JP7437621B2 - Wc基超硬合金およびwc基超硬合金切削工具 - Google Patents

Wc基超硬合金およびwc基超硬合金切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、優れた耐摩耗性、耐塑性変形性を有し、さらに、耐欠損性にも優れたWC基超硬合金、および、該超硬合金を工具基体として用いたWC基超硬合金切削工具に関するものである。
従来、炭化タングステン(WC)を主成分とする硬質相と結合相とを有する超硬合金が切削工具の工具基体として用いられている。そして、この工具基体には、強度、靭性、硬さ、耐塑性変形性、耐摩耗性、耐クレーター摩耗性などの特性に加え、優れた耐欠損性や耐チッピング性を有することが求められており、耐欠損性や耐チッピング性が不足する場合には、Co量の増加や、あるいは、WCの粗粒化により、耐摩耗性や耐塑性変形性による効果を一部抑制することにより、耐欠損性および耐チッピング性の向上を図っている。
例えば、特許文献1では、WC基超硬合金において、焼結後、冷却速度100℃/分以上にて超急冷することにより、硬質相の接触率を低減させて、靭性の向上を図り、工具基体として、耐欠損性や耐チッピング性を高めることが提案されている。
また、特許文献2では、WC基超硬合金において、1350℃以上、1450℃以下にて高温真空焼結を行い、Ar雰囲気下にてシンターHIP処理を行った後、10℃/min以上、15℃/min以下の冷却速度にて冷却を行うことにより、WCの平均粒径を0.8μm以下、結合相における平均粒径を200μm以下とし、粒界部分における不純物や粒成長抑制成分の含有量を均一化することにより、靭性の向上を図り、耐欠損性を高めることが提案されている。
特公平5-20492号公報 特開2004-346370号公報
前記特許文献1に記載された超硬合金は、硬質相の接触率を低減させ、靭性を向上させて耐欠損性の向上を図るものであるが、他方、硬質相の接触率が低減することにより、切削工具の工具基体に用いた場合、耐塑性変形性が低下するという課題を有している。
また、前記特許文献2に記載された超硬合金は、粒界部における不純物や粒成長抑制成分の含有量の均一化、および、結合相粒界の健全化を図り、耐摩耗性と耐欠損性の両立を図るというものであるが、不純物や粒成長抑制成分の絶対量は変化するものではないため、その効果は、限定的であり、また、結合相の粒径はWCの粒径よりも大きく、結合相粒界の占める体積率は、WC/WC粒界やWC/結合相粒界の占める体積率よりも極めて小さいことから、その効果は、同様に限定的であるため、かかる超硬合金を切削工具の工具基体として、例えば、断続部を含む鋼の高能率加工に用いた場合には、刃先の塑性変形に伴う偏摩耗や欠損により工具寿命に達してしまうという課題を有していた。
そこで、本発明は、超硬合金が優れた耐塑性変形性および耐摩耗性を有するとともに、耐欠損性を合わせ持ち、切削工具の工具基体として用いた場合、特に、断続部を含む鋼の高能率加工において、長期の使用にわたり、優れた切削性能を発揮する超硬合金、および、該超硬合金を工具基体として用いた切削工具を提供することを目的とする。
本発明者らは、超硬合金に優れた耐塑性変形性と、耐摩耗性、および耐欠損性とを付与するために鋭意検討を重ねたところ、2つのWC結晶粒間に存在する結晶粒界上の原子において、その位置の多くが両側の結晶粒の格子点に一致し、両結晶粒に共有された粒界、すなわち、WCの対応粒界において、結晶配列の乱れが一般粒界(ランダム粒界)に比較して少なく、原子の結合が強固なΣ2対応粒界の、全WC/WC粒界における比率(以下、「Σ2対応粒界比率」ともいう。)を高めることにより、優れた耐塑性変形性、耐摩耗性、および、耐欠損性を合わせ持ち、特に、用途に応じて優れた特性、すなわち、断続部を含む鋼の高能率加工に用いた場合に、刃先の塑性変形に伴う偏摩耗や欠損に対して優れた耐性を有することを知見した。
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであって、以下のとおりのものである。
「(1)WC基超硬合金において、
Co、Niの少なくとも1種を4.0質量%以上、10.0質量%未満、
TiC、TaC、NbC、ZrC、HfC、および、VCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計にて、4.0質量%以上、12.0質量%未満、
さらに、Crを0.0質量%以上、0.5質量%未満にて含有し、
残部は、WCおよび不可避的不純物とからなり、
