JP7497603B2 - 車体すべり角推定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車体すべり角推定装置に関する。
従来、車両の運動方程式から得られる状態方程式と、観測値を示す観測方程式とに基づいて、オブザーバを構成するものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1には、車両の前後方向と車両の進行方向との間の当該車両の重心点を通る鉛直軸周りの角度である車体すべり角を推定できるようにした車体すべり角推定装置が開示されている。
特許文献1に記載の車体すべり角推定装置では、観測値にノイズを含むことを考慮して、オブザーバとして拡張カルマンフィルタを構成することで、車体すべり角の推定値である車体すべり角推定値の推定精度を高めるようにしている。
特許第5707790号公報
ところで、特許文献1において、車体すべり角推定値を演算する際には、例えば、タイヤ横力と、タイヤすべり角との関係を用いたりするところ、当該タイヤすべり角が大きくなるほど、タイヤ横力の変化が小さくなりいずれは飽和するということが知られている。これは、タイヤすべり角が小さいときは粘着域が支配的であるが、タイヤすべり角が大きくなるにつれてすべり域が大きくなるからである。つまり、タイヤすべり角が大きくなり、タイヤ横力の変化が小さかったり、飽和したりする状況では、タイヤすべり角が変化してもタイヤ横力がほとんど変化しなくなる。つまり、運動方程式のダイナミクスが小さくなるため、結果的に車体すべり角の推定値の推定精度が低下する。これは、タイヤ横力と、タイヤすべり角との関係が要因のものに限らず、他の要因の場合でも生じる可能性がある。
本発明の目的は、状況に関係なく車体すべり角推定値の推定精度の低下を抑制できる車体すべり角推定装置を提供することになる。
上記課題を解決する車体すべり角推定装置は、車両の進行方向との間の当該車両の重心点を通る鉛直軸周りの角度である車体すべり角を状態変数とし、前記車両の幅方向に生じている横加速度を含む観測値を持ち、前記車体すべり角を変数に含むモデルに基づき定義される運動方程式を用いて構成された非線形カルマンフィルタを用いて前記車体すべり角の推定値である車体すべり角推定値を演算するものであり、前記運動方程式で定義されるモデルに基づいて、前記車体すべり角推定値を演算する車体すべり角推定値演算部と、前記運動方程式を用いた演算について前記車体すべり角推定値の推定精度を判定するすべり角推定精度判定部と、を備え、前記車体すべり角推定値演算部は、前記すべり角推定精度判定部の判定結果に基づいて、前記運動方程式で定義されるモデルが異なる第1の演算状態と、第2の演算状態とを含む複数の演算状態を有しており、前記第1の演算状態は、前記車体すべり角と、前記車両の前後輪のタイヤに路面から前記車両の前後方向に対して鉛直な幅方向に作用する力であるタイヤ横力とを変数に含むモデルに基づき定義される第1の運動方程式を用いて前記車体すべり角推定値を演算する状態であり、前記第2の演算状態は、前記第1の運動方程式に対して前記タイヤ横力に関する成分を、前記車体すべり角推定値を演算するなかで得られる前記横加速度に関する成分に置き換えて定義される第2の運動方程式を用いて前記車体すべり角推定値を演算する状態であり、前記車体すべり角推定値演算部は、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が高いことが判定される場合に前記第1の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算する一方、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が低いことが判定される場合に前記第2の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算するように構成されている。
上記構成によれば、第1の演算状態と、第2の演算状態との間では、車体すべり角推定値を演算するために用いる運動方程式を異ならせることで、車両の走行状態が同一であっても車体すべり角推定値を推定する場合に演算状態毎に異なる推定精度が得られるようになる。この場合、例えば、第1の演算状態で車体すべり角推定値を演算している間に、この推定精度が低下する状況への変化がすべり角推定精度判定部により判定されるのであれば、第2の演算状態で車体すべり角推定値を演算するように演算状態を切り替えて推定精度の低下を抑えたりするように工夫を施すことができる。したがって、状況に関係なく車体すべり角の推定値の推定精度の低下を抑制することができる。
これを実現する場合、具体的には、前記第2の演算状態にて、前記タイヤ横力に関する成分に対して置き換えられる前記横加速度に関する成分は、前記横加速度の推定値である横加速度推定値に関する成分である。
ここで、タイヤ横力と、タイヤすべり角との関係について言えば、当該タイヤすべり角が大きくなるほど、タイヤ横力の変化が小さくなりいずれは飽和するということが知られていることは、上記[発明が解決しようとする課題]で説明した通りである。
そして、上記車体すべり角推定装置で用いている非線形カルマンフィルタは、現在の状態を推定するために、当該現在に対して前回の状態に基づき現在の状態を予測して事前推定する処理と、当該事前推定を通じて予測した状態を修正するように更新、すなわち補正して事後推定する処理とを行うものである。つまり、非線形カルマンフィルタは、事前推定し、当該事前推定で得られる値からの観測推定値と観測値との差分をフィードバックするかたちで事後推定にて補正し、これを繰り返す結果、より実際の値に近い状態を推定できるようにするものである。
この点、上記第1の演算状態では、上述の如くタイヤ横力の変化が飽和してしまうと、事前推定の更新がされ難くなり、事後推定を通じた補正の効果が低下することになる。これは、非線形カルマンフィルタの特徴である事前推定が機能しなくなることを示し、車体すべり角推定値の推定精度を低下させることになる。
これに対して、上記第2の演算状態では、タイヤ横力の変化が飽和してしまっていても、観測値に含まれる横加速度については微小でも変化があれば観測値から補正される結果、事前推定の更新が好適にされるようになる。これは、非線形カルマンフィルタの特徴である事前推定が機能していることを示し、車体すべり角推定値の推定精度の低下を抑えてある程度の精度で維持できることになる。つまり、上記第2の演算状態では、タイヤ横力の変化が飽和している場合、第1の演算状態と比較して車体すべり角推定値の推定精度を高く維持することができる。
そこで、上記車体すべり角推定装置において、前記すべり角推定精度判定部は、前記タイヤが生じさせている現在の摩擦力を、前記タイヤが生じさせることのできる最大摩擦力で除算して得られる値で定義されるタイヤグリップ消費率に基づいて、前記タイヤグリップ消費率の大小の間で当該タイヤグリップ消費率が小さくて前記タイヤ横力の変化が飽和していないことを示す場合に前記推定精度が高いことを判定する一方、前記タイヤグリップ消費率の大小の間で当該タイヤグリップ消費率が大きくて前記タイヤ横力の変化が飽和していることを示す場合に前記推定精度が低いことを判定するものであることが好ましい。
上記構成によれば、タイヤ横力の変化が飽和していない場合、第1の演算状態での演算を通じて、車体すべり角推定値の推定精度を確保することができるようになる。一方、タイヤ横力の変化が飽和している場合、第2の演算状態での演算を通じて、車体すべり角推定値の推定精度を確保することができる。
