JP7370176B2 - 水系顔料分散体 - Google Patents
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Description
特許文献2には、分散性に優れたインクジェット記録用水系分散体、及び記録紙への定着性に優れたインクジェット記録用水系インクの提供を目的として、着色剤を含有するポリマー粒子を架橋剤で架橋してなる架橋ポリマー粒子の水系分散体であって、前記着色剤を含有するポリマー粒子を構成するポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位と、特定の式で表されるポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位と、特定の式で表されるモノマーから選ばれる1種以上のノニオン性モノマー(c)由来の構成単位とを含み、前記モノマー(b)及び(c)の溶解度パラメータの差が特定の範囲であるポリマーを含む、インクジェット記録用水系分散体、及び該水系分散体を含有するインクジェット記録用水系インクが開示されている。
特許文献3には、印字濃度等に優れたインクジェット記録用水系インク、該インクに用いられる水分散体等の提供を目的として、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子、及びコアシェルポリマー粒子又は架橋ポリマー粒子を含有するインクジェット記録用水分散体及び該水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク等が開示されている。
特許文献1の技術では、水性顔料分散組成物に用いられる異なる2種の樹脂がいずれも水溶性樹脂であるため、保存安定性が十分でなく、印字濃度も低い。特許文献2の技術では、非吸水性印刷媒体に対する耐擦過性が十分でない。特許文献3の技術では、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子、及びコアシェルポリマー粒子又は架橋ポリマー粒子を含有するインクジェット記録用水分散体であるため、保存安定性が十分でなく、印字濃度も低い。このように、近年高まる水系顔料分散体やインクの保存安定性の向上、非吸水性印刷媒体に印刷した際の印刷物の密着性及び耐擦過性の向上、並びに高い印字濃度への要求を全て満たすには至っていない。
本発明は、保存安定性に優れ、水系インクに用いることにより、非吸水性印刷媒体に対する密着性及び耐擦過性に優れ、かつ高い印字濃度を有する印刷物を得ることができる水系顔料分散体、及び該水系顔料分散体の製造方法を提供することを課題とする。
そこで、本発明者らは、優れた保存安定性を維持でき、その一方で、印刷時のように印刷媒体表面上でインクビヒクルが乾燥する環境では顔料粒子が局所的に凝集することなく、顔料粒子同士又は顔料粒子と印刷媒体との接着力を強固に維持できる性能を得ることを目指し、酸基を有し、ガラス転移温度が異なる2種の(メタ)アクリル系樹脂を含有し、これら2種の樹脂を酸基を介して架橋剤により架橋させたポリマー分散剤で顔料を分散させることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
[1]顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体であって、
該ポリマー分散剤が、酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bを含有し、
該(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度が80℃以上140℃以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度が-50℃以上40℃以下であり、
少なくとも該(メタ)アクリル系樹脂Aと該(メタ)アクリル系樹脂Bとがそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋されている、水系顔料分散体。
[2]顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体の製造方法であって、
該ポリマー分散剤が、酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bを含有し、
該(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度が80℃以上140℃以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度が-50℃以上40℃以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Aと該(メタ)アクリル系樹脂Bとをそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋する工程を含む、水系顔料分散体の製造方法。
[3]前記[1]に記載の水系顔料分散体を含有する、水系インク。
本発明の水系顔料分散体は、顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体であって、該ポリマー分散剤が、酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bを含有し、該(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度が80℃以上140℃以下であり、該(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度が-50℃以上40℃以下であり、少なくとも該(メタ)アクリル系樹脂Aと該(メタ)アクリル系樹脂Bとがそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋されている。
なお、「水系媒体」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めている媒体を意味する。
本発明の水系顔料分散体は、保存安定性に優れ、水系インクに用いることにより、非吸水性印刷媒体に対する密着性及び耐擦過性に優れ、かつ高い印字濃度を有する印刷物を得ることができるため、フレキソ印刷インキ用、グラビア印刷インキ用、又はインクジェットインク用の水系顔料分散体として好適に用いることができ、特にインクジェットインク用水系顔料分散体として用いることが好ましい。
