JP7336417B2 - スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法、並びにスピーカの振動板 - Google Patents

スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法、並びにスピーカの振動板 Download PDF

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Description

本発明は、低音再生特性や耐熱性等に優れるスピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法、並びにスピーカの振動板に関するものである。
携帯電話、携帯ゲーム機器、スマートフォン等からなる携帯機器には、マイクロスピーカと呼ばれる小型のスピーカが内蔵されている。このマイクロスピーカと呼ばれるスピーカの音波を発生させる振動板は、一般的には、(1)金属箔、(2)天然樹脂製の紙、織布、不織布、(3)合成樹脂製のフィルムにより形成され、音質を左右する重要な部品となる。
振動板が(1)、(2)ではなく、(3)の合成樹脂製のフィルムの場合、これまでにポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等からなるフィルムが用いられている(特許文献1、2参照)。
ところで、近年のスピーカは、益々の高機能化や高性能化が図られている。したがって、スピーカの振動板に対する要求特性も益々厳しくなって来ている。この振動板に求められる要求特性としては、軽量(密度あるいは比重が小さい)であること、適度な剛性(ヤング率、弾性率)を有すること、厚さ精度に優れること、破断時の伸びが大きく、耐久性に優れることがあげられる。また、これらの特性の他、耐熱性、耐湿性、耐水性、成形性(プレス成形、真空成形、圧空成形等)に優れることもあげられる。
しかしながら、スピーカの振動板が(1)の金属箔の場合、耐熱性、耐湿性、耐水性に優れるものの、密度や剛性が大きいので、最低共振周波数(f)が高く、低音の再生特性が不充分となる。また、スピーカの振動板が(2)の天然樹脂製の紙、織布、不織布の場合、密度が小さく、軽量ではあるものの、耐熱性、耐湿性、耐水性に問題が生じ、スピーカの製造工程も煩雑化する。
また、スピーカの振動板が(3)の合成樹脂製のフィルムの場合、具体的にはポリオレフィン系樹脂からなるフィルムの場合、軽量で損失正接が大きく、耐湿性、耐水性、成形性に優れるが、剛性に乏しく、耐熱性に問題がある。また、スピーカの振動板がポリエチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムの場合、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムと比較して耐熱性が良好ではあるが、損失正接が小さく、音質が不充分となる。また、70℃前後の温度で変形してしまうので、耐熱性が充分とはいえない。
また、スピーカの振動板がポリエチレンナフタレート樹脂からなるフィルムの場合、損失正接や強度が大きく、耐久性に優れ、音質特性にも優れるが、これらの特性を引き出すには、高度に二軸延伸し、配向させる必要がある。しかしながら、高度に二軸延伸して配向させると、フィルムの剛性(弾性率)が高くなるので、最低共振周波数(f)が高くなり、低音再生特性が不充分となる。加えて、プレス成形、真空成形、圧空成形等の成形性が低下するおそれがある。
また、スピーカの振動板がポリフェニルサルファイド樹脂からなるフィルムの場合、高度に二軸延伸して配向すれば、優れた耐熱性を得ることができる。しかし、高度に二軸延伸して配向すると、最低共振周波数(f)が高くなり、低音再生特性が不充分化し、プレス成形、真空成形、圧空成形等の成形性の低下を招くおそれがある。加えて、損失正接が小さく、音質に問題が生じることとなる。
上記に鑑み、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂製のフィルムやポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製のフィルムが振動板用のフィルムとして提案され、利用されている(特許文献2、3、4参照)。
ポリエーテルイミド樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂より密度が小さく、軽量である。また、ポリエーテルイミド樹脂は、非晶性樹脂であるため、フィルムの成形に際し、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、あるいはポリフェニレンサルファイド樹脂等の結晶性樹脂からなるフィルムと比較し、振動板の成形性に優れている(振動板の成形:プレス成形、圧空成形、真空成形等)。さらに、ポリエーテルイミド樹脂フィルムは、損失正接が高く、音質特性に優れているので、携帯電話、スマートフォン、携帯用音楽機器、携帯ゲーム機、タブレットパーソナルコンピュータ等からなる各種小型電子機器のスピーカ、あるいは車載用スピーカの振動板に使用されている。
特開昭62‐263797号公報 特開昭60‐139098号公報 特開昭58‐222699号公報 特開2007‐43597号公報
しかし、ポリエーテルイミド樹脂製のフィルムからなる振動板の耐熱温度は、150℃以下であることが報告されている(特許文献3)。したがって、ポリエーテルイミド樹脂製のフィルムでは、充分な耐熱性を得ることができない。さらに、引張破断時伸びが小さいため、外部出力を大きくすると、フィルムが破れてしまう等の問題がある。
一方、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムから得られる振動板の耐熱温度は、約200~約300℃であることが報告されており、ポリエーテルイミド樹脂と比較して機械的性質や耐熱性の点で優れている。しかし、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの弾性率(引張弾性率)は、非常に大きく、2800N/mmを越える値となる。したがって、このフィルムから得られる振動板は、最低共振周波数(f)が高く、低音再生が不充分となる。
本発明は上記に鑑みなされたもので、優れた耐熱性や音質特性を得ることができ、しかも、スピーカの製造工程の煩雑化を防ぐことができるスピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法、並びにスピーカの振動板を提供することを目的としている。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂との組み合わせに着目し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、接着性フッ素樹脂1質量部以上100質量部以下とを含有した成形材料により成形されることを特徴としている。
なお、23℃における引張弾性率が100N/mm以上2500N/mm以下であり、23℃における引張破断時伸びが50%以上であることが好ましい。
また、20℃における損失正接が0.010以上であり、冷却後の貯蔵弾性率の第一変曲点温度が130℃以上であることが好ましい。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1、2、又は3に記載したスピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法であって、
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、接着性フッ素樹脂1質量部以上100質量部以下とを溶融混練して成形材料を調製し、この成形材料を押出成形機に投入してダイスにより振動板用樹脂フィルムに押出成形し、この振動板用樹脂フィルムを冷却ロールに接触させて冷却することを特徴としている。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1、2、又は3に記載したスピーカの振動板用樹脂フィルムと、厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層とが積層されることを特徴としている。
なお、エラストマー層がシリコーン樹脂であり、このシリコーン樹脂のデュロメータ硬さが、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合に、A10以上A90以下であることが好ましい。
また、シリコーン樹脂と振動板用樹脂フィルムとの間にプライマー層が介在されると良い。
ここで、特許請求の範囲における振動板用樹脂フィルムは、透明、不透明、半透明、無延伸樹脂フィルム、一軸延伸樹脂フィルム、二軸延伸樹脂フィルムを特に問うものではない。この振動板用樹脂フィルムは、エラストマー層の片面あるいは両面に積層することができる。振動板用樹脂フィルムには、必要に応じ、帯電防止剤層、エラストマー層、及び金属層の何れかを積層して設けることができる。また、スピーカは、主に携帯機器に内蔵されるが、この携帯機器には、少なくとも携帯電話、携帯用音楽機器、携帯ゲーム機器、スマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等が含まれる。
本発明によれば、成形材料にポリアリーレンエーテルケトン樹脂を含有するので、靱性、耐熱性、耐溶剤性等に優れる振動板用樹脂フィルムを得ることができる。また、成形材料を、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とで調製するので、低音特性の他、損失正接が増大し、共振の発生を抑制して優れた音質特性を得ることができる。
本発明によれば、優れた耐熱性や音質特性を得ることができ、しかも、スピーカの製造工程の煩雑化を防ぐことができるという効果がある。
請求項2記載の発明によれば、振動板用樹脂フィルムの23℃における引張弾性率が100N/mm以上2500N/mm以下なので、スピーカの加工中にハンドリング性が低下したり、高音再生が不充分になるのを防ぐことができ、しかも、低音再生を満足させることができる。また、振動板用樹脂フィルムの23℃における引張破断時伸びが50%以上なので、振動板用樹脂フィルムの加工中に破断や割れ等のトラブルが生じてしまうおそれが少なく、製造が容易となる。また、振動板用樹脂フィルムの振動板の耐久性が低下するのを防ぐことができる。
