JP7341000B2 - 水生生物付着抑制剤 - Google Patents
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Description
しかし、有機スズ化合物や亜酸化銅など毒性成分は少なからず人体や環境に悪影響を及ぼすために、長期的に見れば深刻な問題となり得るという課題がある。
一方、かかる対策とは別に、特許文献1ではシリコーン樹脂の3次元ネットワークに防汚剤を含浸させたゲルによって、特許文献2では、微細な凹凸構造に潤滑油を保持させた表面により、高い水中生物の付着抑制効果が示されている。
〔1〕 セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制剤。
〔2〕 さらに有機媒体を含有する、前記〔1〕に記載の水生生物付着抑制剤。
〔3〕 さらに、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物(但し、硬化性樹脂ではない)を含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の水生生物付着抑制剤。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子
〔4〕 さらに、硬化性樹脂を含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
〔5〕 前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法。
〔6〕 セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制膜。
〔7〕 前記〔6〕に記載の水生生物付着抑制膜を有する成形体。
本発明の水生生物付着抑制剤は、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する。
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるものであって、該疎水変性セルロース繊維はI型結晶構造を有するものである。疎水変性セルロース繊維は、有機媒体、好ましくはSP値10以下の油に分散性を示すものが、より好ましい。SP値10以下の油に対して分散性を有するとは、例えば、油と対象の疎水変性セルロース繊維との混合液の粘度をE型粘度計(25℃、1rpm、1分後、標準コーンロータ、ロータコード:01)を用いて測定した場合、増粘が観測されることをいう。例えば、本発明における疎水変性セルロースとしては、SP値10以下の油の代表例としてスクアラン中にセルロース繊維の含有量を0.5質量%になるように調製した液の微細化処理後の分散液粘度が50mPa・s以上になるものが好ましい。なお、微細化処理は、後述の方法により行うことができる。
疎水変性セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における疎水変性セルロース繊維(A)とは、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に、修飾基を導入するための化合物が結合してなるセルロース繊維である。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、セルロース繊維への導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、少なくとも1つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
本明細書において、カルボキシ基を有するセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」と称する。酸化セルロース繊維は、例えば、触媒として2,2,6,6,-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して、セルロース繊維の水酸基をカルボキシ基に酸化する方法を適用することにより、製造することができる。より詳細には、特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができ、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。酸化セルロース繊維は、それ以外のアニオン変性セルロース繊維と比べて、有機媒体の外部への移行抑制の観点から好ましい。
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
本明細書において、疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合とは、セルロース繊維表面のアニオン性基に、好ましくはカルボキシ基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合している状態のことを意味する。アニオン性基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、油の流動物への移行抑制の観点から、好ましくはアミド結合である。有機媒体の外部への移行抑制の観点から、本発明における疎水変性セルロース繊維(A)としては、セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基に、修飾基を導入するための化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られるものが好ましい。
修飾基を導入するための化合物としては、後述の修飾基を導入可能なものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。修飾基を導入するための化合物としてのアミノ変性シリコーン化合物も、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、のいずれでもよい。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられる。
カルボキシ基への修飾においては、アミド結合の場合は、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよい。エステル結合の場合は、アルコールがよく、例えば、ブタノール、オクタノール、ドデカノールが例示される。ウレタン結合の場合は、イソシアネート化合物がよい。
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、付着抑制効果の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの修飾基における炭素数のことを意味する。
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10~20,000mm2/s、アミノ当量400~8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
-C3H6-NH2
-C3H6-NH-C2H4-NH2
-C3H6-NH-[C2H4-NH]e-C2H4-NH2
-C3H6-NH(CH3)
-C3H6-NH-C2H4-NH(CH3)
-C3H6-NH-[C2H4-NH]f-C2H4-NH(CH3)
-C3H6-N(CH3)2
-C3H6-N(CH3)-C2H4-N(CH3)2
-C3H6-N(CH3)-[C2H4-N(CH3)]g-C2H4-N(CH3)2
-C3H6-NH-cyclo-C5H11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2 (a2)
(a1-2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)がより好ましい。