なお、上記第1の演算状態では、第1の運動方程式としてモデル定義やパラメータが適切であれば十分に高い推定精度を確保することができるという特徴がある。一方、上記第2の演算状態では、横加速度が適切に観測できていればある程度の推定精度を確保することができる反面、横加速度が車両上で検出されるとともにロールやピッチが考慮、検出されない場合、実際の変化に対して検出が遅れることによる応答遅れやロール角等で誤差が生じ易いという特徴がある。
こうした各演算状態の特徴を考慮して、上記車体すべり角推定装置において、前記すべり角推定精度判定部は、前記推定精度を前記車体すべり角推定値のばらつき具合を示す指標に基づいて、前記指標の大小の間で当該指標が小さい場合に前記推定精度が高いことを判定する一方、前記指標の大小の間で当該指標が大きい場合に前記推定精度が低いことを判定するものであり、前記車体すべり角推定値演算部は、前記第1の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算するなかで、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が高いことが判定される場合に前記第1の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算する一方、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が低いことが判定される場合に前記第2の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算するように構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、第1の演算状態での推定を通じて十分に高い推定精度を確保するなかで、当該第1の演算状態での推定精度の確保が困難なる状況では、第2の演算状態での推定を通じて上述のように応答遅れやロール角等で誤差が生じやすい特徴があるものの、ある程度の推定精度を確保することができるようになる。したがって、状況に関係なく車体すべり角の推定値の推定精度の低下を抑制することができる。
上記を実現する場合、具体的には、前記観測値として、前記車両に生じている横加速度及びヨーレートと、前記車両の転舵輪を上方から見た場合の転舵の中心のアライニングトルクとを少なくとも含むものである。
また、上記車体すべり角推定装置において、前記非線形カルマンフィルタは、拡張カルマンフィルタであることが好ましい。
上記構成によれば、非線形カルマンフィルタとして拡張カルマンフィルタを採用することで、車体すべり角推定装置の汎用性を高める点で効果的である。
本発明の車体すべり角推定装置によれば、状況に関係なく車体すべり角推定値の推定精度の低下を抑制することができる。
第1実施形態の車両用制御装置の概略構成図。 車体すべり角推定装置の機能を示すブロック図。 車体すべり角推定装置が構成する拡張カルマンフィルタの機能を示すブロック図。 タイヤグリップ消費率と、事後確率と、演算状態との関係を示す図。 タイヤ横力と、タイヤすべり角との関係を示す図。 第2実施形態の車両用制御装置の概略構成図。
(第1実施形態)
以下、車体すべり角推定装置を車両の作動を制御する車両用制御装置に適用した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両Aは、当該車両Aの作動を制御する車両用制御装置Bを備えている。車両Aは、車両用制御装置Bの制御対象となる操舵装置1を備えている。操舵装置1は、当該操舵装置1の作動を制御する操舵制御装置2を備えている。操舵制御装置2は、車両用制御装置Bのなかで、車両Aの作動として操舵装置1の作動を制御する。操舵装置1は、運転者によるステアリングホイール3の操作であるステアリング操作に基づいて転舵輪4を転舵させる操舵機構5を備えている。また、操舵装置1は、操舵機構5にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するアクチュエータ6を備えている。つまり、本実施形態において、操舵装置1は、運転者によるステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置である。
操舵機構5は、ステアリングホイール3が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11に連結された転舵軸であるラック軸12と、ラック軸12が往復動可能に挿通されるハウジングであるラックハウジング13とを備えている。また、操舵機構5は、ステアリングシャフト11の回転をラック軸12の軸線方向の往復動に変換するラックアンドピニオン機構14を備えている。なお、ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール3が位置する側から順にコラム軸15、中間軸16、及びピニオン軸17を連結することにより構成されている。
ラック軸12とピニオン軸17とは、ラックハウジング13内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構14は、ラック軸12に設けられたラック歯12aとピニオン軸17に設けられたピニオン歯17aとが噛合されることで構成されている。また、ラック軸12の両端には、その軸端部に設けられたボールジョイントからなるラックエンド18を介してタイロッド19がそれぞれ駆動可能に連結されている。タイロッド19の先端は、転舵輪4が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、操舵装置1では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構14によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド19を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪4の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
アクチュエータ6は、駆動源であるモータ21と、ウォームアンドホイール等の減速機構22とを備えている。モータ21は減速機構22を介してコラム軸15に連結されている。そして、アクチュエータ6は、モータ21の回転を減速機構22により減速してコラム軸15に伝達することによって、モータトルクをアシスト力として操舵機構5に付与する。なお、本実施形態のモータ21には、三相のブラシレスモータが採用されている。
操舵制御装置2は、モータ21に接続されており、その作動を制御する。なお、操舵制御装置2は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の制御が実行される。
操舵制御装置2には、車両の車速値Vを検出する車速センサ31、及び運転者の操舵によりステアリングシャフト11に付与された操舵トルクThを検出するトルクセンサ32が接続されている。また、操舵制御装置2には、モータ21の回転角θmを360°の範囲内で検出する回転センサ33が接続されている。なお、操舵トルクTh及び回転角θmは、例えば右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。そして、操舵制御装置2は、これら各センサから入力される車両Aの走行状態によって変化する各状態変数を示す信号に基づいて、モータ21に駆動電力を供給することにより、アクチュエータ6の作動、すなわち操舵機構5にラック軸12を往復動させるべく付与するアシスト力を制御する。