本発明の水系顔料分散体は、顔料表面にポリマー分散剤が吸着又は固定化された状態で、顔料が水系媒体中で分散していると推定される。そして、該ポリマー分散剤は、高ガラス転移温度の(メタ)アクリル系樹脂Aと低ガラス転移温度の(メタ)アクリル系樹脂Bとを含有する。ポリマー構造が類似する(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bは、排他的ではなく相溶的な状態で顔料表面に存在することで該樹脂Aと該樹脂Bとの間でそれぞれの酸基を介して架橋剤により架橋され、一体化した状態となっていると考えられる。その結果、ポリマー分散剤が顔料表面に強固に吸着又は固定化され、顔料を安定に分散させ、保存安定性を向上させることができると考えられる。さらに、低ガラス転移温度の(メタ)アクリル系樹脂Bによる非吸水性印刷媒体に対する密着性の向上効果と高ガラス転移温度の(メタ)アクリル系樹脂Aによる耐擦過性の向上効果とが補完的に発揮され、また、インクビヒクルの塗膜形成及び乾燥時に樹脂の相分離が起こり難く、表面が平滑な塗膜となり、印字濃度も向上すると推定される。
本発明で用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
前記顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明で用いられるポリマー分散剤は、高ガラス転移温度の(メタ)アクリル系樹脂A(以下、「高Tg樹脂A」ともいう)と低ガラス転移温度の(メタ)アクリル系樹脂B(以下、「低Tg樹脂B」ともいう)とを含有する。
水系顔料分散体中でのポリマー分散剤の存在形態は、顔料にポリマー分散剤が吸着している形態、顔料をポリマー分散剤が含有している顔料内包(カプセル)形態、及び顔料にポリマー分散剤が吸着していない形態がある。顔料の分散安定性の観点から、本発明においては顔料をポリマー分散剤が含有する形態、即ち顔料を含有するポリマー粒子の形態が好ましく、顔料をポリマー分散剤が含有している顔料内包状態がより好ましい。
低Tg樹脂Bのガラス転移温度は、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性及び印字濃度の観点から、-50℃以上であり、好ましくは-40℃以上、より好ましくは-30℃以上、更に好ましくは-20℃以上、より更に好ましくは-10℃以上であり、そして、40℃以下であり、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下である。
前記ガラス転移温度は、実施例に記載の測定方法により測定することができる。また、前記ガラス転移温度は、Foxの式に基づいて、高Tg樹脂A又は低Tg樹脂B中の各モノマー成分の質量分率と、各モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度の値から計算により求めることができる。
該酸基としては、カルボキシ基(-COOM)、スルホン酸基(-SO3M)、リン酸基(-OPO3M2)等の解離して水素イオンが放出されることにより酸性を呈する基、又はそれらの解離したイオン形(-COO-、-SO3 -、-OPO3 2-、-OPO3 -M)等が挙げられる。上記化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。これらの中でも、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点から、カルボキシ基(-COOM)が好ましい。
低Tg樹脂Bの酸価は、水系顔料分散体の保存安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは70mgKOH/g以上、更に好ましくは90mgKOH/g以上、より更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは260mgKOH/g以下、より好ましくは230mgKOH/g以下、更に好ましくは200mgKOH/g以下、より更に好ましくは160mgKOH/g以下、より更に好ましくは140mgKOH/g以下である。
酸価が前記の範囲であれば、酸基及びその中和された酸基の量は十分であり、顔料の分散安定性が確保される。またポリマー分散剤と水系媒体の親和性と、ポリマー分散剤と顔料との相互作用とのバランスの点からも好ましい。
前記酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。また、適当な有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に高Tg樹脂A又は低Tg樹脂Bを溶解又は膨潤させて滴定する方法でも求めることができる。
本発明において、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点から、少なくとも高Tg樹脂Aと低Tg樹脂Bはそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋されている。
架橋剤Cは、水を主体とする媒体中で効率よく高Tg樹脂Aの酸基と低Tg樹脂Bの酸基とを反応させる観点から、該架橋剤Cの水溶率(質量比)は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。ここで、水溶率%(質量比)とは、室温25℃にて水90質量部に架橋剤C10質量部を溶解したときの溶解率(%)をいう。
架橋剤Cの分子量は、反応容易性及び水系顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、そして、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下、更に好ましくは1,000以下である。
架橋剤Cのエポキシ当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
架橋剤Cのエポキシ基の数は、効率よく酸基と反応させて水系顔料分散体の保存安定性を高める観点から、1分子あたり2以上であり、そして、1分子あたり好ましくは6以下、市場入手性の観点から、より好ましくは4以下である。
本発明における架橋度は高Tg樹脂Aと低Tg樹脂Bとの平均酸価から算出される酸基の当量と架橋剤Cの架橋性官能基の当量とから計算される架橋度である。高Tg樹脂Aと低Tg樹脂Bとの平均酸価は、水系顔料分散体中の各(メタ)アクリル系樹脂の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
(式(1)中、Xは下記式(2)又は(3)で表される基を示し、Aは、Xで表される基又はエチル基を示す。)
