以下、添付図面に従って本開示の技術に係る信号処理装置、磁気テープ読取装置、信号処理装置の処理方法、磁気テープ読取装置の動作方法、及びプログラムの実施形態の一例について説明する。
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
CPUとは、“Central Processing Unit”の略称を指す。RAMとは、“Random Access Memory”の略称を指す。HDDとは、“Hard Disk Drive”の略称を指す。EEPROMとは、“Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory”の略称を指す。SSDとは、“Solid State Drive”の略称を指す。USBとは、“Universal Serial Bus”の略称を指す。ASICとは、“Application Specific Integrated Circuit”の略称を指す。FPGAとは、“Field-Programmable Gate Array”の略称を指す。PLDとは、“Programmable Logic Device”の略称を指す。SoCとは、“System-on-a-chip”の略称を指す。UIとは、“User Interface”の略称を指す。I/Fとは、“Interface”の略称を指す。A/Dとは、“Analog/Digital”の略称を指す。FIRとは、“Finite Impulse Response”の略称を指す。IIRとは、“Infinite Impulse Response”の略称を指す。LPFとは、“Low Pass Filter”の略称を指す。FIFOとは、“First In First Out”の略称を指す。SNRとは、“Signal-to-noise ratio”の略称を指す。BOTとは、“Beginning Of Tape”の略称を指す。EOTとは、“End Of Tape”の略称を指す。MSEとは、“Mean Square Error”の略称を指す。また、以下の説明において「~」を用いて表される範囲は、「~」の前後に記載される要素を下限及び上限として含む範囲を意味する。
[第1実施形態]
一例として図1に示すように、本開示の技術に係る「磁気テープ読取装置」の一例である磁気テープドライブ10は、磁気テープカートリッジ12、搬送装置14、読取ヘッド16、制御装置18、送出モータ20、巻取リール22、巻取モータ24、UI系装置26、及び外部I/F28を備えている。磁気テープカートリッジ12には、磁気テープMTが収容されている。磁気テープMTには、データが記録されている。磁気テープドライブ10は、磁気テープカートリッジ12から磁気テープMTを引き出し、引き出した磁気テープMTから読取ヘッド16を用いてデータをリニアスキャン方式で読み取る装置である。
なお、本第1実施形態において、データの読み取りとは、換言すると、データの再生を指す。以下の説明では、読取ヘッド16によって読み取られたデータを「再生信号」とも称する。また、後述のテスト再生信号、後述のリアルタイム再生信号、後述のニューラルネットワーク信号、及び後述の波形等化後再生信号を区別して説明する必要がない場合、これらを単に「再生信号」とも称する。
上記磁気テープMTは、一般的に、非磁性支持体上に強磁性粉末および任意に一種類以上の添加剤を含む磁性層を形成することによって作製される。磁性層には無配向、長手配向、垂直配向を適用することができる。磁性層等について、詳細に説明する。
<磁性層>
(強磁性粉末)
磁性層は、強磁性粉末を含む。磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気テープMTの磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を一種または二種以上組み合わせて使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましく、20nm以下であることがなお一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
(六方晶フェライト粉末)
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011-225417号公報の段落0012~0030、特開2011-216149号公報の段落0134~0136、特開2012-204726号公報の段落0013~0030および特開2015-127985号公報の段落0029~0084を参照できる。
本開示の技術および本明細書において、「六方晶フェライト粉末」とは、X線回折分析によって、主相として六方晶フェライト型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。主相とは、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが帰属する構造をいう。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが六方晶フェライト型の結晶構造に帰属される場合、六方晶フェライト型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。X線回折分析によって単一の構造のみが検出された場合には、この検出された構造を主相とする。六方晶フェライト型の結晶構造は、構成原子として、少なくとも鉄原子、二価金属原子および酸素原子を含む。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、ストロンチウム原子、バリウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。本開示の技術および本明細書において、六方晶ストロンチウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がストロンチウム原子であるものをいい、六方晶バリウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がバリウム原子であるものをいう。主な二価金属原子とは、この粉末に含まれる二価金属原子の中で、原子%基準で最も多くを占める二価金属原子をいうものとする。ただし、上記の二価金属原子には、希土類原子は包含されないものとする。本発明および本明細書における「希土類原子」は、スカンジウム原子(Sc)、イットリウム原子(Y)、およびランタノイド原子からなる群から選択される。ランタノイド原子は、ランタン原子(La)、セリウム原子(Ce)、プラセオジム原子(Pr)、ネオジム原子(Nd)、プロメチウム原子(Pm)、サマリウム原子(Sm)、ユウロピウム原子(Eu)、ガドリニウム原子(Gd)、テルビウム原子(Tb)、ジスプロシウム原子(Dy)、ホルミウム原子(Ho)、エルビウム原子(Er)、ツリウム原子(Tm)、イッテルビウム原子(Yb)、およびルテチウム原子(Lu)からなる群から選択される。
以下に、六方晶フェライト粉末の一態様である六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、更に詳細に説明する。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800~1500nm3の範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化された六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープMTの作製のために好適である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800nm3以上であり、例えば850nm3以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、1400nm3以下であることがより好ましく、1300nm3以下であることが更に好ましく、1200nm3以下であることが一層好ましく、1100nm3以下であることがより一層好ましい。
「活性化体積」とは、磁化反転の単位であって、粒子の磁気的な大きさを示す指標である。本開示の技術および本明細書に記載の活性化体積および後述の異方性定数Kuは、振動試料型磁力計を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで測定し(測定温度:23℃±1℃)、以下のHcと活性化体積Vとの関係式から求められる値である。なお異方性定数Kuの単位に関して、1erg/cc=1.0×10-1J/m3である。
Hc=2Ku/Ms{1-[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m3)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm3)、A:スピン歳差周波数(単位:s-1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、好ましくは1.8×105J/m3以上のKuを有することができ、より好ましくは2.0×105J/m3以上のKuを有することができる。また、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のKuは、例えば2.5×105J/m3以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含んでいてもよく、含まなくてもよい。六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、鉄原子100原子%に対して、0.5~5.0原子%の含有率(バルク含有率)で希土類原子を含むことが好ましい。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一態様では、希土類原子表層部偏在性を有することができる。本開示の技術および本明細書における「希土類原子表層部偏在性」とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により部分溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子表層部含有率」または希土類原子に関して単に「表層部含有率」と記載する。)が、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により全溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子バルク含有率」または希土類原子に関して単に「バルク含有率」と記載する。)と、土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶ストロンチウムフェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本開示の技術および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、希土類原子含有率(バルク含有率)は、鉄原子100原子%に対して0.5~5.0原子%の範囲であることが好ましい。上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることは、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することに寄与すると考えられる。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末が上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることにより、異方性定数Kuを高めることができるためと推察される。異方性定数Kuは、この値が高いほど、いわゆる熱揺らぎと呼ばれる現象の発生を抑制すること(換言すれば熱的安定性を向上させること)ができる。熱揺らぎの発生が抑制されることにより、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の粒子表層部に希土類原子が偏在することが、表層部の結晶格子内の鉄(Fe)のサイトのスピンを安定化することに寄与し、これにより異方性定数Kuが高まるのではないかと推察される。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気テープMTの走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5~4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0~4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5~4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
上記バルク含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる含有率である。なお本開示の技術および本明細書において、特記しない限り、原子について含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められるバルク含有率をいうものとする。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子として一種の希土類原子のみ含んでもよく、二種以上の希土類原子を含んでもよい。二種以上の希土類原子を含む場合の上記バルク含有率とは、二種以上の希土類原子の合計について求められる。この点は、本開示の技術および本明細書における他の成分についても同様である。即ち、特記しない限り、ある成分は、一種のみ用いてもよく、二種以上用いてもよい。二種以上用いられる場合の含有量または含有率とは、二種以上の合計についていうものとする。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、含まれる希土類原子は、希土類原子のいずれか一種以上であればよい。繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点から好ましい希土類原子としては、ネオジム原子、サマリウム原子、イットリウム原子およびジスプロシウム原子を挙げることができ、ネオジム原子、サマリウム原子およびイットリウム原子がより好ましく、ネオジム原子が更に好ましい。
希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、偏在の程度は限定されるものではない。例えば、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は1.0超であり、1.5以上であることができる。「表層部含有率/バルク含有率」が1.0より大きいことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。また、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は、例えば、10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、または4.0以下であることができる。ただし、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、上記の「表層部含有率/バルク含有率」は、例示した上限または下限に限定されるものではない。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の部分溶解および全溶解について、以下に説明する。粉末として存在している六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、部分溶解および全溶解する試料粉末は、同一ロットの粉末から採取する。一方、磁気テープMTの磁性層に含まれている六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、磁性層から取り出した六方晶ストロンチウムフェライト粉末の一部を部分溶解に付し、他の一部を全溶解に付す。磁性層からの六方晶ストロンチウムフェライト粉末の取り出しは、例えば、特開2015-91747号公報の段落0032に記載の方法によって行うことができる。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10~20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
磁気テープMTに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープMTに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、希土類原子を含むものの希土類原子表層部偏在性を持たない六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含まない六方晶ストロンチウムフェライト粉末と比べてσsが大きく低下する傾向が見られた。これに対し、そのようなσsの大きな低下を抑制するうえでも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末は好ましいと考えられる。一態様では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のσsは、45A・m2/kg以上であることができ、47A・m2/kg以上であることもできる。一方、σsは、ノイズ低減の観点からは、80A・m2/kg以下であることが好ましく、60A・m2/kg以下であることがより好ましい。σsは、振動試料型磁力計等の磁気特性を測定可能な公知の測定装置を用いて測定することができる。本開示の技術および本明細書において、特記しない限り、質量磁化σsは、磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定される値とする。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の構成原子の含有率(バルク含有率)に関して、ストロンチウム原子含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば2.0~15.0原子%の範囲であることができる。一態様では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、この粉末に含まれる二価金属原子がストロンチウム原子のみであることができる。また他の一態様では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、ストロンチウム原子に加えて一種以上の他の二価金属原子を含むこともできる。例えば、バリウム原子および/またはカルシウム原子を含むことができる。ストロンチウム原子以外の他の二価金属原子が含まれる場合、六方晶ストロンチウムフェライト粉末におけるバリウム原子含有率およびカルシウム原子含有率は、それぞれ、例えば、鉄原子100原子%に対して、0.05~5.0原子%の範囲であることができる。