疎水変性セルロース繊維(A)は、例えば、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、アニオン性基がカルボキシ基の場合、特開2018-024967号公報の段落0017~0106等を参照して疎水変性セルロース繊維(A)を製造することができる。なお、疎水変性セルロース繊維(A)の製造の際には、特開2018-024967号公報における低アスペクト比化処理や微細化工程を省略することができる。
本発明における疎水変性セルロース繊維(B)(エーテル化セルロース繊維とも言う)は、セルロース繊維表面に修飾基がエーテル結合を介して結合していることを特徴とし、セルロースI型結晶構造を有するものである。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維表面の水酸基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
-CH2-CH(R0)-R1 (1)
-CH2-CH(R0)-CH2-(OA)n-O-R1 (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるR0は水素原子又は水酸基を示し、R1はそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す。〕
態様1のエーテル化セルロース繊維は、前記の一般式(1)及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基を単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基は同一の修飾基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
エーテル化セルロース繊維において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する修飾基が導入されたモル量(モル置換度:MS)は、修飾基の種類により一概には限定できないが、付着抑制性の観点から、好ましくは0.0001以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1.5以下である。ここで、修飾基として、一般式(1)で表される修飾基と一般式(2)で表される修飾基のいずれもが導入されている場合は、合計したMSのことである。なお、本明細書において、エーテル化セルロース繊維における修飾基のMSは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、無水グルコースユニットを「AGU」と略記する場合がある。AGUはセルロースがすべて無水グルコースユニットで構成されていると仮定して算出される。
本発明におけるエーテル化セルロース繊維としては、修飾基の種類に関係なく、平均繊維径に特に限定はない。例えば、平均繊維径がマイクロオーダーの態様、平均繊維径がナノオーダーの態様が例示される。
本発明におけるエーテル化セルロース繊維は、上記したようにセルロース繊維表面に、修飾基、好ましくは前記の置換基を有していてもよい炭化水素基がエーテル結合を介して結合しているが、修飾基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。以下、態様1のエーテル化セルロース繊維を製造する方法の具体的な例を説明する。
本製造方法においては、前記原料のセルロース繊維に塩基を混合する。
塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
前記化合物と原料のセルロース繊維とのエーテル化反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。エーテル化反応の詳細については、特開2017-053077号公報の段落0070~0075の記載を参照することができる。
疎水変性セルロース繊維の結晶化度は、付着抑制性発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の測定方法により求めることができる。
本発明においては、有機媒体、好ましくはSP値が10以下の油を、水生生物付着抑制剤又は水生生物付着抑制膜を構成する潤滑油として含有することが好ましい。かかる有機媒体を使用することによって、水生生物付着抑制作用がより強く発揮できるため、好ましい。
本発明においては、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物(但し、硬化性樹脂ではない)、即ち、非硬化性の高分子化合物を、水生生物付着抑制剤又は水生生物付着抑制膜が含有することが好ましい。かかる特定の高分子化合物を使用することによって、水生生物付着抑制作用がより強く発揮できるため、好ましい。有機媒体の外部への移行抑制及び膜の耐久性の観点から、(X)の高分子化合物がより好ましい。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子化合物
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子化合物
主鎖にエステル基を有する高分子化合物(X)としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールとの縮合物等、あるいは、グルコール酸、乳酸などの一分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を有する化合物の縮合物が挙げられる。
(a)ポリアミド化合物
(b)ポリアルキレンイミン化合物
ポリアミド化合物としては、セルロース構造を有さず、かつ、アミド結合(-CONH-)を有する高分子化合物であれば、いかなる化学構造を有するポリアミド化合物を使用することもできる。ポリアミド化合物は、例えば、主として脂肪族骨格からなるナイロンであってもよいし、主として芳香族骨格をもつアラミドであってもよい。更にはこの両者以外の骨格構造を有するものでもよい。一方で好適に用いられる構造体の例としては、アミン化合物と、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸からなる群より選択される1種以上のカルボン酸とからなるポリアミドが挙げられる。
本発明に用いられるモノカルボン酸は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは炭素数8以上24以下のものであり、より好ましくは炭素数10以上22以下のものであり、更に好ましくは炭素数12以上18以下のものである。
ポリアルキレンイミン化合物とは、主鎖がアルキレン基とアミノ基からなる繰返し単位であり、下記式(A)及び/又は式(B)の構造の繰返し単位を有する高分子化合物である。
高分子化合物(Y)、即ち、側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子化合物としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN-メチル(メタ)アクリルアミド、ポリN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリN-フェニル(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明の水生生物付着抑制剤は、さらに硬化性樹脂を含有してもよい。硬化性樹脂を含有することにより、基板との接着性向上という作用効果が発揮されるため、好ましい。硬化性樹脂としては、前記高分子化合物以外のもの、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が好ましいものとして挙げられ、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上がより好ましい。