(式(2)中、Pは高Tg樹脂Aの分子鎖又は低Tg樹脂Bの分子鎖を示し、*は式(1)中の第4級炭素原子との結合部位を示す。)
(式(3)中、P及び*は前記と同様である。)
高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bは、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点から、それぞれ、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含むものが好ましく、更にマクロモノマー及びノニオン性モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の構成単位を含むものであってもよい。
カルボキシ基含有モノマーは、顔料の分散安定性を向上させる観点、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点から、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのモノマー成分として用いられることが好ましい。カルボキシ基含有モノマーとしては、カルボン酸モノマーが用いられる。
該カルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
疎水性モノマーは、ポリマー分散剤の顔料への吸着性を向上させ、顔料の分散安定性を向上させる観点、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点から、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのモノマー成分として用いられることが好ましい。
本明細書において「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。疎水性モノマーの前記溶解量は、ポリマー分散剤の顔料への吸着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
疎水性モノマーとしては、好ましくは芳香族基含有モノマー及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましい。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
疎水性モノマーは、前記のモノマーを2種以上使用してもよく、スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリレートを併用してもよい。
マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、顔料の分散安定性を向上させる観点から、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのモノマー成分として用いることができる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロモノマーとしては、顔料の分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前述の疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS-6(S)、AN-6(S)、HS-6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
ノニオン性モノマーは、顔料の分散安定性の観点から、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのモノマー成分として用いることができる。
ノニオン性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(n=2~30、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す。以下のnは当該オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレートがより好ましい。
商業的に入手しうるノニオン性モノマーの具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM-20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE-90、同200、同350等、PME-100、同200、同400等、PP-500、同800、同1000等、AP-150、同400、同550等、50PEP-300、50POEP-800B、43PAPE-600B等が挙げられる。
高Tg樹脂Aは、より好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、芳香族基含有モノマー由来の構成単位とを含むビニルポリマーである。
低Tg樹脂Bは、ガラス転移温度を調整する観点から、より好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、芳香族基含有モノマー由来の構成単位及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位とを含むビニルポリマーである。
高Tg樹脂A製造時における、原料モノマー中の各モノマーの含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は高Tg樹脂A中における各モノマー由来の構成単位の含有量は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
カルボキシ基含有モノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
疎水性モノマーの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
カルボキシ基含有モノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
疎水性モノマーの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
