JP7455697B2 - 回転電機の回転子 - Google Patents
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Description
自己始動形の同期リラクタンスモータは、駆動用のインバータが不要となるため、モータドライブシステムとしてみた時に、低コスト化が実現できる。また、スイッチング損失などの変換器で発生する損失がないため、システム全体の効率を改善することができる。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、リラクタンストルクを低下させることなく、始動特性の向上した回転電機の回転子を提供することにある。
前記中心軸線の回りの周方向に並んだ複数の磁極を有し、前記シャフトに固定された回転子鉄心と、を備えている。前記回転子鉄心の磁極には、前記回転子鉄心の外周面におけるある箇所から他の箇所に至る複数層のフラックスバリアが前記中心軸線を通る所定の軸線をそれぞれ通過するように並べられて形成され、前記フラックスバリアは、前記フラックスバリアの長手方向の両端において前記回転子鉄心の外周面の一部を形成する第1ブリッジ部および第2ブリッジ部と、前記第1ブリッジ部と第2ブリッジ部との間に位置する空隙層と、を含んでいる。少なくとも1層のフラックスバリアは、前記空隙層の少なくとも1部に充填された硬磁性材料で形成された磁化反転可能な硬磁性領域を有している
図1は、第1実施形態に係る回転電機の横断面図、図2は、回転子の1磁極分を拡大して示す断面図である。
図1に示すように、回転電機10は、例えば、インナーロータ形の回転電機として構成され、図示しない固定枠に支持された環状あるいは円筒状の固定子12と、固定子の内側に中心軸線Cの回りで回転自在に、かつ固定子12と同軸的に支持された回転子14と、を備えている。実施形態において、回転電機10は、自己始動形のリラクタンスモータ(LS-SynRM)を構成している。
隣接する各ティース21間には、それぞれスロット20が形成されている。複数のスロット20は、円周方向に等間隔を置いて並んでいる。各スロット20は、固定子鉄心16の内周面に開口し、この内周面から放射方向に延出している。また、各スロット20は、固定子鉄心16の軸方向の全長に亘って延在している。
なお、固定子鉄心16に絶縁性を有するインシュレータが装着されてもよく、あるいは、固定子鉄心16の外面全体が絶縁被膜で被覆されてもよい(何れも図示しない)。
2層目、3層目、および最外層のフラックスバリア30b、30c、30dは、最内層のフラックスバリア30aに対して、d軸方向に間隔を置いて並んでいる。フラックスバリアは、4層に限らず、単層、2層、3層、あるいは5層以上に形成されてもよい。また、各フラックスバリアの空隙層32は、連続した一層に限らず、複数に分割された空隙層としてもよい。
回転子鉄心24において、前述したq軸は、バリア領域40によって磁束の流れが妨げられない方向に相当している。すなわち、回転子鉄心24の外周面のある周角度位置Aに正の磁位(例えば磁石のN極を近づける)を与え、それに対して1極分(本実施例の場合は90度)ずれた周角度位置Bに負の磁位(例えば磁石のS極を近づける)を与え、Aの位置を周方向へずらしていった場合に最も多くの磁束が流れる時の中心軸線Cから位置Aに向かう方向をq軸と定義している。一方、q軸に対して磁気的に直交するd軸は、バリア領域40によって磁束の流れが妨げられる方向に相当している。
各硬磁性領域42の磁化容易軸方向は、d軸方向に略平行となっている。なお、上記に述べた一般的な硬磁性材料のリコイル比透磁率はほぼ1である。すなわち、硬磁性材料の磁気抵抗は、回転子鉄心24の鉄心部に比べて十分大きく、バリア領域としての機能を有している。従って、バリア領域40の一部を硬磁性領域42に置き換えた場合でも、同期リラクタンスモータ本来の性質(効率や力率など)は損なわれない。
図3Aに示す状態1は、硬磁性材料に加わる磁界がほぼ0となるような状態である。この時、各硬磁性領域42の磁化は、d軸の正方向(図の上方向)を向いている。
図3Bに示す状態2は、次に、少し時間が経過して3相交流の位相が変化し、d軸の負方向(図の下方向)に磁界が生じた時の状態である。この状態2でも、磁化は概ねd軸の正方向となっている。その後、時間の経過に伴い、図3Cに示す状態3、図3Dに示す状態4に順次変化し、負方向の磁界が大きくなるにつれて、磁化も負方向へ変化する。
図4は、磁界と磁化の時間変化を表した図である。図4からも、磁化の変化が磁界の変化に対して遅れていることが分かる。
