法によって製造される無方向性電磁鋼板について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<無方向性電磁鋼板>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼の製造方法によって製造される無方向性電磁鋼板(以下単に「本実施形態に係る無方向性電磁鋼板」とも称す)は、圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5°、及び90°の角度の方向での、磁界強度5000A/mにおける磁束密度をそれぞれB50(0°)、B50(22.5°)、B50(45°)、B50(67.5°)、及びB50(90°)と表記した際に、下記式(1)で規定される異方性指標B50(anisotropy)が0.017以下である。
Figure 0007147340000009

式(1)
ここで、式(1)中、B50AVEは、下記式(2)で規定される。
Figure 0007147340000010

式(2)
・異方性指標B50(anisotropy)
本実施形態では磁束密度の全周方向の異方性は式(1)で評価する。つまり、式(1)で規定される異方性指標B50(anisotropy)は、圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5°、及び90°の角度の方向での、磁界強度5000A/mにおける磁束密度の差を指標化したものである。この式(1)で規定される異方性指標B50(anisotropy)が0.017以下であることにより、全周方向の磁束密度の異方性が小さくなる。
これにより、モータ等の回転機に適用した場合であれば、回転時のトルク変動が低減し、騒音および振動が低減し、最高回転数を上昇させられるなど、回転鉄心の特性が向上する。
また、その他のEIコア、額縁コア等に適用した場合においても、ヨークの方向による磁束の流れやすさの変化が低減し、磁気特性の均一性が高い鉄心となり、磁気吸引力が向上する、磁化力向上により電流が少なくてすむなど、鉄心特性が向上可能である。
なお、異方性指標B50(anisotropy)の下限値は0以上である。
異方性指標B50(anisotropy)は、全周方向の磁束密度の異方性低減の観点から、より好ましくは0.015以下であり、さらに好ましくは0.013以下である。
また、異方性指標B50(anisotropy)の下限値は、特に限定されるものではないが、製造性安定の観点では、0.003以上が好ましく、0.005以上がより好ましい。
磁束密度は、エプスタイン試料を切断し、JISのC2550-1に定められたエプスタイン法に従って、磁界強度5000A/mにおける磁束密度の測定を行う。
無方向性電磁鋼板における異方性指標B50(anisotropy)は、以下に示す本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法によって作製することで、上記の範囲に制御することができる。
・平均磁束密度B50(LC)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、圧延方向での磁界強度5000A/mにおける磁束密度BB50(0°)及び圧延方向に対して直角となる方向での磁界強度5000A/mにおける磁束密度BB50(90°)の算術平均である平均磁束密度B50(LC)は、高い方が好ましく、例えば1.64T以上が好ましい。平均磁束密度B50(LC)が1.64T以上であることにより、無方向性電磁鋼板の高い磁束密度が実現され、モータ等の回転機に適用した場合であれば高速回転や高周波励磁を実現でき、高効率化が図れる。
平均磁束密度B50(LC)は、より好ましくは1.66T以上であり、さらに好ましくは1.68T以上である。
また、平均磁束密度B50(LC)の上限値は、特に限定されるものではないが、異方性を安定的に低減する観点では、1.90T以下が好ましく、1.80T以下がより好ましい。
平均磁束密度B50(LC)を1.64T以上の範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下に示す本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法によって作製する方法が挙げられる。
・鉄損
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板においては、その鉄損(W10/400)は、低い方が好ましい。
例えばその範囲としては、板厚0.20mm材においては、7.5W/kg以上11.0W/kg以下(より好ましくは7.8W/kg以上10.5W/kg以下)であることが好ましく、板厚0.25mm材においては、8.0W/kg以上12.5W/kg以下(より好ましくは8.5W/kg以上11.5W/k以下)が好ましく、板厚0.30mm材においては、11.0W/kg以上15.0W/kg以下(より好ましくは11.5W/kg以上13.5W/kg以下)であることが好ましく、板厚0.35mm材においては、14.0W/kg以上20.0W/kg以下(より好ましくは14.5W/kg以上18.0W/kg以下)であることが好ましい。板厚がさらに増す場合はそれに応じて適切な鉄損の範囲が定まる。鉄損の下限は、冷間圧延安定性および安定した特性を得るなどの製造安定性の観点から定まる。鉄損の上限は、高効率鉄心に求められる板厚ごとに定まる特性から定められる。
鉄損としては、エプスタイン試料に切断し、インバータ励磁をエプスタイン法で測定した時に生じる鉄損を用いる。具体的には、磁束密度1.0T、周波数400Hzで磁化した際の鉄損W10/400(W/kg)を用いる。
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブに熱間圧延を施し、熱延鋼板とする熱間圧延工程と、熱間圧延後の熱延鋼板に、800℃以上1080℃以下で5秒以上2分以下の熱延板焼鈍を施す熱延板焼鈍工程と、熱延板焼鈍の冷却過程において、400℃以上700℃以下の温度域で圧下率3%以上75%以下の温間圧延を圧延板に施す温間圧延工程と、温間圧延後の圧延板に、仕上焼鈍を施す仕上焼鈍工程と、を備える。そして、これらの工程を経ることで、前記式(1)で規定される異方性指標B50(anisotropy)が前述の範囲である無方向性電磁鋼板を製造する。
温間圧延は2回以上に分けて行うことも可能である。2回目以降の温間圧延は、温間圧延の温度域より十分に高い温度域で中間焼鈍を実施し、その冷却過程の400℃以上700℃以下の温度域で実施してもよい。
本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法によれば、磁束密度を向上させつつかつ磁束密度の異方性を低減した無方向性電磁鋼板が得られる。
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について、工程順に詳細に説明する。
1.熱間圧延工程
本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法は、まずスラブに熱間圧延(熱延)が施される。なお、本実施形態に用い得るスラブ、スラブから得られる無方向性電磁鋼板等の化学組成等については、後に詳述する。