疎水性モノマーとして芳香族基含有モノマーと脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートとを用いる場合、芳香族基含有モノマーと脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートの合計含有量に対する芳香族基含有モノマーの含有量の質量比は、ガラス転移温度を調整する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bの重量平均分子量は、それぞれ、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは7,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは60,000以下である。高Tg樹脂A又は低Tg樹脂Bの重量平均分子量が前記の範囲であれば、顔料への吸着力が十分であり分散安定性を発現することができる。
前記重量平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
本発明の水系顔料分散体は、(メタ)アクリル系樹脂A(高Tg樹脂A)と(メタ)アクリル系樹脂B(低Tg樹脂B)とをそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋する工程を含む製造方法により得られる。
顔料を水系媒体中に分散させる方法としては、顔料と、高Tg樹脂Aと、低Tg樹脂Bとを含有する顔料混合物を分散処理する方法や、顔料と、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのいずれか一方とを分散処理した後、更に他方を添加する方法等により製造することができる。
高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bは、それぞれ樹脂粒子を水系媒体中に分散した分散体として用いてもよく、必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有していてもよい。該分散体は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
工程1:顔料と、(メタ)アクリル系樹脂Aと、(メタ)アクリル系樹脂Bとを含む顔料混合物を分散処理して分散体を得る工程
工程2:工程1で得られた分散体を、架橋剤Cを用いて架橋する工程
工程1では、まず、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料の順に加えることが好ましい。
高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料への濡れ性、(メタ)アクリル系樹脂の溶解性、及び(メタ)アクリル系樹脂の顔料への吸着性を向上させる観点から、メチルエチルケトン等の炭素数4以上8以下のケトンがより好ましい。高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
中和剤としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。中和剤は、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性及び印字濃度の観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましい。また、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。
中和剤の使用当量は、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、また、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
ここで中和剤の使用当量は、次式によって求めることができる。中和剤の使用当量が100モル%以下の場合、中和度と同義であり、次式で中和剤の使用当量が100モル%を超える場合には、中和剤が高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bの酸基に対して過剰であることを意味し、この時の高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bの中和度は100モル%とみなす。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{高Tg樹脂Aと低Tg樹脂Bとの平均酸価(mgKOH/g)×高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bの質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機;マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー;ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中でも、顔料を小粒径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて分散処理を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上300MPa以下である。また、パス回数は、好ましくは3以上20以下である。
工程1は、更に分散体から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、水分散体を得ることが好ましい。得られた水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
工程2は工程1で得られた分散体を、架橋剤Cを用いて架橋する工程である。
工程2より、架橋構造を有するポリマー分散剤で顔料を水系媒体に分散させた水系顔料分散体が得られる。
本発明においては、工程1により、高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bが有する酸基の一部を中和して顔料を分散させ、分散体を得た後、工程2により、更に該高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのそれぞれの酸基の一部を架橋剤Cと反応させて架橋構造を形成させ、架橋構造を有するポリマー分散剤で顔料を水系媒体に分散させた水系顔料分散体とすることが好ましい。
ポリマー分散剤を構成する高Tg樹脂A及び低Tg樹脂Bのそれぞれの酸基の一部が架橋剤Cで架橋され、高Tg樹脂A鎖と低Tg樹脂B鎖との間、高Tg樹脂A鎖間、及び低Tg樹脂B鎖間で架橋構造が形成されると考えられる。
架橋処理の温度は、架橋反応の完結と経済性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
