JP7360033B2 - 鋼の薄肉鋳片及び鋼の薄肉鋳片製造方法 - Google Patents
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連続鋳造に適用可能な、接種による等軸晶化技術として、以下の技術が提案されている。なお、特許文献1、2は、薄肉鋳造ではなく、鋳片厚みが数十mm以上である固定鋳型振動式連続鋳造を対象としている。特許文献3~5は薄肉鋳片が対象である。
Mg:0.0001~0.0030%、
REM:0.0001~0.0300%
を下記(1)式を満たすように含有し、
鋳片表層から1/6厚部の表層と平行な断面において、
最大長さが1μm以上5μm以下である介在物が50個/mm 2 以上分布しており、
前記介在物の平均組成(質量%)が下記(2)式~(4)式を満たし、
前記介在物の少なくとも10個を任意に選び、個別の介在物の断面全体の平均MgO含有率(MgO) M を測定し、
当該介在物の(MgO) M の2倍以上である領域(a)と、2倍未満の領域(b)とに区分し、領域(a)が単一の場合はその領域の周長の1/2以上が、複数ある場合はそのうちの最大面積の領域の周長の1/2以上が、領域(b)に被覆されている介在物の個数が、任意に選んだ前記介在物個数の半数以上を占めており、
鋳片厚みに対する等軸晶帯の厚みの比率が67%以上であることを特徴とする鋼の薄肉鋳片。
0.43≦[REM]/[Mg] ・・・(1)
上式で、[元素記号]は当該元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
(Al 2 O 3 )+(REM 2 O 3 )+(MgO)≧75 ・・・(2)
(MgO)>0 ・・・(3)
0.03≦(REM 2 O 3 )/(MgO)≦100 ・・・(4)
溶鋼中にMgを添加した後にREMを添加し、
Mg:0.0001~0.0015%、
REM:0.0001~0.0300%
を(1)式を満たすように含有させ、
鋳片厚みに対する等軸晶帯の厚みの比率を67%以上とすることを特徴とする[1]に記載の鋼の薄肉鋳片の製造方法。
0.43≦[REM]/[Mg] ・・・(1)
REM2O3がδ-Feに対する接種核として作用するのはδ-Feとの格子整合性が良いためである。したがって本発明は、凝固初晶としてδ-Feが含まれる成分系(δ凝固鋼)を対象とする。一般的な炭素鋼であれば、[C]≦0.53%の場合がδ凝固鋼である。ステンレス鋼など合金元素が多い場合は、鋼成分に応じてδ凝固鋼であるか否かが決まる。凝固初晶にδ-Feが含まれるかは、状態図、あるいは計算状態図により知ることができる。例えばCrを11質量%以上含む、主相がオーステナイト相からなるステンレス鋼は、δ凝固鋼ではない。
Mgは、REM2O3の接種核としてのMgOを溶鋼中に生成するために添加する。MgOが溶鋼中に多数生成し分散する結果、多数のREM2O3を溶鋼中に分散させることができる。MgOを生成するために、下限値0.0001%以上を含有するように添加する必要がある。一方、上限値0.0030%を超えて含有するように添加しても、多量に核生成したMgOが凝集合体するので、MgOの個数密度は逆に減少する。このため、Mg濃度の上限値は0.0030%とする。なお、本発明で記載するMg濃度、[Mg]は溶存Mgと、介在物(主にMgO)を形成しているMgを合計した全Mg濃度である。
REMは、δ-Feの接種核として作用するREM2O3を生成するために添加する。ここでREM(Rare Earth Metal)は希土類元素を意味し、スカンジウムSc(原子番号21)、イットリウムY(原子番号39)およびランタノイド(原子番号57のランタンから原子番号71のルテシウムまでの15元素)の17元素の総称である。本実施形態に係る鋼材では、これらのうちから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有する。一般的に、REMとして、入手のし易さから、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)などから選ばれることが多い。
本発明では、Mg添加後にREMを添加する。これにより、溶鋼中に既に生成し多数分散しているMgOを接種核として、REM2O3が多数生成する。このようにして多数分散したREM2O3を接種核としてδ-Feが多数、核生成するので、高い鋳片等軸晶率が得られる。REM2O3を生成するために、REM濃度、[REM]は下限値0.0001%以上が必要である。一方、REM量増加に伴い、REM2O3の凝集合体が進行し個数密度が飽和するので、上限値0.0300%を超えて添加しても鋳片等軸晶率が飽和する。さらに、粗大化したREM2O3が製品表面疵やノズル閉塞の原因となる。そのため上限値を0.0300%とする。好ましくは0.0100%未満、さらに好ましくは0.0050%未満である。なお、本発明で記載するREM濃度、[REM]は溶存REMと、介在物(主にREM2O3)を形成しているREMを合計した全REM濃度である。