六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(「M型」とも呼ばれる。)、W型、Y型およびZ型が知られている。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、いずれの結晶構造を取るものであってもよい。結晶構造は、X線回折分析によって確認することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によって、単一の結晶構造または二種以上の結晶構造が検出されるものであることができる。例えば一態様では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によってM型の結晶構造のみが検出されるものであることができる。例えば、M型の六方晶フェライトは、AFe12O19の組成式で表される。ここでAは二価金属原子を表し、六方晶ストロンチウムフェライト粉末がM型である場合、Aはストロンチウム原子(Sr)のみであるか、またはAとして複数の二価金属原子が含まれる場合には、上記の通り原子%基準で最も多くをストロンチウム原子(Sr)が占める。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の二価金属原子含有率は、通常、六方晶フェライトの結晶構造の種類により定まるものであり、特に限定されるものではない。鉄原子含有率および酸素原子含有率についても、同様である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、少なくとも、鉄原子、ストロンチウム原子および酸素原子を含み、更に希土類原子を含むこともできる。更に、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、これら原子以外の原子を含んでもよく、含まなくてもよい。一例として、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、アルミニウム原子(Al)を含むものであってもよい。アルミニウム原子の含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば0.5~10.0原子%であることができる。繰り返し再生における再生出力低下をより一層抑制する観点からは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子を含み、これら原子以外の原子の含有率が、鉄原子100原子%に対して、10.0原子%以下であることが好ましく、0~5.0原子%の範囲であることがより好ましく、0原子%であってもよい。即ち、一態様では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子以外の原子を含まなくてもよい。上記の原子%で表示される含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる各原子の含有率(単位:質量%)を、各原子の原子量を用いて原子%表示の値に換算して求められる。また、本開示の技術および本明細書において、ある原子について「含まない」とは、全溶解してICP分析装置により測定される含有率が0質量%であることをいう。ICP分析装置の検出限界は、通常、質量基準で0.01ppm(parts per million)以下である。上記の「含まない」とは、ICP分析装置の検出限界未満の量で含まれることを包含する意味で用いるものとする。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一態様では、ビスマス原子(Bi)を含まないものであることができる。
(金属粉末)
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011-216149号公報の段落0137~0141および特開2005-251351号公報の段落0009~0023を参照できる。
(ε-酸化鉄粉末)
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε-酸化鉄粉末を挙げることもできる。本開示の技術および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄型の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε-酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280-S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200-5206等を参照できる。ただし、上記磁気テープMTの磁性層において強磁性粉末として使用可能なε-酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300~1500nm3の範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化されたε-酸化鉄粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープMTの作製のために好適である。ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300nm3以上であり、例えば500nm3以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、1400nm3以下であることがより好ましく、1300nm3以下であることが更に好ましく、1200nm3以下であることが一層好ましく、1100nm3以下であることがより一層好ましい。
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。ε-酸化鉄粉末は、好ましくは3.0×104J/m3以上のKuを有することができ、より好ましくは8.0×104J/m3以上のKuを有することができる。また、ε-酸化鉄粉末のKuは、例えば3.0×105J/m3以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し、好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
磁気テープMTに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープMTに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、一態様では、ε-酸化鉄粉末のσsは、8A・m2/kg以上であることができ、12A・m2/kg以上であることもできる。一方、ε-酸化鉄粉末のσsは、ノイズ低減の観点からは、40A・m2/kg以下であることが好ましく、35A・m2/kg以下であることがより好ましい。
本開示の技術および本明細書において、特記しない限り、強磁性粉末等の各種粉末の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、以下の方法により測定される値とする。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントするか、ディスプレイに表示する等して、粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H-9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて測定された値である。本開示の技術および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している態様に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している態様も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
粒子サイズ測定のために磁気テープMTから試料粉末を採取する方法としては、例えば特開2011-048878号公報の段落0015に記載の方法を採用することができる。
本開示の技術および本明細書において、特記しない限り、粉末を構成する粒子のサイズ(粒子サイズ)は、上記の粒子写真において観察される粒子の形状が、
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、粉末の平均針状比は、上記測定において粒子の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粒子の(長軸長/短軸長)の値を求め、上記500個の粒子について得た値の算術平均を指す。ここで、特記しない限り、短軸長とは、上記粒子サイズの定義で(1)の場合は、粒子を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚みまたは高さを各々指し、同じく(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
磁性層における強磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。磁性層は、強磁性粉末を含み、結合剤を含むことができ、任意に一種以上の更なる添加剤を含むこともできる。磁性層において強磁性粉末の充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
(結合剤、硬化剤)
上記磁気テープMTは塗布型磁気テープであることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。結合剤は、一種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気テープの結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。
例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010-24113号公報の段落0028~0031も参照できる。磁性層の結合剤の含有量は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば1.0~30.0質量部であることができる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。
また、結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤は、一態様では加熱により硬化反応(架橋反応)が進行する化合物である熱硬化性化合物であることができ、他の一態様では光照射により硬化反応(架橋反応)が進行する光硬化性化合物であることができる。硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。この点は、他の層を形成するために用いられる組成物が硬化剤を含む場合に、この組成物を用いて形成される層についても同様である。好ましい硬化剤は、熱硬化性化合物であり、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011-216149号公報の段落0124~0125を参照できる。磁性層形成用組成物の硬化剤の含有量は、結合剤100.0質量部に対して例えば0~80.0質量部であることができ、磁性層の強度向上の観点からは50.0~80.0質量部であることができる。
(添加剤)
磁性層には、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれる添加剤としては、非磁性粉末、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。潤滑剤としては、例えば境界潤滑剤として機能し得る脂肪酸アミドを使用することができる。境界潤滑剤は、粉末(例えば強磁性粉末)の表面に吸着し強固な潤滑膜を形成することで接触摩擦を下げることのできる潤滑剤と考えられている。脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、エライジン酸等の各種脂肪酸のアミド、具体的にはラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等を挙げることができる。磁性層の脂肪酸アミド含有量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0~3.0質量部であり、好ましくは0~2.0質量部であり、より好ましくは0~1.0質量部である。また、非磁性層にも脂肪酸アミドが含まれていてもよい。非磁性層の脂肪酸アミド含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0~3.0質量部であり、好ましくは0~1.0質量部である。分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061および0071を参照できる。分散剤を非磁性層形成用組成物に添加してもよい。非磁性層形成用組成物に添加し得る分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061を参照できる。また、磁性層に含まれ得る非磁性粉末としては、研磨剤として機能することができる非磁性粉末、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末等が挙げられる。研磨剤としては、磁性層の研磨剤として通常使用される物質であるアルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素、ボロンカーバイド(B4C)、TiC、酸化クロム(Cr2O3)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄、ダイヤモンド等の粉末を挙げることができ、中でもα-アルミナ等のアルミナ、炭化ケイ素、およびダイヤモンドの粉末が好ましい。磁性層の研磨剤含有量は、強磁性粉末100.0質量部に対して1.0~20.0質量部であることが好ましく、3.0~15.0質量部であることがより好ましく、4.0~10.0質量部であることが更に好ましい。研磨剤の平均粒子サイズは、例えば30~300nmの範囲であり、好ましくは50~200nmの範囲である。突起形成剤としては、カーボンブラック、コロイド粒子等を挙げることができる。磁性層の突起形成剤含有量は、強磁性粉末100.0質量部に対して0.1~10.0質量部であることが好ましく、0.1~5.0質量部であることがより好ましく、0.5~5.0質量部であることが更に好ましい。コロイド粒子の平均粒子サイズは、例えば90~200nmの範囲であることが好ましく、100~150nmの範囲であることがより好ましい。カーボンブラックの平均粒子サイズは、5~200nmの範囲であることが好ましく、10~150nmの範囲であることがより好ましい。
以上説明した磁性層は、非磁性支持体表面上に直接、または非磁性層を介して間接的に、設けることができる。
<非磁性層>
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープMTは、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体表面上に非磁性粉末を含む非磁性層を介して磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011-216149号公報の段落0146~0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010-24113号公報の段落0040~0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。
非磁性層は、非磁性粉末および結合剤を含む層であることができ、一種以上の添加剤を更に含むことができる。非磁性層の結合剤、添加剤等のその他詳細は、非磁性層に関する公知技術が適用できる。また、例えば、結合剤の種類および含有量、添加剤の種類および含有量等に関しては、磁性層に関する公知技術も適用できる。
本開示の技術および本明細書において、非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が100Oe以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が100Oe以下である層をいうものとする。1[kOe]=106/4π[A/m]である。非磁性層は、残留磁束密度および保磁力を持たないことが好ましい。