請求項3記載の発明によれば、振動板用樹脂フィルムの20℃における損失正接が0.010以上なので、共振の発生に伴う音質不良を防止することが可能となる。また、振動板用樹脂フィルムの冷却後の貯蔵弾性率の第一変曲点温度が130℃以上なので、充分な耐熱性を得ることができ、振動板用樹脂フィルムから得られる振動板をスピーカとして使用する場合、ボイスコイルの高振動に伴う高熱で振動板用樹脂フィルムから得られる振動板の変形、割れ、又は破損を招く等、耐久性の低下を防止することが可能となる。
請求項4記載の発明によれば、振動板用樹脂フィルの製造に溶融押出成形法を採用するので、振動板用樹脂フィルムのハンドリング性や設備の簡略化を図ることが可能となる。
請求項5記載の発明によれば、適度な引張弾性率を有するポリアリーレンエーテルケトン樹脂に接着性フッ素樹脂を添加した樹脂フィルムを用いるので、低音再生や高音再生に優れる高性能のスピーカの振動板を得ることができる。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂に接着性フッ素樹脂を添加した振動板用樹脂フィルムは、比重が小さく、軽量で、しかも、耐熱性に優れるスピーカの振動板を実現することもできる。また、エラストマー層の圧縮永久歪み特性が悪化したり、スピーカの振動板の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるのを防ぐことができる。
請求項6記載の発明によれば、エラストマー層のシリコーン樹脂の圧縮永久歪み特性が悪化したり、スピーカの振動板の振動伝搬速度が低下するのを抑制することができる。また、損失正接が小さくなって振動板の性能が悪化するのを防止することが可能となる。
請求項7記載の発明によれば、振動板用樹脂フィルムとエラストマー層のシリコーン樹脂とを強固に接着させ、振動板用樹脂フィルムとシリコーン樹脂の剥離を防止することができる。
本発明に係るスピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。 本発明に係るスピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法の実施例における第一変曲点温度と貯蔵弾性率との関係を模式的に示すグラフである。 本発明に係るスピーカの振動板用樹脂フィルム及びスピーカの振動板の第2の実施形態を模式的に示す説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるスピーカの振動板用樹脂フィルム2は、図1に示すように、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とを含有した成形材料1により成形される樹脂フィルムであり、複数枚がエラストマー層と組み合わされることにより、携帯機器のマイクロスピーカと呼ばれるスピーカの振動板を形成する。
成形材料1は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、接着性フッ素樹脂1質量部以上100質量部以下とが含有して調製される。この成形材料1には、本発明の特性を損なわない範囲でポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物、樹脂改質剤等が選択的に添加される。
成形材料1のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、アリーレン基、エーテル基、及びカルボニル基からなる結晶性の樹脂であり、例えば特許5709878号公報や特許第5847522号公報、あるいは文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕等に記載された樹脂があげられ、機械的性質、耐熱性や耐水性等に優れる。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の具体例としては、例えば化学式(1)で表される化学構造式を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、化学式(2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)樹脂、化学式(3)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、化学式(4)の化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、あるいは化学式(5)の化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等があげられる。
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これらポリアリーレンエーテルケトン樹脂の中では、入手の容易性、コスト、及び樹脂フィルムの成形性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂とが好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:Victrex Powderシリーズ、Victrex Granulesシリーズ、ダイセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の製品名:キータスパイア PEEKシリーズがあげられる。また、ポリエーテルケトンケトン樹脂の具体例としては、アルケマ社製の製品名:KEPSTANシリーズが該当する。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、1種単独でも良いし、2種以上を混合して使用しても良い。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、化学式(1)~(5)で表される化学構造を2つ以上有する共重合体でも良い。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、通常、粉状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕に記載された製法があげられる。
接着性フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという)、及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという)に基づく繰り返し単位(a)、ジカルボン酸無水物基を有し、かつ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(b)、及びその他のモノマー(但し、繰り返し単位(a)、(b)と重複する場合には、そのモノマーを除く)に基づく繰り返し単位(c)を含有する。
係る接着性フッ素樹脂において、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、及び繰り返し単位(c)の合計モル量に対し、繰り返し単位(a)が50~99.89モル%、繰り返し単位(b)が0.01~5モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1~49.99モル%である。好ましくは繰り返し単位(a)が50~99.47モル%、繰り返し単位(b)が0.03~3モル%であり、繰り返し単位(c)が0.5~49.97モル%、より好ましくは繰り返し単位(a)が50~98.95モル%、繰り返し単位(b)が0.05~2モル%であり、繰り返し単位(c)が1~49.95モル%が良い。
これは、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、及び繰り返し単位(c)のモル%が係る範囲にあれば、接着性フッ素樹脂の耐熱性や耐薬品性が向上するからである。また、繰り返し単位(b)のモル%が係る範囲にあれば、接着性フッ素樹脂は、結晶性のポリアリーレンエーテルケトン樹脂との接着性に優れるからである。さらに、繰り返し単位単位(c)のモル%が係る範囲にあれば、接着性フッ素樹脂は、成形性や耐ストレスクラック性等の機械物性に優れるからである。
上記「ジカルボン酸無水物基を有し、かつ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマー」(以下、単に環状炭化水素モノマーと略称する)は、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素であって、しかも、ジカルボン酸無水物基と環内重合性不飽和基を有する重合性化合物をいう。
環状炭化水素としては、1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素が好ましい。すなわち、有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、有橋多環炭化水素の2以上が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素が縮合した環状炭化水素であることが好ましい。また、この環状炭化水素モノマーは、環内重合性不飽和基、すなわち炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基を1つ以上有する。この環状炭化水素モノマーはさらにジカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有し、ジカルボン酸無水物基は炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合していても良く、環外の2つの炭素原子に結合していても良い。
好ましくは、ジカルボン酸無水物基は、上記環状炭化水素の環を構成する炭素原子であって、かつ隣接する2つの炭素原子に結合する。さらに、環状炭化水素の環を構成する炭素原子には、水素原子の代わりに、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、その他の置換基が結合していても良い。具体例としては、以下の式(6)~(13)で表されるものがあげられる。ここで、式(7)、(10)~(13)におけるRは、炭素原子数1~6の低級アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子、上記低級アルキル基中の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基を示す。
