以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「アクリル系重合物」とは、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分に由来する重合物をいい、アクリル系ポリマーともいう。上記アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマーのことをいう。また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
<粘着シートの構成例>
ここに開示される粘着シートの一構成例を図1に示す。この粘着シート1は、一方の表面10Aが被着体への貼付面となっている粘着剤層10と、粘着剤層10の他方の表面10Bに積層された基材20と、を含む片面接着性の粘着シートとして構成されている。粘着剤層10は基材20の一方の表面20Aに固定的に接合している。基材20としては、例えばポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが用いられ得る。図1に示す例では、粘着剤層10は単層構造である。使用前(被着体への貼付け前)の粘着シート1は、例えば図1に示すように、粘着面10Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー30で保護された、剥離ライナー付き粘着シート50の形態であり得る。あるいは、基材20の第二面20B(第一面20Aとは反対側の表面であり、背面ともいう。)が剥離面となっており、基材20の第二面20Bに粘着面10Aが当接するように巻回または積層されることで粘着面10Aが保護された形態であってもよい。
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面が剥離処理された剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理には、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤が用いられ得る。いくつかの態様において、剥離処理された樹脂フィルムを剥離ライナーとして好ましく採用し得る。
ここに開示される粘着シートの粘着剤層は、上記構成例のような単層構造に限定されず、上記粘着剤層(典型的には化合物S含有粘着剤層)に加えて、同一または異なる組成の1または2以上の粘着剤層(追加粘着剤層)をさらに備えるものであってもよい。そのような、追加的に配置される1または2以上の粘着剤層の各層は、上述の化合物Sを含んでもよく、含まなくてもよい。追加粘着剤層が上記粘着剤層よりも基材側に配置される場合には、当該追加粘着剤層は、良好なリワーク性と高い剥離力との両立の観点から、剥離力上昇剤(例えば、化合物S)を含んでもよく、含まなくてもよい。
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートの態様であってもよい。図2に示すように、基材レス両面粘着シート2は、使用前においては、粘着剤層10の各面10A,10Bが少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー31の背面(粘着剤側とは反対側の表面)が剥離面となっており、剥離ライナー31の背面に粘着面10Bが当接するように巻回または積層されることで粘着面10A,10Bが保護された形態であってもよい。このような基材レス両面粘着シートは、例えば、粘着剤層のいずれか一方の表面に基材を接合して使用され得る。
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の一方の表面に部材(例えば、光学部材)が接合された粘着シート付き部材の構成要素であり得る。例えば、図1に示す粘着シート1は、図3に示すように、粘着剤層10の一方の表面10Aに光学部材70が接合された粘着シート付き光学部材100の構成要素であり得る。上記光学部材としては、粘着シートが貼り付けられる面が非吸水性の平滑面であるものが好ましい。このような構成の粘着シート付き光学部材は、粘着シートを光学部材に貼り付ける際に、必要に応じて後述する水剥離法を適用して容易にリワークを行うことができる。上記光学部材は、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム、金属板、ガラスを含む表面改質層(例えば、コーティング層、スパッタ層等)を有する樹脂フィルム、等であり得る。また、上記部材は、粘着シートと貼り合わされる面が親水化処理されていてもよい。親水化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理や、親水コーティング層を設ける親水コーティング処理等の、親水性の向上(例えば、水酸基の導入)に寄与する処理が挙げられる。
<粘着シートの特性>
(水剥離力FW0)
ここに開示される粘着シートは、水剥離力FW0(以下、「初期水剥離力」ともいう。)が1.0N/10mm以下であることが好ましい。
上記水剥離力FW0は、測定対象の粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて3時間後に、20μLの剥離水を供給して引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される。上記水剥離力FW0を有する粘着シートは、被着体への貼付け後、水等の水性液体を用いて上記被着体から容易に剥離することが可能である。これにより、例えば被着体への貼付けに際して異物の噛み込み等の不具合や貼付け不良が認められた場合に、上記被着体から上記粘着シートを容易に剥離して貼り直すことができる。
いくつかの態様において、水剥離力FW0(初期水剥離力)は、1.0N/mm未満であることが好ましく、0.8N/10mm未満でもよく、0.7N/10mm未満でもよく、0.6N/10mm未満でもよい。より水剥離力FW0が低い粘着シートによると、該粘着シートを水剥離法により剥離する際に被着体に与える負荷をより軽減することができる。このことは、例えば、薄い被着体、脆い被着体、変形(伸び、撓み、縒れ等)しやすい被着体、表面に損傷しやすい薄膜を有する被着体、等に貼り付けられる粘着シートにおいて特に有意義である。水剥離力FW0の下限は特に制限されず、実質的に0N/10mmでもよく、0N/10mm超でもよく、0.1N/10mm以上でもよい。
なお、リワーク性向上の観点から、上記水剥離力FW0の測定において、被着体上に粘着剤を残留させることなく該被着体から剥離する粘着シートが好ましい。すなわち、非糊残り性に優れた粘着シートが好ましい。被着体上への粘着剤の残留の有無は、例えば、粘着シート剥離後の被着体を目視で観察することにより把握することができる。同様に、後述する水剥離力FW1~FW3の測定において、被着体上に粘着剤を残留させることなく該被着体から剥離する粘着シートが好ましい。
ここに開示される粘着シートは、所望のタイミングで水剥離力を上昇させることにより接合信頼性(例えば耐水信頼性)を高めることができる。上記水剥離力の上昇は、適切な加熱処理を行うことによって促進することができる。上記加熱処理を行う場合の加熱温度は、例えば40℃以上とすることができ、50℃以上でもよく、60℃以上でもよい。加熱温度の上限は特に制限されない。通常は、加熱温度を100℃以下とすることが適当であり、80℃以下とすることが好ましく、65℃以下でもよく、45℃以下でもよい。上記加熱処理を行う場合の加熱時間は、水剥離力の上昇促進効果が適切に得られるように設定することができ、特に限定されない。上記加熱時間は、例えば5分~12時間程度の範囲から選択し得る。
(水剥離力FW2)
ここに開示される粘着シートは、水剥離力FW2(以下、「加熱処理後水剥離力」ともいう。)が4.0N/10mm以上であることが好ましい。
上記水剥離力FW2は、測定対象の粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて60℃で5時間加熱処理した後に、20μLの剥離水を供給して引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で室温において測定される。水剥離力FW2の高い粘着シートによると、水剥離力の上昇後において耐水信頼性のよい接合を形成することができる。
いくつかの態様において、上記水剥離力FW2(加熱処理後水剥離力)は、4.5N/10mm以上であることが好ましく、耐水信頼性の観点から5.0N/10mm以上でもよく、6.0N/10mm以上でもよく、7.0N/10mm以上でもよい。水剥離力FW2の上限は特に制限されない。後述する水剥離力FW1の抑制との両立を容易とする観点から、いくつかの態様において、水剥離力FW2は、例えば20N/10mm以下であってよく、15N/10mm以下でもよく、10N/10mm以下でもよい。
なお、本明細書に開示される粘着シートは、水剥離力の制限のない態様を包含し、そのような態様において、粘着シートは上記水剥離力FW0,FW2を満足するものに限定されない。また、上記加熱処理は、ここに開示される粘着シートの水剥離力を上昇させるために必須の処理ではない。例えば、被着体への貼付け後、室温程度の温度域に長期間(例えば、30日程度またはそれ以上)保持することによっても、被着体に対する水剥離力を上昇させて耐水信頼性を高めることは可能である。被着体に対して良好な水剥離性(低い水剥離力)を有することが望まれる工程または期間の後に、必要に応じて適切なタイミングで加熱処理を行うことにより、水剥離力の上昇を促進することができる。
(水剥離力FW1)
ここに開示される粘着シートは、水剥離力FW1(以下、「室温7日後水剥離力」ともいう。)が1.0N/10mm以下であることが好ましい。
上記水剥離力FW1は、測定対象の粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて室温で7日間経過後に、20μLの剥離水を供給して引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される。より具体的には、後述する実施例に記載の手順で測定される。水剥離力FW1が低い粘着シートは、貼付けから室温で7日経過後にも、水等の水性液体を用いて容易に剥離することができる。かかる粘着シートによると、例えば、所定期間内(例えば7日以内)に製造された積層体について、まとめてリワーク作業を行うことが可能となる。このことによって、上記粘着シートを被着体(例えば部材、好ましくは光学部材)に貼り付けて作製される積層体の生産性や工程管理の融通性を向上させ得る。
いくつかの態様において、上記水剥離力FW1(室温7日後水剥離力)は、1.0N/mm未満であることが好ましく、0.8N/10mm未満でもよく、0.7N/10mm未満でもよく、0.6N/10mm未満でもよい。水剥離力FW1が低い粘着シートによると、被着体への貼付け後、ある程度の期間が経過した後であっても、該粘着シートを水剥離法により剥離する際に被着体に与える負荷を軽減することができる。このことは、例えば、薄い被着体、脆い被着体、変形(伸び、撓み、縒れ等)しやすい被着体、表面に損傷しやすい薄膜を有する被着体、等に貼り付けられる粘着シートにおいて特に有意義である。水剥離力FW1の下限は特に制限されず、実質的に0N/10mmでもよく、0N/10mm超でもよく、0.1N/10mm以上でもよい。
(水剥離力FW3)
いくつかの好ましい態様に係る粘着シートは、水剥離力FW3(以下、「室温14日後水剥離力」ともいう。)が1.0N/10mm以下であることが好ましい。かかる粘着シートによると、該粘着シートを被着体に貼り付けて作製される積層体の生産性や工程管理の融通性をさらに向上させ得る。上記水剥離力FW3は、粘着面を被着体に貼り付けて室温で14日間経過後に、20μLの剥離水を供給して引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される。より具体的には、後述する実施例に記載の手順で測定される。上記水剥離力FW3(室温14日後水剥離力)は、1.0N/mm未満であることが好ましく、0.8N/10mm未満でもよく、0.7N/10mm未満でもよく、0.6N/10mm未満でもよい。水剥離力FW2の下限は特に制限されず、実質的に0N/10mmでもよく、0N/10mm超でもよく、0.1N/10mm以上でもよい。
(湿熱後剥離強度FN1)
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートは、湿熱後剥離強度FN1が3.0N/10mm以上であることが好ましい。
上記湿熱後剥離強度FN1は、測定対象の粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて85℃、85%RHの湿熱環境下に24時間保持し、次いで23℃、50%RHの環境下に5時間保持した後に同環境下において引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される(水は使用しない。)。より具体的には、後述する実施例に記載の手順で測定される。湿熱後剥離強度FN1が高い粘着シートは、接合信頼性の観点から好ましい。
湿熱剥離強度FN1は、5.0N/10mm以上であることがより好ましく、7.0N/10mm以上でもよく、10N/10mm以上でもよく、12N/10mm以上でもよい。湿熱剥離強度FN1の上限は特に制限されない。水剥離力FW1の抑制との両立を容易とする観点から、いくつかの態様において、水剥離力FW2は、例えば25N/10mm以下であってよく、20N/10mm以下でもよく、15N/10mm以下でもよい。
上記水剥離力FW1~FW3および湿熱後剥離強度FN1の測定において、被着体としては、蒸留水に対する接触角が5度~10度であるアルカリガラス板が用いられる。そのようなアルカリガラス板として、松浪硝子工業社製のアルカリガラス板(厚さ1.35mm、青板縁磨品)を用いられる。あるいは、上記松浪硝子工業社製のアルカリガラス板の相当品を用いることができる。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」、ミネベア社製)またはその相当品を用いることができる。剥離強度の測定は、被着体に貼り付けられた試験片の剥離が下から上に進行するように行う。後述する実施例でも同様の測定方法が用いられる。
また、光架橋性の粘着剤層を含む粘着シートであって、被着体への貼り合わせ後に一部または全部の粘着剤層を光架橋させる貼付け態様が適用される粘着シートでは、被着体としてのアルカリガラスに貼り付けた後の試験片に対し、23℃、50%RHの環境下で上記アルカリガラス板を介して光照射を行う。測定対象が両面粘着シートの場合は、後述のように該両面粘着シートの一方の粘着面にPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、測定を実施することができる。
