JP7166594B2 - Mo-Si-Ti-C系合金およびMo-Si-Ti-C系合金の製造方法 - Google Patents

Mo-Si-Ti-C系合金およびMo-Si-Ti-C系合金の製造方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 ・発行者名 :公益社団法人 日本金属学会 刊行物名 :2018年春期講演大会(第162回) 日本金属学会講演大会概要集 発行年月日:2018年(平成30年)3月5日 ・集 会 名:日本金属学会 2018年春期(第162回)講演大会 開 催 日:2018年(平成30年)3月19日~21日
本発明は、Mo-Si-Ti-C系合金およびMo-Si-Ti-C系合金の製造方法に関する。
ジェットエンジンやガスタービンなどの熱機関を高効率で運転させるために、無冷却で使用可能な超高温材料が求められている。そのような材料として、従来から、高い融点および優れた高温強度を有するMo-Si-B合金が注目されているが、高密度であり、室温破壊靭性に劣るという問題があった。そこで、本発明者等は、Mo-Si-B合金にTiCを添加した合金を開発し、この合金が、Mo-Si-B合金の優れた高温強度を維持したまま、Mo-Si-B合金より低密度で、室温破壊靭性が高いことを確認している(例えば、特許文献1、2、非特許文献1乃至3参照)。
国際公開WO2014/112151号 特許第5876943号公報
山本詩歩、吉見享祐、金正旭、横山健太郎、「TiC添加したMo-Si-B合金の高温強度に及ぼすミクロ組織の影響」、日本金属学会誌、2016年、第80巻、第1号、p.51-59 Kyosuke Yoshimi, Junya Nakamura, Daiki Kanekon, Shiho Yamamoto, Kouichi Maruyama, Hirokazu Katsui, Takashi Goto, "High-Temperature Compressive Properties of TiC-Added Mo-Si-B Alloys", JOM, 2014, 66(9), p.1930-1938 Shimpei Miyamoto, Kyosuke Yoshimi, Seong-Ho Ha, Takahiro Kaneko, Junya Nakamura, Tetsuya Sato, Kouichi Maruyama, Rong Tu, Takashi Goto, "Phase Equilibria, Microstructure, and High Temperature Strength of TiC-Added Mo-Si-B Alloys", Metallurgical and Materials Transactions A, 2014, 45A, p.1112-1123
特許文献1等に記載のTiCを添加したMo-Si-B系合金は、優れた高温強度を有しており、ジェットエンジンやガスタービンの高圧タービン翼としての応用が期待されている。高圧タービン翼として応用する場合、高圧タービン翼とタービンディスクとの接合部では摺動摩擦が発生すると考えられるため、長寿命化を見据えると、高温強度だけでなく、摺動摩擦時の温度下(約700~800℃)での耐酸化性についても、常に向上が求められている。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、少なくとも800℃程度までの優れた耐酸化性を有するMo-Si-Ti-C系合金およびMo-Si-Ti-C系合金の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金は、Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlとから成り、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下で含んでいることを特徴とする。また、本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金は、Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlと、Bとから成り、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下、前記Bを3.3原子%以上13.3原子%以下で含んでいてもよい。
本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlとから成り、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下で含んでいる原料を溶解して鋳造することを特徴とする。また、本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlと、Bとから成り、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下、前記Bを3.3原子%以上13.3原子%以下で含んでいる原料を、溶解して鋳造してもよい。
