JP7200687B2 - 方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、特開2002-322566号公報(特許文献7)、特開2002-363763号公報(特許文献8)、特開2003-313644号公報(特許文献9)、特開2003-171773号公報(特許文献10)、特開2002-348643号公報(特許文献11)、及び、特開2004-342679号公報(特許文献12)に示す新たな技術が提案された。
(1)母鋼板と、前記母鋼板の表面上に直接接して形成されており、かつ、酸化珪素を主体とする中間層と、前記中間層の表面上に形成されている絶縁皮膜とを備え、前記絶縁被膜がボイドを含み、前記絶縁皮膜中の空洞率が、面積率で5~30%である、方向性電磁鋼板。
(2)(1)に記載の方向性電磁鋼板であって、前記ボイドの平均径が、前記絶縁皮膜の膜厚の1/4以下かつ1/20以上である、方向性電磁鋼板。
(3)(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板であって、前記絶縁皮膜が、P、OおよびSiを含む化合物と、Crとからなり、前記絶縁皮膜中の平均Cr濃度が、0.1原子%以上である、方向性電磁鋼板。
(4)(1)~(3)のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板であって、前記ボイドの平均重心位置から、前記絶縁皮膜と前記中間層との界面までの距離が、前記絶縁皮膜の膜厚の4/5以下である、方向性電磁鋼板。
(5)(1)~(4)のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板であって、前記絶縁皮膜の表面において、Cr濃度が前記絶縁皮膜全体の平均Cr濃度の80%未満であるCr欠乏領域の総面積率が50%以下である、方向性電磁鋼板。
(6)スラブを準備する準備工程と、前記スラブを1280℃以下で加熱した後、熱間圧延を実施して方向性電磁鋼板用熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、前記方向性電磁鋼板用熱延鋼板に対して熱延板焼鈍を実施して焼鈍鋼板を製造する熱延板焼鈍工程と、前記焼鈍鋼板に対して冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造する冷間圧延工程と、前記冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を実施して母鋼板を製造する脱炭焼鈍工程と、前記母鋼板に焼鈍分離剤を塗布する焼鈍分離剤塗布工程と、前記焼鈍分離剤塗布後の前記母鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施して、仕上げ焼鈍皮膜が形成された前記母鋼板を製造する仕上げ焼鈍工程と、必要に応じて、仕上げ焼鈍皮膜を除去し、前記母鋼板の表面粗さをRaで1.0μm以下の平滑面にする母鋼板表面平滑化工程と、仕上げ焼鈍工程又は母鋼板平滑化工程後の前記母鋼板に対して熱処理を実施して、前記母鋼板の表面と接触し、酸化珪素を主体とする中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層の表面に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程と、を備え、前記絶縁皮膜形成工程は、前記母鋼板の表面に形成された前記中間層の前記表面上に、燐酸塩、コロイド状シリカ、及び無水クロム酸又はクロム酸塩を含むコーティング溶液を塗布する塗布工程と、前記コーティング溶液が塗布された前記母鋼板を加熱して、600~1150℃で5~300秒焼付け処理を行って前記絶縁皮膜を形成する焼付け工程と、を含み、前記焼付け工程では、前記母鋼板の加熱の際、100~600℃の温度域での平均加熱速度を10~200℃/秒とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
より好ましくは、上記絶縁皮膜の表面において、Cr濃度が絶縁皮膜全体の平均Cr濃度の80%未満であるCr欠乏領域の、皮膜全体に対する総面積率が、50%以下である。
(S0)スラブを準備する準備工程と、
(S1)前記スラブを1280℃以下で加熱した後、熱間圧延を実施して方向性電磁鋼板用熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、
(S2)前記方向性電磁鋼板用熱延鋼板に対して熱延板焼鈍を実施して焼鈍鋼板を製造する熱延板焼鈍工程と、
(S3)前記焼鈍鋼板に対して冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造する冷間圧延工程と、
(S4)前記冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を実施して母鋼板を製造する脱炭焼鈍工程と、
(S5)前記母鋼板に焼鈍分離剤を塗布する焼鈍分離剤塗布工程と、
(S6)前記焼鈍分離剤塗布後の前記母鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施して、仕上げ焼鈍皮膜が形成された前記母鋼板を製造する仕上げ焼鈍工程と、
(S7)必要に応じて、仕上げ焼鈍皮膜を除去し、前記母鋼板の表面粗さをRaで1.0μm以下の平滑面にする母鋼板表面平滑化工程と、
(S8)仕上げ焼鈍工程又は母鋼板平滑化工程後の前記母鋼板に対して熱処理を実施して、前記母鋼板の表面と接触し、酸化珪素を主体とする中間層を形成する中間層形成工程と、