なお、上記アルカリガラス板の接触角は、次のとおり測定する。すなわち、測定雰囲気23℃、50%RHの環境下において、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名「DMo-501型」、コントロールボックス「DMC-2」、制御・解析ソフト「FAMAS(バージョン5.0.30)」)を用いて液滴法により測定を行う。蒸留水の滴下量は2μLとし、滴下5秒後の画像からΘ/2法により接触角を算出する(N5で実施)。
(ヘイズ値)
ここに開示される技術において、粘着シートのヘイズ値は凡そ10%以下であることが適当であり、凡そ5%以下(例えば凡そ3%以下)であり得る。上記ヘイズ値は1.0%以下であることが好ましい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる光学用途に好適である。粘着シートのヘイズ値は、1.0%未満であってよく、0.7%未満であってもよく、0.5%以下(例えば0~0.5%)であってもよい。粘着シートに関するこれらのヘイズ値は、ここに開示される技術における粘着剤層のヘイズ値にも好ましく適用され得る。
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表すことができる。
Th[%]=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値[%]であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。
ヘイズ値は、ヘイズメーター(たとえば、村上色彩技術研究所製の「MR-100」)を用いて測定することができる。ヘイズ値は、例えば、粘着剤層の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートの粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。ここで、アクリル系粘着剤とは、アクリル系重合物をベースポリマーとする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。なお、ここでいう重合物の概念には、一般にオリゴマーと称されることのある比較的低重合度の重合物も包含される。なお、この明細書において、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマーの主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
(アクリル系粘着剤)
透明性や耐候性等の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の構成材料としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。アクリル系粘着剤としては、例えば、エステル末端に炭素原子数1以上20以下の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40重量%以上の割合で含むモノマー成分から構成されたアクリル系重合物をベースポリマーとして含有するものが好ましい。以下、炭素原子数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを「(メタ)アクリル酸CX-Yアルキルエステル」と表記することがある。特性のバランスをとりやすいことから、一態様に係るアクリル系重合物のモノマー成分全体のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、50重量%よりも多いことが適当であり、例えば55重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば99.9重量%以下であってよく、99.5重量%以下でもよく、99重量%以下でもよい。他の一態様に係るアクリル系重合物のモノマー成分全体に占めるC1-20(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば98重量%以下であってよく、粘着剤層の凝集性向上の観点から95重量%以下であってもよく、85重量%以下(例えば80重量%未満)でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。
(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルを用いることが好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを用いることがより好ましい。例えば、上記モノマー成分としてアクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)の一方または両方を含むことが好ましく、少なくとも2EHAを含むアクリル系粘着剤が特に好ましい。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルの他の例としては、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。
いくつかの態様において、上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを40重量%以上の割合で含み得る。モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、例えば50重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。上述したいずれかの下限値以上の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
また、粘着剤層の凝集性を高める観点から、モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、通常、99.5重量%以下とすることが適当であり、95重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。上述したいずれかの上限値以下の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーや、ホモポリマーのガラス転移温度が比較的高い(例えば10℃以上の)モノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系重合物に架橋点を導入したり、粘着剤の凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート)類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール(例えばアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)類。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物等。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の50重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましい。
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の50重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましい。
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、窒素原子を有するモノマーを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、経時後の剥離力を好ましく向上させることができる。窒素原子を有するモノマーの一好適例としては、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、一般式(1):
で表わされるN-ビニル環状アミドが挙げられる。ここで、一般式(1)中、R
1は2価の有機基であり、具体的には-(CH2
2)
n-である。nは2~7(好ましくは2,3または4)の整数である。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドンを好ましく採用し得る。窒素原子を有するモノマーの他の好適例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
窒素原子を有するモノマー(好ましくは、N-ビニル環状アミド等の、窒素原子含有環を有するモノマー)を使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上であってもよく、2重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよく、さらには5重量%以上または7重量%以上であってもよい。一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよい。他の一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば20重量%以下としてもよく、15重量%以下としてもよい。
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力や架橋(例えば、イソシアネート架橋剤による架橋)の程度を好適に調節し得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上または10重量%以上でもよい。また、粘着剤層の吸水を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよい。他の一態様では、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば15重量%以下としてもよく、10重量%以下としてもよく、5重量%以下としてもよい。
ここに開示される粘着シートの粘着剤層において、アクリル系重合物のモノマー成分は、上記で例示したアルコキシアルキル(メタ)アクリレートやアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含んでよく、含まなくてもよい。ここに開示される技術の一態様では、アクリル系重合物のモノマー成分のうちアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は20重量%未満であり、かつアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合は20重量%未満である。これにより、粘着剤層は、ゲル化等の問題なくシート形成しやすい。上記モノマー成分に占めるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。同様に、上記モノマー成分に占めるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
いくつかの態様において、アクリル系重合物のモノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば2重量%以下であってよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下(例えば0.1重量%未満)でもよい。アクリル系重合物のモノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しなくてもよい。ここで、カルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しないとは、少なくとも意図的にはカルボキシ基含有モノマーを使用しないことをいう。このような組成のアクリル系重合物は、耐水信頼性の高いものとなりやすく、また金属を含む被着体に対しては金属腐食防止性を有するものとなり得る。
また、好ましい一態様において、アクリル系重合物のモノマー成分は、親水性モノマーの割合が制限されている。これにより、後述する水親和剤による水剥離性が好ましく発揮される。ここで、本明細書における「親水性モノマー」は、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子を有するモノマー(典型的には、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー)およびアルコキシ基含有モノマー(典型的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)をいうものとする。この態様において、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は、35重量%以下であることが好ましく、例えば30重量%以下であってもよく、28重量%以下であってもよい。特に限定されるものではないが、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は、1重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、経時後の剥離力を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上とすることができる。一態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、例えば30重量%以下であってもよく、25重量%以下(例えば15重量%以下、さらには10重量%以下)であってもよい。
上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度Tgが、例えば-75℃以上10℃以下となるように設定され得る。いくつかの態様において、上記Tgは、粘着剤層の表面形状追従性の観点から、0℃以下であることが適当であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であってもよく、-30℃以下であってもよい。また上記Tgは、粘着剤層の凝集性の観点から、例えば-60℃以上であってよく、-50℃以上でもよく、-45℃以上または-40℃以上でもよい。
ここで、上記Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
イソステアリルアクリレート -18℃
メチルメタクリレート 105℃
