JP7464285B2 - マイクロ流体デバイス - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 令和3年6月6日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2021 in Osaka(https://robomech2021.org)の予稿集、令和3年6月7日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2021 in Osaka(https://robomech2021.org)において、福田敏男、志賀大雅が発明したマイクロ流体チップに関する研究について公開した。
本発明はマイクロ流体デバイスに関するものである。
特許文献1は、線形動物、いわゆる線虫の走化性を利用した癌検出法が記載されている。線虫は、健常者の尿に対しては忌避行動を示し、癌患者の尿に対しては誘引行動を示すという走化性を有している。この癌検出法で利用されている線虫の走化性検出手法は以下の通りである。まず、シャーレの周縁に近い所定の場所にサンプルの尿を置く。次に、シャーレの中心に線虫を100匹おいて、1時間程度、線虫を自走させる。その後、シャーレの中心を境にしてサンプルの尿を置いた側、及びその反対側の線虫の個体数を数える。サンプルの尿を置いた側の線虫の個体数をN(+)、反対側の線虫の個体数をN(-)として、以下の計算式に当てはめる。
計算式:N(+)-N(-)/全個体数
計算式によって得られる値は、+1~-1の値を取る。計算式の値が正の値の場合、サンプルの尿に線虫が誘引されたと評価し、被験者は癌の可能性があると判定することができる。
特開2020-31649号公報
しかし、特許文献1に示される線虫の走化性検出手法は、走化性の検出に長い時間を要する。また、この走化性検出手法は、時間の経過とともにサンプルの尿が拡散する等によって、線虫の誘引行動が弱まり、正確性及び精度が劣るおそれがある。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、線形動物の走化性を利用して誘引物質を早期に検出し、かつ正確性及び精度の良い検出結果を得ることができるマイクロ流体デバイスを提供することを解決すべき課題としている。
本発明のマイクロ流体デバイスは、
線形動物を配置する第1ポートと、
被検査物質を配置する第2ポートと、
前記第1ポートと前記第2ポートとを連通するチャネルと、
を備えており、
前記チャネルは、前記第1ポートから前記第2ポートに向けての前記線形動物の自走を許容し、前記第2ポートから前記第1ポートに向けての前記線形動物の自走を抑制する逆走抑制領域を有している。
このマイクロ流体デバイスは、被検査物質に誘引され、第1ポートからチャネルを介して第2ポートに自走した線形動物が、チャネルの逆走抑制領域によって、第2ポートから第1ポートへ向けた逆走を抑制するため、被検査物質に誘引されて第2ポート内に移動した線形動物の個体数を正確に把握することができる。
したがって、本発明のマイクロ流体デバイスは、線形動物の走化性を利用して誘引物質を早期に検出し、かつ正確性及び精度の良い検出結果を得ることができる。
実施例1のマイクロ流体デバイスを示す平面図である。 実施例1のマイクロ流体デバイスのチャネルを自走する線虫を示す平面図である。 実施例1のマイクロ流体デバイスのチャネルを自走する線虫の軌跡例を示す平面図である。 比較例のマイクロ流体デバイスのチャネルを自走する線虫の軌跡例を示す平面図である。 実施例1の評価方法に利用する第1ライン及び第2ラインを示す平面図である。 (A)は第1連結部があるチャネルの第2ポート内の線虫の個体数の時間推移を示すグラフであり、(B)は第1連結部がないチャネルの第2ポート内の線虫の個体数の時間推移を示すグラフである。 癌患者の尿及び健常者の尿を含む被検査物質に対する線虫の走化性を確認する実験において、第2ポート内の線虫の個体数の時間推移を示すグラフであり、(A)は2回目の実験結果を示し、(B)は1回目の実験結果を示す。 癌患者の尿及び健常者の尿を含む被検査物質に対する線虫の走化性を確認する実験において、第2ポート内の線虫の最大個体数を示すグラフである。 癌患者の尿及び健常者の尿を含む被検査物質に対する線虫の走化性を確認する実験において、第2ポート内の線虫の最大個体数と、各時間における第2ポート内の線虫の個体数との割合を示すグラフである。 3つのポートを備えたマイクロ流体デバイスを示す平面図である。 形状が異なる第1連結部を具備したマイクロ流体デバイスを示す平面図である。