(S9)前記中間層の表面に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程と、
を備える製造方法によって得られる。
図3は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の表面近傍の断面図である。図3を参照して、本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、母鋼板1と、母鋼板1の表面に接触して形成されている皮膜20とを備える。皮膜20は、母鋼板1の表面に直接接触して形成されている中間層2Bと、中間層2Bの表面に接触して形成されている絶縁皮膜30とを備える。
本発実施形態に係る方向性電磁鋼板は、特に絶縁皮膜30の構成に特徴を有する。
母鋼板1の化学組成及び組織は、絶縁皮膜30の構成とは直接関連しない。そのため、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の母鋼板1の化学組成及び組織は、特に限定されない。たとえば、母鋼板1は、一般的な方向性電磁鋼板に用いられる母鋼板でよい。以下、本実施形態に係る方向性電磁鋼板が備える母鋼板1の一例を説明する。
上述の母鋼板1の化学組成は、一般的な方向性電磁鋼板における母鋼板の化学組成を用いることができる。母鋼板1の化学組成はたとえば、次の元素を含有する。母鋼板1の化学組成における各元素の含有量で使用する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
シリコン(Si)は、方向性電磁鋼板の電気抵抗を高めて鉄損を低下させる。Si含有量が0.50%未満であれば、この効果が十分に得られない。そのため、Si含有量は0.50%以上であることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは1.50%以上であり、さらに好ましくは2.50%以上である。
一方、Si含有量が7.00%を超えると、母鋼板1の飽和磁束密度が低下する。そのため、鉄損が劣化する。したがって、好ましくは、Si含有量は、7.00%以下である。Si含有量は、より好ましくは5.50%以下であり、さらに好ましくは4.50%以下である。
炭素(C)は、母鋼板1中で化合物を形成し、鉄損を劣化させる。したがって、C含有量は、0.005%以下であることが好ましい。C含有量はなるべく低いほうが好ましい。C含有量は、より好ましくは0.004%以下であり、さらに好ましくは0.003%以下である。
一方、C含有量はなるべく低いほうが好ましいので0%でもよいが、Cは鋼中に不純物として含有される場合がある。したがって、C含有量は、0%超としてもよい。
窒素(N)は、母鋼板1中で化合物を形成し、鉄損を劣化させる。したがって、N含有量は、0.0050%以下であることが好ましい。N含有量はなるべく低いほうが好ましい。N含有量は、より好ましくは0.0040%以下であり、さらに好ましくは0.0030%以下である。
一方、N含有量はなるべく低いほうが好ましいので、0%でもよいが、Nは鋼中に不純物として含有される場合がある。したがって、N含有量は、0%超としてもよい。
母鋼板1の化学組成は、磁気特性の改善や、製造上の課題解決を目的として、Feの一部に代えて、1種または2種以上の任意元素を以下の範囲で含有してもよい。Feの一部に代えて含有される任意元素として、たとえば、次の元素が挙げられる。これらの元素は含有させなくてもよいので、下限は0%である。一方、これらの元素の含有量が多すぎると、析出物が生成して鉄損が劣化したり、フェライト変態が抑制されて、GOSS方位が十分に得られなかったり、飽和磁束密度が低下したりして、鉄損が劣化する。そのため、含有させる場合でも、以下の範囲とすることが好ましい。
Al:0.065%以下、
Mn:1.00%以下、
S及びSe:合計で0.001%以下、
Bi:0.010%以下、
B:0.0080%以下、
Ti:0.015%以下、
Nb:0.020%以下、
V:0.015%以下、
Sn:0.50%以下、
Sb:0.50%以下、
Cr:0.30%以下、
Cu:0.40%以下、
P:0.50%以下、
Ni:1.00%以下、及び
Mo:0.10%以下。
母鋼板1の表面の粗さは特に限定されない。しかしながら、皮膜20と母鋼板1との界面に凹凸が形成されずに鉄損の低下作用の妨害が回避される観点から、たとえば、Ra(算術平均粗さ)で1.0μm以下であることが好ましい。母鋼板1の表面の算術平均粗さRaのより好ましい上限は0.7μmであり、さらに好ましい上限は0.5μmである。
方向性電磁鋼板の圧延方向に垂直な断面を観察面とするサンプルを採取する。得られた観察面における母鋼板表面の粗さを次の方法で測定する。母鋼板表面に仕上げ焼純皮膜や中間層2B等の皮膜20が形成されている場合には、観察面(断面)における母鋼板1と中間層2Bとの界面、皮膜20が形成されておらず母鋼板表面が露出している場合には、観察面(断面)における母鋼板表面の板厚方向の位置座標を、0.01μm以上の精度で計測し、JIS B 0601(2001)に準拠した算術平均粗さRaを算出する。
計測は、母鋼板表面と平行な方向に0.1μmピッチで連続した2mmにわたる範囲(合計20000点)について実施し、基準長さを2mmとして算術平均粗さRaを求める。母鋼板表面の少なくとも任意の5箇所で上記方法により算術平均粗さRaを求め、各箇所で得られたRa値の平均値を、母鋼板表面の算術平均粗さRaと定義する。この観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)により実施でき、位置座標の計測は、画像処理を適用することが実用的である。