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上記環状炭化水素モノマーとしては、好ましくは式(6)で表される、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、NAHという)、式(8)、(9)で表される酸無水物である環状炭化水素モノマー、式(7)、及び式(10)~(13)において、置換基Rがメチル基である環状炭化水素モノマーがあげられる。より好ましくはNAHが良い。
その他のモノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、VdFという)、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという)、CF=CFORf 1 (ここで、Rf 1 は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでも良いペルフルオロアルキル基)、CF=CFORf 2 SO(Rf 2 は炭素数1~10で炭素原子間に酸素原子を含んでも良いペルフルオロアルキレン基、Xはハロゲン原子又は水酸基)、CF=CFORf 2 CO(ここで、Rf 2 は上記と同じ、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基)、CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1又は2)、CH=CX(CF(ここで、X及びXは、互いに独立に水素原子、又はフッ素原子、qは2~10の整数)、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2~4のオレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等があげられる。その他のモノマーは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
CF=CFORf 1 の具体例としては、例えばCF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等があげられる。好ましくは、CF=CFOCFCFCFである。また、CH=CX(CFの具体例としては、例えばCH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=C F(CFH、CH=CF(CFH等があげられる。好ましくは、CH=CH(CFF又はCH=CH(CFFである。
その他のモノマーとしては、好ましくはVdF、HFP、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く)、CF=CFORf 1 、CH =CX(CF 、エチレン、プロピレン、及び酢酸ビニルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、HFP、CTFE(但し、繰り返し単位(a)として使用される場合を除く)、CF=CFORf 1 、エチレン及びCH=CX(CFからなる群から選ばれる1種以上である。最も好ましくは、HFP又はCF=CFORf 1 である。また、CF=CFORf 1 としては、Rf 1 が炭素数1~6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2~4のペルフルオロアルキル基がより好ましく、ペルフルオロプロピル基が最適である。
接着性フッ素樹脂の具体例としては、例えば、TFE/CF=CFOCFCFCF/NAH共重合体、TFE/HFP/NAH共重合体、TFE/CF=CFOCFCFCF/HFP/NAH共重合体、TFE/VdF/NAH共重合体、TFE/CH=CH(CFF/NAH/エチレン共重合体、TFE/CH=CH(CFF/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH=CH(CFF/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH=CH(CFF/NAH/エチレン共重合体、CTFE/CH=CH(CFF/NAH/エチレン共重合体等があげられる。
接着性フッ素樹脂の融点は、150℃以上330℃以下が好ましく、200℃以上320℃以下がより好ましい。この融点は、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、及び繰り返し単位(c)の含有割合を上記範囲内で適宜選定して調製することができる。
接着性フッ素樹脂の高分子末端基としては、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物残基等の接着性官能基を有すると、接着性フッ素樹脂以外の結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂との接着性に優れるので好ましい。また、接着性官能基を有する高分子末端基は、接着性フッ素樹脂の製造時に、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより、導入することができる。
接着性フッ素樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、ラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が用いられる。この重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体、必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体、及び乳化剤を使用する乳化重合があげられるが、特に溶液重合が望ましい。
接着性フッ素樹脂は特に限定されるものではないが、好ましくは特許第4424246号公報、特許第5263269号公報、特許第5365939号公報記載、あるいは特開2019-43134号公報記載の接着性フッ素樹脂があげられる。この接着性フッ素樹脂の具体例としては、LH-8000〔AGC社製:製品名〕、AH-5000〔AGC社製:製品名〕、AH-2000〔AGC社製:製品名〕EA-2000等〔AGC社製:製品名〕があげられる。これら接着性フッ素樹脂の中では、耐熱性に優れるEA-2000が好適である。
接着性フッ素樹脂の添加量は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部に対して1質量部以上100質量部以下、好ましく10質量部以下90質量部以下、より好ましくは15質量部以上80質量部以下、さらに好ましく20質量部以上60質量部以下である。これは、添加量が1質量部未満の場合には、振動板用樹脂フィルム2の引張弾性率の低下が期待できず、逆に添加量が100質量部を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂との分散性が低下して振動板用樹脂フィルム2の引張破断時伸びが低下するため、携帯機器スピーカの加工中のハンドリング性が低下したり、振動板用樹脂フィルム2の振動板の耐久性が低下し、外部出力を大きくすると、振動板が破れたり割れたりしてしまうという理由に基づく。
以上から、接着性フッ素樹脂の添加量が1質量部以上100質量部以下の範囲内であれば、最低共振周波数(f)が低下して低音再生特性に優れ、さらにハンドリング性や耐久性の低下を防止可能なスピーカの振動板用樹脂フィルム2が得られる。
成形材料1には、上記樹脂の他、上記以外のポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニルサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂等が必要に応じ、添加される。
上記において、スピーカの振動板用樹脂フィルム2を製造する場合には、例えば図1に示すように、先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とを室温下で撹拌混合し、所定時間溶融混練して成形材料1を調製した後、この成形材料1により帯形のスピーカの振動板用樹脂フィルム2を連続的に成形する。
成形材料1の調製方法は、(1)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とを室温下(0℃以上50℃以下)で撹拌混合させた後に溶融混練し、振動板用樹脂フィルム2の成形材料1を調節する方法、(2)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とを撹拌混合することなく、溶融したポリアリーレンエーテルケトン樹脂に接着性フッ素樹脂を添加し、これらを溶融混練して成形材料1を調製する方法があげられる。
これらの方怯は、いずれをも採用することができる。先ず、(1)の方法について説明すると、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とを撹拌混合する場合には、タンブラーミキサー、へンシルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、あるいは万能撹拌ミキサー等が使用される。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とは、上記方法による撹拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等の多軸押出成形機等で溶融混練分散されることにより、成形材料1に調製される。この成形材料1を調製する場合、溶融混練機による溶融混練時の温度は、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上380℃以下が良い。これは、溶融押出成形機10の溶融混練時の温度が400℃を越える場合には、接着性フッ素樹脂が激しく分解して好ましくないという理由に基づく。
