JP7367934B2 - 歯科用接着性組成物及び歯科用接着性組成物包装体 - Google Patents
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Description
<全体構成>
本発明の一実施形態に係る歯科用接着性組成物(以下、単に接着性組成物と呼称することもある。)は、齲蝕等により損傷を受けた歯牙を修復するために利用可能である。より詳細に、接着性組成物は、歯牙の損傷部に充填される歯科用充填材料(以下、単に充填材料と呼称する。)を、当該損傷部の表面を構成する歯質に接着するために利用可能である。
<詳細構成>
[(A)重合性単量体]
(A)重合性単量体は、1分子中に少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基を有する化合物である。本実施形態に係る歯科用接着性組成物では、(A)重合性単量体がラジカル重合することによって硬化する。(A)重合性単量体は、少なくとも(a1)酸性基含有重合性単量体と(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体とを含む。
(a1)酸性基含有重合性単量体は、従来の歯科用接着剤に使用される酸性基含有重合性単量体と特に変わる点は無く、1分子中に、重合性不飽和基に加え、少なくとも1つの酸性基を含む酸性の重合性単量体として構成される。(a1)酸性基含有重合性単量体は、歯質の脱灰効果や、歯質に対する高い浸透性向上効果を有し、充填修復材の歯質に対する接着性を良好なものとする。
多官能アクリルアミド系重合性単量体は、2以上のアクリルアミド基を含む重合性単量体であれば特に限定されないが、下記一般式(1)または(2)で表される多官能(メタ)アクリルアミド化合物を用いることが好適である。
(A)重合性単量体は、(a1)酸性基含有重合性単量体および(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体のみで構成することも可能である。しかしながら、(A)重合性単量体は、接着性組成物における歯質に対する接着性及び接着耐久性の観点から(a1)酸性基含有重合性単量体および(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体以外に、酸性基を含まない(a3)酸性基非含有重合性単量体を更に含むことが好適である。
(1)(a1)及び(a2)を、夫々が(a1):1~60質量部及び(a2)1~40質量部の範囲内で、且つ両者の合計が2~90質量部となる量含み、(a3)を10~98質量部含むことによって全体が100質量部となることが好ましく、
(2)(a1)及び(a2)を、夫々が(a1):5~30質量部及び(a2)2~50質量部の範囲内で、且つ両者の合計が7~80質量部となる量含み、(a3)を20~93質量部含むことによって全体が100質量部となることがより好ましく、
(3)(a1)及び(a2)を、夫々が(a1):10~20質量部及び(a2)5~30質量部の範囲内で、且つ両者の合計が15~50質量部となる量含み、(a3)を50~85質量部含むことによって全体が100質量部となることが最も好ましい。
(B)二価の銅化合物は、(C)過酸化物と充填材料に含まれる芳香族アミンとのレドックス反応を促進する作用を特に有効に得ることができる。したがって、接着性組成物では、(B)二価の銅化合物を必須の構成要素として含むことにより、化学重合型の硬化が促進されるため、充分な硬化が得られやすくなる。
(C)過酸化物は、酸化剤として機能する化合物である。過酸化物(C)は、(c1)有機過酸化物及び(c2)無機過酸化物の少なくとも一方を用いる。つまり、接着性組成物では、過酸化物(C)として、(c1)有機過酸化物又は(c2)無機過酸化物を単独で用いても、(c1)有機過酸化物及び(c2)無機過酸化物を併用してもよい。これにより、(C)過酸化物では、(A)重合性単量体の重合を促進する作用を有効に得ることができる。
(c1)有機過酸化物の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部~10質量部とし、0.5質量部~5質量部とすることが好ましい。この範囲を満足することにより、高い重合活性と、高い保存安定性を発揮することができる。(c1)有機過酸化物としては公知の化合物が制限なく使用できるが、代表的には、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートを挙げることができる。上記の有機過酸化物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(c2)無機過酸化物の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部~5質量部とし、0.05質量部~2質量部とすることが好ましい。この範囲を満足することにより、高い重合活性と、高い保存安定性を発揮することができる。(c2)無機過酸化物としては公知の化合物が制限なく使用できるが、代表的には、過炭酸塩、ペルオキソ二硫酸化合物、過リン酸塩、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムを挙げることができる。中でも、水分を多く含む環境下での重合活性の高さの観点から、ペルオキソ二硫酸化合物が好ましい。具体的には、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのペルオキソ二硫酸化合物などが挙げられ、特に、水溶性が高いことからペルオキソ二硫酸ナトリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウムが好ましく、入手の容易性も考慮するとペルオキソ二硫酸ナトリウムが最適である。これら無機過酸化物は、単独で又は2種以上を混合して用いてもかまわない。
(D)光重合開始剤は、光照射を受けて(A)重合性単量体のラジカル重合を開始させる化合物である。これにより、本実施形態に係る接着性組成物では、光重合型の硬化を進行させることが可能となる。接着性組成物は、(D)光重合開始剤として(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドを含む。
