JP7210366B2 - 非破壊評価方法および非破壊評価システム - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、非破壊評価方法および非破壊評価システムに関する。
40年超える原子力発電プラントの運転においては、圧力容器の中性子照射脆化評価による健全性担保が求められる。現在、脆化評価は予測と実測の両面から行われている。予測は、照射により金属組織中に形成される脆化因子である溶質原子クラスターおよび転位ループの数密度、低合金鋼の化学組成、照射速度、照射時間などの関数である脆化予測式により行われている。一方、実測は、原子炉内に設置された監視試験片を破壊試験に供することで行われている。しかし、運転開始時に設置された試験片数が40年運転相当分であったことから、将来、監視試験片の数が不足することが懸念されている。その解決策として、超微小硬さ試験により脆化度合いを評価することで、測定に伴う試験片の損傷を最小限に抑える方法、超音波を用いて脆化度合いを非破壊で評価する方法などが知られている。
特許第5562726号公報 特開平11-248691号公報
原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-2007) 一般社団法人日本電気協会 電力中央研究所報告 軽水炉圧力容器鋼材の照射脆化予測法の式化に関する研究-照射脆化予測法の開発- 一般財団法人電力中央研究所
脆化予測式の入力値となる溶質原子クラスターおよび転位ループの数密度評価を行うためには、監視試験片から観察試料を作製する必要があるため、監視試験片が損傷を受ける。また、超微小硬さ試験による評価方法では測定後の試験片表面に圧痕が残るため、同一箇所での再測定が不可能となる。一方、超音波による評価方法では、評価後の試験片に損傷は生じないが、脆化因子である溶質原子クラスターおよび転位ループを分離して評価することができないため、脆化予測式への入力値となる溶質原子クラスターおよび転位ループの数密度を得ることができない。試験片に損傷を与えることなく、溶質原子クラスターおよび転位ループの数密度を分離して評価したいという要望がある。
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、金属材料中に形成された脆化因子を非破壊で評価することができる非破壊評価技術を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る非破壊評価方法は、金属材料の物性値の変化に基づいて前記金属材料における中性子照射脆化による脆化因子を評価する工程を含み、電気特性値および磁気特性値を含む少なくとも2種類の前記物性値の変化に基づいて前記脆化因子を評価するものであり、前記電気特性値は、電気抵抗率であり、前記磁気特性値は、交流磁化測定により評価される角型比であり、前記金属材料は、監視試験片とアーカイブ用材料とを含み、前記監視試験片は、原子炉を収容する圧力容器を製造したときの材料と同一の組成および熱処理により製造され、前記原子炉の運転開始時に前記圧力容器の内部に設置されるものであり、前記アーカイブ用材料は、前記圧力容器を製造したときの材料と同一の組成および熱処理により製造され、前記圧力容器の内部には設置されず、中性子の照射を受けない場所で保管されるものであり、前記脆化因子を評価するときに前記監視試験片を前記圧力容器の内部から取り出し、前記監視試験片および前記アーカイブ用材料から取得される前記物性値に基づいて、前記圧力容器の前記中性子照射脆化による前記脆化因子の評価を行い、前記脆化因子の評価後に前記監視試験片を前記圧力容器の内部に再設置する
本発明の実施形態により、金属材料中に形成された脆化因子を非破壊で評価することができる非破壊評価技術が提供される。
第1実施形態の非破壊評価システムを示すブロック図。 第1実施形態の非破壊評価方法を示すフローチャート。 第2実施形態の非破壊評価システムを示すブロック図。 第2実施形態の非破壊評価方法を示すフローチャート。
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の非破壊評価方法および非破壊評価システムについて図1から図2を用いて説明する。
図1の符号1は、第1実施形態の非破壊評価システムである。この非破壊評価システム1は、原子力発電プラントにおいて原子炉を収容する圧力容器を構成する材料の評価を行うために用いられる。なお、原子力発電プラントの一例としては、沸騰水型原子炉(BWR)がある。
圧力容器は、原子炉で発生する中性子が長年に亘って照射される。そのため、圧力容器には、中性子照射に基づく脆化が生じる。この圧力容器の中性子照射脆化の度合を、非破壊評価システム1を用いて評価する。なお、圧力容器のみならず、原子力発電プラントを構成するその他の部材の中性子照射脆化の度合を、非破壊評価システム1を用いて評価しても良い。
