図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
車両用空調装置1は、車両に搭載される空調装置である。車両は、例えばガソリン駆動のエンジンを搭載した自動車である。ただし、車両としては、走行用モータを搭載した電気自動車や、エンジンと走行用モータとの両方を搭載したハイブリッド自動車なども採用可能である。車両用空調装置1は、取り込まれた空気の温度や湿度を調整して車室内に吹き出す装置である。言い換えると、車両用空調装置1は、車室内の暖房運転や冷房運転や除湿運転などの空調運転を行う装置である。
図1において、車両用空調装置1は、空気を送風する送風ユニット10と送風される空気の温度を調整する空調ユニット20とを備えている。送風ユニット10は、送風ケース11と送風機15とを備えている。送風ケース11は、内気導入口14aと外気導入口14bとの2つの導入口を備えている。送風ケース11の内部には、内気導入口14aと外気導入口14bとの開閉を切り替える内外気切り替えドア12が設けられている。内外気切り替えドア12は、空調風が室内を循環するモードである内気循環モードを実行可能である。内外気切り替えドア12は、空調風を室外から導入するモードである外気導入モードを実行可能である。
送風機15は、送風ケース11の内部に設けられている。送風機15は、電動モータを用いて回転数を制御可能な電動送風機である。送風機15は、導入口から取り込んだ空気を送風ユニット10から空調ユニット20に向かって送るための装置である。送風機15は、例えば遠心式送風機であってシロッコファンやターボファンを採用可能である。
空調ユニット20は、空調ケース21とヒータ装置32と蒸発器39とを備えている。ヒータ装置32は、空調運転において空気の加熱を行うための装置である。ヒータ装置32は、出力のオンオフ制御だけでなく、出力の大きさを電気的に制御可能な電気ヒータである。ただし、ヒータ装置32を内部に高温のエンジン冷却水が循環するヒータコアで構成してもよい。
蒸発器39は、液相冷媒を気相冷媒に蒸発させるための装置である。蒸発器39は、冷媒を蒸発させる際に、周囲から熱を奪う熱交換器である。言い換えると、蒸発器39は、空調運転において空気の冷却を行うための冷却用熱交換器である。空調ケース21の内部において、蒸発器39は、ヒータ装置32よりも空気の流れの上流に位置して設けられている。
空調ケース21は、デフロスタ開口24aとフェイス開口24bとフット開口24cとの3つの開口を備えている。デフロスタ開口24aは、フロントウィンドウに向かう空調風が流れる開口である。フェイス開口24bは、乗員の顔を含む上半身に向かう空調風が流れる開口である。フット開口24cは、乗員の足もとを含む下半身に向かう空調風が流れる開口である。
空調ケース21の内部には、エアミックスドア25が設けられている。エアミックスドア25は、蒸発器39を通過した空気をヒータ装置32に流す割合を調整するドアである。空調ケース21の内部には、デフロスタドア22aとフェイスドア22bとフットドア22cとが設けられている。デフロスタドア22aは、デフロスタ開口24aの開閉を制御するドアである。フェイスドア22bは、フェイス開口24bの開閉を制御するドアである。フットドア22cは、フット開口24cの開閉を制御するドアである。
冷凍サイクル装置30は、蒸発器39を冷却用の熱源として機能させる冷却装置である。冷凍サイクル装置30は、蒸発器39に加えて、圧縮機31と凝縮器35と冷媒配管40とを備えている。圧縮機31は、気相冷媒を圧縮して高温高圧の状態とする装置である。圧縮機31は、駆動時の圧縮容量を変更可能な可変容量圧縮機である。圧縮機31は、停止状態と駆動状態との2つの状態に制御される。圧縮機31の駆動状態において、圧縮機31の圧縮容量を変更することで冷凍サイクル装置30を循環する冷媒の量を調整可能である。すなわち、圧縮機31の圧縮容量を大きくすることで、冷凍サイクル装置30を循環する冷媒の量を増加させることができる。
圧縮機31は、圧縮容量が一定で駆動のオンオフのみを制御するオンオフ制御と、必要な空調能力に応じて圧縮容量を変更する可変制御とを切り替え可能な圧縮装置である。オンオフ制御においては、車室内の温度が目標温度に到達するまで駆動を維持し、目標温度に到達した時点で駆動を停止する。オンオフ制御においては、圧縮機31の駆動時の冷媒吐き出し能力は、常に高い状態である。