WCの平均粒径は、0.2μm以上、4.0μm以下であり、
WCのΣ2対応粒界の、全WC/WC粒界に占める存在比率(Σ2対応粒界比率)が15%以上である、
ことを特徴とするWC基超硬合金。
(2)前記Σ2対応粒界の、全WC/WC粒界に占める存在比率が25%以上であることを特徴とする(1)に記載された超硬合金。
(3)前記(1)または(2)に記載されたWC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具。
(4)前記(3)に記載されたWC基超硬合金製工具の少なくとも切れ刃には、硬質被覆層が形成されている表面被覆WC基超硬合金製切削工具。」
本発明に係る超硬合金は、WC結晶粒同士の結合の強いΣ2対応粒界の比率を高めることにより、WC/WC粒界に生じる粒界すべりに対する抵抗を向上させ、耐欠損性を損なうことなく、耐塑性変形性を向上させるものである。
本発明の超硬合金の組織の模式図である。 切れ刃の逃げ面塑性変形量の一例を示す模式図である。なお、上図(すくい面)は平面図、下図(逃げ面)は側面図である。
以下、本発明の超硬合金および切削工具について、より詳細に説明する。
1.超硬合金
Co、Ni:
Co、Niは、WC基超硬合金の主たる結合相形成成分として含有させるが、CoとNiの含有量の少なくとも1種以上(すなわち、Co、Niのいずれか一つであってもよいし、CoとNiを組み合わせてもよい)の合計が超硬合金全体の4.0質量%未満では、断続部を含む鋼の高能率加工において、耐チッピング性や耐欠損性が十分でなく、一方、その含有量の合計が10.0質量%以上では、耐塑性変形性および耐摩耗性が不十分となる。
したがって、CoとNiの含有量の少なくとも1種以上の合計は、4.0質量%以上、10.0質量%未満とした。
結合相中には、硬質相の成分であるWやC、その他の不可避不純物が含まれていてもよい。また、結合相には、Cr、Ti、Ta、Nb、Zr、HfおよびVの少なくとも1種を含んでいてもよいが、これらの元素は、結合相中に存在するときは、結合相中に固溶した状態であると推定される。
なお、Co、Niの少なくとも1種以上の合計の質量%は、超硬合金の任意の表面または断面を鏡面加工し、その加工面を蛍光X線回折測定することにより求められる。
TiC、TaC、NbC、ZrC、HfC、VC:
本発明のWC基超硬合金において、TiC、TaC、NbC、ZrC、HfC及びVCは、γ相を形成する炭化物であり、断続部を含む鋼の高能率加工において、少なくとも炭化物換算にて1種以上の合計にて4.0質量%未満では、耐クレーター摩耗性が不十分となり、他方、12.0質量%以上では、耐摩耗性が不十分となり、また、凝集体が生じやすく、欠損発生の起点となるため、耐クレーター摩耗性と耐摩耗性の両特性が発揮可能な、4.0質量%以上、12.0質量%未満の範囲とすることが好ましい。
なお、TiC、TaC、NbC、ZrC、HfC、VCの含有量は、WC基超硬合金において、EPMAにて測定された、Ti量、Ta量、Nb量、Zr量、Hf量およびV量をいずれも炭化物換算した数値である。
Cr
Crは、結合相を形成するCo中にCrとして固溶し、固溶強化することにより、WC基超硬合金の強度を高めるものであるが、添加量が増加するとCrとWとの複合炭化物を析出し、靭性が低下し、また、欠損発生の起点となるため、断続部を含む鋼の高能率加工においては、炭化物換算にて0.5質量%未満とすることが好ましい。
すなわち、Crの含有割合は、Crとして0.0質量%以上、0.5質量%未満とする。
WC:
WCは、WC基超硬合金の主たる硬質相形成成分として含有される。硬質相には、製造過程で不可避的に混入する不可避不純物が含まれていてもよい。
(1)平均粒径:
WCの平均粒径は、0.2μm未満では、切削加工中に硬質相同士のすべりが生じやすく耐塑性変形性が十分ではなくなり、一方、平均粒径が4.0μmを超えると、十分な耐摩耗性が得られなくなるため、0.2μm以上、4.0μm以下の範囲より選択するのが好ましい。
WCの平均粒径は、超硬合金の任意の表面または断面を鏡面加工し、その加工面を後方散乱電子回折(EBSD)で観察し、画像解析によって、少なくとも4000個の各硬質相の面積を求め、その面積に等しい円の直径を算出して平均したものである。
なお、鏡面加工には、例えば、集束イオンビーム装置(FIB装置)、クロスセクションポリッシャー装置(CP装置)等を用いる。
(2)Σ2対応粒界比率:
本発明者らは、超硬合金に優れた耐塑性変形性および耐摩耗性、耐チッピング性、耐欠損性を付与するために鋭意検討を重ねたところ、2つのWC結晶粒間に存在する結晶粒界上の原子において、その位置の多くが両側の結晶粒の格子点に一致し、両結晶粒に共有された粒界、すなわち、WCの対応粒界において、結晶配列の乱れが一般粒界(ランダム粒界)に比較して最も少なく、原子の結合が強固なΣ2対応粒界長の、全WC/WC粒界長における比率、
すなわち、Σ2対応粒界比率を高めることにより、用途に応じ優れた耐塑性変形性、耐摩耗性、耐チッピング性および耐欠損性を有することを知見した。
Σ2対応粒界比率は、15%未満では、粒界強度の高いWC/WC粒界の割合が少なく不十分となり、耐欠損性を満足しないため、15%以上と規定した。さらには、25%以上であることが好ましい。
Σ2対応粒界比率の測定は、例えば、SEM-EBSD法を用いて測定することができる。すなわち、SEMにて、1視野24μm×72μmの視野にてピクセルサイズを0.1μm×0.1μmとし、かつWC数が4000個以上となるように複数視野観察し、EBSDにて解析される、隣り合うWCが[10-10]方向を軸として90°回転した方位関係を持つ粒界をΣ2対応粒界と定義し、全WC/WC粒界長に占めるΣ2対応粒界長の比率を算出することにより求めることができる。
ただし、Brandonの条件式より、Σ2対応粒界は、前記90°の方位関係から両方向に10.6°以内の角度の範囲を含むものと定義されるので、隣り合うWCが[10-10]方向を軸として79.4°以上、100.6°以下の方位関係をもつものをΣ2対応粒界と定義した。
不可避不純物:
前記のように、硬質相、結合相には製造過程で不可避的に混入する不純物を含んでいてもよく、その量は超硬合金全体に対して0.3質量%以下が好ましい。
2.切削工具:
本発明の切削工具は、本発明の超硬合金に硬質皮膜を形成したものである。硬質皮膜の種類、成膜法は、それぞれ、当業者に既によく知られている膜種、成膜手法を採用すればよく、特に、制限するものではない。あえて例示をするならば、物理蒸着法(PVD法)または化学蒸着法(CVD法)により、Ti、Al、Cr、BおよびZrからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素と、C、NおよびOからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素とを必須とする単層又は多層の硬質皮膜が有用である。具体的には、例えば、TiC、CrC、SiC、VC、ZrC、TiN、AlN、CrN、VN、ZrN、Ti(CN)、(TiSi)N、(TiB)N、(TiZr)N、TiAl(CN)、TiCr(CN)、TiZr(CN)、Ti(CNO)、TiAl(CNO)、Ti(CO)、(TiCr)N、(TiAlCr)N、(AlCr)N、AlおよびTiB等の単層または多層の皮膜が挙げることができ、硬質皮膜の膜厚は、例えば1.0~15.0μmである。
3.製造方法:
本発明の超硬合金は、例えば、以下のようにして作製することができる。
まず、WC粉末、Co、Ni粉末の少なくとも1種以上、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、ZrC粉末、HfC粉末、VC粉末のうちの1種以上、および、必要により、Cr粉末を加えた原料粉末を、本発明の超硬合金にて規定する組成となるように配合し混合する。
特にWC粉末は、他の原料粉末との混合前にプレス成形-熱処理-解砕処理を複数回実施し、WC粉末におけるΣ2対応粒界比率を高めた上で、他の原料粉末と混合することができる。
前処理されたWC粉末と、他の原料粉末との混合には、例えば、超音波ホモジナイザー、サイクロンミキサーなどのメディアレス混合を用いることにより、大きな破砕力を加えることなく配合・混合することができるため、炭化時および前処理時に形成されたWCのΣ2対応粒界の消失を回避することができる。
次いで、前記混合粉末を成形して圧粉成形体を作製し、前記圧粉成形体の焼結工程においては、固相焼結が進むとその後の液晶焼結時にΣ2対応粒界が形成されにくくなるため、固相焼結が進む温度領域(1000℃~1350℃)では昇温速度を40℃/分以上に早め、固相焼結を抑制した上で、1350℃~1450℃にて、真空雰囲気下、10~80分の時間にて本焼結を行うことにより、微粒WCに形成されるΣ2対応粒界が溶解・再析出により消失することを回避し、Σ2対応粒界比率が15%以上、さらには、25%以上に維持されたWC焼結体を得ることができる。
本発明の超硬合金および該超硬合金を工具基体として用いた切削工具について、以下、実施例により具体的に説明する。
