JP7488151B2 - 圧着端子付き電線 - Google Patents

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Description

本開示は、圧着端子付き電線に関する。
近年、自動車の軽量化を目的に、自動車用ワイヤハーネスの素線について、銅系材料からアルミニウム系材料への切り替えが進んでいる。一方で、アルミニウム系材料の表面は体積抵抗率の高い酸化皮膜で覆われているため、アルミニウム系材料からなる素線間の接触抵抗値は高い。
アルミニウム系材料の素線間の抵抗を下げるために、アルミニウム系材料の素線同士をはんだで接合する方法や、表面の酸化皮膜を破壊する程度にアルミニウム系材料の素線同士を強圧着する方法が検討されている。しかしながら、はんだで接合する方法では、素線間の抵抗値のばらつきが大きいことがある。また、素線同士を強圧着する方法では、圧着によって素線が切れることがある。
また、特許文献1には、導線の先端部に形成されて素線同士を接合する素線一体化部が素線束部よりも大径の半球状に形成され、先端面に球面状に曲がる曲面を有するとともに後端面に平面を有しており、素線束部に圧着端子の圧着部が圧着された、圧着端子付き電線が記載されている。
特許文献1の圧着端子付き電線では、素線の損傷などが従来に比べて改善されてるものの、導線の最外周に配置される素線と圧着端子との間の接触抵抗値は依然として高く、素線と圧着端子との抵抗値を低下させるための強圧着加工によって、素線切れが発生する可能性がある。また、素線同士の溶接で形成された素線一体化部の凝固組織部を含む、素線の溶接時の熱の影響を受ける熱影響組織部と、素線の溶接時の熱の影響を受けない非熱影響組織部とは、材料としての変形の挙動が異なる。凝固組織部を含む熱影響組織部と非熱影響組織部とを含む導線部分が同じ圧着条件で圧着端子と圧着加工されるため、これらの組織部の変形挙動の違いによって、素線切れが生じることがある。
特許第6373077号
本開示の目的は、素線間の抵抗の上昇を抑制すると共に、素線切れを抑制した圧着端子付き電線を提供することである。
[1] 複数の素線から構成される導線および前記導線の外周を被覆する絶縁被覆部を有する電線と、前記電線の前記導線に圧着されている圧着端子とを備え、前記圧着端子が前記導線に圧着されている圧着部を有する圧着端子付き電線であって、前記導線は、アルミニウム系材料からなり、前記圧着部の縦断面において、前記電線の延在方向に沿った、前記圧着部の長さLに対する前記複数の素線のうちの少なくとも一部が溶接している溶接部の長さL1の比(L1/L)は、0.10以上であることを特徴とする圧着端子付き電線。
[2] 前記圧着部以外の前記導線の断面における平均結晶粒径(d)に対する前記圧着部の前記導線の断面における平均結晶粒径(d1)の比(d1/d)は、1.1以上である、上記[1]に記載の圧着端子付き電線。
[3] 前記圧着部以外の前記導線の断面における平均ビッカース硬さ(h)に対する前記圧着部の前記導線の断面における平均ビッカース硬さ(h1)の比(h1/h)は、0.80以下である、上記[1]または[2]に記載の圧着端子付き電線。
本開示によれば、素線間の抵抗の上昇を抑制すると共に、素線切れを抑制した圧着端子付き電線を提供することができる。
図1は、実施形態の圧着端子付き電線の一例を示す縦断面図である。
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、圧着端子が圧着している圧着部における導線の状態を適正化することによって、素線間の抵抗の上昇を抑制すると共に素線切れを抑制できることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
実施形態の圧着端子付き電線は、複数の素線から構成される導線および前記導線の外周を被覆する絶縁被覆部を有する電線と、前記電線の前記導線に圧着されている圧着端子とを備え、前記圧着端子が前記導線に圧着されている圧着部を有する圧着端子付き電線であって、前記導線は、アルミニウム系材料からなり、前記圧着部の縦断面において、前記電線の延在方向に沿った、前記圧着部の長さLに対する前記複数の素線のうちの少なくとも一部が溶接している溶接部の長さL1の比(L1/L)は、0.10以上である。