架橋処理の時間は、架橋反応の完結と経済性の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは3時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは7時間以下である。
水系顔料分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
水系顔料分散体の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系顔料分散体の保存安定性、並びに密着性、耐擦過性及び印字濃度の観点、更にインクジェットインク用水系顔料分散体として用いる場合には水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
水系顔料分散体の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、水系インクの平均粒径は、水系顔料分散体の平均粒径と同じであることが好ましく、水系インクの平均粒径の好ましい態様は、水系顔料分散体の平均粒径の好ましい態様と同じである。
本発明の水系顔料分散体は、水系インク(以下、「水系インク」又は「インク」ともいう)に含有させて用いることが好ましい。これにより、水系インクの保存安定性、並びに非吸水性印刷媒体に対する密着性、耐擦過性及び印字濃度を高めることができる。本発明の水系顔料分散体は、そのまま水系インクとして使用することができるが、水系インクの保存安定性、密着性、耐擦過性及び印字濃度を向上させる観点から、更に有機溶媒を含有することが好ましい。該有機溶媒は、前記と同様の観点から、沸点が90℃以上250℃以下のものが好ましい。
前記有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。これらの中では、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、プロピレングリコール及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子を構成するポリマーとしては、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂等の縮合系ポリマー;アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及びアクリルシリコーン系樹脂等のビニル系ポリマーが挙げられる。
顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
水系インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
水系インク中の顔料の含有量は、印字濃度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
(顔料とポリマー分散剤との合計含有量)
水系インク中の顔料とポリマー分散剤との合計含有量は、密着性及び耐擦過性の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
(有機溶媒の含有量)
水系インク中の有機溶媒の含有量は、水系インクの保存安定性、並びに密着性及び印字濃度の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましく35質量%以下である。
(水の含有量)
水系インク中の水の含有量は、水系インクの保存安定性、並びに密着性及び印字濃度の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
水系インクの32℃の粘度は、保存安定性の観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9mPa・s以下、更に好ましくは7mPa・s以下である。水系インクの粘度は、E型粘度計を用いて測定できる。
水系インクの20℃のpHは、保存安定性の観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.2以上、更に好ましくは7.5以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。水系インクの20℃のpHは、常法により測定できる。
インクジェット記録装置としては、サーマル式及びピエゾ式があるが、本発明の水系顔料分散体を含有する水系インクは、ピエゾ式のインクジェット記録用水系インクとして用いることがより好ましい。
用いる印刷媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙、非吸水性の樹脂フィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、好ましくはポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムから選ばれる少なくとも1種である。当該樹脂フィルムは、コロナ処理された基材を用いてもよい。
一般的に入手できる樹脂フィルムとしては、例えば、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエステル)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル)、DGS-210WH(ローランドディージー株式会社製、塩化ビニル)、透明塩ビRE-137(株式会社ミマキエンジニアリング製、塩化ビニル)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、FOR、FOA(いずれもフタムラ化学株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)、エンブレムONBC(ユニチカ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
なお、調製例、実施例及び比較例で得られた分散体の各種物性を、下記方法により測定、評価した。
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔GPC装置(型式:HLC-8320GPC、東ソー株式会社製)、カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolumn SuperAW-H、以上、東ソー株式会社製の商品名)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、以上、東ソー株式会社製の商品名〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中に(メタ)アクリル系樹脂A又は(メタ)アクリル系樹脂B0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(商品名:DISMIC-13HP、メンブレンフィルター材質:親水性PTFE、孔径0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
