JP7207643B2 - 連続培養条件のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
回分培養は、一回ごとに新たな培地を用意し、そこへ細胞株を植えて収穫まで培地を加えない培養法である。回分培養には、培養ごとに品質はバラつくが、コンタミネーションのリスクを分散・低減できるという特徴がある。
流加培養は、培養中に、培地自体や培地中の特定の成分を添加し、培養終了時までその生産物を抜き取らない培養方法である。
連続培養は、連続的に培養系に培地を供給すると同時に同量の培養液を抜き取る培養法である。連続培養には、培養環境を常に一定に保ちやすく、生産性が安定するという特徴がある。
(生産性)=∫(生産物生成速度)×(細胞数)dt ・・・式1
なお、連続培養において定常状態に達した後の細胞増殖には、余剰細胞の分解によって不純物が増加するだけでなく、細胞分裂回数増加によって変異が発生する可能性があるという問題がある。また、細胞増殖のために必要以上の培地栄養成分と酸素供給が要求される一方で、老廃物と二酸化炭素を除去する必要があるという問題がある。
本発明に係る連続培養条件のスクリーニング方法は、{(生産物生成速度)/(細胞増殖速度)}が最大になるという指標、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、前記代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて連続培養用浮遊系細胞株を選別するものであり、細胞が定常状態となった後に、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間、または、前記代謝フラックスの解析を行う。
前述したように、回分培養および流加培養では、細胞数密度の低い状態から高い状態まで細胞数を増殖させるので、生産物生成速度が同じであれば、増殖が速い方が生産性を示す前記式1の値が大きくなる。そのため、回分培養および流加培養では、生産物生成速度および細胞増殖速度ともに高い細胞株が好まれる。
I=(生産物生成速度)/(細胞増殖速度) ・・・式2
図1は、本実施形態に係る連続培養条件のスクリーニング装置の一例を示す概略図である。
本実施形態に係る連続培養条件のスクリーニング装置(以下、単に「スクリーニング装置」ということがある)は、実生産に用いられる連続培養装置(図示せず)内で細胞培養するときの連続培養条件をスクリーニングする装置である。
図1に示すように、本実施形態に係るスクリーニング装置1は、培養手段2と、分析手段3と、判別手段4と、解析手段5と、選定手段6と、選別手段7とを含んでいる。
本実施形態における培養手段2は、実生産に用いられる連続培養装置(図示せず)内で細胞を培養するときの連続培養条件を設定して(模擬して)、細胞培養を行う槽である。設定される連続培養条件としては、例えば、温度、溶存酸素濃度、培地組成、攪拌回転数などが挙げられる。培養手段2では、スクリーニングされる細胞株も設定(選定)される。培養手段2は、細胞培養に必要な設備として当該培養手段2に付随して、培地添加手段21、細胞分離手段22および回収手段23を有している。
培地添加手段21から培養手段2へは配管T1で、培養手段2から細胞分離手段22へは配管T2で、細胞分離手段22から回収手段23へは配管T3で、細胞分離手段22から培養手段2へは配管T4でそれぞれ接続されている。また、これらの配管のうち、配管T1、T2、T3の任意の箇所にポンプP1~P3が設置されている。
ここで、前記した図示しない実生産に用いられる連続培養装置も、培地添加手段、培養手段、細胞分離手段および回収手段を有して構成されている。当該連続培養装置におけるこれらの構成要素は、スクリーニング装置1の培地添加手段21、培養手段2、細胞分離手段22および回収手段23にそれぞれ相当し、同様の構成とすることができる。
図1は、培養手段2を1つだけ備えた1系統のスクリーニング装置1を図示している。一般的に、遺伝子組換えを行った細胞は複数の候補細胞株(細胞株プール)として保存される。従って、スクリーニングの効率を向上させるため、図2に示すように、培養手段2を複数系統備えたスクリーニング装置1Aとするのが望ましい。