図5において、(FB+Mag)は、第1実施形態に係るリラクタンスモータ10を模擬した解析結果を示している。すなわち、フラックスバリアがバリア領域40と硬磁性領域42とにって構成されている。なお、図中の平均トルクは、電気角一周期あたりの平均値である。第1実施形態に係るリラクタンスモータ10では、滑りによらず、ほぼ一定のトルクが得られることが分かる。
図5において、FBは、一般的な同期リラクタンスモータを模擬した場合の解析結果を示している。すなわち、一般的な同期リラクタンスモータでは、フラックスバリアはバリア領域のみで構成され、硬磁性領域を有していない。このリラクタンスモータでは、電気角一周期の平均トルクは零となっており、加速(始動)できないことが確認できる。
電機子巻線18の内の1相(U相)に流れる電流をiuとすすると、U相電流が作る起磁力Fuは次のようになる。
V相とW相についても同様である。これらをベクトルとして足し合わせると、実効値Iaの3相電流が作る起磁力Fは次のように計算できる。
1極あたりのフラックスバリア30aの厚み(フラックスバリアのd軸方向の幅)の総和をtmとすると、硬磁性領域42に発生する磁界Hは次のように計算できる。
Hc<Hとなった時、硬磁性領域42の磁化の反転が発生する。したがって、本実施形態に係る自己始動形の同期リラクタンスモータ10は、定格電圧で始動した場合に流れる3相電流の実効値の最大値をImaxとした時、以下の条件が成立するモータである。
と計算できる。なお、U相、V相、W相電流の瞬時値をiu(t)、iv(t)、iw(t)とすると、3相電流の包絡線A(t)は、次のように計算できる。
(第1変形例)
図7は、第1変形例に係る回転電機の回転子の1磁極部分を示す断面図である。
図示のように、フラックスバリア30a、30b、30cの硬磁性領域42は、空隙層32に挿入配置された平板状の硬磁性材料で構成してもよい。
図8は、第2変形例に係る回転電機の回転子の1磁極部分を示す断面図である。
図示のように、フラックスバリア30a、30bの周方向の中央部に、鉄心部で形成されたセンターブリッジ44、45をそれぞれ設けても良い。本変形例において、センターブリッジ44、45は、d軸上に配置されている。センターブリッジ44、45を設けることにより、遠心力に対する回転子鉄心24の機械強度が向上し、より早い回転数でも動作させることができる。
フラックスバリア30b、30cにおいて、バリア領域に2つ以上の硬磁性領域42が設けられている。硬磁性領域42は、フラックスバリアの長手方向の一端と中央部との間、および長手方向の他端と中央部との間、にそれぞれ設けられている。
硬磁性領域42の設置数は、2つに限らず、3つ以上としてもよく、設置位置も上記に限らず、任意に選択可能である。
図9は、第3変形例に係る回転電機の回転子の1磁極部分を示す断面図である。
図示のように、回転子鉄心24の各磁極に3層のフラックスバリア30a、30b、30cが設けられている。3層のフラックスバリア30a、30b、30cは、回転子鉄心24の径方向に互いに間隔を置いて、中心軸線C側から外周面側に順に並んで設けられている。フラックスバリア30a、30b、30cの各々は、回転子鉄心24の外周面におけるある箇所からd軸を通り外周面の他の箇所に至り、中心軸線Cに向かって凸状に湾曲して延在している。複数のフラックスバリア30a、30b、30cは、固定子12により形成された磁束が通過する複数の磁路の間に形成され、各磁路を区画している。
2層目および3層目のフラックスバリア30b、30cは、最内層のフラックスバリア30aに対して、d軸方向に間隔を置いて並んでいる。フラックスバリアは、3層に限らず、単層、2層、あるいは4層以上としてもよい。
なお、ブリッジの数は、2つに限らず、3つ以上としてもよく、設置位置も上記に限らず、任意に選択可能である。
前述した第2変形例では,機械的なバランスを保つために、d軸に対して対称な位置に硬磁性領域42を配置する必要があり、硬磁性体を多数に分割する必要があった。これに対して、第3変形例では、硬磁性体の分割数を増やすことなく、機械的なバランスを保った高強度な回転子14が実現できる。
図10は、第2実施形態に係る回転電機の回転子の1磁極部分を示す断面図。
第1実施形態では、フラックスバリアは、バリア領域40と硬磁性領域42とで、またはどちらか一方によって構成されている。第2実施形態によれば、バリア領域の一部、または全てに、非磁性の導電体が充填され、それぞれ導電性領域(2次導体)50を構成している。図示の例では、バリア領域すべてを導電性領域50に置き換えている。非磁性の導電体としては、銅やアルミニウム、ステンレス等を用いることができる。
これらの導電性領域50は、回転子鉄心24の軸方向の一端に設けられた図示しない短絡部材(例えば、エンドリング)により互いに短絡され、二次巻線を構成している。