レーザー粒子解析システム(型式:ELS-8000、大塚電子株式会社)(キュムラント解析)を用いて測定されるキュムラント平均粒径を、水系顔料分散体の平均粒径とした。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、通常5×10-3%程度で行った。
30mLのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
JIS K0070において、測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、エタノールとトルエンとの混合溶媒〔エタノール:トルエン=1:1(容量比)〕に変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
示差走査熱量計(商品名:Pyris 6 DSC、Perkin Elmer社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで-30℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
なお、測定サンプルは、(メタ)アクリル系樹脂A又は(メタ)アクリル系樹脂Bは減圧乾燥した後、凍結乾燥機(型式:FDU-2100、東京理化器械株式会社製)を用いて-10℃で9時間凍結乾燥させたものを用いた。
調製例1-1
アクリル酸30部、スチレン40部、α-メチルスチレン30部を混合し、原料モノマーを調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK)20部及び3-メルカプトプロピオン酸(重合連鎖移動剤)0.2部、前記原料モノマーの10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、原料モノマーの残り(前記原料モノマーの90%)、前記重合連鎖移動剤1.8部、MEK60部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、商品名:V-501、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸))1.7部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、MEKにより希釈して固形分濃度が50%のアクリル系樹脂A1(ガラス転移温度:121℃、酸価:240mgKOH/g、重量平均分子量:16,500)の溶液を得た。
表1に示す原料モノマー組成に変更した以外は調製例1-1と同様の方法で各(メタ)アクリル系樹脂を得た。
実施例1
〔水系顔料分散体の製造〕
(工程1)
調製例1-2で得られたアクリル系樹脂A2の溶液66.7部、調製例2-2で得られたアクリル系樹脂B2の溶液66.7部を混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液30.4部を加え、中和剤の使用当量が60モル%になるようにアクリル系樹脂A2及びアクリル系樹脂B2を中和した。
次いで、イオン交換水(W1)570部を加え、その中にカーボンブラック顔料(C.I.ピグメント・ブラック7、キャボットスペシャルティケミカルズ社製、商品名:Monarch 717)(以下、「M717」と表記する)100部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を7,000rpmで回転させる条件で60分間撹拌し、顔料混合物を得た。
得られた顔料混合物を、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)を用いて200MPaの圧力で10パス分散処理し、分散液を得た。
得られた分散液にイオン交換水(W2)を278部加え、撹拌した後、減圧下、60℃でMEKを除去し、更に一部の水を除去し、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が25%の分散体(d-1)を得た。平均粒径は99nmであった。
(工程2)
工程1で得られた分散体(d-1)100部をねじ口付きガラス瓶に取り、架橋剤Cとしてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321L、エポキシ当量129)(以下、「EX321L」と表記する)1.66部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、室温まで降温し、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過した後、イオン交換水で希釈することで固形分濃度が25%の水系顔料分散体(D-1)を得た。平均粒径100nmであった。
得られた水系顔料分散体(D-1)を用いて、水系インク全体に対する顔料濃度を4.0%、プロピレングリコール(以下、「PG」と表記する)を20.0%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、「BDG」と表記する)を10.0%、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーン活性剤(PEG-11メチルエーテルジメチコン、商品名:KF6011、信越化学工業株式会社製)を1.0%とし、イオン交換水を加えて、全量が100%になるよう計量し、マグネチックスターラーで撹拌してよく混合し、得られた混合液を前記5μmフィルター及び針なしシリンジで同様に濾過して、粗大粒子を除去することにより、水系インク(I-1)を得た。
実施例1において、(メタ)アクリル系樹脂A、(メタ)アクリル系樹脂B、及び架橋剤Cの種類並びに架橋度を表2及び表3に示すように変更した以外は同様にして各水系顔料分散体(D-2)~(D-11)及び各水系インク(I-2)~(I-11)を得た。
なお、表3中の架橋剤Cは以下のとおりである。
EX850L:ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-850L、エポキシ当量145)