図2に示すスクリーニング装置1Aは、例えば、容量が100mLである培養手段2(具体的には細胞培養槽)を8つ備えており、それぞれ培養手段2a~2hとしている。なお、図2において図示はしないが、スクリーニング装置1Aは、スクリーニング装置1と同様、それぞれの培養手段2a~2hに付随して、培地添加手段21、細胞分離手段22および回収手段23を有している。
培地添加手段21は、培養手段2内において細胞が消費した液体培地中の栄養成分を補うため、新鮮な液体培地を一時的に貯留しておく槽である。培地添加手段21は、新鮮な液体培地を一時的に貯留しておくことができる槽であればどのようなものも用いることができる。培地添加手段21は、培養手段2に添加する新鮮な培地を貯留できればよく、槽の数は特に限定されない。培地添加手段21における槽の数は1つでもよいし、複数でもよい。培地添加手段21は、ポンプP1の出力とバルブVの開閉・開度によって新鮮な液体培地の添加速度を調節することができる。なお、新鮮な液体培地は、培養しようとする細胞に応じて適宜に選択・調製することができる。
細胞分離手段22は、培養手段2の培養液から培養細胞と、生産物および老廃物と、を分離する装置である。細胞分離手段22は、配管T4を通じて培養細胞を培養手段2に戻し、配管T3を通じて生産物および老廃物を回収手段23へ移送する。細胞分離手段22としては、例えば、重力沈降法、遠心分離法、超音波凝集法、ろ過分離法などが挙げられ、本実施形態ではいずれの手法を用いてもよい。なお、生産物としては、例えば、抗体タンパクや各種の生理活性物質などが挙げられ、老廃物としては、例えば、乳酸やアンモニアなどが挙げられる。
回収手段23は、前記したように、細胞分離手段22で分離された生産物および老廃物を一時的に貯留しておく槽である。回収手段23は、生産物および老廃物を一時的に貯留しておくことができる槽であればどのようなものも用いることができる。
スクリーニング装置1では、例えば、細胞の細胞増殖期(対数増殖期)中や、細胞増殖期が過ぎて生産物生成期に入った後(定常状態に達した後)など、適宜のタイミングで培養手段2から培養液をサンプリングし、分析手段3で生産物の濃度と培地成分を分析して、細胞の状態を分析する。具体的には、分析した細胞の状態を反映する生産物生成速度、細胞増殖速度、細胞周期、細胞内の代謝の流れ(代謝フラックス)、栄養基質消費速度、老廃物などの副生成物分泌速度などを少なくとも1つ分析する。分析手段3の分析対象として挙げたこれらの項目は任意に選択可能であり、少なくとも一つを分析すればよい。ただし、後記する選別手段8で{(生産物生成速度)/(細胞増殖速度)}、細胞周期、代謝フラックスのうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて連続培養用細胞株を選別することから、生産物生成速度および細胞増殖速度と、細胞周期と、代謝フラックスとのうちの少なくとも一つは分析しておくのが好ましい。分析手段3は、得られた分析値を解析制御手段8に送信する。分析手段3で分析され得るこれらの分析対象に関する分析方法等は以下のようなものである。
生産物生成速度を求めるために、まず培養手段2内の生産物の濃度を分析する。例えば、目的とする生産物がタンパク質である場合におけるタンパク質の濃度は以下のようにして分析することができる。
タンパク質の定量ではELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)法を用いることができる。ELISA法は、測定対象のタンパク質と抗原抗体反応を示す抗体を用い、結合した抗体の蛍光もしくは酵素活性により、測定対象のタンパクの濃度を算出する。ELISA法には、直接法、間接法、サンドイッチ法、競合法などの方法があるが、いずれの方法で測定しても構わない。
培養におけるタンパク質の濃度の経時変化を測定し、単位時間、単位細胞数あたりの生成量に換算することで、生産物生成速度を求めることができる。
栄養基質消費速度および副生成物分泌速度を求めるために培地成分を分析する。具体的には、培養手段2内の栄養基質濃度および副生成物濃度を分析する。なお、栄養基質とは、培地成分のうち、細胞の成長や生産物の生成に必要なものをいい、例えば、無機成分、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類などが挙げられる。また、副生成物とは、細胞が成長したり、生産物を生成したりする過程において、副産物として生成されるものをいい、例えば、炭酸ガス、乳酸、アンモニア、ピルビン酸、クエン酸などが挙げられる。
