JP7287583B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本開示は、空気入りタイヤに関する。
一般に、空気入りタイヤの電気抵抗が大きくなると、車両に静電気が蓄積し、ラジオノイズ等の電波障害を引き起こすおそれがある。特に近年では、低燃費化の要請により、トレッドゴム等の電気抵抗が増大する傾向がある。
タイヤの電気抵抗を低減させるために、例えば、下記特許文献1には、カーカスの表面に、導電性繊維と非導電性繊維とを含む複合繊維が配設された空気入りタイヤが提案されている。特許文献1では、前記複合繊維によって、タイヤの製造工程に悪影響を与えることなく、タイヤの電気抵抗を低下させることを期待している。
特開2017-124730号公報
上述の複合繊維は、タイヤが走行するときの繰り返し変形や、タイヤが路面の凸部に乗り上げたときのトレッド部及び/又はサイドウォール部の局所的な変形により、破断するおそれがあった。特に駐車場での縁石に乗り上げた場合など、車両及び縁石の間で局所的かつ大きな変形が加わった際に破断することが懸念される。前記複合繊維が破断すると、車両の静電気を効果的に地面に放出できなくなるという不具合が発生する。また、上記複合繊維は導電性繊維として金属が用いられることが一般的であり、モジュラスが高い為、転動時のタイヤの変形において、サイドウォール部のたわみを阻害し、乗り心地を悪化させることも懸念される。
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、上述のような導電性糸の破断を抑制し、タイヤに局所的に大きな変形が加わった後でも電気抵抗が低く、乗り心地にも優れた空気入りタイヤを提供することを主たる課題としている。
本開示は、カーカスを有する空気入りタイヤであって、前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が10Ω/cm以下であり、前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下である、空気入りタイヤである。
本開示の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、導電性糸の破断を抑制し、タイヤに局所的に大きな変形が加わった後でも電気抵抗が低く、優れた乗り心地を発揮できる。
本開示の一実施形態の空気入りタイヤを示す断面図である。 図1のA-A線断面図である。 導電性糸の拡大斜視図である。 波状に延びる導電性糸の拡大図である。 他の実施形態の複合糸の拡大斜視図である。 タイヤの電気抵抗測定装置を概念的に示す略断面図である。
6 カーカス
4 ビード部
6A カーカスプライ
9 導電性糸
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある)の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。なお、図1は、円環状に延びるタイヤ1をタイヤ周方向と直交する仮想平面で切断したときの、タイヤ赤道Cよりもタイヤ軸方向の一方側のタイヤ断面を示す図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用として好適に用いられる。
前記正規状態とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。本明細書に基づいて、製品としてのタイヤからその内部材の物性を測定する場合、前記内部材がその特徴を損ねない態様で採取されたのち、前記物性が測定されるものとする。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。リムについて規格が定められていない場合、例えば、リム組み可能でありかつ内圧が保持できるリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものが正規リムとして適用されても良い。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。内圧について定めが無い場合、タイヤの用途に応じた一般的な内圧が適用されても良く、乗用車用であれば、例えば、250kPaとされる。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、カーカス6を有する。カーカス6は、一方のビード部4からトレッド部2を通って他方のビード部(図示省略)まで延びるカーカスコードを有するカーカスプライ6Aを含む。カーカスプライ6Aは、ビード部4とトレッド部2との間のサイドウォール部3を通るのは言うまでもない。
本実施形態のカーカスプライ6Aは、例えば、並列されたカーカスコードがトッピングゴムで被覆されて構成されている。本実施形態のカーカス6は、1枚のカーカスプライ6Aで構成されているが、複数枚のカーカスプライ6Aで構成されても良い。
カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、2つのビード部4の間を延びている。これにより、本体部6aは、少なくともトレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