図1は、実施形態の圧着端子付き電線の一例を示す縦断面図である。図1に示すように、実施形態の圧着端子付き電線1は、電線10および圧着端子20を備える。また、圧着端子付き電線1は、圧着端子20が導線11に圧着されている圧着部30を有する。
電線10は、導線11および絶縁被覆部13を有する。導線11は、複数の素線12から構成される。導線11の端部には、溶接部41aが設けられる。溶接部41aでは、複数の素線12のうちの少なくとも一部が溶接している。複数の素線12は、溶接部41aを介して、相互に接続される。
導線11は、圧縮されていてもよく、導線11の延在方向に垂直な断面の外径は、円形でもよいし、平形でもよい。また、導線11は、複数の素線12を撚り合わせた撚線でもよいし、複数の素線12の束である束線でもよい。
絶縁被覆部13は、導線11の外周を被覆する。絶縁被覆部13の形状は筒状である。
圧着端子20は、導線11の端部に設けられる溶接部41aを含む電線10の導線11に圧着されている。導線11の端部に圧着されている圧着端子20は、導線11の外周を環状に覆っている。
具体的には、電線10の端部から絶縁被覆部13の一部を剥離、いわゆる皮剥ぎし、皮剥ぎで露出した導線11の端部を溶接してなる溶接部41aを含む導線11の部分に対して、圧着端子20のワイヤバレル部21がかしめられると、ワイヤバレル部21は、溶接部41aおよび露出している導線11の外周を環状に覆うように、電線10に圧着される。圧着端子20のワイヤバレル部21が電線10に圧着されると、環状の圧着部30が形成される。圧着端子20は、圧着部30を介して、電線10の導線11と電気的に接続される。
上記のように、圧着端子20は溶接部41aにも圧着されている。そのため、電線10に対する圧着端子20の圧着力を従来に比べて小さくしても、素線12および圧着端子20の接触抵抗値を低下できると共に、素線12間の抵抗値のばらつきを小さくできる。圧着部30における素線12の減面率が小さいため、素線切れを抑制できる。一方で、圧着部30における素線12の減面率が大きいと、素線切れを生じることがある。
例えば、電線10の端部から5mm以上20mm以下離れた部分の絶縁被覆部13を皮剥ぎし、露出した導線11の端部を溶接加工した後、溶接部41aを含む導線11の端部に圧着端子20が圧着される。また、図1に示すように、導線11の外周を覆う絶縁被覆部13、すなわち皮剥ぎしていない絶縁被覆部13に対して、圧着端子20のインシュレーションバルブ部22が圧着されてもよい。
導線11は、アルミニウム合金を含むアルミニウム系材料からなる。換言すると、導線11を構成する複数の素線12は、アルミニウム系材料からなる。アルミニウム系材料の組成は、97.5質量%以上のAl、任意成分としてFe、Si、CuおよびMgからなる群より選択される1種以上の元素、ならびに不可避不純物からなる。
Fe(鉄)の含有量が0.05質量%以上であると、導線の強度を向上できるため、素線切れを抑制できる。Feの含有量が0.50質量%以下であると、導線の高い導電性を維持できると共に、伸線加工性の低下を抑制できる。このため、Feの含有量の下限値は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、Feの含有量の上限値は、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下である。
Si(ケイ素)の含有量が0.01質量%以上であると、導線の強度を向上できるため、素線切れを抑制できる。Siの含有量が0.20質量%以下であると、導線の高い導電性を維持できる。このため、Siの含有量の下限値は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、Siの含有量の上限値は、好ましくは0.20質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下である。ただし、時効析出型の6000系合金を用いる場合は強度と導電性への寄与度が異なり、Siの含有量の下限値は、好ましくは0.30質量%以上、Siの含有量の上限値は、好ましくは0.7質量%以下である。
Cu(銅)の含有量が0.10質量%以上であると、導線の高い導電性を維持しながら、導線の強度を向上できる。Cuの含有量が0.25質量%以下であると、導線の高い導電性を維持できる。このため、Cuの含有量の下限値は、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、Cuの含有量の上限値は、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下である。