本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金は、CrおよびAlを含んでいないMo-Si-Ti-C系合金と比べて、少なくとも800℃程度までの耐酸化性に優れている。また、CrおよびAlを含んでいないMo-Si-Ti-C系合金と比べて、軽量であると共に、硬い。本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金を好適に製造することができる。本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、いわゆる鋳造法を利用するため、製造されるMo-Si-Ti-C系合金を大型化することができる。
本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金および本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下で含んでいることが好ましい。この場合、Tiが42.0原子%より多いとき、Siが20.0原子%より多いとき、または、CrとAlとを合わせた量が25.0原子%より多いときには、高温強度が低下しはじめるため、これらの成分は、それぞれの上限値よりも少ないことが好ましい。また、耐酸化性および高温強度を高めるため、CrとAlとを合わせた量は、2.0原子%以上であることが好ましい。
また、この場合、前記Crと前記Alとを合わせて5.5原子%以上25.0原子%以下であってもよく、また、前記Siが1.7原子%以上6.7原子%以下、前記Tiが5.0原子%以上25.0原子%以下、前記Crが12.0原子%以上23.0原子%以下であってもよい。また、前記Siが1.7原子%以上6.7原子%以下、前記Tiが12.0原子%以上30.0原子%以下、前記Alが2.0原子%以上7.0原子%以下であってもよい。また、前記Siが10.0原子%以上20.0原子%以下、前記Tiが23.0原子%以上42.0原子%以下、前記Crが4.5原子%以上13.0原子%以下であってもよい。また、Bを3.3原子%以上13.3原子%以下で含んでいてもよい。これらの場合、特に耐酸化性に優れている。また、優れた高温強度も有している。
本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、鋳造後、1500℃~1900℃で1時間~120時間の均質化熱処理を行うことが好ましい。この場合、均質化熱処理により、耐酸化性や高温強度、破壊靭性を向上させることができる。
本発明に係るMo-Si-Ti-C系合金は、ジェットエンジンやガスタービンの高圧タービン動静翼だけでなく、高温鋳造金型や、摩擦撹拌接合用ツール等の、高温で使用されたときに高強度が必要とされる部材に使用することができる。
本発明によれば、少なくとも800℃程度までの優れた耐酸化性を有するMo-Si-Ti-C系合金およびMo-Si-Ti-C系合金の製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の(a)比較試料1、(b)試料1、(c)試料2、(d)試料3の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の試料1~3および比較試料1の(a)700℃、(b)800℃での酸化試験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、図2に示す各試料の(a)700℃(上段)および800℃(下段)での酸化試験後の外観、(b)700℃(上段)および800℃(下段)での酸化試験後の断面の観察結果を示す写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、図3(b)に示す(a)700℃、(b)800℃での酸化試験後の各試料の、基材(酸化していない部分)の厚さの減少量ΔLを示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の(a)試料2、(b)試料5、(c)試料7、(d)試料9、(e)比較試料1、(f)比較試料2の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の(a)試料2、(b)試料5、(c)試料7、(d)試料9、(e)比較試料1、(f)比較試料2の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の(a)Ti+Cr改質型の試料1~3、5、6および比較試料1、(b)Ti+Al改質型の試料7~12および比較試料1の、ビッカース硬さ(Hv)を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の(a)Ti+Cr改質型の試料1~6、比較試料1およびNi基単結晶超合金「TMS-138」、(b)Ti+Al改質型の試料7~12、比較試料1およびNi基単結晶超合金「TMS-138」の、密度を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の(a)試料13、(b)試料4、(c)試料5、(d)試料6の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の(a)試料4~6、13および比較試料2、(b) (a)の縦軸を拡大した試料5および6の、酸化試験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、酸化試験後の(a)比較試料2、(b)試料13、(c)試料4、(d)試料5、(e)試料6の、断面の顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、酸化試験後の試料5の、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