培養における培地成分、具体的には、栄養基質濃度および副生成物濃度の経時変化をそれぞれ測定し、単位時間あたりの消費量および生成量に換算することで、栄養基質消費速度および副生成物分泌速度をそれぞれ求めることができる。
代謝フラックスの分析方法の一例を以下に説明する。図3は、代謝フラックスの分析方法の概念を示す説明図である。図3に示すシミュレーションでは最初にランダムな代謝フラックスの値(代謝反応速度初期値(乱数))(図3のR1~R8)を与え、代謝経路モデルを基に、定常状態での細胞内の各代謝物質に含まれる同位体炭素の数の比を計算する。この計算値と実験で測定した細胞内代謝物質の同位体炭素数比との比較を行う。そして、同位体比率分布について統計学的に有意差がない場合(一致する場合)は、推定代謝フラックスと決定される(代謝反応速度決定)。一方、同位体比率分布について統計学的に有意に差がある場合(不一致となる場合)は、シミュレーションによる代謝物質中の同位体数炭素比の値を実験による代謝物質中の同位体炭素数比の値との平均自乗誤差が最小となるようにシミュレーションによる代謝フラックスの値を補正する。この補正は、例えば、QP(Quadratic Programming)部分問題法を適用することにより行うことができる。QP部分問題法は、生成された特定の代謝物1~3の同位体炭素数比と、シミュレーションによる特定の代謝物1~3の同位体炭素数比と間に統計学的な有意差が生じる場合に、両者間の平均自乗誤差が予め設定された所定範囲内に収まり、最小となるように、先にシミュレーションにより得た代謝経路R1~R8におけるそれぞれの代謝フラックスの値の中で、当該誤差に関係する代謝経路R1~R8における代謝フラックスの値を補正するというものである。前記したように、シミュレーションによる結果が不一致となる場合、補正した代謝フラックスで同位体炭素比を計算し、同位体比率分布について統計学的な有意差がなくなるまで実験による代謝物質中の同位体炭素数比の値を比較するという操作を繰り返す。シミュレーションによる結果が一致する場合、その結果により代謝反応速度(代謝フラックス)を決定する。
細胞増殖速度を求めるために、まず培養手段2内の細胞数を分析(測定)する。細胞数の測定は、トリパンブルー染色法および血球計算盤を用いた顕微鏡観察により行うことができる。なお、細胞数の測定は、乾燥菌体重量法、濁度法、静電容量法、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)測定、フローサイトメトリー法等の他の方法を用いて行うこともできる。
ここで、生細胞数をX、比増殖速度をμ、時間をtとすると、式3の関係になる。
μX=dX/dt ・・・式3
図4は、真核細胞の細胞周期の概念を示す説明図である。細胞周期は、1つの細胞が分裂して2つの細胞になるために必要な期間であり、図4に示すように、細胞分裂期(有糸分裂期、M期)と、それ以外の細胞分裂間期(間期)からなる。間期は、G1期、S期、G2期からなる。真核細胞は細胞周期を繰り返すことで増殖する。典型的な動物の細胞では、1細胞周期にかかる時間は16~24時間であり、M期は1時間、G2期は2~6時間、S期は6~8時間である。なお、G1期は細胞株の種類や連続培養条件によって相違する。M期、G1期、S期、G2期の時間比はおよそ1:5:7:3である。また、連続培養条件等の様々な要因により、G1期において、細胞周期から離脱し静止状態になることがある。これをG0期という。G0期の長さおよび含有比は不定である。従って、G0期の細胞を含む場合には、M期、G1期(およびG0期)、S期、G2期の時間比は不定である。
図5中の曲線C11は、G0期とG1期の細胞を示す。G0期とG1期の細胞からは比較的強度が低い蛍光が検出される。曲線C12は、S期の細胞を示す。S期の細胞からは、広い範囲の強度の蛍光が検出される。曲線C13は、G2期とM期の細胞を示す。G2期とM期の細胞からは比較的強度が高い蛍光が検出される。
細胞増殖速度の測定は、細胞の増殖を待つ必要があり、数日かかるのに対し、細胞周期の測定は1時間程度で解析できる。そのため、細胞周期を測定する場合、スクリーニングにおける時間短縮を図ることができる。
なお、細胞周期から細胞数を推定することもできる。細胞周期からの細胞数の推定は以下のようにして行う。
