JP7399983B2 - 眼鏡レンズ - Google Patents
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Description
本発明の第1の態様は、
レンズ基材の表面における基材ベース部から突出する複数の基材突出部を有するレンズ基材と、該複数の基材突出部を覆うように設けられた被膜と、を備え、最表面に複数の凹凸を有する眼鏡レンズであって、
各基材突出部の周囲に亘り被膜の厚さが偏在化している、眼鏡レンズである。
各基材突出部を平面視した時に、各基材突出部の周囲において所定方向に存在する領域および該所定方向の逆方向に存在する領域では被膜が薄く、それら以外の方向の領域内に被膜が厚い部分が存在する。
全被膜凸部のうち50%を超える数の被膜凸部において、
被膜凸部の根元に対し、0~360度の回転角を横軸、被膜の厚さを縦軸としたプロットにおいて、被膜の厚さが最小値となる角度を回転角0度としたとき、
最小値より大きい値且つ極小値となる膜厚は、回転角が165~195度の根元の膜厚である。
全被膜凸部のうち50%を超える数の被膜凸部において、
被膜凸部の根元に対し、0~360度の回転角を横軸、被膜の厚さを縦軸としたプロットにおいて、被膜の厚さが最小値となる角度を回転角0度としたとき、
最大値且つ極大値となる膜厚は、回転角が50~110度の根元の膜厚、または、250~310度の根元の膜厚であり、且つ、最大値より小さい値且つ極大値となる膜厚は、最大値が存在しなかった方の回転角の範囲に存在する。
全基材突出部のうち50%を超える数の基材突出部の周囲に亘る(回転角0~360度)被膜の厚さの最大値にて最小値を除した値(最小値/最大値)は0.10~0.99である。
全被膜凸部のうち50%を超える数の被膜凸部の中心を含むレンズ断面での、((被膜の厚さの最大値-被膜凸部の頂点における被膜の厚さ)で表される差分値の最小値)/((被膜の厚さの最大値-被膜凸部の頂点における被膜の厚さ)で表される差分値の最大値)が、0.90以下である。
全基材突出部のうち50%を超える数の基材突出部の根元に設けられる膜厚の最小値は、被膜ベース部の膜厚の0.01~2.00倍である。
全被膜凸部のうち50%を超える数の被膜凸部のデフォーカスパワーは2.50~6.50Dである。
全基材突出部のうち50%を超える数の基材突出部の屈折力は2.50~6.50Dである。
全被膜凸部のうち50%を超える数の被膜凸部の被膜の厚さは0.5~6.0μmである。
前記眼鏡レンズは近視進行を抑制可能である。
本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造方法は、以下の通りである。
「レンズ基材の表面における基材ベース部から突出する複数の基材突出部を有するレンズ基材と、該複数の基材突出部を覆うように設けられた被膜と、を備え、最表面に複数の凹凸を有する眼鏡レンズの製造方法であって、
レンズ基材を被膜用液に浸漬後に引き上げて被膜用液が自重により流動中または流動後、レンズ基材上の被膜用液を乾燥させることにより被膜を形成する、眼鏡レンズの製造方法。」
基材ベース部とは、装用者の処方度数を実現可能な形状の部分である。
基材突出部とは、特許文献1の微小凸部に該当する部分である。本発明の一態様に係る眼鏡レンズは近視進行抑制可能である。ひいては、レンズ基材自体が近視進行抑制可能である。特許文献1の微小凸部と同様、本発明の一態様に係る複数の基材突出部は、レンズ基材の物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかに形成されればよく、この状況を「レンズ基材の表面における基材ベース部から突出」という。本明細書においては、レンズ基材の物体側の面のみに複数の基材突出部を設けた場合を主に例示する。
特許文献1の図10に記載のように、眼鏡レンズの中央部に基材突出部を形成してもよいし、特許文献1の図1に記載のように、眼鏡レンズの中央部に基材突出部を形成しなくてもよい。