可変制御においては、車室内の温度と乗員によって設定された目標温度との温度差が大きい場合には、圧縮機31を大きな圧縮容量で駆動することで冷凍サイクル装置30の能力を高くする。これにより、素早く車室内の温度を目標温度に近づける。この時、送風機15や室外送風機36の出力も高くすることで、車両用空調装置1全体の空調能力を高める。一方、車室内の温度と乗員によって設定された目標温度との温度差が小さい場合には、圧縮機31を小さな圧縮容量で駆動することで冷凍サイクル装置30の能力を低くする。これにより、圧縮機31の駆動時に消費するエネルギーを圧縮容量が高い場合に比べて低減する。可変制御においては、冷媒吐き出し能力を適切に変更しながら圧縮機31を駆動することで、オンオフ制御に比べて長い駆動時間で空調運転を行う。
オンオフ制御は、常に高い冷媒吐き出し能力で駆動することになる。このため、オンオフ制御は、可変制御に比べて短い時間で目標温度に到達させやすい。可変制御は、冷媒吐き出し能力が高い状態と低い状態とを使い分けて駆動することになる。このため、可変制御は、オンオフ制御に比べて圧縮機31がオフの状態となる回数が少ない。言い換えると、可変制御は、オンオフ制御に比べて一連の空調運転の間で圧縮機31を起動する回数を少なくしやすい。
凝縮器35は、空調ケース21の外部に設けられて、室外空気と熱交換を行う熱交換器である。冷房運転において、凝縮器35は、外気に熱を放出して冷媒のエネルギーを下げることで、気相冷媒を液相冷媒に凝縮する熱交換器である。凝縮器35に対向して室外送風機36が設けられている。室外送風機36は、凝縮器35の周囲に熱交換前の外気を供給することで、外気と冷媒との熱交換を促進させるための装置である。
冷媒配管40は、圧縮機31と凝縮器35と蒸発器39とを接続して、冷媒が循環する冷媒流路を提供している。冷媒配管40は、凝縮器35と蒸発器39とを接続する部分に膨張弁48を備えている。膨張弁48は、蒸発器39に流入する液相冷媒を膨張させて、蒸発器39で蒸発しやすくするための装置である。膨張弁48は、冷媒の圧力を低減させる減圧装置とも呼ばれる。膨張弁48は、蒸発器39の冷媒入口部分と一体に設けられていてもよい。
蒸発器39の外表面には、蒸発器39の温度を計測するための蒸発器センサ91cが設けられている。冷媒配管40において、凝縮器35と膨張弁48との間には、冷媒の圧力を計測するための圧力センサ91dが設けられている。
図2において、制御部50は、空調用センサ91と空調用スイッチ92と車速センサ80とに接続している。空調用センサ91は、外気温センサ91aと内気温センサ91bと蒸発器センサ91cと圧力センサ91dとを備えている。外気温センサ91aは、車外の温度を計測するセンサである。内気温センサ91bは、車内の温度を計測するセンサである。蒸発器センサ91cは、蒸発器39の表面温度を計測する温度センサである。圧力センサ91dは、凝縮器35を通過して膨張弁48に流入する前の冷媒の圧力を計測するセンサである。制御部50は、空調用センサ91から空調運転に用いる各種の情報を取得する。
空調用スイッチ92は、乗員によって操作されるスイッチである。空調用スイッチ92には、空調運転のオンオフを切り替えるスイッチや、設定温度の切り替えを行うスイッチや、内気循環モードと外気導入モードとの切り替えを行うスイッチなどが含まれる。空調用スイッチ92には、フェイスモードなどの吹き出し口の異なる複数の吹き出しモードのうち、どのモードで空調運転を行うかを選択するスイッチが含まれている。ただし、オートモードで空調運転を行う場合には、乗員による操作で吹き出しモードなどを切り替えるのではなく、自動で切り替えが行われる。制御部50は、空調用スイッチ92を用いて乗員が設定した空調設定に基づいて空調運転を行うこととなる。
車速センサ80は、現在の車両の走行速度を計測する速度センサである。車速センサ80は、タイヤの回転数を検出することで車速を計測する。ただし、車速センサ80での車速の検出方法は、タイヤの回転数を検出する方法に限られない。制御部50は、車速センサ80で計測した車速情報に基づいて、空調制御を変更する。
制御部50は、内外気切り替えドア12とデフロスタドア22aとフェイスドア22bとフットドア22cとエアミックスドア25とに接続している。制御部50は、各ドア12、22a、22b、22c、25のサーボモータの駆動を制御することで開度を変更している。これにより、内気循環モードと外気導入モードとの切り替えや、空調風の温度制御や、空調風の吹き出し位置の変更制御などを行う。
