JP7408410B2 - 炭素質材料およびその製造方法、並びに炭素質材料を用いた電池 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、BET法により求めた比表面積は40m2/g以下であり、ブタノール法により求めた真密度は1.48g/cm3以上1.62g/cm3以下である、炭素質材料。
〔2〕前記炭素質材料の酸素元素含有量は1.7質量%以下である、前記〔1〕に記載の炭素質材料。
〔3〕前記炭素質材料の六角網面積層方向Lcの大きさは11Å以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載の炭素質材料。
〔4〕前記炭素質材料の体積平均粒径は2μm以上20μm以下である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔5〕CuKα線を用いて測定される前記炭素質材料の(002)面の面間隔d002は3.8Å以上である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔6〕硫黄元素含有量が0.1質量%以上であり、融点が210℃以上のリグニンを炭化して、炭素前駆体を得る第一の炭化工程と、
前記炭素前駆体とコーティング剤との混合物を非酸化性ガス雰囲気下900℃以上1400℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る第二の炭化工程と
を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔7〕前記炭素前駆体を20μm以下の体積平均粒径に粉砕する粉砕工程を更に含む、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕前記第一の炭化工程は、前記リグニンを非酸化性ガス雰囲気下300℃以上800℃以下の温度で加熱することを含む、前記〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔9〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料を含む、電極。
〔10〕前記〔9〕に記載の電極を含む、電池。
本発明の炭素質材料において、硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、BET法により求めた比表面積は40m2/g以下であり、ブタノール法により求めた真密度は1.48g/cm3以上1.62g/cm3以下である。
炭素質材料の硫黄元素含有量は、0.8質量%以上である。硫黄元素含有量が0.8質量%未満であると、電池容量の優れた電池を得ることは困難である。硫黄元素含有量は、好ましくは0.85質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上である。硫黄元素含有量の上限値は特に限定されない。硫黄元素含有量は、通常は3.0質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下である。硫黄元素含有量が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、電池容量のより優れた電池を得やすい。硫黄元素含有量は、例えば、炭素質材料を製造する際に使用する(硫黄元素を含有する)出発材料を(例えば苛性ソーダ水溶液と一緒に加熱する等の方法により)加水分解することによって、或いは出発材料を硫酸等の硫黄元素含有成分で変性し、その変性量を調整することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。硫黄元素含有量は、例えば元素分析または蛍光X線分析によって、求めることができる。
炭素質材料のBET法により求めた比表面積(以下において、単に「比表面積」とも称する)は40m2/g以下である。比表面積が40m2/gより大きいと、電解液の分解反応が進行しやすく、充放電効率および低抵抗性に優れた電池を得ることは困難である。比表面積は、好ましくは20m2/g以下、より好ましくは15m2/g以下、特に好ましくは10m2/g以下である。比表面積はまた、通常1m2/g以上、好ましくは1.5m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。比表面積が前記上限値以下であり前記下限値以上であると、電解液の分解反応を抑制しやすく、充放電効率および低抵抗性に優れた電池を得やすい。比表面積は、例えば、加熱温度(例えば第一の炭化工程の温度または第二の炭化工程の温度)、またはコーティング剤の添加量により、前記上限値以下および前記下限値以上に調整できる。比表面積は、後述の実施例に記載の通り、窒素吸着等温線を測定する方法によって求めることができる。
炭素質材料のブタノール法により求めた真密度(以下において、単に「真密度」とも称する)は1.48g/cm3以上1.62g/cm3以下である。真密度が1.48g/cm3未満であるかまたは1.62g/cm3より大きいと、所望の電池容量を得ることは困難である。真密度は、好ましくは1.49g/cm3以上、より好ましくは1.50g/cm3以上であり、好ましくは1.61g/cm3以下である。真密度が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、より優れた電池容量を有する電池を得やすい。真密度は、例えば、加熱温度(例えば第一の炭化工程の温度または第二の炭化工程の温度)により、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。真密度は、JIS R 7212に定められた方法に従い測定できる。