一態様では、式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物は、非磁性層に含まれ得る。式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物は、非磁性層に非磁性粉末100.0質量部に対して0.01質量部以上含まれることが好ましく、0.1質量部以上含まれることがより好ましく、0.5質量部以上含まれることが更に好ましい。また、非磁性層の上記化合物の含有量は、非磁性粉末100.0質量部に対して15.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以下であることがより好ましく、8.0質量部以下であることが更に好ましい。また、非磁性層を形成するために使用される非磁性層形成用組成物の上記化合物の含有量の好ましい範囲も同様である。非磁性層に含まれる上記化合物は、磁性層に移動することができ、更に磁性層表面に移動して液膜を形成することもできる。非磁性層または非磁性層形成用組成物に含まれ得る上記化合物の詳細は、先に記載した通りである。
<非磁性支持体>
次に、非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)について説明する。非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、加熱処理等を行ってもよい。
<バックコート層>
上記磁気テープMTは、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有することもできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末のいずれか一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層は、非磁性粉末および結合剤を含む層であることができ、一種以上の添加剤を更に含むことができる。バックコート層の結合剤および任意に含まれ得る各種添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006-331625号公報の段落0018~0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目~第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
<各種厚み>
非磁性支持体の厚みは、例えば3.0~80.0μmであり、好ましくは3.0~20.0μm、より好ましくは3.0~10.0μm、更に好ましくは3.0~6.0μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量、ヘッドギャップ長、記録信号の帯域等に応じて最適化することができる。磁性層の厚みは、高密度記録化の観点から、好ましくは10nm~150nmであり、より好ましくは20nm~120nmであり、更に好ましくは30nm~100nmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する二層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。二層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
非磁性層の厚みは、例えば0.1~3.0μmであり、0.1~2.0μmであることが好ましく、0.1~1.5μmであることが更に好ましい。
バックコート層の厚みは、0.9μm以下であることが好ましく、0.1~0.7μmの範囲であることが更に好ましい。
磁気テープMTの各層および非磁性支持体の厚みは、公知の膜厚測定法により求めることができる。一例として、例えば、磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビーム、ミクロトーム等の公知の手法により露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡によって断面観察を行う。断面観察において任意の1箇所において求められた厚み、または無作為に抽出した2箇所以上の複数箇所、例えば2箇所、において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めることができる。または、各層の厚みは、製造条件から算出される設計厚みとして求めてもよい。
制御装置18は、磁気テープドライブ10の全体を制御する。制御装置18は、CPU、メモリ、及びストレージを含むコンピュータと、ASICと、FPGAと、を含む複数のハードウェア資源によって実現される。本第1実施形態において、メモリは、各種情報を一時的に記憶し、ワークメモリとして用いられる。メモリの一例としては、RAMが挙げられるが、これに限らず、他の種類の記憶装置であってもよい。ストレージは、各種パラメータ及び各種プログラムを記憶している。ストレージは、不揮発性の記憶装置である。ここでは、ストレージの一例として、EEPROMが採用されている。EEPROMはあくまでも一例に過ぎず、EEPROMに代えて、又は、EEPROMと共に、HDD、及び/又はSSD等をストレージとして適用してもよい。
ここでは、制御装置18として、コンピュータ、ASIC、及びFPGAを含む複数のハードウェア資源を例示しているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置18は、コンピュータ、ASIC、FPGA、又はPLDを含むハードウェア資源によって実現されるようにしてもよい。また、制御装置18は、ASIC、FPGA、及びPLDの何れか1つ以上と、コンピュータとを組み合わせたハードウェア資源によって実現されるようにしてもよい。このように、制御装置18は、電子計算機としての機能を有するハードウェア資源で実現される装置であれば如何なる装置であってもよい。
搬送装置14は、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ20、巻取リール22、巻取モータ24、複数のガイドローラGR、及び制御装置18を備えている。
磁気テープカートリッジ12内には、カートリッジリールCRが設けられている。カートリッジリールCRには磁気テープMTが巻き掛けられている。送出モータ20は、制御装置18の制御下で、磁気テープカートリッジ12内のカートリッジリールCRを回転駆動させる。制御装置18は、送出モータ20を制御することで、カートリッジリールCRの回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
磁気テープMTが巻取リール22によって巻き取られる場合には、制御装置18によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように送出モータ20を回転させる。送出モータ20の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール22によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
巻取モータ24は、制御装置18の制御下で、巻取リール22を回転駆動させる。制御装置18は、巻取モータ24を制御することで、巻取リール22の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
磁気テープMTが巻取リール22によって巻き取られる場合には、制御装置18によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように巻取モータ24を回転させる。巻取モータ24の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール22によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
このようにして送出モータ20及び巻取モータ24の各々の回転速度及び回転トルク等が調整されることで、磁気テープMTに既定の張力範囲内の張力が付与される。ここで、既定の張力範囲内とは、例えば、磁気テープMTから読取ヘッド16によってデータが読取可能な張力の範囲として、コンピュータシミュレーション及び/又は実機による試験等により得られた張力の下限値から上限値までの範囲を指す。
磁気テープMTをカートリッジリールCRに巻き戻す場合には、制御装置18によって、磁気テープMTを逆方向に走行させるように送出モータ20及び巻取モータ24を回転させる。
本第1実施形態では、送出モータ20及び巻取モータ24の回転速度及び回転トルク等が制御されることにより磁気テープMTの張力が制御されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMTの張力は、ダンサローラを用いて制御されてもよいし、バキュームチャンバに磁気テープMTを引き込むことによって制御されるようにしてもよい。
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。磁気テープMTの走行経路は、磁気テープカートリッジ12と巻取リール22との間の数箇所(図1に示す例では、2箇所)で磁気テープMTが張り掛けられることによって定められている。
読取ヘッド16は、磁気テープMTの走行方向(以下、単に「走行方向」とも称する)上に配置されている。走行方向は、磁気テープMTの順方向に相当する方向である。読取ヘッド16は、読取素子16A及びホルダ16Bを備えている。読取素子16Aは、例えば、磁気抵抗素子を有する素子である。読取素子16Aは、磁気テープMTからのデータの読み取りが可能な位置にホルダ16Bによって保持されている。読取ヘッド16は、磁気テープMTが走行している状態で、読取素子16Aを用いて磁気テープMTからデータを読み取る。
制御装置18には、UI系装置26及び外部I/F28が接続されている。UI系装置26は、ディスプレイ及び受付デバイスを備えている。ディスプレイは、制御装置18の制御下で画像等の各種情報を表示する。受付デバイスは、ハードキー及びタッチパネル等を有しており、磁気テープドライブ10のユーザ等からの指示を受け付ける。制御装置18は、受付デバイスによって受け付けられた指示に従って動作する。
外部I/F28は、磁気テープドライブ10の外部に存在する装置(以下、「外部装置」とも称する)と制御装置18との間の各種情報の授受を司る。外部I/F28の一例としては、USBインタフェースが挙げられる。USBインタフェースには、スマートデバイス、パーソナル・コンピュータ、サーバ、USBメモリ、メモリカード、及び/又はプリンタ等の外部装置(図示省略)が直接的又は間接的に接続される。
一例として図2に示すように、磁気テープMTは、トラック領域30及びサーボパターン32を備えている。サーボパターン32は、磁気テープMTに対する読取ヘッド16の位置の検出に用いられるパターンである。サーボパターン32は、磁気テープMTの幅方向(以下、単に「テープ幅方向」とも称する)の両端部に、各々第1既定角度(例えば、6度)の複数の第1斜線32Aと、各々第2既定角度(例えば、174度)の複数の第2斜線32Bとが磁気テープMTの走行方向に沿って交互に配置されたパターンである。
図2に示す磁気テープMT内のサーボパターン32は、説明の便宜上、簡略化されて示されている。図2に示す磁気テープMT内に図示されている第1斜線32Aは、1つのサーボパターン32内の複数本の第1斜線32Aのうち、走行方向の最下流側の第1斜線32Aである。図2に示す磁気テープMT内に図示されている第2斜線32Bは、1つのサーボパターン32内の複数本の第2斜線32Bのうち、走行方向の最下流側の第2斜線32Bである。
具体的には、例えば、図2の拡大図に示すように、第1斜線32Aとしては、5本の第1斜線32Aと4本の第1斜線32Aとが存在し、第2斜線32Bとしては、5本の第2斜線32Bと4本の第2斜線32Bとが存在する。すなわち、磁気テープMTの走行方向に沿って5本の第1斜線32A、5本の第2斜線32B、4本の第1斜線32A、及び4本の第2斜線32Bの順に配置されている。
トラック領域30は、読取対象とされるデータが書き込まれた領域であり、磁気テープMTのテープ幅方向の中央部に形成されている。ここで言う「テープ幅方向の中央部」とは、例えば、磁気テープMTのテープ幅方向の一端部のサーボパターン32と他端部のサーボパターン32との間の領域を指す。
読取ヘッド16は、サーボ素子対36を備えている。サーボ素子対36は、サーボ素子36A及び36Bを備えている。サーボ素子36A及び36Bの各々は、例えば、磁気抵抗素子を有する素子である。サーボ素子36Aは、磁気テープMTのテープ幅方向の一端部のサーボパターン32に対向する位置に配置されており、サーボ素子36Bは、磁気テープMTのテープ幅方向の他端部のサーボパターン32に対向する位置に配置されている。なお、ここでは、サーボ素子36A及び36Bを例示しているが、サーボ素子36A及び36Bの何れかのみを使用しても本開示の技術は成立する。すなわち、読取ヘッド16によるリニアスキャン方式のデータの読み取りを実現するために必要な個数のサーボ素子が読取ヘッド16に対して用いられていればよい。
読取ヘッド16は、複数の読取素子16Aを備えている。複数の読取素子16Aは、磁気テープドライブ10がデフォルトの状態で、トラック領域30に対向する位置に配置されている。
ここで、磁気テープドライブ10がデフォルトの状態とは、磁気テープMTが変形することなく、かつ、磁気テープMTと読取ヘッド16との位置関係が正しい位置関係にある状態を指す。ここで、正しい位置関係とは、例えば、トラック領域30のテープ幅方向の中心と読取ヘッド16の長手方向の中心とが一致する位置関係を指す。なお、本第1実施形態での「一致」の意味には、完全な一致の意味の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差を含めた意味合いでの一致を指す。
トラック領域30は、複数のトラックを備えており、複数のトラックは、テープ幅方向に等間隔に配置されている。読取素子16Aは、例えば、テープ幅方向に沿ってトラックの数本分又は数十本分毎にテープ幅方向に等間隔に配置されている。本第1実施形態では、32個の読取素子16Aが採用されている。
すなわち、読取素子16Aは、磁気テープMTに含まれる32個のトラックに対して各々対応する位置に配置される。換言すると、読取素子16Aは、磁気テープMTに含まれる32個のトラックの各々の単一トラックに対して対応する位置に配置される。ここでは、トラック及び読取素子16Aの各々の個数として32個を例示しているが、これはあくまでも一例に過ぎず、個数は32個よりも多くてもよいし、少なくてもよい。なお、本第1実施形態での「等間隔」の意味には、完全な等間隔の意味の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差を含めた意味合いでの等間隔を指す。
なお、以下では、説明の便宜上、トラック領域30に含まれる32個のトラックのうちの読取素子16Aが割り当てられる1つのトラックを、「単一トラック」とも称する。
読取ヘッド16の端部には、移動機構40が設けられている。移動機構40は、外部から付与された動力に応じて読取ヘッド16をテープ幅方向に移動させる。具体的には、移動機構40は、外部から付与された動力に応じて読取ヘッド16をテープ幅方向の一方側と他方側とに選択的に移動させる。図2に示す例において、テープ幅方向の一方側と他方側とは、矢印A方向を指す。
本第1実施形態では、磁気テープMTが制御装置18(図1参照)の制御下で走行している状態において、読取ヘッド16によって、単一トラックに対してリニアスキャン方式でデータの読み取りが行われる。リニアスキャン方式では、読取素子16Aの読取動作と同期して、サーボ素子対36によってサーボパターン32が読み取られる。すなわち、本第1実施形態に係るリニアスキャン方式では、読取素子16A及びサーボ素子対36によって磁気テープMTに対する読み取りが並行して行われる。
一例として図3に示すように、読取ヘッド16は制御装置18に接続されている。読取素子16Aによって単一トラックから得られた再生信号は、時系列の信号である再生信号系列として制御装置18に出力される。読取ヘッド16には、複数の読取素子16Aが設けられているので、複数の読取素子16Aの各々によってトラック領域30(例えば、各読取素子16Aに対応する単一トラックの各々)から再生信号が得られ、得られた再生信号は、複数の再生信号系列として制御装置18に出力される。また、サーボ素子対36によってサーボパターン32が読み取られて得られたアナログのサーボ信号(以下、「アナログサーボ信号」と称する)は、制御装置18に出力される。
制御装置18には、モータ42が接続されている。モータ42の一例としては、ボイスコイルモータが挙げられる。ボイスコイルモータは、磁石のエネルギーを媒体として、コイルに流れる電流に基づく電気エネルギーが運動エネルギーに変換されることによって動力を生成する。モータ42は、移動機構40に接続されている。移動機構40は、制御装置18の制御下で、モータ42から動力が付与されることにより、読取ヘッド16をテープ幅方向に移動させる。
なお、ここでは、モータ42の一例としてボイスコイルモータが挙げているが、本開示の技術はこれに限定されず、例えば、ボイスコイルモータとは異なる種類のモータであってもよい。また、モータではなく、圧電素子及び/又はソレノイドを用いてもよい。また、読取ヘッド16に対して付与される動力は、モータ、圧電素子、及びソレノイド等のうちの複数を組み合わせたデバイスによって生成された動力であってもよい。
一例として図4に示すように、制御装置18は、コントローラ44、増幅器46、及びA/D変換器48を備えている。サーボ素子対36は、増幅器46及びA/D変換器48を介してコントローラ44に接続されている。コントローラ44は、モータ42に接続されている。
増幅器46には、サーボ素子対36からアナログサーボ信号が入力され、入力されたアナログサーボ信号を増幅し、増幅したアナログサーボ信号をA/D変換器48に出力する。A/D変換器48は、増幅器46から入力されたアナログサーボ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器48によって得られたデジタル信号は、デジタルのサーボ信号(以下、単に「サーボ信号」と称する)としてA/D変換器48によってコントローラ44に出力される。