メチルアクリレート 8℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
N-ビニル-2-ピロリドン 54℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃
イソボルニルアクリレート 94℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、特開2007-51271号公報に記載された方法により得られる値を用いるものとする。
ここに開示されるアクリル系重合物は、特に限定されるものではないが、SP値が23.0(MJ/m3)1/2以下であることが好ましい。そのようなSP値を有するアクリル系重合物を含む粘着剤に、後述の水親和剤を含ませることによって、初期水剥離力(FW0)が低く、かつ加熱後水剥離力(FW2)の高い粘着剤を好ましく実現することができる。上記SP値は、より好ましくは21.0(MJ/m3)1/2以下(例えば20.0(MJ/m3)1/2以下)である。上記SP値の下限は特に限定されず、例えば凡そ10.0(MJ/m3)1/2以上であり、また凡そ15.0(MJ/m3)1/2以上であることが適当であり、好ましくは18.0(MJ/m3)1/2以上である。
なお、アクリル系重合物のSP値は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(POLYMER ENG. & SCI.)」,第14巻,第2号(1974),第148~154ページ参照]すなわち、式:
SP値δ=(Σ△e/Σ△v)1/2
(上式中、Δeは、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギー△eであり、Δvは、同温度における各原子または原子団のモル容積である。);
にしたがって計算することができる。上記SP値を有するアクリル系重合物は、当業者の技術常識に基づき、適切にモノマー組成を決定することにより得ることができる。
ここに開示される粘着シートの粘着剤層は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)またはこれらの混合物の形態で含む粘着剤組成物から形成された層であり得る。上記粘着剤組成物は、粘着剤(粘着成分)が水に分散した形態の水分散型粘着剤組成物、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の溶剤型粘着剤組成物、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の種々の形態であり得る。好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、溶剤型粘着剤組成物または無溶剤型粘着剤組成物である。無溶剤型粘着剤組成物には、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物およびホットメルト型粘着剤組成物が包含される。
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の熱重合開始剤や光重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤凡そ0.001~5重量部(典型的には凡そ0.01~2重量部、例えば凡そ0.01~1重量部)を用いることができる。
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、α-チオグリセロール等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等のスチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等のベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等のヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類;2,3-ジメチル-2-ブテン、1,5-シクロオクタジエン等のオレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等のベンジル水素類;等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることができる。ここに開示される技術は、連鎖移動剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
上記の各種重合法を適宜採用して得られるアクリル系重合物の分子量は特に制限されず、要求性能に合わせて適当な範囲に設定され得る。アクリル系重合物の重量平均分子量(Mw)は、通常は凡そ10×104以上(例えば20×104以上)であり、凝集力と接着力とをバランスよく両立する観点から、30×104超とすることが適当である。一態様に係るアクリル系重合物は、高温環境下においても良好な接着信頼性を得る観点から、好ましくは40×104以上(典型的には凡そ50×104以上、例えば凡そ55×104以上)のMwを有する。アクリル系重合物のMwの上限は、通常は凡そ500×104以下(例えば凡そ150×104以下)であり得る。上記Mwは凡そ75×104以下であってもよい。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。上記Mwは、粘着剤組成物中、粘着剤層中いずれかにおけるアクリル系重合物のMwであり得る。
いくつかの態様に係る粘着シートは、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。本明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の一好適例として、光硬化型粘着剤組成物が挙げられる。光硬化型の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。なかでも紫外線硬化型粘着剤組成物が好ましい。
光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。
好ましい一態様に係る光硬化型粘着剤組成物は、モノマー成分の部分重合物を含む。このような部分重合物は、典型的にはモノマー成分に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、好ましくはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。モノマー成分を部分重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、モノマー成分の重合転化率(モノマーコンバーション)を容易に制御することができる。
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、凡そ50重量%以下が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、通常は凡そ5重量%以上とすることが適当である。
モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分の全量を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより得ることができる。また、モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分のうちの一部を含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物と、残りのモノマー成分またはその部分重合物との混合物であってもよい。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤や、後述のような剥離力上昇剤、水親和剤、架橋剤、多官能性モノマー、アクリル系オリゴマー、粘着付与樹脂等)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
いくつかの態様に係る粘着シートは、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の溶液重合物と、必要に応じて用いられる添加剤とを含有する。溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。溶液重合によると、モノマー成分の重合物が重合溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される溶剤型粘着剤組成物は、上記重合反応液を用いて好ましく製造され得る。
上記溶剤型粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤や、後述のような剥離力上昇剤、水親和剤、架橋剤、多官能モノマー、アクリル系オリゴマー等)が配合され得る。上記溶剤型粘着剤組成物は、例えば上記重合反応液に多官能性モノマーおよび光重合開始剤を添加することによって、光架橋性が付与されたものであってもよい。
(剥離力上昇剤)
ここに開示される粘着シートの粘着剤層は、剥離力上昇剤を含むものであり得る。上記剥離力上昇剤としては、上記粘着剤層の表面(粘着面)を被着体に貼り付けた後に、粘着シートの被着体からの剥離力を上昇させる機能を発揮し得る材料を、適宜選択して用いることができる。
上記剥離力上昇剤としては、例えば、アルコキシシリル基と疎水部とを分子内に有する化合物Sが用いられ得る。アルコキシシリル基は、ケイ素原子上に少なくとも一つのアルコキシ基を有する官能基である。上記アルコキシシリル基は、加水分解することによって、被着体表面の水酸基と反応するシラノール基を生成する。したがって、上記アルコキシシリル基は、上記水酸基と反応する基の前駆体である。粘着剤層に化合物Sを含有させることにより、被着体上の水酸基と上記シラノール基との反応または相互作用によって粘着シートの被着体からの剥離力を上昇させることができる。また、化合物Sの有する疎水部は、アルコキシシリル基に比べて、概して粘着剤層のベースポリマー(例えばアクリル系重合物)との親和性が高い。この疎水部の選択により、化合物Sの粘着剤層内における分布や移動性を調整し、水剥離力の上昇性をコントロールすることができる。
上記アルコキシシリル基を構成するアルコキシ基は、典型的にはメトキシ基またはエトキシ基である。上記アルコキシシリル基は、トリアルコキシシリル基であってもよく、ジアルコキシシリル基であってもよい。剥離力上昇効果を高める観点から、いくつかの態様において、トリアルコキシシリル基を有する化合物Sを好ましく採用し得る。化合物Sは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、上記剥離力上昇剤としては、下記一般式(A)で表されるアルコキシシリル基と、疎水部と、を分子内に有する化合物Sを好ましく使用し得る。
-Si(CH3)n(OR)3-n (A)
ここで、nは0または1であり、Rはメチル基およびエチル基から選択される。例えば、上記一般式(A)におけるnが0であるアルコキシシリル基を有する化合物Sが好ましく用いられ得る。
化合物Sの有する疎水部は、反応性官能基(粘着剤層のベースポリマーと反応可能な官能基であり得る。)を有していてもよく、有していなくてもよい。
一態様において、疎水部が少なくとも一つの反応性官能基を有する化合物S(以下、化合物S1ということがある。)を用いることができる。化合物S1の疎水部の有する反応性官能基の数は、例えば1~5程度であり得る。粘着剤組成物のゲル化抑制等の観点から、疎水部の有する反応性官能基の数が1である化合物S1を好ましく採用し得る。上記反応性官能基の例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基(イソシアヌレート体を構成していてもよい。)、アセトアセチル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、ビニル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。化合物S1としては、各種のシランカップリング剤を使用し得る。上記反応性官能基を有するシランカップリング剤の例として、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;例えば3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;例えばアセトアセチル基含有トリメトキシシラン等のアセトアセチル基含有シランカップリング剤;例えば3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化アルキル基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン(例えば、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)等のエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
他の一態様において、疎水部が反応性官能基を有しない構造の化合物S(以下、化合物S2ということがある。)を用いることができる。反応性官能基を有しない疎水部は、例えば、炭化水素基、鎖状エーテル結合を有する炭化水素基、カルボニル基を有する炭化水素基、エステル結合を有する炭化水素基、これらの基のフッ素化物、等であり得る。これらの例示における炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシクロアルキル基、アラルキル基等であり得る。上記炭化水素基がアルキル基である場合、該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上である。上記アルキル基の炭素原子数は、例えば32以下であってよく、28以下でもよく、24以下でもよく、20以下でもよい。例えば、C8-18アルキルトリアルコキシシランを化合物S2として用いることができる。C8-18アルキルトリアルコキシシランの非限定的な具体例としては、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシランおよびヘキサデシルトリエトキシシランが挙げられる。また、上記シクロアルキル基、アリール基、アルキルシクロアルキル基およびアラルキル基の炭素原子数は、例えば6~20程度であり得る。なお、上述したシランカップリング剤は、疎水部が反応性官能基を有しない構造の化合物S(化合物S2)の概念から除かれる。