炭素質材料の酸素元素含有量は、好ましくは1.7質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。また、酸素元素含有量は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上である。酸素元素含有量が前記上限値以下であり前記下限値以上であると、イオン吸着による不可逆性を抑制しやすく、電解液親和性に優れた電池を得やすい。酸素元素含有量は、例えば、加熱温度(例えば第一の炭化工程の温度または第二の炭化工程の温度)により、前記上限値以下および前記下限値以上に調整できる。酸素元素含有量は、元素分析または蛍光X線分析により求めることができる。
炭素質材料の六角網面積層方向Lcの大きさは、好ましくは11Å以下、より好ましくは10Å以下である。また、六角網面積層方向Lcの大きさは、通常4Å以上、好ましくは5Å以上である。六角網面積層方向Lcの大きさが前記上限値以下であり前記下限値以上であると、金属イオンおよび水素イオンの移動がしやすくなり、より低抵抗であり出力特性に優れる電池を得やすい。六角網面積層方向Lcの大きさは、例えば、加熱温度(例えば第一の炭化工程の温度または第二の炭化工程の温度)により、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。六角網面積層方向Lcの大きさは、X線回折により、2θ=26°付近のピーク強度から得られる半値幅に基づき求めることができる。また、前記上限値以下であり前記下限値以上である六角網面積層方向Lcの大きさを有する炭素質材料は、出力特性が大きい傾向にあり、リチウムイオン二次電池のみならず、ナトリウムイオン二次電池または鉛電池にも好適な電極を得やすい。
炭素質材料のCuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002(以下において、単に「面間隔d002」とも称する)は、好ましくは3.8Å以上、より好ましくは3.82Å以上である。また、面間隔d002は、好ましくは3.95Å以下、より好ましくは3.92Å以下である。面間隔d002が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、低温での電池容量維持率に優れた電池を得やすい。また、イオンの侵入がより容易になるため、リチウムイオン二次電池のみならず、ナトリウムイオン二次電池および鉛電池にも好適な電極を得やすい。面間隔d002は、例えば、加熱温度(例えば第一の炭化工程の温度または第二の炭化工程の温度)により、前記上限値以下および前記下限値以上に調整できる。面間隔d002は、X線回折で求めることができる。
炭素質材料の体積平均粒径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは2.2μm以上、特に好ましくは2.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。体積平均粒径が前記下限値以上であると、炭素質材料の比表面積の増大の要因である微粉が少なくなる傾向にあり、炭素質材料と電解液との過剰な反応が抑制されやすくなり、その結果、充電しても放電しない容量である不可逆容量が低下し、正極の容量が無駄になることが抑制されやすい。体積平均粒径が前記上限値以下であると、炭素質材料内での金属イオンまたは水素イオンの拡散自由行程が小さくなる傾向にあり、また、電子を伝導する導電材としての炭素質材料間の接触率が高くなる傾向にあるため好ましい。体積平均粒径は、例えば、炭素質材料を製造する際に使用する出発材料の選択、または粉砕工程によって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。体積平均粒径は、レーザー回折散乱法またはコールター法によって求めることができる。
本発明の炭素質材料は、例えば、
硫黄元素含有量が0.1質量%以上であり、融点が210℃以上のリグニンを炭化して、炭素前駆体を得る第一の炭化工程と、
前記炭素前駆体とコーティング剤との混合物を非酸化性ガス雰囲気下900℃以上1400℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る第二の炭化工程と
を含む製造方法により製造できる。この製造方法により、本発明の炭素質材料は少ない工程数で製造できる。
本発明の炭素質材料の出発材料は特に限定されない。使用できる出発材料として、例えばスルホン酸型イオン交換樹脂およびリグニンが挙げられる。
好ましい出発材料は、硫黄元素含有量が好ましくは0.1質量%以上であり、融点が好ましくは200℃以上であるリグニンである。このようなリグニンは、一般的にはクラフトリグニンと呼ばれており、製紙業においてセルロース抽出後の廃棄物として得られる。具体的には、例えばパルプの製造過程で生成した黒液を酸性化し、析出した沈殿を洗浄して調製することができる。このようにして得られたリグニンは、調製工程中で、その主要な結合であるエーテル結合が切断され、著しく低分子化されるので、その数平均分子量は通常3500~4500となる。炭化前の比較的低い温度で融解し、融解時に結晶状態を密度の高い状態に変化させやすく、その結果、優れた充放電効率および低い抵抗を有する電池を得やすい観点から、好ましくは210℃以上、より好ましくは230℃以上で融解するリグニンを使用することが特に好ましい。また、通常クラフトリグニンは他の方法で得られたリグニンに比べ、多量のフェノール性水酸基を有しており、化学的活性に富んでいることも、高い密度の炭素形成に好ましい。