制御部50は、送風機15と圧縮機31とヒータ装置32と室外送風機36とに接続している。制御部50は、送風機15の出力を制御して、空調風の風速を調整する。制御部50は、圧縮機31の駆動の有無や圧縮容量を制御して、冷凍サイクル装置30を循環する冷媒の量を調整する。制御部50は、ヒータ装置32の出力を制御して、空調風の加熱量を調整する。ただし、ヒータ装置32をエンジンの熱で加熱された高温のエンジン冷却水が流れるヒータコアで構成している場合には、ヒータ装置32を制御対象としなくてもよい。この場合、ヒータ装置32には、高温のエンジン冷却水が循環し続けることとなる。制御部50は、室外送風機36の出力を制御して、外気と凝縮器35を流れる冷媒との熱交換量を調整する。
制御部50は、空調制御部51と負荷量取得部52と暗騒音情報取得部53とを備えている。空調制御部51は、空調運転に用いる装置の制御を行う。空調制御部51は、例えば圧縮機31の駆動を制御して空調風の温度を制御する。空調制御部51は、例えば送風機15の駆動を制御して空調風の風量を制御する。
負荷量取得部52は、冷凍サイクル装置30の負荷量を取得する。冷凍サイクル装置30で必要になる冷却能力が大きいほど、負荷量は多くなる。また、負荷量が多いほど、圧縮機31の冷媒吐き出し量が多くなるように制御される。このため、負荷量は、冷凍サイクル装置30に循環させる冷媒の目標流量に相当する。例えば、外気温が高い状態での冷房運転の開始時には、負荷量が多くなりやすい。例えば、外気温が目標温度に近い状態での冷房運転中は、負荷量が少なくなりやすい。
暗騒音情報取得部53は、圧縮機31の発する音以外の音である暗騒音の大きさを示す情報である暗騒音情報を取得する。より具体的には、車速センサ80で計測した車速が速いほど、暗騒音が大きいと推定できる。一方、車速センサ80で計測した車速がゼロである停車中においては、暗騒音が小さいと推定できる。このように、暗騒音情報取得部53は、車速センサ80で計測した車速の情報から暗騒音の大きさを推定して取得する。
暗騒音情報取得部53の暗騒音の推定方法は車速に限られない。例えば、レインセンサを備え、レインセンサによって取得した天候情報から暗騒音の大きさを推定して取得してもよい。より具体的には、雨天であることを検知した場合には、雨音の影響があるため暗騒音が大きいと推定できる。一方、雨天でない場合には、雨音の影響がないため暗騒音が小さいと推定できる。あるいは、オーディオ機器による音の出力の有無から暗騒音の大きさを推定して取得してもよい。より具体的には、オーディオ機器で音楽やラジオなどの音を出力している場合には、暗騒音が大きいと推定できる。一方、オーディオ機器で音を出力していない場合には、暗騒音が小さいと推定できる。また、マイクを用いて暗騒音の音圧レベルを取得してもよい。
冷凍サイクル装置30における冷媒循環量が少ない場合には、冷媒通過音が発生し得る。また、冷凍サイクル装置30におけるスーパーヒートが高い場合には、圧縮機31の吸入脈動音が発生し得る。以下に、冷媒通過音が発生するメカニズムと吸入脈動音が発生するメカニズムとを説明する。
まず、冷媒通過音が発生するメカニズムについて説明する。図1に示す冷凍サイクル装置30において、圧縮機31は、目標温度と車室内の実際の温度との温度差が小さいほど、可変制御中に低い圧縮容量に制御されやすい。言い換えると、冷媒吐き出し能力が低い状態で圧縮機31が駆動されやすい。これは、外気温が低い状況での冷房運転や、暖房運転の実行中における除湿運転などで起こり得る。
また、内気循環モードにおいては、車室内が十分に冷房されるなどして目標温度に近い温度であると、蒸発器39を流れる冷媒が車室内の空気から蒸発に必要な熱を得にくい状態となる。一方、外気導入モードにおいては、外気が目標温度に近い温度であると、蒸発器39を流れる冷媒が車室内の空気から蒸発に必要な熱を得にくい状態となる。蒸発器39を流れる冷媒が蒸発しきれずに一部の冷媒が液相の状態となると、蒸発器39の内部や冷媒配管40における圧縮機31の吸い込み側である低圧配管の内部に液相の冷媒が溜まりやすい。すなわち、冷凍サイクル装置30内に存在する冷媒において、気相で存在する冷媒の割合が減り、液相で存在する冷媒の割合が増えることとなる。