硬化性樹脂がメラミン樹脂の場合、硬化性モノマーとしてメラミンとホルムアルデヒドが挙げられる。
硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合、硬化性モノマーとしてフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノールとホルムアルデヒドが挙げられる。
水生生物付着抑制剤への配合の際は、硬化性樹脂ではなく、重合反応により硬化性樹脂となる硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーが用いられる。
かかる光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3-ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ベンジルメチルケトン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
溶媒としては、例えば、イソプロパノール(IPA)、1-プロパノール、エタノール、メタノール、t-ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられる。
水生生物付着抑制剤には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。かかる任意成分としては、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。抑制剤におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
本発明の、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法は、前述の本発明の水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する。
本発明の水生生物付着抑制膜は、特定の疎水変性セルロース繊維を含有する。ここで膜とは、常温で流動せずに形状を保持する膜をいう。膜の表面硬度としては、例えば、微小硬度計で測定した場合、下記式により算出されるマルテンス硬さ(HM)が0.1(N/mm2)以上の膜が好ましい。具体的には、後述の実施例に記載の方法により膜のマルテンス硬さが測定される。
HM=F/(26.43×hmax2)
F:試験力(N)
hmax:押し込み深さの最大値(mm)
本発明の膜中の硬化性樹脂の含有量は、基板との接着性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。一方、水生生物付着抑制効果の観点から、該含有量としては、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
本発明の成形体は、前述の本発明の水生生物付着抑制膜を有する成形体である。本発明の成形体は前述のようにして製造することができる。本発明の成形体の具体例としては、前述の膜を有する前記「水中環境に配される物体」が挙げられる。かかる膜を有する成形体は、水生生物の付着が抑制され、かつ付着した水生生物を簡易な操作で除去できるという効果を有する。
疎水変性セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出する。
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
したがって、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100 (B)
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中の対象のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅とみなすことができる。
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-701」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)
ビーカーに、対象のセルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え常温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し、アルデヒドを酸化処理した対象のセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記のアニオン性基含有量の測定方法で測定し、酸化処理した対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。続いて、式1にて酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
ハロゲン水分計MOC-120H(島津製作所社製)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維(A)を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、下記式A及び式Bにより、修飾基の結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。以下の「1720cm-1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の結合量(mmol/g)=a×(b-c)÷d
a:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
b:酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
c:疎水変性セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
d:酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
1720cm-1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
<式B>
修飾基の導入率(mol%)=100×e/f
e:修飾基の結合量(mmol/g)
f:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の結合量を下記式により算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はカルボキシ基を当該アニオン性基に置き換えて、修飾基の結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の結合量(mmol/g)=修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)-修飾基導入後のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(%)={修飾基の結合量(mmol/g)/修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
得られたエーテル化セルロース繊維中に含有される修飾基の含有量%(質量%)は、Analytical Chemistry, Vol.51, No.13, 2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出する。以下に手順を示す。
(ii)精製、乾燥を行ったエーテル化セルロース繊維100mg、アジピン酸100mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓する。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱する。