リグニンは、体積平均粒径を粉砕により調整した後に出発材料として用いてもよい。体積平均粒径は、好ましくは0.001mm以上50mm以下、より好ましくは0.01mm以上20mm以下、更に好ましくは0.1mm以上10mm以下である。体積平均粒径が前記下限値以上であると、作業者の粉塵の吸引または粉塵爆発等が起こりにくい。体積平均粒径が前記上限値以下であると、炭化時に発生する水によりリグニンが酸化され、炭素物性が損なわれる問題が回避されやすい。通常、第一の炭化工程でリグニンは収縮せず、従って、第一の炭化工程前後で体積平均粒径は変化しない。粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されず、後述の〔粉砕工程〕の段落で例示する粉砕機を使用できる。また、後述の〔分級工程〕の段落に記載の手順と同様に、リグニンを分級工程に付してもよい。
リグニンは、酸性水で洗浄することによりリグニン中に存在する金属を低減させた後に出発材料として用いてもよい。
第一の炭化工程では、好ましくは、硫黄元素含有量が0.1質量%以上であり、融点が210℃以上のリグニンを炭化して、炭素前駆体を得る。
第一の炭化工程は、好ましくは非酸化性ガス雰囲気下で行う。非酸化性ガスとしては、例えばヘリウム、窒素またはアルゴン等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。非酸化性ガス中に酸化性ガスが含まれている場合、その含有量は低いほど好ましい。そのような場合、非酸化性ガス中の酸化性ガス(特に酸素)の含有量は、通常1体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。酸化性ガスの含有量が前記上限値以下であると、炭素前駆体生成過程で、酸化が進行しにくく、所望の構造構築が進みやすく、また、生成した構造の酸化分解が起きにくい。
第一の炭化工程の後に実施する第二の炭化工程では、好ましくは、炭素前駆体とコーティング剤との混合物を非酸化性ガス雰囲気下900℃以上1400℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る。第二の炭化工程に付されることにより、本発明の炭素質材料は、良好な放電容量、良好な充放電効率および低い抵抗性とともに、酸化劣化に対する良好な耐性を有する電池をもたらすことができる。
炭素前駆体とコーティング剤とを混合して炭化することにより、炭素前駆体の表面に、コーティング剤の熱処理により得られる炭素質被膜が形成され、この炭素質被膜により、得られる炭素質材料の比表面積が低減すると考えられる。その結果、炭素質材料とアルカリ金属、例えば、リチウムまたはナトリウムとの反応によるSEI(Solid Electrolyte Interphase)と呼ばれる被膜の形成反応が抑制されるので、不可逆容量を低減させることが期待できる。また、生成した炭素質被膜もリチウムまたはナトリウムをドープおよび脱ドープすることができるため、容量が増加する効果も期待できる。
コーティング剤は、好ましくは、炭素前駆体の比表面積を低減させることのできる揮発物質(例えば、炭化水素系ガスおよびタール成分)を十分発生できる剤である。
本発明における残炭率は、コーティング剤を800℃で灰化した場合の残炭率である。残炭率は、試料を不活性ガス雰囲気下で強熱した後の強熱残分の炭素量を定量することにより測定できる。具体的には、試料およそ1g〔この正確な質量をW1(g)とする〕を坩堝に入れ、20L/分で窒素を流通させながら坩堝を電気炉にて10℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温させ、次いで800℃で1時間強熱する。このときの残存物を強熱残分とし、その質量をW2(g)とする。
その後、上記強熱残分について、JIS M8819に定められた方法に準拠して元素分析を行い、炭素の質量割合P1(質量%)を測定する。残炭率P2(質量%)は下記式により算出できる。
P2=P1×W2/W1
熱可塑性樹脂の例としては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂および(メタ)アクリル酸系樹脂を挙げることができる。オレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとのランダム共重合体、およびエチレンとプロピレンとのブロック共重合体等を挙げることができる。スチレン系樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、およびスチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~12、好ましくは1~6)との共重合体等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸系樹脂の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(アルキル基の炭素数は1~12、好ましくは1~6)等を挙げることができる。なお、この明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
粉砕工程の前に炭素前駆体とコーティング剤とを混合する場合には、炭素前駆体と常温で液体または固体のコーティング剤とを計量しながら、粉砕装置に同時に供給することにより粉砕と混合とを同時に行うことができる。
粉砕工程の後に炭素前駆体とコーティング剤とを混合する場合には、混合は両者が均一に混合される手法であれば、公知の方法で実施できる。コーティング剤が常温で固体の場合、コーティング剤は好ましくは粒子状である。その場合、粒子の形または粒径は特に限定されないが、コーティング剤と粉砕された炭素前駆体とを均一に分散させやすい観点からは、コーティング剤の体積平均粒径は好ましくは0.1~2000μm、より好ましくは1~1000μm、更に好ましくは2~600μmである。
コーティング剤が常温で気体の場合、コーティング剤を含む非酸化性ガスを、第二の炭化工程を実施する機器内に流通させ熱分解させることにより、該機器内に導入された炭素前駆体と混合させる方法を用いることができる。