単一トラックと読取素子16Aとの位置のずれ量(以下、単に「ずれ量」と称する)は、サーボパターン32をサーボ素子対36が読み取って得た結果であるサーボ信号に応じて定められる。
なお、単一トラックと読取素子16Aとの位置のずれとは、例えば、単一トラックのテープ幅方向の中心と読取素子16Aのテープ幅方向の中心とのずれを指す。
コントローラ44は、コンピュータを含む装置であり、コンピュータは、上述したように、CPU、メモリ、及びストレージを有する。コントローラ44は、磁気テープドライブ10の全体を制御する。
コントローラ44は、モータ42を制御することで、ずれ量に応じた動力を移動機構40に付与する。移動機構40は、モータ42から付与された動力に応じて読取ヘッド16をテープ幅方向に変動させ、読取ヘッド16の位置を正常な位置に調整する。ここで、読取ヘッド16についての「正常な位置」とは、例えば、単一トラックのテープ幅方向の中心と読取素子16Aのテープ幅方向の中心とのずれが“0”になる位置を指す。
ずれ量は、例えば、第1距離に対する第2距離の割合に基づいて算出される。第2距離とは、例えば、1つのサーボパターン32内において最下流側の第1斜線32A(図2参照)と最下流側の第2斜線32B(図2参照)とがサーボ素子36Aによって読み取られることで得た結果から算出された距離を指す。第1距離とは、例えば、隣接するサーボパターン32のうちの一方のサーボパターン32内の最下流側の第2斜線32Bと他方のサーボパターン32内の最下流側の第2斜線32Bとがサーボ素子36Aによって読み取られることで得た結果から算出された距離を指す。
具体的には、例えば、次の数式(1)を用いてずれ量が算出される。数式(1)の「斜線の角度α」としては、上述の第1既定角度と第2既定角度とが適用される。第1既定角度は、第1斜線32Aのテープ幅方向に沿う直線と成す角度であり、第2既定角度は、第2斜線32Bのテープ幅方向に沿う直線と成す角度である。換言すると、第1既定角度は、第1斜線32Aがテープ幅方向に沿う直線に対して、図中の正面視時計回りの方向に成す角度であり、第2既定角度は、“180度-第1既定角度”である。
一例として図5に示すように、制御装置18は、信号処理装置50を備えている。信号処理装置50は、単一トラックから読取素子16Aによって読み取られたデータであるアナログの再生信号(以下、「アナログ再生信号」とも称する)に対して信号処理を施す。
信号処理装置50は、複数の素子別信号処理装置50Aを備えている。素子別信号処理装置50Aは、複数の読取素子16Aの各々に対して1つずつ設けられている。素子別信号処理装置50Aは、増幅器52、A/D変換器54、LPF56、位相同期回路58、等化器60、及び復号器62を備えている。
読取素子16Aは、増幅器52及びA/D変換器54を介してLPF56に接続されている。LPF56は、位相同期回路58を介して等化器60に接続されている。等化器60は、復号器62に接続されている。復号器62は、位相同期回路58に接続されている。制御装置18の外部にはコンピュータ64が設けられており、復号器62は、コンピュータ64に接続されている。
読取素子16Aは、アナログ再生信号を増幅器52に出力する。すなわち、読取素子16Aによって単一トラックから読み取られて得られたアナログ再生信号がリアルタイムで信号処理装置50に入力される。なお、アナログ再生信号は、本開示の技術に係る「読取結果」の一例である。
増幅器52は、入力されたアナログ再生信号を増幅し、増幅したアナログ再生信号をA/D変換器54に出力する。A/D変換器54は、本開示の技術に係る「処理回路」の一例である。A/D変換器54は、入力されたアナログ再生信号をデジタル化することで、デジタル信号に変換する。A/D変換器54によって得られたデジタル信号は、LPF56に入力される。LPF56は、リアルタイム再生信号を生成して位相同期回路58に出力する。リアルタイム再生信号とは、LPF56に入力されたデジタル信号に対して、LPF56によって高周波成分が除去されることで得られた信号を指す。
ところで、磁気テープMTの変形、磁気テープMT及び/又は読取ヘッド16等に与えられる急峻な振動、及び磁気テープMTの走行時のジッタ等に起因して、リアルタイム再生信号に走行方向の位相のずれが生じる場合がある。
そこで、位相同期回路58は、LPF56から入力されたリアルタイム再生信号に対して位相同期処理を行う。位相同期処理とは、リアルタイム再生信号の走行方向についての位相のずれを、復号器62での復号結果に基づいて許容可能な一定誤差範囲内に収める処理を指す。
位相同期回路58には、過去のリアルタイム再生信号(例えば、数ビット分だけ過去のリアルタイム再生信号)の復号器62での復号結果(例えば、後述の復号信号)がフィードバックされる。そして、位相同期回路58は、フィードバックされた復号結果から、過去に生じていた位相のずれを特定し、特定した位相のずれを現在に至る数ビット分の遅延を経て修正する。このように、位相同期回路58では、フィードバックと数ビットの遅延を経た修正とが繰り返されることによって、位相のずれが、許容可能な一定誤差範囲内に維持される。
なお、ここでは、復号器62の復号結果を利用した位相同期処理が位相同期回路58によって実行される形態例を挙げているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMT及び/又は読取素子16A等に与えられる急峻な振動及び/又はジッタ等に起因して走行方向に生じる微小なずれ等によってずれる位相を、制御装置18に対して予め定められた基準クロック(以下、単に「基準クロック」と称する)の位相に同期させる処理が行われるようにしてもよい。
等化器60は、リアルタイム再生信号の波形等化を行う。すなわち、等化器60は、位相同期回路58によって位相同期処理が行われたリアルタイム再生信号に対して波形等化処理を施す。等化器60によってリアルタイム再生信号に対して波形等化処理が施されることで得られた波形等化処理後再生信号は、復号器62に出力される。
復号器62は、等化器60から入力された波形等化処理後再生信号を復号し、復号して得た復号信号(例えば、“0”及び“1”の何れかを示す信号)を位相同期回路58及びコンピュータ64に出力する。コンピュータ64は、復号器62から入力された復号信号に対して各種処理を施す。
ところで、単一トラックには、走行方向に沿って予め定められた記録パターンで、ビット単位でデータが記録されている。近年、磁気テープMTに対して記録されるデータの高密度化に伴うビット間隔(例えば、磁気テープMTに対して、走行方向に沿って1ビット単位でデータが記録されている位置の間隔)の狭小化、及び、データの転送レートの高速化に起因して、波形等化後再生信号に生じる歪が増大している。
ビット間隔が狭くなるほど、隣接するビット記録位置から、データの記録時に漏れ出る磁界と、記録ヘッドによって生成される磁界とが干渉し、磁気テープMTに対して、本来記録されるべきビット記録位置からずれた位置にデータが記録されてしまうことがある。
また、一例として図6に示すように、磁気テープMTに対する1ビット分の記録パターンのデータの記録時に記録ヘッドに供給される電流(図6に示す例では、「記録電流」)は、立ち上がりに一定の時間を要し、また、記録電流により生成される磁界は、立ち下がり時間が立ち上がり時間よりも長い。磁界の立ち下がり時間が磁界の立ち上がり時間よりも長くなるほど、磁気テープMT上での磁化の反転位置に非対称性が生じ、結果として、磁気テープMTに対して、本来記録されるべきビット記録位置からずれた位置にデータが記録されてしまう。
一方、波形等化後再生信号が歪むのは、磁気テープMTに対するデータの記録時だけが原因でなく、磁気テープドライブ10の特性にも原因がある。磁気テープドライブ10の特性としては、読取ヘッド16の特性(例えば、磁気抵抗素子の非線形性)、磁気テープMTの特性、磁気テープMTの走行速度の特性、及びA/D変換器54の特性等が挙げられる。
波形等化後再生信号が歪むのが、磁気テープMTに対するデータの記録時だけが原因であれば、記録時の条件を調整することで対応することが可能であるが、記録時の条件を調整しただけでは、磁気テープドライブ10の特性に起因する歪を軽減することが困難である。また、記録時の条件の調整は、良好な磁気テープドライブ10によって磁気テープMTからデータが読み取られる場合に過調整となり、むしろ、歪が大きくなってしまう虞がある。特に、磁気テープMTのような可換媒体に対して、データの記録と読取とを別体のヘッドで行う場合に大きな問題になり得る。なぜならば、磁気テープMTに対するデータの記録時とデータの読取時とでは、波形等化後再生信号に対して歪が生じる原因が異なるからである。なお、線形的に生じる歪、すなわち、定常的な歪に対しては、FIRフィルタが有効に働くが、磁気テープMTからデータの読み取りが行われる環境下の条件に応じて波形等化後再生信号に非線形的に生じる歪、すなわち、非定常的な歪(以下、「非線形歪」又は「非線形ノイズ」とも称する)に対しては、線形的に生じる歪に比べ、FIRフィルタは有効に働かない。
そこで、磁気テープドライブ10では、等化器60が、非線形歪を軽減する学習が行われた非線形フィルタを用いて、リアルタイム再生信号の波形等化を行う。非線形フィルタとしては、学習が行われたニューラルネットワークを有するフィルタが挙げられる。学習が行われたニューラルネットワークとしては、例えば、図15に示す学習済みモデル82が挙げられる。
一例として図7に示すように、等化器60は、本開示の技術に係る「コンピュータ」の一例であり、CPU70、メモリ72、及びストレージ74を備えている。なお、CPU70、メモリ72、及びストレージ74は、上述したコントローラ44に含まれるコンピュータが有するCPU、メモリ、及びストレージと同様のハードウェア資源である。
CPU70は、内部メモリ71を有する。CPU70、メモリ72、及びストレージ74は、バス76に接続されている。なお、図7に示す例では、図示の都合上、バス76として1本のバスが図示されているが、複数本のバスであってもよい。バス76は、シリアルバスであってもよいし、データバス、アドレスバス、及びコントロールバス等を含むパラレルバスであってもよい。
信号処理装置50は、入出力I/F78を備えており、入出力I/F78には、位相同期回路58及び復号器62が接続されている。入出力I/F78は、バス76に接続されており、入出力I/F78は、CPU70と位相同期回路58との間の各種情報の授受、及び、CPU70と復号器62との各種情報の授受を司る。
入出力I/F78は、本開示の技術に係る「受信器」の一例であり、位相同期回路58からリアルタイム再生信号を受信する。等化器60は、入出力I/F78によって受信されたリアルタイム再生信号の波形等化を行う。等化器60によって、波形等化が行われることで得られた波形等化後再生信号は入出力I/F78を介して復号器62に出力される。
ストレージ74には、波形等化実行プログラム80及び学習済みモデル82が記憶されている。波形等化実行プログラム80は、本開示の技術に係る「プログラム」の一例である。CPU70は、ストレージ74から波形等化実行プログラム80を読み出し、読み出した波形等化実行プログラム80をメモリ72上で実行する。CPU70によって波形等化実行プログラム80が実行されることによって、後述の波形等化実行処理(図17参照)が実現される。
ここで、学習済みモデル82の作り方及び学習済みモデルの使い方について図8~図15を参照しながら説明する。なお、図8~図13には、ニューラルネットワーク108(図11参照)を学習させる学習段階(以下、単に「学習段階」とも称する)の構成の一例が示されており、図14及び図15には、学習済みモデル82を運用する運用段階(以下、単に「運用段階」とも称する)の構成の一例が示されている。
先ず、運用段階について図8~図13を参照しながら説明する。学習済みモデル82は、ニューラルネットワーク108(図11参照)を学習させることによって生成される。一例として図8に示すように、ニューラルネットワーク108に対する学習は、コンピュータ90によって実現される。コンピュータ90は、CPU92、メモリ94、ストレージ96、入出力I/F98、及びバス100を備えており、CPU92、メモリ94、ストレージ96、及び入出力I/F98は、バス100に接続されている。CPU92は、内部メモリ93を有する。なお、CPU92、メモリ94、及びストレージ96は、上述したCPU70、メモリ72、及びストレージ74と同様のハードウェア資源である。
入出力I/F98には、テスト再生信号供給装置102及びUI系装置104が接続されている。入出力I/F98は、CPU92とテスト再生信号供給装置102との間の各種情報、及び、CPU92とUI系装置104との間の各種情報の授受を司る。
テスト再生信号供給装置102は、例えば、上述したCPU、メモリ、及びストレージと同様のハードウェア資源を有するコンピュータであり、テスト再生信号をコンピュータ90に供給する。テスト再生信号は、入出力I/F98を介してCPU92によって取得される。詳しくは後述するが、テスト再生信号は、磁気テープMTからデータの読み取りが行われる様々な環境下における各種条件で、磁気テープMTからデータの読み取りが行われることによって得られた再生信号である。
UI系装置104は、ディスプレイ及び受付デバイスを備えている。ディスプレイは、CPU92の制御下で画像等の各種情報を表示する。受付デバイスは、キーボード、マウス、及びタッチパネル等を有しており、コンピュータ90のユーザ等からの指示を受け付ける。CPU92は、受付デバイスによって受け付けられた指示に従って動作する。
ストレージ96には、学習実行プログラム106、ニューラルネットワーク108、及び教師データ110が記憶されている。
一例として図9に示すように、CPU92は、ストレージ96から学習実行プログラム106を読み出し、読み出した学習実行プログラム106を実行することで、学習段階遅延格納部92A、学習段階演算部92B、誤差算出部92C、及び変数調整部92Dとして動作する。
学習段階演算部92Bは、テスト再生信号供給装置102からテスト再生信号を1ビットずつ取得し、取得した順にテスト再生信号を第1格納素子群(例えば、図8に示す内部メモリ93内の複数の格納素子)に格納する。すなわち、学習段階演算部92Bは、テスト再生信号供給装置102から1ビットずつテスト再生信号を取得する毎に、取得順に時系列で第1格納素子群に格納する。なお、第1格納素子群には、テスト再生信号がFIFO方式で格納される。
学習段階演算部92Bは、学習段階遅延格納部92Aによって時系列で格納されているテスト再生信号と、ストレージ96内のニューラルネットワーク108とを用いた演算を行う。
誤差算出部92Cは、学習段階演算部92Bによる演算結果とストレージ96内の教師データ110との誤差を算出する。ここで、教師データ110は、学習用磁気テープの長手方向(例えば、走行方向)に沿って予め定められた記録パターンで学習用磁気テープに記録されている既知データに関する理想的な再生信号を指す。なお、教師データ110は、本開示の技術に係る「既定の目標値」の一例である。また、誤差は、本開示の技術に係る「ずれ量」の一例である。
ニューラルネットワーク108は、結合荷重及びオフセット値(以下、「閾値」とも称する)等の複数の最適化変数(以下、「単に「最適化変数」とも称する)を有しており、誤差算出部92Cによって算出された誤差が最小になるように最適化変数が調整されることによってニューラルネットワーク108が学習される。そこで、変数調整部92Dは、誤差算出部92Cによって算出された誤差が最小になるように最適化変数を調整する。
一例として図10に示すように、テスト再生信号供給装置102は、磁気テープMTからデータの読み取りが行われる環境下の条件(以下、「読取環境条件」とも称する)毎にテスト再生信号を有する。図10に示す例では、第1読取環境条件~第N読取環境条件が示されており、第1読取環境条件~第N読取環境条件の各々についてテスト再生信号が関連付けられている。なお、以下では、説明の便宜上、第1読取環境条件~第N読取環境条件を区別して説明する必要がない場合、単に「読取環境条件」と称する。
読取環境条件は、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、走行速度条件、及びA/D変換器条件を含む条件である。
読取ヘッド条件とは、読取ヘッド16の個体差に起因する条件を指す。読取ヘッド16の個体差とは、例えば、読取ヘッド16毎の読取素子16Aの特性(例えば、磁気抵抗素子の非線形性)の違いを指す。読取素子16A毎の特性の違いは、主に、読取素子16Aの製造上の誤差及び/又は読取素子16Aの経時劣化等によって生じる。読取素子16Aの経時劣化の程度を定量的に示す指標としては、例えば、読取ヘッド16の使用回数、読取ヘッド16を継続して使用している平均時間、及び、読取ヘッド16が製造されてから特定の時点(例えば、現時点)に至るまでに時間等が挙げられる。
磁気テープ条件とは、磁気テープMTの個体差に起因する条件を指す。磁気テープMTの個体差とは、例えば、磁気テープMT毎の特性の違いを指す。磁気テープMT毎の特性の違いは、主に、ビット間隔の違い、磁気テープMTの素材の違い、磁気テープMTの製造上の誤差、及び/又は磁気テープMTの経時劣化等によって生じる。磁気テープMTの経時劣化の程度を定量的に示す指標としては、磁気テープMTの使用回数、磁気テープMTを継続して使用している平均時間、及び、磁気テープMTが製造されてから特定の時点(例えば、現時点)に至るまでに時間等が挙げられる。
走行速度条件とは、磁気テープMTが走行している速度に関する条件を指す。磁気テープMTが走行している速度の一例としては、3m/s(メートル/秒)、4m/s、及び5m/sが挙げられる。なお、磁気テープMTが走行している速度は、磁気テープMTの全長にわたってデータの読み取りが行われる場合の平均速度であってもよいし、中央値速度であってもよいし、最頻度速度であってもよい。また、磁気テープMTの一部範囲のデータの読み取りが行われる場合の平均速度であってもよいし、中央値速度であってもよいし、最頻度速度であってもよい。