圧力容器は、分解および交換が不可能な部材である。そのため、原子力発電プラントの運転開始時に予め多数の監視試験片(金属材料)が圧力容器の内部に設置され、中性子の照射に曝されるようになっている。これらの監視試験片は、圧力容器を製造したときの材料と、同一の組成および熱処理により製造されている。つまり、監視試験片は、圧力容器を形成する金属材料に対応している。
さらに、圧力容器を製造したときの材料と、同一の組成および熱処理により製造されたアーカイブ用材料(金属材料)がある。このアーカイブ用材料は、圧力容器を形成する金属材料に対応している。なお、アーカイブ用材料は、圧力容器の内部には設置されず、中性子の照射を受けない場所で保管される。
本実施形態では、監視試験片およびアーカイブ用材料から取得される物性値に基づいて、圧力容器の中性子照射脆化による脆化因子の評価を行う。なお、以下の説明では、監視試験片およびアーカイブ用材料を金属材料と称する。
なお、アーカイブ用材料を中性子照射前の金属材料とみなす。一方、監視試験片を中性子照射後の金属材料とみなす。これら中性子の照射量が異なる金属材料の物性値の変化量により、金属材料の中性子照射脆化の評価を行うことができる。
なお、中性子照射期間、つまり、圧力容器に設置されていた期間が異なる複数の監視試験片を用いても良い。例えば、中性子照射期間が第1期間(例えば、10年)である物性値と、中性子照射期間が第1期間よりも長い第2期間(例えば、20年)である物性値とに基づいて、金属材料の脆化因子を評価しても良い。なお、第1期間は、中性子照射期間が全く無いこと、つまり、中性子照射期間がゼロ(例えば、0年)であることを含む。
圧力容器を形成する金属材料は、低合金鋼である。なお、低合金鋼とは、鉄に含まれるAl、B、Co、Cr、Cu、La、Mn、Mo、Nb、Ni、P、Pb、S、Se、Siなどの所定の合金元素の合計量が5%以下の合金鋼のことである。
本実施形態では、中性子照射に伴う低合金鋼の物性値変化を評価することにより、金属材料の組織中に形成された脆化因子の数密度を非破壊で評価する。特に、中性子照射を受けた圧力容器の低合金鋼に対応する金属材料に本実施形態を適用することで、金属材料の組織中に形成された脆化因子である溶質原子クラスターおよび転位ループの数密度を非破壊で評価することができる。
監視試験片を破壊せずに測定するだけで評価が行えるため、圧力容器の内部から取り出した監視試験片であれば、評価後に圧力容器の内部へ再設置することが可能となる。さらに、評価した溶質原子クラスターおよび転位ループの数密度を脆化予測式の入力値とすることで、脆化量の指標となる延性脆性遷移温度などの変化量を評価することが可能となる。なお、脆化予測式は、電力中央研究所などの研究機関が定めているものを用いる(例えば、非特許文献1、2参照)。
本実施形態では、少なくとも2種類の物性値の変化に基づいて脆化因子を評価する。このようにすれば、溶質原子クラスターと転位ループとを含む少なくとも2種類の脆化因子の評価を行うことができる。
また、物性値は、電気特性値、磁気特性値、硬さのうちの少なくともいずれかを含む。このようにすれば、金属材料を破壊せずにその物性値を取得することができる。
また、電気特性値は、電気抵抗率である。このようにすれば、金属材料から非破壊で電気特性値の取得をすれば良いため、その取得作業を容易に行うことができる。
また、磁気特性値は、交流磁化測定により評価される角型比である。このようにすれば、金属材料から非破壊で磁気特性値の取得をすれば良いため、その取得作業を容易に行うことができる。なお、磁気特性値には、保磁力、飽和磁束密度、残留磁束密度、透磁率なども含まれる。
また、脆化因子は、溶質原子クラスターおよび転位ループを含む。このようにすれば、中性子照射脆化の主要因である溶質原子クラスターおよび転位ループの評価を行うことができる。
また、金属材料は、低合金鋼である。このようにすれば、中性子を最も多く照射される圧力容器に用いられている低合金鋼の評価を行うことができる。
次に、非破壊評価システム1のシステム構成を図1に示すブロック図を参照して説明する。
非破壊評価システム1は、非破壊測定装置2と評価装置3と備える。非破壊測定装置2は、金属材料の物性値を測定する。評価装置3は、非破壊測定装置2で測定した物性値に基づいて金属材料の脆化因子の評価を行う。
本実施形態の非破壊評価システム1の評価装置3は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の非破壊評価方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