また、車両用制御装置Bは、車体すべり角推定装置40、統合制御装置41、警告制御装置42、エンジン制御装置43、及びブレーキ制御装置44を含んでいる。車体すべり角推定装置40は、車両用制御装置Bが制御対象の作動を制御する際に最適な制御を行うことができるようにするための情報として、車両Aの前後方向と車両Aの進行方向との間の当該車両Aの重心点を通る鉛直軸周りの角度である車体すべり角βに関わる情報を各装置2,41に対して提供する。本実施形態において、車体すべり角βに関わる情報は、実際の車体すべり角βを推定した情報である車体すべり角推定値βeである。そして、操舵制御装置2は、車体すべり角推定装置40が提供する車体すべり角推定値βeに基づいて、当該車体すべり角推定値βeが異常であり、車両Aがスリップ等したことを判断できる場合に、その旨を操舵装置1のアクチュエータ6の制御を通じて運転者に知らせたり、車両Aの走行が安定するようにアシストしたりする。なお、本実施形態において、変数に「^(ハット)」の記号を付す、又は「^(ハット)」の記号の替わりに「e」を付すことで推定値を表すようにしている。
また、統合制御装置41は、車両用制御装置Bのなかで、上述の操舵制御装置2に加えて、警告制御装置42や、エンジン制御装置43や、ブレーキ制御装置44を制御する。そして、統合制御装置41は、車体すべり角推定装置40が提供する車体すべり角推定値βeに基づいて、車両Aが安全に走行できるように、操舵制御装置2や、警告制御装置42や、エンジン制御装置43や、ブレーキ制御装置44を統合的に制御するための各種指示を行う。
警告制御装置42は、統合制御装置41の指示に基づいて、車両Aの作動として当該車両Aに設けられた各種異常を運転者等に知らせるための図示しない各種の警告装置の作動を制御する。そして、警告制御装置42は、統合制御装置41の指示に基づいて、車両Aがスリップ等した旨を警告したりする。
また、エンジン制御装置43は、統合制御装置41の指示に基づいて、車両Aの作動として当該車両Aに搭載される図示しない内燃機関である、例えばエンジンの作動を制御する。そして、エンジン制御装置43は、統合制御装置41の指示に基づいて、車両Aがスリップ等した場合に当該車両Aの走行が安定するようにエンジンの回転数を変更したりする。
また、ブレーキ制御装置44は、統合制御装置41の指示に基づいて、車両Aの作動として当該車両Aに搭載される図示しないブレーキ機構の作動を制御する。そして、ブレーキ制御装置44は、統合制御装置41の指示に基づいて、車両Aがスリップ等した場合に当該車両Aの走行が安定するようにブレーキ機構の制動量を変更したりする。
ここで、車体すべり角推定装置40について詳しく説明する。
車体すべり角推定装置40には、車両の車速値Vを検出する車速センサ31の他、車両Aの重心点を通る上下方向のz軸周りの回転角速度であるヨーレートrを検出するヨーレートセンサ34と、車両Aの前後方向に対して鉛直な幅方向であるy軸方向に作用する加速度である横加速度ayを検出する横加速度センサ35とが接続されている。また、車体すべり角推定装置40には、操舵制御装置2に構成される機能であるラック軸力推定装置36が出力するラック軸力推定値RFeが入力されるようになっている。ラック軸力推定装置36は、操舵制御装置2で得られる情報に基づいて、ラック軸12に作用する軸力であるラック軸力を推定した情報であるラック軸力推定値RFeを演算するオブザーバ等で構成されている。ラック軸力推定装置36は、ラック軸力推定値RFeを演算すると、当該ラック軸力推定値RFeを車体すべり角推定装置40に対して提供するように出力する。本実施形態において、ラック軸力推定装置36は、ラック軸力を検出するためのセンサとしての機能を果たす。つまり、車体すべり角推定装置40には、ラック軸力を検出するためのセンサとして機能するラック軸力推定装置36が接続されている。そして、車体すべり角推定装置40は、これら各センサから入力される車両Aの走行状態によって変化する物理量を示す信号を変数として、車体すべり角推定値βeを演算する。
次に、車体すべり角推定装置40の機能について説明する。
車体すべり角推定装置40は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の処理が実行される。
図2に、車体すべり角推定装置40が実行する処理の一部を示す。図2に示す処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現される処理の一部を、実現される処理の種類毎に記載したものである。
車体すべり角推定装置40は、車体すべり角推定値βeを状態変数に含む推定値の出力である状態推定量xeを演算するために必要な観測量yを演算する観測値演算部51を備えている。また、車体すべり角推定装置40は、状態推定量xeを演算するとともに、観測量yを推定した情報であり、状態推定量xeを演算するために必要な観測推定量yeを演算する推定値演算部52を備えている。また、車体すべり角推定装置40は、後述の拡張カルマンフィルタでの推定値である状態推定量xeの修正量を示すカルマンゲインKを演算するゲイン演算部53を備えている。
具体的には、観測値演算部51には、横加速度ayと、ヨーレートrと、ラック軸力推定値RFeとが入力される。観測値演算部51は、ラック軸力推定値RFeに基づいて、転舵輪4に作用する力であるタイヤ力として当該転舵輪4のキングピン軸周りの力であるキングピントルクTkpaを演算する。具体的には、観測値演算部51は、タイロッド19の軸方向に作用するタイロッドフォースに近似されるラック軸力推定値RFeと、車両Aの仕様により定まるナックルアーム長との積により観測値としてのキングピントルクTkpaを演算する。上記観測値としてのキングピントルクTkpaは、タイヤ横力と、キャスタートレイルとの積に対して、タイヤアライニングトルクを加算したもので近似できることが知られている。そして、観測値演算部51は、横加速度ay、ヨーレートr、キングピントルクTkpaを観測値とする3次の観測量y[ay,r,Tkpa](3×1行列)を演算する。こうして得られた観測量yは、減算器54に出力される。
推定値演算部52には、転舵角θtと、車速値Vと、カルマンゲインKとが入力される。推定値演算部52は、転舵角θtと、車速値Vとを後述の入力量uとして、車体すべり角βのダイナミクスモデル、すなわち車体すべり角βを変数に含むモデルとして、例えば、2輪2自由度平面車両モデルに基づいて、状態推定量xeと、観測推定量yeとを演算する。なお、転舵角θtは、操舵制御装置2に入力される回転角θmから当該操舵制御装置2内の処理を通じて演算される転舵輪4の舵角の情報である。推定値演算部52は、車体すべり角推定値βe、ヨーレートrを推定した情報であるヨーレート推定値re、実際の路面μを推定した情報である路面μ推定値μe、コーナリングスティフネスKyを推定した情報であるコーナリングスティフネス推定値Kyeを推定値とする4次の状態推定量xe[βe,re,μe,Kye](4×1行列)を演算する。こうして演算された状態推定量xeは、車体すべり角推定値βeを示す情報として、各装置2,41に出力される。本実施形態では、車両Aの作動を制御する際に路面μを考慮することができるように路面μ推定値μeを状態変数として持つように状態推定量xeを設定するようにしている。また、本実施形態では、ヨーレートrをオフセットしたり、各種のノイズを除去したりすることができるようにヨーレート推定値reを状態変数として持つように状態推定量xeに含ませるようにしている。
また、推定値演算部52は、横加速度ayを推定した情報である横加速度推定値aye、ヨーレート推定値re、キングピントルクTkpaを推定した情報であるキングピントルク推定値Tkpaeを推定値とする3次の観測推定量ye[aye,re,Tkpae](3×1行列)を演算する。こうして得られた観測推定量yeは、観測量yから減算して減算器54を通じて得られる観測偏差Δyとして推定値演算部52での状態推定量xeや、事前推定量x-eの演算に用いられる。