化合物Sの分子量[g/モル]は、特に限定されず、例えば120~30000程度であり得る。例えば、分子量が180以上、200以上または230以上の化合物Sを用いることができる。リワーク可能な期間の制御しやすさや、粘着剤層内における移動性(特に、粘着面への移動性)の観点から、分子量が240以上(さらには260以上)の化合物Sを好ましく用いることができる。いくつかの態様において、分子量が500以上、700以上、900以上、1200以上または1500以上の化合物Sを好ましく採用し得る。また、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性、粘着剤層内における化合物Sの移動性等の観点から、いくつかの態様において、分子量が20000以下、10000以下、7000以下または5000以下(例えば3000以下)の化合物Sを好ましく採用し得る。
なお、化合物Sの分子量としては、化学式に基づく分子量(式量)または上記GPCに基づく重量平均分子量が採用される。化合物Sとして市販品を使用する場合は、該化合物の分子量の値として、メーカー等による公称値を用いてもよい。
化合物Sは、疎水部が繰返し構造を有していてもよい。例えば、化合物Sの疎水部は、(メタ)アクリロイル基以外の反応性官能基を有するかまたは有しないアクリル系モノマーの重合物であってもよい。(メタ)アクリロイル基以外の反応性官能基を有しないアクリル系モノマーの例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルであってよく、(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステルでもよく、(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルでもよく、(メタ)アクリル酸C6-9アルキルエステルでもよい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合物は、単独重合体であってもよく、二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。
ここに開示される粘着シートにおいて、化合物Sとして好ましく使用し得る材料の一好適例として、アルコキシシリル基と疎水部とを分子内に有する化合物(好ましくは、上記一般式(A)で表される化合物)であって:(1)上記アルコキシシリル基がエトキシシリル基(例えば、トリエトキシシリル基)である;および(2)分子量が500[g/モル]以上である;の一方または両方を満たす化合物Sが挙げられる。上記(1)および(2)の少なくとも一方に該当する化合物Sを用いることにより、水剥離力の早期上昇を抑制し、かつ水剥離力FW2の高い粘着シートを好適に実現することができる。その理由として、かかる化合物Sは、被着体表面の水酸基とエトキシシリル基との反応はメトキシシリル基との反応に比べて明らかに遅いこと、および/または、化合物Sの分子量がある程度大きいため粘着剤層内における移動性が低く、粘着剤層内部に存在する化合物Sが粘着面に到達して被着体表面の水酸基と接触するまでに時間がかかること、が考えられる。ただし、この理由のみに限定解釈されるものではない。
上記(1)に該当する化合物Sの疎水部は、反応性官能基を有する構造(化合物S1)であってもよく、反応性官能基を有しない構造(化合物S2)であってもよい。いくつかの態様において、湿熱耐久性等の観点から、疎水部が反応性官能基(例えばエポキシ基)を有する化合物Sを好ましく採用し得る。例えば、反応性官能基としてエポキシ基を有する疎水部(反応性官能基としてエポキシ基のみを有する疎水部であり得る。)と、トリエトキシシリル基と、を含む化合物S1を用いることができる。、
上記(1)に該当する化合物Sの分子量は、例えば10000以下であってよく、通常は5000以下であることが適当であり、2500以下でもよく、1500以下でもよい。加熱処理による水剥離力の上昇効果を高める観点から、いくつかの態様において、上記化合物Sの分子量は、800以下でもよく、500以下でもよく、500未満でもよく、400以下でもよく、340以下でもよく、310以下でもよい。また、水剥離力の早期上昇の抑制や、被着体の非汚染性等の観点から、上記分子量は、例えば240以上であってよく、260以上でもよく、270以上でもよい。
上記(2)に該当する化合物Sの疎水部は、反応性官能基を有する構造(化合物S1)であってもよく、反応性官能基を有しない構造(化合物S2)であってもよい。例えば、トリメトキシシリル基またはエトキシシリル基と、反応性官能基を有しない疎水部と、を含む化合物S2を用いることができる。上記反応性官能基を有しない疎水部は、例えば、(メタ)アクリロイル基以外の反応性官能基を有しないアクリル系モノマーから選択される一種または二種以上のモノマーの重合物や、炭化水素基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシクロアルキル基、アラルキル基)等であり得る。
剥離力上昇剤は、遊離の形態で粘着剤層に含まれていることが好ましい。上記剥離力上昇剤は、粘着剤層に含まれ得る他の構成成分と化学結合していないことが好ましい。このような形態で粘着剤組成物に含まれている剥離力上昇剤は、水剥離力の上昇や耐水信頼性の向上に効果的に寄与することができる。
粘着剤層が剥離力上昇剤を含む場合、該粘着剤層における剥離力上昇剤の含有量は、所望の使用効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。上記剥離力上昇剤の量は、粘着剤層の粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合物100重量部あたり、例えば0.005重量部以上とすることができる。アクリル系重合物100重量部あたりの剥離力上昇剤の含有量は、通常、0.01重量部以上とすることが適当であり、0.03重量部以上とすることが好ましく、例えば0.05重量部以上であってよく、0.08重量以上でもよい。いくつかの態様において、剥離力上昇剤の含有量を0.10重量部以上としてもよく、0.20重量部以上としてもよく、0.30重量部以上としてもよい。剥離力上昇剤の含有量の増大により、剥離力の上昇効果を発揮させることができる。また、使用態様によっては、室温において経時により剥離力が上昇するまでの期間が短すぎると、リワーク可能な期間が短くなりすぎて工程管理が煩雑となる等の不都合が生じることがあり得る。かかる観点から、いくつかの態様において、粘着剤組成物におけるアクリル系重合物100重量部あたりの剥離力上昇剤の含有量は、例えば5重量部以下であってよく、3重量部以下でもよく、1重量部以下でもよく、0.7重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよく、0.3重量部以下でもよい。
(水親和剤)
ここに開示される技術における粘着剤層には、所望により、水親和剤を含有させることができる。粘着剤層に水親和剤を含有させることにより、水等の水性液体を利用して剥離力を効果的に低下させることができる。その理由は、特に限定解釈されるものではないが、一般に水親和剤は親水性領域を有することにより粘着剤層の表面(粘着面)に偏在しやすく、それによって粘着面の水親和性を効率よく高める作用が発揮され、該粘着剤層が水と接触したときに剥離力を効果的に低下させるものと考えられる。
水親和剤としては、粘着剤組成物の調製容易性等の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられ得る。水親和剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、水親和剤としては、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを用いることができる。界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、公知の界面活性剤、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物の1種または2種以上を特に制限なく用いることができる。なお、上記界面活性剤のなかには、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物が存在し、逆もまた然りであることは言うまでもない。
化合物Aとして用いられ得る界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル;ポリオキシエレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の例としては、ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)等の、アルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム)、オクタデシル硫酸塩等のアルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩等の、ポリエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等の、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル;上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム)等の、スルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;等が挙げられる。アニオン性界面活性剤が塩を形成している場合、該塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩(好ましくは一価金属の塩)、アンモニウム塩、アミン塩等であり得る。アニオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、例えば、-POH基、-COH基および-SOH基の少なくとも一つを有するアニオン性界面活性剤を好ましく使用し得る。なかでも-POH基を有する界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、典型的にはリン酸エステル構造を含んでおり、例えばリン酸のモノエステル(ROP(=O)(OH)2;ここでRは1価の有機基)、ジエステル((RO)2P(=O)OH;ここでRは、同一のまたは異なる1価の有機基)、モノエステルおよびジエステルの両方を含む混合物等であり得る。-POH基を有する界面活性剤の好適例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、例えば6~20であってよく、8~20でもよく、10~20でもよく、12~20でもよく、14~20でもよい。
カチオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリエーテルアミンが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
化合物Aとして用いられ得るポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等のポリアルキレングリコール;ポリオキシエチレン単位を含むポリエーテル、ポリオキシプロピレン単位を含むポリエーテル、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを含む化合物(これら単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロック状であってもよい。);これらの誘導体;等を用いることができる。また、上述の界面活性剤のうちポリオキシアルキレン骨格を有する化合物を用いることもできる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ポリオキシエチレン骨格(ポリオキシエチレンセグメントともいう。)を含む化合物を用いることが好ましく、PEGがより好ましい。
ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量(化学式量)は特に限定されず、例えば1000未満であることが適当であり、粘着剤組成物調製性の点から、凡そ600以下(例えば500以下)であることが好ましい。ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量の下限は特に限定されず、分子量が凡そ100以上(例えば凡そ200以上、さらには凡そ300以上)のものが好ましく用いられる。
水親和剤の他の例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術において、水親和剤としては、化合物Aの1種または2種以上を用いてもよく、水溶性ポリマーの1種または2種以上を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
水親和剤のHLBは特に限定されず、例えば3以上であり、凡そ6以上が適当であり、8以上(例えば9以上)であり得る。いくつかの好ましい態様では、水親和剤のHLBは10以上である。これによって、水剥離性が好ましく発現する傾向がある。上記HLBは、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは13以上(例えば14以上)である。上記範囲のHLBを有する水親和剤(典型的には界面活性剤)を粘着剤層に含ませることで、水剥離性をより効果的に発現させ得る。上記HLBの上限は20以下であり、例えば18以下であってもよく、16以下でもよく、15以下でもよい。
なお、本明細書におけるHLBは、GriffinによるHydrophile-Lipophile Balanceであり、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値であり、親水性と親油性の比を0~20の間の数値で表したものである。HLBの定義は、W.C.Griffin:J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書社出版、昭和47年11月25日、p179~182等に記載されるとおりである。上記HLBを有する水親和剤は、上記参考文献を必要に応じて参酌するなどして、当業者の技術常識に基づき、選定することができる。
このような水親和剤は、遊離の形態で粘着剤層に含まれていることが好ましい。水親和剤としては、粘着剤組成物調製性の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられる。