Mg添加後に溶鋼全体にわたってREM2O3を生成するために、0.43≦[REM]/[Mg]を満たす量のREMを添加する必要がある。この値は、MgとREMの脱酸力を比較し、MgOを還元するために必要なREM量から求めたものである。式(1)右辺が0.43未満ではREM2O3が生成しないか、もしくはREM合金を添加した直後にREM高濃度域が生じた一部領域に限ってREM2O3が生じるにとどまるので、溶鋼全体にREM2O3を生成できない。
鋳片の表層側ほど柱状晶が発達しやすく、内部は相対的に等軸晶が発達しやすいため、少なくとも片側鋳片表層からの距離が1/6厚で等軸晶化するための条件を満たせば、それより内部は等軸晶化するので、鋳片全厚に対する等軸晶率は67%以上を確保できる。そこで、本発明では、片側鋳片表層からの距離が1/6厚の、鋳片表層に平行な面において、δ-Feの等軸晶化に有効な接種核としての介在物のサイズ、個数密度、および組成を規定する。サイズと個数密度については、最大長さが1μm以上5μm以下である介在物が50個/mm2以上分布している必要がある。サイズが大きなものほど、δ-Feの接種核としての効果は高い。最大長さ1μm未満のものは、1μm以上のものよりも一般に個数は多いが、接種核としての作用は小さい。そのため、最大長さ1μm以上で規定する。一方、最大長さ5μmを超える介在物は個数が少なく、鋳片の等軸晶率に与える効果は小さいうえ、製品疵や割れ等の原因となるので好ましくないため、規定範囲から除外する。
そして、介在物の平均組成は、
(Al2O3)+(REM2O3)+(MgO)≧75 ・・・(2)
を満たす必要がある。(Al2O3)、(REM2O3)、(MgO)は介在物中の組成を質量%で表した値である。個々の介在物の組成にばらつきがあるほか、それぞれの介在物の観察断面に現れた組成が均一ではなく、必ずしも全体の平均組成でない場合もある。そのため、式(2)左辺は鋳片介在物の平均組成で規定する。介在物の平均組成を算出するためには、少なくとも10個以上の介在物について、観察断面における組成分布を分析し、各介在物の断面内における平均組成を算出し、次いで選択した10個以上の介在物の平均組成を分析することが好ましい。分析においては、介在物中のAl、REM、Mg元素の含有量を分析し、それら元素が上記式(2)左辺の酸化物を形成しているものとして当該酸化物の含有量を算出する。鋼中のREM量が多い場合、REMやMgに比べるとAlは脱酸力(酸化物生成力)が弱いので、Al2O3が還元される場合もあり得るので、(Al2O3)は0%の場合があり得る。式(2)の値が75%未満の場合として、例えばCaOを25%以上含有すると、溶鋼中で液相介在物となる可能性が考えられるが、液相介在物はδ-Feの接種核として作用しない。そのため、75%を下限値とする。
(MgO)>0 ・・・(3)
そして、式(3)とともに、MgOを核としてREM2O3が生成した後の介在物組成が式(4)を満たすことが好ましい。
0.03≦(REM2O3)/(MgO)≦100 ・・・(4)
式(4)の下限、0.03は、MgOやその周囲を覆っているREM2O3を球状と仮定し、MgOの密度:3.65g/cm3、REM2O3の密度:7.0g/cm3を用いて、介在物全体を覆っているREM2O3の厚みを算出すると、半径の0.5%の厚みで覆っている場合の質量比に相当する。REM2O3がMgOのかなりの表面を被覆している場合の目安になっていると考えられる。式(4)が上限、100を超えると、REM添加によりMgOがほぼ全て還元されていることを示す。この場合、MgOによるREM2O3の核生成を促進する効果が著しく消失するので、本発明の効果がほとんど得られない。
本発明の技術思想は、溶鋼中に微細に分散したMgOを接種核としてREM2O3の生成を促進することにより、多数のREM2O3を分散させることである。したがって前述のとおり、Mg添加後にREMを添加する。REMを先に添加してから、Mgを添加しても効果はない。そして、MgOを溶鋼中に均一分散させるために、Mg添加後に3分以上、溶鋼を撹拌することが好ましい。
次に、MgとREMの添加順序に応じて形成される介在物構造の特徴を説明する。
鋳造ロールの直径:1200mm
鋳造幅:800mm
鋳造厚み:平均2.0mm
鋳造速度:平均50m/min
鋳造雰囲気:Ar+N2
鋳造量:10トン
湯面レベル弧角:40deg
タンディッシュ内溶鋼の過熱度:液相線温度(平居の式から計算)を基準に20~40℃
鋳片をコイラーに巻き取る際の破断の有無を記した。破断せず巻き取ることができた鋳片は、室温まで冷却した後にコイラーからほどき、定常部1mを採取、酸洗し、巻取り時の横割れ長さを目視で測定した。結果は、鋳片1m当たりの表・裏面の横割れの合計長(cm)で表した。