次に、(2)の方法について説明すると、この方法の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等の多軸押出成形機等で溶融し、溶融させたポリアリーレンエーテルケトン樹脂に接着性フッ素樹脂を添加して溶融混練分散させることにより、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂との成形材料1を調製する。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とからなる成形材料1を調製する場合の溶融混練機による溶融混練時の温度は、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上380℃以下が良い。これは、溶融押出成形機10の温度が400℃を越えると、接着性フッ素樹脂が上記同様、激しく分解するからである。
成形材料1は、通常、塊状、ストランド状、シート状、棒状に押出された後、粉砕機あるいは裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態にして使用される。
係る成形材料1からなる振動板用樹脂フィルム2は、溶融押出成形法、力レンダー成形法、あるいはキャスティング成形法等の公知の方法により製造することができる。ここで、溶融押出成形法とは、単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなる溶融押出成形機10を使用してポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂との成形材料1を溶融混練し、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13より帯形の振動板用樹脂フィルム2を連続的に押し出して製造する方法である。振動板用樹脂フィルム2の製造方法は、ハンドリング性や設備の簡略化の観点からすると、溶融押出成形法が最適である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料1を溶融混練するように機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料1用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、へリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料1の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
単軸押出成形機や二軸押出成形機等の溶融押出成形機10としては、ベント口を有している溶融押出成形機10の使用が好ましい。これは、ベント口を使用して減圧下で溶融混練することにより、成形材料1に中に含まれている水分や昇華した有機物を充分に脱気しやすくなるからである。また、成形材料1の溶融混練前の含水率の調整が不要となるからである。
溶融押出成形機10の溶融混練時の温度は、成形材料1を溶融可能な温度であり、成形材料1が分解しない温度であれば、特に制限されるものでないが、成形材料1の融点以上熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上380℃以下に調整される。これは、300℃未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形することができず、逆に400℃を越える場合には、接着性フッ素合樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
溶融押出成形機10で溶融混練された成形材料1は、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13により帯形の振動板用樹脂フィルム2に連続して押出成形され、この連続した振動板用樹脂フィルム2が下方の一対の圧着ロール17と冷却ロール18との間に挟んで冷却された後、巻取機19に巻き取られることで製造される。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形の振動板用樹脂フィルム2を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、成形材料1の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上380℃以下に調整される。これは、300℃未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形することができず、逆に400℃を越える場合には、接着性フッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15とフィルタ16とがそれぞれ装着されることが好ましい。ギアポンプ15は、溶融押出成形機10により溶融混練された成形材料1を一定の流量で、かつ高精度にTダイス13にフィルタ16を介して移送する。フィルタ16は、溶融状態の成形材料1のゲルや異物等を分離し、溶融状態の成形材料1をTダイス13に移送する。
一対の圧着ロール17は、Tダイス13の下方に回転可能に軸支され、冷却ロール18を摺接可能に狭持しており、この冷却ロール18との間に振動板用樹脂フィルム2を挟持して冷却する。この一対の圧着ロール17のうち、下流の圧着ロール17のさらに下流には、振動板用樹脂フィルム2を巻き取る巻取機19の巻取管20が回転可能に設置され、圧着ロール17と巻取機19の巻取管20との間には、振動板用樹脂フィルム2の側部にスリットを形成するスリット刃21が昇降可能に配置されており、このスリット刃21と巻取機19の巻取管20との間には、振動板用樹脂フィルム2にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール22が必要数軸支される。
各圧着ロール17の周面には、振動板用樹脂フィルム2と冷却ロール18との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被膜形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール17としては、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れる振動板用樹脂フィルム2の成形が可能となる。金属弾性ロールの具体例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製:製品名〕、UFロール〔日立造船社製:製品名〕が該当する。
このような圧着ロール17は、50℃以上260℃以下、好ましくは100℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整され、振動板用樹脂フィルム2に摺接してこれを冷却ロール18に圧接する。圧着ロール17の温度が係る範囲なのは、圧着ロール17の温度が260℃を越える場合には、製造中の振動板用樹脂フィルム2が圧着ロール17に貼り付き、振動板用樹脂フィルム2が破断するか、あるいは圧着ロール17に被覆形成されたゴム層が熱分解するおそれがあるからである。
逆に、圧着ロール17の温度が50℃未満の場合には、圧着ロール17が結露するため、好ましくないという理由に基づく。圧着ロール17の温度調整や冷却方法としては、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘電加熱等があげられる。
冷却ロール18は、例えば圧着ロール17よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に軸支されて押し出された振動板用樹脂フィルム2を圧着ロール17との間に狭持し、圧着ロール17と共に振動板用樹脂フィルム2を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御する。この冷却ロール18は、圧着ロール17と同様、50℃以上260℃以下、好ましくは100℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整され、振動板用樹脂フィルム2に摺接する。
冷却ロール18が50℃以上260℃以下の温度に調整されるのは、冷却ロール18の温度が260℃を越える場合には、製造中の振動板用樹脂フィルム2が冷却ロール18に密着して振動板用樹脂フィルム2の破断を招いたり、あるいはゴム層が被覆形成された圧着ロール17の場合、圧着ロール17のゴム層が熱分解するおそれがあるからである。これに対し、冷却ロール18の温度が50℃未満の場合には、冷却ロール18の結露を招き、好ましくないからである。冷却ロール18の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘導加熱等があげられる。
上記構成において、振動板用樹脂フィルム2をより具体的、かつ実際に製造する場合には図1に示すように、先ず、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料1を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料1のポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とを溶融混練し、Tダイス13から振動板用樹脂フィルム2を連続的に帯形に押し出す。この際、成形材料1の溶融押出前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以上500ppm以下に調整される。これは、含水率が2000ppmを越える場合には、成形材料1がTダイス13から押し出された直後に発泡するおそれがあるからである。
振動板用樹脂フィルム2を押し出したら、一対の圧着ロール17、冷却ロール18、テンションロール22、巻取機19の巻取管20に順次巻架し、振動板用樹脂フィルム2を冷却ロール18により冷却した後、振動板用樹脂フィルム2の両側部をスリット刃21でそれぞれカットするとともに、巻取機19の巻取管20に順次巻き取れば、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム2を製造することができる。この振動板用樹脂フィルム2の製造の際、振動板用樹脂フィルム2の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、振動板用樹脂フィルム2表面の摩擦係数を低下させることができる。