母鋼板1の表面には、Mgを含有する酸化皮膜である仕上げ焼鈍皮膜(グラス皮膜)が実質的に存在しない。ここで、「グラス皮膜」とは、仕上げ焼鈍が実施されることにより、焼鈍分離剤のMgOと母鋼板1とが反応して、母鋼板1の表面に形成されるMgを含有する酸化皮膜を意味する。また、「グラス皮膜」とは、皮膜中におけるMgの含有量が15~55原子%の範囲である酸化皮膜である。
中間層2Bは、仕上げ焼純皮膜が実質的に存在しない上記母鋼板1の表面に接触して形成されている。中間層2Bは、酸化珪素を主体とする外部酸化膜である。ここで、「酸化珪素を主体とする」とは、酸化珪素を主体とするとは、組成としてFe含有量が80原子%未満、P含有量が5原子%未満、Si含有量が20原子%以上、O含有量が50原子%以上、Mg含有量が10原子%以下、を満足することを指す。
電子線の径を10nmとしたTEM(透過電子顕微鏡)で中間層2Bの断面を観察して測定する。具体的には、例えば、TEM観察用に、試料を板厚方向に平行な観察断面を有するように切り出して、該試料の観察断面において、母鋼板1の表面に平行な方向の幅が10μm以上であり、中間層2B、後述する母鋼板1、及び後述する絶縁皮膜30を含む測定領域中から、該幅方向に相互に2μm以上離れた5箇所以上の測定位置を選択して、中間層2Bの厚さをTEMで測定する。測定された値の平均を、中間層2Bの厚さとする。測定領域中における各測定位置の中間層2Bの厚さをTEMで測定する場合には、後述する母鋼板1及び絶縁皮膜30の間に存在する層を、中間層2Bとして測定する。
絶縁皮膜30は、中間層2Bの表面上に形成される。絶縁皮膜30は、母鋼板1に張力を付与して鋼板単板としての鉄損を低下させる。絶縁皮膜30はさらに、方向性電磁鋼板を積層して使用する際に、鋼板間の電気的絶縁性を確保する。
絶縁皮膜30は、Crを含有しなくてもよい。しかしながら、絶縁皮膜30がCrを含有する場合、後述するように絶縁皮膜が空洞を有していれば、母鋼板1と絶縁皮膜30との密着性に加え、耐水性が高まる。
絶縁皮膜中にボイドが存在すれば、曲げ等の応力が加わった際に、ボイドが応力緩和サイトとして働く。応力が緩和されれば、特に中間層2Bと母鋼板1との密着界面に作用する応力が低くなる。その結果、絶縁皮膜の母鋼板1に対する密着性が高まる。
一方、絶縁皮膜30の空洞率が30%を超えれば、絶縁性が低下する。したがって、絶縁皮膜30における空洞率は30%以下である。絶縁皮膜30における空洞率の好ましい上限は、25%であり、さらに好ましくは20%である。
絶縁皮膜30における空洞率が5%未満であれば、Feの侵入を阻止する効果が小さい。
鋼板の圧延方向に垂直な断面を鋼板表面に平行な方向へ1mm以上SEM観察し、空洞の面積率を画像解析により算出する。平均径は、観察領域内の各ボイドの面積から算出される円相当径を平均して求める。平均重心位置は、画像解析により求める。
具体的には、10000倍の倍率で撮影した反射電子像の画像を256諧調のモノクロ画像に変換する。256諧調の内、黒色側から50%の諧調を閾値として二値化画像に変換し、黒色領域を絶縁皮膜(ボイド含む)と定義する。また、256諧調の内、黒色側から20%の諧調を閾値として二値化画像に変換し、黒色領域をボイドと定義する。
絶縁皮膜中の空洞率は、上記2つの二値化画像で得られた各領域の面積から以下の式で算出する。
(空洞率)=(ボイドの面積)÷(絶縁皮膜(ボイド含む)の面積)×100(%)
また、ボイドの平均径は、二値化画像に対して、粒子解析により得られるボイドの平均円相当径とする。
さらに、ボイドの平均重心位置は、母鋼板表面からボイド内の画像ピクセルまでの距離をhとした時に、次式で求められる母鋼板表面とボイド内の全ピクセルとの平均距離haveとする。
絶縁皮膜30において、Cr濃度が絶縁皮膜30全体の平均Cr濃度の80%未満の領域を、「Cr欠乏領域」と定義する。母鋼板1の表面と垂直な断面での絶縁皮膜30において、絶縁皮膜30の空洞率が5~30%、かつボイドの平均重心位置から中間層と絶縁皮膜との界面までの距離が絶縁皮膜の厚さの4/5以内であれば、絶縁皮膜30中のCr欠乏領域の面積率を50%以下に制御できる。
絶縁皮膜30全体のCr濃度の平均は、皮膜部の空洞を除いた面分析結果すべての平均値とする。特定されたCr欠乏領域の総面積の、視野観察面中の絶縁皮膜30全体の総面積に対する比(%)を、観察視野の皮膜全体の面積に対する、Cr欠乏領域の総面積率(%)と定義する。
一方、絶縁皮膜30の厚さは10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。この場合、絶縁皮膜の膜厚増加による占積率の低下を抑制でき、鉄損の劣化を抑制することができる。
上述の本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、たとえば次の製造方法により製造できる。以下、本実施形態の方向性電磁鋼板の製造方法の一例を詳述する。
S0:準備工程
S1:熱間圧延工程
S2:熱延板焼鈍工程
S3:冷間圧延工程
S4:脱炭焼鈍工程
S5:焼鈍分離剤塗布工程
S6:仕上げ焼鈍工程
S7:(必要に応じて)母鋼板表面平滑化工程
S8:中間層形成工程
S9:絶縁皮膜形成工程
以下、各工程について説明する。
