JP7328155B2 - 蒸気タービン制御装置及び蒸気タービン発電設備 - Google Patents

蒸気タービン制御装置及び蒸気タービン発電設備 Download PDF

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Description

本発明は、蒸気タービン制御装置及び蒸気タービン発電設備に関する。
一般に蒸気タービンは蒸気加減弁を介して供給される蒸気で駆動される。蒸気タービンで発電機を駆動する蒸気タービン発電設備では、蒸気タービンの測定回転数(実回転数)と目標回転数(例えば定格回転数)との回転数偏差について速度調定率の関数(以下、速度調定率関数)が設定されている場合がある(特許文献1等参照)。
こうした蒸気タービン発電設備では、電力系統(例えば商用電力系統)に発電機を並列(併入)している間、速度調定率関数の下で回転数偏差に応じて蒸気加減弁の開度が制御される。例えば蒸気タービンの測定回転数が目標回転数に対して低ければ、蒸気加減弁を現在の開度から回転数偏差の大きさに応じた割合だけ開け、作動流体の供給流量を増加させて蒸気タービンの回転数を上昇させる。反対に蒸気タービンの測定回転数が目標回転数に対して高ければ、蒸気加減弁を現在の開度から回転数偏差の大きさに応じた割合だけ閉じ、作動流体の供給流量を減少させて蒸気タービンの回転数を低下させる。このようなフィードバック制御により蒸気タービンの回転数を目標回転数に収束させ、系統周波数の安定化が図られる。
特開平3-92505号公報
近年、風力や太陽光に代表される自然エネルギーを利用した発電設備が電力系統に接続される場合が増えてきており、こうした発電設備が電力系統に占める割合も大きくなってきている。ただ、こうした自然エネルギーを利用した発電設備の出力は季節や時間、気象条件等によって変動し易く、系統周波数を不安定にする一因となっている。このような系統周波数の変動は、電力系統に発電機を並列した蒸気タービン発電設備において、蒸気タービンの回転数を変動させて発電出力を不安定にさせ得る。
このとき、蒸気加減弁の開度と回転数偏差とを単純比例関係に設定した場合、蒸気タービンの回転数が急激に変化すると、これに伴って蒸気加減弁の開度も急変する。例えば蒸気タービンの回転数が目標回転数付近で静定している時に系統周波数が急激に変化すると、その影響を受けて蒸気タービンの回転数が急激に低下し得る。この場合、蒸気タービンへの供給蒸気流量が必要を超えて急増し、ハンチングが起こる等して蒸気タービンの回転数が不安定になり得る。
本発明の目的は、蒸気加減弁の開度の過敏な変化を抑制し蒸気タービンの回転数をスムーズに目標回転数又はその付近に収束させることができる蒸気タービン制御装置及び蒸気タービン発電設備を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラから供給される蒸気で駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンで駆動される発電機と、前記ボイラから前記蒸気タービンへの供給蒸気流量を調整する蒸気加減弁とを備えた蒸気タービン発電設備に備えられ、前記蒸気タービンの測定回転数と予め設定された目標回転数との差分である回転数偏差が小さくなるように前記蒸気加減弁を制御する蒸気タービン制御装置において、記憶装置と演算装置とを含んで構成され、前記記憶装置には、前記蒸気タービンの目標回転数と、前記蒸気加減弁の操作量について前記回転数偏差の値毎に複数ずつ予め設定された選択肢と、速度調定率の変化について予め設定された制限変化率とが記憶されており、前記演算装置は、前記回転数偏差の値毎に前記選択肢から任意に選択された前記操作量で速度調定率関数を定義し、定義した速度調定率関数の下で前記回転数偏差に応じて前記蒸気加減弁の開度を制御し、かつ前記回転数偏差の個々の値の少なくとも1つについて前記操作量の選択が変更された場合、現在の速度調定率関数から変更後の速度調定率関数に前記制限変化率で遷移させるように構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、蒸気加減弁の開度の過敏な変化を抑制し蒸気タービンの回転数をスムーズに目標回転数又はその付近に収束させることができる。