A/D変換器条件とは、A/D変換器54の個体差に起因する条件を指す。A/D変換器54の個体差とは、例えば、A/D変換器54毎の特性の違いを指す。A/D変換器54毎の特性の違いは、主に、A/D変換器54の製造上の誤差及び/又はA/D変換器54の経時劣化等によって生じる。A/D変換器54の経時劣化の程度を定量的に示す指標としては、例えば、A/D変換器54の使用回数、A/D変換器54を継続して使用している平均時間、及び、A/D変換器54が製造されてから特定の時点(例えば、現時点)に至るまでに時間等が挙げられる。
第1読取環境条件~第N読取環境条件は、互いに内容が異なる。すなわち、第1読取環境条件~第N読取環境条件では、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、走行速度条件、及びA/D変換器条件の組み合わせが異なっており、読取環境条件毎に固有のテスト再生信号が関連付けられている。
テスト再生信号供給装置102は、第1読取環境条件~第N読取環境条件から選択された読取環境条件に関連付けられているテスト再生信号を学習段階遅延格納部92Aに供給する。なお、読取環境条件は、例えば、UI系装置104に対して与えられた指示に従って選択される。
一例として図11に示すように、学習段階遅延格納部92Aは、上述の第1格納素子群として複数の格納素子92A1を有する。複数の格納素子92A1は、例えば、内部メモリ93によって実現される。複数の格納素子92A1の各々は遅延素子であり、複数の格納素子92A1には、後述の既定時間(以下、「遅延時間」とも称する)ずつ遅延してテスト再生信号が入力される。複数の格納素子92A1は、テスト再生信号を時系列で格納する。すなわち、各格納素子92A1は、1ビット分のテスト再生信号が入力される毎に、テスト再生信号を1ビットずつ遅延して格納する。図11に示す例では、複数の格納素子92A1が、直列に接続されており、テスト再生信号が1ビットずつ遅延して各格納素子92A1に格納される。複数の格納素子92A1には、テスト再生信号がFIFO方式で格納され、終端の格納素子92A1(以下、「終端格納素子E1」とも称する)に格納されているテスト再生信号は、学習段階遅延格納部92Aに1ビット分の新たなテスト再生信号が入力されることに伴って格納素子92A1から消去される。
ニューラルネットワーク108は、複数の格納素子92A1に対応する複数の前段層ノード107Aを有する前段層107と、複数の後段層ノード109Aを有する後段層109と、を含む。複数の格納素子92A1の各々は、入力されたテスト再生信号を複数の前段層ノード107Aのうちの対応する前段層ノード107Aに出力する。複数の前段層ノード107Aの各々は、複数の格納素子92A1のうちの対応する格納素子92A1から入力されたテスト再生信号を後段層109に出力する。後段層109は、複数の前段層ノード107Aから入力されたテスト再生信号(図11に示す例では、“x”)と後段層結合荷重(図11に示す例では、“w”)との積和に基づいて得た合成値を活性化関数で変換する。そして、後段層109は、合成値を活性化関数で変換して得た変換値に基づく後段層値(図11に示す例では、「ニューラルネットワーク信号」)を出力する。後段層109から出力される後段層値は、複数の格納素子92A1に格納されている複数のテスト再生信号のうち、最も先に入力されたテスト再生信号に関する信号、すなわち、終端格納素子E1に格納されているテスト再生信号に関する値である。ここで、後段層結合荷重は、変数調整部92D(図9参照)によって調整される最適化変数の一種であり、後段層値と教師データ110との誤差を最小にする学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。
後段層値は、変換値と後段層結合荷重との積和と閾値(後述の数式(4)参照)とに基づく値である。変換値と後段層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、変換値と後段層結合荷重との積和を減ずる値である。変換値と後段層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。なお、閾値は、本開示の技術に係る「第1変数」及び「第2変数」の一例である。
図11に示す例では、前段層107の一例として、入力層108Aが示されており、後段層109の一例として、中間層108B及び出力層108Cが示されている。入力層108Aは、複数の入力層ノード108A1を有する。中間層108Bは、複数の中間層ノード108B1を有する。出力層108Cは、出力層ノード108C1を有する。図11に示す例では、複数の前段層ノード107Aの一例として、N1個の入力層ノード108A1が示されており、複数の後段層ノード109Aの一例として、N2個の中間層ノード108B1、及びN3個の出力層ノード108C1が示されている。
複数の入力層ノード108A1の各々は、複数の格納素子92A1のうちの対応する格納素子92A1から入力されたテスト再生信号を中間層108Bに出力する。複数の中間層ノード108B1は、複数の入力層ノード108A1から入力されたテスト再生信号と中間層結合荷重との積和に基づいて、上述した合成値として得た中間層値を活性化関数(例えば、以下の数式(3)に示すシグモイド関数)で変換することで、上述した変換値を生成して出力層108Cに出力する。出力層108Cは、中間層108Bから入力された変換値と出力層結合荷重との積和に基づいて、上述した後段層値として得た出力層値を、ニューラルネットワーク信号として出力する。出力層108Cから出力されるニューラルネットワーク信号は、複数の格納素子92A1に格納されている複数のテスト再生信号のうち、最も先に入力されたテスト再生信号に関する信号、すなわち、終端格納素子E1に格納されているテスト再生信号に関する信号である。中間層結合荷重及び出力層結合荷重は、ニューラルネットワーク信号と教師データ110との誤差を最小にする学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。
また、中間層値は、テスト再生信号と中間層結合荷重との積和と閾値(後述の数式(4)参照)とに基づく値である。テスト再生信号と中間層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、テスト再生信号と中間層結合荷重との積和を減じる値である。テスト再生信号と中間層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。また、ニューラルネットワーク信号は、中間層108Bから入力された変換値と出力層結合荷重との積和と閾値(後述の数式(4)参照)とに基づく値である。変換値と出力層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、変換値と出力層結合荷重との積和を減じる値である。変換値と出力層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。
上述したように、ニューラルネットワーク信号は、複数の格納素子92A1に格納されている複数のテスト再生信号のうち、最も先に入力されたテスト再生信号に関する信号である。すなわち、ニューラルネットワーク信号は、終端格納素子E1に格納されているテスト再生信号に関する信号である。なお、複数の格納素子92A1に格納されている複数のテスト再生信号のうち、最も先に入力されたテスト再生信号に関する信号は、本開示の技術に係る「複数の遅延素子に格納されている複数の再生信号のうち、最も先に入力された再生信号に関する値」の一例である。また、ニューラルネットワーク信号は、本開示の技術に係る「後段層値」の一例である。
ここで、以下の数式(2)~数式(8)において、“m”を1~3の自然数とし、“k”を1~Nmの自然数とし、“j”を1~Nm-1の自然数とした場合、上述の遅延時間は、以下の数式(2)によってされる。また、テスト再生信号、リアルタイム再生信号、後段層結合荷重、合成値、活性化関数、変換値、後段層値、中間層結合荷重、中間層値、出力層結合荷重、ニューラルネットワーク信号、及び波形等化後再生信号は、以下の数式(3)及び(4)に示す変数で表現される。なお、以下では、後段層結合荷重、中間層結合荷重、及び出力層結合荷重を区別して説明する必要がない場合、単に「結合荷重」と称する。また、結合荷重及び閾値は、上述した最適化変数の一例であり、ニューラルネットワーク108を最適化するために用いられる。
一例として図12に示すように、学習段階演算部92Bは、演算結果として、ニューラルネットワーク108の出力層108Cから誤差算出部92Cにニューラルネットワーク信号を出力する。誤差算出部92Cは、学習段階演算部92Bによる演算結果、すなわち、ニューラルネットワーク108の出力層108Cから入力されたニューラルネットワーク信号と教師データ110との誤差を算出し、算出した誤差を変数調整部92Dに出力する。ここで、誤差は、以下の数式(5)によって算出される。
変数調整部92Dは、誤差算出部92Cによって算出された誤差を最小にするように最適化変数を、誤差逆伝搬法を用いて調整する。そこで、変数調整部92Dは、最適化変数を調整するために用いる調整値、すなわち、最適化変数の変化量を以下の数式(6)及び数式(7)に従って算出する。具体的には、数式(6)によって、結合荷重の調整値が算出され、数式(7)によって、閾値の調整値が算出される。
変数調整部92Dは、数式(6)から算出した調整値を用いてニューラルネットワーク108の結合荷重を調整し、数式(7)から算出した調整値を用いてニューラルネットワーク108の閾値を調整することで、ニューラルネットワーク108を最適化する。ニューラルネットワーク108は、上述した読取環境条件毎に変数調整部92Dによって最適化されることによって学習が行われる。そして、一例として図13に示すように、読取環境条件毎に変数調整部92Dによって最適化されたニューラルネットワーク108は、学習済みモデル82として、学習段階演算部92Bによって、読取環境条件毎にストレージ96に記憶される。
次に、運用段階について図14及び図15を参照しながら説明する。
一例として図14に示すように、ストレージ74には、コンピュータ90のストレージ96から学習済みモデル82が移行されて記憶されている。コンピュータ90から等化器60への学習済みモデル82の移行は、例えば、コンピュータ90が外部I/F28(図1参照)に接続された状態で、UI系装置26によって受け付けられた指示に従って実行される。具体的には、UI系装置26によって受け付けられた指示に従って、コンピュータ90のストレージ96から学習済みモデル82が選択され、選択された学習済みモデル82が等化器60のCPU70によってストレージ74に記憶される。
なお、ストレージ74には、複数の学習済みモデル82を統合した学習済みモデルが記憶され、CPU70によって使用されるようにしてもよい。ここで、複数の学習済みモデル82を統合するとは、例えば、複数の学習済みモデル82間の互いに対応する最適化変数を平均することで複数の学習済みモデル82を合成することを指す。この場合、例えば、CPU70は、3m/sに関する走行速度条件を含む読取環境条件の学習済みモデル82と、4m/sに関する走行速度条件を含む読取環境条件の学習済みモデル82と、5m/sに関する走行速度条件を含む読取環境条件の学習済みモデル82とを統合することで、3m/s~5m/sの走行速度に対応する学習済みモデルを生成してストレージ74に対して記憶させるようにしてもよい。
CPU70は、ストレージ74から波形等化実行プログラム80を読み出し、読み出した波形等化実行プログラム80を実行することで、運用段階遅延格納部70A及び運用段階演算部70Bとして動作する。
運用段階遅延格納部70Aは、位相同期回路58からリアルタイム再生信号を1ビットずつ取得し、取得した順にリアルタイム再生信号を第2格納素子群(例えば、図7に示す内部メモリ71内の複数の格納素子)に格納する。すなわち、運用段階遅延格納部70Aは、位相同期回路58から1ビットずつリアルタイム再生信号を取得する毎に、取得順に時系列で第2格納素子群に格納する。また、第2格納素子群には、リアルタイム再生信号がFIFO方式で格納される。運用段階演算部70Bは、運用段階遅延格納部70Aによって時系列で格納されているリアルタイム再生信号と、ストレージ74内の学習済みモデル82とを用いた演算を行う。
一例として図15に示すように、運用段階遅延格納部70Aは、上述の第2格納素子群として複数の格納素子70A1を有する。複数の格納素子70A1は、例えば、内部メモリ71によって実現される。複数の格納素子70A1の各々は遅延素子であり、複数の格納素子70A1には、上述した遅延時間ずつ遅延してリアルタイム再生信号が入力される。複数の格納素子70A1は、リアルタイム再生信号を時系列で格納する。すなわち、各格納素子70A1は、1ビット分のリアルタイム再生信号が入力される毎に、リアルタイム再生信号を1ビットずつ遅延して格納する。図15に示す例では、複数の格納素子70A1が、直列に接続されており、リアルタイム再生信号が1ビットずつ遅延して各格納素子70A1に格納される。複数の格納素子70A1には、リアルタイム再生信号がFIFO方式で格納され、終端の格納素子70A1(以下、「終端格納素子E2」とも称する)に格納されているリアルタイム再生信号は、運用段階遅延格納部70Aに1ビット分の新たなリアルタイム再生信号が入力されることに伴って格納素子70A1から消去される。
学習済みモデル82は、複数の格納素子70A1に対応する複数の前段層ノード107Aを有する前段層107と、複数の後段層ノード109Aを有する後段層109と、を含む。複数の格納素子70A1の各々は、入力されたリアルタイム再生信号を複数の前段層ノード107Aのうちの対応する前段層ノード107Aに出力する。複数の前段層ノード107Aの各々は、複数の格納素子70A1のうちの対応する格納素子70A1から入力されたリアルタイム再生信号を後段層109に出力する。後段層109は、複数の前段層ノード107Aから入力されたリアルタイム再生信号(図15に示す例では、“x”)と後段層結合荷重(図15に示す例では、“w”)との積和に基づいて得た合成値を活性化関数で変換する。そして、後段層109は、合成値を活性化関数で変換して得た変換値に基づく後段層値(図15に示す例では、「波形等化後再生信号」)を出力する。後段層109から出力される後段層値は、終端格納素子E2に格納されているリアルタイム再生信号に関する値である。
図15に示す例では、前段層107の一例として、入力層108Aが示されており、後段層109の一例として、中間層108B及び出力層108Cが示されている。入力層108Aは、複数の入力層ノード108A1を有する。中間層108Bは、複数の中間層ノード108B1を有する。出力層108Cは、出力層ノード108C1を有する。図15に示す例では、複数の前段層ノード107Aの一例として、N1個の入力層ノード108A1が示されており、複数の後段層ノード109Aの一例として、N2個の中間層ノード108B1、及びN3個の出力層ノード108C1が示されている。
複数の入力層ノード108A1の各々は、複数の格納素子70A1のうちの対応する格納素子70A1から入力されたリアルタイム再生信号を中間層108Bに出力する。複数の中間層ノード108B1は、複数の入力層ノード108A1から入力されたリアルタイム再生信号と中間層結合荷重との積和に基づいて、上述した合成値として得た中間層値を活性化関数(例えば、数式(3)に示すシグモイド関数)で変換することで、上述した変換値を生成して出力層108Cに出力する。ここで、中間層値は、リアルタイム再生信号と中間層結合荷重との積和と閾値(数式(4)参照)とに基づく値である。具体的に説明すると、中間層値は、数式(4)に示すように、リアルタイム再生信号と中間層結合荷重との積和から閾値を減じた値である。出力層108Cは、中間層108Bから入力された変換値と出力層結合荷重との積和に基づいて、上述した後段層値として得た出力層値を、波形等化後再生信号として出力する。
出力層108Cから出力される波形等化後再生信号は、複数の格納素子70A1に格納されている複数のリアルタイム再生信号のうち、最も先に入力されたリアルタイム再生信号、すなわち、終端格納素子E2に格納されているリアルタイ再生信号に関する信号である。なお、複数の格納素子70A1に格納されている複数のリアルタイム再生信号のうち、最も先に入力されたリアルタイム再生信号に関する信号は、本開示の技術に係る「複数の遅延素子に格納されている複数の再生信号のうち、最も先に入力された再生信号に関する値」の一例である。また、波形等化後再生信号は、本開示の技術に係る「後段層値」の一例である。
また、波形等化後再生信号は、中間層108Bから入力された変換値と出力層結合荷重との積和と閾値(数式(4)参照)とに基づく値である。変換値と出力層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、変換値と出力層結合荷重との積和を減じる値である(数式(4)参照)。
次に、磁気テープドライブ10の作用について説明する。
先ず、コンピュータ90のCPU92によって実行される学習実行処理について図16を参照しながら説明する。学習実行処理は、学習実行処理の実行を開始する指示がUI系装置104(図8参照)によって受け付けられた場合に、コンピュータ90のCPU92によって学習実行プログラム106に従って実行される。なお、以下では、説明の便宜上、テスト再生信号供給装置102から学習段階遅延格納部92Aにテスト再生信号が1ビット分ずつ供給されることを前提として説明する(図9~図12参照)。
図16に示す学習実行処理では、先ず、ステップST10で、学習段階遅延格納部92Aは、テスト再生信号供給装置102から1ビット分のテスト再生信号を取得し、その後、学習実行処理はステップST12へ移行する。
ステップST12で、学習段階遅延格納部92Aは、ステップST10で取得したテスト再生信号をFIFO方式で且つ時系列で複数の格納素子92A1に格納し、その後、学習実行処理はステップST14へ移行する。
ステップST14で、学習段階遅延格納部92Aは、全ての格納素子92A1にテスト再生信号が格納されているか否かを判定する。ステップST14において、全ての格納素子92A1にテスト再生信号が格納されていない場合は、判定が否定されて、学習実行処理はステップST10へ移行する。ステップST14において、全ての格納素子92A1にテスト再生信号が格納されている場合は、判定が肯定されて、学習実行処理はステップST16へ移行する。