準備工程では、方向性電磁鋼板の製造に用いるスラブ(鋼素材)を準備する。スラブの化学組成は、一般的な方向性電磁鋼板における母鋼板の化学組成を用いることができる。スラブの製造方法の一例は次のとおりである。
溶鋼を製造(溶製)する。溶鋼を用いてスラブを製造する。連続鋳造法によりスラブを製造してもよい。溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。他の方法によりスラブを製造してもよい。スラブの厚さは、特に限定されない。スラブの厚さはたとえば、150~350mmである。スラブの厚さは好ましくは、220~280mmである。スラブとして、厚さが10~70mmの、いわゆる薄スラブを用いてもよい。薄スラブを用いる場合、熱間圧延工程において、次工程の仕上げ圧延前の粗圧延を省略できる。
スラブの化学組成はたとえば、次の元素を含有する。化学組成に関する%は質量%である。
シリコン(Si)は、方向性電磁鋼板の電気抵抗を高めて鉄損を低下させる。Si含有量が0.80%未満であれば、仕上げ焼鈍時にγ変態が生じて、方向性電磁鋼板の結晶方位が損なわれてしまう。したがって、Si含有量は0.80%以上であることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは2.00%以上であり、さらに好ましくは2.50%以上である。
一方、Si含有量が7.00%を超えれば、冷間加工性が低下して、冷間圧延時に割れが発生しやすくなる。したがって、好ましくは、Si含有量は7.00%以下である。Si含有量は、より好ましくは4.50%以下であり、さらに好ましくは4.00%以下である。
炭素(C)は不可避に含有される。Cは、一次再結晶組織の制御に有効な元素であるものの、磁気特性に悪影響を及ぼす。したがって、C含有量は0.085%以下であることが好ましい。C含有量はなるべく低い方が好ましい。
しかしながら、工業生産における生産性を考慮した場合、C含有量の好ましい下限は0.020%であり、さらに好ましくは0.050%である。Cは後述の脱炭焼鈍工程及び仕上げ焼鈍工程で純化され、仕上げ焼鈍工程後の母鋼板では0.005%以下となる。
酸可溶性アルミニウム(Al)は、Nと結合して(Al、Si)Nとして析出し、インヒビターとして機能する。酸可溶性Alの含有量が0.010~0.065%の範囲内にある場合に二次再結晶が安定する。したがって、酸可溶性Alの含有量は0.010~0.065%であることが好ましい。酸可溶性Al含有量は、より好ましくは0.015%以上であり、さらに好ましくは0.020%以上である。二次再結晶の安定性の観点から、酸可溶性Al含有量は、より好ましくは0.045%以下であり、さらに好ましくは0.035%以下である。
酸可溶性Alは、仕上げ焼鈍後に残留すると化合物を形成し、鉄損を劣化させる。そのため、仕上げ焼鈍中の純化により、方向性電磁鋼板の母鋼板においては、酸可溶性Alをできるだけ少なくすることが好ましい。
窒素(N)は、Alと結合してインヒビターとして機能する。N含有量が0.0040%未満であれば、十分な量のインヒビターが生成しない。したがって、N含有量は0.0040%以上であることが好ましい。N含有量は、より好ましくは0.0050%以上であり、さらに好ましくは0.0060%以上である。
一方、N含有量が0.0120%を超えれば、鋼板中に欠陥の一種であるブリスタが発生しやすくなる。したがって、N含有量は0.0120%以下であることが好ましい。N含有量は、より好ましくは0.0110%以下であり、さらに好ましくは0.01000%以下である。
Nは仕上げ焼鈍工程で純化され、仕上げ焼鈍工程後の母鋼板では0.0050%以下となる。
マンガン(Mn)は、S又はSeと結合して、MnS、又は、MnSeを生成し、インヒビターとして機能する。Mn含有量が0.05~1.00%の範囲内にある場合に、二次再結晶が安定する。したがって、Mn含有量は、0.05~1.00%であることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは0.06%以上であり、さらに好ましくは0.08%以上である。Mn含有量は、より好ましくは0.50%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。
硫黄(S)及びセレン(Se)は、Mnと結合して、MnS又はMnSeを生成し、インヒビターとして機能する。S及びSeの含有量が合計で0.003~0.015%であれば、二次再結晶が安定する。したがって、S及びSeの含有量は合計で0.003~0.015%であることが好ましい。
S及びSeは仕上げ焼鈍後に残留すると化合物を形成し、鉄損を劣化させる。そのため、仕上げ焼鈍中の純化により、仕上げ焼鈍後の母鋼板においては、S含有量及びSe含有量をできるだけ少なくすることが好ましい。
スラブの化学組成は、化合物形成によるインヒビター機能の強化や磁気特性への影響を考慮して、Feの一部に代えて、任意元素の1種または2種以上を以下の範囲で含有してもよい。Feの一部に代えて含有される任意元素として、たとえば、次の元素が挙げられる。
Bi:0.010%以下、
B:0.080%以下、
Ti:0.015%以下、
Nb:0.20%以下、
V:0.15%以下、
Sn:0.10%以下、
Sb:0.10%以下、
Cr:0.30%以下、
Cu:0.40%以下、
P:0.50%以下、
Ni:1.00%以下、及び
Mo:0.10%以下。
熱間圧延工程では、準備されたスラブに対して、熱間圧延機を用いて熱間圧延を実施して熱延鋼板(方向性電磁鋼板用熱延鋼板)を製造する。