)による(a)反射電子像(BSE像)、(b)Mo、(c)O、(d)Si、(e)Ti、(f)Crの元素マッピングである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、酸化試験後の試料6の、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)による(a)反射電子像(BSE像)、(b)Mo、(c)O、(d)Si、(e)Ti、(f)Crの元素マッピングである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、1600℃で10時間の均質化熱処理後の(a)試料4、(b)試料5、(c)試料6、1600℃で100時間の均質化熱処理後の(d)試料4、(e)試料5、(f)試料6の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、1600℃で100時間の均質化熱処理後の試料5および6の、(a)700℃、800℃および900℃で8時間の酸化試験結果、(b)800℃で100時間の酸化試験結果、(c)1600℃で10時間、および、1600℃で100時間の均質化熱処理後の試料5および6の、800℃で8時間の酸化試験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の試料5および比較試料1、2の、高温圧縮試験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の(a)比較試料3、(b)試料14、(c)試料15の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の(a)比較試料3、(b)試料14、(c)試料15の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の試料14、15および比較試料1、3の、密度を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理後の試料14、15および比較試料1、3の、(a)800℃、(b)1100℃での酸化試験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の試料16の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である 本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の、均質化熱処理前の試料16および比較試料4の、各温度での酸化試験結果を示すグラフである。
以下、実施例等に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金は、Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlとを有している。
本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金は、本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の製造方法により好適に製造される。すなわち、本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の製造方法は、Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlとを有する原料を溶解して鋳造する。その後、必要に応じて、1500℃~1900℃で1時間~120時間の均質化熱処理を行う。これにより、本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金を製造することができる。
本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金は、CrおよびAlを含んでいないMo-Si-Ti-C系合金と比べて、少なくとも800℃程度までの耐酸化性に優れている。また、CrおよびAlを含んでいないMo-Si-Ti-C系合金と比べて、軽量であると共に、硬い。また、鋳造法を利用して製造されるため、大型化することができる。
本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の製造方法により、本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の試料を製造した。また、本発明の実施の形態のMo-Si-Ti-C系合金の配合とは異なる合金の試料についても、同様の方法で製造した。まず、各試料について、表1に示す配合の原料を、アルゴン雰囲気中で、アーク溶解により溶解して水冷銅鋳型に鋳造した。鋳塊の大きさは、φ45mm、100gである。鋳造後、アルゴン雰囲気中で均質化熱処理を行った。また、比較のため、表1に示すCrおよびAlを含まない比較試料のMo-Si-Ti-C系合金も、同様の方法で製造した。
Figure 0007166594000001
[Crを含むMo-Si-Ti-C系合金について]