基材突出部のサイズおよびレンズ基材の表面における複数の基材突出部の配置の態様は、特に限定されるものではない。物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、網膜よりも物体側(前方)に収束させる作用を主に担えれば、基材突出部には限定は無い。例えば、基材突出部の外部からの視認性、基材突出部によるデザイン性付与、基材突出部による屈折力調整等の観点から決定できる。
レンズ基材の基材突出部を有する表面上に形成される被膜の一態様としては、硬化性化合物を含む硬化性組成物(これまでに述べてきた被膜用液)を硬化して形成される硬化膜が挙げられる。かかる硬化膜は、一般にハードコート膜と呼ばれ、眼鏡レンズの耐久性向上に寄与する。硬化性化合物とは硬化性官能基を有する化合物を意味し、硬化性組成物とは硬化性化合物を一種以上含む組成物を意味する。
(R1)a(R3)bSi(OR2)4-(a+b) ・・・(I)
R2で表される炭素数1~4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
R2で表される炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
R3で表される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
R3で表される炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、特開2007-077327号公報の段落0073に記載されている化合物を挙げられる。一般式(I)で表される有機ケイ素化合物は硬化性基を有するため、塗布後に硬化処理を施すことにより、硬化膜としてハードコート膜を形成できる。
レンズ基材の基材突出部を有する表面上に硬化膜(被膜)を形成するための塗布液の供給は、レンズ基材を被膜用液(硬化性組成物)に浸漬させることにより行われる。これにより、基材突出部の周囲に意図的に液溜まりを生じさせ、基材突出部の周囲に亘って被膜(上記の硬化膜)の膜厚を偏在化させられる。
レンズ基材を浸漬させる際の硬化性組成物を構成する溶媒の沸点は30℃~200℃がよく、好ましくは、60℃~120℃が良い。溶媒の種類に限定は無く、例えばメタノール、トルエン等を使用可能である。
レンズ基材を浸漬させる際の硬化性組成物の濃度は1~50wt%がよい。
レンズ基材を浸漬させる際の浸漬時間は1~300秒がよい。
レンズ基材を浸漬させる際の硬化性組成物の引き上げ速度は10~400mm/minがよい。
迷光光線は、眼鏡レンズの物体側の面から入射して眼球側の面から出射する光線であって、眼鏡レンズ自体によって光線が収束する所定の位置A近傍も通過せず、基材突出部ひいては被膜凸部によって光線が収束する位置B近傍も通過しない光線のことを指す。迷光光線により装用者の視野にボヤケがもたらされる。そのため、眼鏡レンズの物体側の面から入射して眼球側の面から出射する光線における迷光光線の割合(以降、迷光率ともいう。)を減らすのが好ましい。
図2は、本発明の一態様による眼鏡レンズの検査方法の流れを示すフローチャートである。
以上の工程により、光軸方向(レンズ厚さ方向、Z軸)における、光線が集光する位置を特定可能となる。
本発明の一態様の手法により得られる眼鏡レンズは以下の通りである。
「レンズ基材の表面における基材ベース部から突出する複数の基材突出部を有するレンズ基材と、該複数の基材突出部を覆うように設けられた被膜と、を備え、最表面に複数の凹凸を有する眼鏡レンズであって、
各基材突出部の周囲に亘り被膜の厚さが偏在化している、眼鏡レンズ。」
本発明の効果の欄にて述べたように、本発明の一態様の手法により得られる眼鏡レンズは、迷光の発生が抑制されている。
そして、上段落における「それら以外の方向」とは、上記の例だと上方および下方以外の方向(すなわち基材突出部の幾何中心から見て回転角0度超え且つ180度未満、180度超え且つ360度未満)を指す。各基材突出部の周囲の領域であって被膜が比較的厚い部分が存在する領域は、より具体的に言うと、基材突出部の幾何中心から見て、所定方向から時計回りに15~145度および215~345度(好適には、80度、280度を中心とした50~110度および250~310度)の領域である。