熱間圧延の各種条件は特に限定されるものではなく、公知の条件に従って実施すればよい。例えば、厚さが150~300mmのスラブが、1000~1300℃に加熱され、最終的な圧延スタンドの出側温度を800~1100℃として、1~3mmの厚さに圧延される。圧延スタンドを出た鋼板は、400~900℃に冷却されたうえで、コイルに巻き取られる。
2.熱延板焼鈍工程
本実施形態の製造方法では、熱間圧延工程を完了した熱延鋼板に熱延板焼鈍を施す。
熱延板焼鈍の各種条件は特に限定されるものではなく、公知の条件に従って実施すればよい。
最高到達温度は、例えば800℃以上1080℃以下、好ましくは830℃以上1050℃以下、さらに好ましくは850以上1000℃以下で施す。800℃未満ではその効果が不十分であり、1080℃超では、鋼板の表面酸化を防ぐことが困難となるので1080℃以下に定める。
また、保定時間は、例えば5秒以上2分以下、好ましくは10秒以上90秒以下、さらに好ましくは15秒以上60秒以下である。
3.温間圧延工程
本実施形態の製造方法では、熱延板焼鈍の後、熱延板焼鈍の冷却過程において温間圧延を実施する。この温間圧延を、前記の熱延板焼鈍の冷却過程で実施することは、本実施形態の製造方法の大きな特徴である。
本明細書において温間圧延とは、400℃以上700℃以下の温度域で実施する圧延を指す。圧延においては、加工発熱による鋼板温度の上昇も考えられるが、上記温度範囲であれば一般的には圧延ロールによる抜熱が大きく、圧延中に鋼板温度は低下する傾向が大きい。よって、熱延板焼鈍の冷却過程において、上記温度範囲での圧延を実施するためには、鋼板温度が400℃に達する前に圧延を開始すべきである。
好ましくは425℃以上650℃以下、さらに好ましくは450℃以上600℃以下で行う。なお、本実施形態においては、圧延スタンド入側および出側温度の両方が上記温度範囲内にある場合を温間圧延が実施されたとする。これは、温間圧延中の加工発熱やロールの抜熱による鋼板の温度変化を含めて鋼板が本実施形態の温度範囲を満たす必要があるからである。
温間圧延は上で説明した熱延板焼鈍の冷却過程における1回の工程で実施するだけでなく、これに加えて2回以上の工程で実施することも可能である。
2回目以降の温間圧延を実施する場合、1回目の温間圧延を完了した鋼板を再加熱して温間圧延を実施することとなる。この際、温間圧延前に再加熱を行ったことをもって1回目と2回目、さらに3回目以降の温間圧延を区別する。2回目以降の温間圧延の前には、後述する中間焼鈍を実施してもよいが、この場合、2回目以降の温間圧延を中間焼鈍の冷却過程の400℃以上700℃以下の温度域で実施することも可能である。
温間圧延を熱延板焼鈍の冷却過程で実施することで、全周方向の磁束密度の異方性を低減した無方向性電磁鋼板を作製し得る理由については明確ではないが、以下のように推測している。
熱延板焼鈍の冷却過程という状況の特徴としては、次の3点が挙げられる。1点目は、冷却過程であるため、圧延される鋼板において表層の温度が中心層よりも有意に低くなっていることが考えられる。例えば、710℃に加熱保持した鋼板の700℃時点での表内層の温度差よりも、1000℃に加熱保持した鋼板の冷却過程での700℃時点での表内層温度差の方が大きいと考えられる。2点目は、直前の熱処理温度が異なれば、冷却中の析出物の状態が異なっていることが考えられる。特に熱延板焼鈍のような高温短時間の熱処理においては、鋼板表層は過加熱状態になることが考えられ、単純に1000℃での熱延板焼鈍においても鋼板表層では析出物の溶解や酸化または窒化などを含めて、析出物の形態が大きく変化していることが考えられる。さらに3点目としては、単純に圧延される鋼板の板厚が厚いということである。これは、同じ圧下率であっても厚手の方が板厚減厚量が大きいため、温間圧延の効果がより顕著になると発明者らは推察している。
これらの状況において、上記範囲での圧延を実施することで、鋼板表層と中心層の結晶回転が特別なものとなり、必要に応じて実施する冷間圧延、さらに仕上焼鈍後の集合組織が本実施形態で規定する異方性指標B50(anisotropy)を満足するものとなると考えられる。
温間圧延の圧下率は3%以上75%以下、好ましくは5%以上70%以下、さらに好ましくは10%以上65%以下である。3%未満であると、磁束密度の異方性低減の効果が得られないので3%以上と定める。75%超であると、磁束密度の異方性が拡大するので75%以下に定める。
温間圧延を2回以上に分けて実施する場合、圧下率は各回の温間圧延で付与された真歪の合計を換算して求める。すなわち、1回の温間圧延における入側板厚をl、出側板厚をlとしたとき、1回の温間圧延において付与された真歪をln(l/l)として、複数回の温間圧延についての真歪を合計する。上述した温間圧延の圧下率の適正範囲である3%以上75%以下は、真歪に換算すると、真歪の合計で0.031以上1.386以下となる。
4.中間焼鈍工程
中間焼鈍は、温間圧延の後、鋼板の温度を700℃超に上昇させる工程である。中間焼鈍は、直前の温間圧延板を冷却(例えば室温程度まで冷却)した後、再加熱して実施してもよいし、温間圧延後に400℃以上の温度を保ったまま(例えば温間圧延の終了温度から温度を下げないまま)再加熱して中間焼鈍を施してもよい。中間焼鈍の温度は700℃超とすることでその磁気特性向上効果が良好に得られる点で好ましい。中間焼鈍の温度の上限は1080℃とすることが好ましい。1080℃以下とすることで、鋼帯の表面酸化を良好に防ぐことができる。
中間焼鈍における保定時間は、好ましくは5秒以上2分以下、より好ましくは10秒以上90秒以下、さらに好ましくは15秒以上60秒以下である。中間焼鈍を2回以上施す場合、保定時間は各回の合計時間とする。5秒以上とすることでその磁気特性向上効果が良好に得られるので5秒以上が好ましい。2分以下であればその磁気特性改善効果が飽和せず、つまり磁気特性改善効果への寄与が低い焼鈍を抑制できるので2分以下が好ましい。
なお、温間圧延または中間焼鈍を2回以上実施する場合、各回の実施条件は同じである必要はなく、異なっていても構わない。
5.冷間圧延工程
本実施形態では、必要に応じて冷間圧延を実施してもよい。
本明細書において冷間圧延とは、400℃未満の温度域で実施する圧延を指す。上述の温間圧延との区別を考慮すれば、圧延スタンドの入側または出側温度の少なくとも一方が400℃未満である圧延を冷間圧延と判断する。好ましくは5℃以上250℃以下、より好ましくは25℃以上200℃以下、さらに好ましくは35℃以上150℃以下で行われる。冷間圧延の温度の下限は鋼板の圧延安定性確保の観点から上記範囲が好ましく、上限はロール、潤滑油の寿命を延長し、冷間圧延機の保守コストを低減する観点から上記範囲が好ましい。
ただし、鋼板の硬度が高いなどの場合には、圧延性安定のために、温水によるホットバス加熱、誘導加熱などの公知の方法によりコイル状態で鋼板を加熱し、圧延スタンドの入側での鋼板温度を例えば50℃以上まで上昇させてもよい。この場合、加工発熱により圧延スタンドの出側での鋼板の温度が200℃程度に到達することがある。