本発明の製造方法は、必要に応じて、第一の炭化工程後または第二の炭化工程後に粉砕工程を含んでいてもよい。この工程では、炭化により凝集した炭化物(炭素前駆体または炭素質材料)を粉砕し、目的の大きさに調整することができる。
粉砕工程を行う場合、第一の炭化工程後に行うことが好ましい。この理由は、粉砕により表面積を大きくすることで、第二の炭化工程で発生する分解ガスによる構造変化の影響を最小限にできるからである。また、別の理由は、第二の炭化工程後に粉砕を実施した場合には、粉砕によって新たに生じた結晶面が電池内で電解液等と反応し、電池機能が損なわれる可能性があるからである。従って、本発明の好ましい一実施態様では、本発明の製造方法は、炭素前駆体を好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下の体積平均粒径に粉砕する粉砕工程を更に含む。前記体積平均粒径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは2.2μm以上、特に好ましくは2.5μm以上である。しかしながら、第二の炭化工程の後に粉砕することは排除されない。
本発明の製造方法は、炭化工程後または必要に応じて行ってよい粉砕工程の後に分級を実施してもよい。分級によって、炭素前駆体または炭素質材料の体積平均粒径をより正確に調整することができ、また、特定の寸法より小さい(例えば体積平均粒径が1μm以下の)炭素前駆体若しくは炭素質材料、または特定の寸法より大きい(例えば体積平均粒径が30μm以上の)炭素前駆体若しくは炭素質材料を除去することもできる。
分級を行う場合、その例として篩による分級、湿式分級、または乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、または遠心分級等の原理を利用した分級機を挙げることができる。乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、または遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
本発明の炭素質材料は電極に使用できる。従って、本発明はまた、本発明の炭素質材料を含む電極も対象とする。
本発明の電極は、例えば、炭素質材料、結合剤(バインダー)および溶媒を混練することにより、電極合剤を調製し、金属板等からなる集電板に塗布し、乾燥した後、加圧成形することにより電極を製造することができる。
本発明はまた、本発明の電極を含む電池も対象とする。本発明の電池、例えば非水電解質二次電池は本発明の炭素質材料を用いて製造されるため、放電容量、充放電効率および低抵抗性に優れている。
例えば、正極材料としては、層状酸化物系[LiMO2(ここで、Mは金属を表す)で表されるもの:例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、またはLiNixCoyMozO2(ここで、x、y、zは組成比を表わす)]、オリビン系[LiMPO4(ここで、Mは金属を表す)と表されるもの:例えばLiFePO4等]、およびスピネル系[LiM2O4(ここで、Mは金属を表す)で表されるもの:例えばLiMn2O4等]の複合金属カルコゲン化合物が好ましく、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。例えば、これらの正極材料を適当な結合剤と電極に導電性を付与するための炭素質材料とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより、正極を製造できる。
非水電解質二次電池は一般に、上述したようにして製造した正極と負極とを、必要に応じて透過性セパレータ(例えば、不織布、またはその他の多孔質材料等)を介して対向させ、電解液中に浸漬させることにより製造される。セパレータに代えて、またはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
なお、以下に本発明の炭素質材料の物性値(「元素含有量」、「比表面積」、「真密度」、「六角網面積層方向Lcの大きさ」、「体積平均粒径」および「(002)面の面間隔d002」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
〔硫黄元素含有量〕
株式会社堀場製作所製「炭素・硫黄分析装置EMIA-920V2 HORIBA製」を用いて硫黄元素含有量の測定を行った。
この装置の検出方法は、酸素気流中燃焼(高周波誘導加熱炉方式)-非分散赤外吸収法(NDIR)であり、校正は、アルミナ坩堝に助燃剤であるW(タングステン)とSn(スズ)のみを入れてブランクとし、標準物質であるJSS152-18[C:0.277%、S:0.0056%]およびJSS150-16[S:0.0296%]を用いて行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料50mg、粒子状タングステン1.5g、粒子状スズ0.3gをアルミナ坩堝に量り取り、炭素・硫黄分析装置内で30秒間脱ガスした後、純酸素気流下で高周波により加熱燃焼させ、測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
株式会社堀場製作所製「酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930」を用いて酸素元素含有量の測定を行った。