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明のマイクロ流体デバイスのチャネルは、前記第1ポートから前記第2ポートに向けて線形動物の自走を援助する自走援助領域を有し得る。この場合、このマイクロ流体デバイスは、チャネル内を被検査物質に誘引された線形動物が第1ポートから第2ポートに向けて速やかに自走することができる。このため、このマイクロ流体デバイスは、線形動物の走化性を利用して誘引物質を早期に検出することができる。
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、前記逆走抑制領域は、前記自走援助領域よりも前記第2ポート側に配置され得る。この場合、このマイクロ流体デバイスは、チャネル内を被検査物質に誘引された線形動物が第1ポートから第2ポートに向けて速やかに自走することができるとともに、被検査物質に誘引された第2ポート内の線形動物の第1ポートに向けた逆走を抑制して第2ポート内の線虫の個体数を正確に把握することができる。このため、このマイクロ流体デバイスは、線形動物の走化性を利用して誘引物質を早期に検出し、かつ正確性及び精度の良い検出結果を得ることができる。
本発明のマイクロ流体デバイスの前記チャネルは、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部を有しており、前記逆走抑制領域は、両端を各前記側面に連結して中心軸線が各前記側面に対して直交しており、前記中心軸線に直交する仮想平面によって切断した断面形状において、前記第2ポート側の側面が凹んだ略円形状である複数の第1連結部を具備し得る。この場合、第1連結部の側面の凹んだ部分に、線形動物の頭部が入り込むと、この凹んだ部分から線形動物の頭部が抜け出しにくく、線形動物の第1ポートへ向けた逆走を抑制することができる。このため、このマイクロ流体デバイスは、線形動物の走化性を利用した誘引物質の検出において、正確性及び精度の良い検出結果を得ることができる。
本発明のマイクロ流体デバイスの複数の前記第1連結部は、前記第1ポートから前記第2ポートに向けてまっすぐに延びる第1仮想直線に直交した複数の第2仮想直線上に等間隔に並んでおり、隣り合う前記第2仮想直線上に配置された各前記第1連結部は、前記第1仮想直線に沿って見た際に、前記中心軸線がずれた状態で重なり得る。この場合、複数の第1連結部の配置によって、被検査物質に誘引された線形動物が第1ポートから第2ポートに向けて自走する際に線形動物の自走を援助することができる。このため、このマイクロ流体デバイスは、線形動物の走化性を利用して誘引物質を早期に検出することができる。
本発明のマイクロ流体デバイスの前記チャネルは、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部を有しており、前記自走援助領域は、両端を各前記側面に連結して中心軸線が前記側面に対して直交しており、前記中心軸線に直交する仮想平面によって切断した断面形状が円形状である複数の第2連結部を具備しており、複数の前記第2連結部は、前記第1ポートから前記第2ポートに向けてまっすぐに延びる第1仮想直線に直交した複数の第2仮想直線上に等間隔に並んでおり、隣り合う前記第2仮想直線上に配置された各前記第2連結部は、前記第1仮想直線に沿って見た際に、前記中心軸線がずれた状態で重なり得る。この場合、複数の第2連結部の配置によって、被検査物質に誘引された線形動物が第1ポートから第2ポートに向けて自走する際に線形動物の自走を援助することができる。このため、このマイクロ流体デバイスは、線形動物の走化性を利用して誘引物質を早期に検出することができる。ここでいう円形状は、真円でなくてもよく、まるい形であればよく、楕円形を含む形状である。
次に、本発明のマイクロ流体デバイスを具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
<実施例1>
実施例1のマイクロ流体デバイス1は、図1に示すように、第1ポート10、第2ポート20、及びチャネル30を備えている。マイクロ流体デバイス1は、PDMS(ジメチルポリシロキサン)とガラスプレートとを接合して形成されており、透明である。第1ポート10、第2ポート20、及びチャネル30は、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部の間に形成されている。対向して広がる側面の夫々は、第1ポート10、第2ポート20、及びチャネル30の上面及び下面を構成し、その間隔は70μmである。