Mg(マグネシウム)の含有量が0.03質量%以上であると、導線の高い導電性を維持しながら、導線の強度を向上できる。Mgの含有量が0.15質量%以下であると、導線の高い導電性を維持できる。このため、Mgの含有量の下限値は、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、Mgの含有量の上限値は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下である。ただし、時効析出型の6000系合金を用いる場合は強度と導電性への寄与度が異なり、Mgの含有量の下限値は、好ましくは0.35質量%以上、Mgの含有量の上限値は、好ましくは0.80質量%以下である。
任意成分としてのFe、Si、CuおよびMgからなる群より選択される1種以上の元素の合計含有量が0.05質量%以上であると、導線の強度を向上できるため、素線切れを抑制できる。任意成分の合計含有量が2.10質量%以下であると、導線の高い導電性を維持できると共に、伸線加工性の低下を抑制できる。このため、任意成分の含有量の下限値は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、任意成分の含有量の上限値は、好ましくは2.10質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下である。
上述した成分以外の残部は不可避不純物である。不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうることもあり、含有量によっては導線の導電率および強度を低下させる要因にもなりうるため、不可避不純物の含有量は少ないことが好ましい。不可避不純物としては、例えば、Mn、Zn、Ti、B、Vなどの元素が挙げられる。なお、上記不可避不純物の含有量の上限は、上記元素毎に、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であり、上記元素の合計で、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。
図1に示すように、圧着部30の縦断面において、電線10の延在方向に沿った、圧着部30の長さLに対する溶接部41aの長さL1の比(L1/L)は、0.10以上である。圧着部30の縦断面は、圧着部30における導線11の中心軸に沿った面である。溶接部41aは、複数の素線12のうちの少なくとも一部の素線12同士が溶接している部分である。
ここで、複数の素線12を溶接して溶接部41aが形成されると、溶接部41aの組織、および導線11における溶接部41aに隣接した溶接隣接部41bの組織は、溶接時の熱の影響を受けて変化する。このように、導線11は、溶接部41aおよび溶接隣接部41bを有する熱影響組織部41を端部側に有し、溶接時の熱の影響を受けない非熱影響組織部42を溶接隣接部41bと隣接する中央部側に有する。
非熱影響組織部42は、溶接前の導線11の組織と同じであり、熱影響組織部41は、溶接前の導線11の組織が溶接の熱によって変化した組織である。熱影響組織部41および非熱影響組織部42は、材料としての変形の挙動が異なる。熱影響組織部41および非熱影響組織部42は、SEMで観察すると、明確に異なる。
そして、電線10の延在方向に沿った圧着部30の長さLに対する電線10の延在方向に沿った溶接部41aの長さL1の比(L1/L)が0.10以上であると、圧着部30の大部分が熱影響組織部41であるため、熱影響組織部41と非熱影響組織部42との圧着時の変形挙動の違いによって発生する素線12の切れやクラックを抑制できる。素線12のクラックの発生を抑制できるので、素線12間の抵抗値の上昇、導線11の耐食性の低下、導線11の引張破断強度の低下などを抑制できる。このような観点から、上記比(L1/L)は、0.10以上であり、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.50以上である。
一方で、上記比(L1/L)が0.10未満であると、圧着端子20の圧着時における熱影響組織部41と非熱影響組織部42との変形挙動の違いで生じる素線12の切れやクラックを抑制できない。