表1に示す試料1~3および比較試料1について、均質化熱処理前の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。各試料のSEM写真を図1に示す。図1(b)~(d)に示すように、Crを含む試料1~3(55Mo-10Cr-10Ti-5Si-10C-10B、50Mo-15Cr-10Ti-5Si-10C-10B、45Mo-20Cr-10Ti-5Si-10C-10B)の合金では、Moss[Mo固溶体]相、T[MoSiB]相、TiC相、および、σ相の4相が存在していることが確認された。また、図1(a)に示すように、Crを含まない比較試料1(65Mo-10Ti-5Si-10C-10B(1st gen. MoSiBTiC合金))の合金では、Moss、T、TiC、および、MoCの4相が存在していることが確認された。
試料1~3および比較試料1について、酸化試験を行った。酸化試験では、各試料を、4×3×0.5mmの直方体に加工し、Ar40ml/min-O10ml/min雰囲気中に、700℃または800℃で12時間放置して酸化させた。熱重量分析(TGA)により、酸化前後の各試料の質量の変化(Mass Change)Δmを測定し、その結果を図2(a)および(b)に示す。また、酸化後の各試料の外観および断面の観察結果を、それぞれ図3(a)および(b)に示す。また、図3(b)から、酸化後の各試料の基材(酸化していない部分)の厚さの減少量(Substrate Reduction)ΔLを求め、その結果を図4(a)および(b)に示す。
図2~図4に示すように、700℃および800℃の場合ともに、Cr濃度の上昇に伴って、酸化による質量変化が小さくなることが確認された。すなわち、図2に示すように、試料1(55Mo-10Cr-10Ti-5Si-10C-10B)の合金では、質量の減少が比較試料1と同程度であることが確認された。また、試料2(50Mo-15Cr-10Ti-5Si-10C-10B)および試料3(45Mo-20Cr-10Ti-5Si-10C-10B)の合金では、比較試料1よりも顕著に質量変化が小さく、耐酸化性に優れていることが確認された。また、図3(a)に示すように、700℃および800℃の場合ともに、Crを含む試料1~3の合金では、比較試料1と比べて、外観にはほとんど変化は認められなかった。また、図3(b)および図4に示すように、試料1の合金では、表層部分の酸化が比較試料1ほどではないことが確認された。また、試料2および試料3の合金では、800℃での試料2の両端部が僅かに酸化しているだけで、その他の表層部分には酸化がほとんど認められず、基材の厚さの減少量も非常に小さく、耐酸化性に優れていることが確認された。
[CrまたはAlを含むMo-Si-Ti-C系合金について]
表1の試料1~12および比較試料1、2について、均質化熱処理前後の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。試料2、5、7、9および比較試料1、2の、均質化熱処理前のSEM写真を図5に、均質化熱処理後のSEM写真を図6に示す。図5(a)および(b)に示すように、均質化熱処理前は、Crを添加した試料2(50Mo-15Cr-10Ti-5Si-10C-10B)では、Moss、T、(Ti、Mo)C、σの4相が存在しており、試料5(40Mo-15Cr-20Ti-5Si-10C-10B)では、Moss、T、(Ti、Mo)C、CrSiの4相が存在していることが確認された。また、試料1、3(55Mo-10Cr-10Ti-5Si-10C-10B、45Mo-20Cr-10Ti-5Si-10C-10B)については、試料2と同様に、Moss、T、(Ti、Mo)C、σの4相が存在しており、試料4、6(45Mo-10Cr-20Ti-5Si-10C-10B、35Mo-20Cr-20Ti-5Si-10C-10B)については、試料5と同様に、Moss、T、(Ti、Mo)C、CrSiの4相が存在していることが確認された。
また、図5(c)および(d)に示すように、均質化熱処理前は、Alを添加した試料7(57Mo-15Ti-5Si-3Al-10C-10B)では、Moss、T、(Ti、Mo)C、Mo(Al、Si)の4相が存在しており、試料9(52Mo-20Ti-5Si-3Al-10C-10B)では、Moss、T、(Ti、Mo)C、Mo(Al、Si)、MoAlの5相が存在していることが確認された。また、試料8(55Mo-15Ti-5Si-5Al-10C-10B)については、試料7と同様に、Moss、T、(Ti、Mo)C、Mo(Al、Si)の4相が存在しており、試料10~12(50Mo-20Ti-5Si-5Al-10C-10B、47Mo-25Ti-5Si-3Al-10C-10B、45Mo-25Ti-5Si-5Al-10C-10B)については、試料9と同様に、Moss、T、(Ti、Mo)C、Mo(Al、Si)、MoAlの5相が存在していることが確認された。
また、図5(e)および(f)に示すように、CrもAlも添加していない合金の場合、均質化熱処理前は、比較試料1(65Mo-10Ti-5Si-10C-10B)では、Moss、T、(Ti、Mo)C、(Mo、Ti)Cの4相が存在しており、比較試料2(55Mo-20Ti-5Si-10C-10B)では、Moss、T、(Ti、Mo)C、TiSiの4相が存在していることが確認された。