具体的には、まず、スラブを加熱する。たとえば、スラブを周知の加熱炉又は周知の均熱炉に装入して、加熱する。スラブの好ましい加熱温度は1280℃以下である。スラブの加熱温度を1280℃以下とすることにより、たとえば、1280℃よりも高い温度で加熱した場合の諸問題(専用の加熱炉が必要なこと、及び溶融スケール量の多さ等)を回避することができる。
熱間圧延工程における仕上げ温度(仕上げ圧延機において最後に鋼板を圧下する仕上げ圧延スタンドの出側での鋼板温度)は、たとえば900~1000℃である。以上の熱間圧延工程により、熱延鋼板を製造する。
熱延板焼鈍工程では、熱間圧延工程により製造された方向性電磁鋼板用熱延鋼板に対して、熱延板焼鈍を実施して、焼鈍鋼板を製造する。
冷間圧延工程では、熱延板焼鈍工程後の焼鈍鋼板に対して、冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造する。冷間圧延は、冷間圧延機を用いて実施する。冷間圧延機は、一列に配列された複数の冷間圧延スタンドを備える。各冷間圧延スタンドは、複数の冷間圧延ロールを含む。
冷延率(%)=(1-最後の冷間圧延後の冷延鋼板の板厚/最初の冷間圧延開始前の焼鈍鋼板の板厚)×100
脱炭焼鈍工程では、冷間圧延工程により製造された冷延鋼板に対して、脱炭焼鈍を実施して一次再結晶させる。脱炭焼鈍はたとえば、次の方法で実施する。
冷延鋼板を熱処理炉に装入する。熱処理炉の温度(脱炭焼鈍温度)をたとえば、800~950℃とし、熱処理炉の雰囲気を、水素及び窒素を含有する湿潤雰囲気とする。脱炭焼鈍を実施することにより、一次再結晶が発現すると共に、鋼板中の炭素が鋼板から除去される。上述のとおり、脱炭焼鈍工程での脱炭焼鈍温度の一例は、800~950℃であり、脱炭焼鈍温度での保持時間の一例は、15~150秒である。
焼鈍分離剤塗布工程では、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤は、特に限定されない。例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とする焼鈍分離剤、マグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤、又は、これら両方を主成分とする焼鈍分離剤等が挙げられる。
仕上げ焼鈍工程では、焼鈍分離剤塗布工程後の母鋼板1に対して、仕上げ焼鈍を実施する。これにより、母鋼板1において二次再結晶を生じさせる。また、仕上げ焼鈍が行われると、焼鈍分離剤と母鋼板1とが反応して母鋼板表面に仕上げ焼純皮膜が形成される。仕上げ焼純皮膜には、焼鈍分離剤と鋼板とが反応して生じた生成物が含まれており、未反応の焼鈍分離剤が含まれていてもよい。その結果、仕上げ焼鈍工程により、仕上げ焼鈍皮膜が形成された母鋼板が製造される。
母鋼板表面平滑化工程は、必要に応じて実施される。つまり、母鋼板表面平滑化工程は、実施しなくてもよい。母鋼板表面平滑化工程が実施される場合、母鋼板表面平滑化工程では、絶縁皮膜30による鉄損の低下作用の妨害を回避できるように、必要に応じて、仕上げ焼鈍後の母鋼板表面を平滑面に調整する(平滑にする)。具体的には、母鋼板表面の算術平均粗さRaが、例えば、1.0μm以下となるように調整するのが好ましい。鉄損の低下作用の妨害を効果的に回避できるからである。平滑化後の母鋼板表面の算術平均粗さRaが0.7μm以下となるように調整することがより好ましく、0.5μm以下となるように調整することがさらに好ましい。
一方、「仕上げ焼鈍皮膜と母鋼板1との界面に凹凸が形成されない場合」とは、仕上げ焼鈍皮膜と母鋼板1との界面に凹凸が形成されない場合を意味する。具体的には、仕上げ焼鈍後の母鋼板表面のRa(算術平均粗さ)が、例えば、1.0μm以下である場合を意味する。
仕上げ焼鈍皮膜と母鋼板1との界面に凹凸が形成される場合には、絶縁皮膜30による鉄損の低下作用が界面の凹凸によって妨害されることを回避するために、母鋼板表面平滑化工程を実施する。具体的には、仕上げ焼鈍後の鋼板表面から仕上げ焼純皮膜を全て除去した上、仕上げ焼鈍後の母鋼板表面を平滑化することにより平滑面に調整する。
仕上げ焼鈍皮膜と母鋼板1との界面に凹凸が形成されない場合には、母鋼板表面平滑化工程を実施しなくてよい。
中間層形成工程では、仕上げ焼鈍工程後、又は、仕上げ焼鈍皮膜と母鋼板1との界面に凹凸が形成された場合には母鋼板表面平滑化工程後、母鋼板1に対して熱処理を実施して、母鋼板1の表面に接触し、酸化珪素を主体とする中間層2Bを形成する。
絶縁皮膜形成工程では、中間層表面にP、OおよびSiを含む化合物からなる絶縁皮膜30を形成する。絶縁皮膜30はCrを含んでもよい。絶縁皮膜形成工程は、絶縁皮膜30用のコーティング溶液を、中間層2Bの表面上に塗布する塗布工程と、コーティング溶液が塗布された母鋼板1を加熱し、焼付け処理を実施して絶縁皮膜30を形成する焼付け工程とを含む。以下、塗布工程及び焼付け工程について詳述する。
塗布工程では、燐酸塩、コロイド状シリカ、及び必要に応じて無水クロム酸又はクロム酸塩を含むコーティング溶液を、母鋼板1上の中間層2Bの表面上に塗布する。無水クロム酸又はクロム酸塩は含有しなくてもよい。燐酸塩としては、たとえば、Ca、Al、Mg、Sr等の燐酸塩が挙げられる。コロイド状シリカとは、直径1nm~直径1μm程度の粒子状の二酸化ケイ素(SiO2)である。コロイド状シリカは特に限定はなく、その粒子サイズも適宜使用することができる。クロム酸塩としては、例えば、Na、K、Ca、Sr等のクロム酸塩が挙げられる。さらに、コ-ティング溶液には、各種の特性を改善するために様々な元素や化合物をさらに添加してもよい。塗布方法も特に限定されず、周知の方法で足りる。