評価装置3は、メイン制御部4と情報入力部5と物性値取得部6と脆化因子評価部7と表示出力部8とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
メイン制御部4は、非破壊評価システム1を統括的に制御する。
情報入力部5は、評価装置3を使用する使用者の操作に応じて所定の情報が入力される。この情報入力部5には、マウスまたはキーボードなどの入力装置が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が情報入力部5に入力される。
物性値取得部6は、非破壊測定装置2が測定した金属材料の物性値を取得する。つまり、物性値取得部6は、物性値を取得する工程を実行する。なお、物性値の記憶を行っても良い。
脆化因子評価部7は、金属材料の物性値の変化に基づいて金属材料における中性子照射脆化による脆化因子を評価する。つまり、脆化因子評価部7は、脆化因子を評価する工程を実行する。
表示出力部8は、脆化因子評価部7の評価結果、例えば、脆化因子の数密度の計算結果を出力する制御を行う。
本実施形態の非破壊評価システム1には、評価結果の出力を行うディスプレイなどの表示装置が含まれる。つまり、表示出力部8は、ディスプレイに表示される画像の制御を行う。なお、ディスプレイはコンピュータ本体と別体であっても良いし、一体であっても良い。さらに、ネットワークを介して接続される他のコンピュータが備えるディスプレイに表示される画像の制御を表示出力部8が行っても良い。
なお、本実施形態では、表示装置としてディスプレイを例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、プロジェクタを用いて情報の表示を行っても良い。さらに、紙媒体に情報を印字するプリンタをディスプレイの替りとして用いても良い。つまり、表示出力部8が制御する対象としてプロジェクタまたはプリンタが含まれても良い。
次に、第1実施形態の非破壊評価システム1が実行する非破壊評価処理について図2のフローチャートを用いて説明する。なお、図1に示すブロック図を適宜参照する。
図2に示すように、まず、ステップS11において、非破壊評価システム1の非破壊測定装置2は、金属材料の物性値の測定を行う。
次のステップS12において、非破壊評価システム1の評価装置3の物性値取得部6は、非破壊測定装置2が測定した金属材料の物性値を取得する。例えば、物性値1、物性値2、…、物性値n、を取得する。ただし、n≧1とする。つまり、1種類以上の物性値を取得する。
次のステップS13において、脆化因子評価部7は、取得された物性値に基づいて脆化因子の数密度計算を行う。ここで、脆化因子の数密度を次の数式1を用いて計算する。
Figure 0007210366000001
ここで、
は、脆化因子jの数密度(j=1,2,…,m)、
(x,x,…,x)は、中性子照射後の金属材料の物性値i(i=1,2,…,n)、
ij(x)は、脆化因子jの形成に伴う物性値iの変化量(i=1,2,…,n、j=1,2,…,m)、
は、中性子照射前の金属材料の物性値i(i=1,2,…,n)、
である。
ただし、n≧m≧1である。
金属材料に対する非破壊評価によって得られる1種類以上の物性値i(i=1,2,…,n)に関して、中性子照射前の金属材料(例えば、アーカイブ用材料)の物性値をsに代入し、中性子照射後の金属材料(例えば、監視試験片)の物性値をP(x,x,…,x)に代入する。qij(x)は、x(j=1,2,…,m)の関数であるため、数式1を連立して解くことで、脆化因子jの数密度が得られる。
次のステップS14において、表示出力部8は、脆化因子の数密度の計算結果の出力を行う。そして、処理を終了する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の非破壊評価システム1Aおよび非破壊評価方法について図3から図4を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
まず、第2実施形態の非破壊評価システム1Aのシステム構成を図3に示すブロック図を参照して説明する。
第2実施形態の評価装置3Aは、メイン制御部4と情報入力部5と関係式作成部9と係数決定部10と物性値取得部6と脆化因子評価部7と機械特性評価部11と表示出力部8とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
関係式作成部9は、脆化因子数密度と物性値の関係式の作成を行う。つまり、関係式作成部9は、関係式を作成する工程を実行する。
係数決定部10は、関係式作成部9にて作成された関係式中の係数の決定を行う。つまり、係数決定部10は、係数を決定する工程を実行する。