ゲイン演算部53には、状態推定量xe、事前推定量x-e、及び後述する精度情報FLGが入力される。ゲイン演算部53は、状態推定量xe、事前推定量x-e、及び後述する精度情報FLGに基づいて、観測量yに対する観測推定量yeの誤差である観測偏差Δyを減らすべく推定値演算部52が状態推定量xeを修正するための修正量を調整する機能を有するカルマンゲインKを演算する。こうして得られたカルマンゲインKは、推定値演算部52に出力される。
そして、本実施形態において、車体すべり角推定装置40は、状態推定量xeを演算する手法として、観測値演算部51、推定値演算部52、及びゲイン演算部53で非線形カルマンフィルタの一種である拡張カルマンフィルタEKFを構成し、当該拡張カルマンフィルタEKFを用いた推定オブザーバを構成している。
次に、本実施形態において、車体すべり角推定装置40が構成する拡張カルマンフィルタEKFについて詳しく説明する。以下の説明では、図3中、符号に付す括弧:()は時刻を意味し、ハイフン:-は現在に対して前回の情報に基づき推定した状態であることを意味する。
図3に示すように、拡張カルマンフィルタEKFは、現在の状態推定量xe(k)を演算するために、当該現在に対して前回の情報に基づき現在の状態を予測して事前推定する処理と、当該事前推定を通じて予測した状態を修正するように更新、すなわち補正して事後推定する処理とを行う。つまり、拡張カルマンフィルタEKFは、事前推定し、当該事前推定の結果を事後推定を通じて補正し、これを繰り返す結果、より実際の値に近い状態推定量xeを演算できるようにするものである。
ここで、拡張カルマンフィルタEKFは、状態推定量xeを演算するのに用いる状態方程式f(x,u)として、車体すべり角βを変数に含むモデルに基づき定義される所定の運動方程式を設定し、当該運動方程式に離散化を施して得られる下記式(1)を設定している。所定の運動方程式は、例えば、回転角θmから演算される転舵輪4の舵角の情報である転舵角θt、車速値Vの2次の入力量u[θt,V](2×1行列)と、車体すべり角β、ヨーレートr、路面μ、コーナリングスティフネスKyの4次の状態量x[β,r,μ,Ky]とを関係づけるものであればよい。
式(1)において、状態量xは、状態方程式f(x,u)に対して、当該状態方程式f(x,u)が含みうるモデルや変数に対して生じる誤差であるシステムノイズwを加味して得られる結果である。
また、拡張カルマンフィルタEKFは、状態推定量xeを演算するのに用いる観測方程式h(x,u)として、車体すべり角βを変数に含むモデルに基づき定義される所定の運動方程式を設定し、当該運動方程式に離散化を施して得られる下記式(2)を設定している。所定の運動方程式は、例えば、状態量x及び入力量u[θt,V](2×1行列)と、観測量y[ay,r,Tkpa]とを関係づけるものであればよい。
式(2)において、観測量yは、観測方程式h(x,u)に対して、当該観測方程式h(x,u)が含みうる観測時に生じる誤差である観測ノイズvを加味して得られる結果である。
なお、式(1)及び式(2)を導出する際に用いる離散化の方法としては、積分法や双一次変換等、種々の方法を採用することができる。
そして、拡張カルマンフィルタEKFは、上記式(1)を主に用いて事前推定を行う事前推定処理部Epriと、上記式(1)によって得られる結果が反映される上記式(2)を主に用いて事後推定を行う事後推定処理部Eposとを備えている。事前推定処理部Epriは、現在である時刻「k」以前、すなわち当該現在に対して前回である時刻「k-1」の状態推定量xe(k-1)を基に、当該時刻「k」の値を予測した値である事前推定量x-e(k)と、当該事前推定量x-eの推定の精度を示す指標である事前確率P-とを状態方程式f(x,u)に基づき演算するように事前推定を行う。事後推定処理部Eposは、現在である時刻「k」での観測量y(k)や、観測推定量yeや、事前推定処理部Epriが演算した事前確率P-を基に、事前推定処理部Epriが演算した事前推定量x-e(k)を補正して時刻「k」での状態推定量xe(k)を演算するように事後推定を行う。
具体的には、事前推定処理部Epriは、事前推定量x-eを演算する事前推定量演算部61と、システムノイズwのばらつき具合を示す指標としてシステムノイズ分散値Qを演算するシステムノイズ分散値演算部62と、事前推定量x-eのばらつき具合を示す指標として事前確率P-を演算する事前確率演算部63とを備えている。また、事前推定処理部Epriは、状態方程式f(x,u)を用いた演算について状態推定量xeの推定精度の高低を示す情報である精度情報FLGを演算するすべり角推定精度判定部64を備えている。なお、本実施形態では、システムノイズ分散値Q、事前確率P-は共分散行列である。
事後推定処理部Eposは、観測推定量yeを演算する観測推定量演算部71と、カルマンゲインKを演算するカルマンゲイン演算部72と、観測ノイズvのばらつき具合を示す指標として観測ノイズ分散値Rを演算する観測ノイズ分散値演算部73とを備えている。また、事後推定処理部Eposは、事後推定量として状態推定量xeを演算する事後推定量演算部74と、状態推定量xeのばらつき具合を示す指標として事後確率Pを演算する事後確率演算部75とを備えている。なお、本実施形態では、観測ノイズ分散値R、事後確率Pは共分散行列である。
本実施形態において、事前推定処理部Epriの事前推定量演算部61及びすべり角推定精度判定部64と、事後推定処理部Eposの観測推定量演算部71及び事後推定量演算部74とは、図2中、推定値演算部52に対応する。また、事前推定処理部Epriのシステムノイズ分散値演算部62及び事前確率演算部63と、事後推定処理部Eposのカルマンゲイン演算部72、観測ノイズ分散値演算部73、及び事後確率演算部75とは、図2中、ゲイン演算部53に対応する。なお、事前推定量演算部61は車体すべり角推定値演算部の一例である。
以下、事前推定処理部Epriの機能について説明する。
事前推定量演算部61には、上記事後推定量演算部74で演算された時刻「k」に対して時刻「k-1」での状態推定量xe(k-1)と、時刻「k」での入力量u(k)とが入力される。また、事前推定量演算部61には、上記観測推定量演算部71で演算された時刻「k」に対して時刻「k-1」での観測推定量ye(k-1)と、上記すべり角推定精度判定部64で演算された精度情報FLGとが入力される。なお、精度情報FLGとしては、時刻「k-1」での情報として入力されてもよいし、時刻「k」での情報として入力されてもよい。事前推定量演算部61は、状態推定量xe(k-1)と、入力量u(k)と、精度情報FLGとに基づいて、上記式(1)で示した状態方程式fn(x,u)による下記式(3),(4)及び下記式(3),(5)のいずれかを用いて、時刻「k」での事前推定量x-e(k)を演算する。
上記式(3)において、「n」は上記式(4),(5)に対応しており、「1」であれば上記式(4)であること、「2」であれば上記式(5)であることを示す。上記式(4),(5)において、「Fyf」は路面から前輪のタイヤに作用する車両Aの幅方向の力であるタイヤ横力、「Fyr」は路面から後輪のタイヤに作用する車両Aの幅方向の力であるタイヤ横力、「M」は車両重量、「Iz」は車両のヨー慣性を示す。また、上記式(4)において、「lf」は車両重心から前輪の車軸までの車両の前後方向距離である前輪ホイールベース、「lr」は車両重心から後輪の車軸までの車両の前後方向距離である後輪ホイールベースを示す。タイヤ横力Fyf,Fyrの関数は、車両Aの前後方向とタイヤ進行方向との間の転舵輪4の重心点を通る鉛直軸周りの角度である前後輪のタイヤのタイヤすべり角αf,αrと、タイヤ横力Fyf,Fyrとを関係づける、車体すべり角βを変数に含む、例えば、公知のFialaモデルやBrushモデルやMagic formula(MF)モデル等である。上記式(4),(5)において、タイヤ横力Fyf,Fyrの関数のうち、状態推定量xe及び入力量uの時刻やハイフンについては便宜上省略している。