焼付け工程では、コーティング溶液が塗布された母鋼板1を加熱し、焼付け処理を実施して絶縁皮膜30を形成する。同時に、この焼付け工程により、絶縁皮膜30中にボイド33を形成する。形成されたボイドは熱拡散によるFeの絶縁皮膜30への侵入を抑制する。
母鋼板1の表面温度が100℃~600℃の温度域での平均加熱速度が10℃/秒未満であれば、脱ガス速度が遅いため、絶縁皮膜30中に十分なボイド33が形成されない。その結果、絶縁皮膜30中の空洞率が5%未満となり、絶縁皮膜の密着性が低下する。一方、母鋼板1の表面温度が100℃~600℃の温度域での平均加熱速度が200℃/秒を超えれば、絶縁皮膜30内にボイド33が過剰に形成される。そのため、絶縁皮膜30中の空洞率が30%を超える。この場合、鋼板の絶縁性が低下する。したがって、母鋼板1の表面温度が100℃~600℃の温度域での平均加熱速度を、10~200℃/秒とする。
ボイドによるFeの拡散抑制効果はボイドよりも母鋼板1側(中間層2Bと絶縁皮膜30との界面側)のFeに対して有効である。したがって、最も拡散速度の速い焼付け温度でのボイドの存在位置が、より界面側にあるほどFeの拡散が抑制され、Cr欠乏領域の形成を抑制する効果が高い。前記の制御でボイド33の存在位置が変化する理由は明らかではないが、ボイドに成長する核が形成するまでの、コーティング溶液の表面側からの乾燥状態、結晶水などの分解反応、さらには絶縁皮膜を形成する際の燐酸塩とコロイド状シリカの反応速度が影響して、中間層、絶縁皮膜界面に近い適切な領域にボイドの核が形成されるものと考えられる。さらに焼付け温度においてもボイド内に残留した水蒸気等の脱ガス過程が影響して、中間層、絶縁皮膜界面に近い位置でボイドの成長が優勢となる。その結果、ボイド分布が好ましい状態となり、Feの拡散およびそれに起因するCr欠乏層の拡大を効率的に抑制できると思われる。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、一般的に方向性電磁鋼板の製造方法において行われる工程をさらに含んでいてもよい。好ましくは、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、脱炭焼鈍工程後であって、仕上げ焼鈍工程前に、鋼板中のN含有量を増加させる窒化処理を実施する窒化処理工程をさらに含んでもよい。一次再結晶領域と二次再結晶領域の境界部位の鋼板に与える温度勾配が低くとも磁束密度を安定して向上させることができるからである。窒化処理としては、一般的な処理であればよい。例えば、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気中で焼鈍する処理、MnN等の窒化能のある粉末を含む焼鈍分離剤を塗布した母鋼板(脱炭焼鈍鋼板)を仕上げ焼鈍する処理等が挙げられる。
質量%で、Si:3.30%、C:0.050%、酸可溶性Al:0.030%、N:0.0080%、及びMn:0.10%、S及びSe:合計で0.005%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成のスラブを準備した。
上記スラブを1150℃で60分均熱加熱した。
加熱後のスラブに対して熱間圧延を施して、板厚が2.6mmの熱延鋼板を製造した。
製造した熱延鋼板に対して、熱延板焼鈍を実施して、焼鈍鋼板を製造した。熱延板焼鈍の条件は、900℃に120秒保持することとした。
製造された焼鈍鋼板に対して冷間圧延を施し、板厚が0.3mmの冷延鋼板を製造した。
仕上げ焼鈍後の鋼板の化学組成は、いずれも質量%で、Si:3.30%、C:0.0020%以下、酸可溶性Al:0.0030%以下、N:0.0020%以下、及びMn:0.10%、S及びSe:合計で0.0005%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなっていた。
得られた方向性電磁鋼板について、絶縁皮膜中の空洞率を測定した。また、皮膜の密着性、絶縁性を評価した。
絶縁皮膜中の空洞率を測定した。
具体的には、各試験番号の方向性電磁鋼板から、方向性電磁鋼板の圧延方向に垂直な断面が得られるように、試験片を採取した。試験片の断面に対して、SEMを用いて、倍率10000倍、視野面積8μm×6μmで、観察した。観察領域は、方向性電磁鋼板表面に平行な方向へ1mmとした。空洞の面積率を画像解析により算出した。
より具体的には、10000倍の倍率で撮影した反射電子像の画像を256諧調のモノクロ画像に変換し、256諧調の内、黒色側から50%の諧調を閾値として二値化画像に変換し、黒色領域を絶縁皮膜(ボイド含む)と定義した。また、256諧調の内、黒色側から20%の諧調を閾値として二値化画像に変換し、黒色領域をボイドと定義した。
そして、絶縁皮膜中の空洞率は、上記2つの二値化画像で得られた各領域の面積から以下の式で算出した。
(空洞率)=(ボイドの面積)÷(絶縁皮膜(ボイド含む)の面積)×100(%)
結果を表1に示す。
また、ボイドの平均径は、同様の画像を用いて、二値化画像に対して、粒子解析により得られる円相当径を平均して求めた。