カーカスコードは、例えば、アラミド、レーヨンなどの有機繊維コードが採用される。カーカスコードは、例えば、タイヤ赤道Cに対して70~90°の角度で配列されるのが望ましい。
望ましい態様として、本実施形態のカーカス6のタイヤ半径方向外側には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、例えば、タイヤ半径方向に重ねられた2枚のベルトプライ7A、7Bで構成されている。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがトッピングゴムで被覆されて構成されており、互いのベルトコードが交差する向きにタイヤ半径方向内外に重ねられている。
図2には、図1のA-A線断面図が示されている。図2に示されるように、本開示のタイヤ1は、カーカスプライ6Aには、一方のビード部4から少なくともトレッド部2まで延びる少なくとも1本の導電性糸9が配されている。なお、図1では、導電性糸9が破線で示されている。
導電性糸9は、単位長さ当たりの電気抵抗が10Ω/cm以下である。このような導電性糸9が配されたタイヤは、電気抵抗が小さく、車両に静電気を蓄積するのを抑制することができる。
図3には、導電性糸9の拡大図が示されている。図3に示されるように、本実施形態の導電性糸9は、例えば、導電性繊維11と非導電性繊維12と含む複合糸10である。但し、本開示の導電性糸9は、このような複合糸10に限定されるものではない。このため、他の実施形態において、導電性糸9は、例えば、導電性繊維11のみで構成されるものでも良い。なお、本明細書の図3及び図5以外の各図では、複合糸10は、1本の糸材料として示されており、導電性繊維11と非導電性繊維12との区別は示されていない。
本開示において、導電性糸9は、1%伸張時の応力が13N以下である。1%伸張時の応力とは、直線状にされた導電性糸9を1%伸張させたとき導電性糸9に作用する応力を意味する。なお、前記直線状とは、導電性糸9を鉛直方向に配して、その自重又は僅かな力で延ばされた状態を指す。測定方法としては、引張試験機によって、タイヤに適用される導電性糸9の長さに応じた所定の長さ(試験機の掴み代を除いた長さであり、例えば、300~800mmである。)の導電性糸9を1%伸張させたときの応力が測定されることにより、実施される。なお、本開示における応力とは、導電性糸9を所定の変形量で伸長させたときに生じる力を意味する。また、成形されたタイヤから導電性糸9が採取される場合は、可能な限り導電性糸9の物性が変化しない態様で採取されるのが望ましい。このため、上記の場合、導電性糸9を塑性変形させることなく、導電性糸9に付着するタイヤのゴム部材が可能な限り除去された後、導電性糸9の前記応力が測定されるのが望ましい。
本開示の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、導電性糸9の破断を抑制し、タイヤに局所的に大きな変形が加わった後でも電気抵抗が低く、乗り心地にも優れている。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
開発者らは、導電性糸9が配されたタイヤについて、走行時の導電性糸9の伸びの状況を調査した。その結果、走行状況や導電性糸9の配置状態(直線状か波状か)に関わらず、タイヤの走行時の導電性糸9は、その全体に亘って0.5~3.0%程度の伸びが発生していることが知見された。これは、導電性糸9と密着するゴム部材から応力を受けることによって、上記の伸びが導電性糸9の全体に亘って発生していると推察される。また、これらの結果から、特に導電性糸9の1%伸張時の応力が規定されることにより、その破断を有意に抑制でき、しかも、乗り心地も改善できることが判明した。
本開示の導電性糸9は、1%伸張時の応力が13N以下と小さく設定されているため、タイヤ1が走行するときの繰り返し変形や、タイヤ1が路面の凸部に乗り上げたときのトレッド部2及び/又はサイドウォール部3の局所的な変形によっても、適度に延びることができ、破断するおそれが小さい。また、上述の導電性糸9は、タイヤが変形したときでも、その周囲のゴム部材に損傷を与えるのを抑制できる。さらに、本開示の導電性糸9は、サイドウォール部3のたわみを阻害せず、乗り心地性を向上させる効果も期待できる。このような作用効果により、導電性糸9の破断が抑制されてタイヤの電気抵抗が大きくなるのを防ぎ、かつ、優れた乗り心地を発揮できると推察される。なお、本開示は、導電性糸9自体を上記の通り規定するものであり、導電性糸9に含まれる素材の一部を規定するものと相違するのは言うまでもない。
なお、前記した1%伸長時の応力は、導電性糸9を構成する繊維の材質、組成比、導電性糸9の撚り数、太さにより調整することが可能であり、具体的には弾性率の低いナイロンやポリエステルといった繊維の割合を増やす、長繊維ではなく短繊維を使用する、撚り数を増やす、線径を細くすることで、低下させることが可能である。
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