本発明の一実施形態に係るタービン制御装置の構成を示す模式図 回転数偏差と蒸気加減弁の操作量との関係で定義した蒸気タービンの速度調定率関数(基本関数)を表すグラフ 回転数偏差と蒸気加減弁の操作量との関係で定義した蒸気タービンの速度調定率関数(調整を加えた関数)を表すグラフ 本発明の一実施形態に係る蒸気タービン制御装置による速度調定率の切換動作を示すフローチャート 図4の切換動作に伴って速度調定率等が遷移する様子の例を表す波形図
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
-構成-
図1は本発明の一実施形態に係る蒸気タービン発電設備の構成を示す模式図である。同図に示した蒸気タービン発電設備は、ボイラ1、蒸気タービン2、発電機3、蒸気加減弁4、蒸気タービン制御装置10を含んで構成されている。
ボイラ1は給水ポンプ(不図示)により供給された水を加熱して蒸気を発生させ、蒸気タービン2に供給する。ボイラ1の熱源については図示していないが、ボイラ1の熱源の代表例は、例えばガスタービンの排気ガス、燃料の燃焼熱、原子炉等である。
蒸気タービン2は、ボイラ1から供給される蒸気により駆動される。蒸気タービン2を駆動した蒸気は復水器(不図示)に導かれて水に戻され、再び給水ポンプ(不図示)によりボイラ1に供給される。
発電機3のロータは蒸気タービン2のロータと同軸に連結されている。発電機3は蒸気タービン2の回転動力により駆動されて発電する。発電機3は電力系統(例えば商用電力系統)に接続されている。電力系統には、図1に示した蒸気タービン発電設備以外に、少なくとも1つの他の発電設備(不図示)が接続されている。電力系統に接続される他の発電設備には、風力や太陽光等の自然エネルギー(再生可能エネルギー)により発電する発電設備が含まれ得る。
蒸気加減弁4は電磁駆動弁であり、ボイラ1から蒸気タービン2への供給蒸気流量を調整する。蒸気加減弁4の基本開度は中間開度(例えば50%開度)である。蒸気加減弁4の開度が上がると蒸気タービン2への供給蒸気流量が増加し、蒸気タービン2の出力ひいては発電機3の発電量が増加する。反対に蒸気加減弁4の開度が下がると蒸気タービン2への供給蒸気流量が減少し、蒸気タービン2の出力ひいては発電機3の発電量が減少する。
蒸気タービン発電設備には、蒸気タービン2の回転数を測定する回転数センサ5が備わっている。回転数センサ5により測定された蒸気タービン2の測定回転数Xmは、蒸気タービン制御装置10の回転数偏差演算回路13に入力される。
蒸気タービン制御装置10はコンピュータであり、メモリ(記憶装置)11やCPU(演算装置)12、タイマー(不図示)等を含んで構成されている。この蒸気タービン制御装置10は、蒸気タービン2の測定回転数Xmと予め設定された目標回転数Xtとの差分である回転数偏差X(=Xm-Xt)が小さくなるように蒸気加減弁4を制御する機能を備えている。特に本実施形態の蒸気タービン制御装置10は、後述のように回転数偏差Xの値毎に選択された蒸気加減弁4の操作量(補正量)で速度調定率関数を定義し、定義した速度調定率関数の下で回転数偏差Xに応じて蒸気加減弁4の開度を制御するように構成してある。回転数偏差Xに応じて蒸気タービン制御装置10により蒸気加減弁4が制御され、蒸気タービン2の回転数が目標回転数Xt又はその付近に収束するようになっている。蒸気タービン2の回転数が目標回転数Xtに収束するか、目標回転数Xt又はその付近に収束するかは、後で図2及び図3で説明するように速度調定率関数がどのようにデザインされるかによる。