(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドは、単分子開裂型の高活性の光重合開始剤である。このため、(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドは、少量の光によっても(A)重合性単量体の光重合型の硬化を進行させることができる。(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドの配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部~10質量部とし、0.5質量部~8質量部とすることが好ましい。この範囲を満足することにより、高い重合活性、接着性を発揮することができる。(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドは、下記の式で表される化合物である。
上記式中、RD1は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、又はアシルオキシ基を表す。RD2~RD11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、又はアシルオキシ基を表す。
(D)光重合開始剤は、(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドのみで構成することも可能である。しかしながら、(D)光重合開始剤は、必要に応じ、(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイド以外の(d2)その他の光重合開始剤を更に含んでいてもよい。
(E)水としては、貯蔵安定性、生体適合性及び接着性の観点で有害な不純物を実質的に含まない事が好ましく、例としては脱イオン水、蒸留水等が利用できる。(E)水の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、1質量部~50質量部とし、2質量部~30質量部とすることが好ましく、5質量部~20質量部とすることが特に好ましい。
(F)有機溶媒としては、公知の有機溶媒であればいずれも制限無く用いることができるが、通常は、沸点が100℃未満の揮発性の高い有機溶媒を用いることが好ましい。(F)有機溶媒の配合割合は、(A)重合性単量体100質量部に対して、10質量部~300質量部とし、30質量部~200質量部とすることが好ましい。
接着性組成物は、必要に応じて、上記の成分以外の各種添加剤などの成分を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、(G)多価金属化合物、(H)フィラー、着色剤、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエンなどの重合禁止剤などが挙げられる。
接着性組成物では、(G)多価金属化合物を配合するのが、接着性及び保存安定性の観点から好ましい。(G)多価金属化合物が(a1)酸性基含有重合性単量体と架橋することによって、より高い接着強度の接着層が得られる。また、接着性組成物では、(G)多価金属化合物を予め(a1)酸性基含有重合性単量体と架橋させることで、保管時に(a1)酸性基含有重合性単量体と(B)二価の銅化合物との架橋が生じにくくなる。したがって、接着性組成物では、(a1)酸性基含有重合性単量体と(B)二価の銅化合物との架橋により生成される銅化合物の析出が抑えられる。これにより、この接着性組成物では、保管時における銅化合物の析出による接着強度の低下を抑制することができる。(G)多価金属化合物の配合割合は、(a1)酸性基含有重合性単量体1molに対して、0.01mol~1molとすることが好ましい。
(H)フィラーは、接着性組成物を硬化して得られる接着層における機械的強度や操作性を向上させるために配合される。(H)フィラーとしては、特に制限はなく、公知の無機フィラー、有機フィラー、無機-有機複合フィラーを用いることができる。
本実施形態に係る接着性組成物を適用する充填材料は、光硬化型であり、かつ重合促進剤として芳香族アミンを含有していればよい。しかしながら、充填材料は、光重合開始剤としてα-ジケトンを更に含有していることが好ましい。α-ジケトンは、本実施形態に係る接着性組成物に(D)光重合開始剤として含まれる(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドと光の吸収波長が若干ずれている。このため、α-ジケトンを含有する充填材料では、照射光のうち(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイドの吸収波長の光がα-ジケトンに吸収されずに透過されやすくなる。これにより、接着性組成物では、光重合型の硬化が促進される。
本実施形態に係る歯科用接着性組成物包装体(以下、単に接着性組成物包装体と呼称する。)は、本実施形態に係る接着性組成物包装体の商品形態であり、歯科用接着性組成物と、当該歯科用接着性組成物を収容する単一の遮光性容器と、を有する。上記のとおり、歯科用接着性組成物は、1液型の構成において高い保存安定性が得られる。このため、予め調製された当該歯科用接着性組成物を単一の遮光容器に充填した接着性組成物包装体を商品形態とすることができる。
<物質の略称>
まず、以下に、参考例、実施例及び比較例において使用した物質の略称について説明する。
・(a1)酸性基含有重合性単量体
MDP:10-メタクリルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
SPM:2-メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート及びビス(2-メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートをモル比1:1の割合で混合した混合物
・(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体
TADETA:N,N’,N’’-トリアクロイルジエチレントリアミン
TATETA:N,N’,N’’-トリアクロイルトリエチレンテトラミン
TOTDBA:N,N’-(4,7,10-トリオキサトリデカメチレン)-ビスアクリルアミド
・(a3)酸性基非含有重合性単量体
BisGMA:2.2’ ―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2―ヒドロキシエチルメタクリレート。
CuA:酢酸銅(II)一水和物
CuAA:アセチルアセトン銅(II)。
・(c1)有機過酸化物
BPT:t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート
BPB:t-ブチルパーオキシベンゾエート