細胞周期について、M期は1時間、G2期は2時間であると仮定する。ある時刻t=t0で培養液をサンプリングすると生細胞数N0が得られ、そのときのM期の細胞の割合をPMとする。M期の細胞は1時間後に分裂を完了するので、生細胞の増加数は、N0×PMとなる。従って、1時間後の生細胞数N1および細胞増殖速度μ1(h-1)はそれぞれ式4、式5で表すことができる。
N1=N0+N0×PM=N0×(1+PM) ・・・式4
μ1=ln N1-ln N0 ・・・式5
N2=N0+N0×PM+G2=N0×(1+PM+G2) ・・・式6
μ2=(ln N2-ln N0)/3=ln(1+PM+G2)/3 ・・・式7
μ3=(ln N2-ln N0)/TM+G2=ln(1+PM+G2)/TM+G2 ・・・式8
サンプリングした培養液中に含まれる細胞に対してPIで染色し、フローサイトメータで各細胞のPI蛍光強度を計測すると、前述した図5と同じ結果を得ることができる。前述したように、図5中の曲線C11はG0期とG1期の細胞を示し、曲線C12はS期の細胞を示し、曲線C13はG2期とM期の細胞を示す。3つの曲線C11、C12、C13は度数分布曲線であるため、この曲線を所定の範囲について積分することによって、その範囲の細胞数が求められる。すなわち、これらの曲線の下側の面積は細胞数を示し、面積比は細胞数比を表す。例えば、曲線C13の下側の面積を測定することによって、G2期とM期の細胞数が得られる。また、曲線C13の下側の面積を他の曲線の下側の面積と比較することによって、G2期とM期の細胞数と他の期の細胞数との比が求められる。
前述した(細胞周期から細胞数を推定する方法)に基づいて、生細胞数の推定実験を行った。
Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞の培養において、細胞周期測定により細胞増殖速度を推定した。CD-CHO培地(Gibco社製)を用い、CHO細胞をスピナーフラスコ(150ml)で培養した。培養2日目と培養4日目はサンプリングを3時間おきに行い、それ以外の日は一日一度サンプリングを行った。サンプリングした細胞について、生細胞数およびG2期+M期の細胞割合を測定した。生細胞数の計測には、製品名Vi-Cell(ベックマン・コールター社製)を用いた。G2期の細胞とM期の細胞の合計の割合の計測には、Cell Cycle Phase Determination Kitを用い、添付のプロトコルに従い細胞を蛍光色素で標識し、フローサイトメータ(ベックマン・コールター社製)により測定を行った。
また、図7は、培養2日目および培養4日目のフローサイトメータによる細胞周期の測定結果を示すグラフである。図7の縦軸は細胞数を示し、横軸はPI蛍光強度(∝DNA量)を示す。破線の折れ線は、培養2日目の細胞数を示し、実線の折れ線は、培養4日目の細胞数を示す。これらの折れ線の左側の山はG0期とG1期の細胞を示し、中央部分の折れ線部分はS期の細胞を示し、右側の折れ線の山はG2期とM期の細胞を示す(図5参照)。図7の折れ線グラフから、培養2日目および培養4日目の単位時間あたりの増殖細胞数を推定した。
図8は、前記した細胞周期から推定した増殖細胞数の推定値と、実際に計数して求めた増殖細胞数の実測値を示すグラフである。培養2日目も培養4日目も、前記推定値と実際に計数して求めた増殖細胞数とは同等の値となることが確認された。つまり、細胞周期から増殖細胞数を推定可能であることが確認された。すなわち、前記した推定値を前記した式8に適用することで比増殖速度(細胞増殖速度)を求められることが確認された。
図1に戻って説明を続ける。解析制御手段8は、CPUやハードディスクドライブなどの記憶媒体を備えた汎用コンピュータやパーソナルコンピュータなどである。解析制御手段8は、当該記憶媒体に所定のプログラムを記憶させておき、これを読み出すことで解析制御手段8(コンピュータ)を所定の手段として機能させることができる。所定の手段としては、判別手段4、解析手段5、選定手段6、選別手段7が挙げられる。これらの手段については後述する。
前記したように、解析制御手段8は、判別手段4として機能することで、分析手段3で得られた分析値から細胞の培養状態が定常状態であるか否かを判別する。前記した定常状態の判別指標としては、細胞の栄養基質消費速度、細胞の副生成物分泌速度、細胞の代謝フラックス、および細胞の細胞呼吸速度のうちのいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせたものであることが好ましい。これらの指標は、前記したセンサと分析手段3によって、例えば、グルコースやグルタミンなどの特定の栄養成分、乳酸やアンモニアなどの特定の代謝分泌物、ピルビン酸やクエン酸などの特定の細胞内代謝物、培養手段2内のDOおよびDCO2を適宜測定することで把握することができる。これらの判別指標を用いれば、細胞が定常状態であるか否か容易に且つ的確に判別することができる。