図1に示されるように、本実施形態の導電性糸9は、例えば、一方のビード部4からサイドウォール部3及びトレッド部2を通って他方のビード部(図示省略)まで延びている。このような導電性糸9は、導電性を確実に高め、かつ、1か所が破断した場合でも導電性の低下を防ぐことができる。
導電性糸9は、カーカスプライ6Aの外面に配されるのが望ましい。このような導電性糸9は、タイヤ製造時において、カーカスプライ6Aと他のゴム部材との間に空気が閉じ込められるのを防ぐのにも役立つ。以下、このような作用効果を「エア抜き性」という場合がある。なお、カーカスプライ6Aの外面とは、カーカスコードを被覆するトッピングゴムの外面を意味し、タイヤ外表面1A側及びタイヤ内腔面1B側の両方の面を含む。
導電性糸9の配置は、上述の態様に限定されるものではない。導電性糸9は、例えば、カーカスプライ6Aに縫い込まれる様に配されても良く、巻き付けるように配されても良い。
導電性糸9は、例えば、タイヤ周方向に複数配置されるのが望ましい。これにより、タイヤ1の導電性が確実に向上する。タイヤ側面視における導電性糸9の本数は、導電性及びエア抜き性の向上の観点から、例えば、4~12本とされる。但し、このような態様に限定されるものではない。
図3に示されるように、本明細書において、導電性糸9として構成される複合糸10の導電性繊維11及び非導電性繊維12が意味する「繊維」とは、長さが比較的大きい所謂フィラメントと、長さが比較的小さい所謂ステープルとの両方を含むものとする。本実施形態の導電性繊維11及び非導電性繊維12は、それぞれ、フィラメントで構成されている。具体的には、1本の複合糸10は、例えば、下撚りされた導電性繊維11と非導電性繊維12とが上撚りされて構成される。但し、このような態様に限定されるものではなく、本実施形態の複合糸10は、導電性繊維11と非導電性繊維12とをいずれかの態様で含めば良い。
導電性繊維11は、少なくとも静電気の発生を防止できる程度の導電性を具えた繊維である。具体的には、導電性繊維11は、単位長さ当たりの電気抵抗が10Ω/cm以下が望ましく、より望ましくは前記電気抵抗が10Ω/cm以下である。なお、導電性繊維11及び導電性糸9の前記電気抵抗は後述の金属フィラメント等の比率や種類を変更するなどにより調整することが可能である。
導電性繊維11は、例えば、金属フィラメント又は炭素繊維を含む。金属フィラメントとしては、例えば、ステンレス鋼が望ましい。本実施形態の導電性繊維11は、ステンレス鋼からなる金属フィラメントが撚り合わされている。このような導電性繊維11は、優れた耐食性を発揮する。本明細書において、ステンレス鋼とは、JIS G 0203で定義されるものであって、炭素を1.2%以下、クロムを10.5%以上含む合金鋼を意味する。
ステレンス鋼としては、例えば、フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼が望ましい。これらのステンレス鋼は、優れた耐食性及び延性を発揮することができ、導電性糸9の破断を効果的に抑制することができる。なお、フェライト系ステンレス鋼は、常温での主な金属組織がフェライトであるステンレス鋼である。オーステナイト系ステンレス鋼とは、常温での金属組織がオーステナイトとなるステンレス鋼である。
とりわけ、オーステナイト系ステンレス鋼は、非磁性であるため、長期のタイヤの使用によっても金属フィラメントが磁化しない。このため、タイヤの回転による電波障害の発生が確実に抑制される。
非導電性繊維12は、導電性繊維11よりもタイヤのゴム部材との密着性に優れた材料が望ましい。また、非導電性繊維12は、導電性繊維11よりも可塑性が高いのが望ましい。このような非導電性繊維12を含む導電性糸9は、ゴム部材と密着し易く、タイヤの生産性及びタイヤの耐久性を高めることができる。このような観点から、非導電性繊維12には、例えば、プラスチック材料等が用いられる。より具体的には、本実施形態の非導電性繊維12は、ポリエステル又はポリアミドを含む。
上述のような材料で構成された結果、非導電性繊維12は、導電性繊維11と比較して、静電気の防止を期待できない程度の導電性を具えている。本開示において、非導電性繊維12の単位当たりの電気抵抗は、特に限定されるものではないが、上述の構成によって、例えば、単位長さ当たりの電気抵抗が10Ω/cm以上となる。
導電性糸9は、2%伸張時の応力が25N以下であるのが望ましい。これにより、導電性糸9の破断が確実に抑制される。
導電性糸9の1%伸張時の応力は、カーカスコード6cの1%伸張時の応力よりも小さいのが望ましい。同様に、導電性糸9の2%伸張時の応力は、カーカスコード6cの2%伸張時の応力よりも小さいのが望ましい。これにより、タイヤが変形したときでも導電性糸9に応力が集中せず、導電性糸9の破断が効果的に抑制される。
なお、前記した2%伸長時の応力は、1%伸長時の応力と同様の手段をもって調整することが可能であり、具体的には弾性率の低いナイロンやポリエステルといった繊維の割合を増やす、長繊維ではなく短繊維を使用する、撚り数を増やす、線径を細くすることで、低下させることが可能である。
導電性糸9は、例えば、非導電性繊維12を重量比で50%以上含んでおり、望ましくは70%~90%含んでいる。これにより、タイヤのゴム部材と導電性糸9との密着性がさらに向上し、タイヤの生産性及びタイヤの耐久性が向上する。