冷凍サイクル装置30において、圧縮機31の圧縮容量が小さく、かつ、気相の冷媒の割合が減ることで、気相冷媒を圧縮する圧縮機31の冷媒吐き出し能力は、非常に低い状態となる。このため、圧縮機31から吐き出される冷媒量が、膨張弁48を通過する冷媒量に比べて少なくなる場合がある。このような状態では、一部の気相冷媒が凝縮器35で凝縮される前に凝縮器35を通過してしまい、気液二相の状態で膨張弁48に流入することとなる。液相冷媒が流れるはずの膨張弁48に気液二相冷媒が強引に流れることで、冷媒通過に際して振動が発生する。このとき発生した振動は、膨張弁48から蒸発器39に伝達されて蒸発器39を振動させる。蒸発器39が振動することで、蒸発器39から空調ケース21内部に放射される放射音が発生する。このように、冷媒の通過に起因して発生する音を、以下では冷媒通過音と称することがある。冷媒通過音の原因となる気液二相の状態の冷媒における気相の冷媒は、フラッシュガスと呼ばれることがある。
蒸発器39で発生した冷媒通過音は、空調ケース21の内部から各開口24a、24b、24cまで響くこととなる。ここで、フェイス開口24bは、デフロスタ開口24aやフット開口24cに比べて乗員の顔の近くに設けられている。このため、冷媒通過音がフェイス開口24bを通って車室内に伝達されると、乗員が冷媒通過音を知覚しやすい。言い換えると、車室内の快適性が冷媒通過音によって損なわれやすい状態である。
次に、吸入脈動音が発生するメカニズムについて説明する。図1に示す冷凍サイクル装置30において、外気温が高いほど、冷凍サイクル装置30内の冷媒が気相で存在しやすくなる。また、冷房運転において、外気温が高いほど内気温を目標温度に近づけるように制御するために必要な圧縮機31の冷媒吐き出し能力が高くなる。これは、夏場などの外気温が高い状況での冷房運転開始時などで起こり得る。
冷凍サイクル装置30において、圧縮機31の圧縮容量が大きく、かつ、気相の冷媒の割合が増えることで、気相冷媒を圧縮する圧縮機31の冷媒吐き出し能力は、非常に高い能力が要求される。このため、圧縮機31に吸い込まれる冷媒量および吐き出される冷媒量が多くなる。したがって、吸い込みから吐き出しまでの過程で冷媒の流れに大きな脈動が生じ得る。
圧縮機31で発生した脈動は、蒸発器39に伝達されて蒸発器39を振動させる。蒸発器39が振動することで、蒸発器39から空調ケース21内部に放射される放射音が発生する。このように、冷媒吸入での脈動に起因して発生する音を、以下では吸入脈動音と称することがある。
蒸発器39で発生した吸入脈動音は、空調ケース21の内部から各開口24a、24b、24cまで響くこととなる。ここで、フェイス開口24bは、デフロスタ開口24aやフット開口24cに比べて乗員の顔の近くに設けられている。このため、吸入脈動音がフェイス開口24bを通って車室内に伝達されると、乗員が吸入脈動音を知覚しやすい。言い換えると、車室内の快適性が吸入脈動音によって損なわれやすい状態である。
車両用空調装置1の空調運転について、冷房運転を行う場合を例に以下に説明する。図3において、乗員によって空調用スイッチ92がオンされるなどして、車両用空調装置1の冷房運転が開始されると、ステップS101で暗騒音情報を取得する。暗騒音情報は、例えば車速情報である。車速情報は、車速センサ80を用いて測定した現在の車両の走行速度である。車両が停止している場合には、車速がゼロとなる。ここで、車速情報の取得は、車速センサ80を用いる場合に限られない。例えば、GPS(Global Positioning Systems)などの位置情報センサに基づく絶対位置の変化量から算出した車速を取得してもよい。あるいは、車両に周辺監視装置として機能するカメラを備え、カメラにより取得される相対位置の変化量から算出した車速を取得してもよい。暗騒音情報を取得した後、ステップS102に進む。
ステップS102では、暗騒音が閾値以上であるか否かを判定する。暗騒音情報として車速情報を用いる場合には、車速が所定速度以上であるか否かを判断することとなる。ここで、所定速度は、車両の走行に伴って発生する暗騒音の大きさが、冷媒通過音や吸入脈動音よりも大きくなると想定される速度である。所定速度は、例えば20km/hである。車速が所定速度以上であれば、車両の走行に伴って発生する暗騒音が閾値以上であると判定して、ステップS117に進む。一方、車速が所定速度未満であれば、車両の走行によって発生する暗騒音が閾値未満であると判定して、ステップS111に進む。車両が停止している状態を示す車速がゼロの状態は、車速が所定速度未満である場合に含まれる。