機械特性評価部11は、脆化因子評価部7が算出した脆化因子に基づいて金属材料の機械特性を評価する。つまり、機械特性評価部11は、金属材料の機械特性を評価する工程を実行する。このようにすれば、金属材料の具体的な脆化を把握することができる。なお、機械特性は、例えば、延性脆性遷移温度である。なお、延性脆性遷移温度とは、金属材料の破壊形態が延性破壊の領域から脆性破壊の領域に移る温度を示す。このようにすれば、金属材料が温度低下によって延性を失い、脆性が現れて脆くなる温度を把握することができる。
次に、第2実施形態の非破壊評価システム1Aが実行する非破壊評価処理について図4のフローチャートを用いて説明する。なお、図3に示すブロック図を適宜参照する。
第2実施形態は、前述の第1実施形態の脆化因子数密度と物性値の関係式である数式1のqij(x)が既知でない場合の実施形態である。また、物性値2の例として、交流磁化測定により得られる残留磁束密度と飽和磁束密度の比である角型比を評価する。なお、両者は、どちらから評価してもよい。また、脆化因子は、溶質原子クラスターおよび転位ループの2種類である。
図4に示すように、まず、ステップS21において、非破壊評価システム1Aの評価装置3Aの関係式作成部9は、脆化因子数密度と物性値の関係式を作成する。
次のステップS22において、係数決定部10は、関係式作成部9にて作成された関係式中の係数(比例係数)の決定を行う。
次のステップS23において、非破壊評価システム1Aの非破壊測定装置2は、金属材料の物性値の測定を行う。
次のステップS24において、物性値取得部6は、非破壊測定装置2が測定した金属材料の物性値を取得する。
次のステップS25において、脆化因子評価部7は、取得された物性値に基づいて脆化因子の数密度計算を行う。
次のステップS26において、表示出力部8は、脆化因子の数密度の計算結果の出力を行う。
次のステップS27において、機械特性評価部11は、脆化因子評価部7が算出した脆化因子の数密度の計算結果を脆化予測式へ入力して計算を行う。
次のステップS28において、機械特性評価部11は、脆化予測式の計算結果に基づいて金属材料の機械特性を評価する。
次のステップS29において、表示出力部8は、機械特性評価部11の金属材料の機械特性の評価結果の出力を行う。そして、処理を終了する。
次に、関係式作成部9、係数決定部10、物性値取得部6、脆化因子評価部7および機械特性評価部11が、前述のステップにて実行する具体的な計算態様について説明する。
前述の第1実施形態に示す通り、異なる種類の脆化因子は、それぞれ独立して物性値に影響を与える。その影響は、各々の数密度に比例するため、前述の数式1は、比例係数a,b,c,dを用いて次の数式2のように表すことができる。
Figure 0007210366000002
ここで、
xは、溶質原子クラスターの数密度、
yは、転位ループの数密度、
R(x,y)は、中性子照射後の低合金鋼の電気抵抗率、
は、中性子照射前の低合金鋼の電気抵抗率、
M(x,y)は、中性子照射後の低合金鋼の角型比、
は、中性子照射前の低合金鋼の角型比、
である。
これらの比例係数は、圧力容器を形成する材料と同一の組成および熱処理により製造された低合金鋼の監視試験片、または、圧力容器の製造時のアーカイブ用材料に対して、熱時効処理および電子線照射をそれぞれ実施し、溶質原子クラスターおよび転位ループをそれぞれ単独で形成させた上で、電気抵抗率および角型比を評価することによって、求めることができる。
一例として、表1に示す組成および表2に示す熱処理条件で製造された低合金鋼の比例係数の求め方を示す。表1は、対象とする低合金鋼の組成を示す。表2は、対象とする低合金鋼の熱処理条件を示す。
Figure 0007210366000003
Figure 0007210366000004
例えば、低合金鋼への熱時効処理によって銅を主成分とする6.4・10~2.7・10nm程度の体積の溶質原子クラスターを1.2・1022個/mの数密度で形成させる場合に、電気抵抗率は-2.6・10-1μΩ・cm変化するとともに、角型比は5.1・10-3変化する。
また、電子線照射によって直径が数nm~10数nm程度の格子間原子型の転位ループを1.0・1020個/mの数密度で形成させる場合には、電気抵抗率は6.6・10-1μΩ・cm変化するとともに、角型比は1.9・10-3変化する。
よって、それぞれの物性値の変化量をそれぞれの脆化因子の数密度で除することで、a=-2.2・10-23、b=6.6・10-21、c=4.3・10-25、d=1.9・10-23が得られる。
前述の比例係数を用いることで、物性値の変化量から脆化因子の数密度を推定することができる。