導電性糸9の直径は、例えば、0.03~1.00mmであり、望ましくは0.05~0.30mmである。このような導電性糸9は、タイヤの外観を損ねることなくタイヤの導電性を高めることができる。
本実施形態の導電性糸9の破断強力(破断時の最大応力)は、例えば、5~50Nであり、望ましくは5~20Nである。
図4には、波状に延びる導電性糸9の拡大図が示されている。図4に示されるように、この実施形態の導電性糸9は、破断時の伸びを大きく設定することができる。したがって、この実施形態の導電性糸9は、タイヤの変形に応じて適宜延び、その破断を確実に抑制することができる。
導電性糸9は、例えば、2.0mm以下の振幅a1(ピークトゥピークの振幅である。)で波状に延びている。前記振幅a1は、例えば、0.5~1.5mmであるのが望ましい。これにより、導電性糸9の破断が抑制され、かつ、導電性糸9によるタイヤ重量の増加が抑制される。
同様の観点から、導電性糸9の波長L1は、例えば、100mm以下とされる。具体的には、前記波長L1は、30~80mmであるのが望ましい。
図1に示されるように、トレッド部2及びサイドウォール部3は、走行時においてビード部4よりも変形度合いが大きい。したがって、導電性糸9は、トレッド部2及びサイドウォール部3において、大きく伸ばされる傾向がある。このような観点から、トレッド部2における導電性糸9の振幅は、ビード部4における導電性糸9の振幅よりも大きいのが望ましい。また、サイドウォール部3における導電性糸9の振幅は、ビード部4における導電性糸9の振幅よりも大きいのが望ましい。これにより、導電性糸9によるタイヤ重量の増加を抑制しつつ、変形が大きい部分での導電性糸9の破断を効果的に抑制することができる。
上記波状の導電性糸9は、その振幅の中心がラジアル方向に平行に延びるものではなく、前記振幅の中心が、例えば、一方のビード部4からサイドウォール部3及びトレッド部2を通って他方のビード部までの間で、タイヤ周方向に50~150mm程度の振幅で、大きな波状(2つのビード部間で、0.5~1.5周期程度)に配されているのが望ましい。すなわち、本実施形態の導電性糸9は、上述の小さい振幅a1で波状に延びながら、2つのビード部間で上記大きな波状を構成している。これにより、導電性糸9の破断がより一層抑制される。
図5には、他の実施形態の導電性糸9として適用される複合糸10の断面を示す拡大斜視図が示されている。図5に示されるように、この実施形態の複合糸10は、例えば、1本の導電性繊維11を中心にして、その周囲に複数の非導電性繊維12が撚られている。このような複合糸10は、ゴムとの密着性に優れており、タイヤの耐久性を向上させるのに役立つ。
本開示の導電性糸9は、上述の態様に限定されるものではなく、例えば、導電性繊維11及び非導電性繊維12がそれぞれ短繊維状に構成されて複合糸10に含まれるものでも良い。
図1に示されるように、開発者らは、導電性糸9の破断の抑制、及び、乗り心地性の向上をバランス良く高めるには、サイドウォール部3のサイドウォールゴム3Gを規定することが重要であることを知見した。このような観点から、本実施形態において、サイドウォール部3のサイドウォールゴム3Gは、複素弾性率E*が3.2~8.0MPaが望ましく、3.2~6.0MPaがより好ましい。これにより、サイドウォール部3が適度に変形して導電性糸9に追従して動くため、導電性糸9に応力が集中するのを防ぎ、ひいてはその破断を抑制することができる。また、このようなサイドウォールゴムは、乗り心地性の向上にも役立つ。なお、前記複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて測定した値である。なお、測定に用いたサンプルの伸長変形方向は、サンプル中心において、タイヤ周方向と一致させる。
初期歪み:5%
振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張り
測定温度:70℃
また、上記サイドウォールゴム3Gの複素弾性率E*(MPa)及び導電性糸9の1%伸長時の応力(N)の和が、20以下であることが好ましく、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、サイドウォール部3での過度な応力の発生を防ぐことができ、導電性糸9の破断を抑制しやすくすると共に、適度なたわみを確保することができるため、乗り心地性能が向上しやすくなると考えられる。一方、下限は特に限定されないが、2以上が好ましく、3以上であることがより好ましい。
上述のサイドウォールゴムは、公知の方法によって得ることができ、本開示ではその製造方法について特に限定されるものではない。本実施形態のサイドウォールゴムは、例えば、天然ゴム(NR)などのイソプレン系ゴム及びブタジエンゴム(BR)を含むベースゴム材に、カーボンブラック、シリカ、などの充填剤、オイル、樹脂、液状ゴムなどの可塑剤、ステアリン酸、亜鉛華、ワックス、老化防止剤、硫黄、及び、加硫促進剤等の種々添加剤が付与されることによって得られる。