つまり、該プロットにおいて少なくとも2つの極大値が存在し、この2つの極大値を示す各回転角は、上記2つの範囲の各々に属するのが好ましい。
図16(実施例7)において、上記値(最小値/最大値)は、(2.234/2.312)≒0.97である。
図13(実施例5)において、((被膜の厚さの最大値-被膜凸部の頂点における被膜の厚さ)で表される差分値の最小値)は、図13(b)すなわち上下断面(0時方向-6時方向、以降同様。)での値を採用できる。その際、該値は0.253μmである。
その結果、実施例5では、式1の値は0.82である。
図16(実施例7)において、((被膜の厚さの最大値-被膜凸部の頂点における被膜の厚さ)で表される差分値の最小値)は、図13(b)すなわち上下断面(0時方向-6時方向、以降同様。)での値を採用できる。その際、該値は0.065μmである。
その結果、実施例7では、式1の値は0.53である。
スピンコート後の乾燥手法:加熱
スピンコート後の乾燥温度:110℃
スピンコート後の乾燥時間:90分
以下のレンズ基材を作製した。なお、レンズ基材に対する他物質による積層は行っていない。処方度数はS(球面度数)は0.00Dとし、C(乱視度数)は0.00Dとした。
レンズ基材の平面視での直径:100mm
レンズ基材の種類:PC(ポリカーボネート)
レンズ基材の屈折率:1.589
レンズ基材のベースカーブ:3.00D
基材突出部の形成面:物体側の面
基材突出部の平面視での形状:正円(直径1mm)
基材突出部の基材ベース部からの高さ:0.8μm(半球且つ球面)
基材突出部の平面視での配置:各基材突出部の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各基材突出部の中心が配置)
基材突出部が形成された範囲:レンズ中心から半径17mmの円内
各基材突出部間のピッチ(基材突出部の中心間の距離):1.5mm
このレンズ基材の両面(上下全体)に対し、ディップ法を採用して被膜を形成した。浸漬方向および引き上げ方向は垂直方向とした。被膜用液およびディップ法の諸条件は以下の通りである。
被膜用液の種類:熱硬化型コーティング剤
被膜用液の温度:10℃
被膜用液の粘度:10mPa・s
被膜用液の溶媒(メタノール)の沸点:64.7℃
浸漬時間:3分
引き上げ速度:60mm/min
引き上げ後の乾燥手法:加熱
引き上げ後の乾燥温度:110℃
引き上げ後の乾燥時間:90分
実施例1に対し、被膜の厚さの偏在度合いの確認を行った。具体的には、タリサーフ(登録商標)CCI MP HS(アメテック株式会社製)という装置を使用し、被膜の厚さを得た。
実施例1に対し、デフォーカスパワーを測定した。デフォーカスパワー(単位:D)は、網膜からどれだけ離れた距離にて光束が集光するかを示す値であり、光線追跡および上述の迷光率の測定手法の一部を利用して測定可能である。
・眼軸長:24mm
・眼の調節量:0.0D
・角膜-レンズ頂点間距離(CVD):12.0mm
・角膜頂点から眼球の回転中心までの距離:13.0mm
以降、特記無い限り、上記条件を採用する。但し、本発明は上記各条件に限定されない。
実施例1にて作製した被膜付きレンズ基材に対し、反射防止膜を形成した。反射防止膜の製造条件の詳細は、特開2013-97159号公報の実施例3に記載の通りである。
実施例1で用いた被膜用液から金属ゾルの量を減らすとともにメタノールを追加した第2の被膜用液を用意した。実施例1にて作製したレンズ基材を該第2の被膜用液に浸漬させた。それ以外は実施例1と同様とした。
実施例3においても、特許文献1に記載の微小凸部の上に従来のスピンコート法にて被膜を形成する場合に比べ、デフォーカスパワーを改善でき且つ迷光率を低下させられた。被膜用液の特性を変化させても、被膜の厚さを変化させても、眼鏡レンズの最表面に凹凸が存在したうえで、基材突出部の周囲における被膜の厚さは偏在化していたためと推察される。