1600℃で100時間の均質化熱処理を行うと、図6(a)および(b)に示すように、Crを添加した試料2および5ともに、Moss、T、(Ti、Mo)Cの3相となることが確認された。また、試料1、3、4、6についても、試料2および5と同様に、Moss、T、(Ti、Mo)Cの3相となることが確認された。また、図6(c)および(d)に示すように、Alを添加した試料7および9ともに、Moss、T、(Ti、Mo)C、Mo(Al、Si)の4相となることが確認された。また、試料8、10、12についても、試料7および9と同様に、Moss、T、(Ti、Mo)C、Mo(Al、Si)の4相となることが確認された。これは、Alを添加すると、金属間化合物のMo(Al、Si)が生成しやすくなるためであると考えられる。また、試料11については、Moss、T、(Ti、Mo)Cの3相となることが確認された。
なお、図6(e)および(f)に示すように、比較試料1では、1800℃で24時間の均質化熱処理後も、Moss、T、(Ti、Mo)C、(Mo、Ti)Cの4相のままであり、比較試料2では、1800℃で24時間の均質化熱処理後に、Moss、T、(Ti、Mo)Cの3相となることが確認された。
均質化熱処理後の試料1~3、5~12および比較試料1について、ビッカース硬さ(Hv)の測定を行った。ビッカース硬さは、荷重を1kgfとして、10点で測定を行い、その平均値を用いた。ビッカース硬さ(Hv)の測定結果を、図7(a)および(b)に示す。図7(a)および(b)に示すように、試料1~3、5~12は、ビッカース硬さが比較試料1よりも大きく、1000Hv以上であることが確認された。また、図7(b)に示すように、Alを含むTi+Al改質型の試料7~12では、それぞれ試料7、9、11よりもAlを多く含む試料8、10、12の方が、硬いことが確認された。
均質化熱処理後の試料1~12および比較試料1について、密度の測定を行った。密度の測定結果を、図8(a)および(b)に示す。図8(a)および(b)に示すように、試料1~12は、密度が比較試料1よりも小さく、軽量であることが確認された。また、Crを含むTi+Cr改質型の試料1~6では、Ti+Cr濃度が高いほど、Alを含むTi+Al改質型の試料7~12では、Ti+Al濃度が高いほど、密度が小さくなり軽くなることが確認された。なお、図8(a)および(b)には、比較のため、Ni基単結晶超合金「TMS-138」(A. Sato, A.-C. Yeh, T. Kobayashi, T. Yokokawa, H. Harada, T. Murakumom and J.X. Zhang, Energy Mater., 2 (2007) 19 - 25参照)の密度も示している。
[Tiを多く含み、Crを含むMo-Si-Ti-C系合金について]
表1の試料4~6、13および比較試料2について、均質化熱処理前の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。なお、これらの試料は全て、Ti濃度が20原子%である。各試料のSEM写真を図9に示す。図9(c)および(d)に示すように、Crを多く含む試料5、6(40Mo-15Cr-20Ti-5Si-10C-10B、35Mo-20Cr-20Ti-5Si-10C-10B)では、Moss、T、TiC、CrSiの4相が明瞭に認められるが、図9(b)および(a)に示すように、Crの量が減少した試料4、13(45Mo-10Cr-20Ti-5Si-10C-10B、50Mo-5Cr-20Ti-5Si-10C-10B)では、CrSiの相が減少し、図5(f)に示すように、Crを含まない比較試料2(55Mo-20Ti-5Si-10C-10B)では、Moss、T、TiC、TiSiの4相になっていることが確認された。
均質化熱処理前の試料4~6、13および比較試料2について、酸化試験を行った。酸化試験では、各試料を、4×3×0.5mmの直方体に加工し、Ar40ml/min-O10ml/min雰囲気中に、800℃で8時間放置して酸化させた。熱重量分析(TGA)により、酸化前後の各試料の質量の変化(Mass Change)Δmを測定し、その結果を図10(a)および(b)に示す。また、酸化後の各試料の断面の顕微鏡観察結果を、図11に示す。
図10(a)に示すように、Cr濃度の上昇に従って、酸化による質量変化が小さくなることが確認された。すなわち、比較試料2、試料13、試料4と、Cr濃度が大きくなるに従って、質量の減少割合が小さくなっており、さらにCr濃度が大きい試料5および試料6の合金では、質量変化が小さく、耐酸化性に優れていることが確認された。その中でも、図10(b)に示すように、試料6の合金の質量変化が特に小さく、最も耐酸化性に優れていることが確認された。
また、図11(a)~(c)に示すように、Cr濃度が小さくなるに従って、表面の酸化層が厚くなり、試料4の合金では酸化層の厚みが約100μmであり、試料13の合金では、比較試料2と同程度に酸化層が広がっているのが確認された。また、図11(d)および(e)に示すように、試料5および試料6の合金では、表面の薄い部分にのみ酸化層が存在していることが確認された。
同じCr濃度の試料1と4、試料2と5、試料3と6の酸化試験結果(800℃)を比較すると、図10(a)に示す試料4、5、6の方が、それぞれ図2(b)に示す試料1、2、3よりも、質量変化が小さくなっており、Ti+Cr濃度が高いほど耐酸化性に優れることが確認された。
耐酸化性に優れた試料5および試料6について、酸化試験後の断面に対して、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)による元素分析を行い、その結果をそれぞれ図12および図13に示す。図12(c)および図13(c)に示すように、表面にのみ酸素が認められ、酸素が存在する酸化層の厚みは約15μmであることが確認された。