上述のサイドウォールゴムはゴム内部にミクロな層分離構造を形成させ、外部からの衝撃を吸収しやすくする観点からイソプレン系ゴム及び、ブタジエンゴムを含むことが好ましい。イソプレン系ゴムの配合量は特に限定されないが、ゴム成分100質量部中において、25質量%以上、70質量%以下とすることが好ましく、30質量%以上、60質量%以下がより好ましく、35質量%以上、50質量%以下とすることがさらに好ましい。また、ブタジエンゴムの配合量はゴム成分100質量部中において、30質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上、75質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上、70質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、上述のサイドウォールゴムは上記した各種添加剤等により複素弾性率を調整することが可能である。具体的には、カーボンブラック、シリカ等の充填剤を減らすこと、オイルなどの可塑剤成分を増やすこと、硫黄、加硫促進剤等の加硫剤の量を減らすことにより、複素弾性率を低下させることが可能である。なお、上述の複素弾性率を得る観点から、充填剤をゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、80質量部以下含むことが好ましく、30質量部以上、50質量部以下であるとより好ましく、35質量部以上、45質量部以下であるとさらに好ましい。また、上述の複素弾性率を得やすくする観点から、可塑剤は2質量部以上、25質量部以下とすることが好ましく、5質量部以上、22質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以上、20質量部以下とすることがさらに好ましい。
また、上記した配合剤以外にもスチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなど、一般に工業的に用いられるゴム成分を用いても良く、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、などの充填剤、樹脂成分、脂肪酸金属塩などの加工助剤などを適宜必要に応じて用いても良い。
導電性糸9の破断を抑制する観点から、サイドウォールゴム3Gの厚さは、例えば、1.0~3.0mmであり、望ましくは1.5~2.0mmである。これにより、導電性糸9の破断を抑制し、かつ、乗り心地性が向上する。なお、前記厚さは、サイドウォール部3における、カーカスのトッピングゴムの外面からサイドウォール部3の外面までの厚さである。
なお、上記したサイドウォールゴム3Gの厚さはタイヤの最大の断面幅位置における、サイドウォールゴム表面に対して、垂直方向の厚みを指し、文字などによる凹凸を除いた厚みである。簡易的にはタイヤの半径方向断面において、ビード部の幅を正規リム幅に合わせて固定した状態で、測定することが可能である。
以上、本開示の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図1の基本構造を有するサイズ195/70R15の乗用車用の空気入りタイヤが、表1~2の仕様に基づき試作された。比較例1及び2として、1%伸張時の応力が13Nより大きい導電性糸が配された空気入りタイヤが試作された。各テストタイヤは、導電性糸の構成を除き、実質的に同じ構成を有している。なお、各テストタイヤの電気抵抗は、3.5×10(Ω)(以下、「新品時電気抵抗」という)程度で実質的に同じとされている。これにより、各テストタイヤは、ラジオノイズ等の電波障害を抑制するのに十分な導電性を有している。
表1~2におけるサイドウォールゴムの複素弾性率は、サイドウォール内部から採取された平滑なゴム片サンプルを用いて測定された。前記ゴム片サンプルは、タイヤ周方向に沿った40mmの長さを有し、幅4mm、厚さ1mmとされる。また、導電性糸もテストタイヤから採取され、各種のパラメータが測定された。
各テストタイヤについて、タイヤの導電性の維持率、及び、乗り心地性がテストされた。テスト方法は以下の通りである。
<使用後のタイヤの導電性>
各テストタイヤについて、タイヤを同一条件で使用した後のタイヤの電気抵抗(以下、「使用後電気抵抗」という)が測定され、使用後電気抵抗と前記新品時電気抵抗との差(抵抗の増加量)が測定された。結果は、比較例1の前記差の逆数を100とする指数であり、数値が大きい程、導電性が新品時に近い状態で維持されており、良好であることを示す。
上記テスト方法のタイヤの電気抵抗の測定方法は、以下の通りである。図6に示されるように、絶縁板41(電気抵抗値が1012Ω以上)の上に設置された表面が研磨された金属板42(電気抵抗値は10Ω以下)と、タイヤ・リム組立体を保持する導電性のタイヤ取付軸43と、電気抵抗測定器44とを含む測定装置が使用され、JATMA規定に準拠してテストタイヤTとリムRとの組立体の電気抵抗値が測定された。なお各テストタイヤTは、予め表面の離型剤や汚れが十分に除去され、かつ、十分に乾燥した状態のものが用いられた。その他の条件は、次の通りである。
リム材料:アルミニウム合金製
リムサイズ:15×6.0J
内圧:230kPa
荷重:4.8kN
試験環境温度(試験室温度):24℃
湿度:24%
電気抵抗測定器の測定範囲:1.0×10 ~1.6×1016Ω