なお、目標回転数Xtの一例としては、定格回転数を挙げることができる。定格回転数とは、製造元で指定された蒸気タービン2の運転条件における蒸気タービン2の回転数である。
蒸気タービン制御装置10のメモリ11には、蒸気加減弁4の制御に関するプログラムの他、プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。このメモリ11に記憶されたプログラム及びデータがCPU12に読み込まれ、CPU12により回転数偏差Xの値に応じて蒸気加減弁4が制御される。メモリ11に記憶されたデータには、蒸気加減弁4の操作量Yについて回転数偏差Xの値毎に複数ずつ予め設定された選択肢(後述)が含まれる。ここで、本実施形態では、回転数偏差Xの個々の値をXn(n=自然数)と適宜表す。XnとXn-1との差は、回転数センサ5の分解能に応じて識別可能な回転数の2値の最小差とすることができるが、本例ではそれよりも大きく任意に設定した大きさとする。つまり、回転数偏差Xの個々の値Xnは任意に設定した定数である。これら回転数偏差Xの個々の値Xnについては、それぞれ2つの操作量Yの複数の選択肢Yn1,Yn2が紐づけて設定してある。メモリ11には、これらの回転数偏差Xの個々の値Xn、及び値Xn毎に設定した操作量Yの複数の選択肢Yn1,Yn2が記憶されている。回転数偏差Xの個々の値Xnについての操作量Yの値は、入力装置20によりオペレータが選択肢Yn1,Yn2から任意に選択することができる。入力装置20は、蒸気タービン制御装置10に速度調定率切換信号Ss(後述)等を入力するユーザインターフェースである。
メモリ11にはまた、操作量Yの他、蒸気タービン2の目標回転数Xt、及び蒸気タービン2の速度調定率の変化について予め設定された制限変化率R等のデータも記憶されている。制限変化率Rは、回転数偏差Xのある値Xnについて速度調定率を定義する操作量Yの値を一の値から他の値に変化させる場合に、操作量Yの単位時間当たりの変化量について規定した値である。つまり本実施形態では、ある回転数偏差Xnについて第1選択肢Yn1から第2選択肢Yn2に操作量Yの選択が変更された場合、時間的に一定の割合で第1選択肢Yn1から第2選択肢Yn2に操作量Yの値が遷移する。切換操作と同時に操作量Yの値が第2選択肢Yn2に時間的に離散的に切り換わるのではなく、操作量Yは切換操作により変化し始め、第1選択肢Yn1から第2選択肢Yn2に徐々に遷移して時間をかけて切り換わる。
CPU12は、回転数偏差演算回路13、速度調定率切換回路14、操作量演算回路15及び開度指令値演算回路16を含んで構成されている。速度調定率切換回路14は更に、選択回路17及び変化率制限回路18を含んで構成されている。言い換えれば、CPU12は、回転数偏差演算回路13、速度調定率切換回路14、操作量演算回路15及び開度指令値演算回路16を構成し、プログラムに従って各回路の機能を実行する。
回転数偏差演算回路13は、回転数センサ5で測定された測定回転数Xmとメモリ11に記憶された目標回転数Xtとの差分である回転数偏差X(=Xm-Xt)を演算し、操作量演算回路15に出力する。