水親和剤を含む粘着剤層は、典型的には、水親和剤を含む粘着剤組成物Aから形成される。上記粘着剤組成物Aは、上述した水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等のいずれでもよい。いくつかの好ましい態様において、水親和剤を含む粘着剤層は、光硬化型または溶剤型の粘着剤組成物Aから形成された粘着剤層であり得る。このような粘着剤層において、水親和剤の添加効果が好ましく発揮され得る。粘着剤層は、光架橋性を有していてもよい。
粘着剤層における水親和剤の含有量は、特に限定されず、該水親和剤の使用効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、水親和剤の含有量は、粘着剤層に含まれる重合物(例えば、アクリル系重合物)を構成するモノマー成分100重量部あたり、例えば0.001重量部以上とすることができ、0.01重量部以上とすることが適当であり、0.03重量部以上でもよく、0.07重量部以上でもよく、0.1重量部以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、水親和剤の含有量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.2重量部以上であってよく、より高い効果を得る観点から0.5重量部以上でもよく、1.0重量部以上でもよく、1.5重量部以上でもよい。また、粘着剤層のバルクへの過度の水拡散を抑制する観点から、いくつかの態様において、水親和剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば20重量部以下であってよく、10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下としてもよい。水親和剤の含有量が多過ぎないことは、粘着剤層の透明性向上の観点からも好ましい。例えば、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する水親和剤の含有量は、2重量部未満でもよく、1重量部未満でもよく、0.7重量部未満でもよく、0.3重量部未満でもよく、0.2重量部未満でもよい。HLBが10以上である水親和剤は、少量の使用によっても良好な水剥離性を発揮する傾向がある。
(架橋剤)
粘着剤層には、粘着剤層内での架橋または粘着剤層とその隣接面との架橋を目的として、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。架橋剤は、架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれていてもよく、架橋反応前の形態で含まれていてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤のなかから、例えば粘着剤組成物の組成に応じて、該架橋剤が粘着剤層内で適切な架橋機能を発揮するように選択することができる。用いられ得る架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤等を例示することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、2官能以上の多官能イソシアネート化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。市販品としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物等を例示することができる。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-X」、「TETRAD-C」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤としては、1分子内に1個以上のオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用することができる。
アジリジン系架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニルプロピオネート)]等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物を用いることができる。
いくつかの態様において、架橋剤として過酸化物を用いてもよい。過酸化物としては、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる過酸化物として、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。なお、上記重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能である。その場合は過酸化物の残存量を定量して、過酸化物の割合が所定量に満たない場合には、必要に応じて、所定量になるように過酸化物を添加するとよい。過酸化物の定量は、特許4971517号公報に記載の方法により行うことができる。
架橋剤の含有量(2種以上の架橋剤を含む場合にはそれらの合計量)は特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の含有量は、粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合物100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.001~5重量部とすることが好ましく、凡そ0.001~4重量部とすることがより好ましく、凡そ0.001~3重量部とすることがさらに好ましい。あるいは、上述のような架橋剤を含まない粘着剤組成物であってもよい。ここに開示される粘着剤組成物として光硬化型粘着剤組成物を用いる場合には、当該粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤等の架橋剤を実質的に含まないものであり得る。ここで粘着剤組成物が架橋剤(典型的にはイソシアネート系架橋剤)を実質的に含まないとは、上記アクリル系重合物100重量部に対する架橋剤の量が0.05重量部未満(例えば0.01重量部未満)であることをいう。
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が例示される。なかでも、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系架橋触媒が好ましい。架橋触媒の使用量は特に制限されない。粘着剤組成物中のアクリル系重合物100重量部に対する架橋触媒の使用量は、例えば凡そ0.0001重量部以上1重量部以下であってよく、0.001重量部以上0.1重量部以下でもよく、0.005重量以上0.5重量部以下でもよい。
(多官能性モノマー)
粘着剤層には、必要に応じて多官能性モノマーが用いられ得る。多官能性モノマーは、上述のような架橋剤に代えて、あるいは該架橋剤と組み合わせて用いられることで、凝集力の調整等の目的のために役立ち得る。多官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物を用いることができる。多官能性モノマーは、未反応の形態で粘着剤層に含まれていてもよく、反応後(架橋後)の形態で粘着剤層に含まれていてもよい。未反応の多官能性モノマーを含む粘着剤層は、該粘着剤層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより上記多官能性モノマーを反応させて架橋構造を形成することのできる光架橋性粘着剤層であり得る。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、通常は、アクリル系重合物100重量部に対して0.01重量部~3.0重量部程度の範囲とすることが適当である。いくつかの態様において、アクリル系重合物100重量部に対する多官能性モノマーの使用量は、例えば0.02重量部以上であってもよく、0.1重量部以上であもよく、0.5重量部以上、1.0重量部以上または2.0重量部以上でもよい。多官能性モノマーの使用量の増大により、より高い凝集力が得られる傾向にある。一方、過度な凝集力向上により粘着剤層と隣接する層との接着性が低下することを避ける観点から、アクリル系重合物100重量部に対する多官能性モノマーの使用量は、例えば10重量部以下であってよく、5.0重量部以下でもよく、3.0重量部以下でもよい。
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)には、凝集力の向上や、粘着剤層に隣接する面(例えば、基材の表面等であり得る。)との接着性向上等の観点から、アクリル系オリゴマーを含有させることができる。アクリル系オリゴマーとしては、上記アクリル系重合物のTgよりもTgが高い重合体を用いることが好ましい。
上記アクリル系オリゴマーのTgは特に限定されず、例えば約20℃以上300℃以下であり得る。上記Tgは、例えば約30℃以上であってよく、約40℃以上でもよく、約60℃以上でもよく、約80℃以上または約100℃以上でもよい。アクリル系オリゴマーのTgが高くなると、凝集力を向上させる効果は概して高くなる傾向にある。また、基材への投錨性や衝撃吸収性等の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは、例えば約250℃以下であってよく、約200℃以下でもよく、約180℃以下または約150℃以下でもよい。なお、アクリル系オリゴマーのTgは、上記モノマー成分の組成に対応するアクリル系重合物のTgと同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
アクリル系オリゴマーのMwは、典型的には約1000以上約30000未満、好ましくは約1500以上約10000未満、さらに好ましくは約2000以上約5000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあると、凝集性や隣接する面との接着性を向上させる効果が好適に発揮されやすい。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5mL/分の条件にて測定される。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上述した各種の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;上述した各種の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;上述した各種の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル系オリゴマーは、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートや芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、接着性向上の観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、エステル末端に飽和炭化水素基を有するモノマーが好ましく、例えばアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレートや飽和脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的に1種または2種以上の(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。モノマー成分が脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルとを含む場合、それらの重量比は特に限定されず、例えば10/90~90/10の範囲、20/80~80/20の範囲、70/30~30/70の範囲等とすることができる。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、必要に応じて官能基含有モノマーを用いることができる。官能基含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有複素環を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、例えば1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上とすることができ、また、例えば15重量%以下、10重量%以下または7重量%以下とすることができる。
好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、DCPMAとMMAの共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体等を挙げることができる。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤)の種類は、概ねアクリル系重合物の合成に関して例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用される連鎖移動剤(例えばメルカプタン類)の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、詳細な説明は省略する。
粘着剤組成物にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、上記アクリル系重合物100重量部に対して、例えば0.01重量部以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.05重量部以上としてもよく、0.1重量部以上または0.2重量部以上としてもよい。また、アクリル系重合物との相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、通常、50重量部未満とすることが適当であり、好ましくは30重量部未満、より好ましくは25重量部以下であり、例えば10重量部以下であってもよく、5重量部以下または1重量部以下としてもよい。
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系、石油系、テルペン系、フェノール系、ケトン系等の粘着付与樹脂)、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、老化防止剤等の粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤をその他の任意成分として含み得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