第1ポート10は、線形動物、いわゆる線虫X(図2参照)の走化性を利用した試験を行う際、線虫Xを配置する。第2ポート20は、線虫Xの走化性を利用した試験を行う際、被検査物質を配置する。チャネル30は第1ポート10と第2ポート20とを連通している。チャネル30は、長さLが3200μmであり、幅Lが1880μmである。
チャネル30は、複数の第1連結部310、及び複数の第2連結部320を具備している。各第1連結部310及び各第2連結部320は、チャネル30の上面及び下面に上下両端の夫々を連結している。各第1連結部310及び各第2連結部320の中心軸線はチャネル30の上面及び下面に対して直交している。
各第1連結部310は、図1及び図5に示すように、第1ポート10から第2ポート20に向けてまっすぐに延びる第1仮想直線FLに直交して並んだ3本の第2仮想直線S1~S3上に等間隔に並んでいる。同じ第2仮想直線S1~S3上に並んだ第1連結部310の中心軸線の間隔Wは260μmである。各第2仮想直線S1~S3上に並んだ複数の第1連結部310は、チャネル30の幅方向の全体に亘って配置されている。
各第2連結部320は、第1仮想直線FLに直交して並んだ10本の第2仮想直線S4~S13上に等間隔に並んでいる。同じ第2仮想直線S4~S13上に並んだ第2連結部320の中心軸線の間隔Wは260μmである。各第2仮想直線S4~S13上に並んだ複数の第2連結部320は、チャネル30の幅方向の全体に亘って配置されている。
複数の第1連結部310が並んだ3本の第2仮想直線S1~S3は、複数の第2連結部320が並んだ10本の第2仮想直線S4~S13よりも第2ポート20側に配置されている。複数の第1連結部310が並んだ3本の第2仮想直線S1~S3、及び複数の第2連結部320が並んだ10本の第2仮想直線S4~S13の合計13本の第2仮想直線S1~S13は、チャネル30の長さ方向の全体に渡って等間隔に並んでいる。1本置きの第2仮想直線S1~S13の間隔Wは500μmである。
第1連結部310の中心軸線に直交する仮想平面によって第1連結部310を切断した断面形状(以下、「第1連結部310の断面形状」という。)は、第2ポート20側の側面が凹んだ略円形状である。第1連結部310の断面形状は、直径が200μmの円形状に対して第2ポート20側の側面が長方形状に切欠かれている。つまり、各第1連結部310は、一対の側壁部の各側面に両端を連結しており、中心軸線が各側面に対して直交した略円柱形状であり、第2ポート20側の側面に中心軸線に沿って延びた溝311が形成されている。第1連結部310の断面形状において、切欠かれた部分の第2仮想直線S1~S3に平行に直線状に延びる底面部311Aの長さLは120μmであり、底面部311Aの両端から第1連結部310の周面に向けて直線状に延びる側面部311Bの長さLは50μmである。第1連結部310の断面形状において、底面部311Aと、底面部311Aの両端から延びる側面部311Bとによって形成される角部311Cの角度は、直角である。
第2ポート20側から1本目の第2仮想直線S1、及び3本目の第2仮想直線S3上には6個の第1連結部310が並んでいる。第2ポート20側から2本目の第2仮想直線S2上には7個の第1連結部310が並んでいる。第2ポート20側から1本面の第2仮想直線S1、及び3本目の第2仮想直線S3上に並んだ各第1連結部310は、第1仮想直線FLに沿って見た際に、各第1連結部310の中心軸線が一致し、完全に重なっている。
隣り合う第2仮想直線S1~S3上に配置された各第1連結部310は、第1仮想直線FLに沿って見た際に、一方の第2仮想直線S1~S3上に配置された2個の第1連結部310の中心軸線の間の中央に、他方の第2仮想直線S1~S3上に配置された1個の第1連結部310の中心軸線が位置した状態で重なっている。チャネル30において、第2ポート20側から1本目の第2仮想直線S1~3本目の第2仮想直線S3上に並んだ複数の第1連結部310が配置されている領域が逆走抑制領域R1である。逆走抑制領域R1は、チャネル30の第2ポート20側の一端部に形成されている。
第2連結部320の中心軸線に直交する仮想平面によって第2連結部320を切断した断面形状は、直径が200μmの円形状である。つまり、各第2連結部320は、一対の側壁部の各側面に両端を連結しており、中心軸線が各側面に対して直交した円柱形状である。