密着性試験は、JIS K 5600-5-1(1999)の耐屈曲性試験に準じて実施した。試験番号1~試験番号16の方向性電磁鋼板から、圧延方向に80mm、圧延垂直方向に40mmの試験片を採取した。採取した試験片を直径16mmの丸棒に巻きつけた。密着性試験には、JIS K 5600-5-1(1999)の耐屈曲性試験に記載のタイプ1の試験装置を用いて、180°曲げを行った。曲げた後の試験片について、絶縁皮膜30が剥離した部分の合計面積を測定した。試験片の皮膜側の表面全体の面積に対する、絶縁皮膜30が剥離した部分の合計面積の割合を、φ16mm曲げ皮膜剥離率(%)とした。結果を表1に示す。
φ16mm曲げ皮膜剥離率(%)が50%以下であれば密着性に優れると判断した。
絶縁性試験は、JIS C 2550-4(2011)に準じて実施した。試験番号1~試験番号14の方向性電磁鋼板から、圧延方向に垂直な方向に30mm×圧延方向に280mmの試験片を採取した。採取した試験片に対して、JIS C 2550-4に記載された、層間抵抗(Ω・cm2)を測定した。電圧は0.5V、加圧力2N/mm2とした。10個の接触子電極に流れる全電流値から、層間抵抗値を算出した。測定された層間抵抗値の平均値を求め、層間抵抗とした。結果を表1に示す。層間抵抗が100Ω・cm2以上であれば、絶縁性に優れると判断した。
質量%で、Si:3.30%、C:0.050%、酸可溶性Al:0.030%、N:0.0080%、及びMn:0.10%、S及びSe:合計で0.005%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成のスラブを準備した。
上記スラブを1150℃で60分均熱加熱した。
加熱後のスラブに対して熱間圧延を施して、板厚が2.6mmの熱延鋼板を製造した。
製造した熱延鋼板に対して、熱延板焼鈍を実施して、焼鈍鋼板を製造した。熱延板焼鈍の条件は、900℃に120秒保持することとした。
製造された焼鈍鋼板に対して冷間圧延を施し、板厚が0.3mmの冷延鋼板を製造した。
また、仕上げ焼鈍後の鋼板の化学組成は、いずれも質量%で、Si:3.30%、C:0.0020%以下、酸可溶性Al:0.0030%以下、N:0.0020%以下、及びMn:0.10%、S及びSe:合計で0.0005%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなっていた。
仕上げ焼鈍後の母鋼板に対して、熱処理を実施して、中間層を形成した。中間層形成工程の条件は次のとおりであった。水素:35体積%、残部:窒素及び不可避不純物からなり、露点:-2℃の雰囲気で、800℃まで加熱して30秒間保持した。その後、自然冷却した。いずれの例でも、中間層の組成は、Fe含有量が80原子%未満、P含有量が5原子%未満、Si含有量が20原子%以上、O含有量が50原子%以上、Mg含有量が10原子%以下を満足していた。
コーティング溶液を塗布した鋼板に対して、水素:75体積%、残部:窒素及び不純物からなる雰囲気で、表2の「焼付け温度」欄に記載の温度まで加熱した。また、鋼板の表面温度が100℃~600℃の間の温度域での平均加熱速度は、表2の、「焼付け工程での加熱速度」欄に記載のとおりとした。加熱した鋼板を、30秒間保持して絶縁皮膜を焼付けた。
得られた方向性電磁鋼板について、絶縁皮膜中の空洞率、ボイドの平均径、重心位置、絶縁皮膜中のCr濃度、Cr欠乏領域の総面積率を測定した。また、皮膜の密着性、絶縁性、耐水性を評価した。
各試験番号の方向性電磁鋼板から、方向性電磁鋼板の圧延方向に垂直な断面が得られるように、試験片を採取した。試験片の断面に対して、SEMを用いて、倍率10000倍、視野面積8μm×6μmで、観察した。観察領域は、方向性電磁鋼板表面に平行な方向へ1mmとした。空洞の面積率を実施例1と同様の要領で画像解析により算出した。
結果を表2に示す。
空洞率の測定に用いた画像を用いて、ボイドの平均径を、実施例1と同様の要領で観察領域内の各ボイドの面積から算出される円相当径を平均して求めた。
また、ボイドの平均重心位置は、母鋼板表面からボイド内の画像ピクセルまでの距離をhとした時に、次式で求められる母鋼板表面とボイド内の全ピクセルとの平均距離haveとして求めた。
結果を表2に示す。表2の「ボイドの平均重心位置」の欄のA~Dは、以下を示す。
A:ボイドの平均重心位置から中間層と絶縁皮膜との界面までの距離が、絶縁皮膜厚さの4/5超
B:ボイドの平均重心位置から中間層と絶縁皮膜との界面までの距離が、絶縁皮膜厚さの4/5以下、2/3超
C:ボイドの平均重心位置から中間層と絶縁皮膜との界面までの距離が、絶縁皮膜厚さの2/3以下、1/2超
D:ボイドの平均重心位置から中間層と絶縁皮膜との界面までの距離が、絶縁皮膜厚さの1/2以下
絶縁皮膜中のCr濃度測定は、各試験番号の方向性電磁鋼板表面において、方向性電磁鋼板表面に対して平行な方向に10μmを分析して算出した。TEMで絶縁皮膜全体を観察して、絶縁皮膜の厚さ方向の全厚が含まれるように、Cr濃度分布についてEDS(エネルギー分散型X線分析)面分析を行い、面分析で得られた絶縁皮膜の各位置でのCr濃度の平均値を、平均Cr濃度(原子%)と定義した。測定条件は、倍率1000倍で、被膜部の総視野面積は20μm2とした。
絶縁皮膜のCr欠乏領域の総面積率を測定した。絶縁皮膜中のCr濃度測定を、上記のとおり行った結果、Cr濃度が、原子濃度で、絶縁皮膜全体の平均濃度の80%未満であれば、Cr欠乏領域であると特定した。絶縁皮膜全体のCr濃度の平均は、皮膜部の空洞を除いた面分析結果すべての平均値とした。特定されたCr欠乏領域の総面積の、視野観察面中の絶縁皮膜全体の総面積に対する比(%)を、Cr欠乏領域の面積率(%)とした。