また、加工発熱を利用して鋼板の硬度を低下させ、薄板材の通板性を向上させるために、潤滑油を少なくして加工発熱を促進し、鋼板温度を250℃を上限として上昇させることを行ってもよい。
なお、2回目以降の温間圧延と冷間圧延を実施するタイミングについては、様々なパターンが可能であるが、前述のように本実施形態における温間圧延は、板厚が厚い状況で実施すべきであることを考慮すると、2回目の温間圧延を冷間圧延よりも先に実施することが有利となる。
なお、熱間圧延完了以降、冷間圧延に先立つ過程において、酸洗を施してもよい。
冷間圧延の圧下率は、本実施形態の作用効果を得ることができれば特に限定されるものではないが、50%以上97%以下とすることが好ましく、中でも60%以上88%以下とすることが好ましい。圧下率が50%以上であることで、仕上焼鈍後に適切な磁気特性を達成することが容易となる。また、圧下率が97%以下であることで、無方向性電磁鋼板の集合組織を適切に制御出来、鉄損を低下させ易くなる。
本実施形態では、上記の温間圧延を経て(必要に応じてさらに冷間圧延を経て)、最終的な圧延板の板厚を0.10mm以上0.65mm以下とすることが好ましく、中でも0.15mm以上0.35mm以下とすることが好ましい。
6.仕上焼鈍工程
仕上焼鈍工程においては、温間圧延工程(さらに冷間圧延を施す場合には冷間圧延工程)を完了した圧延板に仕上焼鈍を施す。
仕上焼鈍条件としては、本実施形態の作用効果を得ることができれば特に限定されるものではない。ただし、焼鈍時の酸化を防止して鉄損増大を防ぐとともに結晶粒を制御して鉄損を低減する目的から、700℃以上1100℃以下の温度域に保持することが好ましく、中でも750℃以上1050℃以下の温度域に保持することが好ましい。また、その際の保持時間としては、0.1秒間以上120秒間以下保持することが好ましく、10秒間以上60秒間以下保持することが好ましい。
7.その他の工程
本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法は、上記仕上焼鈍工程後に、上記仕上焼鈍工程により得られた鋼板表面にコーティング液を塗布し、焼き付けることによって、絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成工程を有していてもよい。絶縁被膜形成条件及びコーティング液は、通常用いられる材料により公知の方法によって行われる。
<スラブ及び無方向性電磁鋼板の化学組成>
次いで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法に用いられるスラブ、及び該製造方法によって得られる無方向性電磁鋼板の化学組成について説明する。
本実施形態に係る製造方法によって得られる無方向性電磁鋼板の化学組成としては、本実施形態の作用効果を得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な無方向性電磁鋼板における母鋼板の化学組成を用いることができる。また、本実施形態に係る製造方法に用い得るスラブの化学組成についても、前記無方向性電磁鋼板と同様である。
上記化学組成としては、質量%でSi:0.1%以上3.8%以下、Mn:0.1%以上2.5%以下、及びAl:0%以上2.5%以下、を含有し、残部がFe及び不純物からなるものが好ましい。
以下、各成分の好ましい含有量を説明する。以下において、各成分の含有量は質量%での値である。
a.Si
Si含有量は0.1%以上3.8%以下とすることが好ましい。
Siは比抵抗を増加させる作用を有しているので、鉄損低減に寄与する。このため、鉄損低減の観点から、Si含有量は0.1%以上とすることが好ましく、中でも1.0%以上、特に2.0%以上とすることが好ましい。一方、磁気特性及び圧延製造性を改善し、仕上焼鈍温度の上昇を抑制する観点から、Si含有量は3.8%以下とすることが好ましく、中でも3.6%以下、特に3.4%以下とすることが好ましい。
b.Mn
Mn含有量は0.1%以上2.5%以下とすることが好ましい。
Mnも比抵抗を増加させる作用を有しているので、鉄損低減に寄与する。このため、鉄損低減の観点から、Mn含有量は0.1%以上とすることが好ましく、さらに0.2%以上、中でも0.5%以上とすることが好ましい。多過ぎると再結晶組織を微細化させ鉄損を増加させるため、2.5%以下とすることが好ましく、中でも1.3%以下、さらに1.0%以下とすることが好ましい。
c.Al
本実施形態におけるスラブ、及び本実施形態によって得られる無方向性電磁鋼板は、Alを意図的に含有させていないものでもよいし、Alを意図的に含有させたものでもよい。Al含有量は0%以上2.5%以下とすることが好ましい。
Alを含有する場合には、鉄損低減の観点から、Al含有量は0.1%以上2.5%以下とすることが好ましく、中でも0.3%以上2.3%以下、特に0.9%以上2.0%とすることが好ましい。
d.残部
残部はFe及び不純物である。
本実施形態の製造方法におけるスラブ、及び本実施形態によって得られる無方向性電磁鋼板は、本実施形態の作用効果を損なわない範囲で、混入し得る各種元素である不純物を含むものでもよい。不純物としては、C、N、Sのほか、Ti、Nb、As、Zr、P等が挙げられる。
C含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.003%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.002%以下、特に0%以上0.001%以下とすることが好ましい。0.001%以下とすることにより、特に秀逸な磁気特性を得ることができる。
N含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.003%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.002%以下、特に0%以上0.001%以下とすることが好ましい。0.001%以下とすることにより、特に秀逸な磁気特性を得ることができる。
S含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.003%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.002%以下、特に0%以上0.001%以下とすることが好ましい。0.001%以下とすることにより、特に秀逸な磁気特性を得ることができる。
Ti含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.004%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.003%以下とすることが好ましい。特に秀逸な磁気特性を得るためには、特に0%以上0.002%以下とすることが好ましい。
Nb含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.003%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.002%以下、特に0%以上0.001%以下とすることが好ましい。0.001%以下とすることにより、特に秀逸な磁気特性を得ることができる。