圧着端子20の構成としては、Fクリンプのように、導線11に圧着されているときに、導線11の外周を環状に覆っていればよく、ワイヤバレル部21やインシュレーションバルブ部22を具備しなくてもよい。
また、圧着部30以外の導線11の断面における平均結晶粒径(d)に対する圧着部30の導線11の断面における平均結晶粒径(d1)の比(d1/d)は、1.1以上であることが好ましい。圧着部30以外の導線11は、圧着部30で圧着されていない導線11の部分、すなわち非圧着部である。
比(d1/d)が1.1以上であると、非圧着部における導線11の平均結晶粒径(d)に比べて、圧着部30における導線11の平均結晶粒径(d1)が粗大化することによって、圧着部30における導線11の応力緩和性が増加し、圧着部30における内部圧力の低下が抑制される。そのため、素線間の抵抗の上昇を抑制することができる。このような観点から、上記比(d1/d)は、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。
平均結晶粒径(d1)は、圧着部30の縦断面において、電線の延在方向に沿って圧着部30の長さLを5等分し、5つの横断面毎に平均結晶粒径を測定し、これらの測定値を平均して得ることができる。また、平均結晶粒径(d)は、圧着部30以外の導線11の縦断面において、圧着部30の長さLに相当する長さを5等分し、5つの横断面毎に平均結晶粒径を測定し、これらの測定値を平均して得ることができる。
また、圧着部30以外の導線11の断面における平均ビッカース硬さ(h)に対する圧着部30の導線11の断面における平均ビッカース硬さ(h1)の比(h1/h)は、0.80以下であることが好ましい。
比(h1/h)が0.80以下であると、圧着部30における導線11が変形しやすいことによって、圧着部30における導線11全体で変形が進み、局所的な抵抗値の上昇が抑制される。そのため、素線間の抵抗の上昇を抑制することができる。このような観点から、上記比(h1/h)は、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.60以下である。
平均ビッカース硬さ(h1)は、圧着部30の縦断面において、電線の延在方向に沿って圧着部30の長さLを5等分し、5つの横断面毎に1mm間隔で5カ所のビッカース硬さを測定し、これらの測定値を平均して得ることができる。また、平均ビッカース硬さ(h)は、圧着部30以外の導線11の縦断面において、圧着部30の長さLに相当する長さを5等分し、5つの横断面毎に1mm間隔で5カ所のビッカース硬さを測定し、これらの測定値を平均して得ることができる。
0.2mm以上1.0mm以下の線径を有する素線12を7本以上300本以下で撚り合わせてなる導線11では、素線間の抵抗上昇の抑制および素線切れの抑制がさらに向上する。特に、上記範囲内の線径を有する素線12が7本以上であると、導線11の柔軟性が増加するため、圧着端子付き電線1に対する作業性を向上できる。また、上記範囲内の線径を有する素線12が300本以下であると、導線11を構成する素線12の素線切れをさらに抑制できる。また、3.0sq(3.0mm)以上の断面積を有するアルミニウム系材料の導線において、素線間の抵抗上昇の抑制は従来困難であったが、比(L1/L)が0.10以上である圧着端子付き電線1では、3.0sq以上の断面積を有する導線11であっても、素線間の抵抗の上昇を抑制することができる。導線11を構成する素線12の本数および素線12の線径は、圧着端子付き電線1の用途に応じて、適宜選択される。
圧着端子20を構成する材料は、圧着端子付き電線1の用途や導線11を構成するアルミニウム系材料の種類に応じて、適宜選択される。その中でも、圧着端子付き電線1の低抵抗化の観点から、アルミニウムおよびアルミニウム合金を含むアルミニウム系材料、銅および銅合金を含む銅系材料が好ましく、純銅および黄銅がより好ましい。さらに、アルミニウム合金および銅合金は、Ni、Si、Zn、Sn、Mg、Mn、Cr、およびCoからなる群より選択される1種以上の元素を含有してもよい。
圧着端子付き電線1は、軽量化に加えて、素線間の抵抗上昇の抑制や素線切れが起こらないことを要求される、ワイヤハーネス、好ましくは自動車用のワイヤハーネスに好適に用いられる。
次に、上記圧着端子付き電線1の製造方法について説明する。まず、電線10から絶縁被覆部13の一部を皮剥ぎし、導線11の端部を露出する。続いて、露出している導線11のうち、導線11の端部を含む端部周辺を構成している複数の素線12の少なくとも一部を溶接して、溶接部41aを形成する。