前述した図5において、(Cnd+Mag)は、第2実施形態に係るリラクタンスモータ10を模擬した解析結果を示している。すなわち、フラックスバリアは導電性領域と硬磁性領域とで構成されている。図5から、第2実施形態に係るリラクタンスモータ10は、第1実施形態に係るリラクタンスモータ(FB+Mag)よりも大きなトルクが得られていることが解る。
以上のように、第2実施形態に係るリラクタンスモータは、第1実施形態に係るリラクタンスモータよりも大きな始動トルクを得ることができ、更に、従来の自己始動形の同期リラクタンスモータの欠点を克服することができる。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、負荷のトルクや慣性モーメントが大きい場合でも,同期引き入れすることができ、始動性の向上した自己始動形の同期リラクタンスモータおよび回転子が得られる。
図11は、第3実施形態に係る回転電機の回転子の1磁極部分を示す断面図。
第3実施形態では、リラクタンスモータ10の回転子14の磁極数は2磁極に設定している。図11に示すように、回転子鉄心24は、1磁極ごとに、複数層、例えば、3層のフラックスバリア30a、30b、30cを有している。各磁極において、3層のフラックスバリア30a、30b、30c、回転子鉄心24の径方向(ここでは、d軸方向)に互いに間隔を置いて、中心軸線C側から外周面側に順に並んで設けられている。
3層のフラックスバリア30a、30b、30cは、固定子12により形成された磁束が通過する複数の磁路の間に形成され、各磁路を区画している。各相のフラックスバリアの第1ブリッジ部34aおよび第2ブリッジ部34bは、径方向の幅WOを有している。第1ブリッジ部34aおよび第2ブリッジ部34bは、各フラックスバリア30a、30b、30cの空隙層32により分離された回転子鉄心24同士を結合(接続)する役割を果たしている。なお,各層に属する第1ブリッジ部34aおよび第2ブリッジ部34bの径方向の幅WO、一定にかぎらず、不均一であってもよい。
各硬磁性領域42の磁化容易軸方向は、d軸方向に略平行となっている。なお、上記に述べた一般的な硬磁性材料のリコイル比透磁率はほぼ1である。
第3実施形態において、各フラックスバリアの空隙層32は、連続した一層に限らず、複数に分割された空隙層としてもよい。すなわち、前述した第2変形例、第3変形例と同様に、空隙層32の長手方向の1箇所あるいは複数箇所にブリッジを設けても良い。
また、バリア領域40の一部、または全てに、非磁性の導電体を充電し、バリア領域を導電性領域に置き換えても良い。非磁性の導電体としては、銅やアルミニウム、ステンレス等を用いることができる。
18…電機子巻線、20…スロット、22…シャフト、24…回転子鉄心、
30a、30b、30c、30d…フラックスバリア、32…空隙層、
32a…第1ブリッジ部、32b…第2ブリッジ部、40…バリア領域、
42…硬磁性領域、50…導電性領域
Claims (3)
- 中心軸線の回りで回転自在なシャフトと、
前記中心軸線の回りの周方向に並んだ複数の磁極を有し、前記シャフトに固定された回転子鉄心と、を備え、
前記回転子鉄心の磁極には、前記回転子鉄心の外周面におけるある箇所から他の箇所に至る複数層のフラックスバリアが前記中心軸線を通る所定の軸線をそれぞれ通過するように並べられて形成され、
前記フラックスバリアは、前記フラックスバリアの長手方向の両端において前記回転子鉄心の外周面の一部を形成する第1ブリッジ部および第2ブリッジ部と、前記第1ブリッジ部と第2ブリッジ部との間に位置する空隙層と、を含み、
少なくとも1層のフラックスバリアは、前記空隙層の少なくとも1部に充填された硬磁性材料で形成された磁化反転可能な硬磁性領域を有し、
Imax:定格電圧で始動した場合に流れる3相電流の実効値の最大値、Hc:硬磁性材料の保磁力、Nt:スロット内の直列導体数Ns:スロット数、p:磁極数、Nc:並列回路数、tm:1磁極当たりの硬磁性領域の厚みの総和、とした場合、
の関係式を満たす、回転子。 - 前記フラックスバリアの前記空隙層において、前記硬磁性領域以外の領域は、鉄心部分に比較して透磁率が低いバリア領域を形成している請求項1に記載の回転子。
- 少なくとも1層の前記フラックスバリアの前記空隙層において、前記硬磁性領域以外の領域は、非磁性導電体が充填され、鉄心部分に比較して透磁率が低く、かつ、導電率が大きい導電性領域を形成している請求項1に記載の回転子。
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