本実施形態において、第1の状態方程式f1(x,u)は、車体すべり角βと、タイヤ横力Fyf,Fyrとを変数に含む、公知の2輪2自由度平面車両モデルに基づき定義される第1の運動方程式に離散化を施したものである。また、第2の状態方程式f2(x,u)は、第1の状態方程式f1(x,u)に対してタイヤ横力Fyf,Fyrに関する成分である当該タイヤ横力Fyf,Fyrを車両重量Mで除算したものを、横加速度ayに関する成分である横加速度推定値ayeに置き換えて定義される第2の運動方程式に離散化を施したものである。なお、横加速度推定値ayeは、状態推定量xe、すなわち車体すべり角推定値βeを演算するなかで観測推定量yeとして得られる。
また、タイヤ横力Fyf,Fyrの関数で用いるタイヤすべり角αf,αrは、車体すべりβ、各ホイールベースlf,lr、ヨーレートr、転舵角θt、車速値Vとの関係を定義する下記式(6),(7)を用いて演算される。
本実施形態において、事前推定量演算部61は、精度情報FLGに基づいて、当該精度情報FLGで示される状況に応じて、上記第1の状態方程式f1(x,u)及び上記第2の状態方程式f2(x,u)を切り替えて、いずれかの状態方程式fn(x,u)に基づき事前推定量x-e(k)を演算する。なお、状態方程式fn(x,u)を切り替える条件である精度情報FLGについては後で詳しく説明する。こうして得られた事前推定量x-e(k)は、観測推定量演算部71、カルマンゲイン演算部72、及び事後推定量演算部74に出力される。本実施形態において、事前推定量演算部61は車体すべり角推定値演算部の一例である。
システムノイズ分散値演算部62には、上記事前推定量演算部61に入力されたのと同様の状態推定量xe(k-1)が入力される。システムノイズ分散値演算部62は、状態推定量xe(k-1)に基づいて、下記式(8),(9),(10)を用いて、時刻「k-1」でのシステムノイズ分散値Q(k-1)を演算する。
上記式(8)は、上記式(10)で得られるシステムノイズ分散値Qx(k-1)に上記式(9)で示す状態量xに関連するヤコビアンF(k-1)を用いた線形近似を施して得られるものをシステムノイズ分散値Q(k-1)と定義することを示す。上記式(10)は、車体すべり角推定値βeを含む状態推定量xeのばらつき具合を示す指標としてシステムノイズ分散値Qx(k-1)、すなわち、車体すべり角推定分散値(σβ)、ヨーレート推定分散値(σr)、路面μ推定分散値(σμ)、コーナリングスティフネス推定分散値(σKy)を定義して演算することを示す。
こうして得られたシステムノイズ分散値Q(k-1)は、事前確率演算部63に出力される。
事前確率演算部63には、上記事前推定量演算部61に入力されたのと同様の状態推定量xe(k-1)と、上記システムノイズ分散値演算部62で演算されるシステムノイズ分散値Q(k-1)と、事後確率演算部75で演算される時刻「k-1」での事後確率P(k-1)とが入力される。事前確率演算部63は、状態推定量xe(k-1)と、システムノイズ分散値Q(k-1)と、事後確率P(k-1)とに基づいて、下記式(11)を用いて、時刻「k」での事前確率P-(k)を演算する。
上記式(11)は、事後確率P(k-1)に対して、上記式(9)で示す状態推定量xe(k-1)周りでのヤコビアンF(k-1)を用いた線形近似を施したものと、上記式(8)で示すシステムノイズ分散値Q(k-1)とを加算して事前確率P-(k)を演算することを示す。
こうして得られた事前確率P-(k)は、カルマンゲイン演算部72及び事後確率演算部75に出力される。
すべり角推定精度判定部64には、上記事後推定量演算部74で演算された状態推定量xe(k)と、上記事後確率演算部75で演算された事後確率P(k)とが入力される。すべり角推定精度判定部64は、状態推定量xe(k)と、事後確率P(k)とに基づいて、精度情報FLGを演算する。なお、精度情報FLGの演算の仕方については後で詳しく説明する。
このように、事前推定処理部Epriは、事前推定量x-eを推定するが、当該事前推定量x-eには上記式(1)で示したようにモデルや変数に対して生じる誤差が含まれているので、その影響で事前推定量x-eの推定の精度がどの程度になるか事前確率P-として演算しておくものである。
次に、事後推定処理部Eposの機能について説明する。
観測推定量演算部71には、上記事前推定量演算部61で演算された事前推定量x-e(k)と、上記事前推定量演算部61に入力されたのと同様の入力量u(k)とが入力される。観測推定量演算部71は、事前推定量x-e(k)と、入力量u(k)とに基づいて、上記式(2)で示した観測方程式h(x,u)による下記式(12),(13)を用いて、時刻「k」での観測推定量ye(k)を演算する。
本実施形態において、観測方程式h(x,u)は、事前推定量x-e(k)及び入力量u(k)と、観測推定量yeである横加速度推定値aye、ヨーレート推定値re、キングピントルクTkpaとを関係づける運動方程式に離散化を施したものである。上記式(13)において、タイヤ横力Fyf,Fyrの関数は、上記式(4)、(5)と同様、車体すべり角βを変数に含む、例えば、公知のFialaモデルやBrushモデルやMagic formula(MF)モデル等である。なお、タイヤ横力Fyf,Fyrの関数のうち、状態推定量xe及び入力量uの時刻やハイフンについては便宜上省略している。上記式(13)において、「Mzf」はフロントタイヤのセルフアライニングトルク、「tcaster」はキャスタートレイルを示す。
こうして得られた観測推定量ye(k)は、前回値保持部76を通じて時刻「k-1」で保持された前回の情報である観測推定量ye(k-1)として事前推定量演算部61に出力される。また、観測推定量ye(k)は、観測値演算部51で演算された観測量yから減算して減算器77を通じて得られる時刻「k」での観測偏差Δy(k)として事後推定量演算部74に出力される。
カルマンゲイン演算部72には、上記事前推定量演算部61で演算された事前推定量x-e(k)と、上記事前確率演算部63で演算された事前確率P-(k)と、観測ノイズ分散値演算部73で演算された観測ノイズ分散値R(k)とが入力される。観測ノイズ分散値Rは、本実施形態では予め定められた定数である。カルマンゲイン演算部72は、事前推定量x-e(k)と、事前確率P-(k)と、観測ノイズ分散値R(k)とに基づいて、下記式(14),(15)を用いて、時刻「k」でのカルマンゲインK(k)を演算する。
上記式(14)は、上記式(15)で示す状態量xに関連する事前推定量x-e(k)周りでのヤコビアンH(k)を用いた線形近似を施してカルマンゲインKを演算することを示す。つまり、カルマンゲインKは、ヤコビアンH(k)の転置行列が乗算される結果、状態推定量xeと同一次元での修正量を定数化するように線形近似が施されている。
こうして得られたカルマンゲインK(k)は、事後推定量演算部74及び事後確率演算部75に出力される。
事後推定量演算部74には、上記事前推定量演算部61で演算された事前推定量x-e(k)と、観測偏差Δy(k)と、上記カルマンゲイン演算部72で演算されたカルマンゲインK(k)とが入力される。事後推定量演算部74は、事前推定量x-e(k)と、観測偏差Δy(k)と、カルマンゲインK(k)とに基づいて、下記式(16)を用いて、時刻「k」での状態推定量xe(k)を演算する。
上記式(16)において、「y(k)-ye(k)」は、観測偏差Δy(k)を示す。