暗騒音情報として天候情報を用いる場合には、天気が雨天であるか否かを判断することになる。この場合、雨天であれば暗騒音が閾値以上であると判定し、雨天でなければ暗騒音が閾値未満であると判定することができる。暗騒音情報としてオーディオ機器の出力情報を用いる場合には、オーディオ機器のボリュームが大きいか否かを判断することになる。また、複数の暗騒音情報を組み合わせて、暗騒音が閾値以上であるか否かを判定してもよい。また、乗員が暗騒音の大きさや暗騒音が大きいか否かの判断基準となる閾値を入力する構成としてもよい。この場合、乗員が暗騒音の閾値を高く設定することで、常に暗騒音が閾値未満となるようにすることができる。
ステップS111では、負荷量を取得する。負荷量とは、目標となる温度まで冷房運転を行う際に圧縮機31に加えられる負荷の大きさのことである。負荷量は、外気温や、目標温度と内気温との温度差などの状況によって変動する物理量から推定することができる。負荷量は、冷房運転に必要な冷房能力が高いほど多くなる。負荷量は、外気温センサ91aで計測した外気温から推定することができる。この場合、外気温が高いほど高い冷房能力が必要であり、負荷量が多いと判断できる。ただし、負荷量の取得方法は、上述した方法に限られない。
負荷量の取得方法の他の一例は、内気温センサ91bで計測した内気温と目標温度との温度差から負荷量を取得する方法である。この場合、内気温と目標温度との温度差が大きいほど高い冷房能力が必要であり、負荷量が多いと判断できる。
負荷量の取得方法の他の一例は、圧縮機31の容量制御に用いる制御弁の電流値から負荷量を取得する方法である。この場合、制御弁の電流値が大きいほど制御弁の開度が大きく、負荷量が多いと判断できる。
負荷量の取得方法の他の一例は、蒸発器センサ91cで計測した温度から負荷量を取得する方法である。この場合、蒸発器39の温度が高いほど蒸発器39に冷媒を多く流して蒸発器39の温度を低下させる必要があると判断できる。言い換えると、蒸発器39の温度が高いほど負荷量が多いと判断できる。蒸発器センサ91cに代えて、蒸発器39の吹き出し口の温度を計測するセンサを備えて、蒸発器39の温度を推定してもよい。
負荷量の取得方法の他の一例は、圧力センサ91dで計測した冷媒圧力から負荷量を取得する方法である。この場合、圧力が高いほど蒸発器39に流れ込む冷媒量が多い状態であり、負荷量が多いと判断できる。上述した複数の負荷量の取得方法を組み合わせて負荷量を取得してもよい。複数の負荷量の取得方法を組み合わせることで、負荷量を正しく取得しやすい。負荷量を取得した後、ステップS112に進む。
ステップS112では、負荷量が高負荷量未満であるか否かを判定する。ここで、高負荷量とは、圧縮機31で必要となる吐き出し能力が高い状態の負荷量である。負荷量を外気温から取得した場合、高負荷量は例えば25℃である。負荷量が高負荷量未満である場合には、ステップS113に進む。一方、負荷量が高負荷量以上である場合には、圧縮機31に起因する吸入脈動音が発生する場合があると判断して、ステップS116に進む。
ステップS116では、圧縮機31の可変制御を実行する。圧縮機31が起動前であれば、可変制御で起動し、可変制御で駆動することとなる。圧縮機31が起動後であれば、可変制御で駆動することとなる。これにより、圧縮機31の起動時に徐々に圧縮容量を増加させるなどして、吸入する冷媒の量を適切に制御することで圧縮機31の吸入脈動音を抑制できる。また、オンオフ制御を実行した場合に比べて、圧縮機31が駆動している時間を長く確保できる。このため、冷媒のスーパーヒートが過剰に高くなることを防止して、吸入脈動音を抑制できる。さらに、一連の空調制御の中で圧縮機31が起動する回数を少なくできる。
外気温が高い場合には、内気温が目標温度まで下がって冷房運転が不要となった後であっても、再び内気温が上昇して冷房運転が必要な温度となりやすい。このような状況でオンオフ制御を実行すると、短時間のうちに圧縮機31の駆動と停止が繰り返されやすく、起動時の吸入脈動音が発生する頻度が高くなりやすい。一方、可変制御を実行すると、内気温が目標温度まで下がった後も、圧縮機31が低い吐き出し能力で駆動している状態が維持されやすい。このため、圧縮機31を起動する回数を少なくでき、起動時の吸入脈動音が発生する頻度を低くしやすい。可変制御を実行した後、可変制御を維持してステップS131に進む。