第2ポート20側から4本目から13本目の第2仮想直線S4~S13において、偶数本目の第2仮想直線S4,S6,S8,S10,S12上には7個の第2連結部320が並んでいる。第2ポート20側から4本目から13本目の第2仮想直線S4~S13において、奇数本目の第2仮想直線S5,S7,S9,S11,S13上には6個の第2連結部320が並んでいる。第2ポート20側から4本目から13本目における偶数本目の第2仮想直線S4,S6,S8,S10,S12上に並んだ各第2連結部320は、第1仮想線に沿って見た際に、各第2連結部320の中心軸線が一致し、完全に重なっている。第2ポート20側から4本目から13本目における奇数本目の第2仮想直線S5,S7,S9,S11,S13上に並んだ各第2連結部320は、第1仮想線に沿って見た際に、各第2連結部320の中心軸線が一致し、完全に重なっている。
隣り合う第2仮想直線S4~S13上に配置された各第2連結部320は、第1仮想直線FLに沿って見た際に、一方の第2仮想直線S4~S13上に配置された2個の第2連結部320の中心軸線の間の中央に他方の第2仮想直線S4~S13上に配置された1個の第2連結部320の中心軸線が位置した状態で重なっている。チャネル30において、第2ポート20側から4本目の第2仮想直線S4~13本目の第2仮想直線S13上に並んだ複数の第2連結部320が配置されている領域が自走援助領域R2である。
各第1連結部310及び各第2連結部320の配置は、全長が500μm~600μmの線虫Xが平面上を移動する波状の軌跡に基づいて決定したものである。この軌跡の波長平均は、462±132μmであり、振幅平均は、158±54μmである。各第1連結部310及び各第2連結部320は、図2に示すように、被検査物質に誘引された線虫Xが第1ポート10から第2ポート20に向けて自走する際、線虫Xの引っ掛かりとなり、線虫Xがスムーズに自走することができる。
チャネル30の幅方向の両端縁は、図5に示すように、第2ポート20側から偶数本目の第2仮想直線S2、S4,S6,S8,S10,S12が横切る部分は、第1連結部310及び第2連結部320の外周縁に沿って外方向に湾曲して突出している。チャネル30の幅方向の両端縁は、第2ポート20側から奇数本目の第2仮想直線S1,S3,S5,S7,S9,S11,S13が横切る部分は、内方向に湾曲して凹んでいる。つまり、チャネル30の幅方向の両端縁は、湾曲した凹凸が交互に連続して延びている。
<走化性試験>
上述した実施例1のマイクロ流体デバイス1を利用して、線虫Xの走化性試験を以下に示すように行った。
先ず、マイクロ流体デバイス1の第1ポート10、第2ポート20、及びチャネル30を純水で満たす。次に、第1ポート10に線虫X入りのM9バッファーを2μl滴下し、略同時に第2ポート20に被検査物質の試液2μl滴下する。線虫Xは、C.elegans(Caenorhabditis elegans)である。試液は、線虫Xを誘引するブタノンである。試験映像を記録し、映像をもとに計測した。
<線虫Xの軌跡例>
実施例1のマイクロ流体デバイス1を利用した場合の線虫Xの軌跡例を図3に示す。この場合、線虫Xは、初期位置P1から第2ポート20に向けて自走援助領域R2をスムーズに自走して第2ポート20に到達する。その後、線虫Xは、第1連結部310の側面の溝311に入り込むと、この溝311から線虫Xの頭部が抜け出しにくく、第1ポート10へ向けた逆走が抑制されて、約15秒後の位置P2に示すように、第2ポート20内に留まっていた。
比較例として、第1連結部310がなく、チャネル30の全体に第2連結部320を配置したマイクロ流体デバイス2を用意し、それを利用した場合の線虫Xの軌跡例を図4に示す。マイクロ流体デバイス2は、チャネル30の全体に第2連結部320が配置されており、チャネル30の全体が自走援助領域R2である。この場合、線虫Xは、初期位置P1から第2ポート20に向けて自走援助領域R2をスムーズに自走して第2ポート20に到達する。その後、線虫Xは、第1ポート10へ向けて自走援助領域R2をスムーズに逆走し、約15秒後の位置P2に示すように、短時間で第1ポート10と第2ポート20とを行き来した。
<評価方法>
図5に示すように、第1ラインL1よりも右側の第2ポート20内の線虫Xの個体数をNr、第1ラインL1を第2ポート20から第1ポート10に向けて逆走する線虫Xの個体数をNg、第2ラインL2を第2ポート20から第1ポート10に向けて逆走する線虫Xの個体数をNpとする。