以下の変更点を除き、実施例1と同様の手法で眼鏡レンズを作製した。
・基材突出部が形成された範囲を、レンズ中心から半径17mmの円内(但しレンズ中心から半径3.8mmの円を内接円とする正六角形状の領域は除く)と変更
・基材突出部の中心の屈折力が5.50Dとなるように基材突出部の高さを変更
・被膜ベース部の被膜の厚さが3.0μmとなるように被膜用液の諸条件を変更
実施例4において被膜ベース部の被膜の厚さが3.0μmだったところ、実施例5では被膜ベース部の被膜の厚さを2.0μmとし、実施例4と同様の試験を行った。
図13(b)は、実施例5において、上下方向のレンズ断面での被膜の厚さを表したプロットである。
プロット中の点は、被膜凸部の頂点の位置を示す。
なお、図13に類するプロットの縦軸は測定位置を表すため、縦軸の数値自体は参照せずともよい。その代わり、プロット内での差分値は有効に参照できる。この差分値としては、例えば、最大値(且つ極大値)である縦軸値と、被膜凸部の頂点における縦軸値(或いは最小値である縦軸値)との差分値である。
以下の変更点を除き、実施例1と同様の手法で眼鏡レンズを作製した。
・基材突出部が形成された範囲を、レンズ中心から半径17mmの円内(但しレンズ中心から半径3.8mmの円を内接円とする正六角形状の領域は除く)と変更
・基材突出部のデフォーカスパワーが3.50Dとなるように基材突出部の高さを変更
・被膜ベース部の被膜の厚さが1.5μmとなるように被膜用液の諸条件を変更
実施例6において被膜ベース部の被膜の厚さが1.5μmだったところ、実施例7では被膜ベース部の被膜の厚さを2.0μmとし、実施例6と同様の試験を行った。
図16(b)は、実施例7において、上下方向のレンズ断面での被膜の厚さを表したプロットである。
プロット中の点は、被膜凸部の頂点の位置を示す。
以下の変更点を除き、実施例1と同様の手法で眼鏡レンズを作製した。
・基材突出部が形成された範囲を、レンズ中心から半径17mmの円内(但しレンズ中心から半径3.8mmの円を内接円とする正六角形状の領域は除く)と変更
図17(b)は、実施例8における、レンズ中心のY方向の直上且つレンズ中心から6番目に近い被膜凸部の上下断面、および該被膜凸部の左右(水平)断面における、高さのプロットである。
図17(c)は、実施例8における、レンズ中心に向かって水平左方且つレンズ中心から2番目に近い被膜凸部の上下断面、および該被膜凸部の左右(水平)断面における、高さのプロットである。
図17(d)は、実施例8における、レンズ中心のY方向の直下且つレンズ中心から2番目に近い被膜凸部の上下断面、および該被膜凸部の左右(水平)断面における、高さのプロットである。
Claims (1)
- 近視進行抑制効果を奏する眼鏡レンズであって、
レンズ基材の表面における基材ベース部から突出する複数の基材突出部を有するレンズ基材と、該複数の基材突出部を覆うように設けられた被膜と、を備え、最表面に複数の凹凸を有し、
前記基材ベース部および前記基材ベース部に前記被膜が設けられてなる被膜ベース部は、装用者の処方度数を実現可能な形状の部分であり、
全基材突出部のうち50%を超える数の基材突出部αの高さは0.5~2μmであり、
前記被膜ベース部における前記被膜の膜厚は2.0~5.0μmであり、
前記基材突出部αに前記被膜が設けられてなる被膜凸部α´における前記被膜の膜厚は2.0~5.0μmであり、
前記基材突出部αの根元に設けられる前記被膜の膜厚の最小値は、前記被膜ベース部における前記被膜の膜厚の0.40~1.20倍であり、
前記被膜凸部α´の中心を含むレンズ断面での、((被膜の厚さの最大値-被膜凸部の頂点における被膜の厚さ)で表される差分値の最小値)/((被膜の厚さの最大値-被膜凸部の頂点における被膜の厚さ)で表される差分値の最大値)が0.10~0.60であり、
前記基材突出部αの屈折力は2.50~6.50Dであり、
前記被膜凸部α´のデフォーカスパワーは2.50~6.50Dである、眼鏡レンズ。
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