ステップS113では、負荷量が低負荷量未満であるか否かを判定する。ここで、低負荷量とは、圧縮機31で必要となる吐き出し能力が低い状態の負荷量である。低負荷量は、少なくとも高負荷量以下の負荷量に設定されている。負荷量を外気温から取得した場合、低負荷量は例えば10℃である。負荷量が低負荷量未満である場合には、圧縮機31の駆動によって冷媒通過音が発生する場合があると判断して、ステップS115に進む。一方、負荷量が低負荷量以上である場合には、吸入脈動音と冷媒通過音とのどちらの音も発生しにくい状態であると判断して、ステップS117に進む。
ステップS115では、圧縮機31のオンオフ制御を実行する。圧縮機31が起動前であれば、オンオフ制御で起動し、オンオフ制御で駆動することとなる。圧縮機31が起動後であれば、オンオフ制御で駆動することとなる。これにより、可変制御を実行した場合に比べて、冷凍サイクル装置30を循環する気相冷媒の量を多く確保しやすい。冷媒通過音が発生するオンオフ制御を実行した後、オンオフ制御を維持してステップS131に進む。
ステップS117では、圧縮機31の任意の制御方法を実行する。言い換えると、圧縮機31をオンオフ制御と可変制御とのどちらか好きな制御方法で実行する。任意の制御方法で圧縮機31を駆動した状態とした後、その制御方法を維持してステップS131に進む。
ステップS131では、空調要求の有無を判定する。乗員によって空調用スイッチ92がオフされた場合には、空調要求のない状態となる。一方、乗員による空調用スイッチ92のオンが維持されている場合には、空調要求のある状態が維持される。空調要求がない場合には、圧縮機31の駆動を停止して空調運転を終了する。一方、空調要求がある場合には、ステップS101に戻って一連の制御を繰り返す。これにより、周囲の環境変化や空調運転の進捗に合わせて圧縮機31の制御方法を適切に選択して実行できる。
ステップS111からステップS131に至るまでの制御内容が低騒音モードの制御内容に相当する。言い換えると、ステップS102で暗騒音が閾値未満であると判定した場合には、低騒音モードを実行し、ステップS102で暗騒音が閾値以上であると判定した場合には、通常モードを実行している。ここで、通常モードとは、空調運転にともなって発生する音を低減する目的では、特別な制御を行わないモードである。
上述した実施形態によると、空調制御部51は、負荷量取得部52で取得した負荷量に基づいて圧縮機31の制御方法をオンオフ制御とするか可変制御とするかを切り替える低騒音モードを実行する。このため、圧縮機31のオンオフ制御と可変制御とを状況に応じて使い分けることができる。したがって、冷媒通過音や吸入脈動音といった音の発生を圧縮機31の制御によって抑制することができる。よって、騒音の発生を抑制した車両用空調装置1を提供できる。
オンオフ制御と可変制御との切り替えによって冷媒通過音や吸入脈動音を抑制できる。このため、振動を吸収する目的で蒸発器39に制振部材を貼り付けるなど、別部品を用いた騒音対策を実施する場合に比べて、車両用空調装置1の重量を軽くしやすい。ただし、制御による騒音対策と別部品を用いた騒音対策を併用してもよい。
空調制御部51は、負荷量が高負荷量以上である場合に、圧縮機31を可変制御で制御する。このため、圧縮機31をオンオフ制御で制御する場合に比べて、圧縮機31の駆動している時間を長く確保できる。したがって、負荷量が多く、内気温の温度変化が激しくなりやすい状況下での圧縮機31における起動回数を少なくしやすい。よって、圧縮機31の起動時の吸入脈動音の影響を低減できる。
空調制御部51は、負荷量が低負荷量未満である場合に、圧縮機31をオンオフ制御で制御する。このため、圧縮機31の冷媒吐き出し能力が高い状態が維持される。したがって、冷凍サイクル装置30における気相冷媒の循環量を多く確保し、冷媒通過音が発生することを抑制できる。
負荷量取得部52は、外気温センサ91aで取得した外気温が高いほど負荷量が多いと推定する。このため、圧縮機31を起動する前の状態など、冷媒が流れていない状態においても負荷量を推定して取得することができる。
負荷量取得部52は、圧縮機31の容量制御に用いる制御弁の開度が大きいほど負荷量が多いと推定する。このため、実際の冷媒流量に対応して負荷量を推定できる。したがって、負荷量を正しく推定しやすい。
