JP7473207B2 - 末梢血流障害の治療剤 - Google Patents
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Description
その一方で、食生活の欧米化や車社会を中心とした生活様式の変化により、メタボリックシンドロームなどの新しい生活習慣病の概念が生まれ、社会の疾病構造が大きく変化している。特に動脈硬化性疾患が増え、虚血性心疾患の増加とともに末梢動脈疾患(PAD:peripheral arterial disease)が増加している。
PADは虚血肢という足の症状として現れる。しかし単なる足の病気ではなく、加齢や糖尿病を背景とした動脈硬化により末梢の血管の閉塞が起こり、虚血肢として現れたものである。このためPADは同じ動脈硬化性疾患である虚血性心疾患や脳疾患を伴うことが多い。予後は非常に悪く、死亡率は悪性腫瘍よりも高いといわれている。早期発見により適切な治療を行うことが重要である。
PADの内科的治療としては、運動療法、温熱療法などの理学療法や、シロスタゾール、ペラプロストナトリウム、塩酸サルポグレラート、塩酸チクロピジン、イコサペント酸エチル、アルプロスタジル、アルプロスタジルアルファデクス、アルガトロバン、パトロキソビン、ペントキシフィリンなどの抗血小板薬、抗血栓薬および血管拡張薬などをはじめとする薬物療法が行なわれている。
また、PADの外科的治療としては、バルーン拡張術、ステント留置術、アテレクトミーなどの血管内治療や、血栓内膜摘除術、バイパス術、交感神経切除術などの外科的手術が行われている。
その一つとして、成人の骨髄及び末梢血単核球中に血管内皮細胞に分化しうる血管内皮前駆細胞が存在することが報告され、骨髄由来単核細胞移植は下肢虚血動物モデルにおいて、血管新生や側副血行路の発達により下肢血流量増加作用を発揮することが確認された。(非特許文献1)
しかしながら、骨髄単核球移植による治療は多量の骨髄液採取を必要とし、侵襲が大きく、また、新鮮分離細胞のため骨髄細胞中の幹細胞及び前駆細胞量に個人差があり臨床効果に大きな差が出ることが明らかとなっている。
しかしながら、移植細胞の血管への長期生着や血管構成細胞への分化が見られないなど、再生医療の効果として十分なものとは言えない。
[1]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に由来するSSEA-3陽性の多能性幹細胞を含む、末梢血流障害を治療するための細胞製剤。
[2]末梢血流障害が末梢動脈疾患である、[1]に記載の細胞製剤。
[3]末梢動脈疾患が、四肢の慢性動脈閉塞症である、[2]に記載の細胞製剤。
[4]末梢動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症である、[2]または[3]に記載の細胞製剤。
[5]末梢動脈疾患が、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)である、[2]または[3]に記載の細胞製剤。
[6]末梢動脈疾患が、膝窩動脈捕捉症候群である、[2]または[3]に記載の細胞製剤。
[7]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。
[8]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の細胞製剤:
(i)SSEA-3陽性;
(ii)CD105陽性;
(iii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(iv)三胚葉のいずれかの胚葉に分化する能力を持つ;
(v)腫瘍性増殖を示さない;及び
(vi)セルフリニューアル能を持つ。
[8]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に由来するSSEA-3陽性の多能性幹細胞の、末梢血流障害を治療するための細胞製剤の製造のための使用。
[9]前記[1]~[7]のいずれかに記載の細胞製剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、末梢血流障害の治療方法。
[10]前記細胞製剤は静脈内に投与される、[9]の末梢血流障害の治療方法。
[11]前記細胞製剤は複数回投与される、[9]または[10]の末梢血流障害の治療方法。
間葉系幹細胞や自家骨髄細胞では静脈投与で細胞が障害部位に到達することが難しい、あるいは到達するとしてもその効率が非常に低いため筋肉注射で投与されることが一般的であるが、筋肉注射は連続治療が困難であるという問題がある。これに対し、Muse細胞等は静脈投与だけで障害部位に選択的に到達・集積することが可能であり、また静脈投与であるために複数回投与も可能である。これらのことから複数回の治療を行うことで、間葉系幹細胞や自家骨髄細胞よりも優れた治療効果が得られる可能性が示唆される。
本発明のSSEA-3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞製剤は、末梢動脈疾患の治療に使用される。
「末梢動脈疾患」としては、四肢の慢性動脈閉塞症に該当する疾患が好ましく、上記の疾患のうち、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎および膝窩動脈捕捉症候群が好ましい。
レイノー病としては、一次性レイノー症候群および二次性レイノー症候群を含み、その原因は特に限定されず、膠原病によるもの、外傷によるもの、振動によるもの、胸郭出口症候群によるもの、慢性閉塞性動脈疾患によるもの、血液疾患によるもの、神経疾患によるもの、などが例示される。