なお、ここに開示される技術は、上述の粘着付与樹脂を用いることなく、良好な接着力を発揮することができるので、粘着剤組成物における上記粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系重合物100重量部に対して例えば10重量部未満、さらには5重量部未満とすることができる。上記粘着付与樹脂の含有量は1重量部未満(例えば0.5重量部未満)であってもよく、0.1重量部未満(0重量部以上0.1重量部未満)であってもよく、上記粘着剤組成物は粘着付与樹脂を含まないものであり得る。
ここに開示される粘着剤組成物は、光学用途に用いられることから、粘着剤層形成後も所定の光学特性(例えば透明性)を有するものであり得る。そのような光学特性の観点から、粘着剤組成物に占めるアクリル系重合物以外の成分の量は制限されていることが好ましい。ここに開示される技術において、粘着剤組成物におけるアクリル系重合物以外の成分の量は、通常、凡そ30重量%以下であり、凡そ15重量%以下であることが適当であり、好ましくは凡そ12重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)である。一態様に係る粘着剤組成物におけるアクリル系重合物以外の成分の量は、凡そ5重量%以下であってもよく、凡そ3重量%以下であってもよく、凡そ1.5重量%以下(例えば凡そ1重量%以下)であってもよい。このようにアクリル系重合物以外の成分量が制限された組成は、光硬化型粘着剤組成物に対して好ましく採用され得る。
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化層であり得る。すなわち、該粘着剤層は、粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。2種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階にわたって行うことができる。
モノマー成分の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる。すなわち、部分重合物をさらなる共重合反応に供して完全重合物を形成する。例えば、光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。例えば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合(例えば、モノマー成分の部分重合物が有機溶剤に溶解した形態の光硬化性粘着剤組成物の場合)は、該組成物を乾燥させた後に光硬化を行うとよい。
完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。多官能性モノマーの添加により光架橋性が付与された溶剤型粘着剤組成物の場合は、該組成物を乾燥させた後に光架橋を行うとよい。ここで、上記組成物を乾燥させた後とは、上記乾燥を経て得られた粘着シートを被着体に貼り合わせた後であってもよい。ここに開示される粘着シートは、被着体に貼り合わせた後に光架橋させることを含む手法により上記被着体への貼付けを行う態様で用いられ得る。
二層以上の多層構造の粘着剤層は、あらかじめ形成した粘着剤層を貼り合わせることによって作製することができる。あるいは、あらかじめ形成した第一の粘着剤層の上に粘着剤組成物を塗布し、該粘着剤組成物を硬化させて第二の粘着剤層を形成してもよい。被着体への貼り合わせ後に光架橋させる貼付け態様で用いられる粘着シートの有する粘着剤層が多層構造である場合、上記光架橋させる粘着剤層は、上記多層構造に含まれる一部の層(例えば一つの層)であってもよく、全部の層であってもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。基材を有する形態の粘着シートでは、基材上に粘着剤層を設ける方法として、該基材に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成する直接法を用いてもよく、剥離面上に形成した粘着剤層を基材に転写する転写法を用いてもよい。
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば3μm~2000μm程度であり得る。段差追従性など被着体との密着性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上が適当であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。粘着剤層の厚さは、50μm以上でもよく、50μm超でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよく、120μm以上でもよい。また、粘着剤層の凝集破壊による糊残りの発生を防止する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、700μm以下でもよく、500μm以下でもよく、300μm以下でもよく、さらには200μm以下または170μm以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層の厚さが130μm以下でもよく、90μm以下でもよく、60μm以下(例えば40μm以下)である粘着シートの形態でも好適に実施することができる。なお、二層以上の多層構造を有する粘着剤層を有する粘着シートでは、上記粘着剤層の厚さとは、被着体に貼り付けられる粘着面から該粘着面とは反対側の表面までの厚さをいう。
(光架橋性粘着剤層)
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートは、光架橋性粘着剤により構成された光架橋性粘着剤層を有する。好ましい一態様では、上記粘着シートの粘着面を構成する粘着剤層が光架橋性粘着剤層である。光架橋性粘着剤層を有する粘着シートは、該粘着剤層を光架橋させることにより耐変形性を高めることができる。このことによって、被着体への貼付け時には粘着剤層の表面形状追従性がよく、かつ貼付け後に上記粘着剤層を光架橋させることで耐変形性の高い接合を形成することができる。表面形状追従性のよい粘着剤層は、被着体の表面に存在し得る段差に沿って変形する(段差を吸収する)ことにより、該被着体の表面に好適に密着させることができる。
光架橋性粘着剤層を構成する光架橋性粘着剤は、例えば、上述のように未反応の多官能性モノマーを含有することによって光架橋性が付与されたものであってもよく、光架橋性ポリマーを含有することにより光架橋性が付与されたものであってもよい。多官能性モノマーおよび光架橋性ポリマーは、それぞれ、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。多官能性モノマーと光架橋性ポリマーとを組み合わせて含む光架橋性粘着剤であってもよい。光架橋性粘着剤には、光架橋の種類に応じて、光開始剤を含ませることができる。
上記光架橋性ポリマーの一好適例として、ベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマーが挙げられる。かかるポリマーを含む粘着剤は、上記ベンゾフェノン構造を利用して光架橋させることができる。ベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマーとしては、ベンゾフェノン構造を側鎖に有するアクリル系ポリマーを好ましく採用し得る。
上記光架橋性ポリマーの他の一好適例として、炭素-炭素二重結合を有するポリマーが挙げられる。かかるポリマーを含む粘着剤は、上記炭素-炭素二重結合を反応させることで光架橋させることができる。炭素-炭素二重結合を有するポリマーの一好適例として、例えば、側鎖に(メタ)アクリロイル基が導入されたアクリル系ポリマーが挙げられる。このようなアクリル系ポリマーは、例えば、共重合により水酸基が導入されたアクリル系一次ポリマーと、炭素-炭素二重結合とイソシアネート基とを有する化合物とを、炭素-炭素二重結合が消失しないように反応させることにより得ることができる。
<基材>
いくつかの態様に係る粘着シートは、粘着剤層の他方の背面に接合した基材を含む基材付き粘着シートの形態であり得る。基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合構造の基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチックシート等が挙げられる。
ここに開示される粘着シートの基材としては、各種のフィルム(以下、支持フィルムともいう。)を好ましく用いることができる。上記支持フィルムは、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質のフィルムであってもよく、非多孔質のフィルムであってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造のフィルムであってもよい。いくつかの態様において、上記支持フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA)、透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等の樹脂を用いることができる。上記樹脂フィルムは、このような樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、ポリエステル系樹脂、PPS樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、PPS樹脂とはPPSを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリオレフィン系樹脂とはポリオレフィンを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリイミド樹脂とはポリイミドを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。
ポリエステル系樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。ポリオレフィン樹脂フィルムの例としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム等が挙げられる。
基材として好ましく利用し得る樹脂フィルムの具体例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPIフィルム、CPPフィルムおよびOPPフィルムが挙げられる。強度の点から好ましい例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPIフィルムが挙げられる。入手容易性、寸法安定性、光学特性等の観点から好ましい例としてPETフィルム、CPIフィルム、TACフィルムが挙げられる。
樹脂フィルムには、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
上記基材は、このような樹脂フィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記樹脂フィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材または粘着シートに所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。また、上記支持材は、後述する光学部材であってもよい。
基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、500μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、粘着シートの柔軟性や被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、5μm超または10μm超でもよい。いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば20μm以上であってよく、35μm以上でもよく、55μm以上でもよい。
基材のうち粘着剤層に接合される側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。プライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。
基材のうち粘着剤層に接合される側とは反対側の面(以下、背面ともいう。)には、必要に応じて、剥離処理、接着性または粘着性向上処理、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、基材の背面を剥離処理剤で表面処理することにより、ロール状に巻回された形態の粘着シートの巻戻し力を軽くすることができる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等を用いることができる。
<追加の粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、上述した粘着剤層とは別に、追加的に配置され得る粘着剤層を有していてもよい。上記追加の粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。透明性や耐候性等の観点から、いくつかの態様において、追加の粘着剤層の構成材料としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。追加の粘着剤層のその他の事項については、上述した粘着剤層と同様の構成を採用することができ、あるいは公知ないし慣用技術および技術常識に基づき、用途や目的に応じて適当な構成を採用し得るので、ここでは詳細な説明は省略する。
<用途>
ここに開示される粘着シートの用途は特に限定されず、各種の用途に用いることができる。例えば、ここに開示される粘着シートは、各種製品を構成する部材の固定、接合、成形、装飾、保護、支持等の用途に用いられ得る。上記部材の少なくとも表面を構成する材質は、例えば、アルカリガラスや無アルカリガラス等のガラス;樹脂フィルム、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;アルミナ、シリカ等のセラミック材料;アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。上記部材は、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)、自動車、家電製品等を構成する部材であり得る。また、上記部材は、該粘着シートが貼り付けられる面が、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料による塗装面や、亜鉛メッキ鋼板等のメッキ面であってもよい。また、上記部材は、基材に用いられ得る材料として例示したいずれかの支持フィルム(例えば、樹脂フィルム)であってもよい。ここに開示される粘着シートは、例えば、このような部材が粘着剤層の少なくとも一方の表面に接合された粘着シート付き部材の構成要素であり得る。