第1の評価指標は、式1に示すように、第2ポート20内の線虫Xの個体数Eを表し、10秒ごとの第2ポート20内の個体数Eから走化性評価を行う。
E=Nr ・・・式1
第2の評価指標は、式2に示すように、第1ラインL1及び第2ラインL2を逆走して通過した個体数Eから逆走阻止率Gを算出する。逆走阻止率Gは、第1ラインL1の通過数に対する第2ラインL2の非通過数の割合を表している。逆走阻止率Gの値が大きいほど、逆走阻止効果が強いといえる。
G=(Ng―Np)/Ng ・・・式2
第1連結部310がなく、チャネル30の全体に第2連結部320を配置した比較例のマイクロ流体デバイス2についても同様の評価を行った。
図6(A)に示すように、実施例1のマイクロ流体デバイス1は、第1ポート10に線虫X入りのM9バッファーを2μl滴下し、略同時に第2ポート20に被検査物質であるブタノン2μl滴下した後の20秒~30秒までの間に線虫Xの強い誘引反応が示されている。滴下後約50秒以降、第2ポート20内の線虫Xの個体数Eはある程度維持し、滴下後180秒経過後でも第2ポート20内の線虫Xの個体数Eを維持できている。
図6(B)に示すように、比較例のマイクロ流体デバイス2は、第1ポート10に線虫X入りのM9バッファーを2μl滴下し、略同時に第2ポート20に被検査物質であるブタノン2μl滴下した後の20秒~30秒までの間に線虫Xの強い誘引反応が示されている。滴下後180秒経過すると、滴下したブタノンの濃度がマイクロ流体デバイス2内で均一になり、線虫Xの逆走が激しくなるため、第2ポート20内の線虫Xの個体数Eが減少している。
実施例1の第1連結部310があるマイクロ流体デバイス1、及び比較例の第1連結部310がないマイクロ流体デバイス2の逆走阻止率Gを表1に示す。比較例のマイクロ流体デバイス2の逆走阻止率が約19%であったのに対して、実施例1のマイクロ流体デバイス1は、約58%まで逆走阻止率を高めることができた。
Figure 0007464285000001
第1及び第2の評価指標から、第1連結部310の形状、及び複数の第1連結部310を配置した逆走抑制領域R1は、線虫Xの逆走抑制に効果的であることが分かった。
<尿に対する走化性>
次に、癌検査の実験として、癌患者の尿、及び健常者の尿を含む被検査物質に対して、線虫Xの走化性を確認した。嗅覚器官のみある線虫Xの変異体(odr-3)を利用した。純水36μlと、癌患者の尿、健常者の尿の夫々4μlとをシャーレ上に滴下し、純水と夫々の尿とを十分に混ぜ合わせて被検査物質とし、被検査物質2μlを第1ポート10に滴下した。夫々の尿を含む被検査物質に対して、10秒毎の第2ポート20内の線虫Xの個体数Eを2回計測した。
図7(A)(B)に示すように、2回行った実験の結果、健常者の尿を含む被検査物質に対して、定常状態となる時間が異なっている。第1ポート10に線虫X入りのM9バッファーを2μl滴下し、略同時に第2ポート20に被検査物質を滴下した後、30秒で癌患者の尿を含む被検査物質と健常者の尿を含む被検査物質との十分な有意差が確認できる。癌患者の尿を含む被検査物質に対しては、滴下から50秒の間に強い誘引反応が見られる。
第1回目の実験において、図8に示すように、癌患者の尿を含む被検査物質に対しては、滴下後180秒間で最大51匹の線虫Xが第2ポート20に移動した。第1回目の実験において、健常者の尿を含む被検査物質に対しては、滴下後180秒間で最大35匹の線虫Xが第2ポート20に移動した。
第1回目の実験において、第2ポート20内の線虫Xの最大個体数と、各時間における第2ポート20内の線虫Xの個体数Eとの割合を図9及び表2に示す。滴下後30秒~40秒において、線虫Xの移動数には明らかな差がある。癌患者の尿を含む被検査物質に対する誘因行動が、滴下後60秒経過でほとんど終えている。
Figure 0007464285000002
以上説明したように、実施例1のマイクロ流体デバイス1は、第1ポート10、第2ポート20、及びチャネル30を備えている。第1ポート10は線虫X入りのM9バッファーを滴下する。第2ポート20は被検査物質を滴下する。チャネル30は第1ポート10と第2ポート20とを連通する。チャネル30は、第1ポート10から第2ポート20に向けての線虫Xの自走を許容し、第2ポート20から第1ポート10に向けての線虫Xの逆走を抑制する逆走抑制領域R1を有している。
このマイクロ流体デバイス1は、被検査物質に誘引され、第1ポート10からチャネル30を介して第2ポート20に自走した線虫Xが、チャネル30の逆走抑制領域R1によって、第2ポート20から第1ポート10へ向けた逆走を抑制するため、被検査物質に誘引されて第2ポート20内に移動した線虫Xの個体数を正確に把握することができる。