(1)多能性幹細胞(Muse細胞)
本発明の細胞製剤に使用される多能性幹細胞は、本発明者らの一人である出澤が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage-differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞である。Muse細胞は、骨髄液、脂肪組織(Ogura,F.,et al.,Stem Cells Dev.,Nov 20,2013(Epub)(published on Jan 17,2014))や皮膚の真皮結合組織等から得ることができるほか、広く組織や臓器の結合組織に存在することが知られている。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞であり、例えば、細胞表面マーカーである「SSEA-3(Stage-specific embryonic antigen-3)」陽性細胞、好ましくはSSEA-3陽性かつCD105陽性の二重陽性細胞として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、SSEA-3単独又はSSEA-3及びCD105の発現を指標として生体組織から分離することができる。Muse細胞の分離法、同定法、及び特徴などの詳細は、特許文献2(国際公開第WO2011/007900号)に開示されている。また、Muse細胞が様々な外的ストレスに対する耐性が高いことを利用して、蛋白質分解酵素処理や、低酸素条件、低リン酸条件、低血清濃度、低栄養条件、熱ショックへの暴露、有害物質存在下、活性酸素存在下、機械的刺激下、圧力処理下など各種外的ストレス条件下での培養によりMuse細胞を選択的に濃縮することができる。なお、本明細書においては、末梢動脈疾患を治療するための細胞製剤として、SSEA-3を指標として用いて、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から調製された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA-3陽性細胞」と記載することがある。また、本明細書においては、「非Muse細胞」とは、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に含まれる細胞であって、「SSEA-3陽性細胞」以外の細胞を指すことがある。
前記外的ストレスは、プロテアーゼ処理、低酸素濃度での培養、低リン酸条件下での培養、低血清濃度での培養、低栄養条件での培養、熱ショックへの暴露下での培養、低温での培養、凍結処理、有害物質存在下での培養、活性酸素存在下での培養、機械的刺激下での培養、振とう処理下での培養、圧力処理下での培養又は物理的衝撃のいずれか又は複数の組み合わせであってもよい。
前記プロテアーゼによる処理時間は、細胞に外的ストレスを与えるために合計0.5~36時間行うことが好ましい。また、プロテアーゼ濃度は、培養容器に接着した細胞を剥がすとき、細胞塊を単一細胞にばらばらにするとき、又は組織から単一細胞を回収するときに用いられる濃度であればよい。
前記プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ又はN末端スレオニンプロテアーゼであることが好ましい。更に、前記プロテアーゼがトリプシン、コラゲナーゼ又はジスパーゼであることが好ましい。
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。好ましくは、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、上記性質を全て有する。
本発明の細胞製剤は、限定されないが、上記(1)で得られたMuse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁させることによって得られる。この場合、自家又は他家の組織から分離したMuse細胞数が少ない場合には、細胞移植前に細胞を培養して、所定の細胞数が得られるまで増殖させてもよい。なお、すでに報告されているように(国際公開第WO2011/007900号パンフレット)、Muse細胞は、腫瘍化しないため、生体組織から回収した細胞が未分化のまま含まれていても癌化の懸念が低く安全である。また、回収したMuse細胞の培養は、特に限定されないが、通常の増殖培地(例えば、10%仔牛血清を含むα-最少必須培地(α-MEM)など)において行うことができる。より詳しくは、上記国際公開第WO2011/007900号パンフレットを参照して、Muse細胞の培養及び増殖において、適宜、培地、添加物(例えば、抗生物質、血清)等を選択し、所定濃度のMuse細胞を含む溶液を調製することができる。ヒト対象に本発明の細胞製剤を投与する場合には、ヒトの腸骨から骨髄液を採取し、例えば、骨髄液からの接着細胞として骨髄間葉系幹細胞を培養して有効な治療量のMuse細胞が得られる細胞量に達するまで増やした後、Muse細胞をSSEA-3の抗原マーカーを指標として分離し、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。あるいは、例えば、骨髄液から得られた骨髄間葉系幹細胞を外的ストレス条件下で培養して有効な治療量に達するまでMuse細胞を増殖、濃縮した後、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。
本実施例におけるマウスを用いた実験プロトコールは、「京都府立医大動物実験等に関する規定」を遵守し、実験動物は、京都府立医大動物実験センターの監督下において該規定に沿って作製された。より具体的には、以下の手順により作製した。