ここに開示される粘着シートは、少なくとも表面にガラス材料を有する被着体に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。かかる態様において、貼付け初期(好ましくは、貼付け後、ある程度の期間)には良好な水剥離性を示し、かつ被着体に対して耐水信頼性よく接合する効果が好適に発揮され得る。上記被着体は、アルカリガラスや無アルカリガラス等のガラス材料からなる板状体であってもよく、ガラス材料(典型的には、SiOXで表わされる酸化ケイ素や、SiO2で表わされる二酸化ケイ素)を含む親水層が樹脂フィルム等の異種材料上に形成された複合フィルムであってもよい。上記親水層(表面改質層)は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)や、原子層堆積層等の化学蒸着法(CVD)等の、公知の成膜方法を利用して形成することができる。あるいは、ガラス材料の粉末を含むコーティング剤を塗布することにより親水層を形成してもよい。上記コーティング剤は、バインダとして利用され得る有機高分子化合物を含む各種有機材料を含んでもよく、含まなくてもよい。
ここに開示される粘着シートの好ましい用途の一例として、光学用途が挙げられる。より具体的には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や上記光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途等に用いられる光学用粘着シートとして、ここに開示される粘着シートを好ましく用いることができる。
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性等)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材またはこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等が挙げられる。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」等を含むものとする。
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられ、特に、フォルダブル表示装置や車載用の表示装置のように、高価な部材を含む場合に好ましく適用できる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜等からなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材)等が挙げられる。なお、この明細書における「光学部材」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
ここに開示される粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)ここに開示される粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様や、(2)ここに開示される粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)ここに開示される粘着シートが光学部材を含む形態であって該粘着シートを光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様において、光学部材を含む形態の粘着シートは、例えば、基材が光学部材(例えば、光学フィルム)である粘着シートであり得る。このように基材として光学部材を含む形態の粘着シートは、粘着型光学部材(例えば、粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、ここに開示される粘着シートが基材を有するタイプの粘着シートであって、上記基材として上記機能性フィルムを用いた場合には、ここに開示される粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
<水接触角>
ここに開示される粘着シートは、蒸留水に対する接触角が、例えば60度以下、好ましくは50度以下となる程度の親水性を示す表面に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。いくつかの態様において、上記接合面の接触角は、例えば45度以下であってよく、40度以下でもよく、35度以下でもよく、30度以下でもよい。上記接合面の接触角が小さくなると、該接合面に沿って水が濡れ広がりやすくなり、粘着シートの水剥離性が向上する傾向にある。このことは、上記接合面に上記粘着シートを貼り合わせて粘着シート付き部材を作製する際のリワーク性向上の観点から好ましい。また、このように親水性の高い表面では、例えば剥離力向上剤として化合物Sを用いる態様において、該化合物Sによる接合信頼性(例えば、耐水信頼性)の向上効果が好ましく発揮され得る。
なお、上記接合面の接触角は、少なくとも粘着シートを貼り合わせる時期(例えば、貼り合わせの30分前)に上述したいずれかの角度以下であれば、該接触角が所定以下であることによるリワーク性向上効果が発揮され得る。接触角の下限は、原理上0度である。いくつかの態様において、上記接合面の接触角は、0度超でもよく、1度以上でもよく、3度以上でもよく、5度以上でもよい。部材の接合面の接触角は、上述したアルカリガラス板の接触角と同様にして測定される。
部材の接合面は、蒸留水に対する接触角を低下させるために、親水化処理されていてもよい。親水化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理や、親水層を形成する処理等の、親水性の向上に寄与する処理が挙げられる。コロナ処理やプラズマ処理に使用する装置や処理条件は、従来公知の技術に基づいて、所望の接触角を示す接合面が得られるように設定することができる。
上記親水層形成処理は、親水コーティング層を形成する処理であり得る。親水コーティング層の形成は、公知のコーティング剤から所望の接触角を示す接合面が得られるものを適宜選択し、常法により使用して行うことができる。親水コーティング層の厚さは、例えば0.01μm以上であってよく、0.05μm以上でもよく、0.1μm以上でもよく、また、例えば10μm以下であってよく、5μm以下でもよく、2μm以下でもよい。
上記親水層形成処理は、無機材料を含む親水層を形成する処理であり得る。親水層が無機材料を含むことで、良好な水剥離性が得られやすい。無機材料としては、遷移金属元素や半金属元素の単体、合金を含む各種の金属材料や、無機酸化物等の無機化合物のなかから親水性表面を形成し得る材料が用いられる。上記無機材料は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。無機材料の好適例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化ニオブ等の酸化物(無機酸化物、典型的には金属酸化物)が挙げられる。なかでも、好ましい無機材料として酸化ケイ素等の無機酸化物が用いられる。親水層は、無機材料に加えて、コーティング剤やバインダとして利用され得る有機高分子化合物を含む各種有機材料を含んでもよく、含まなくてもよい。
親水層中の無機材料(例えば酸化ケイ素等の無機酸化物)の量は、目的とする親水性表面が得られる適当量とすることができ、特定の範囲に限定されない。例えば、親水層中の無機材料の含有割合は、凡そ30重量%以上とすることができ、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)が適当であり、凡そ70重量%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、親水層中の無機材料の含有割合は、凡そ90~100重量%(例えば凡そ95重量%以上)である。
いくつかの好ましい態様において、上記無機材料として、酸化ケイ素(典型的にはSiOXで表わされる酸化ケイ素や、SiO2で表わされる二酸化ケイ素)等の無機酸化物が用いられる。上記無機材料に占める無機酸化物(典型的には酸化ケイ素)の割合は、目的とする親水性表面が得られる適当量とすることができ、特定の範囲に限定されず、例えば、凡そ30重量%以上とすることができ、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)が適当であり、凡そ70重量%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、上記無機材料中の無機酸化物(典型的には酸化ケイ素)の割合は、凡そ90~100重量%(例えば凡そ95重量%以上)である。
上記親水層の形成方法は特に限定されず、目的とする厚さ等に応じて適当な方法で形成され得る。例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、あるいは、めっき法等の公知の成膜方法を利用して層状に形成した無機材料を親水層として利用することができる。無機材料として、無機化合物を用いる場合には、各種の蒸着法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)や、原子層堆積層等の化学蒸着法(CVD)等を採用することができる。ポリシロキサン等の無機ポリマーを含むコーティング層の形成は、公知のコーティング剤から所望の水接触角を示す表面が得られるものを適宜選択し、常法により使用して行うことができる。
<剥離方法>
この明細書によると、被着体に貼り付けられた粘着シートの剥離方法が提供される。この剥離方法は、ここに開示されるいずれかの粘着シートの剥離方法として好適である。
上記剥離方法は、上記被着体からの上記粘着シートの剥離前線において上記被着体と上記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態で、上記剥離前線の移動に追随して上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記被着体から上記粘着シートを剥離する水剥離工程を含む。ここで剥離前線とは、被着体からの粘着シートの剥離を進行させる際に、上記被着体から上記粘着シートが離れ始める箇所を指す。上記水剥離工程によると、上記水性液体を有効に利用して被着体から粘着シートを剥離することができる。水性液体としては、水または水を主成分とする混合溶媒に、必要に応じて少量の添加剤を含有させたものを用いることができる。上記混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る低級アルコール(例えばエチルアルコール)や低級ケトン(例えばアセトン)等を使用し得る。上記添加剤としては、公知の界面活性剤等を用いることができる。被着体の汚染を避ける観点から、いくつかの態様において、添加剤を実質的に含有しない水性液体を好ましく使用し得る。環境衛生の観点から、水性液体として水を用いることが特に好ましい。水としては、特に制限されず、用途に応じて求められる純度や入手容易性等を考慮して、例えば蒸留水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
いくつかの態様において、上記剥離方法は、被着体に貼り付けられた粘着シートの外縁付近の被着体上に水性液体を供給し、その水性液体を上記粘着シートの外縁から該粘着シートと上記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく(すなわち、剥離開始前に被着体上に供給した水性液体のみを利用して)粘着シートの剥離を進行させる態様で好ましく行うことができる。他のいくつかの態様において、上記剥離方法は、被着体に貼り付けられた粘着シートの一部(典型的には、該粘着シートの外縁に連なる一部)が上記被着体から浮いた状態で、残りの粘着シートが被着体から離れ始める箇所に水性液体を供給し、新たな水の供給を行うことなく粘着シートの剥離を進行させる態様で好ましく行うことができる。なお、水剥離工程の途中で、剥離前線の移動に追随して粘着シートと被着体との界面に進入させる水が途中で枯渇するようであれば、該水剥離工程の開始後に断続的または連続的に水を追加供給してもよい。例えば、被着体が吸水性を有する場合や、剥離後の被着体表面または粘着面に水性液体が残留しやすい場合等において、水剥離工程の開始後に水を追加供給する態様を好ましく採用し得る。
剥離開始前に供給する水性液体の量は、粘着シートと被着体との界面に上記水性液体を導入し得る量であればよく、特に限定されない。上記水性液体の量は、例えば5μL以上であってよく、通常は10μL以上が適当であり、20μL以上でもよい。また、上記水性液体の量の上限について特に制限はない。いくつかの態様において、作業性向上等の観点から、上記水性液体の量は、例えば10mL以下であってよく、5mL以下でもよく、1mL以下でもよく、0.5mL以下でもよく、0.1mL以下でもよく、0.05mL以下でもよい。上記水性液体の量を少なくすることにより、粘着シートの剥離後に上記水性液体を乾燥や拭き取り等により除去する操作を省略または簡略化し得る。
剥離開始時に上記粘着シートの外縁から該粘着シートと上記被着体との界面に水性液体を進入させる操作は、例えば、粘着シートの外縁において上記界面にカッターナイフや針等の治具の先端を差し込む、粘着シートの外縁を鉤や爪等で引掻いて持ち上げる、強粘着性の粘着テープや吸盤等を粘着シートの外縁付近の背面に付着させて該粘着シートの端を持ち上げる、等の態様で行うことができる。このように粘着シートの外縁から上記界面に水性液体を強制的に進入させることにより、被着体と上記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態を効率よく形成することができる。また、水性液体を界面に強制的に進入させる操作を行って剥離のきっかけをつくった後における良好な水剥離性と、かかる操作を行わない場合における高い耐水信頼性とを、好適に両立することができる。なお、上記剥離のきっかけをつくる操作は、水性液体を供給する前に、被着体に貼り付けられた粘着シートの一部(典型的には、該粘着シートの外縁に連なる一部)を意図的に被着体から浮かせた状態とする操作としても採用し得る。