したがって、実施例1のマイクロ流体デバイス1は、線虫Xの走化性を利用して誘引物質を早期に検出し、かつ正確性及び精度の良い検出結果を得ることができる。
実施例1のチャネル30は、第1ポート10から第2ポート20に向けて線虫Xの自走を援助する自走援助領域R2を有している。このため、このマイクロ流体デバイス1は、チャネル30内を被検査物質に誘引された線虫Xが第1ポート10から第2ポート20に向けて速やかに自走することができる。よって、このマイクロ流体デバイス1は、線虫Xの走化性を利用して誘引物質を早期に検出することができる。
実施例1のマイクロ流体デバイス1において、逆走抑制領域R1は、自走援助領域R2よりも第2ポート20側に配置されている。このため、このマイクロ流体デバイス1は、チャネル30内を被検査物質に誘引された線虫Xが第1ポート10から第2ポート20に向けて速やかに自走することができるとともに、被検査物質に誘引された第2ポート20内の線虫Xの第1ポート10に向けた逆走を抑制して第2ポート20内の線虫Xの個体数を正確に把握することができる。よって、このマイクロ流体デバイス1は、線虫Xの走化性を利用して誘引物質を早期に検出し、かつ正確性及び精度の良い検出結果を得ることができる。
実施例1のチャネル30は、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部を有している。逆走抑制領域R1は、複数の第1連結部310を具備している。各第1連結部310は、両端を各側面に連結して中心軸線が各側面に対して直交している。各第1連結部310は、中心軸線に直交する仮想平面によって切断した断面形状において、第2ポート20側の側面が凹んだ略円形状である。このように逆走抑制領域R1は複数の第1連結部310を具備しているため、第1連結部310の側面の凹んだ部分に、線虫Xの頭部が入り込むと、この凹んだ部分から線虫Xの頭部が抜け出しにくく、線虫Xの第1ポート10へ向けた逆走を抑制することができる。よって、このマイクロ流体デバイス1は、線虫Xの走化性を利用した誘引物質の検出において、正確性及び精度の良い検出結果を得ることができる。
実施例1の複数の第1連結部310は、第1ポート10から第2ポート20に向けてまっすぐに延びる第1仮想直線FLに直交した複数の第2仮想直線S1~S3上に等間隔に並んでいる。隣り合う第2仮想直線S1~S3上に配置された各第1連結部310は、第1仮想直線FLに沿って見た際に、中心軸線がずれた状態で重なっている。このような複数の第1連結部310の配置によって、被検査物質に誘引された線虫Xが第1ポート10から第2ポート20に向けて自走する際に線虫Xの自走を援助することができる。よって、このマイクロ流体デバイス1は、線虫Xの走化性を利用して誘引物質を早期に検出することができる。
実施例1のチャネル30は、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部を有している。自走援助領域R2は、両端を各側面に連結して中心軸線が前記側面に対して直交しており、中心軸線に直交する仮想平面によって切断した断面形状が円形状である複数の第2連結部320を具備している。複数の第2連結部320は、第1ポート10から第2ポート20に向けてまっすぐに延びる第1仮想直線FLに直交した複数の第2仮想直線S4~S13上に等間隔に並んでいる。隣り合う第2仮想直線S4~S13上に配置された各第2連結部320は、第1仮想直線FLに沿って見た際に、中心軸線がずれた状態で重なっている。このような複数の第2連結部320の配置によって、被検査物質に誘引された線虫Xが第1ポート10から第2ポート20に向けて自走する際に線虫Xの自走を援助することができる。よって、このマイクロ流体デバイス1は、線虫Xの走化性を利用して誘引物質を早期に検出することができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1のマイクロ流体デバイスは2個のポートを備えていたが、3個以上のポートを備えていてもよい。3個のポートを備える場合、図10に示すように、マイクロ流体デバイス3は、線虫を配置する第1ポート40と、被検査物質を配置する第2ポート50及び第3ポート60を備えるようにしてもよい。この場合、第2ポート50と第3ポート60とを連通する第1チャネル80の中央部に第1ポート40から延びる第2チャネル70を連通させる。第2ポート50及び第3ポート60の夫々に連続する第1チャネル80の両端部は複数の第1連結部310を配置し、第1チャネル80のその他の領域及び第2チャネル70は複数の第2連結部320を配置する。第1チャネル80の両端部は複数の第1連結部310によって、逆走抑制領域R1が形成されているため、第1ポート40に滴下した線虫が第2ポート50及び第3ポート60に到達すると、第2ポート50及び第3ポート60から線虫が逆走することを抑制することができる。