こうして得られた状態推定量xe(k)は、前回値保持部78を通じて時刻「k-1」で保持された前回の情報である状態推定量xe(k-1)として事前推定量演算部61に出力される。また、状態推定量xe(k)は、すべり角推定精度判定部64及び各装置2,41に出力される。
事後確率演算部75には、上記事前確率演算部63で演算される事前確率P-(k)と、上記カルマンゲイン演算部72で演算されるカルマンゲインK(k)とが入力される。事後確率演算部75は、事前確率P-(k)と、カルマンゲインK(k)とに基づいて、下記式(17)を用いて、時刻「k」での事後確率P(k)を演算する。
上記式(17)中の「I」は単位行列を示す。上記式(17)は、事前確率P-(k)に対して、上記式(15)で示す状態量xに関連する事前推定量x-e(k)周りでのヤコビアンH(k)を用いた線形近似を施して事後確率P(k)を演算することを示す。この場合、カルマンゲインK(k)は、ヤコビアンH(k)が乗算される結果、状態推定量xeと同一次元での修正量を示すように線形近似が施されている。
こうして得られた事後確率P(k)は、前回値保持部79を通じて時刻「k-1」で保持された前回の情報である事後確率P(k-1)として事前確率演算部63及びすべり角推定精度判定部64に出力される。
このように、事後推定処理部Eposは、観測偏差Δyに基づき演算するカルマンゲインKを用いて状態推定量xeを補正するとともに、当該状態推定量xeを補正する結果で状態推定量xeの推定の精度がどの程度になるか事後確率Pとして演算しておくものである。
ここで、すべり角推定精度判定部64の機能について詳しく説明する。
すべり角推定精度判定部64は、精度情報FLGを演算する際に、タイヤグリップ消費率TGC、又は事後確率Pに基づいて、状態方程式fn(x,u)を用いた演算について状態推定量xeの推定精度の高低を判定するように構成されている。タイヤグリップ消費率TGCは、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和しているか否かを示す指標となるものである。事後確率Pは、状態推定量xeのばらつき具合を示す指標となるものである。本実施形態では、状態推定量xeの推定精度の高低を判定する際に、事後確率Pとして、特に前回の情報である事後確率P(k-1)を用いるようにしている。
具体的には、すべり角推定精度判定部64は、タイヤが生じさせている現在の摩擦力μusedと、当該タイヤで生じさせることのできる最大摩擦力μmaxとに基づいて、下記式(18)を用いて、タイヤグリップ消費率TGCを演算する。
上記式(18)において、「Fx」は路面から前後輪のタイヤに作用する車両Aの前後方向の力であるタイヤ前後力、「Fz」は前後輪のタイヤに作用する車両Aの上下方向の力であるタイヤ垂直荷重を示す。なお、本実施形態では、上記式(18)において、「Fx」は零値とする。また、上記式(18)において、タイヤ荷重Fzは、車両重量Mと、各ホイールベースlf,lrとの公知の関係を用いて演算される。また、上記式(18)において、タイヤ横力Fyf,Fyrは、上記式(13)の過程にて演算されるものを用いる。
そして、すべり角推定精度判定部64は、上記事後推定量演算部74で演算される状態推定量xeに基づいて、タイヤグリップ消費率TGCを演算し、当該タイヤグリップ消費率TGCに応じた精度情報FLGを演算する。この場合、精度情報FLGは、タイヤグリップ消費率TGCが判定閾値TGCth未満であれば、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和していない状態を示し、状態推定量xeの推定精度が高いことを示す情報として演算される。また、精度情報FLGは、タイヤグリップ消費率TGCが判定閾値TGCth以上であれば、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和している状態を示し、状態推定量xeの推定精度が低いことを示す情報として演算される。判定閾値TGCthは、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和していることを判定できるとして実験的に求められる範囲の値に設定されている。
また、すべり角推定精度判定部64は、上記事後確率演算部75で演算される事後確率P(k)の前回の情報である事後確率P(k-1)に応じた精度情報FLGを演算する。この場合、精度情報FLGは、事後確率P(k-1)の共分散行列の各対角成分のいずれもが判定閾値Pth未満であれば、状態推定量xeのばらつき具合、すなわち誤差が許容できるほど小さい状態を示し、状態推定量xeの推定精度が高いことを示す情報として演算される。また、精度情報FLGは、事後確率P(k-1)の共分散行列の各対角成分の少なくともいずれかが判定閾値Pth以上であれば、状態推定量xeのばらつき具合、すなわち誤差が許容できないほど大きい状態を示し、状態推定量xeの推定精度が低いことを示す情報として演算される。判定閾値Pthは、状態推定量xeのばらつき具合、すなわち誤差が許容できないほど大きいことを判定できるとして実験的に求められる範囲の値に設定されている。
こうして得られた精度情報FLGは、事前推定量演算部61及びシステムノイズ分散値演算部62にて状態方程式fn(x,u)の切り替えに用いられる。
具体的には、事前推定量演算部61は、精度情報FLGに基づいて、状態推定量xeの推定精度が高いことを特定できる場合、状態方程式fn(x,u)として第1の状態方程式f1(x,u)を用いた演算を行う。この場合の演算状態は、第1の演算状態の一例である。
また、事前推定量演算部61は、精度情報FLGに基づいて、状態推定量xeの推定精度が低いことを特定できる場合、状態方程式fn(x,u)として第2の状態方程式f2(x,u)を用いた演算を行う。この場合の演算状態は、第2の演算状態の一例である。
以下、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態によれば、第1の演算状態と、第2の演算状態との間では、車体すべり角推定値を演算するために用いる状態方程式fn(x,u)を異ならせることで、車両の走行状態が同一であっても状態推定量xe、すなわち車体すべり角推定値βeを推定する場合に演算状態毎に異なる推定精度が得られるようになる。
本実施形態では、第1の演算状態で車体すべり角推定値βeを演算している間に、この推定精度が低下する状況への変化がすべり角推定精度判定部64により判定されるのであれば、第2の演算状態で車体すべり角推定値βeを演算するように演算状態を切り替えて推定精度の低下を抑えることができるように工夫を施している。
具体的には、図4に示すように、状態推定量xeの演算では、すべり角推定精度判定部64の判定に基づいて、第1の演算状態及び第2の演算状態を切り替えるようにしている。
例えば、すべり角推定精度判定部64が、タイヤグリップ消費率TGCが判定閾値TGCth未満(図中、「小(未飽和)」)、且つ事後確率P(k-1)の対角成分のいずれもが判定閾値Pth未満(図中、「小(誤差小)」)であることを判定する場合、第1の演算状態で状態推定量xeを演算する。この場合、車体すべり角推定値βeの演算では、第1の状態方程式f1(x,u)に基づきタイヤ横力Fyf,Fyrを車両重量Mで除算したものが用いられることになる。
ここで、すべり角推定精度判定部64が、タイヤグリップ消費率TGCが判定閾値TGCth未満、且つ事後確率P(k-1)の対角成分の少なくともいずれかが判定閾値Pth以上(図中、「大(誤差大)」)であることを判定すると、第1の演算状態から第2の演算状態で状態推定量xeを演算する状態に切り替わる。この場合、車体すべり角推定値βeの演算では、タイヤ横力Fyf,Fyrを車両重量Mで除算したものの替わりに第2の状態方程式f2(x,u)に基づき横加速度推定値ayeが用いられることになる。これは、すべり角推定精度判定部64が、タイヤグリップ消費率TGCが判定閾値TGCth以上(図中、「大(飽和)」)、且つ事後確率P(k-1)の対角成分のいずれもが判定閾値Pth未満であることを判定する場合も同様である。また、すべり角推定精度判定部64が、タイヤグリップ消費率TGCが判定閾値TGCth以上、且つ事後確率P(k-1)の対角成分の少なくともいずれかが判定閾値Pth以上であることを判定する場合も同様である。