(iv)加熱後、バイアルに内標溶液3mL、ジエチルエーテル3mLを順次注入し、常温で1分間攪拌する。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、「GC2010Plus」)にて分析する。分析条件は以下のとおりとする。
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB-5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:100℃→10℃/min→280℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃、検出器温度:300℃、打ち込み量:1μL
得られた修飾基の含有量から、下記数式(1)を用いてモル置換度(MS)(無水グルコースユニット1モルに対する修飾基のモル量)を算出する。
MS=(W1/Mw)/((100-W1)/162.14)
W1:エーテル化セルロース繊維中の修飾基の含有量(質量%)
Mw:導入した、修飾基を導入するための化合物の分子量(g/mol)
膜の算術平均粗さは次のようにして測定する。膜の算術平均粗さはレーザー顕微鏡(キーエンス社製、商品名:「VK-9710」)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。膜の算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いる。
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される「修飾基を導入するための化合物」が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾基を導入するための化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
各化合物のモル比率(即ち、添加される化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾基との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾基を導入するための化合物の分子量」とは、「修飾基を導入するための化合物全体の分子量」を指す。一方、セルロース繊維と修飾基を導入するための化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾基を導入するための化合物の分子量」とは、「修飾基を導入するための化合物全体の分子量-18」である。
膜に対して硬度試験測定器(島津サイエンス社製、DUH-211)を用いて下記条件で表面硬度(マルテンス硬度)の測定を行う。
試験力:0.1mN
負荷保持時間:5(s)
除荷保持時間:1(s)
調製例1(天然セルロース繊維にN-オキシル化合物を作用させて得られる酸化セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
ビーカーに調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液3846.15g(固形分含有量1.3質量%)を投入し、ここに1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製、純度95質量%)を2.63g仕込み、常温下3時間反応させアルデヒド還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、常温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。最後にイソプロパノールで溶媒置換し、アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液を得た。
得られたアルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/gであった。
製造例1
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた微細化された酸化セルロース繊維をIPAに溶媒置換したものの分散体300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製「SS-3551」)を、該酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.4molに相当する量を仕込み、セルロース含有量が0.5質量%になるようにイソプロパノールを添加し、これらの混合物を常温(25℃)で14時間撹拌して反応させた。反応終了後、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、酸化セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した疎水変性セルロース繊維を得た。この疎水変性セルロース繊維の結晶化度は30%、平均繊維径は3.3nm、平均繊維長は578nmであった。
酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込んだ以外は製造例1と同じ方法で疎水変性セルロース繊維を得た。
L257mm×W185mm×T3mmのSUS304上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP-13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水系アクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A-1127)を塗工した。常温(25℃)下で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(SUS)と下層体との積層構造物1を得た。なお、形成された下層体の厚みは3μmであった。
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして前記積層構造物1の下層体側の表面上に上層体を作製した。疎水変性セルロース繊維のIPA分散液(セルロース含有量0.5質量%)に、疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミドが1:3:1の質量比になるように、また、イソプロパノール:トルエン=100:5の質量比となるように各成分を配合し、スクリュー管中、常温で24時間撹拌した。得られた上層体形成用の分散液を水生生物付着抑制剤として、前記積層構造物1の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、水生生物付着抑制剤の厚みが1800μmになるように塗工した。常温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約50μmの上層体が形成された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、上層体の算術平均粗さは1μmであった。
L300mm×W100mm×T3mmのSUS304上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP-13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水系アクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A-1127)を塗工した。常温(25℃)下で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(SUS)と下層体との積層構造物2を得た。なお、形成された下層体の厚みは3μmであった。