試験電圧(印可電圧):1000V
試験の要領は、次の通りである。
(1)テストタイヤTをリムに装着しタイヤ・リム組立体を準備する。この際、両者の接触部に潤滑剤として石けん水が用いられる。
(2)タイヤ・リム組立体を試験室内で2時間放置させた後、タイヤ取付軸43に取り付ける。
(3)タイヤ・リム組立体に前記荷重を0.5分間負荷し、解放後にさらに0.5分間、解放後にさらに2分間負荷する。
(4)試験電圧が印可され、5分経過した時点で、タイヤ取付軸43と金属板42との間の電気抵抗値を電気抵抗測定器44によって測定する。前記測定は、タイヤ周方向に等間隔の16カ所で行われ、それらの平均値を当該タイヤTの電気抵抗値(測定値)とする。
また、上述の使用後電気抵抗は、テスト車両(排気量1600cc、前輪駆動)にテストタイヤを装着し、一定速度で侵入して縁石に乗り上げることを一定回数実施した後、上述の方法で測定された電気抵抗である。
<乗り心地性>
テストタイヤを装着した車両で走行したときの乗り心地性が、運転者の官能により評価された。具体的には、20人のドライバーが1~5点の5段階で評価し、それらの合計点が算出された。結果は、比較例1の前記合計点を100とする評点で示されており、数値が大きい程乗り心地性が優れていることを示す。
テスト結果が表1~2に示される。
Figure 0007287583000001
Figure 0007287583000002
なお、表1~2に記載されたサイドウォールゴムの配合A~Eは、下記の表3に示される通りである。
Figure 0007287583000003
表1~2で示されるように、実施例のタイヤは、タイヤに局所的に大きな変形が加わった後でも導電性が維持されていることが確認できた。また、実施例のタイヤは、乗り心地性が優れていることも確認できた。
なお、表1~2に示される実施例の総合性能の指標として、使用後のタイヤの導電性及び乗り心地性の評点の合計点が用いられても良い。表1~2で示されるように、実施例のタイヤは、導電性及び乗り心地性を含む総合性能についても優れていることが確認できた。
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
[本開示1]
カーカスを有する空気入りタイヤであって、
前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、
前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、
前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が10Ω/cm以下であり、
前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下である、
空気入りタイヤ。
[本開示2]
前導電性糸は、2%伸張時の応力が25N以下である、本開示1に記載の空気入りタイヤ。
[本開示3]
前記導電性糸は、前記カーカスプライの外面に配されている、本開示1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本開示4]
前記導電性糸は、金属フィラメント又は炭素繊維を含む、本開示1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示5]
前記金属フィラメントは、ステンレス鋼を含む、本開示4に記載の空気入りタイヤ。
[本開示6]
前記導電性糸は、導電性繊維と非導電性繊維と含む複合糸である、本開示1ないし5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示7]
前記非導電性繊維は、ポリエステル又はポリアミドを含む、本開示6に記載の空気入りタイヤ。
[本開示8]
前記複合糸は、前記非導電性繊維を重量比で50%以上含んでいる、本開示6又は7に記載の空気入りタイヤ。
[本開示9]
前記導電性糸の直径は、0.03~1.00mmである、本開示1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示10]
前記導電性糸は、破断時の伸びが5%~20%である、本開示1ないし9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示11]
前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、
前記サイドウォールゴムの複素弾性率は、3.2~8.0MPaである、本開示1ないし10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示12]
前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、
前記サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と前記導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が20以下である、本開示1ないし11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示13]