得られた薄肉鋳片の1/4幅、1/2幅、3/4幅位置の断面の凝固組織を観察し、各位置の(等軸晶厚み)/(鋳片全厚み)×100(%)を算出し、3ヶ所の平均値を代表値とした。
鋳片表層から1/6厚部の、表層に平行な断面を、光学顕微鏡により倍率1000倍で60視野観察し、最大長さが1μm以上5μm以下の介在物個数を測定した。結果を個数密度(個/mm2)で表した。光学顕微鏡でなく、SEMで測定しても良い。
鋳片表層から1/6厚部の、表層に平行な断面において、最大長さが1μm以上5μm以下の介在物10個をランダムに選択し、各介在物の断面全体の平均組成をSEMに付属したEDS装置(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて分析し、10個の平均組成を求めた。検出元素のうち、脱酸元素のAl、Mg、REM、CaをそれぞれAl2O3、MgO、REM2O3、CaOに換算し、これら酸化物と、介在物中に含まれるSの合計質量に対する割合を算出して、それぞれの組成の質量%を実施例の表1に示すように、例えば(%REM2O3)や(%S)とした。
鋳片表層から1/6厚部の、表層に平行な断面において、最大長さが1μm以上5μm以下の介在物10個をランダムに選択し、各介在物の断面のMgO濃度分布を測定し、MgO濃度分布を示すマップを作成した。各介在物の断面全体の平均MgO濃度の2倍以上の領域(a)と2倍未満の領域(b)とに区分し、領域(a)が単一の場合はその領域の周長の1/2以上が、複数ある場合はそのうちの最大面積の領域の周長の1/2以上が、領域(b)に被覆されている介在物個数を数えた。
表2において、No.1~18は、本発明の実施例である。いずれも、表層から1/6厚部の介在物個数は50個/mm2以上であり、等軸晶率は67%以上であった。介在物の内部の領域(a)が領域(b)に被覆されている個数は半数以上を占めていた。その結果、鋳片巻取り時の破断は無く、巻取り鋳片1mあたりの割れ長さ合計長は10cm以下であった。
No.21はMg添加せず、REMのみを添加した例である。REM添加前の溶鋼中に、微細分散したMgOが無かったため、REM2O3の生成個数が少なく、鋳片の1/6厚部の最大長さが1μm以上5μm以下の介在物個数は50個/mm2未満であった。その結果、等軸晶率は42%と低く、巻取り時に破断が発生し、巻取り鋳片1mあたりの割れ合計長は10cmを超えた。Mgを添加しなかったため、ノイズレベル以上のMgは検出されなかった。したがって、MgO分布領域は観察されなかった。
2 ノズル
3 フィルター
4 鋳造ロール
5 サイド堰
8 溶鋼
9 薄肉鋳片
Claims (2)
- 凝固初晶がδ-Feである成分組成を有し、厚さが10mm以下である薄肉鋳片であって、
Mg:0.0001~0.0030%、
REM:0.0001~0.0300%
を下記(1)式を満たすように含有し、
鋳片表層から1/6厚部の表層と平行な断面において、
最大長さが1μm以上5μm以下である介在物が50個/mm 2 以上分布しており、
前記介在物の平均組成(質量%)が下記(2)式~(4)式を満たし、
前記介在物の少なくとも10個を任意に選び、個別の介在物の断面全体の平均MgO含有率(MgO) M を測定し、
当該介在物の(MgO) M の2倍以上である領域(a)と、2倍未満の領域(b)とに区分し、領域(a)が単一の場合はその領域の周長の1/2以上が、複数ある場合はそのうちの最大面積の領域の周長の1/2以上が、領域(b)に被覆されている介在物の個数が、任意に選んだ前記介在物個数の半数以上を占めており、
鋳片厚みに対する等軸晶帯の厚みの比率が67%以上であることを特徴とする鋼の薄肉鋳片。
0.43≦[REM]/[Mg] ・・・(1)
上式で、[元素記号]は当該元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
(Al 2 O 3 )+(REM 2 O 3 )+(MgO)≧75 ・・・(2)
(MgO)>0 ・・・(3)
0.03≦(REM 2 O 3 )/(MgO)≦100 ・・・(4) - 凝固初晶がδ-Feである成分組成を有する薄肉鋳片を双ロール式連続鋳造する際に、
溶鋼中にMgを添加した後にREMを添加し、
Mg:0.0001~0.0015%、
REM:0.0001~0.0300%
を(1)式を満たすように含有させ、
鋳片厚みに対する等軸晶帯の厚みの比率を67%以上とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の薄肉鋳片の製造方法。
0.43≦[REM]/[Mg] ・・・(1)
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