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1)本実施形態では、状態推定量xe、すなわち車体すべり角推定値βeを推定する推定精度に応じて、状態方程式fn(x,u)を切り替えるように演算状態を切り替えて推定精度の低下を抑えることができるように工夫を施しているので、状況に関係なく車体すべり角推定値βeの推定精度の低下を抑制することができる。
(2)ここで、図5に示すように、タイヤ横力Fyf,Fyrと、タイヤすべり角αとの関係について言えば、当該タイヤすべり角αが大きくなるほど、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が小さくなり、図中、路面μ0~μ4毎に対応する角度α0~α4以上でそれぞれ飽和するということが知られている。
そして、車体すべり角推定装置40で用いている拡張カルマンフィルタEKFは、現在の状態を推定するために、当該現在に対して前回の状態に基づき現在の状態を予測して事前推定する処理と、当該事前推定を通じて予測した状態を修正するように更新、すなわち補正して事後推定する処理とを行うものである。つまり、拡張カルマンフィルタEKFは、事前推定し、当該事前推定で得られる値からの観測推定値と観測値との差分をフィードバックするかたちで事後推定にて補正し、これを繰り返す結果、より実際の値に近い状態を推定できるようにするものである。
この点、第1の演算状態では、上述の如くタイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和してしまうと、事前推定の更新がされ難くなり、事後推定を通じた補正の効果が低下することになる。これは、拡張カルマンフィルタEKFの特徴である事前推定が機能しなくなることを示し、車体すべり角推定値βeの推定精度を低下させることになる。
これに対して、第2の演算状態では、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和してしまっていても、観測量yに含まれる横加速度ayについては微小でも変化があれば観測値として補正される結果、事前推定の更新が好適にされるようになる。これは、拡張カルマンフィルタEKFの特徴である事前推定が機能していることを示し、車体すべり角推定値βeの推定精度の低下を抑えてある程度の精度で維持できることになる。つまり、第2の演算状態では、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和している場合、第1の演算状態と比較して車体すべり角推定値βeの推定精度を高く維持することができる。
これにより、本実施形態によれば、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和していない場合、第1の演算状態での演算を通じて、車体すべり角推定値βeの推定精度を確保することができるようになる。一方、タイヤ横力Fyf,Fyrの変化が飽和している場合、第2の演算状態での演算を通じて、車体すべり角推定値βeの推定精度を確保することができる。
(3)本実施形態において、第1の演算状態では、第1の状態方程式f1(x,u)としてモデル定義やパラメータが適切であれば十分に高い推定精度を確保することができるという特徴がある。一方、第2の演算状態では、横加速度ayが適切に観測出来ていればある程度の推定精度を確保することができる反面、横加速度ayが車両A上で検出されるとともにロールやピッチが考慮、検出されない場合、実際の変化に対して検出が遅れることによる応答遅れやロール角等で誤差が生じ易いという特徴がある。
本実施形態では、こうした各演算状態の特徴を考慮して、生じ得る状況での演算状態を定めるようにしている。これにより、第1の演算状態での推定を通じて基本的に十分に高い推定精度を確保するなかで、当該第1の演算状態での推定精度の確保が困難なる状況では、第2の演算状態での推定を通じて上述のように応答遅れやロール角等で誤差が生じやすい特徴があるものの、ある程度の推定精度を確保することができるようになる。したがって、状況に関係なく車体すべり角推定値βeの推定精度の低下を抑制することができる。
(4)本実施形態では、非線形カルマンフィルタとして拡張カルマンフィルタを採用することで、車体すべり角推定装置40の汎用性を高める点で効果的である。
(第2実施形態)
次に、車体すべり角推定装置の第2実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態の操舵制御装置101は、上記第1実施形態で備えていたラック軸力推定装置36を備えないものである。そして、本実施形態の操舵装置1は、各種のセンサとして、ハブユニットセンサ37(図1中、左側の左前輪センサ37L及び右側の右前輪センサ37R)がある。左前輪センサ37Lは、左前ハブユニットHLに設けられている。右前輪センサ37Rは、右前ハブユニットHRに設けられている。左前輪センサ37Lは、左側の転舵輪4の回転速度である車輪速を検出する他、路面と、左側の転舵輪4との間に発生する力として、当該転舵輪4に作用する力を検出する。右前輪センサ37Rは、右側の転舵輪4の回転速度である車輪速を検出する他、路面と、右側の転舵輪4との間に発生する力として、当該転舵輪4に作用する力を検出する。
ここで、一例として、ハブユニット(例えば、特開2009-133680号公報参照)に設けられる各前輪センサ37R,37Lについて詳しく説明する。
図6に示すように、ハブユニットセンサ37は、転舵輪4を、車載される内燃機関の動力を伝達する図示しないドライブシャフトとともに車体に対して回転自在に支持する軸受装置としての各ハブユニットHL,HRに内蔵されている。つまり、本実施形態の各ハブユニットHL,HRは、路面と、転舵輪4との間に発生する力として、当該転舵輪4に作用する力を直接的に検出することができるセンサ機能付きのハブユニットである。
左前輪センサ37Lは、左側の転舵輪4に作用する力に基づいて、車両Aの前後方向であるx軸方向の荷重Fx、車両Aの幅方向であるy軸方向の荷重Fy、車両Aの上下方向であるz軸方向の荷重Fz、x軸回りのモーメント荷重Mx、z軸回りのモーメント荷重Mzをそれぞれ演算する。これは、右前輪センサ37Rについても同様であり、各前輪センサ37L,37Rの間で、各種荷重Fx,Fy,Fz,Mx,Mzの正負の方向が一致している。これら各種荷重Fx,Fy,Fz,Mx,Mz(単位:N(ニュートン)もしくはNm(ニュートンメートル))は、車両の車速等の走行状態に応じても変化するものであり、車速等の要素も含む成分である。
本実施形態において、各前輪センサ37L,37Rは、転舵輪4において検出されるy軸方向の荷重Fyを示す情報であるタイヤ横力Fyfと、z軸回りの荷重Mzを示す情報である前輪の前輪モーメント荷重Mzfとを車体すべり角推定装置102に対して出力する。
すなわち、本実施形態の車体すべり角推定装置102には、ラック軸力推定装置36が出力するラック軸力推定値RFeが入力される替わりに、転舵輪4に設けられたハブユニットセンサ37から得られるタイヤ横力Fyf及び前輪モーメント荷重Mzfが入力されるようになっている。つまり、車体すべり角推定装置102は、転舵輪4に設けられたハブユニットセンサ37から入力されるタイヤ横力Fyf及び前輪モーメント荷重Mzfに基づいて、観測量yのキングピントルクTkpaを演算する。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の作用及び効果に対応する作用及び効果を奏する他、以下の効果を奏する。