(a)原料粉末
まず、焼結用の原料粉末として、体積基準の平均粒径(d50)が0.5μm以上、4.0μm以下のWC粉末、および、平均粒径(d50)が、いずれも、1.0μm以上、4.0μm以下の範囲内のCo粉末、Ni粉末、Cr粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、ZrC粉末、HfC粉末、VC粉末を用意した。
特に、WC粉末については、表1に示すとおり、他粉末との混合前の事前の準備工程として、下記手順により、前記素原料WC粉末について、プレス成形-熱処理-解砕処理を複数回実施すことにより、結晶性に優れ、Σ2対応粒界比率を高めたWC原料粉末を得て、これを原料として用いた。
以下、具体的に示すと以下のとおり。
1)前記素原料WC粉末を粒径1mm以上、3mm以下の球状にプレス成形し、1300以上、1400℃以下、アルゴン雰囲気10Pa以上、100Pa以下にて30分間以上、90分間以内の熱処理を施す。
2)前記熱処理により得られた粉末を乳鉢にて3分以上、10分以下の解砕処理を施す。
3)1)と2)の工程を2回以上、10回以下にて繰り返すことにより、Σ2対応粒界比率を高めたWC粉末を得た。
すなわち、まず、1)工程では、別々の個体であったWC粒子同士をプレス成形により接触させた状態にて熱処理を行うことにより、WC粒子同士を接合させ、その界面に対応粒界およびランダム粒界を形成させる。次いで、2)工程では、解砕処理により、粒界強度の低いランダム粒界やΣ値の高い粒界が優先して破壊され、粒界強度の高いΣ2対応粒界が残存する。そして、3)工程として、1)工程と2)工程とを繰り返すことにより、Σ2対応粒界比率の高いWC粉末を作製することができた。
(b)混合工程(メディアレス混合工程)
次に、(a)にて、Σ2対応粒界比率を高めたWC原料粉末と、事前に準備した、前記平均粒径(d50)が、いずれも、1.0μm以上、4.0μm以下の範囲内のCo粉末、Ni粉末、Cr粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、HfC粉末、VC粉末とを、表2に示す配合組成となるように配合して焼結用粉末とし、特に、WC粉末について炭化時に形成されたΣ2対応粒界が破壊されるのを防ぐために、メディアレスのアトライター混合により、回転数50rpm、8時間湿式混合し、乾燥後、100MPaの圧力でプレス成形し、圧粉成形体を作製した。
(c)焼結工程
昇温工程;
次いで、固相焼結となる1000℃から焼結温度である1350℃までの昇温工程においては、昇温速度を40℃/分以上に早めることにより、固相焼結を抑制した。
すなわち、液相温度領域における昇温後の液相焼結時には、また、新たなΣ2対応粒界が形成されるものの、液相が出現する前の温度域においては、WC同士が固相拡散により結合しネッキングが強固に形成されると本来液相焼結時に形成されるΣ2対応粒界が減少してしまうことから、固相拡散が進む1000~1350℃の温度域において、昇温速度を速めたものである。
焼結工程;
次いで、焼結工程では、1350℃以上への昇温後、1350℃~1450℃にて10~80分、真空0.1Pa以下とすることにより、微粒WCに形成されるΣ2対応粒界の溶解、再析出による消失を防ぎ、WC基超硬合金焼結体を得た。
次に、WC基超硬合金焼結体を機械加工、研削加工し、CNMG432MAの形状に整え、表4に示す超硬合金基体1~10(以下、本発明工具基体1~10という)を作製した。
比較のために、比較例の超硬合金基体1~7(以下、比較例工具基体1~7という)を作製した。
その製造工程は、本発明工具基体1~10の製造条件を外れた、表3に示す固相焼結条件、および、液相焼結条件にて、焼結工程を行い、WC基超硬合金焼結体を得た後、前記WC基超硬合金焼結体を機械加工、研削加工し、CNMG432MAの形状に整えることにより、表5に示す比較例工具基体1~7として作製した。
本発明工具基体1~10および比較例工具基体1~7の超硬合金の断面について、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により、その成分であるCr、Ti、Ta、Nb、Zr、Hf、Vの各元素につき、その含有量を10点測定し、その平均値を各成分の含有量とした。
なお、ここで、Cr、Ti、Ta、Nb、Zr、Hf、Vは、それぞれの炭化物に換算して含有量を算出した。表4、表5に、それぞれの平均含有量を示す。
Figure 0007437621000001