EX216L:シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-216L、エポキシ当量150)
EX212L:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-212L、エポキシ当量135)
〔水系顔料分散体の製造〕
(工程1)
調製例1-2で得られたアクリル系樹脂A2の溶液106.7部に5N水酸化ナトリウム水溶液32.4部を加え、中和剤の使用当量が60モル%になるようにアクリル系樹脂A2を中和した。
次いで、イオン交換水(W1)570部を加え、その中にカーボンブラック顔料(M717)100部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を7,000rpmで回転させる条件で60分間撹拌し、顔料混合物を得た。
得られた顔料混合物を、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)を用いて200MPaの圧力で10パス分散処理し、分散液を得た。
得られた分散液にイオン交換水(W2)を278部加え、撹拌した後、減圧下、60℃でMEKを除去し、更に一部の水を除去し、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が25%の分散体(d’-12)を得た。平均粒径は105nmであった。
次いで、調製例2-3で得られたアクリル系樹脂B3の溶液26.7部を減圧乾燥後、その粉末に対して、5N水酸化ナトリウム水溶液4.0部、イオン交換水22.7部を加え、固形分濃度が25%のアクリル系樹脂B3の水溶液を得た。その水溶液を分散体(d’-12)に添加し、固形分濃度が25%の分散体(d-12)を得た。平均粒径は104nmであった。
(工程2)
得られた分散体(d-12)100部をねじ口付きガラス瓶に取り、架橋剤Cとしてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(EX321L)1.99部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、室温まで降温し、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、固形分濃度が25%の水系顔料分散体(D-12)を得た。平均粒径は105nmであった。
実施例1において、水系顔料分散体(D-1)に代えて水系顔料分散体(D-12)を用いた以外は同様にして水系インク(I-12)を得た。
実施例1において、(メタ)アクリル系樹脂A、(メタ)アクリル系樹脂B、及び架橋剤の種類並びに架橋度を表2及び表4に示すように変更した以外は同様にして各水系顔料分散体(D-C1)~(D-C4)及び各水系インク(I-C1)~(I-C4)を得た。
調製例1-2で得られたアクリル系樹脂A2の溶液を減圧乾燥後、その粉末12.6部に対して、5N水酸化ナトリウム水溶液7.6部、イオン交換水35.3部を加え、固形分濃度が25%のアクリル系樹脂A2の水溶液を得た。該水溶液に対して、架橋剤Cとしてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(EX321L)2.78部、イオン交換水8.3部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱することで、架橋したアクリル系樹脂A2の水溶液を得た(固形分濃度25%)。
次いで、比較例2で得られた水系顔料分散体(D-C2)100部に対して、架橋したアクリル系樹脂A2の水溶液22.3部を添加し、水系顔料分散体(D-C5)を得た。平均粒径は103nmであった。
実施例1において、水系顔料分散体(D-1)に代えて水系顔料分散体(D-C5)を用いた以外は同様にして水系インク(I-C5)を得た。
実施例1において、水系顔料分散体(D-1)に代えて実施例2の工程1で得られた顔料分散体(d-2)を用いた以外は同様にして水系インク(I-C6)を得た。
試験1(保存安定性の評価)
実施例、比較例で得られた各水系顔料分散体をスクリュー管に充填して密閉し、温度70℃に設定した恒温室内にそれぞれ7日間静置保存した。保存前後の平均粒径をそれぞれ前記(2)の方法により測定し、下記式から平均粒径維持率を算出した。結果を表3及び表4に示す。平均粒径維持率が100%に近いほど顔料粒子の凝集量が小さく、保存安定性が優れている。
平均粒径維持率(%)=〔保存後の水系顔料分散体の平均粒径/保存前の水系顔料分散体の平均粒径〕×100
実施例、比較例で得られた各水系インクを用いて、下記の試験2~4を行い、評価した。結果を表3及び表4に示す。
各水系インクをバーコーター No.4(アズワン社製)を用いてポリエステルフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラーT60、厚さ75μm)に塗布し、60℃で10分間加熱した。次いで25℃で24時間放置後、マクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:スペクトロアイ)を用いて、得られた印刷物(5.1cm×8.0cm)の中心及び四隅の計5点を測定し、その平均値を求めた。値が大きいほど、印字濃度に優れている。
前記印字濃度の評価で得られた印刷物の塗膜に対して、セロハンテープ(ニチバン社製、テープ幅18mm×4cm)を貼り付け、1分間静置した後に、塗膜に対してテープを垂直方向に引っ張って剥がした後の塗膜の状態から、塗膜の剥離面積を目視にて確認し、塗膜全面が全て剥離したものを剥離面積100%とし、下記評価基準に基づいて評価した。下記評価基準で3以上であると、密着性に優れている。
〔評価基準〕
4:塗膜の剥離が全く無かった。
3:塗膜の剥離面積が20%未満であった。
2:塗膜の剥離面積が20%以上40%未満であった。
1:塗膜の剥離面積が40%以上であった。
前記印字濃度の評価で得られた印刷物について、サザランド型インクラボテスターAB-201(テスター産業株式会社製)を用い、印刷物と錘の間の摩擦材としてコットン(旭化成株式会社製、商品名:ベンコット(BEMCOT) M-3)を錘の底面(底面の面積4cm2)に敷いて、荷重1,000gをかけて10回(往復)擦過することで、印刷物の擦過試験を行った。擦過した印刷物について、目視により以下の評価基準にて評価を行った。
〔評価基準〕
4:目視で傷が確認できなかった。
3:目視で傷のみが確認できた。
2:目視で傷が確認でき、擦過した領域の一部にフィルム表面が露出した。
1:擦過した領域の全面にわたりフィルム表面が露出した。