密着性試験は、JIS K 5600-5-1(1999)の耐屈曲性試験に準じて実施した。試験番号17~試験番号30の方向性電磁鋼板から、圧延方向に80mm、圧延垂直方向に40mmの試験片を採取した。採取した試験片を直径16mmの丸棒に巻きつけた。密着性試験には、JIS K 5600-5-1(1999)の耐屈曲性試験に記載のタイプ1の試験装置を用いて、180°曲げを行った。曲げた後の試験片について、絶縁皮膜30が剥離した部分の合計面積を測定した。試験片の皮膜側の表面全体の面積に対する、絶縁皮膜30が剥離した部分の合計面積の割合を、φ16mm曲げ皮膜剥離率(%)とした。結果を表2に示す。
φ16mm曲げ皮膜剥離率(%)が50%以下であれば密着性に優れると判断した。
絶縁性試験は、JIS C 2550-4(2011)に準じて実施した。試験番号17~30の方向性電磁鋼板から、圧延方向に垂直な方向に30mm×圧延方向に280mmの試験片を採取した。採取した試験片に対して、JIS C 2550-4に記載された、層間抵抗(Ω・cm2)を測定した。電圧は0.5V、加圧力2N/mm2とした。10個の接触子電極に流れる全電流値から、層間抵抗値を算出した。測定された層間抵抗値の平均値を求め、層間抵抗とした。結果を表2に示す。層間抵抗が100Ω・cm2以上であれば、絶縁性に優れると判断した。
絶縁皮膜の耐水性については、上記の密着性試験後の試験片を用いて評価した。密着性試験後の試験片の曲げた部分を、曲げたまま水の中に浸漬した。1分経過後、試験片を引き上げ、絶縁皮膜が剥離した部分の合計面積を測定した。試験片の皮膜側の表面全体の面積に対する、絶縁皮膜が剥離した部分の合計面積の割合を、水浸漬後の皮膜剥離率(%)とした。結果を表2に示す。
φ16mm曲げ皮膜剥離率と水浸漬後の皮膜剥離率の差が20%以下である場合に、耐水性に優れると判断した。
試験番号18~20、25~28ではさらに、水浸漬後の皮膜剥離率が(φ16mm曲げ皮膜剥離率+20)%以下となり、耐水性にも優れた。
2A Mgを含有する酸化皮膜である仕上げ焼鈍皮膜
2B 中間層
3、30 絶縁皮膜
31 マトリクス
33 ボイド
Claims (6)
- 母鋼板と、
前記母鋼板の表面上に直接接して形成されており、かつ、酸化珪素を主体とする中間層と、
前記中間層の表面上に形成されている絶縁皮膜と
を備え、
前記絶縁皮膜がボイドを含み、前記絶縁皮膜中の空洞率が、面積率で5~30%である、方向性電磁鋼板。 - 請求項1に記載の方向性電磁鋼板であって、前記ボイドの平均径が、前記絶縁皮膜の膜厚の1/4以下かつ1/20以上である、
方向性電磁鋼板。 - 請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板であって、
前記絶縁皮膜が、P、OおよびSiを含む化合物と、Crとからなり、前記絶縁皮膜中の平均Cr濃度が、0.1原子%以上である、
方向性電磁鋼板。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板であって、
前記ボイドの平均重心位置から、前記絶縁皮膜と前記中間層との界面までの距離が、前記絶縁皮膜の膜厚の4/5以下である、
方向性電磁鋼板。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板であって、
前記絶縁皮膜の表面において、
Cr濃度が前記絶縁皮膜全体の平均Cr濃度の80%未満であるCr欠乏領域の総面積率が50%以下である、
方向性電磁鋼板。 - スラブを準備する準備工程と、
前記スラブを1280℃以下で加熱した後、熱間圧延を実施して方向性電磁鋼板用熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、
前記方向性電磁鋼板用熱延鋼板に対して熱延板焼鈍を実施して焼鈍鋼板を製造する熱延板焼鈍工程と、
前記焼鈍鋼板に対して冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造する冷間圧延工程と、
前記冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を実施して母鋼板を製造する脱炭焼鈍工程と、
前記母鋼板に焼鈍分離剤を塗布する焼鈍分離剤塗布工程と、
前記焼鈍分離剤塗布工程後の前記母鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施して、仕上げ焼鈍皮膜が形成された前記母鋼板を製造する仕上げ焼鈍工程と、
必要に応じて、仕上げ焼鈍皮膜を除去し、前記母鋼板の表面粗さをRaで1.0μm以下の平滑面にする母鋼板表面平滑化工程と、
仕上げ焼鈍工程又は母鋼板平滑化工程後の前記母鋼板に対して熱処理を実施して、前記母鋼板の表面と接触し、酸化珪素を主体とする中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の表面に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程と、
を備え、
前記絶縁皮膜形成工程は、
前記母鋼板の表面に形成された前記中間層の前記表面上に、燐酸塩、コロイド状シリカ、及び無水クロム酸又はクロム酸塩を含むコーティング溶液を塗布する塗布工程と、 前記コーティング溶液が塗布された前記母鋼板を加熱して、600~1150℃で5~300秒焼付け処理を行って前記絶縁皮膜を形成する焼付け工程と、
を含み、
前記焼付け工程では、前記母鋼板の加熱の際、100~600℃の温度域での平均加熱速度を10~200℃/秒とする、
方向性電磁鋼板の製造方法。
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