ステップST16で、学習段階演算部92Bは、学習段階遅延格納部92Aによって複数の格納素子92A1に時系列で格納されたテスト再生信号とストレージ96内のニューラルネットワーク108とを用いた演算を行い、その後、学習実行処理はステップST18へ移行する。
ステップST18で、誤差算出部92Cは、学習段階演算部92Bからニューラルネットワーク信号が出力されたか否かを判定する。ステップST18において、学習段階演算部92Bからニューラルネットワーク信号が出力されていない場合は、判定が否定されて、ステップST18の判定が再び行われる。ステップST18において、学習段階演算部92Bからニューラルネットワーク信号が出力された場合は、判定が肯定されて、学習実行処理はステップST20へ移行する。
ステップST20で、誤差算出部92Cは、学習段階演算部92Bから入力されたニューラルネットワーク信号とストレージ96内の教師データ110との誤差を算出し、その後、学習実行処理はステップST22へ移行する。
ステップST22で、変数調整部92Dは、ステップST20で算出された誤差が既定範囲内であるか否かを判定する。ここで、既定範囲とは、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される範囲を指す。既定範囲は、固定値であってもよいし、与えられた条件(例えば、UI系装置104によって受け付けられた指示の内容)に応じて変更される可変値であってもよい。ステップST22において、ステップST20で算出された誤差が既定範囲内の場合は、判定が肯定されて、学習実行処理はステップST28へ移行する。ステップST22において、ステップST20で算出された誤差が既定範囲外の場合は、判定が否定されて、学習実行処理はステップST24へ移行する。
ステップST24で、変数調整部92Dは、ステップST20で算出された誤差を最小にするように最適化変数を調整する調整値を算出し、その後、学習実行処理はステップST26へ移行する。
ステップST26で、変数調整部92Dは、ステップST28で算出した調整値を用いて結合荷重等の最適化変数を調整し、その後、学習実行処理はステップST10へ移行する。
ステップST28で、学習段階演算部92Bは、ステップST16の演算で用いた最新のニューラルネットワーク108を学習済みモデル82としてストレージ96に対して記憶させ、その後、学習実行処理が終了する。
次に、等化器60のCPU70によって実行される波形等化実行処理について図17を参照しながら説明する。図17に示す波形等化実行処理は、波形等化実行処理の実行を開始する指示がUI系装置26(図1参照)によって受け付けられた場合に、等化器60のCPU70によって波形等化実行プログラム80に従って実行される。
なお、図17に示す波形等化実行処理の流れは、本開示の技術に係る「信号処理装置の処理方法」及び「磁気テープ読取装置の動作方法」の一例である。また、以下では、説明の便宜上、位相同期回路58から運用段階遅延格納部70Aにリアルタイム再生信号が1ビット分ずつ供給されることを前提として説明する(図14及び図15参照)。また、以下では、説明の便宜上、等化器60のストレージ74に、学習実行処理が実行されることによって得られた学習済みモデル82が既に記憶されていることを前提として説明する。
図17に示す波形等化実行処理では、先ず、ステップST50で、運用段階遅延格納部70Aは、位相同期回路58から1ビット分のリアルタイム再生信号を取得し、その後、波形等化実行処理はステップST52へ移行する。
ステップST52で、運用段階遅延格納部70Aは、ステップST50で取得したリアルタイム再生信号をFIFO方式で且つ時系列で複数の格納素子70A1に格納し、その後、波形等化実行処理はステップST54へ移行する。
ステップST54で、運用段階遅延格納部70Aは、全ての格納素子70A1にリアルタイム再生信号が格納されているか否かを判定する。ステップST54において、全ての格納素子70A1にリアルタイム再生信号が格納されていない場合は、判定が否定されて、波形等化実行処理はステップST50へ移行する。ステップST54において、全ての格納素子70A1にリアルタイム再生信号が格納されている場合は、判定が肯定されて、波形等化実行処理はステップST56へ移行する。
ステップST56で、運用段階演算部70Bは、運用段階遅延格納部70Aによって複数の格納素子70A1に時系列で格納されたリアルタイム再生信号とストレージ74内の学習済みモデル82とを用いた演算を行うことで、終端格納素子E2に格納されているリアルタイム再生信号に関する波形等化後再生信号を生成し、その後、波形等化実行処理はステップST58へ移行する。
ステップST58で、運用段階演算部70Bは、ステップST56で生成した波形等化後再生信号を復号器62に出力し、その後、波形等化実行処理が終了する。
ところで、一般的に、リアルタイム再生信号に対する波形等化の方式として、従来既知の線形フィルタを用いた波形等化方式が知られている。線形フィルタとしてはFIRフィルタが知られている。図18には、FIR等化方式によりリアルタイム再生信号の波形等化が行われることで得られた信号のSNR(以下、「FIR等化方式SNR」とも称する)と、ニューラルネットワーク等化方式によりリアルタイム再生信号の波形等化が行われることで得られた信号のSNR(以下、「ニューラルネットワーク等化方式SNR」とも称する)とを比較した結果の一例が示されている。ここで、FIR等化方式とは、従来既知のFIRフィルタを用いた波形等化方式を指す。また、ニューラルネットワーク等化方式とは、本開示の技術に係るニューラルネットワーク108に対して、非線形歪を軽減する学習が行われることによって得られた学習済みモデル82を用いた波形等化方式(例えば、図17に示す波形等化実行処理を用いた波形等化方式)を指す。なお、図18に示すグラフにおいて、横軸は磁気テープMTの走行速度であり、縦軸はSNRである。
一例として図18に示すように、FIR等化方式SNR及びニューラルネットワーク等化方式SNRは共に、磁気テープMTの走行速度が大きくなるに従って低下する。しかし、磁気テープMTの走行速度に関わらず、ニューラルネットワーク等化方式SNRは、FIR等化方式SNRよりも、高い。また、図18に示す例では、磁気テープMTの走行速度が大きくなるほど、FIR等化方式SNRに対するニューラルネットワーク等化方式SNRの割合が大きい。つまり、図18に示す例からは、FIR等化方式によりリアルタイム再生信号の波形等化が行われるよりも、ニューラルネットワーク等化方式によりリアルタイム再生信号の波形等化が行われる方が、SNRの向上に寄与していることが読み取ることができる。
また、図19には、磁気テープMTの走行速度が6m/sの場合、4m/sの場合、及び2m/sの場合のFIRフィルタを用いた波形等化処理がリアルタイム再生信号に対して行われることで生じるノイズと、磁気テープMTの走行速度が6m/sの場合、4m/sの場合、及び2m/sの場合の本開示の技術による波形等化処理(例えば、図17に示す波形等化実行処理)がリアルタイム再生信号に対して行われることで生じるノイズとを比較した結果の一例が示されている。なお、図19に示すグラフにおいて、横軸は、磁気テープMTの長尺方向の位置であり、縦軸は位相同期回路58から出力されるリアルタイム再生信号の信号値である。
一例として図19に示すように、FIRフィルタを用いた波形等化処理では、磁気テープMTの走行速度に関わらず、磁気テープMTに記録されているデータの特定の並び方、すなわち、特定の記録パターンに依存性がある非線形ノイズが生じる。これに対し、本開示の技術による波形等化処理では、FIRフィルタを用いた波形等化処理に比べ、特定の記録パターンに依存性がある非線形ノイズが低減される。
以上説明したように、磁気テープドライブ10では、等化器60によってリアルタイム再生信号の波形等化が行われる。波形等化は、読取環境条件(図10参照)に応じて生じる非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることで得られた学習済みモデル82を用いて行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。また、本第1実施形態では、図5に示すように、複数の読取素子16Aの各々に対して素子別信号処理装置50Aが設けられているので、各読取素子16Aに対して等化器60による再生信号系列の波形等化が行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いて複数の再生信号系列の波形等化が行われる場合に比べ、複数の再生信号系列に非線形的に生じる歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、読取ヘッド条件に応じて生じる非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることで得られた学習済みモデル82を用いて波形等化が行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、読取ヘッド16の個体差が原因でリアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、磁気テープ条件に応じて生じる非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることで得られた学習済みモデル82を用いて波形等化が行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、磁気テープMTの個体差が原因でリアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、走行速度条件に応じて生じる非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることで得られた学習済みモデル82を用いて波形等化が行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、磁気テープMTの走行速度が原因でリアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、A/D変換器条件に応じて生じる非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることで得られた学習済みモデル82を用いて波形等化が行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、A/D変換器54の個体差が原因でリアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、非線形歪を軽減する学習が行われた非線形フィルタとして学習済みモデル82を用いて等化器60によってリアルタイム再生信号の波形等化が行われる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、学習済みモデル82が、前段層107及び後段層109を有する。前段層107は、複数の格納素子70A1に対応する複数の前段層ノードを有する。複数の格納素子70A1の各々は、入力されたリアルタイム再生信号を複数の前段層ノード107Aのうちの対応する前段層ノード107Aに出力する。複数の前段層ノード107Aの各々は、複数の格納素子70A1のうちの対応する格納素子70A1から入力されたリアルタイム再生信号を後段層109に出力する。後段層109は、複数の前段層ノード107Aから入力されたリアルタイム再生信号と後段層結合荷重との積和に基づいて得た合成値を活性化関数で変換する。後段層結合荷重は、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。また、後段層109は、合成値を活性化関数で変換して得た変換値に基づく後段層値として波形等化後再生信号を出力する。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、後段層値として、変換値と後段層結合荷重との積和から閾値を減じて得た値が採用されている。変換値と後段層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。従って、本構成によれば、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められた閾値を用いずに後段層値が定められる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を高精度に軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、複数の格納素子70A1に、リアルタイム再生信号が遅延時間ずつ遅延して入力される。複数の格納素子70A1は、リアルタイム再生信号が遅延時間ずつ遅延して入力される複数の遅延素子であり、後段層値として後段層109から出力される波形等化後再生信号は、複数の格納素子70A1に格納されている複数のリアルタイム再生信号のうち、最も先に入力されたリアルタイム再生信号、すなわち、終端格納素子E2に格納されているリアルタム再生信号に関する値である。従って、本構成によれば、後段層109からリアルタイム再生信号に対応する波形等化後再生信号を、複数の格納素子70A1に入力されたリアルタイム再生信号順に得ることができる。
また、磁気テープドライブ10では、学習済みモデル82が、前段層107として入力層108Aを有し、後段層109として中間層108B及び出力層108Cを有する。また、入力層108Aは、複数の前段層ノード107Aとして複数の入力層ノード108A1を有する。中間層108Bは、複数の後段層ノード109Aとして複数の中間層ノード108B1を有する。後段層109は、後段層ノード109Aとして出力層ノード108C1を有する。複数の入力層ノード108A1の各々は、複数の格納素子92A1のうちの対応する格納素子92A1から入力されたリアルタイム再生信号を中間層108Bに出力する。複数の中間層ノード108B1は、複数の入力層ノード108A1から入力されたリアルタイム再生信号と中間層結合荷重との積和に基づいて合成値として得た中間層値を活性化関数で変換することで変換値を生成して出力層108Cに出力する。中間層結合荷重は、ニューラルネットワーク信号と教師データ110との誤差を最小にする学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。出力層108Cは、中間層108Bから入力された変換値と出力層結合荷重との積和に基づく出力層値として波形等化後再生信号を出力する。出力層結合荷重は、ニューラルネットワーク信号と教師データ110との誤差を最小にする学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。従って、本構成によれば、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、磁気テープドライブ10では、中間層値として、リアルタイム再生信号と中間層結合荷重との積和から閾値を減じて得た値が採用されている。リアルタイム再生信号と中間層結合荷重との積和に対して用いられる閾値は、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められる。従って、本構成によれば、非線形歪を軽減する学習がニューラルネットワーク108に対して行われることによって定められた閾値を用いずに中間層値が定められる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を高精度に軽減することができる。
更に、磁気テープドライブ10では、教師データ110は、学習用磁気テープの長手方向に沿って予め定められた記録パターンで学習用磁気テープに記録されている既知データに関する理想的な再生信号である。従って、本構成によれば、学習用磁気テープに予め定められた記録パターンで記録されている既知データとは無関係な教師データが用いられる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
なお、上記第1実施形態では、教師データ110として、学習用磁気テープの長手方向に沿って予め定められた記録パターンで学習用磁気テープに記録されている既知データに関する理想的な再生信号(以下、「第1理想再生信号」とも称する)を例示したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、コンピュータシミュレーションによって導出された理想的な再生信号(以下、「第2理想再生信号」とも称する)であってもよい。また、第1理想再生信号と第2理想再生信号とを合成して得た信号を教師データ110として用いてもよい。ここで、第1理想再生信号と第2理想再生信号との合成とは、例えば、第1理想再生信号と第2理想再生信号との平均を指す。このように、教師データ110として、第2理想再生信号を用いてもよいし、第1理想再生信号と第2理想再生信号とを合成して用いてもよい。これにより、第1理想再生信号及び第2理想再生信号の何れにも無関係な教師データが用いられる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を高精度に軽減することができる。
また、上記第1実施形態では、ニューラルネットワーク108及び学習済みモデル82の各々が、入力層108A、中間層108B、及び出力層108Cの3層からなる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、学習段階では、図20に示すように、ニューラルネットワーク108に代えて、ニューラルネットワーク208を適用し、運用段階では、図21に示すように、学習済みモデル82に代えて、学習済みモデル182を適用する。ニューラルネットワーク208及び学習済みモデル182の各々は、入力層108Aと出力層108Cとの2層からなる。このように構成されたニューラルネットワーク208及び学習済みモデル182を用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合であっても、上記第1実施形態と同様に、線形フィルタを用いてリアルタイム再生信号の波形等化が行われる場合に比べ、リアルタイム再生信号に生じる非線形歪を軽減することができる。