振動板用樹脂フィルム2の厚さは、2μm以上1000μm以下であれば特に限定されるものではないが、厚さの充分な確保、ハンドリング性や薄型化の観点からすると、好ましくは2.5μm以上100μm以下、より好ましくは3μm以上95μm以下、さらに好ましくは8μm以上75μm以下が良い。
これは、振動板用樹脂フィルム2の厚さが2μm未満の場合には、振動板用樹脂フィルム2の機械的強度が著しく低下するので、振動板用樹脂フィルム2の成形が困難になるからである。逆に、振動板用樹脂フィルム2の厚さが100μmを越える場合には、振動板への成形精度が低下するからである。この振動板用樹脂フィルム2の厚さは、各種のマイクロメータにより、測定することができる。振動板用樹脂フィルム2の厚さ公差は、平均値±5%の範囲内、好ましくは平均値±3%の範囲内が良い。これは、振動板用樹脂フィルム2の厚さ公差が平均値±5%の範囲を外れると、音質にバラツキが生じるため好ましくないからである。振動板用樹脂フィルム2の厚さ公差は、以下の式により求めることができる。
フィルムの厚公差[%]={(MAX又はMIN)-(AVE)}/(AVE)×100
ここで、MAX:フィルム厚の最大値
MIN:フィルム厚の最小値
AVE:フィルム厚の平均値
振動板用樹脂フィルム2の機械的特性は、23℃における引張破断時伸び、及び引張弾性率で評価することができる。引張破断時伸びは、JIS K 6251や7127に準拠した測定法で50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上が良い。この引張破断時伸びの上限値は、特に制約されるものではないが、500%以下が良い。
これは、破断時伸びが50%未満の場合、振動板用樹脂フィルム2が充分な靭性を有していないので、振動板用樹脂フィルム2の加工中に破断や割れ等のトラブルが生じてしまうおそれがあり、製造が困難になるからである。また、振動板用樹脂フィルム2の振動板の耐久性が低下し、外部出力を大きくすると振動板が破れたり割れたりしてしまうという理由に基づく。
振動板用樹脂フィルム2の23℃における引張弾性率は、JIS K 6251やJIS K 7127に準拠した測定法で100N/mm以上2500N/mm以下、好ましくは300N/mm以上2000N/mm以下、より好ましくは500N/mm以上1500N/mm以下、さらに好ましくは500N/mm以上1000N/mm以下の範囲が最適である。これは、振動板用樹脂フィルム2の引張弾性率が100N/mm未満の場合は、振動板用樹脂フィルム2の剛性が劣るため、携帯電話スピーカの加工中にハンドリング性が低下したり、振動板用樹脂フィルム2の振動板の高域共振周波数(f)が低く、高音再生が不充分になるからである。また、2500N/mmを越える場合には、振動板用樹脂フィルム2から得られる振動板の最低共振周波数(f)が高く、低音再生が不充分になるからである。
振動板用樹脂フィルム2の耐熱特性に関しては、貯蔵弾性率の第一変曲点温度で評価することができる(図2参照)。ここで、貯蔵弾性率の第一変曲点温度とは、温度25℃以上に現れる貯蔵弾性率が9.0×10Pa以上に現れる変曲点の温度である。
振動板用樹脂フィルム2の温度25℃以上に現れる貯蔵弾性率の第一変曲点温度は、130℃以上、好ましくは140℃以上、さらに好ましくは145℃以上が良い。これは、振動板用樹脂フィルム2の貯蔵弾性率の第一変曲点温度が130℃未満の場合には、振動板用樹脂フィルム2の耐熱性が不充分となり、振動板用樹脂フィルム2から得られる振動板をスピーカとして使用するとき、ボイスコイルの高振動に伴う高熱で、振動板用樹脂フィルム2から得られる振動板の変形、割れ、又は破損を招く等、耐久性の低下を招くからである。振動板フィルムの貯蔵弾性率の第一変曲点温度の上限は、特に限定されるものではないが、250℃以下が好ましい。
振動板用樹脂フィルム2の20℃における損失正接は、共振を防止して良好な音質を得るため、0.010以上、好ましくは0.013以上、より好ましく0.015以上、さらに好ましく0.018以上が最適である。これは、損失正接が0.010未満の場合には、共振の発生により、良好な音質を得ることができないからである。この損失正接の上限値は、特に制約されるものではないが、0.45以下が良い。
冷却後の振動板用樹脂フィルム2の比重は、1.1以上1.8以下、好ましくは1.3以上1.6以下、より好ましく1.4以上1.5以下が最適である。これは、係る範囲であれば、密度が小さいので軽量化を図ることができ、しかも、良好な音質特性を得ることができるからである。
振動板用樹脂フィルム2の表裏面には、微細な凹凸を形成して摩擦係数を低下させることができる。この微細な凹凸を形成する方法としては、(1)微細な凹凸を備えた圧着ロール17と微細な凹凸を備えた冷却ロール18とで振動板用樹脂フィルム2を挟み、微細な凹凸を形成する方法、(2)振動板用樹脂フィルム2に微小なジルコニア、ガラス、ステンレス等の無機化合物、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、あるいは植物の種等の有機化合物を吹き付けて微細な凹凸を形成する方法、(3)振動板用樹脂フィルム2を微細な凹凸を備えた金型でプレス成形し、微細な凹凸を形成する方法があげられる。これらの方法の中では、設備の簡略化、凹凸サイズの精度、凹凸形成の均一化、あるいは凹凸形成の容易さ、連続的に凹凸の形成が可能な観点から(1)の方法が最適である。
(1)の方法をさらに詳細に説明すると、(1-1)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とからなる成形材料1を溶融押出成形機10のTダイス13から微細な凹凸を周面に備えた冷却ロール18上に吐き出すとともに、この吐出物を冷却ロール18と微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール17とで挟み、振動板用樹脂フィルム2の溶融押出成形と同時に成形する方法、(1-2)成形した振動板用樹脂フィルム2を微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール17と微細な凹凸を備えた冷却ロール18とで挟み、凹凸を形成する方法があげられる。これらの中では、設備の簡略化の観点から、(1-1)の方法が好ましい。
上記構成によれば、成形材料1にポリアリーレンエーテルケトン樹脂を含有するので、靱性、耐熱性、耐溶剤性等に優れる振動板用樹脂フィルム2を得ることができる。また、成形材料1に、分散性に優れる接着性フッ素樹脂を添加し、振動板用樹脂フィルム2表裏面の滑り性を改良することも可能である。具体的には、振動板用樹脂フィルム2表面の滑り性は、静摩擦係数と動摩擦係数で評価することができる。静摩擦係数は、0.40以下、好ましくは以上0.38以下と低く小さくするとともに、動摩擦係数を0.30以下、好ましくは0.25以下と低く小さくすることができるので、充分な滑り性を得ることができ、振動板用樹脂フィルム2が巻取機19に巻き取られる際、シワの生じることがない。したがって、振動板用樹脂フィルム2が製造時や二次加工時に折れたり、損傷等する問題を有効に解消することができる。
なお、静摩擦係数と動摩擦係数時伸び下限値は、特に制約されるものではないが0.10以上が良い。
また、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体等のフッ素樹脂ではなく、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と相溶性に優れる接着性フッ素樹脂を採用するので、振動板用樹脂フィルム2を溶融押出成形法により円滑に製造することが可能となる。また、成形材料1を、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とで調製するので、低音特性の他、損失正接が増大し、共振の発生を抑えた優れた音質特性を得ることが可能となる。したがって、携帯機器のソフトウェアに依存したり、携帯機器に専用の外部スピーカを接続しなくても、重要な低音を携帯機器で強調したり、再生することが可能となる。
また、スピーカを大きく重くしなくても、低音特性の向上が期待できるので、携帯機器の薄型化、小型化、軽量化の要請に資することが可能となる。また、耐熱性に優れる振動板用樹脂フィルム2を携帯機器スピーカに用いるので、優れた耐熱性が期待できる。さらに、放熱特性に優れる結晶性のポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の振動板用樹脂フィルム2を用いるので、損失が減少して振動板用樹脂フィルム2の安定した長期使用が期待できる。
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、一対の振動板用樹脂フィルム2を用意し、この一対の振動板用樹脂フィルム2の間に、厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層31を挟持接着して積層構造のスピーカの振動板30を形成するようにしている。
エラストマー層31のエラストマーとしては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、炭化水素樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等があげられる。これらのエラストマーの中では、シリコーン樹脂、特に加熱硬化型シリコーン樹脂が耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れる点で好ましい。この加熱硬化型シリコーン樹脂としては、例えば付加硬化型ミラブルシリコーン樹脂、及び付加硬化型液状シリコーン樹脂があげられる。
付加硬化型ミラブルシリコーン樹脂は、通常、オルガノポリシロキサンに、シリカ系等の充填材、及び硬化剤(公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び有機化酸化物等)やシリカ微粉末等からなる各種の添加剤を添加した組成物の状態で使用される。