例えば、電気抵抗率および角型比が溶質原子クラスターの形成に伴い、それぞれX,Y変化したとすると、その数密度はX/a(=Y/c)と推定される。また、電気抵抗率および角型比が転位ループの形成に伴い、それぞれX,Y変化したとすると、その数密度はX/b(=Y/d)と推定される。なお、前述の低合金鋼に中性子照射を行う前の電気抵抗率はr=2.5・10(μΩ・cm)であり、角型比はm=7.4・10-1である。これらの値を数式2に代入すると、次の数式3を得る。
Figure 0007210366000005
ここで、
R(x,y)は、中性子照射後の低合金鋼の電気抵抗率、
M(x,y)は、中性子照射後の低合金鋼の角型比、
である。
そして、中性子照射後の低合金鋼の電気抵抗率および角型比を非破壊評価した結果、以下の値が得られたとする。
R(x,y)=2.9・10(μΩ・cm)
M(x,y)=8.0・10-1
これらの値を数式3に代入して連立方程式を解くことで、x=9.8・1022、y=9.3・1020が得られる。そして、中性子照射により形成された溶質原子クラスターが9.8・1022個/mであり、転位ループの数密度が9.3・1020個/mであることが分かる。
また、これらの値を脆化予測式の入力値とすることで、脆化量の指標となる延性脆性遷移温度などの変化量を評価することが可能となる。
なお、数式2の比例係数a,b,c,dは、軽水炉の監視試験片を用いても求められる。一例として、軽水炉のn回目および(n+1)回目(nは自然数)の定期検査時に取り出した監視試験片を用いた比例係数の求め方を示す。k回目に取り出した監視試験片において、溶質原子クラスター数密度、転位ループ数密度、電気抵抗率、角型比が、それぞれx、y、R、Mである場合に、次の数式4が成り立つ。これを解くことで、比例係数a,b,c,dを求めることができる。
Figure 0007210366000006
ここで、
は、中性子照射前の監視試験片の電気抵抗率、
は、中性子照射前の監視試験片の角型比、
である。
第2実施形態では、(n+2)回目以降の定期検査時に取り出す監視試験片を対象に、電気抵抗率および角型比を非破壊評価した結果を、数式2に代入して解くことで、監視試験片の溶質原子クラスター数密度および転位ループ数密度を非破壊で評価することができる。なお、n回目および(n+1)回目の定期検査時に取り出した監視試験片については、溶質原子クラスター数密度および転位ループ数密度を評価する際に破壊評価が必要となる。
本実施形態に係る非破壊評価方法および非破壊評価システムを第1実施形態から第2実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
本実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、本実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
なお、本実施形態では、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用しているが、その他の態様であっても良い。例えば、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)または加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に本実施形態を適用しても良い。
なお、本実施形態では、軽水炉の圧力容器の評価を行っているが、その他の態様であっても良い。例えば、核燃料を冷却する冷却材としてのナトリウムなどの液体金属を用いる原子炉の原子炉容器の評価を行うために本実施形態を適用しても良い。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、金属材料の物性値の変化に基づいて金属材料における中性子照射脆化による脆化因子を評価する工程を含むことにより、金属材料中に形成された脆化因子を非破壊で評価することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1(1A)…非破壊評価システム、2…非破壊測定装置、3(3A)…評価装置、4…メイン制御部、5…情報入力部、6…物性値取得部、7…脆化因子評価部、8…表示出力部、9…関係式作成部、10…係数決定部、11…機械特性評価部。

Claims (10)

  1. 金属材料の物性値の変化に基づいて前記金属材料における中性子照射脆化による脆化因子を評価する工程を含
    電気特性値および磁気特性値を含む少なくとも2種類の前記物性値の変化に基づいて前記脆化因子を評価するものであり、
    前記電気特性値は、電気抵抗率であり、
    前記磁気特性値は、交流磁化測定により評価される角型比であり、
    前記金属材料は、監視試験片とアーカイブ用材料とを含み、