Figure 0007437621000002

Figure 0007437621000003

Figure 0007437621000004

Figure 0007437621000005

前記本発明工具基体1~10および比較例工具基体1~7の表面に、表6に示す平均層厚の硬質被覆層をCVD法で被覆形成し、本発明表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、本発明被覆工具という)1~10、比較例表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、比較例被覆工具という)1~7を作製した。
切削条件:
スリット溝付き合金鋼丸棒の湿式外径旋削加工
被削材:SNCM439 幅30mmのスリット溝が1本加工されたφ200の丸棒
切削速度:300m/min
切り込み:1.5mm
送り:0.5mm/rev
切削時間:5分
上記湿式外径旋削加工試験後の、切れ刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。本切削試験では、切れ刃の逃げ面塑性変形量として次のものを採用した。すなわち、切削前の変形していない切れ刃稜線を基準とし、切削によって切れ刃稜線が押し込まれて変形した量を切れ刃の逃げ面塑性変形量として、切削時間終了後に測定した。具体的には、工具の主切れ刃側逃げ面について、切れ刃から十分離れた位置で主切れ刃側逃げ面とすくい面が交差する稜線上に線分を引き、同線分を切れ刃部方向に延伸し、延伸した線分と切れ刃部稜線間の距離(延伸した線分の垂直方向)が最も離れている部分を測定し、これを切れ刃の逃げ面塑性変形量として求めた(図2を参照)。
表7に、その結果を示す。
Figure 0007437621000006

Figure 0007437621000007

表7に示される試験結果によれば、本発明被覆工具は、偏摩耗や欠損を発生することなく、優れた耐塑性変形性を発揮する。これに対して、比較例被覆工具は、所定の切削時間において、工具が塑性変形に起因する欠損により寿命を迎えた。
本発明被覆工具においては、全WC/WC粒界長に対して、粒界強度の高いΣ2対応粒界長の占める比率が15%以上、より好ましくは、25%以上であることにより、WC/WC粒界に生じる粒界すべりに対する抵抗を向上させ、耐欠損性を損なうことなく、高い耐塑性変形性を発揮することができた。
以上のとおり、本発明の超硬合金および切削工具は、断続部を含む鋼の高能率加工に用いた場合、耐欠損性を損なうことなく耐塑性変形性を向上させることができるため、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮し、工具の長寿命化が図られる。

Claims (4)

  1. WC基超硬合金において、
    Co、Niの少なくとも1種を4.0質量%以上、10.0質量%未満、
    TiC、TaC、NbC、ZrC、HfC、および、VCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計にて、4.0質量%以上、12.0質量%未満、
    さらに、Crを0.0質量%以上、0.5質量%未満にて含有し、
    残部は、WCおよび不可避的不純物とからなり、
    WCの平均粒径は、0.2μm以上、4.0μm以下であり、
    WCのΣ2対応粒界の、全WC/WC粒界に占める存在比率(Σ2対応粒界比率)が15%以上である、
    ことを特徴とするWC基超硬合金。
  2. 前記Σ2対応粒界の、全WC/WC粒界に占める存在比率が25%以上であることを特徴とする請求項1に記載の超硬合金。
  3. 請求項1または請求項2に記載されたWC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具。
  4. 請求項3に記載されたWC基超硬合金製工具の少なくとも切れ刃には、硬質被覆層が形成されている表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
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