これに対し、付加硬化型液状シリコーン樹脂は、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、平均粒径が1μm以上30μm以下で、嵩密度が0.1g/cm以上0.5g/cm以下である無機質充填材(珪藻土、パーライト、発泡パーライトの粉砕物、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び中空フィラー等)と、付加反応触媒(白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等)とが添加された樹脂組成物の状態で使用される。
エラストマー層31にシリコーン樹脂を使用した場合のシリコーン樹脂のデュロメータ硬さは、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合、A10以上A90以下、好ましくはA20以上A70以下、より好ましくはA20以上A50以下の範囲が最適である。これは、デュロメータ硬さがA10未満の場合には、シリコーン樹脂の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板30の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるからである。逆に、デュロメータ硬さがA90を越える場合には、損失正接が小さくなり、振動板30としての性能悪化を招くからである。
一対の振動板用樹脂フィルム2とエラストマー層31との間には、これらを強固に接着する目的で、プライマー層32が選択的に介在される。各プライマー層32は、振動板用樹脂フィルム2とエラストマー層31のシリコーン樹脂との対向面間に介在され、これらを強固に接着するよう機能する。
プライマー層32は、エラストマー層31のシリコーン樹脂と振動板用樹脂フィルム2とを接着することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えばアルキド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びこれら混合物等があげられる。また、これらの樹脂を硬化、及び/又は架橋する架橋剤として、例えばイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物、シラン化合物等があげられる。
各プライマー層32は、0.1μm以上5μm以下、好ましくは1μm以上3μm以下の厚さとされる。これは、プライマー層32の厚さが0.1μm未満の場合には、エラストマー層31と振動板用樹脂フィルム2との接着が不充分で、振動板30への成形中、あるいは使用中に剥離してしまうおそれがあるからである。これに対し、プライマー層32の厚さが5μmを越える場合には、振動板30への二次成形性、あるいは音響特性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、スピーカの振動板30が金属箔製ではないので、最低共振周波数(f)を低くし、充分な低音の再生特性を得ることができる。また、振動板30が天然樹脂製の紙、織布、あるいは不織布ではないので、優れた耐湿性、耐水性、耐熱性を得ることができ、しかも、スピーカの製造工程の簡素化や容易化を図ることができる。また、適度な引張弾性率を有するポリアリーレンエーテルケトン樹脂に接着性フッ素樹脂を添加した振動板用樹脂フィルム2は、低音再生及び高音再生に優れるので、高性能のスピーカの振動板30を得ることができる。
また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂に接着性フッ素樹脂を添加した振動板用樹脂フィルム2は、比重が小さく、軽量で、しかも、耐熱性に優れるスピーカの振動板30を実現することも可能になる。さらに、エラストマー層31の圧縮永久歪み特性が悪化したり、スピーカの振動板30の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるのを有効に防止することができるのは明らかである。
なお、上記実施形態における振動板用樹脂フィルム2の表面には、本発明の効果を失わない範囲で各種の帯電防止剤、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の各種エラストマーを塗布したり、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅等の各種金属を蒸着させても良い。また、フィルタ16の開口形状は、円形、楕円形、矩形、多角形等を特に問うものではない。
以下、本発明に係るスピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂としては、市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、製品名:KETASPIRE KT-851 NL SP(以下、「KT-851 NL SP」と略す)を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、市販されている接着性フッ素樹脂EA-2000〔AGC社製:製品名、(以下、「EA-2000」と略す。〕を5質量部用意した。
これらを用意したら、2種類の樹脂を混合機に投入して攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製し、この撹拌混合物を同方向回転二軸押出機等で溶融混練してストランド状に押し出し、この押出成形物を空冷固化した後、ペレット状にカッティングして成形材料を調製した。同方向回転二軸押出機は、φ42mm、L/D=38タイプを用いた。また、撹拌混合物は、シリンダー温度370℃、ダイス温度370℃の条件下で溶融混練し、成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、366℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイス付きの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出してスピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂の含水率は、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA-100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。
単軸押出成形機は、φ40mm、スクリュー:フルフライトスクリュー(L/D=32、圧縮比:2.5)のタイプとした。この単軸押出成形機のシリンダー温度は250~390℃、Tダイスの温度390℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管とギアポンプとフィルタの温度はそれぞれ390℃に調整した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、393℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不活性ガス供給管により窒素ガス18L/minを供給した。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、この振動板用樹脂フィルムを、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた150℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、巻取機の巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m、幅650mmのスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、機械的特性、耐熱特性、音響特性を評価し、その結果を表1にまとめた。振動板用樹脂フィルムの機械的特性は引張破断時伸びと引張弾性率、耐熱特性は振動板用樹脂フィルムの貯蔵弾性率の第一変曲点温度、音響特性は振動板用樹脂フィルムの20℃における損失正接とにより評価した。
・振動板用樹脂フィルムの厚さ
振動板用樹脂フィルムのフィルム厚は、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC-25PJ〕を使用して測定した。測定に際しては、振動板用樹脂フィルムの幅方向(押出方向の直角方向)の任意の10箇所を測定し、その平均値をフィルム厚とした。
・振動板用樹脂フィルムの機械的特性
振動板用樹脂フィルムの機械的特性は、引張破断時伸びと引張弾性率とにより評価した。引張破断時伸びと引張弾性率は、JIS K 7127(試験片タイプ1B)に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。この引張弾性率は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。
・振動板用樹脂フィルムの貯蔵弾性率の第一変曲点温度
振動板用樹脂フィルムの耐熱特性については、貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。この貯蔵弾性率の第一変曲点温度は、振動板用樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、振動板用樹脂フィルムの貯蔵弾性率を測定する場合には、押出方向60×幅方向6mm、幅方向の貯蔵弾性率を測定する場合は押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。
貯蔵弾性率の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA-G2)を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲0℃~360℃、チェック間21mmの条件で測定した。
第一変曲点温度は、図2に示すように、貯蔵弾性率の変化曲線に対する2つの直線部を延長した交点の温度とした。具体的には、先ず、貯蔵弾性率の最初に急激に低下する前の直線部を高温側に延長し、1本目の直線(a)を引く。次いで、貯蔵弾性率が最初に急激に低下した後の直線部を低温側に延長して2本目の直線(b)を引く。そしてその後、両線(a)、(b)の交点における垂直線を横軸の温度軸に引き、その温度を第一変曲点温度として求めた。