速度調定率切換回路14は、オペレータの切換操作に応じて入力装置20から入力される速度調定率切換信号Ssに基づいて、選択回路17により回転数偏差Xの個々の値Xnについて操作量Yの値を選択肢Yn1,Yn2から択一し変化率制限回路18に出力する。速度調定率切換信号Ssは、例えば回転数偏差Xの個々の値XnについてのON/OFFのデータを含んだ信号である。例えば回転数偏差X1に着目して説明する。例えば速度調定率切換信号Ssにおける回転数偏差X1の設定がONのとき、選択回路17により回転数偏差X1対応する操作量Yとして第1選択肢Y11が選択される。そして、回転数偏差X1について速度調定率関数を定義するデータ(X1,Y11)が選択回路17から変化率制限回路18に出力される。反対に速度調定率切換信号Ssにおける回転数偏差X1の設定がOFFのとき、回転数偏差X1対応する操作量Yとして第2選択肢Y12が選択される。そして、回転数偏差X1について速度調定率関数を定義するデータ(X1,Y12)が選択回路17から変化率制限回路18に出力される。
速度調定率切換回路14はまた、変化率制限回路18により、メモリ11に記憶された制限変化率Rのデータを選択回路17から出力されたデータに付加して操作量演算回路15に出力する。
操作量演算回路15は、速度調定率切換回路14から入力されたデータを基に速度調定率関数を生成し、回転数偏差演算回路13で演算された現在の回転数偏差Xに応じた蒸気加減弁4の操作量Yを演算して開度指令値演算回路16に出力する。このとき、回転数偏差Xの個々の値Xnの少なくとも1つについて操作量Yの選択が変更された場合、現在の速度調定率関数から変更後の速度調定率関数に速度調定率関数を制限変化率Rで遷移させる。例えば、制限変化率Rが単位時間t当たりの操作量Yの変化量をk(%)と規定するものであるとして、回転数偏差X1について操作量Yの値をYn1からYn2に変更したとする。この場合、回転数偏差X1に対応する操作量Yについて、時間t後に出力される値は(Yn1+k)、時間2t後に出力される値は(Yn1+2k)となり、徐々に操作量Yの値が変化していく。仮に操作量Yn1,Yn2の間に10k(%)の差がある場合、回転数偏差X1についての操作量Yの値の切り換えの開始から完了までに10tの時間がかかることになる。
開度指令値演算回路16は、蒸気加減弁4の開度指令の基礎値Sv0に操作量演算回路15から入力された操作量Yを加算し、これを開度指令値Svとして蒸気加減弁4に出力する。これにより蒸気加減弁4の開度が開度指令値Svに制御される。なお、開度指令の基礎値Sv0は、例えば中央給電指令所からの要求発電量に応じて上位制御装置(不図示)から蒸気タービン制御装置10に入力される負荷指令S1に応じて演算された蒸気加減弁4の開度である。この基礎値Sv0は、測定回転数Xmを加味することなく蒸気タービン発電設備の仕様に基づいて演算された値であり、要求発電量が一定であれば一定の値となる。
図2及び図3は回転数偏差と蒸気加減弁の操作量との関係で定義した蒸気タービンの速度調定率関数(蒸気加減弁の制御特性)を表すグラフであり、図2には基本関数、図3には調整を加えた関数が例示してある。図2及び図3のグラフにおいて、横軸は回転数偏差X(rpm)を表し、縦軸は蒸気加減弁4の操作量Y(%)を表している。図2及び図3に示したグラフは、操作量演算回路15で生成される速度調定率関数の例を図式化したものに相当する。
本実施形態では回転数偏差X(=Xm-Xt)の正負を区別することとし、Xm>XtのときX>0、Xm=XtのときX=0、Xm<XtのときX<0の値をとる。図2及び図3に例示したX1,X2は負の値、X3,Xaは正の値である。aはnの値の1つである。
本実施形態において、操作量Yの第1選択肢Yn1には、回転数偏差Xの個々の値Xn毎に異なる値が設定してある。回転数偏差Xの値Xnの全てについて第1選択肢Yn1を選択すると、図2に示した速度調定率の基本関数が定義される。この基本関数の下では原点(0,0)を通り回転数偏差Xに比例して操作量Yが小さくなる。つまり、回転数偏差X>0であれば、回転数偏差Xの大きさ(絶対値)に比例して操作量Yが閉弁方向に増加し、蒸気加減弁4の開度が現状の値に対して操作量Yの大きさ(絶対値)だけ減少する。反対に回転数偏差X<0であれば、回転数偏差Xの大きさ(絶対値)に比例して操作量Yが開弁方向に増加し、蒸気加減弁4の開度が現状の値に対して操作量Yの大きさ(絶対値)だけ増加する。回転数偏差X=0の場合は操作量Yが0(ゼロ)であるため、蒸気加減弁4の開度は現状の値で維持される。従って、蒸気タービン2の回転数は目標回転数Xtに収束するようにフィードバック制御される。