ファイバレーザー、YAGレーザ、半導体レーザのようなレーザで溶接部41aを形成する場合、導線11の端部の周辺から、電線の延在方向に沿ってレーザを走査し、導線11の端部まで溶接する。レーザ溶接では、導線11の端部を最後に溶接する。このような方法でレーザ溶接を行うことによって、溶接欠陥を減少できるため、導線11の引張破断強度の低下を抑制できる。また、上記のレーザ溶接に加えて、アーク溶接も適用できる。アーク溶接の場合、導線11の端部のみを溶接する。
続いて、電線10の延在方向に沿った圧着部30の長さLに対する電線10の延在方向に沿った溶接部41aの長さL1の比(L1/L)が0.10以上になるように、溶接部41aを含む導線11に圧着端子20を圧着する。こうして、圧着端子付き電線1を得ることができる。
以上説明した実施形態によれば、圧着部の長さLに対する溶接部の長さL1の比(L1/L)を調整し、圧着部における導線の状態を適正化することによって、圧着端子付き電線では、素線間の抵抗の上昇を抑制できると共に、素線切れを抑制できる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1~14および比較例1~4)
表1に示す組成を有する複数の素線を撚り合わせることによって、表1に示す撚り構成(導線の断面積、素線の本数)を満たす電線を得た。続いて、表2に示す数値になるように、圧着端子を電線に圧着させた。こうして、圧着端子付き電線を得た。






Figure 0007488151000001
[測定および評価]
上記実施例および比較例で得られた圧着端子付き電線について、下記の測定および評価を行った。結果を表2に示す。
[1] 比(L1/L)
電線の延在方向に沿った圧着部の長さLに対する電線の延在方向に沿った溶接部の長さL1の比(L1/L)は、上記実施例および比較例で得られた圧着端子付き電線について、圧着部における導線の中心軸に沿った面である圧着部の縦断面をSEMで観察した画像から得た。
[2] 比(d1/d)
圧着部の導線の断面における平均結晶粒径(d1)は、圧着部の上記縦断面において、電線の延在方向に沿って圧着部の長さLを5等分し、5つの横断面毎に平均結晶粒径を測定し、これらの測定値を平均して得た。また、圧着部以外の導線の断面における平均結晶粒径(d)は、圧着部以外の導線の縦断面をSEMで観察し、この縦断面における圧着部の長さLに相当する長さを5等分し、5つの横断面毎に平均結晶粒径を測定し、これらの測定値を平均して得た。そして、得られた平均結晶粒径(d1)および平均結晶粒径(d)から比(d1/d)を算出した。
[3] 比(h1/h)
圧着部の導線の断面における平均ビッカース硬さ(h1)は、圧着部の上記縦断面において、電線の延在方向に沿って圧着部の長さLを5等分し、5つの横断面毎に1mm間隔で5カ所のビッカース硬さを測定し、これらの測定値を平均して得た。また、圧着部以外の導線の断面における平均ビッカース硬さ(h)は、圧着部以外の導線の縦断面をSEMで観察し、この縦断面における圧着部の長さLに相当する長さを5等分し、5つの横断面毎に1mm間隔で5カ所のビッカース硬さを測定し、これらの測定値を平均して得た。そして、得られた平均ビッカース硬さ(h1)および平均ビッカース硬さ(h)から比(h1/h)を算出した。
[4] サーマルサイクル試験後の素線間の抵抗値の上昇率
まず、サーマルサイクル試験前の圧着端子付き電線の電気抵抗値について、回路素子測定器(日置電機株式会社製、3560ACミリオームハイテスタ)を用いて、素線毎に、圧着端子と素線と間の抵抗値を測定した。次に、小型冷熱衝撃装置(エスペック株式会社製、TSE-12-A)を用いて、圧着端子付き電線について、-40℃で30分および120℃で30分の温度サイクルを240回繰り返すサーマルサイクル試験を行った。次に、サーマルサイクル試験後の圧着端子付き電線の電気抵抗値について、回路素子測定器を用いて、素線毎に、圧着端子と素線と間の抵抗値を測定した。これらの測定値から、抵抗値の上昇率について、平均値および標準偏差を算出した。平均値および標準偏差について、以下のランク付けを行った。抵抗値の上昇率が小さいほど、圧着端子付き電線は良好である。
平均値は以下の通りである。
A:抵抗値の上昇率が120%以下
B:抵抗値の上昇率が120%超150%以下