・振動板用樹脂フィルムの損失正接
振動板用樹脂フィルムの損失正接は、押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、振動板用樹脂フィルムの押出方向の損失正接を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出して測定した。損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA-G2)を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲0℃~360℃、チェック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
〔実施例2〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。実施例1では、市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂としてKT-851 NL SPを使用したが、実施例2では市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂としてダイセル・エボニックス社製の製品名:ベスタキープ-J ZV7403(以下、「ZV7403」と略す)に変更した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、実施例1で使用した接着性フッ素樹脂EA-2000を15質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、367℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定し、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、393℃であった。冷却ロールの温度に関しては、210℃に変更した。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、機械的性質、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表1にまとめた。
〔実施例3〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。実施例1では、市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂としてKT-851 NL SPを使用したが、実施例3では市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂としてビクトレックス社製の製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)に変更した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、実施例1で使用した接着性フッ素樹脂EA-2000を30質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、365℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定し、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、393℃であった。冷却ロールの温度に関しては、実施例1と同様とした。スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、機械的性質、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表1にまとめた。
〔実施例4〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。実施例1では、市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂としてKT-851 NL SPを使用したが、実施例4では市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂としてビクトレックス社製の製品名:Victrex Granules 450G(以下、「450G」と略す)に変更した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、実施例1で使用した接着性フッ素樹脂EA-2000を50質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、365℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定し、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、390℃であった。冷却ロールの温度に関しては、実施例1と同様とした。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、機械的性質、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表1にまとめた。
Figure 0007336417000014
〔実施例5〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。この実施例5では、市販されているポリエーテルエーテルケトン樹脂として実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、実施例1で使用した接着性フッ素樹脂EA-2000を85質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、365℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定し、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、391℃であった。冷却ロールの温度は、実施例1と同様とした。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、機械的性質、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表2にまとめた。
〔実施例6〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。ポリアリーレンエーテルケトンとしては、市販のポリエーテルケトンケトン樹脂〔アルケマ社製 製品名:KEPSTAN 6003(以下、「KEPSTAN 6003」〕を使用した。成形材料は、ポリエーテルケトンケトン樹脂を100樹脂部用意し、このポリエーテルケトンケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上させた。また、接着性フッ素樹脂としては、市販されている接着性フッ素樹脂EA-2000〔AGC社製:製品名、(以下、「EA-2000」と略す。〕を30質量部用意した。
これらを用意したら、2種類の樹脂を混合機に投入して攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製し、この撹拌混合物を同方向回転二軸押出機等で溶融混練してストランド状に押し出し、この押出成形物を空冷固化した後、ペレット状にカッティングして成形材料を調製した。同方向回転二軸押出機は、φ25mm、L/D=41タイプを用いた。また、撹拌混合物は、シリンダー温度385℃、ダイス温度385℃の条件下で溶融混練し、成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、387℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間以上乾燥させ、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥した成形材料を幅150mmのTダイス付きの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出してスピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂の含水率は、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA-100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。
単軸押出成形機は、φ20mm、スクリュー:フルフライトスクリュー(L/D=25、圧縮比:2.5)のタイプとした。また、単軸押出成形機のシリンダー温度は360℃~380℃、Tダイスの温度400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度はそれぞれ380℃に調整した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、377℃であった。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、この振動板用樹脂フィルムを、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、160℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の3インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した振動板用樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ10m、幅130mmのスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不活性ガス供給管により窒素ガスを18L/min供給した。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、機械的性質、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表2に記載した。振動板用樹脂フィルムの機械的特性は引張破断時伸びと引張弾性率とにより評価したが、引張破断時伸びと引張弾性率は、JIS K 6251(試験片タイプ2号形)に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。この引張破断時伸びと引張弾性率については、振動板用樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。