一方、第2選択肢Yn2は0(ゼロ)に設定してある。図3のグラフでは、図2の基本関数から、回転数偏差X2,X3の操作量Yの選択を第2選択肢Y22,Y32(=0)に変更した例を表している。図3に例示した調整後の速度調定率関数によれば、回転数偏差XがX2-X3の間で変動しても蒸気加減弁4の操作量Yが0となり、蒸気加減弁4の現状の開度が維持される。図3の例では、蒸気タービン2の回転数は、第2選択肢Yn2が選択されているX2-X3の範囲に回転数偏差Xが収まるように、つまり目標回転数Xt又はその付近の回転数に収束するようにフィードバック制御される。
-動作-
図4は蒸気タービン制御装置による速度調定率の切換動作を示すフローチャートである。図5は図4の切換動作に伴って速度調定率等が遷移する様子の例を表す波形図である。図5に示した各波形図の縦軸は各パラメータの大きさを示し、横軸は共通の時間軸である。ここでは、速度調定率関数を図2に示す関数から図3に示す関数に切り換える場合を例に挙げて説明する。また、理解を容易にするために回転数偏差XがX2で一定した状態を例に挙げて説明するが、実際には、速度調定率関数に基づく蒸気加減弁4の開度制御により、測定回転数Xmは制御されて目標回転数Xt又はその付近に収束していく。
・START
まず、速度調定率関数が図2のように定義された状態で、図3のような速度調定率関数に切り換える速度調定率切換信号Ssが図5に示す時刻T0に蒸気タービン制御装置10に入力されたとする。これにより蒸気タービン制御装置10は時刻T0に図4の手順の実行を開始する。図3の速度調定率を定義する速度調定率切換信号Ssには、例えば{(X1,X2,X3,…Xa)=(ON,OFF,OFF,…ON)}の情報が含まれる。
・ステップS101
図4の手順を開始すると、蒸気タービン制御装置10は、ステップS101として、選択回路17で速度調定率切換信号Ssに基づいて各回転数偏差Xnについて操作量Yn1,Yn2のいずれかを選択し、それらのデータを変化率制限回路18に出力する。ここで変化率制限回路18に入力されるデータは{(X1,Y11),(X2,Y22),(X3,Y32),…(Xa,Ya1)}である。
・ステップS102
ステップS102に手順を移すと、蒸気タービン制御装置10は、選択回路17で生成されたデータと共に制限変化率R(=k/t)を操作量演算回路15に出力する。
・ステップS103-END
続くステップS103,S104では、蒸気タービン制御装置10は、変化率制限回路18から入力されたにデータに基づき、操作量演算回路15により図2の関数から図3の関数に速度調定率関数を制限変化率Rで遷移させる。例えば時刻T0の時間t後にはデータ{(X1,Y11),(X2,Y22-k),(X3,Y32+k),…(Xa,Ya1)}を基に速度調定率関数を生成する(ステップS103)。そして、時間t後の速度調定率関数が図3の関数に一致したかを判定する(ステップS104)。この判定では、図3の速度調定率関数のデータ{(X1,Y11),(X2,Y22),(X3,Y32),…(Xa,Ya1)}との一致性を判定する。ステップS104の判定が満たされなければ、蒸気タービン制御装置10はステップS103に手順を戻す。そして蒸気タービン制御装置10は、更に時間t後(時刻T0の時間2t後)にデータ{(X1,Y11),(X2,Y22-2k),(X3,Y32+2k),…(Xa,Ya1)}に基づく速度調定率関数を生成し、再度ステップS104の判定を実行する。