空調制御部51は、暗騒音情報取得部53で取得した暗騒音が閾値未満である場合には、低騒音モードを実行し、暗騒音が閾値以上である場合には、低騒音モードを実行しない。このため、冷媒通過音や吸入脈動音が乗員に知覚されにくい状態では、圧縮機31の制御方法に騒音を低減する目的での制限を設けることなく制御できる。したがって、低騒音以外の要素を優先した快適性の高い空調運転を実行できる。
暗騒音情報取得部53は、車速センサ80で取得した車速が速いほど暗騒音が大きいと推定する。このため、車両に標準的に装備されていることの多い車速センサ80を用いて暗騒音の大きさを推定できる。したがって、従来から車両に搭載されている部品を有効活用して、簡単な構成で冷媒通過音や吸入脈動音を低減した車両用空調装置1を提供できる。
ステップS112において、外気温に代えて別の物理量を用いて高負荷な状態であるか否かを判定してもよい。例えば、内気温と目標温度との温度差から高負荷な状態であるか否かを判定できる。あるいは、圧縮機31の制御弁の開度から高負荷な状態であるか否かを判定できる。あるいは、蒸発器センサ91cで計測した蒸発器39の温度から高負荷な状態であるか否かを判定できる。あるいは、圧力センサ91dで計測した冷媒圧力から高負荷な状態であるか否かを判定できる。また、負荷を推定可能な複数の物理量を組み合わせて、複数の情報から高負荷な状態であるか否かを判定してもよい。これによると、精度よく高負荷な状態か否かを判定して、吸入脈動音への対策をとることができる。
ステップS113において、ステップS112と同様に、外気温に代えて別の物理量を用いて低負荷な状態であるか否かを判定してもよい。例えば、内気温と目標温度との温度差から低負荷な状態であるか否かを判定できる。あるいは、圧縮機31の制御弁の開度から低負荷な状態であるか否かを判定できる。あるいは、蒸発器センサ91cで計測した蒸発器39の温度から低負荷な状態であるか否かを判定できる。あるいは、圧力センサ91dで計測した冷媒圧力から低負荷な状態であるか否かを判定できる。また、負荷を推定可能な複数の物理量を組み合わせて、複数の情報から低負荷な状態であるか否かを判定してもよい。これによると、精度よく低負荷な状態か否かを判定して、冷媒通過音への対策をとることができる。
高負荷量と低負荷量とを同じ流量に設定してもよい。この場合、負荷量が閾値以上であれば、可変制御を実行し、閾値未満であればオンオフ制御を実行することとなる。これによると、一回の判定でオンオフ制御と可変制御とのどちらの制御方法を実行するかを判定できる。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、起動前負荷量に基づいて圧縮機31を起動し、起動後負荷量に基づいて圧縮機31を駆動する。
車両用空調装置1の空調運転について、冷房運転を行う場合を例に以下に説明する。図4において、乗員によって空調用スイッチ92がオンされるなどして、車両用空調装置1の冷房運転が開始されると、ステップS201で圧縮機31が起動前の状態であるか否かを判定する。起動前の状態とは、圧縮機31が停止している状態のことである。一方、起動後の状態とは、圧縮機31が駆動している状態のことである。冷房運転を開始する際は、圧縮機31は必ず起動前の状態である。圧縮機31が起動前であれば、ステップS211に進む。一方、圧縮機31が起動前でなければステップS221に進む。
ステップS211では、起動前負荷量を取得する。起動前負荷量とは、負荷量の一種であって、起動前の圧縮機31における負荷量のことである。負荷量と同様、起動前負荷量は、外気温などから推定することができる。起動前負荷量を取得した後、ステップS212に進む。
ステップS212では、起動前負荷量が高負荷量以上であるか否かを判定する。高負荷量とは、圧縮機31をオンオフ制御しても大きな吸入脈動音の発生しない負荷量である。起動前負荷量を外気温から取得した場合、高負荷量は、例えば25℃である。起動前負荷量が高負荷量以上である場合には、吸入脈動音が発生しやすいと判断して、ステップS215に進む。一方、起動前負荷量が高負荷量未満である場合には、吸入脈動音が発生しにくいと判断して、ステップS216に進む。
ステップS215では、可変制御を実行する。圧縮機31は起動前の状態であるため、可変制御で圧縮機31を起動することとなる。これにより、圧縮機31の圧縮容量を徐々に増加させるなどして、吸入する冷媒の量を適切に制御することで圧縮機31の吸入脈動音を抑制できる。可変制御で圧縮機31を起動した後、ステップS221に進む。