Figure 0007336417000015
〔比較例1〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として実施例1と同様のポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、実施例1で使用した接着性フッ素樹脂EA-2000を0.5質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、369℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して24時間乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定し、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、391℃であった。冷却ロールの温度に関しては、実施例1と同様に設定した。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、引張弾性率、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表3に記載した。
〔比較例2〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と接着性フッ素樹脂とにより成形材料を調製した。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として実施例3と同様のポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間乾燥させた。また、接着性フッ素樹脂としては、実施例1で使用した接着性フッ素樹脂EA-2000を130質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、366℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して24時間乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定し、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、390℃であった。冷却ロールの温度に関しては、実施例1と同様に設定した。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、引張弾性率、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表3に記載した。
〔比較例3〕
先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と、接着性を有しないフッ素樹脂である四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(以下、「PFA樹脂」と略する)とにより成形材料を調製した。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として実施例4と同様のKT-851NL SPを使用した。成形材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を100質量部用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間乾燥させた。また、PFA樹脂としては、市販されているネオフロンAP-201〔ダイキン工業社製:製品名、(以下、「AP-201」と略す)〕を15質量部用意した。
これらを用意したら、実施例1と同様の方法により成形材料を調製した。同方向回転二軸押出機のシリンダー温度は380℃、ダイス温度は380℃に変更した。また、溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ、377℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して24時間乾燥させ、実施例1と同様の方法により乾燥させた成形材料の含水率を測定した後、乾燥した成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、実施例1と同様の方法でスピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ、389℃であった。冷却ロールの温度に関しては、実施例1と同様にした。
スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この振動板用樹脂フィルムのフィルム厚、引張弾性率、耐熱特性、音響特性を実施例1の方法にしたがい評価し、その結果を表3に記載した。
Figure 0007336417000016
〔結 果〕
各実施例の振動板用樹脂フィルムは、比較例1のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム、及び比較例3の接着性フッ素樹脂から接着性を有しないフッ素樹脂であるPFA樹脂をポリエーテルエーテルケトン樹脂に添加して得られた振動板用樹脂フィルムと比較すると、引張弾性率が850N/mm以上2260N/mm以下で低い引張弾性率を示しており、低音再生特性に優れると推測される。これに対し、比較例1、3の場合には、引張弾性率が2800N/mmを越えているので、低音再生特性が不充分であると推測される。
各実施例により得られた振動板用樹脂フィルムの20℃における損失正接は、0.014以上に増大し、共振の発生を抑えて良質な音質特性を得ることができた。また、各実施例の振動板用樹脂フィルムの引張破断時伸びは、比較例2とは異なり、86%以上であり、充分な耐久性であるのを確認した。各実施例の第一変曲点温度は140℃以上であり、振動板用樹脂フィルムとして充分使用可能な耐熱性を有していると推測される。
これに対し、比較例1の場合、接着性フッ素樹脂を添加しなかったので、振動板用樹脂フィルムの引張弾性率は、2800N/mm以上で高い引張弾性率を示しており、低音再生特性に劣り、20℃における損失正接も0.010未満であった。この結果、共振の発生も抑えることができず、良質な音質を得ることができなかった。
比較例2の場合、接着性フッ素樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して150質量を添加したので、振動板用樹脂フィルムの引張破断時伸びが50%未満となり、振動板用樹脂フィルムを振動板に使用した際、耐久性に問題が生じた。加えて、ハンドリング性が悪く、スピーカの振動板の成形性に問題が生じた。
比較例3の場合、接着性を有しないフッ素樹脂であるPFA樹脂を添加した振動板用樹脂フィルムは、引張弾性率が2800N/mmを超え、f値も増大した。
以上の結果から、接着性フッ素樹脂を添加したポリアリーレンケトン樹脂フィルムは、適度な引張弾性率を有しているので、スピーカの振動板用樹脂フィルムとして採用される場合、低音再生特性、耐久性、耐熱性の他、音質特性にも優れると推測される。
本発明に係るスピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法、並びにスピーカの振動板は、音響機器や携帯機器等の製造分野で用いられる。
1 成形材料
2 振動板用樹脂フィルム
10 溶融押出成形機
13 Tダイス(ダイス)
17 圧着ロール
18 冷却ロール
19 巻取機
30 振動板
31 エラストマー層
32 プライマー層

Claims (7)

  1. ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、接着性フッ素樹脂1質量部以上100質量部以下とを含有した成形材料により成形されることを特徴とするスピーカの振動板用樹脂フィルム。
  2. 23℃における引張弾性率が100N/mm以上2500N/mm以下であり、23℃における引張破断時伸びが50%以上である請求項1記載のスピーカの振動板用樹脂フィルム。
  3. 20℃における損失正接が0.010以上であり、冷却後の貯蔵弾性率の第一変曲点温度が130℃以上である請求項1又は2記載のスピーカの振動板用樹脂フィルム。
  4. 請求項1、2、又は3に記載したスピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法であって、
    ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、接着性フッ素樹脂1質量部以上100質量部以下とを溶融混練して成形材料を調製し、この成形材料を押出成形機に投入してダイスにより振動板用樹脂フィルムに押出成形し、この振動板用樹脂フィルムを冷却ロールに接触させて冷却することを特徴とするスピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法。
  5. 請求項1、2、又は3に記載したスピーカの振動板用樹脂フィルムと、厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層とが積層されることを特徴とするスピーカの振動板。
  6. エラストマー層がシリコーン樹脂であり、このシリコーン樹脂のデュロメータ硬さが、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合に、A10以上A90以下である請求項5記載のスピーカの振動板。
  7. シリコーン樹脂と振動板用樹脂フィルムとの間にプライマー層が介在される請求項6記載のスピーカの振動板。
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