これにより回転数偏差X2の操作量YがY21から時間t当たりkずつ、つまり制限変化率RでY22まで減少していく。同じように回転数偏差X3の操作量YがY31から時間t当たりkずつY32まで増加していく。仮にY21,Y22に10kの差がある場合、ステップS103,S104の手順を10回繰り返して時間10t後(=時刻T1)に回転数偏差X2についての操作量Yの遷移は完了する(図5)。その際、例えばY31,Y32の差が10kより大きく回転数偏差X3についての操作量Yの遷移が未だ完了していなければ、ステップS104の判定が満たされるまでステップS103の手順が繰り返される。反対にY31,Y32の差が10k以下で、回転数偏差X2についての操作量Yの遷移完了時に回転数偏差X3についての操作量Yの遷移が既に完了していれば速度調定率の切換が完了し、蒸気タービン制御装置10は図4のフローを終了する。
なお、本例では回転数偏差X=X2である。速度調定率関数を図3の関数に切り換えるに当たり、図5に示したように時刻T0からT1にかけて回転数偏差X2の操作量YはY21からY22に遷移する。そのため、時刻T0からT1にかけては遷移中の速度調定率に基づいて蒸気加減弁4の開度指令値Svが演算される。その結果、時刻T0からT1にかけて、回転数偏差XがX2で一定であっても、開度指令値Svは時間10tをかけて操作量Y21,Y22の差分だけ線形的に減少する(図5)。
-効果-
一般に、蒸気タービン発電設備では、図2に示したように回転数偏差と蒸気加減弁の開度とを単純比例関係に規定した速度調定率関数が定義される。蒸気タービン発電設備によっては、また時によっては、図2のような速度調定率関数が適切な場合もある。しかし、回転数偏差の生じ方には蒸気タービン発電設備毎、或いは時間や季節等によって傾向があり、特定範囲の回転数偏差(例えば目標回転数の前後30%程度)については蒸気加減弁の開度補正をしなくてもすぐに抑制方向に転じる場合がある。このように蒸気加減弁の開度補正をしなくてもすぐに自然に収まる回転数偏差に関しては、蒸気加減弁の開度が過敏に変化すると、例えばハンチングが生じて蒸気タービンの回転数が目標回転数又はその付近に収束するまでにかえって時間を要する場合がある。
それに対し、本実施形態では、回転数偏差Xの個々の値Xn毎に複数用意された選択肢Yn1,Yn2から操作量Yの値を選択して速度調定率をデザインすることができる。例えば蒸気タービン発電設備の過去の運用実績データから蒸気加減弁の開度が過敏に変化すると好ましくない回転数偏差Xの特定範囲が知見された場合、その範囲の回転数偏差Xnについては選択肢Yn1,Yn2のうち絶対値の小さな方を選択する。これにより、特定範囲で回転数偏差Xが推移している間は、必要以上に弁開度が変化することを抑制できる。特に本実施形態では各回転数偏差Xnについて操作量Yの第2選択肢Yn2を0に設定してあるので、特定範囲では第2選択肢Yn2を選択することにより一種の不感帯を確保することができる。この場合、特定範囲で回転数偏差Xが推移している限りにおいては蒸気加減弁4の開度を維持することができる。
また、例えば特定範囲の回転数偏差Xnについて操作量Yの選択を変更する場合、その回転数偏差Xnが現在の回転数偏差に一致する場合も想定される。このような場合、仮に速度調定率切換信号Ssの入力を受けて例えば図2の関数から図3の関数に時間的に離散的に速度調定率関数が切り変わると、操作量YがYn1からYn2に時間的に離散的に切り換わり、蒸気加減弁4の開度が急変することになる。
この点に対しては、本実施形態では速度調定率関数を制限変化率Rで遷移させて時間をかけて切り換えるようにした。これにより、先に図5で説明したように現在の蒸気タービン2に生じている回転数偏差について操作量Yの選択が変更されても、蒸気加減弁4の開度の急変を抑えることができる。