解析制御手段8は、解析手段5として機能することで、細胞の培養状態が定常状態であるときに、前記分析手段3で分析され、送信されてきた分析値から、細胞増殖速度、細胞周期、および代謝フラックスのうちの少なくとも1つの解析を行う。培養状態が定常状態であるときの細胞についてこれらの解析を行うことで、生産物生成期における好ましい連続培養条件を選別することが可能となる。
解析制御手段8は、選定手段6として機能することで、細胞増殖速度、細胞周期、および代謝フラックスのうちの少なくとも1つの解析結果に基づいて最適な連続培養条件を選定する。このように、スクリーニング装置1で設定した複数の細胞株とこれに関する連続培養条件について、これらの解析結果に基づいて最適な連続培養条件を選定するので、定常状態に達した後の細胞増殖が少なく、細胞増殖速度に対して生産物生成速度が高い連続培養用細胞株に適した連続培養条件を得ることが可能となる。
そして、解析制御手段8は、選別手段7として機能することで、最適な連続培養条件で培養された細胞の細胞増殖速度または細胞周期と、その生産物生成速度と、を評価して、連続培養用細胞株を選別する。具体的には、{(生産物生成速度)/(細胞増殖速度)}が最大になるという指標、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、前記代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて連続培養用細胞株を選別する。このように、スクリーニング装置1で設定した複数の細胞株とこれに関する連続培養条件について、これらの解析結果に基づいて評価するので、定常状態に達した後の細胞増殖が少なく、細胞増殖速度に対して生産物生成速度が高い細胞株を選別することができる。
次に、図9を参照して本実施形態に係る連続培養条件のスクリーニング方法(以下、単に「スクリーニング方法」ということがある)について説明する。なお、図9は、スクリーニング方法の内容を説明するフローチャートである。以下の説明において、スクリーニング装置1と同じ要素については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
本スクリーニング方法は、図9に示すように、培養工程S1と、分析工程S2と、判別工程S3と、解析工程S4と、を複数の培養細胞および連続培養条件で実施するものであり、選定工程S5と、選別工程S6と、を含んでいる。培養工程S1から選別工程S6はこの順で行うのが好ましい。
図10に示すように、スクリーニング方法は、最初に、調査すべき連続培養条件(温度、溶存酸素濃度、培地組成、攪拌回転数などの制御値)と培養試験を行う順番を設定する(培養条件設定、ステップS11)。そして、スクリーニング装置1に最初の連続培養条件を設定し(培養条件設定、ステップS11)、培養を開始する(ステップS12)。なお、培養開始直後は、細胞は非定常状態であるため、定刻ごとに細胞培養液のサンプリングを行う(ステップS13)。これらステップS11、12は培養工程S1で行い、ステップS13は分析工程S2で行う。
一方、解析結果を記録した後、計画が完了していたら培養を終了する(ステップS18で“計画完了”)。このステップS18も解析工程S4で行う。
他の候補細胞株がある場合、さらに他の候補細胞株での結果と比較し、最終的に生産性が最も良い細胞株および連続培養条件を選定・選別し、スクリーニングを完了する。
つまり、図11に示す他の一例では、ステップS13とステップS14の間でステップS17を行っている点で、図10に示す一例とは相違している。このようにすると、非定常の期間の生産物生成速度、細胞増殖速度などの解析を行うことができるので、非定常の期間の連続培養条件での細胞状態を把握することができる。
そして、その後に、{(生産物生成速度)/(細胞増殖速度)}が最大となるという指標、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、前記代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて連続培養条件の選定と、連続培養用細胞株の選別とを行う(ステップS19)。