C:抵抗値の上昇率が150%超
標準偏差は以下の通りである。
A:抵抗値の上昇率が150%以下
B:抵抗値の上昇率が150%超300%以下
C:抵抗値の上昇率が300%超
[5] 引張破断強度
圧着端子付き電線の圧着端子と電線とを引張試験機に固定し、チャック間距離を100mm、引張速度を10mm/minの条件で引張試験を行った。そして、引張破断荷重を圧着部の断面積で割ることによって、引張破断強度(引張破断荷重/圧着部の断面積)を算出した。引張破断強度について、以下のランク付けを行った。引張破断強度が大きいほど、圧着端子付き電線は良好である。
A:引張破断強度が50N/mm以上
C:引張破断強度が50N/mm未満
[6] 素線切れ
圧着端子付き電線について、圧着端子を電線に圧着させた直後に目視で素線切れを観察した。素線切れについて、以下のランク付けを行った。素線切れの本数が少ないほど、圧着端子付き電線は良好である。
A:素線切れが生じない
C:素線切れが生じる
[7] 総合評価
総合評価として、以下のランク付けを行った。
◎:抵抗値の上昇率の平均値が120%以下、かつ抵抗値の上昇率の標準偏差が150%以下、かつ引張破断強度が50N/mm以上、かつ素線切れが生じない
○:抵抗値の上昇率の平均値が150%以下、かつ抵抗値の上昇率の標準偏差が300%以下、かつ引張破断強度が50N/mm以上、かつ素線切れが生じなく、抵抗値の上昇率の平均値が120%超、または抵抗値の上昇率の標準偏差が150%超である
×:抵抗値の上昇率の平均値が150%超、または抵抗値の上昇率の標準偏差が300%超、または引張破断強度が50N/mm未満、または素線切れが生じる
Figure 0007488151000002
表1~2に示すように、実施例1~14では、比(L1/L)が0.10以上であるため、素線間の抵抗値の上昇、引張破断強度の低下、および素線切れを抑制できた。特に、実施例4~9、11、13では、比(d1/d)が1.1以上かつ比(h1/h)が0.80以下であるため、素線間の抵抗値の上昇および引張破断強度の低下をさらに抑制できた。
一方、比較例1では、導線端部の溶接を行わなかったため、比(L1/L)が0であり、その結果、素線間の抵抗値が上昇し、引張破断強度が低下し、素線切れが生じた。比較例2では、比(L1/L)が0.10未満であるため、素線間の抵抗値が上昇し、素線切れが生じた。比較例3では、溶接が不十分であったため、比(L1/L)が0であり、その結果、素線間の抵抗値が上昇した。比較例4では、アーク溶接で導線の端部のみを溶接して比(L1/L)を0にしたため、素線間の抵抗値が上昇し、素線切れが生じた。
1 圧着端子付き電線
10 電線
11 導線
12 素線
13 絶縁被覆部
20 圧着端子
21 ワイヤバレル部
22 インシュレーションバルブ部
30 圧着部
41 熱影響組織部
41a 溶接部
41b 溶接隣接部
42 非熱影響組織部
L 圧着部30の長さ
L1 溶接部31の長さ

Claims (1)

  1. 複数の素線から構成される導線および前記導線の外周を被覆する絶縁被覆部を有する電線と、前記電線の前記導線に圧着されている圧着端子とを備え、前記圧着端子が前記導線に圧着されている圧着部を有する圧着端子付き電線であって、
    前記複数の素線の本数は37本以上であり、
    前記導線の断面積は3.0mm 以上であり、
    前記導線は、97.5質量%以上のAl、0.05質量%以上0.50質量%以下のFe、0.01質量%以上0.70質量%以下のSiを含み、CuおよびMgのうちの任意のものを任意成分として含むことができ、残部が不可避不純物からなる組成のアルミニウム系材料からなり、
    前記圧着部の縦断面において、前記電線の延在方向に沿った、前記圧着部の長さLに対する前記複数の素線のうちの少なくとも一部が溶接している溶接部の長さL1の比(L1/L)は、0.10以上であり、
    前記圧着部以外の前記導線の断面における平均結晶粒径(d)に対する前記圧着部の前記導線の断面における平均結晶粒径(d1)の比(d1/d)は、1.1以上であり、
    前記圧着部以外の前記導線の断面における平均ビッカース硬さ(h)に対する前記圧着部の前記導線の断面における平均ビッカース硬さ(h1)の比(h1/h)は、0.80以下であることを特徴とする圧着端子付き電線。
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