試料4~6について、均質化熱処理後の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。各試料について、1600℃で10時間の均質化熱処理後のSEM写真を、図14(a)~(c)に、1600℃で100時間の均質化熱処理後のSEM写真を、図14(d)~(f)に示す。図14(a)~(f)に示すように、熱処理時間の長短に関わらず、いずれの試料でも、Moss、T、TiCの3相になっていることが確認された。
均質化熱処理後の試料5および試料6について、酸化試験を行った。酸化試験では、各試料を、4×3×0.5mmの直方体に加工し、Ar40ml/min-O10ml/min雰囲気中に、所定温度で所定時間放置して酸化させた。熱重量分析(TGA)により、酸化前後の各試料の質量の変化(Mass Change)Δmを測定した。1600℃で100時間の均質化熱処理後の試料5および試料6について、700℃、800℃および900℃で8時間放置して酸化させた結果を、図15(a)に、800℃で100時間放置して酸化させた結果を、図15(b)に示す。また、1600℃で10時間、および、1600℃で100時間の均質化熱処理後の試料5および試料6について、800℃で8時間放置して酸化させた結果を、図15(c)に示す。
図15(a)に示すように、酸化時の温度が高くなるに従って、重量変化が大きくなっているのが確認された。また、図15(b)に示すように、酸化時間が長くなるほど、酸化が進むのが確認された。また、図15(c)に示すように、均質化熱処理の時間が長い方が、酸化しにくくなっており、耐酸化性に優れることが確認された。また、図15(a)~(c)に示すように、同じ酸化条件では、Crの量が多い試料6の合金の方が、試料5よりも重量変化が小さく、耐酸化性に優れていることが確認された。
均質化熱処理後の試料5および比較試料1、2について、各試料を2×2×4mmの直方体に加工し、1400℃の真空中(<10-3Pa)で、ひずみ速度2.1×10-4-1の条件で、高温圧縮試験を行った。なお、試料5は、1700℃で24時間の均質化熱処理、比較試料1および2は、1800℃で24時間の均質化熱処理を行っている。試験結果を、図16に示す。図16に示すように、Crを添加した試料5は、Crを添加していない比較試料1および2と比べて、高温強度(ピーク強度)が高くなっていることが確認された。
[TiおよびSiを多く含み、Crを含むMo-Si-Ti-C系合金について]
表1の試料14、15および比較試料3について、均質化熱処理前の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。なお、これらの試料は全て、Ti濃度が28原子%、Si濃度が14原子%である。各試料のSEM写真を、図17に示す。図17(a)~(c)に示すように、Crの量にかかわらず、試料14、15、比較試料3(40Mo-6Cr-28Ti-14Si-6C-6B、36Mo-10Cr-28Ti-14Si-6C-6B、46Mo-28Ti-14Si-6C-6B)ともに、Moss、T[MoSiB]、TiCの3相に加えて、金属間化合物のTiSiが存在していることが確認された。
試料14、15および比較試料3について、1600℃で24時間の均質化熱処理後の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。各試料のSEM写真を、図18に示す。図18(a)~(c)に示すように、いずれの試料でも、熱処理前と同じく、Moss、T[MoSiB]、TiC、TiSiの4相が存在していることが確認された。
均質化熱処理後の試料14、15および比較試料1、3について、密度の測定を行った。密度の測定結果を、図19に示す。なお、比較試料1は、1800℃で24時間の均質化熱処理を行ったものである。図19に示すように、試料14、15および比較試料3は、密度が比較試料1よりも顕著に小さく、軽量であることが確認された。また、比較試料3、試料14、試料15の順で密度が小さくなっており、Crを多く含むほど密度が小さくなり、軽くなることが確認された。
均質化熱処理後の試料14、15および比較試料1、3について、酸化試験を行った。酸化試験では、各試料を、4×3×0.5mmの直方体に加工し、Ar40ml/min-O10ml/min雰囲気中に、所定温度で所定時間放置して酸化させた。熱重量分析(TGA)により、酸化前後の各試料の質量の変化(Mass Change)Δmを測定した。各試料について、800℃で24時間まで放置して酸化させた結果を、図20(a)に、1100℃で24時間まで放置して酸化させた結果を、図20(b)に示す。
図20に示すように、800℃および1100℃の場合ともに、Cr濃度の上昇に伴って、酸化による質量変化が小さくなることが確認された。すなわち、図20に示すように、比較試料3の合金では、比較試料1ほどではないが、時間と共に質量が大きく減少しており、酸化されやすいのに対し、Crを含む試料14、15の合金では質量変化が小さく、耐酸化性に優れていることが確認された。特に、試料15の方が試料14よりも質量変化が小さくなっており、Crを多く含むほど耐酸化性に優れていることが確認された。
Cr濃度が同じ10原子%の試料1、4、15を比較すると、密度では、図8(a)に示す試料1、4よりも、図19に示す試料15の方が小さくなっており、Ti+Si+Cr濃度が高いほど密度が小さくなり、軽くなることが確認された。また、酸化試験では、800℃の場合、図2(b)に示す試料1、図10(a)に示す試料4、図20(a)に示す試料15の順で、質量変化が小さくなっており、Ti+Si+Cr濃度が高いほど耐酸化性に優れることが確認された。