As含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.003%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.002%以下、特に0%以上0.001%以下とすることが好ましい。0.001%以下とすることにより、特に秀逸な磁気特性を得ることができる。
Zr含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.003%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.002%以下、特に0%以上0.001%以下とすることが好ましい。0.001%以下とすることにより、特に秀逸な磁気特性を得ることができる。
P含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.25%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.15%以下とすることが好ましい。特に秀逸な磁気特性を得るためには、特に0%以上0.10%以下とすることが好ましく、0%以上0.05%以下とすることがより好ましい。
不純物全体の含有量は、磁気特性を改善する点から、0%以上0.1%以下とすることが好ましく、中でも0%以上0.05%以下とすることが好ましい。
-化学組成の測定方法-
本実施形態の製造方法におけるスラブ、及び本実施形態によって得られる無方向性電磁鋼板における各元素の含有量は、元素の種類に応じて、一般的な方法を用いて、一般的な測定条件により測定することができる。
Si、Mn、Al、Ti、Nb、及びZrの含有量は、例えば、ICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて測定することができる。As含有量は、例えば、AA法(フレームレス原子吸光法)により測定することができる。C及びSの含有量は、例えば、燃焼赤外線吸収法により測定することができる。N含有量は、加熱融解-熱伝導法により測定することができる。
本実施形態の製造方法によって得られる無方向性電磁鋼板に絶縁被膜その他の層が形成されていない場合には、無方向性電磁鋼板の一部を切子状にして秤量し、測定用試料とする。無方向性電磁鋼板に絶縁被膜その他の層が形成されている場合には、一般的な方法により予め絶縁被膜その他の層を除去した上で、無方向性電磁鋼板の一部を切子状にして秤量し、測定用試料とする。
ICP-MS法を用いる場合には、上記測定用試料を酸に溶解し、必要に応じて加熱することにより酸溶解液とする。そして、当該酸に溶解した際の残渣を、濾紙回収して別途アルカリ等に融解し、融解物を酸で抽出して溶液化する。当該溶液と当該酸溶解液とを混合し、必要に応じて希釈することにより、ICP-MS法測定用溶液とすることができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様の作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例及び比較例を例示して、本発明を具体的に説明する。なお、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一例であり、本発明は実施例の条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(評価方法)
ここで、実施例及び比較例において評価に用いる各種の特性について説明する。
・鉄損
無方向性電磁鋼板の鉄損としては、エプスタイン試料に切断し、インバータ励磁時に生じる鉄損を用いる。具体的には、磁束密度1.0T、周波数400Hzで磁化した際の鉄損W10/400(W/kg)を用いる。測定はJISのC2550-1に定められたエプスタイン法で行う。
・磁束密度
磁界強度5000A/mにおける磁束密度の測定は、以下の方法によって行う。エプスタイン試料を切断し、JISのC2550-1に定められたエプスタイン法に従って、その試料を用いて磁気測定を行う。
・騒音および振動測定用モータ
評価用の無方向性電磁鋼板により以下の2種の仕様のモータのうちの一方を製造し、騒音および振動を測定する。
モータA:ステータを評価用の無方向性電磁鋼板で作製し、ロータに板厚0.35mmで引張強さ750MPaの高張力鋼板を用いた、最高出力5kWの永久磁石同期式高速回転モータ
モータB:ステータを評価用の無方向性電磁鋼板で作製し、ロータはネオジムボンド磁石を回転軸に取り付け、高速回転に耐えるように炭素繊維でネオジムボンド磁石の周囲を巻いて補強した、出力200Wの永久磁石式同期ブラシレス同期モータ
・騒音
測定用モータを40万rpmで回転させた際の騒音を、JIS Z8731(1999)に基づき測定する。
・振動
測定用モータを40万rpmで回転させた際の振動を、JIS C1510(1995)に基づき基準振動加速度は10-5m/sとして、単位dBで評価する。
(実施例1)
鋼種Aのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度900℃とした熱間圧延を行い、2.0mm厚に仕上げ、これを700℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Aのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表7に示す。
上記熱延鋼板に950℃30秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で540℃に到達した時点で1パスで25%の圧下を施し470℃で圧延(温間圧延)を終え、1.5mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。
この温間圧延板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度25℃、最高到達温度70℃)を施し0.25mm厚とし、900℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.A-1)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃30秒の熱延板焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。この熱延焼鈍板を540℃まで再加熱して圧延開始温度540℃で1パスで25%の圧下を施し470℃で圧延(温間圧延)を終え、1.5mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。
この温間圧延板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度25℃、最高到達温度70℃)を施し0.25mm厚とし、900℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.A-2)。