製造例2で得られた疎水変性セルロース繊維のIPA分散液を水生生物付着抑制剤として、前記積層構造物2の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、水生生物付着抑制剤の厚みが2200μmになるように塗工した。常温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約40μmの上層体が作製された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
製造例2で得られた疎水変性セルロース繊維及び積層構造物2を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
積層構造物2を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
積層構造物2を用い、表3に記載の質量比率で有機媒体、高分子化合物を配合した以外は実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
なお、実施例6で用いた有機媒体は以下である。
シリコーン100cs:信越化学社製、KF-96-100cs
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして膜を作製した。疎水変性セルロース繊維のIPA分散液(セルロース含有量0.5質量%)に、疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミド:硬化性プレポリマー(日本合成化学社製「紫光UV-7000B」(Mw3500);「ウレタンアクリレート」と略記する。)が1:3:1:3の質量比になるように、また、イソプロパノール:トルエン=100:5の質量比となるように各成分を配合し、スクリュー管内に入れた。更に光重合開始剤の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンをウレタンアクリレートに対して4質量%配合した。次いで、スクリュー管の内容物を、マグネチックスターラーの回転数:500rpm、常温(25℃)で12時間撹拌した。
製造例2で得られた疎水変性セルロース繊維を用い、表3に記載の質量比率で有機媒体、高分子化合物を配合したこと以外は実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、SUS基板上に直接塗工し、膜を得た。
なお、実施例8で用いた高分子化合物は以下である。
アクリル:DSM社製、NeoCryl A-1127
ハリダイマー 250K:450gを2Lセパラフラスコにとり、70℃に昇温した後に窒素置換を行った。その後、エチレンジアミン:45g、ジエチレントリアミン:5gを徐々に添加し、添加後に内温が145℃になるまで昇温を行った。145℃で1時間撹拌した後に、内温を210℃に昇温し、6時間撹拌を行った。その後、内温を210℃に保ったまま、内圧を45KPaになるまで真空ポンプを用いて減圧を行い、0.5時間撹拌を行い、ポリアミドを調製した。
なお、ポリアミドにおけるジエチレントリアミンの含有率は3.0モル%であった。
質量平均分子量(Mw)は、日立L-6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミッション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L-6000、検出器はショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR-Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは、溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのファーミンDM20(花王株式会社製)のクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で行った。検量線の作成のための標準ポリマーとしては、ポリスチレン(東ソー株式会社製)を使用した。
L257mm×W185mm×T3mmの未処理のSUS304(北村鉄工所社製)を比較例1とした。
L257mm×W185mm×T3mmのSUS304上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP-13)を用いて、防汚塗料(エフロンティアTM防汚塗料:三菱マテリアルトレーディング社製)を塗工した。
シリコーンポッティング材SYRGARDTM184(東レ・ダウコーニング株式会社製)の主剤、硬化剤とシリコーンオイル(KF96-100CS:信越化学工業株式会社製)が10:1:30質量比になるように混合撹拌し、塗膜用サンプル液とした。次に、前記積層構造物1の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、塗膜用サンプル液の厚みが1000μmになるように塗工した。90℃で12時間硬化反応させ、膜厚が約1000μmの上層体が作製された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
L300mm×W100mm×T3mmの未処理のSUS304(北村鉄工所社製)を比較例4とした。
作製した基板を鎖で繋ぎ、干潮時に水面から2mの深さになるように和歌山下津港付近に設置し、1ヶ月間海水中での浸漬試験を行った。なお、実施例1及び比較例1~3、実施例2~8及び比較例4を、それぞれ同時に試験した。
その後、基板への甲殻動物類と藻類の付着度合いを目視によって評価した。評価基準は次の通りである。
1:水生生物の付着が基板表面の2面積%以下である状態。
2:基板表面の2面積%超10面積%以下に水生生物が付着している状態。
3:基板表面の10面積%超20面積%以下に水生生物が付着している状態。
4:基板表面の20面積%超30面積%以下水生生物が付着している状態。
5:基板表面の30面積%超50面積%以下に水生生物が付着している状態。
6:基板表面の50面積%超80面積%以下に水生生物が付着している状態。
7:基板表面の80面積%超水生生物が付着している状態。
基板上に付着した水生生物の除去性を以下の基準で評価した。なおここで低圧とは、洗瓶から吹き付けるほどの弱い圧力を示す。
1:低圧の水洗で容易に除去可能
2:水洗+こする作業が必要
3:工具の使用が必要(1回削る作業で除去)4:工具で複数回削る必要、あるいは除去不可
Claims (9)
- セルロース繊維のアニオン性基にアミノ変性シリコーン化合物がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制剤。
- さらに有機媒体を含有する、請求項1に記載の水生生物付着抑制剤。
- アニオン性基がカルボキシ基である、請求項1又は2に記載の水生生物付着抑制剤。
- さらに、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物(但し、硬化性樹脂ではない)を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子 - さらに、硬化性樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
- 硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の水生生物付着抑制剤。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法。
- セルロース繊維のアニオン性基にアミノ変性シリコーン化合物がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制膜。
- 請求項8に記載の水生生物付着抑制膜を有する成形体。
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