    前記監視試験片は、原子炉を収容する圧力容器を製造したときの材料と同一の組成および熱処理により製造され、前記原子炉の運転開始時に前記圧力容器の内部に設置されるものであり、
    前記アーカイブ用材料は、前記圧力容器を製造したときの材料と同一の組成および熱処理により製造され、前記圧力容器の内部には設置されず、中性子の照射を受けない場所で保管されるものであり、
    前記脆化因子を評価するときに前記監視試験片を前記圧力容器の内部から取り出し、
    前記監視試験片および前記アーカイブ用材料から取得される前記物性値に基づいて、前記圧力容器の前記中性子照射脆化による前記脆化因子の評価を行い、
    前記脆化因子の評価後に前記監視試験片を前記圧力容器の内部に再設置する、
    非破壊評価方法。
  2. 前記脆化因子の数密度を評価する、
    請求項1に記載の非破壊評価方法。
  3. 前記脆化因子は、溶質原子クラスターおよび転位ループを含む、
    請求項1または請求項に記載の非破壊評価方法。
  4. 前記金属材料は、低合金鋼である、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の非破壊評価方法。
  5. 前記脆化因子に基づいて前記金属材料の機械特性を評価する工程を含む、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の非破壊評価方法。
  6. 前記機械特性は、延性脆性遷移温度である、
    請求項に記載の非破壊評価方法。
  7. 中性子照射期間が第1期間である前記物性値と中性子照射期間が前記第1期間よりも長い第2期間である前記物性値とに基づいて前記脆化因子を評価する、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の非破壊評価方法。
  8. 前記脆化因子を評価する工程にて、前記脆化因子の数密度を次の数式を用いて計算する、
    Figure 0007210366000007
    ここで、
    は、脆化因子jの数密度(j=1,2,…,m)、
    (x,x,…,x)は、中性子照射後の金属材料の物性値i(i=1,2,…,n)、
    ij(x)は、脆化因子jの形成に伴う物性値iの変化量(i=1,2,…,n、j=1,2,…,m)、
    は、中性子照射前の金属材料の物性値i(i=1,2,…,n)、
    である、
    ただし、n≧m≧1である、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の非破壊評価方法。
  9. 前記脆化因子を評価する工程にて、前記脆化因子の数密度を次の数式を用いて計算する、
    Figure 0007210366000008
    ここで、
    xは、溶質原子クラスターの数密度、
    yは、転位ループの数密度、
    R(x,y)は、中性子照射後の低合金鋼の電気抵抗率、
    は、中性子照射前の低合金鋼の電気抵抗率、
    M(x,y)は、中性子照射後の低合金鋼の角型比、
    は、中性子照射前の低合金鋼の角型比、
    である、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の非破壊評価方法。
  10. 金属材料の物性値の変化に基づいて前記金属材料における中性子照射脆化による脆化因子を評価する脆化因子評価部を備え
    前記脆化因子評価部が、電気特性値および磁気特性値を含む少なくとも2種類の前記物性値の変化に基づいて前記脆化因子を評価するものであり、
    前記電気特性値は、電気抵抗率であり、
    前記磁気特性値は、交流磁化測定により評価される角型比であり、
    前記金属材料は、監視試験片とアーカイブ用材料とを含み、
    前記監視試験片は、原子炉を収容する圧力容器を製造したときの材料と同一の組成および熱処理により製造され、前記原子炉の運転開始時に前記圧力容器の内部に設置されるものであり、前記脆化因子を評価するときに前記圧力容器の内部から取り出され、かつ前記脆化因子の評価後に前記圧力容器の内部に再設置されるものであり、
    前記アーカイブ用材料は、前記圧力容器を製造したときの材料と同一の組成および熱処理により製造され、前記圧力容器の内部には設置されず、中性子の照射を受けない場所で保管されるものであり、
    前記脆化因子評価部が、前記監視試験片および前記アーカイブ用材料から取得される前記物性値に基づいて、前記圧力容器の前記中性子照射脆化による前記脆化因子の評価を行う、
    ように構成されている、
    非破壊評価システム。
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