さらに、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃30秒の熱延板焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。この熱延焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度25℃、最高到達温度70℃)を施し0.25mm厚とし、900℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.A-3)。
得られた各無方向性電磁鋼板より圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料を切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータAを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表8に示す。
Figure 0007147340000011
Figure 0007147340000012
表8からわかるように、本実施例では磁束密度の異方性B50(anisotropy)の値が0.011と比較例よりも小さい。
また、本実施例は圧延方向における磁束密度B50(0°)及び圧延方向に対して直角方向における磁束密度B50(90°)の算術平均値である平均磁束密度B50(LC)が比較例よりも高い。
また、本実施例では、40万rpmでのモータAの騒音が80dB以下、振動が70dB以下であり、モータAの高速回転での騒音および振動が比較例よりも低減されていることがわかる。
また、同じ温間圧延条件で圧延を施しても、熱延板焼鈍後に鋼板の温度が一旦室温まで冷却されると本開示の効果が失われることが表8の鋼板No.A-2の磁気特性、モータの騒音および振動測定結果からわかる。
以上の様に、本実施例によれば、高磁束密度かつ磁束密度の異方性の小さい無方向性電磁鋼板の製造が可能である。また、鉄損の値W10/400も9.63W/kgと低く優れている。
(実施例2)
鋼種Bのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度900℃とした熱間圧延を行い、2.0mm厚に仕上げ、これを650℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Bのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表9に示す。
上記熱延鋼板に60秒間の熱延板焼鈍を温度を変更して施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で、480℃で30%の1パス圧下を施し410℃で圧延(温間圧延)を終え、1.4mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。
この温間圧延板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度20℃、最高到達温度75℃)を施し0.25mm厚とし、970℃20秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.B-1~6)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に60秒間の熱延板焼鈍を温度を変更して施し、その後室温まで冷却した。この熱延焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度20℃、最高到達温度75℃)を施し0.25mm厚とし、970℃20秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.B-7~12)。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータAを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表10に示す。
Figure 0007147340000013
Figure 0007147340000014
表10より、本実施例の熱延板焼鈍温度によれば、比較例よりもB50(LC)が向上し、磁束密度の異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板を得ることができることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.65W/kg以下と低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータAの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータAの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例3)
鋼種Cのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度910℃とした熱間圧延を行い、2.0mm厚に仕上げ、これを650℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Cのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表11に示す。
上記熱延鋼板に950℃の熱延板焼鈍を保定時間を変更して施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で、460℃で1パスで30%圧下を施し405℃で圧延(温間圧延)を終え、1.4mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。
この温間圧延板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度27℃、最高到達温度80℃)を施し0.25mm厚とし、970℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.C-1~6)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃の熱延板焼鈍を保定時間を変更して施し、その後室温まで冷却した。
この熱延焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度27℃、最高到達温度80℃)を施し0.25mm厚とし、970℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.C-7~12)。
得られた無方向性電磁鋼板より圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料を切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータAを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表12に示す。
Figure 0007147340000015