8-10週齢の雌性BALB/Cヌードマウスをイソフルランの吸入により麻酔(誘導時:4%、維持時: 2%)した。下肢を切開し、実体顕微鏡(KONAN OPERATION MICROSCOPE KOM)下で、左総大腿動静脈、および左浅大腿動静脈末梢を5-0絹糸で結紮した。このようにして作製されたマウスを下肢虚血モデルマウスとして以下の実験に使用した。
ヒトMuse細胞の分離及び同定に関する国際公開第WO2011/007900号に記載された方法に準じて、Muse細胞を得た。Muse細胞のソースとしては市販の間葉系幹細胞(MSC、Lonza社)を用いた。移植に使用されるMuse細胞は、障害を受けた末梢動脈部位に生着したことを確認するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現し、細胞がこれにより標識されるように、予めレンチウイルス-GFP遺伝子をMuse細胞に導入した。GFPで標識されたMuse細胞をGFPとSSEA-3の二重の陽性細胞としてFACSにて分離した。またMSCからMuse細胞を分離した残りの細胞を非Muse細胞として使用した。また、GFP陽性MSCもFACSにて単離し、MSC群として使用した。
実施例1で作製した下肢虚血モデルマウスを4群に分け、モデル作製後、1日目に、各群のマウスにMuse細胞(3×104個、100μL)(Muse)、非Muse細胞(3×104個、100μL)(nMuse)、MSC(2×105個、100μL)(BM)あるいはVehicle(リン酸緩衝液)(Ve)を左大腿部2箇所に分けて投与した。一群の動物数は 5匹とした。
下肢虚血モデルマウス作製後、0、3、7、10及び14日に、二次元レーザー血流画像装置[laser doppler perfusion image (LDPI) analyzer (OMEGAZONE OZ-1, OMEGAWAVE, Inc. Tokyo, Japan)を用いて血流を測定した。各個体の左右両方の下肢血流を測定し、左側(患側)/右側(健側)の比を算出し、これをLDPIインデックスとした。
図1に示す通り、Muse細胞群では14日以降も血流改善が継続し、虚血した左下肢は健康な右下肢と同程度まで血流が改善した。一方、非Muse細胞群(nMuse)、MSC群(BM)及びVehicle群(Ve)では10日までは一定の血流改善を示すが14日以降は改善が見られなかった。
細胞投与後6日目の左側(患側)の下肢骨格筋のmRNAを抽出して、血管新生関連遺伝子として代表的なVEGF及びbFGF(特に、FGF-2)の発現量をreal-time RT-PCRの絶対定量法で測定した。測定方法は非特許文献8に基づいて行った。その結果を図2に示す。Muse細胞群は、Vehicle群と比較してこれら血管新生因子である血管新生関連遺伝子(mRNA)発現量が有意に高かった。
細胞投与後28日の左側(患側)の下肢骨格筋の組織を4%パラホルムアルデヒド(Paraformaldehude:PFA)によって固定し、パラフィン切片を作成した後、抗Isolectin GS-IB4抗体, Alexa Fluor 568 Conjugate(Thermo Fisher Scientific社整、300倍希釈で使用)を用いて虚血下肢骨格筋における血管内皮細胞の免疫組織化学染色を行い、骨格筋線維あたりの血管内皮細胞の割合を血管密度として測定した。その結果を図3に示す。Muse細胞群(図3左)では、Vehicle群(図3右)と比較してこれら虚血骨格筋内の血管密度が高いことがわかる。
野生型BALBcマウス(オス12週齢)を用いて、実施例1と同様にして、下肢虚血モデルマウスを作製した。作製した下肢虚血モデルマウスを群に分け、モデル作製後1日目に、各群のマウスに、Muse細胞(3×104個、200μL)(Muse)、非Muse細胞(3×104個、200μL)(non Muse)、あるいは骨髄単核細胞(2×105個、200μL)(BMMNC)を尾静脈内(i.v.)または筋肉内(i.m.)に注射した。対照として、PBSを尾静脈に注射した。一群の動物数は5匹とした。
Claims (6)
- 生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から、SSEA-3の抗原マーカーを指標として分離されたか、または、外的ストレス条件下で培養することにより濃縮された多能性幹細胞を含む、末梢血流障害を治療するための細胞製剤であって、
前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、細胞製剤:
(i) SSEA-3陽性;
(ii) CD105陽性;
(iii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(iv) 三胚葉のいずれかの胚葉に分化する能力を持つ;
(v) 腫瘍性増殖を示さない;及び
(vi) セルフリニューアル能を持つ。 - 末梢血流障害が、末梢動脈疾患である、請求項1に記載の細胞製剤。
- 末梢動脈疾患が、四肢の慢性動脈閉塞症である、請求項2に記載の細胞製剤。
- 末梢動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症である、請求項2または3に記載の細胞製剤。
- 末梢動脈疾患が、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)である、請求項2または3に記載の細胞製剤。
- 末梢動脈疾患が、膝窩動脈捕捉症候群である、請求項2または3に記載の細胞製剤。
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