一方、比較例1及び比較例3ではポリマー分散剤が低Tg樹脂Bを含まないため、実施例1~12と比べて、密着性が劣る。
比較例2及び比較例4は高Tg樹脂Aを含まないため、実施例1~12と比べて、耐擦過性が劣る。
比較例5は、顔料の分散時にポリマー分散剤として低Tg樹脂Bのみを用い、インク調製時に架橋した高Tg樹脂Aの水溶液を添加したものであって、該低Tg樹脂Bに顔料を分散させて架橋したものであり、高Tg樹脂Aと低Tg樹脂Bとは相互に架橋されていないため、印字濃度が低く、耐擦過性が劣る。
比較例6は、ポリマー分散剤として高Tg樹脂Aと低Tg樹脂Bが共に架橋されていないため、保存安定性が悪く、印字濃度が低く、耐擦過性が劣ることがわかる。
Claims (12)
- 顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体であって、
該ポリマー分散剤が、酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bを含有し、
該(メタ)アクリル系樹脂Aが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位とを含むビニルポリマーであり、該(メタ)アクリル系樹脂A中の該カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が5質量%以上40質量%以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Bが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位とを含むビニルポリマーであり、該(メタ)アクリル系樹脂B中の該カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が5質量%以上40質量%以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度が80℃以上140℃以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度が-50℃以上40℃以下であり、
少なくとも該(メタ)アクリル系樹脂Aと該(メタ)アクリル系樹脂Bとがそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋されている、水系顔料分散体。 - (メタ)アクリル系樹脂A中のスチレン系モノマー由来の構成単位の含有量が50質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の水系顔料分散体。
- (メタ)アクリル系樹脂Bを構成する、スチレン系モノマーと脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートの合計含有量に対するスチレン系モノマーの含有量の質量比が0.1以上0.7以下である、請求項1又は2に記載の水系顔料分散体。
- (メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度と(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度との差が40℃以上190℃以下である、請求項1~3のいずれかに記載の水系顔料分散体。
- (メタ)アクリル系樹脂Aの酸価が50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である、請求項1~4のいずれかに記載の水系顔料分散体。
- (メタ)アクリル系樹脂Bの酸価が50mgKOH/g以上260mgKOH/g以下である、請求項1~5のいずれかに記載の水系顔料分散体。
- 水系顔料分散体中の、(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bの合計含有量に対する(メタ)アクリル系樹脂Aの含有量の質量比〔A/(A+B)〕が0.1以上0.9以下である、請求項1~6のいずれかに記載の水系顔料分散体。
- 架橋度[〔架橋剤Cの架橋性官能基のモル当量数〕/〔(メタ)アクリル系樹脂Aと(メタ)アクリル系樹脂Bとの平均酸基のモル当量数〕]が0.20以上0.70以下である、請求項1~7のいずれかに記載の水系顔料分散体。
- 架橋剤Cが炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物である、請求項1~8のいずれかに記載の水系顔料分散体。
- 顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体の製造方法であって、
該ポリマー分散剤が、酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂A及び(メタ)アクリル系樹脂Bを含有し、
該(メタ)アクリル系樹脂Aが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位とを含むビニルポリマーであり、該(メタ)アクリル系樹脂A中の該カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が5質量%以上40質量%以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Bが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位とを含むビニルポリマーであり、該(メタ)アクリル系樹脂B中の該カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が5質量%以上40質量%以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Aのガラス転移温度が80℃以上140℃以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Bのガラス転移温度が-50℃以上40℃以下であり、
該(メタ)アクリル系樹脂Aと該(メタ)アクリル系樹脂Bとをそれぞれの酸基を介して架橋剤Cで架橋する工程を含む、水系顔料分散体の製造方法。 - 下記工程1及び工程2を有する、請求項10に記載の水系顔料分散体の製造方法。
工程1:顔料と、(メタ)アクリル系樹脂Aと、(メタ)アクリル系樹脂Bとを含む顔料混合物を分散処理して分散体を得る工程
工程2:工程1で得られた分散体を、架橋剤Cを用いて架橋する工程 - 請求項1~9のいずれかに記載の水系顔料分散体を含有する、水系インク。
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