BPE:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート
TMBHP:1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
・(c2)無機過酸化物
NPS;ペルオキソ二硫酸ナトリウム
KPS;ペルオキソ二硫酸カリウム。
・(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイド
BTPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
・(d2)その他の光重合開始剤
CQ:カンファーキノン。
AlPO:アルミニウムトリイソプロポキシド
CaPO:カルシウムジイソプロポキシド。
・ヒュームドシリカ
DM-30:平均一次粒子径7nm、表面処理剤:ジメチルジクロロシラン(株式会杜トクヤマ製)
DM-20:平均一次粒子径12nm、表面処理剤:ジメチルジクロロシラン(株式会杜トクヤマ製)。
BMOV:オキソバナジウム(IV)ビス(マルトラート)
DMBE:4-ジメチルアミノ安息香酸エチル
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン。
<参考例1~29、比較例1~9>
(接着性組成物の作製)
参考例1~29及び比較例1~9に係る接着性組成物を作製した。各接着性組成物の成分及び配合割合は、下記の表1~3に示すとおりである。表1には参考例1~20について示し、表2には参考例21~29について示し、表3には比較例1~9について示している。なお、下記の表1~3における括弧内の数値は、(A)重合性単量体100質量部に対する各成分の質量部を示している。
また、以下に示す「長期保管後の外観評価」に従い保存安定性を評価した。
抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、象質平面を削り出した被着体を準備した。
表1~3に示す各実施及び各比較例の接着性組成物を調製した後に容器内に密封し、更に50℃の恒温槽中で3週間保管した。続いて、恒温槽から取り出した接着性組成物の外観を目視観察し、保管前後における変化の有無やゲル化などの変性について評価した。結果を下記の表4及び表5に示す。
表4に示す参考例1~29は1液型基本歯科用接着性組成物を用いたものである。いずれの場合においても、接着試験結果は初期、保管後共に良好であった。また、保管後の外観変化においても大きな変化は確認されなかった。
(接着性組成物の作製)
1液型基本歯科用接着性組成物の参考例1において、使用した(A)重合性単量体100質量部の組成、並びに配合する(B)成分の種類と配合量、(c1)成分の種類と配合量、(c2)成分の種類と配合量、(G)成分の種類と配合量{(a1)酸性基含有重合性単量体1molに対する(G)多価金属化合物のmol}、及び(H)成分の種類と配合量を、表6に示すように変更する以外は同様にして、実施例1~18に係る接着性組成物を作製した。
表7に示す実施例1~18は本発明の構成を満足するよう配合された接着性組成物を用いたものである。いずれの場合においても、参考例として示した1液型基本歯科用接着性組成物と同様に、接着試験結果は初期、保管後において良好であり、また、保管後の外観変化においてもゲル化等の大きな変化は確認されなかった。さらに、これら実施例では、表8に示される(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体を含まない1液型基本歯科用接着性組成物の例である比較例10及び11(参考例1及び2)と比べて、耐久試験後の接着強度が向上していることが分かる。
Claims (7)
- 芳香族アミンを含有する光硬化型の充填材料を歯質に接着するための1液型の歯科用接着性組成物であって、
1質量部~40質量部の(a1)酸性基含有重合性単量体と、1質量部~60質量部の(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体と、を含む100質量部の(A)重合性単量体と、
0.05質量部~2質量部の(B)二価の銅化合物と、
0.1質量部~10質量部の(c1)有機過酸化物と、0.01質量部~5質量部の(c2)無機過酸化物と、の少なくとも一方を含む(C)過酸化物と、
0.1質量部~10質量部の(d1)ビスアシルフォスフィンオキサイド、を含む(D)光重合開始剤と、
1質量部~50質量部の(E)水と、
10質量部~300質量部の(F)有機溶媒と、
を含有し、かつ還元剤を含有しない
歯科用接着性組成物。 - 前記(a2)多官能アクリルアミド系重合性単量体が、下記一般式(1)示される化合物及び/又は下記一般式(2)で示される化合物である、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
(式中、複数存在するR11は、夫々独立に、水素原子またはメチル基を表し、複数存在するCmH2mユニット炭素鎖長を表すmは、夫々独立に、2~4の整数であり、nは、2~4の整数であり、kは、0または1である。)
(式中、複数存在するR21は、夫々独立に、水素原子またはメチル基を表し、複数存在するR31は、夫々独立に、-CH2CH(R21)CH2-または-CH2CH2-を表し、pは、0または1であり、複数存在するCsH2sユニット炭素鎖長を表すsは、夫々独立に、2~6の整数である。) - 請求項1又は2に記載の歯科用接着性組成物であって、
前記(a1)酸性基含有重合性単量体1molに対して0.01mol~1molの(G)多価金属化合物を更に含有する
歯科用接着性組成物。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物であって、
10質量部~30質量部の平均一次粒子径が1nm~20nmのヒュームドシリカを更に含有する
歯科用接着性組成物。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物であって、
前記充填材料がα-ジケトンを更に含有する
歯科用接着性組成物。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物であって、
前記(c1)有機過酸化物がパーオキシエステル類を含む
歯科用接着性組成物。 - 請求項1乃至6の何れか1項に記載の歯科用接着性組成物と、当該歯科用接着性組成物を収容する単一の遮光性容器と、を具備する歯科用接着性組成物包装体。
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