また、上記第1実施形態では、中間層108Bが単層の場合について説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、学習段階では、図22に示すように、ニューラルネットワーク108に代えて、複数の中間層108Bを有するニューラルネットワーク308を適用し、運用段階では、図23に示すように、学習済みモデル82に代えて、複数の中間層108Bを有する学習済みモデル282を適用する。中間層108Bの層数は、入力層108Aに含まれるノード数及び出力層108Cに含まれるノード数に応じて定められるようにすればよい。
また、上記第1実施形態では、出力層108Cは、終端格納素子E2(図15参照)に格納されているリアルタイム再生信号のみに関する波形等化後再生信号を出力する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、出力層108Cは、複数の出力層ノード108C1(例えば、入力層ノード108A1と同数の出力層ノード108C1)を有していてもよい。この場合、例えば、リアルタイム再生信号を2次元状の画像に見立てた2次元リアルタイム再生信号が複数の入力層ノード108A1に入力され、畳み込み層及びプーリング層を有する畳み込みニューラルネットワークを用いて複数の出力層ノード108C1から2次元状の画像に見立てた波形等化後再生信号が出力されるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態では、読取環境条件として、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、走行速度条件、及びA/D変換器条件の組み合わせを例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、読取環境条件は、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、走行速度条件、及びA/D変換器条件のうちの少なくとも1つであればよい。
また、読取環境条件は、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、走行速度条件、及びA/D変換器条件のうちの少なくとも1つに限定される必要はなく、これらの条件に代えて、又は、これらの条件のうちの少なくとも1つと共に、他の条件を適用してもよい。他の条件としては、例えば、走行速度及びビット間隔に応じて定まる記録パターンの個体差(種類)に起因する条件が挙げられる。また、他の条件としては、例えば、信号処理装置50に含まれる増幅器52、LPF56、位相同期回路58、及び復号器62等の波形等化に影響を及ぼす複数の処理回路(以下、単に「処理回路」と称する)のうちの少なくとも1つの個体差に起因する条件(以下、「処理回路条件」と称する)も挙げられる。処理回路条件とは、処理回路の個体差に起因する条件を指す。処理回路の個体差とは、例えば、処理回路毎の特性の違いを指す。処理回路毎の特性の違いは、主に、処理回路の製造上の誤差及び/又は処理回路の経時劣化等によって生じる。処理回路の経時劣化の程度を定量的に示す指標としては、例えば、処理回路の使用回数、処理回路を継続して使用している平均時間、及び、処理回路が製造されてから特定の時点(例えば、現時点)に至るまでに時間等が挙げられる。
また、上記第1実施形態では、等化器60が学習済みモデル82を運用する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されず、等化器60の学習済みモデル82が等化器60のCPU70によって微調整されるようにしてもよい。この場合、例えば、等化器60のCPU70が、上述したテスト再生信号としてリアルタイム再生信号を用いて、学習実行プログラム106に従って学習実行処理を実行するようにすればよい。
また、上記第1実施形態では、本開示の技術に係る「活性化関数」の一例としてシグモイド関数を例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、シグモイド関数に代えて、又は、シグモイド関数と共に、ハイパボリックタンジェント関数、ランプ関数、及び/又はソフトマックス関数等の他の活性化関数を適用してもよい。
また、上記第1実施形態では、非線形フィルタとして学習済みモデル82を例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、例えば、上記第1実施形態で説明した非線形歪を軽減する学習が行われたIIRフィルタを用いてもよい。
また、上記第1実施形態では、位相同期処理が行われたリアルタイム再生信号が位相同期回路58から等化器60に入力される形態例が挙げられているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、図24に示すように、位相同期回路58の位置と等化器60の位置との入れ替えるようにしてもよい。すなわち、位相同期回路58を介さずにLPF56から等化器60にリアルタイム再生信号が入力され、等化器60によってリアルタイム再生信号の波形等化が行われることで得られた波形等化後再生信号が位相同期回路58に入力され、位相同期回路58によって、復号器62の復号結果に基づいて、波形等化後再生信号に対して位相同期処理が行われるようにすればよい。
また、上記第1実施形態では、複数の格納素子70A1(図15参照)が内部メモリ71(図7参照)によって実現され、複数の格納素子92A1(図11参照)が内部メモリ93(図8参照)によって実現される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、運用段階遅延格納部70Aに代えて、CPU70とは別体の回路として、複数の格納素子70A1が直列に接続されることによって実現される遅延回路を用いてもよい。また、例えば、学習段階遅延格納部92Aに代えて、CPU92とは別体の回路として、複数の格納素子92A1が直列に接続されることによって実現される遅延回路を用いてもよい。
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、読取ヘッド16を例示したが、本第2実施形態では、テープヘッド(例えば、図27に示す磁気ヘッド112)によって多チャンネルでの記録と読取(すなわち、再生)とが行われる形態例について説明する。なお、本第2実施形態では、上記第1実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
例えば、テープヘッドには、記録用及び読取用にそれぞれ32個の磁気素子(例えば、図27及び図28に示すデータ用磁気素子DRW)が搭載されている。これにより、数個程度の磁気素子が搭載されているテープヘッドに比べ、高いデータ転送レートでの記録及び読み取りを可能としている。しかし、磁気素子間での性能ばらつきが大きい問題がある。磁気素子間での性能ばらつきが大きくなる要因としては、例えば、テープヘッド製造時の製造公差、及び、テープヘッドを繰り返し使用することに起因する経時劣化の度合いのばらつきが考えられる。
テープヘッドを繰り返し使用することに起因する経時劣化としては、例えば、磁気テープMTに含まれる研磨剤粒子により生じた磁気素子の摩耗及び傷、並びに、磁気テープMT上の突起粒子との物理的な衝突に繰り返し晒されたことによる磁気性能の劣化等が挙げられる。
これらの劣化は、磁気テープMTの使用時の偶発的な事象(例えば、磁気テープMT内に不規則に存在する異物及び/又は突起との衝突)の積み重ねに影響される。そのため、特に、テープヘッドを繰り返し使用することにより経時劣化したテープヘッドにおいては、複数の磁気素子間での性能に大きなばらつきが生じる。劣化した磁気素子では、再生信号の非線形性の増加により信号対ノイズ比が低下する。そのため、特に、経時劣化したテープヘッドにおいては磁気素子間での信号対ノイズ比の差が大きくなる。
磁気テープドライブ10をストレージシステムとして適正に機能させるためには、全ての記録用磁気素子及び全ての読取用磁気素子において、ストレージシステムで許容される最低限の信号対ノイズ比を確保することが必要となる。そのため、大容量のテープシステムの信頼性を向上させるためには、特に、劣化の度合いが大きく、非線形性が増大した磁気素子における再生信号(例えば、線形的な波形等化に有効なFIRフィルタでは対応できない非線形性の再生信号)の品質の改善が重要となる。
このように、磁気素子の劣化は再生信号の非線形性の増大に起因するところが大きいため、多チャンネルでの記録と読取とが行われる場合であったとしても、例えば、図25に示すように、上記第1実施形態と同様に、第1読取環境条件~第N読取環境条件の各々に従って生成されたテスト再生信号に基づいて、非線形フィルタの一例であるニューラルネットワーク108(図9参照)が磁気素子毎に適した特性に最適化されることが有効である。これにより、磁気素子間の信号品質のばらつきを低減することが可能となる。
また、再生信号の品質の劣化の度合いは、磁気素子とメディアの組み合わせによっても変わる。これは、例えば、テープヘッドを繰り返し使用することにより記録の性能が低下した磁気素子を用いた場合、保磁力が小さい磁性粒子を用いたメディア(例えば、磁気テープ)においては、それほど再生信号の品質は変化しないが、保磁力が高い磁性粒子のメディアでは、記録不良により再生信号に顕著な品質の劣化が生じる。
そのため、異なるテープヘッドとメディアの組み合わせでメディアのデータを再生する場合、その都度、上述の非線形フィルタ(例えば、ニューラルネットワーク108)の最適化が必要となる。これには、磁気テープMT上に非線形フィルタを最適化させるための領域(例えば、図26に示す特定領域116)を、ユーザが用いるデータを記録する領域とは別に確保した上で、非線形フィルタを最適化させるための領域に、教師データ110(図9参照)の基になる既知のパターン(例えば、図26及び図27に示す特定パターン116A)を記録し、再生信号(例えば、図28に示すテスト再生信号系列)の特性に基づいて、その都度、非線形フィルタを最適化する方法が有効である。
これにより、例えば、特定のテープヘッドとメディアとの組み合わせで最適化された非線形フィルタを、その他のテープヘッドとメディアとの組み合わせでも流用して使用する場合に比べ、再生信号の品質を向上させることが可能となる。
また、上述したように、テープヘッドには、複数の磁気素子が搭載されており、これにより、数個程度の磁気素子が搭載されているテープヘッドに比べ、高いデータ転送レートでの記録及び読み取りを可能としている。これを実現するためには、磁気テープMTを高速で搬送する磁気テープドライブ10が必要となる。
一方、図6に示すように、磁気テープMTを高速で搬送させ、データを磁気テープMTに記録する場合、読取素子16Aが生成する記録磁界の立ち上がり時間が遅れるため、ビットの記録位置のずれが生じる。ずれ量が大きいほど、再生信号の非線形性は大きくなる。そのため、本第2実施形態では、上述の非線形フィルタであるニューラルネットワーク108(図9参照)が、磁気テープMTの走行速度に応じて最適化されるようにしている。以下、この場合の形態例について、具体的に説明する。
本第2実施形態では、一例として図25に示すように、走行速度条件の一例として、磁気テープMTへのデータの記録時、すなわち、磁気テープMTに対して記録が行われる場合の磁気テープMTの走行速度(すなわち、磁気テープMTが走行している速度)に関する条件が適用されている。走行速度の関する条件とは、例えば、走行速度そのものであってもよいし、送出モータ20及び巻取モータ24の回転駆動を制御する信号(すなわち、走行速度を実現するために要する送出モータ20及び巻取モータ24を制御する信号)であってもよい。磁気テープMTの走行速度の一例としては、例えば、2m/sから7m/sまでの速度が挙げられる。例えば、第1読取環境条件から第N読取環境条件に含まれる各走行速度条件は、互いに異なる走行速度に関する条件であってもよい。
なお、第1読取環境条件から第N読取環境条件は、複数の磁気ヘッド112及び/又は複数の磁気テープドライブ10の使用状況及び/又は使用環境に応じて変更されてもよいし、経時的に変更されるようにしてもよいし、ユーザ等から与えられた指示に応じて変更されるようにしてもよい。また、第1読取環境条件から第N読取環境条件は、例えば、磁気ヘッド112毎、磁気素子ユニット120毎(図27参照)、又は磁気テープドライブ10毎に対応付けられていてもよい。そして、第1読取環境条件から第N読取環境条件は、例えば、少なくとも1台の磁気テープドライブ10と通信可能なメインフレーム又はクラウドサーバ等のホストコンピュータ(図示省略)の記憶装置に記憶されていてもよい。この場合、磁気テープドライブ10のUI系装置26(図1参照)によって受け付けられた指示、テスト再生信号供給装置102に対して直接的又は間接的に与えられた指示、又は、ホストコンピュータに対して直接的又は間接的に与えられた指示に従って、ホストコンピュータの記憶装置に記憶されている複数の読取環境条件のうちの磁気ヘッド112又は磁気テープドライブ10に対応する読取環境条件に基づいて、テスト再生信号供給装置102によってテスト再生信号が生成されるようにしてもよい。また、ホストコンピュータの記憶装置に記憶されている複数の読取環境条件のうち、磁気テープドライブ10のUI系装置26(図1参照)によって受け付けられた指示、テスト再生信号供給装置102に対して直接的又は間接的に与えられた指示、又は、ホストコンピュータに対して直接的又は間接的に与えられた指示に従って選択された読取環境条件に基づいて、テスト再生信号供給装置102によってテスト再生信号が生成されるようにしてもよい。また、ホストコンピュータから取得された読取環境条件が記憶媒体(例えば、カートリッジメモリ122(図30参照)及び/又は磁気テープMTのBOT領域114(図26参照)等)に書き込まれてもよく、記憶媒体に記憶されている読取環境条件に応じたテスト再生信号がテスト再生信号供給装置102によって生成されるようにしてもよい。
また、互いに異なる複数の走行速度条件(例えば、第1読取環境条件から第N読取環境条件に含まれる複数の走行速度条件)は、複数の磁気ヘッド112及び/又は複数の磁気テープドライブ10の使用状況に応じて変更されてもよいし、経時的に変更されるようにしてもよいし、ユーザ等から与えられた指示に応じて変更されるようにしてもよい。また、複数の走行速度条件は、磁気ヘッド112毎、磁気素子ユニット120毎(図27参照)、又は磁気テープドライブ10毎に対応付けられていてもよい。そして、複数の走行速度条件は、例えば、少なくとも1台の磁気テープドライブ10と通信可能なメインフレーム又はクラウドサーバ等のホストコンピュータ(図示省略)の記憶装置に記憶されていてもよい。この場合、磁気テープドライブ10のUI系装置26(図1参照)によって受け付けられた指示、テスト再生信号供給装置102に対して直接的又は間接的に与えられた指示、又は、ホストコンピュータに対して直接的又は間接的に与えられた指示に従って、ホストコンピュータの記憶装置に記憶されている複数の走行速度条件のうちの磁気ヘッド112又は磁気テープドライブ10に対応する走行速度条件に基づいて、テスト再生信号供給装置102によってテスト再生信号が生成されるようにしてもよい。また、ホストコンピュータの記憶装置に記憶されている複数の走行速度条件のうち、磁気テープドライブ10のUI系装置26(図1参照)によって受け付けられた指示、テスト再生信号供給装置102に対して直接的又は間接的に与えられた指示、又は、ホストコンピュータに対して直接的又は間接的に与えられた指示に従って選択された走行速度条件に基づいて、テスト再生信号供給装置102によってテスト再生信号が生成されるようにしてもよい。また、ホストコンピュータから取得された走行速度条件が記憶媒体(例えば、カートリッジメモリ122(図30参照)及び/又は磁気テープMTのBOT領域114(図26参照)等)に書き込まれてもよく、記憶媒体に記憶されている読取環境条件に応じたテスト再生信号がテスト再生信号供給装置102によって生成されるようにしてもよい。
また、図25に示す例では、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、及びA/D変換器条件も示されているが、本第2実施形態において、これらの条件は、あってもなくてもよい。以下では、錯綜を回避するため、読取ヘッド条件、磁気テープ条件、及びA/D変換器条件がなく、走行速度条件のみに従ってテスト再生信号が生成される場合について説明する。
一例として図26に示すように、本第2実施形態では、上記第1実施形態で説明した読取ヘッド16に代えて、磁気ヘッド112が適用されている。磁気ヘッド112は、磁気テープMTからデータを読み取る。磁気テープMTは、BOT領域114を有する。BOT領域114は、磁気テープMTの先頭に設けられたデータバンドである。BOT領域114は、特定領域116及び磁気テープカートリッジ関連情報領域118を有する。特定領域116及び磁気テープカートリッジ関連情報領域118は隣接しており、磁気テープMTの先頭側から特定領域116及び磁気テープカートリッジ関連情報領域118の順に配列されている。
特定領域116には、磁気ヘッド112によって読み取られるデータとして特定パターン116Aが記録されている。特定パターン116Aに記録されているデータは、理想的な再生信号系列である。理想的な再生信号系列は、例えば、教師データ110(図9参照)としても用いられる。
磁気テープカートリッジ関連情報領域118には、磁気テープカートリッジ12に関する情報(例えば、磁気テープMTの種類を示す情報、磁気テープMTの本体部分に記憶されている情報の概要、及び/又は、磁気テープカートリッジ12に収容されている機器に関する情報等)が記録されている。