そして、その後、選定した連続培養条件と選別した連続培養用細胞株とが、目標条件の仕様を達成しているか否かを判断する(ステップS20)。これらが目標条件の仕様を達成していない場合(ステップS20で“未達”)、連続培養条件の設定を変更して、再度、ステップS11から一連の手順を行う。
一方、これらが目標条件の仕様を達成している場合(ステップS20で“達成”)、予め計画された実験計画を全て実行しなくともスクリーニングを終了する。
つまり、図12に示す他の一例では、実験条件の選定を行うステップS18(図10、図11参照)を省略している点で、図10に示す一例とは相違している。このようにすると、目標条件の仕様を達成し次第、スクリーニングを終了するので、時間とコストを削減することができる。
さらに、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
S2 分析工程
S3 判別工程
S4 解析工程
S5 選定工程
S6 選別工程
1、1A 連続培養条件のスクリーニング装置(スクリーニング装置)
2 培養手段
3 分析手段
4 判別手段
5 解析手段
6 選定手段
7 選別手段
Claims (5)
- 細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて連続培養用浮遊系細胞株を選別するものであり、
細胞が定常状態となった後に、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間、または、前記代謝フラックスの解析を行う
ことを特徴とする連続培養条件のスクリーニング方法。 - 請求項1において、
前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、前記代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて培地組成を決定することを特徴とする連続培養条件のスクリーニング方法。 - 請求項1において、
前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、前記代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて細胞代謝経路を決定することを特徴とする連続培養条件のスクリーニング方法。 - 請求項1において、
前記定常状態の判別指標が、前記細胞の栄養基質消費速度、前記細胞の副生成物分泌速度、前記細胞の代謝フラックス、および前記細胞の細胞呼吸速度のうちのいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせたものであることを特徴とする連続培養条件のスクリーニング方法。 - 実生産に用いられる連続培養装置内で細胞培養するときの連続培養条件をスクリーニングする方法であり、
前記連続培養条件を設定して細胞を培養する培養工程と、
前記培養工程で培養している培養液をサンプリングし、生産物の濃度と培地成分を分析して分析値を得る分析工程と、
前記分析値から細胞の培養状態が定常状態であるか否かを判別する判別工程と、
前記培養状態が定常状態であるときに、前記分析値から細胞周期および代謝フラックスのうちの少なくとも1つの解析を行う解析工程と、
を複数の培養細胞および連続培養条件で実施し、
前記細胞周期および前記代謝フラックスのうちの少なくとも1つの解析結果に基づいて最適な連続培養条件を選定する選定工程と、
前記最適な連続培養条件で培養された細胞を評価して、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間が最も長いという指標、および、前記代謝フラックスの分析によって決定された代謝経路の数が最も少ないという指標のうちから選択される少なくとも一つの指標に基づいて連続培養用細胞株を選別する選別工程と、
を含み、
前記細胞が定常状態となった後に、前記細胞周期のG0期およびG1期の合計期間、または、前記代謝フラックスの解析を行う
ことを特徴とする連続培養条件のスクリーニング方法。
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