前記カーカスプライは、並列された複数のカーカスコードを含み、
前記導電性糸の1%伸張時の応力は、前記カーカスコードの1%伸長時の応力よりも小さい、本開示1ないし12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示14]
前記導電性糸は、波状に延びている、本開示1ないし13のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示15]
前記トレッド部における前記導電性糸の振幅は、前記ビード部における前記導電性糸の振幅よりも大きい、本開示14に記載の空気入りタイヤ。

Claims (13)

  1. カーカスを有する空気入りタイヤであって、
    前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、
    前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、
    前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が10Ω/cm以下であり、
    前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、
    前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、
    前記サイドウォールゴムの複素弾性率(MPa)と前記導電性糸の1%時伸長応力(N)の和が20以下である、
    空気入りタイヤ。
  2. カーカスを有する空気入りタイヤであって、
    前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、
    前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、
    前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が10 Ω/cm以下であり、
    前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、
    前記カーカスプライは、並列された複数のカーカスコードを含み、
    前記導電性糸の1%伸張時の応力は、前記カーカスコードの1%伸長時の応力よりも小さい、
    空気入りタイヤ。
  3. カーカスを有する空気入りタイヤであって、
    前記カーカスは、一方のビード部からトレッド部を通って他方のビード部まで延びるカーカスプライを含み、
    前記カーカスプライには、前記一方のビード部から少なくとも前記トレッド部まで延びる少なくとも1本の導電性糸が配され、
    前記導電性糸は、単位長さ当たりの電気抵抗が10 Ω/cm以下であり、
    前記導電性糸は、1%伸張時の応力が13N以下であり、
    前記導電性糸は、波状に延びており、
    前記トレッド部における前記導電性糸の振幅は、前記ビード部における前記導電性糸の振幅よりも大きい、
    空気入りタイヤ。
  4. 前導電性糸は、2%伸張時の応力が25N以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記導電性糸は、前記カーカスプライの外面に配されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記導電性糸は、金属フィラメント又は炭素繊維を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記金属フィラメントは、ステンレス鋼を含む、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記導電性糸は、導電性繊維と非導電性繊維と含む複合糸である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記非導電性繊維は、ポリエステル又はポリアミドを含む、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記複合糸は、前記非導電性繊維を重量比で50%以上含んでいる、請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記導電性糸の直径は、0.03~1.00mmである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記導電性糸は、破断時の伸びが5%~20%である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記トレッド部と前記ビード部との間には、外面がサイドウォールゴムで構成されたサイドウォール部を含み、
    前記サイドウォールゴムの複素弾性率は、3.2~8.0MPaである、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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