一例として図27に示すように、磁気ヘッド36は、ホルダ118及び磁気素子ユニット120を備えている。磁気素子ユニット120は、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ118によって保持されている。磁気素子ユニット120は、サーボ読取素子SR及び複数のデータ用磁気素子DRWを有する。図27に示す例では、サーボ読取素子SRとして、サーボ読取素子SR1及びSR2が例示されている。以下では、説明の便宜上、特に区別して説明する必要がない場合、サーボ読取素子SR1及びSR2をサーボ読取素子SRと表記する。
サーボ読取素子SRは、サーボバンドSBに対応する位置に設けられている。図27に示す例では、サーボ読取素子SR1は、磁気テープMTのテープ幅方向の一端部のサーボパターン32に対向する位置に配置されている。サーボ読取素子SR2は、磁気テープMTのテープ幅方向の他端部のサーボパターン32に対向する位置に配置されている。サーボ読取素子SR1は、順方向又は逆方向に走行している磁気テープMTのテープ幅方向の一端部のサーボパターン32を読み取り、サーボ読取素子SR2は、順方向又は逆方向に走行している磁気テープMTのテープ幅方向の他端部のサーボパターン32を読み取る。なお、磁気ヘッド112は、サーボ読取素子SRによって読み取られたサーボパターン32に従ってテープ幅方向に移動する。上記第1実施形態で説明したように、磁気ヘッド112のテープ幅方向への移動は、移動機構40(図3参照)によって実現される。
複数のデータ用磁気素子DRWは、磁気テープドライブ10がデフォルトの状態で、トラック領域30に対向する位置に配置されている。また、上述したように磁気ヘッド112がサーボパターン32に従ってテープ幅方向に移動することによって、複数のデータ用磁気素子DRWは、トラック領域30上の指定された位置に配置される。
複数のデータ用磁気素子DRWは、順方向又は逆方向に走行している磁気テープMTにデータを記録したり、順方向又は逆方向に走行している磁気テープMTからデータを読み取ったりする。
一例として図28に示すように、磁気素子ユニット120は、第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGを有する。磁気素子ユニット120の一端には、サーボ読取素子SR1が位置しており、磁気素子ユニット120の他端には、サーボ読取素子SR2が位置している。
図28に示す例では、磁気素子ユニット120に含まれる複数の磁気素子として、サーボ読取素子SRと複数のデータ用磁気素子DRWとが示されている。データ用磁気素子DRWは、第1データ記録素子DW1、第2データ記録素子DW2、及びデータ読取素子DRを有する。
第1データ記録素子群DWG1には、複数の第1データ記録素子DW1が含まれている。第2データ記録素子群DWG2には、複数の第2データ記録素子DW2が含まれている。データ読取素子群DRGには、複数のデータ読取素子DRが含まれている。
第1データ記録素子DW1及び第2データ記録素子DW2の各々はトラック領域30(図27参照)にデータを記録する。データ読取素子DRはトラック領域30(図27参照)からデータを読み取る。なお、以下では、特に区別して説明する必要がない場合、第1データ記録素子DW1及び第2データ記録素子DW2をデータ記録素子DWと称する。
第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGは、磁気テープMTの全長方向に沿って巻取リール22(図1参照)側からカートリッジリールCR(図1参照)側にかけて、第1データ記録素子群DWG1、データ読取素子群DRG、及び第2データ記録素子群DWG2の順に一定の間隔を空けて配列されている。ここで、一定の間隔とは、例えば、データ読取素子DRとデータ読取素子DWとの間でクロストークが生じない間隔として実機による試験及び/又はコンピュータシミュレーション等により予め定められた間隔を指す。また、ここで、「一定」とは、完全な一定を意味する他に、本開示の技術が属する技術分野で許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨を逸脱しない範囲内の誤差を含んだ略一定も意味する。
サーボ読取素子SRは、第1サーボ読取素子SRa、第2サーボ読取素子SRb、及び第3サーボ読取素子SRcを有する。第1サーボ読取素子SRa、第2サーボ読取素子SRb、及び第3サーボ読取素子SRcは、磁気テープMTの全長方向の巻取リール22側からカートリッジリールCR側にかけて第1サーボ読取素子SRa、第2サーボ読取素子SRb、及び第3サーボ読取素子SRcの順に設けられている。
なお、ここでは、第1サーボ読取素子SRa、第2サーボ読取素子SRb、及び第3サーボ読取素子SRcを例示しているが、本開示の技術はこれに限定されず、第1サーボ読取素子SRa、第2サーボ読取素子SRb、及び第3サーボ読取素子SRcのうちの1つ又は2つであってもよい。
第1データ記録素子群DWG1は、サーボ読取素子SR1の第1サーボ読取素子SRa、サーボ読取素子SR2の第1サーボ読取素子SRa、及び複数の第1データ記録素子DW1(例えば、32個の第1データ記録素子DW1)を有する。複数の第1データ記録素子DW1は、サーボ読取素子SR1の第1サーボ読取素子SRa側からサーボ読取素子SR2の第1サーボ読取素子SRa側にかけて、直線状に配列されている。
第2データ記録素子群DWG2は、サーボ読取素子SR1の第3サーボ読取素子SRc、サーボ読取素子SR2の第3サーボ読取素子SRc、及び複数の第2データ記録素子DW2(例えば、32個の第2データ記録素子DW2)を有する。複数の第2データ記録素子DW2は、サーボ読取素子SR1の第3サーボ読取素子SRc側からサーボ読取素子SR2の第3サーボ読取素子SRc側にかけて、直線状に配列されている。
データ読取素子群DRGは、サーボ読取素子SR1の第2サーボ読取素子SRb、サーボ読取素子SR2の第2サーボ読取素子SRb、及び複数のデータ読取素子DR(例えば、32個のデータ読取素子DR)を有する。複数のデータ読取素子DRは、サーボ読取素子SR1の第2サーボ読取素子SRb側からサーボ読取素子SR2の第2サーボ読取素子SRb側にかけて、直線状に配列されている。
磁気素子ユニット46において、データ読取素子DRが磁気テープMTの全長方向に沿って第1データ記録素子DW1と第2データ記録素子DW2とで挟まれる構造にされているのは、データ読取素子DRに対して単にトラック領域30(図27参照)からデータを読み取らせるだけでなく、ベリファイを実現するためである。例えば、磁気テープMTを磁気テープカートリッジ10から引き出す場合(磁気テープMTの走行方向が順方向の場合)、第2データ記録素子DW2がデータトラックDTにデータを記録した後に、データ読取素子DRに対して、第2データ記録素子DW2によってデータトラックDTに記録されたデータをエラーチェック用に読み取らせる。また、磁気テープMTをテープカートリッジ10に戻す場合(磁気テープMTの走行方向が逆方向の場合)、第1データ記録素子DW1がデータトラックDTにデータを記録した後に、データ読取素子DRに対して、第1データ読取素子DW1によってトラック領域30(図27参照)に記録されたデータをエラーチェック用に読み取らせる。
本第2実施形態では、制御装置18によって送出モータ20及び巻取モータ24の回転駆動が制御されることで磁気テープMTの走行速度が調整される。図28に示す例では、制御装置18は、テスト再生信号供給装置102に接続されており、テスト再生信号供給装置102から与えられた指示に従って磁気テープMTの走行速度を制御する。
例えば、特定領域116に特定パターン116Aが記録される場合、テスト再生信号供給装置102は、読取環境条件に応じた指示、すなわち、走行速度条件等に応じた指示を制御装置18に付与することで、制御装置18に対して磁気テープMTの走行速度を制御させる。ここで用いられる走行速度条件は、磁気テープMTに対して記録が行われる場合の磁気テープMTの走行速度として予め定められた速度(例えば、2m/sから7m/sから指定された速度)に関する条件である。制御装置18は、テスト再生信号供給装置102から与えられた指示に従って、磁気テープMTに対して記録が行われる場合の磁気テープMTの走行速度として予め定められた速度となるように磁気テープMTの走行速度を制御する。
制御装置18は、走行速度条件等に従って磁気テープMTを順方向に走行させている状態で、第1データ記録素子群DWG1に含まれる複数の第1データ記録素子DW1(例えば、全ての第1データ記録素子DW1)を作動させることで、複数の第1データ記録素子DW1に対して、特定領域116に特定パターン116Aを記録させる。特定パターン116Aは、特定領域116において複数のデータ用磁気素子DRWの各々に対応する位置毎に記録される。そして、順方向においてデータ読取素子群DRGよりも上流側に配置された第1データ記録素子群DWG1に含まれる複数の第1データ記録素子DW1によって特定領域116に特定パターン116Aが記録される動作に並行して、制御装置18は、データ読取素子群DRGに含まれる複数のデータ読取素子DRを作動させることで、複数のデータ読取素子DRに対して特定領域116から特定パターン116Aを読み取らせる。
磁気素子ユニット120は、テスト再生信号供給装置102に接続されている。テスト再生信号供給装置102は、複数のデータ読取素子DRによって特定パターン116Aが読み取られた複数の読取結果(すなわち、複数のデータ読取素子DRの各々によって読み取られた読取結果)を取得する。データ読取素子DRによる特定パターン116Aの読取結果は、時系列のデータ(すなわち、時系列の再生信号)であるテスト再生信号系列としてテスト再生信号供給装置102によって取得される。
テスト再生信号供給装置102は、走行速度条件毎にテスト再生信号系列を取得し、取得したテスト再生信号系列をコンピュータ90に供給することで、上記第1実施形態と同様に、走行速度条件毎にニューラルネットワーク108を学習させ、走行速度条件毎に学習済みモデル82を生成する。すなわち、ニューラルネットワーク108は、複数の読取結果に基づいて、走行速度条件について複数のデータ読取素子DRに対して適した特性に最適化される。
ここで、走行速度条件に適した特性とは、例えば、波形等化された再生信号系列におけるSNRを最大にする特性、又は、波形等化された再生信号系列と理想的なテスト再生信号系列との差分に相当する2乗平均誤差(すなわち、MSE)を最小にする特性を指す。
上記の例では、走行速度条件等に従って磁気テープMTを順方向に走行させている状態で、複数の第1データ記録素子DW1に対して、特定領域116に特定パターン116Aを記録させているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、走行速度条件等に従って磁気テープMTを逆方向に走行させている状態で、複数の第2データ記録素子DW2に対して、特定領域116に特定パターン116Aを記録させるようにしてもよい。
この場合、逆方向においてデータ読取素子群DRGよりも上流側に配置された第2データ記録素子群DWG2に含まれる複数の第2データ記録素子DW2によって特定領域116に特定パターン116Aが記録される動作に並行して、制御装置18は、データ読取素子群DRGに含まれる複数のデータ読取素子DRを作動させることで、複数のデータ読取素子DRに対して特定領域116から特定パターン116Aを読み取らせるようにすればよい。
ニューラルネットワーク108が複数の読取結果に基づいて複数のデータ読取素子DRに対して適した特性に最適化されることによって得られた学習済みモデル82に関するパラメータ(例えば、学習済みモデル82に含まれる結合荷重及び/又は閾値等)は、磁気ヘッド112によって磁気テープMTに記録されるようにしてもよい。この場合、例えば、図29に示すように、磁気ヘッド112は、磁気テープカートリッジ関連情報領域118に学習済みモデル82に関するパラメータを記録する。
なお、図29に示す例では、学習済みモデル82に関するパラメータがBOT領域114の磁気テープカートリッジ関連情報領域118に記録される形態例が示されているが、これはあくまでも一例に過ぎず、BOT領域114に加えて、又は、BOT領域114に代えて、磁気テープMTの後尾に設けられたEOT領域(図示省略)に学習済みモデル82に関するパラメータが記録されるようにしてもよい。
また、例えば、図30に示すように、磁気テープカートリッジ12に、非接触記憶媒体としてカートリッジメモリ122が搭載されている場合、学習済みモデル82に関するパラメータをカートリッジメモリ122に記憶させてもよい。一般的に、カートリッジメモリ122には、磁気テープMTに関する情報が記憶されている。磁気テープMTに関する情報とは、例えば、磁気テープカートリッジ12を管理する管理情報を指す。管理情報には、例えば、カートリッジメモリ122に関する情報、磁気テープカートリッジ12を特定可能な情報、磁気テープMTの記録容量、磁気テープMTに記録されているデータの概要、データの項目、及びデータの記録形式等を示す情報が含まれている。
カートリッジメモリ122は、非接触式読み書き装置124との間で非接触通信を行う。非接触式読み書き装置124としては、例えば、磁気テープカートリッジ12の製造工程で使用される非接触式読み書き装置、及び、磁気テープドライブ10内で使用される非接触式読み書き装置が挙げられる。
以上説明したように、本第2実施形態によれば、磁気テープMTの異なる走行速度(ここでは、一例として、2m/sから7m/sまでの走行速度)の条件下で、それぞれ最適化された学習済みモデル82(図13参照)が予め生成されるので、磁気テープMTの走行速度に対応した学習済みモデル82を用いることで、全速度域(例えば、2m/sから7m/sまでの速度域)において、再生信号の非線形性を低減することができる。この結果、データ用磁気素子DRW間(すなわち、データ読取素子DR間)の再生信号の品質のばらつきを低減させることが可能となる。
なお、上記第2実施形態では、第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGを例示したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、順方向のみに沿って特定パターン116Aが記録され、かつ、読み取られるのであれば、第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGのうち、第2データ記録素子群DWG2は不要である。また、例えば、逆方向のみに沿って特定パターン116Aが記録され、かつ、読み取られるのであれば、第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGのうち、第1データ記録素子群DWG1は不要である。
また、上記第2実施形態では、第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGが磁気ヘッド112に纏めて搭載されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGが別々のヘッドに搭載されていてもよい。この場合も、磁気テープMTの走行方向に沿って第1データ記録素子群DWG1、第2データ記録素子群DWG2、及びデータ読取素子群DRGが配列される順は上記第2実施形態と同じである。
また、上記各実施形態では、ストレージ74に波形等化実行プログラム80が記憶されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、図25に示すように、波形等化実行プログラム80が記憶媒体200に記憶されていてもよい。記憶媒体200は、非一時的記憶媒体である。記憶媒体200の一例としては、SSD又はUSBメモリなどの任意の可搬型の記憶媒体が挙げられる。
記憶媒体200に記憶されている波形等化実行プログラム80は、等化器60にインストールされる。CPU70は、波形等化実行プログラム80に従って波形等化実行処理を実行する。なお、図25に示す例では、CPU70は、単数のCPUであるが、複数のCPUであってもよい。
また、通信網(図示省略)を介して磁気テープドライブ10に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部に波形等化実行プログラム80を記憶させておき、磁気テープドライブ10の要求に応じて波形等化実行プログラム80がダウンロードされ、等化器60にインストールされるようにしてもよい。
なお、等化器60に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部、又はストレージ74に波形等化実行プログラム80の全てを記憶させておく必要はなく、波形等化実行プログラム80の一部を記憶させておいてもよい。
上記第1実施形態で説明した波形等化実行処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、波形等化実行処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA、PLD、又はASICなどの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路が挙げられる。何れのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、何れのプロセッサもメモリを使用することで波形等化実行処理を実行する。
波形等化実行処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、波形等化実行処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、波形等化実行処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoCなどに代表されるように、波形等化実行処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、波形等化実行処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路を用いることができる。また、上記の波形等化実行処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。