この装置の検出方法は、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(NDIR)であり、校正は、Snカプセル、およびSS-3(標準試料)により行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料20mgを、Snカプセルに量り取り、酸素・窒素・水素分析装置内で30秒間脱ガスした後、測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
具体的には、日本BELL社製「BELL Sorb Mini」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質材料への窒素の吸着量を測定した。炭素質材料を試料管に充填し、試料管を-196℃に冷却した状態で、一旦減圧し、その後所望の相対圧にて炭素質材料に窒素(純度99.999%)を吸着させた。各所望の相対圧にて平衡圧に達した時の試料に吸着した窒素量を吸着ガス量vとした。
真密度ρBtは、JIS R 7212に定められた方法に従い、ブタノール法により測定した。具体的な手順を以下に示す。
内容積約40mLの側管付比重瓶の質量(m1)を正確に秤量し、次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らに導入した後、試料入りの側管付比重瓶の質量(m2)を正確に秤量した。これに、底から液面までの深さが20mm程度になるよう1-ブタノールを静かに加えた。続いて、比重瓶に軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター内に入れ、徐々に排気して真空デシケーター内の圧力を2.0~2.7kPaにした。この圧力を20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後に比重瓶を取り出した。この比重瓶に1-ブタノールを添加し、栓をして(30±0.03℃に調節した)恒温水槽に15分間以上浸し、1-ブタノールの液面を標線に合わせた。次に、これを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後、質量(m4)を正確に秤量した。
次に、同じ側管付比重瓶に1-ブタノールだけを満たし、前記と同様に恒温水槽に浸し、標線に合わせた後、質量(m3)を量った。
更に、使用直前に沸騰させて溶解した気体を除いた蒸留水を比重瓶に導入し、前記と同様に恒温水槽に浸し、標線に合わせた後、質量(m5)を量った。
真密度ρBtは次の式により計算した。このとき、dは水の30℃における比重(0.9946)である。
六角網面積層方向Lcは、株式会社リガク製「MiniFlexII」を用いたX線回折試験により求めた。炭素質材料を試料ホルダーに充填し、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。X線回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に示すScherrerの式に代入することにより六角網面積層方向Lcを算出した。
体積平均粒径(粒度分布)は、以下の方法により測定した。界面活性剤[和光純薬工業株式会社製「TritonX100」]を0.3質量%含む水溶液に試料を投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、試料を水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒径・粒度分布測定器(日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。D50は、累積体積が50%となる粒径であり、この値を体積平均粒径として用いた。
炭素質材料を試料ホルダーに充填し、「株式会社リガク製MiniFlexII」を用い、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。X線回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に記すBraggの公式により面間隔d002を算出した。
〔実施例1〕
硫黄元素含有量が2質量%であり、融点が250℃であるリグニン18.0gを舟形坩堝に入れ、株式会社モトヤマ製環状炉(管径200mmφ×1800mm)に導入した。5L/分の流量で窒素を1時間導入して炉内を窒素置換し、室温から600℃まで昇温(昇温速度2.5℃/分)させ、600℃で1時間保持し、12時間かけて600℃から室温に自然放冷した後、炭素前駆体を取り出した(第一の炭化工程)。8.18gの炭素前駆体を得た(収率45.4質量%)。得られた炭素前駆体を、ミキサーミルで体積平均粒径8.13μmに粗粉砕した後、粉砕物7.06gおよびポリスチレン0.70gを混合して得た混合物を舟形坩堝に入れ、再び環状炉に導入した。5L/分の流量で窒素を1時間導入して炉内を窒素置換し、室温から1000℃まで昇温(昇温速度10℃/分)させ、1000℃で30分間保持し、12時間かけて室温まで冷却した後、炭素質材料を取り出した(第二の炭化工程)。6.37gの炭素質材料を得た(収率90.3質量%)。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
第二の炭化工程の温度を1000℃から1200℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして炭素質材料を得た。収率は88.3質量%であった。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
第二の炭化工程の温度を1000℃から1300℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして炭素質材料を得た。収率は86.9質量%であった。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
ポリスチレンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして炭素質材料を得た。収率は98.4質量%であった。得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
実施例および比較例で得られた炭素質材料用いて、負極電極および非水電解質二次電池を作製し、性能の評価を行った。
炭素質材料95質量部、導電性カーボンブラック(TIMCAL製「Super-P(登録商標)」)2質量部、PVDF(株式会社クレハ製)3質量部およびNMP90質量部を混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを厚さ18μmの銅箔に塗布し、乾燥後プレスして、厚さ45μmの電極を得た。
本発明の炭素質材料が非水電解質二次電池の負極電極を構成するのに適していることを示すため、下記手順により試験用の非水電解質二次電池を作製した。
電池活物質の放電容量(脱ドープ量)および不可逆容量(非脱ドープ量)を、対極の性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として用い、上記手順に従い作製した負極電極を用いて非水電解質二次電池を作製した。電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1:1となるように混合して得た溶媒に、電解質LiPF6を溶解した溶液(濃度1mol/L)を用いた。セパレータとしては、ポリプロピレン膜を使用した。アルゴン雰囲気下のグローブボックス内でコインセルを作製した。
上記構成の非水電解質二次電池について、充放電試験装置(株式会社東洋システム製「TOSCAT」)を用いて25℃にて充放電試験を行った。炭素極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を定電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験用電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこで、ここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に「放電」とは試験用電池では充電反応であるが、炭素質材料からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には初期直流抵抗(Ω)を測定した後に端子電圧が0mVになるまで0.5mA/cm2で定電流充電を行い、端子電圧を0mVに達した後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このときの充電全容量を電極の炭素質材料の質量で除した値を、炭素質材料の単位質量当たりの充電容量(mAh/g)と定義する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cm2で定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の炭素質材料の質量で除した値を、炭素質材料の単位質量当たりの放電容量(mAh/g)と定義する。充電容量に対する放電容量の比を、充放電効率(%)と定義し、電池内におけるリチウムイオンの利用効率の指標とした。結果を表2にまとめる。
一方、比較例1の炭素質材料は、充放電効率および初期抵抗に劣る電池しかもたらさないことが分かる。
Claims (11)
- 硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、BET法により求めた比表面積は40m2/g以下であり、ブタノール法により求めた真密度は1.48g/cm3以上1.62g/cm3以下であり、六角網面積層方向Lcの大きさは11Å以下である、炭素質材料。
- 硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、BET法により求めた比表面積は40m 2 /g以下であり、ブタノール法により求めた真密度は1.48g/cm 3 以上1.62g/cm 3 以下であり、リグニンに由来する、炭素質材料。
- 前記炭素質材料の六角網面積層方向Lcの大きさは11Å以下である、請求項2に記載の炭素質材料。
- 前記炭素質材料の酸素元素含有量は1.7質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の炭素質材料。
- 前記炭素質材料の体積平均粒径は2μm以上20μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の炭素質材料。
- CuKα線を用いて測定される前記炭素質材料の(002)面の面間隔d002は3.8Å以上である、請求項1~5のいずれかに記載の炭素質材料。
- 硫黄元素含有量が0.1質量%以上であり、融点が210℃以上のリグニンを炭化して、炭素前駆体を得る第一の炭化工程と、
前記炭素前駆体とコーティング剤との混合物を非酸化性ガス雰囲気下900℃以上1400℃以下の温度で炭化して炭素質材料を得る第二の炭化工程と
を含む、請求項1~6のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。 - 前記炭素前駆体を20μm以下の体積平均粒径に粉砕する粉砕工程を更に含む、請求項7に記載の方法。
- 前記第一の炭化工程は、前記リグニンを非酸化性ガス雰囲気下300℃以上800℃以下の温度で加熱することを含む、請求項7または8に記載の方法。
- 請求項1~6のいずれかに記載の炭素質材料を含む、電極。
- 請求項10に記載の電極を含む、電池。
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