いくつかの態様に係る水剥離工程は、上記剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させる態様で好ましく実施され得る。剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させることは、例えば剥離角度180度の条件においては、粘着シートを20mm/分以上の引張速度で剥離することに相当する。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば50mm/分以上でもよく、150mm/分以上でもよく、300mm/分以上でもよく、500mm/分以上でもよい。ここに開示される剥離方法によると、上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記被着体から上記粘着シートを剥離することにより、このように比較的早い剥離速度であっても良好な水剥離性を発揮することができる。剥離前線を移動させる速度の上限は特に制限されない。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば1000mm/分以下であり得る。
ここに開示される剥離方法は、例えば、該方法に使用する水性液体(例えば水)の体積10μL当たりの粘着シートの剥離面積が、例えば50cm2以上、好ましくは100cm2以上となる態様で実施することができる。
ここに開示される剥離方法は、例えば、ガラス板、金属板、樹脂板等のような非吸水性の平滑面に貼り付けられた粘着シートの剥離に好ましく適用され得る。また、ここに開示される剥離方法は、上述したいずれかの光学部材から粘着シートを剥離する方法として好ましく利用され得る。なかでも、アルカリガラスや無アルカリガラス等のガラス板に貼り付けられた粘着シートを剥離する方法として好適である。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<例1>
(粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)65部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)6部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18部、イソステアリルアクリレート(iSTA)1部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)15部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.07部、重合溶媒として酢酸エチル122部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが30万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。
上記で得られた溶液に、該溶液の調製に使用したモノマー成分100部あたり、剥離力上昇剤として化合物S-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、商品名:KBE-403、信越化学工業社製)0.1部、水親和剤として非イオン性界面活性剤A(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB13.3、商品名:レオドールTW-L106、花王社製)0.3部、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、タケネート110N、固形分濃度75質量%))を固形分基準で0.09部、アクリル系オリゴマー0.4部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1)0.02部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン3部、多官能性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)3部、光重合開始剤(IGM Regins社製、商品名:オムニラッド184)0.22部を加え、均一に混合して溶剤型粘着剤組成物を調製した。
上記アクリル系オリゴマーとしては、以下の方法で合成したものを使用した。
[アクリル系オリゴマーの合成]
トルエン100部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)(商品名:FA-513M、日立化成工業社製)60部、メチルメタクリレート(MMA)40部、および連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5部を4つ口フラスコに投入した。そして、70℃にて窒素雰囲気下で1時間攪拌した後、熱重合開始剤としてAIBN0.2部を投入し、70℃で2時間反応させ、続いて80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃の温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去することにより、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。このアクリル系オリゴマーのTgは144℃であり、Mwは4300であった。
(粘着シートの作製)
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルムR1(三菱樹脂社製、MRF#38)に、上記で得た粘着剤組成物を塗布し、135℃で2分間乾燥させて、厚さ50μmの粘着剤層(基材レス粘着シート)を形成した。この粘着剤層に、ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている剥離フィルムR2(三菱樹脂社製、MRE#38)の剥離面を貼り合わせて保護した。このようにして、剥離フィルムR1、基材レス粘着シートおよび剥離フィルムR2がこの順序で積層した積層シートを得た。
<例2>
剥離力上昇剤として、例1で用いた化合物S-1に代えて、化合物S-2(ヘキサデシルトリエトキシシラン(東京化成工業社製))0.1部を使用した。その他の点は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
<例3>
剥離力上昇剤として、例1で用いた化合物S-1に代えて、化合物S-3(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業社製))0.1部を使用した。その他の点は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
<例4>
剥離力上昇剤を使用しなかった他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
<測定および評価>
(1)水剥離力測定
(1-1)試験片の被着体への貼付け
各例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)を幅20mm、長さ120mmの長方形状にカットして試験片を調製した。上記試験片の粘着面を、被着体としてのアルカリガラス板(松浪硝子工業社製、フロート法で作製、厚さ1.35mm、青板縁磨品、蒸留水に対する接触角:8度)にハンドローラーで貼り合わせ、23℃、50%RHの環境下に2時間静置した後、同環境下で上記アルカリガラス板を介して光照射を行った。上記光照射は、高圧水銀ランプ(東芝社製、商品名H3000L/22N、照度300mW/cm2)を使用して、上記ガラス板側から、積算光量3000mJ/cm2の条件で行った。その後、23℃、50%RHの環境下に1時間静置した。
(1-2)初期水剥離力(FW0)の測定
上記(1-1)により得られたサンプルについて、試験片を被着体に貼り合わせてから3時間後(すなわち、光照射から1時間経過直後)に上記被着体上に20μLの蒸留水を供給し、該蒸留水を該粘着剤層と該基材層との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237:2009の10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で水剥離力FW0を測定した。得られた結果を、幅10mm当たりの値に換算して表1に示した。
(1-3)加熱処理後水剥離力(FW2)の測定
上記(1-1)により得られたサンプルを、60℃の環境下に5時間保持し(加熱処理)、次いで23℃、50%の環境下に1時間保持した後、上記初期水剥離力(FW0)の測定と同様にして水剥離力FW2を測定した。得られた結果を、幅10mm当たりの値に換算して表1に示した。
(1-4)室温3日後、7日後、14日後水剥離力の測定
上記(1-1)により得られたサンプルを23℃、50%RHの環境下に3日間、7日間、または14日間静置した後、上記初期水剥離力(FW0)の測定と同様にして水剥離力を測定した。得られた結果を、幅10mm当たりの値に換算して表2に示した。
なお、例4の粘着シートの水剥離力は、3日後、7日後、14日後のいずれも0.3N/10mmであった。
(2)湿熱耐久試験
例1~3で作製した粘着剤層(基材レス粘着シート)について、さらに以下の湿熱耐久試験を行った。
(2-1)粘着剤層付き偏光板の作製
ヨウ素が含浸された厚さ12μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の視認側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて厚さ25μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせ、偏光子の画像表示部側表面に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて厚さ20μmのアクリルフィルムを積層し、偏光フィルム(P-1)とした。偏光フィルムの偏光度は99.995であった。
下記のアクリル系粘着剤組成物Cを、剥離フィルムR1(MRF#38)の剥離面に塗布して乾燥させることにより、厚さ20μmのアクリル系粘着剤層Aを作製した。このアクリル系粘着剤層Aを上記偏光フィルム(P-1)のアクリルフィルム側に貼り合わせることにより、粘着剤付き偏光板を作製した。
[アクリル系粘着剤組成物C]
BA98部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1部およびアクリル酸(AA)1部からなるモノマー混合物を、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3部、重合溶媒として酢酸エチルを用いて窒素ガス気流下において60℃で4時間反応させることにより、Mwが180万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)を得、このアクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり、0.3部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂製、ナイパーBO-Y)と、0.02部のトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー製、コロネートL)と、0.1部のシランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)とを配合し、均一に攪拌混合して、溶剤型のアクリル系粘着剤組成物Cを調製した。
(2-2)湿熱耐久性評価用サンプルの作製
各例に係る基材レス粘着シート(厚さ50μm)を上記粘着剤付き偏光板のTACフィルム側に貼り合わせることにより、光架橋性粘着剤層を有する偏光板シートを作製した。
上記偏光板シートを、幅40mm、長さ70mm短冊状にカットした。次に、被着体であるアルカリガラス板( 松浪硝子工業社製、フロート法で作製、厚さ1.35mm、青板縁磨品、蒸留水に対する接触角:8度)に、上記でカットした偏光板シートをハンドローラーで貼り付けた。
次いで、上記偏光板シートのアクリル系粘着剤層Aを覆う剥離フィルムR1を剥がし、露出したアクリル系粘着剤層Aに、アルミホイル(三菱アルミホイル製、商品名「ニッパクホイル」、厚さ12μm)をハンドローラーで貼り合わせ、偏光板シートと同サイズにカットした。これにより、アルカリガラス板/粘着剤層/偏光板/アルミホイルの構成を有する積層体を得た。
上記積層体をオートクレーブに投入し、圧力5atm、温度50℃の条件で15分間処理した後、23℃、50%RHの環境下で上記アルカリガラス板を介して光照射を行った。上記光照射は、高圧水銀ランプ(300mW/cm2)を使用して、積算光量3000mJ/cm2の紫外線をアルカリガラス側から照射することにより行った。。
(2-3)湿熱後剥離強度
上記(2-2)により得られたサンプルを、85℃、85%RHの環境下に24時間保持した後、23℃、50%RHの環境下で5時間静置した。その後、JIS Z0237:2009の10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定した。得られた結果を、幅10mm当たりの値に換算して表2に示した。
(2-4)湿熱耐久性評価
上記(2-2)により得られたサンプルを、5℃、85%RHの環境下に500時間保持した後、23℃、50%RHの環境下で5時間静置した。その後、粘着剤層とガラス板との界面における剥離の有無および気泡の発生有無を目視観察し、以下の3段階で耐久性を評価した。結果を表2に示した。なお、いずれの例に係る粘着シートを用いた場合も、上記耐久性評価用サンプルの作製直後には気泡は全く認められなかった。
A:剥がれ、気泡発生ともに認められなかった。
B:気泡の発生はないが、サンプルの端部で3mm未満の剥がれが認められた。
C:気泡の発生はないが、サンプルの端部で3mm以上の剥がれが認められた。
表1に示されるように、例1~4の粘着シートはいずれも水剥離力FW0が低く、貼付けの初期において良好な水剥離性を示した。また、例1~3の粘着シートは、加熱処理を行うことにより、例4の粘着シートに比べて、水剥離力FW2をより大きく上昇させることができ、耐水信頼性を高めることができた。
また、加熱処理により水剥離力が大きく上昇した例1~3の粘着シートのうち、例1、2の粘着シートでは、表2に示すように、例3の粘着シートに比べてより長期にわたって水剥離力の上昇を抑制することができた。なかでも、例1の粘着シートは、湿熱後剥離強度が高く、湿熱耐久試験後の外観にも優れていた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。