[TiおよびSiを多く含み、CrおよびAlを含むMo-Si-Ti-C系合金について]
表1の試料16について、均質化熱処理前の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。そのSEM写真を、図21に示す。図21に示すように、試料16(30Mo-40Ti-15Si-5Cr-5Al-5C)では、Moss、TiCの2相に加えて、金属間化合物のTiSiが存在していることが確認された。また、試料16について、1600℃で24時間の均質化熱処理を行ったもの、および、1600℃で100時間の均質化熱処理を行ったものについて、走査型電子顕微鏡により観察を行ったところ、均質化熱処理前と同じ、Moss、TiC、TiSiの3相が存在していることが確認された。
試料16について、1600℃で24時間の均質化熱処理を行ったものについて、密度を測定したところ、6.274g/cmであった。試料16は、図8(a)および(b)や、図19に示す各試料の密度と比較しても、密度が顕著に小さく、軽量であることが確認された。これは、Tiを多く含んでいることや、CrおよびAlを含んでいることによるものと考えられる。
均質化熱処理前の試料16について、酸化試験を行った。酸化試験では、各試料を、4×3×0.5mmの直方体に加工し、Ar40ml/min-O10ml/min雰囲気中に、700℃、900℃、1100℃で所定時間放置して酸化させた。熱重量分析(TGA)により、酸化前後の試料16の重量の変化(Weight Change)Δwを測定した。各温度で24時間まで放置して酸化させた結果を、図22に示す。なお、比較のため、表1に示す比較試料4(38Mo-17Si-5B-20Ti-10TiC)についても、同様の方法で、1100℃での酸化試験を行い、その結果を図22中に示す。
図22に示すように、700℃および900℃の場合に、酸化による質量変化がほとんど認められないことが確認された。また、1100℃の場合には、酸化による質量の減少が若干認められたが、比較試料4と比べると、非常に小さい変化であることが確認された。このように、試料16は、高温での耐酸化性に非常に優れていることが確認された。

Claims (9)

  1. Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlとから成り、
    前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下で含んでいる ことを
    特徴とするMo-Si-Ti-C系合金。
  2. Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlと、Bとから成り、
    前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下、前記Bを3.3原子%以上13.3原子%以下で含んでいることを
    特徴とするMo-Si-Ti-C系合金。
  3. 前記Crと前記Alとを合わせて5.5原子%以上25.0原子%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のMo-Si-Ti-C系合金。
  4. 前記Siが1.7原子%以上6.7原子%以下、前記Tiが5.0原子%以上25.0原子%以下、前記Crが12.0原子%以上23.0原子%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のMo-Si-Ti-C系合金。
  5. 前記Siが1.7原子%以上6.7原子%以下、前記Tiが12.0原子%以上30.0原子%以下、前記Alが2.0原子%以上7.0原子%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のMo-Si-Ti-C系合金。
  6. 前記Siが10.0原子%以上20.0原子%以下、前記Tiが23.0原子%以上42.0原子%以下、前記Crが4.5原子%以上13.0原子%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のMo-Si-Ti-C系合金。
  7. Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlとから成り、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下で含んでいる原料を溶解して鋳造することを特徴とするMo-Si-Ti-C系合金の製造方法。
  8. Moと、Siと、Tiと、Cと、Crおよび/またはAlと、Bとから成り、前記Moを28原子%以上60原子%以下、前記Siを1.7原子%以上20.0原子%以下、前記Tiを5.0原子%以上42.0原子%以下、前記Cを4.0原子%以上15.0原子%以下、前記Crと前記Alとを合わせて2.0原子%以上25.0原子%以下、前記Bを3.3原子%以上13.3原子%以下で含んでいる原料を、溶解して鋳造することを特徴とするMo-Si-Ti-C系合金の製造方法。
  9. 鋳造後、1500℃~1900℃で1時間~120時間の均質化熱処理を行うことを特徴とする請求項7または8記載のMo-Si-Ti-C系合金の製造方法。
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