Figure 0007147340000016
表12より、本実施例の熱延板焼鈍時間によれば、比較例よりもB50(LC)が向上し、磁束密度の異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板を得ることができることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.64W/kg以下と低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータAの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータAの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例4)
鋼種Dのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度890℃とした熱間圧延を行い、2.0mm厚に仕上げ、これを600℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Dのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表13に示す。
上記熱延鋼板に950℃30秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で圧延開始温度及び圧延終了温度を変更して1パスで30%の圧下を施し、圧延板を1.4mm厚に仕上げ、その後室温まで冷却した。
本実験では、熱延板焼鈍後の圧延は、本開示に係る温間圧延の範囲を満たす態様と、満たさない態様の圧延を含むように条件を設定した。
この圧延板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度26℃、最高到達温度80℃)を施し0.25mm厚とし、970℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.D-1~6)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃30秒の熱延板焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。
この熱延焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度26℃、最高到達温度80℃)を施し0.25mm厚とし、970℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.D-7)。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータAを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表14に示す。
Figure 0007147340000017
Figure 0007147340000018
表14より、本実施例の温間圧延温度によれば、比較例よりもB50(LC)が向上し、磁束密度の異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板を得られることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.76W/kg以下と低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータAの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータAの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例5)
鋼種Eのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度885℃とした熱間圧延を行い、2.0mm厚に仕上げ、これを600℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Eのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表15に示す。
上記熱延鋼板に900℃30秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で550℃で1パスで圧下率を変えて圧下を施し、400℃以上で圧延(温間圧延)を終えて圧延板を仕上げ、その後室温まで冷却した。
この温間圧延板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度30℃、最高到達温度78℃)を施し0.25mm厚とし、900℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.E-1~6)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に900℃30秒の熱延板焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。
この熱延焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度30℃、最高到達温度78℃)を施し0.25mm厚とし、900℃30秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.E-7)。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータBを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表16に示す。
Figure 0007147340000019
Figure 0007147340000020
表16より、本実施例の温間圧延時の圧下率によれば、比較例よりもB50(LC)が向上し、磁束密度の異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板を得られることがわかる。また、鉄損の値10/400も9.73W/kg以下と低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータBの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータBの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例6)
鋼種Fのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度875℃とした熱間圧延を行い、1.8mm厚に仕上げ、これを500℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Fのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表17に示す。