以上の通り、本実施形態によれば、蒸気加減弁4の開度の過敏な変化を抑制し蒸気タービン2の回転数をスムーズに目標回転数Xt又はその付近に収束させることができる。
-変形例-
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜設計変更可能である。
例えば回転数偏差Xの個々の値Xnに対する操作量Yの選択肢に0を含める必要は必ずしもない。また、回転数偏差Xの個々の値Xnについてそれぞれ操作量Yの値として用意される選択肢の数は2つである必要はなく、3つ以上としても良い。操作量Yの選択肢を増やすことで蒸気加減弁4の速度調定率をより柔軟に調整することができる。
また、表現上、速度調定率を回転数偏差Xと蒸気加減弁4の操作量Yとの関係で定義しているが、回転数偏差Xは目標回転数Xt(定数)と測定回転数Xmとの差分であって測定回転数Xmの変化に対応する。そのため、速度調定率は測定回転数Xmと操作量Yの関係で表現することができるが、これも表現上の違いこそあれ回転数偏差Xと蒸気加減弁4の操作量Yとの関係で定義した速度調定率と同義である。
また、上記実施形態では、回転数偏差Xの個々の値Xnの操作量Yについての制限変化率Rを区別していないが、個々の回転数偏差Xnの少なくとも1つについて他の回転数偏差と異なる制限変化率Rの値を任意に設定しても良い。個々の回転数偏差Xnについて操作量Yの制限変化率Rの値は任意に設定することができ、勿論全ての回転数偏差Xnで制限変化率Rに同一の値を設定することもできる。
1…ボイラ、2…蒸気タービン、3…発電機、4…蒸気加減弁、10…蒸気タービン制御装置、11…メモリ(記憶装置)、12…CPU(演算装置)、R…制限変化率、X…回転数偏差、X1,X2,Xa,Xn…回転数偏差の個々の値、Xm…測定回転数、Xt…目標回転数、Y…蒸気加減弁の操作量、Yn1,Yn2…操作量の選択肢

Claims (3)

  1. 蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラから供給される蒸気で駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンで駆動される発電機と、前記ボイラから前記蒸気タービンへの供給蒸気流量を調整する蒸気加減弁とを備えた蒸気タービン発電設備に備えられ、前記蒸気タービンの測定回転数と予め設定された目標回転数との差分である回転数偏差が小さくなるように前記蒸気加減弁を制御する蒸気タービン制御装置において、
    記憶装置と演算装置とを含んで構成され、
    前記記憶装置には、前記蒸気タービンの目標回転数と、前記蒸気加減弁の操作量について前記回転数偏差の値毎に複数ずつ予め設定された選択肢と、速度調定率の変化について予め設定された制限変化率とが記憶されており、
    前記演算装置は、
    前記回転数偏差の値毎に前記選択肢から任意に選択された前記操作量で速度調定率関数を定義し、定義した速度調定率関数の下で前記回転数偏差に応じて前記蒸気加減弁の開度を制御し、かつ
    前記回転数偏差の個々の値の少なくとも1つについて前記操作量の選択が変更された場合、現在の速度調定率関数から変更後の速度調定率関数に前記制限変化率で遷移させるように構成されている
    ことを特徴とする蒸気タービン制御装置。
  2. 請求項1の蒸気タービン制御装置において、前記回転数偏差の個々の値について設定された前記操作量の複数の選択肢の1つが0であることを特徴とする蒸気タービン制御装置。
  3. 請求項1の蒸気タービン制御装置と、前記ボイラと、前記蒸気タービンと、前記発電機と、前記蒸気加減弁とを備えた蒸気タービン発電設備。
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