ステップS216では、オンオフ制御を実行する。圧縮機31は起動前の状態であるため、オンオフ制御で圧縮機31を起動することとなる。これにより、一度に多くの冷媒を吸入して圧縮できる。このため、可変制御で徐々に圧縮容量を増加させながら圧縮機31を起動する場合に比べて、素早く冷媒流量を増加させることができる。オンオフ制御で圧縮機31を起動した後、ステップS221に進む。
ステップS221では、起動後負荷量を取得する。起動後負荷量とは、負荷量の一種であって、起動後の圧縮機31における負荷量のことである。負荷量と同様、起動後負荷量は、外気温などから推定することができる。起動後負荷量を取得した後、ステップS222に進む。
ステップS222では、起動後負荷量が低負荷量未満であるか否かを判定する。低負荷量とは、圧縮機31を可変制御しても大きな冷媒通過音の発生しない負荷量である。起動後負荷量を外気温から取得した場合、低負荷量は、例えば10℃である。起動後負荷量が低負荷量未満である場合には、冷媒通過音が発生しやすいと判断して、ステップS225に進む。一方、起動後負荷量が低負荷量以上である場合には、冷媒通過音が発生しにくいと判断して、ステップS226に進む。
ステップS225では、オンオフ制御を実行する。圧縮機31は起動後の状態であるため、オンオフ制御で圧縮機31を駆動することとなる。言い換えると、圧縮機31が一度に多くの冷媒を吸入して圧縮している状態である。このため、気相冷媒の循環量を多く確保して、冷媒通過音が発生することを抑制できる。オンオフ制御で圧縮機31を駆動した後、オンオフ制御を維持しながらステップS231に進む。
ステップS226では、可変制御を実行する。圧縮機31は、起動後の状態であるため、可変制御で圧縮機31を駆動することとなる。言い換えると、圧縮機31の圧縮容量を適宜変更しながら、圧縮機31を駆動している状態である。このため、オンオフ制御した場合に比べて、圧縮機31の駆動時間を長く確保して、圧縮機31を起動する頻度を少なくできる。可変制御で圧縮機31を駆動した後、可変制御を維持しながらステップS231に進む。
ステップS231では、空調要求の有無を判定する。空調要求がない場合には、圧縮機31の駆動を停止して空調運転を終了することとなる。一方、空調要求がある場合には、ステップS201に戻って一連の制御を繰り返す。ただし、空調運転を開始した場合とは異なり、ステップS201において、圧縮機31が駆動中である場合があり得る。ステップS201からステップS231に至るまでの制御が低騒音モードの制御内容に相当する。この低騒音モードを繰り返し実行することで、周囲の環境変化や空調運転の進捗に合わせて圧縮機31の制御方法を適切に選択して実行できる。
上述した実施形態によると、空調制御部51は、起動前負荷量に基づいて起動時の圧縮機31の制御方法を切り替え、かつ、起動後負荷量に基づいて起動後の圧縮機31の制御方法を切り替える。このため、起動前の状態と起動後の状態とで負荷量が変化した場合に、変化した負荷量に応じて制御方法を切り替えることができる。したがって、外気温などの周囲の環境変化に合わせて圧縮機31の制御方法を適切に切り替えることができる。また、内気温と目標温度との差などの空調運転の進捗に合わせて圧縮機31の制御方法を適切に切り替えることができる。
空調制御部51は、起動前負荷量が高負荷量以上である場合に、圧縮機31を可変制御で起動し、かつ、起動後負荷量が低負荷量未満である場合に、圧縮機31をオンオフ制御で駆動する。このため、負荷量が高いときにオンオフ制御で圧縮機31を起動した場合に発生しやすい吸入脈動音を抑制し、かつ、負荷量が低いときに可変制御で圧縮機31を駆動した場合に発生しやすい冷媒通過音を抑制しやすい。したがって、騒音の原因となり得る吸入脈動音と冷媒通過音とを圧縮機31の制御方法の切り替えによって抑制できる。
この実施形態においても、暗騒音情報を取得して、暗騒音が閾値以下と判定された場合に低騒音モードを実行し、暗騒音が閾値以上と判定された場合に通常モードを実行してもよい。
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置およびその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。