上記熱延鋼板に950℃10秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で600℃に到達した時点で1パスで17%の圧下を施し470℃で圧延(温間圧延)を終え、直ちに昇温して950℃10秒の中間焼鈍を施し、その後室温まで冷却して1.5mm厚の中間焼鈍板を得た。
この中間焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度35℃、最高到達温度95℃)を施し0.25mm厚とし、900℃20秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.F-1)。
また、コイラに巻き取るまでの上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃10秒の熱延板焼鈍を施し、一旦室温(25℃)まで冷却し、これを再加熱して600℃まで到達した時点で1パスで17%の圧下を施し470℃で圧延(温間圧延)を終え、直ちに昇温して950℃10秒の中間焼鈍を施し、その後室温まで冷却して1.5mm厚の中間焼鈍板を得た。
この中間焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度35℃、最高到達温度95℃)を施し0.25mm厚とし、900℃20秒の仕上焼鈍を施した(鋼板No.F-2)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃20秒の熱延板焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。
この熱延焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度35℃、最高到達温度95℃)を施し、0.25mm厚とし、900℃20秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.F-3)。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータBを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表18に示す。
Figure 0007147340000021
Figure 0007147340000022
表18より、本実施例の2回の熱延板焼鈍及び2回の熱延板焼鈍の間での温間圧延によれば、比較例よりもB50(LC)が向上し、異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板を得られることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.73W/kgと低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータBの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータBの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例7)
鋼種Gのスラブを、加熱温度を1100℃、仕上温度875℃とした熱間圧延を行い、1.8mm厚に仕上げ、これを500℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Gのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表19に示す。
上記熱延鋼板に、温度と時間を変化させて焼鈍1を施し本開示に係る熱延板焼鈍とそうでない焼鈍を施し、その冷却過程で圧延1を圧下温度と圧下率を変化させて施した。
この圧延板に温度と時間を変化させて中間焼鈍を施し、焼鈍1の温度、それに続く圧延1の温度と圧下率、中間焼鈍温度の組合せをそれぞれ変えた。中間焼鈍後室温まで冷却し中間焼鈍板を得た。表20にその条件を示す。
この中間焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度25℃、最高到達温度80℃)を施し0.25mm厚とし、900℃20秒の仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.G-1~29)。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータBを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表20に示す。
Figure 0007147340000023
Figure 0007147340000024
表20より、圧延をはさむ熱延板焼鈍を本実施例の条件に制御することにより、比較例よりもB50(LC)が向上し、磁束密度の異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板を得られることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.78W/kg以下と低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータBの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータBの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例8)
鋼種Hのスラブを、加熱温度を1100℃として粗熱延を行い、次いで仕上温度875℃で仕上熱延を行い、1.5mm厚に仕上げ、これを500℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Hのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表21に示す。
上記熱延鋼板に950℃20秒の熱延板焼鈍を施し、熱延板焼鈍後の冷却過程で445℃に到達した時点で1パスで33%の圧下を施し405℃で圧延(温間圧延)を終え、室温まで冷却して巻き取った。この温間圧延板を再度昇温して900℃5秒の中間焼鈍を施し、その後室温まで冷却して1.0mm厚の中間焼鈍板を得た。
この中間焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度28℃、最高到達温度85℃)を施し、0.25mm厚とし、925℃15秒で仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.H-1)。
また、コイラに巻き取るまでの上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃20秒の熱延板焼鈍を施し、一旦室温(25℃)まで冷却し、これを再加熱して445℃まで到達した時点で1パスで33%の圧下を施し405℃で圧延(温間圧延)を終え、室温まで冷却して巻き取った。この圧延板を再度昇温して900℃5秒の中間焼鈍を施し、その後室温まで冷却して1.0mm厚の中間焼鈍板を得た。
この中間焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度35℃、最高到達温度95℃)を施し0.25mm厚とし、900℃20秒の仕上焼鈍を施した(鋼板No.H-2)。