(2)実施例1のマイクロ流体デバイスの第1連結部は、断面形状において、長方形状に切欠かれていたが、第1連結部の切り欠き形状は、図11に示すように、円弧状等、その他の形状であってもよい。
(3)図11に示すように、断面形状の異なる第1連結部350を配置した逆走抑制領域R1を有するマイクロ流体デバイス4でもよい。
(4)実施例1の逆走抑制領域は、チャネルの第2ポート側の一端部に形成されているが、チャネルの一端部に限らず、中間部や、第1ポート側の他端部に形成してもよい。
(5)実施例1のチャネルは自走援助領域を有していたが、第2連結部を具備せずに自走援助領域を有さなくてもよい。
(6)実施例1のチャネルは、逆走抑制領域と自走援助領域を有していたが、チャネル全体が逆走抑制領域であってもよい。
(7)実施例1において、マイクロ流体デバイスを癌検査に利用することを説明したが、このマイクロ流体デバイスは、癌検査に限らず線虫の走化性を利用した検査に利用することができる。
1…マイクロ流体デバイス
10…第1ポート
20…第2ポート
30…チャネル
310…第1連結部
320…第2連結部
FL…第1仮想直線
R1…逆走抑制領域
R2…自走援助領域
S1~S13…第2仮想直線
X…線虫(線形動物)

Claims (5)

  1. 線形動物を配置する第1ポートと、
    被検査物質を配置する第2ポートと、
    前記第1ポートと前記第2ポートとを連通するチャネルと、
    を備えており、
    前記チャネルは、前記第1ポートから前記第2ポートに向けての前記線形動物の自走を許容し、前記第2ポートから前記第1ポートに向けての前記線形動物の自走を抑制する逆走抑制領域を有し
    前記チャネルは、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部を有しており、
    前記逆走抑制領域は、両端を各前記側面に連結して中心軸線が各前記側面に対して直交しており、前記中心軸線に直交する仮想平面によって切断した断面形状において、前記第2ポート側の側面が凹んだ略円形状である複数の第1連結部を具備しているマイクロ流体デバイス。
  2. 前記チャネルは、前記第1ポートから前記第2ポートに向けて線形動物の自走を援助する自走援助領域を有している請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
  3. 前記逆走抑制領域は、前記自走援助領域よりも前記第2ポート側に配置されている請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
  4. 複数の前記第1連結部は、前記第1ポートから前記第2ポートに向けてまっすぐに延びる第1仮想直線に直交した複数の第2仮想直線上に等間隔に並んで配置され、隣り合う前記第2仮想直線上に配置された各前記第1連結部は、前記第1仮想直線に沿って見た際に、前記中心軸線がずれた状態で重なっている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
  5. 前記チャネルは、平面状の側面が対向して広がる一対の側壁部を有しており、
    前記自走援助領域は、両端を各前記側面に連結して中心軸線が前記側面に対して直交しており、前記中心軸線に直交する仮想平面によって切断した断面形状が円形状である複数の第2連結部を具備しており、
    複数の前記第2連結部は、前記第1ポートから前記第2ポートに向けてまっすぐに延びる第1仮想直線に直交した複数の第2仮想直線上に等間隔に並んでおり、隣り合う前記第2仮想直線上に配置された各前記第2連結部は、前記第1仮想直線に沿って見た際に、前記中心軸線がずれた状態で重なっている請求項2及び請求項3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
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