また、コイラに巻き取るまでを上記と同一条件とした熱延鋼板に950℃20秒の熱延板焼鈍を施し、室温まで冷却後、1パスで33%の冷間圧延(圧延開始温度25℃、最高到達温度65℃)施し、1.0mm厚に仕上げた。
次いで、この冷間圧延板を再度昇温して、900℃5秒の中間焼鈍を施し、その後室温まで冷却した。
この中間焼鈍板を酸洗後、冷間圧延(圧延開始温度28℃、最高到達温度85℃)を施し、0.25mm厚とし、925℃15秒で仕上げ焼鈍を施した(鋼板No.H-3)。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータBを作成し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表22に示す。
Figure 0007147340000025
Figure 0007147340000026
表22より、本実施例の、一回目の熱延板焼鈍の後の冷却過程において鋼板が室温に至るまでに温間圧延を施せば、比較例よりもB50(LC)が向上し、異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板が得られることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.43W/kgと低く優れている。
また、本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータBの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータBの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
(実施例9)
鋼種Gのスラブを、加熱温度を1100℃として粗熱延を行い、次いで仕上温度880℃で仕上熱延を行い、圧延板を2.5mm厚に仕上げ、これをROT上で550℃に冷却した後、コイラに巻き取った。鋼種Gのスラブから得られた無方向性電磁鋼板の化学組成を表23に示す。
表24に示す鋼板No.G-1から鋼板No.G-6の通り、熱延板焼鈍、続く圧延(20%圧下)、中間焼鈍、中間焼鈍に続く圧延(25%圧下)を実施しコイルに巻き取り室温まで冷却した。
この圧延板を酸洗後、25℃(圧延開始温度)で冷間圧延を施し、0.25mm厚とし、925℃15秒で仕上げ焼鈍を施した。
得られた無方向性電磁鋼板を圧延方向から22.5°おきにエプスタイン試料に切り出し、歪取り焼鈍を施した後、エプスタイン測定を行った。
これらの鋼板をステータに使用しモータBを作製し、40万rpmでの騒音および振動を測定し、騒音は80dB以下、振動は70dB以下を合格とした。
実施例と比較例の磁気測定結果およびモータの騒音と振動測定結果を表25に示す。
Figure 0007147340000027
Figure 0007147340000028
Figure 0007147340000029
表24および表25より、本実施例の、一回目および二回目の両方の焼鈍の後、もしくは一回目か二回目の焼鈍の後の冷却過程において鋼板が室温に至るまでに温間圧延を施せば、比較例よりもB50(LC)が向上し、異方性B50(anisotropy)が小さい無方向性電磁鋼板が得られることがわかる。また、鉄損の値W10/400も9.55W/kg以下と低く優れている。
本実施例では、磁束密度の異方性が低減された結果、40万rpmでのモータBの騒音が80dB以下、振動が70dBと比較例よりも小さく、モータBの高速回転での騒音および振動が低減されていることがわかる。
特に注目すべきは、一回目と二回目の焼鈍後に温間圧延を施した鋼板No.G-1および一回目の熱延板焼鈍後に温間圧延を施した鋼板No.G-2では、異方性B50(anisotropy)の値が0.008以下と優れた低異方性を示し、磁束密度B50(LC)は1.70Tの値を示し、W10/400は9.39W/kg以下の優れた値を示し、モータBによる騒音測定結果は74dB以下、振動測定結果は63dB以下の優れた値を示している。
一回目の熱延板焼鈍後に室温まで冷却し、二回目の焼鈍の後の冷却過程に温間圧延を施した鋼板No.G-3および鋼板No.G-5では、異方性B50(anisotropy)が鋼板No.G-1および鋼板No.G-2に対し0.015と大きく、モータBによる騒音測定結果および振動測定結果が合格値ラインぎりぎりのそれぞれ79dB、69dBとなっている。
これは、厚手の鋼板に温間圧延を施した方が本開示の効果が明白に表れることを示すものと発明者らは推察している。
以上より、本発明によれば、より高速回転においても騒音および振動の少ない無方向性電磁鋼板を得ることが可能である。

Claims (3)

  1. スラブに熱間圧延を施し、熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
    熱延鋼板に、800℃以上1080℃以下で5秒以上2分以下の熱延板焼鈍を施す熱延板焼鈍工程と、
    熱延板焼鈍の冷却過程において、400℃以上700℃以下の温度域で圧下率3%以上75%以下の温間圧延を施す温間圧延工程と、
    温間圧延後の圧延板に、仕上焼鈍を施す仕上焼鈍工程と、
    を備え、
    質量%で、Si:2.1~3.2%、Mn:0.1~2.5%、Al:0.3~1.2%を含有し、残部がFe及び不純物からなる組成で、圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5°、及び90°の角度の方向での、磁界強度5000A/mにおける磁束密度をそれぞれB50(0°)、B50(22.5°)、B50(45°)、B50(67.5°)、及びB50(90°)と表記した際に、下記式(1)で規定される異方性指標B50(anisotropy)が0.017以下である無方向性電磁鋼板を製造する、無方向性電磁鋼板の製造方法。
    Figure 0007147340000030

    式(1)
    ここで、式(1)中、B50AVEは、下記式(2)で規定される。
    Figure 0007147340000031

    式(2)
  2. 前記温間圧延工程で前記温間圧延を施した前記温間圧延後の圧延板に、前記仕上焼鈍を施す前に、700℃超1080℃以下の温度で5秒以上2分以下の中間焼鈍を施す中間焼鈍工程をさらに備え、前記中間焼鈍の冷却過程において400℃以上700℃以下の温度域で温間圧延を施す、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記無方向性電磁鋼板は、圧延方向での磁界強度5000A/mにおける磁束密度B50(0°)と、圧延方向に対して直角となる方向での磁界強度5000A/mにおける磁束密度B50(90°)と、の算術平均である平均磁束密度B50(LC)が、1.64T以上である請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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