(5)本実施形態のように、観測量yを演算する際にラック軸力推定装置36が出力するラック軸力推定値RFeの替わりに、転舵輪4に設けられたハブユニットセンサ37から得られるタイヤ横力Fyf及び前輪モーメント荷重Mzfを用いる場合、キングピントルクTkpaとしてより精度の高い値を得ることができるようになる。したがって、車体すべり角推定値βeの推定精度を高めるのに効果的である。
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・上記各実施形態では、演算状態に応じてシステムノイズ分散値Qを設定し、演算状態の切り替えに応じてシステムノイズ分散値Qを切り替えるようにすることもできる。
・上記各実施形態において、すべり角推定精度判定部64は、状態推定量xeの推定精度の高低を判定する際に、事後確率P(k-1)の代わりに、今回の事後確率P(k)を用いるようにしたり、今回や前回の事前確率P-や、システムノイズ分散値Qを用いるようにしたりしてもよい。
・上記各実施形態では、事後確率Pを用いて車体すべり角βについての推定精度を少なくとも判定できるように構成されていればよく、事前確率P-として少なくとも車体すべり角推定分散値(σβ)を演算するように構成されていればよい。
・各実施形態において、第2の演算状態では、タイヤ横力Fyf,Fyrに関する成分を横加速度推定値ayeで置き換える代わりに、観測値である横加速度ayで置き換えるようにしてもよい。
・上記第1実施形態において、車体すべり角推定装置40は、すべり角推定精度判定部64の判定の結果に関係なくとりあえず各演算状態のもとで事前推定量x-eやシステムノイズ分散値Qをそれぞれ演算しておくなかで、状態推定量xeを実際に演算する際にすべり角推定精度判定部64の判定の結果に応じた値を選択する構成としてもよい。これは、第2実施形態の車体すべり角推定装置102についても同様である。
・上記各実施形態において、すべり角推定精度判定部64は、状態推定量xeの推定精度の高低を判定する際に、タイヤグリップ消費率TGCの代わりに、例えば、スリップ率等を用いるようにしてもよい。
・上記各実施形態において、タイヤグリップ消費率TGCの路面μは前回の状態推定量xeや、今回や前回の事前推定量x-e、タイヤ横力Fyf,Fyrは前回の観測推定量yeや、観測量y等を用いて演算されるものであってもよい。
・上記各実施形態において、すべり角推定精度判定部64は、状態推定量xeの推定精度の高低を判定する際に、タイヤグリップ消費率TGC又は事後確率P(k-1)のいずれかのみに基づき判定する構成であったり、他の条件を追加して判定する構成であったり適宜変更可能である。
・上記各実施形態では、すべり角推定精度判定部64を、タイヤグリップ消費率TGCに基づき推定精度を判定するタイヤグリップ状態判定部と、事後確率P(k-1)に基づき推定精度を判定する事後確率判定部とに機能を分けることもできる。この場合、例えば、タイヤグリップ状態判定部は事後推定処理部Eposの機能の一部として実現したり、事後確率判定部は事前推定処理部Epriの機能の一部やゲイン演算部53の機能の一部として実現したり適宜設計可能である。
・上記各実施形態では、状態方程式fn(x)として、車体すべり角βを変数に含むモデルに基づいたものであればよく、例えば、より多自由度の車両モデルを用いることもできる。この場合、入力量u(k)は、用いるモデルに基づいた変数を入力とするように変更される。
・上記各実施形態では、状態方程式fn(x)のなかでタイヤ横力Fyf,Fyrの関数として、車体すべり角βを変数に含むモデルに基づいたものであればよく、より複雑なモデルを用いることもできる。
・上記各実施形態において、状態方程式fn(x,u)は、少なくとも2種類の式を用意していればよく、式の種類としては3種類以上適宜変更してもよい。
・上記各実施形態では、観測方程式h(x)として、車体すべり角βを変数に含むモデルに基づいたものであればよく、より複雑なモデルを用いることもできる。この場合、入力量u(k)は、用いるモデルに基づいた変数を入力とするように変更される。
・上記各実施形態では、車速値Vとして、例えば、上記第2実施形態のようにハブユニットセンサ37から得られる転舵輪4の回転速度である車輪速から演算することもできる。その他、車速値Vは、車両AにGPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの測位信号を受信するGPSセンサが設けられている場合には当該GPSセンサから演算してもよい。
・上記各実施形態では、状態推定量xeとして、少なくとも車体すべり角推定値βe、路面μ推定値μeの2次であればよい。この場合、状態量xや観測量yや観測推定量yeは、状態推定量xeの変更に合わせて変更される。
・上記各実施形態では、ヨーレートrを推定値及び観測値として用いているが、ヨーレートrを入力量uとして用いてもよい。
・上記各実施形態において、操舵装置1は、キングピントルクTkpaを直接検出できる機能を有していてもよく、例えば、タイロッド19にひずみゲージ等の力センサを設けるようにしてもよい。
・上記第2実施形態では、観測量yとして、車体すべり角βを変数に少なくとも含んでいればよく、例えば、キングピントルクTkpaの替わりにタイヤ横力Fyf,Fyrを変数として構成することもできる。その他、観測量yは、観測方程式h(x)として、x軸方向の加減速であったり、前後方向であるx軸方向の荷重Fxを考慮するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、上記各式で示した演算のなかで考慮する変数の時刻については、現在の時刻「k」の替わりに前回の時刻「k-1」を用いるようにしたり、前回の時刻「k-1」の替わりに現在の時刻「k」を用いるようにしたり、目的に合わせて適宜変更可能である。
・上記各実施形態では、車体すべり角推定装置40,102として、非線形カルマンフィルタを構成すればよく、例えば、Unscentedカルマンフィルタ(UKF)や、アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)等を構成することもできる。
・上記各実施形態において、車体すべり角推定装置40,102は、操舵制御装置2の機能として付加したり、統合制御装置41の機能として付加したりしてもよい。
・上記各実施形態では、車体すべり角推定値βeの利用の仕方として、車両Aの走行が安定するように利用すればよく、上述した例の他、例えば、前輪・後輪の前後左右の駆動力の配分を調整するために利用することもできる。
・上記第2実施形態において、各ハブユニットHL,HRでは、転舵輪4に作用する力に基づいて、タイヤ横力Fyfや前輪モーメント荷重Mzfを少なくとも出力することができるように構成されていればよい。このような条件を満たすのであれば、各ハブユニットHL,HRにおいて、各前輪センサ37L,37Rは、超音波検出式や、磁気検出式や、歪みゲージを用いた接触式等、センサの仕様は問わない。
・上記第2実施形態において、操舵制御装置101は、上記第1実施形態と同様にラック軸力推定装置36を備えていてもよい。
・上記第1実施形態において、車体すべり角推定装置40を構成するCPUは、コンピュータプログラムを実行する1つ以上のプロセッサ、あるいは各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路等の1つ以上の専用ハードウェア回路、あるいは上記プロセッサ及び上記専用ハードウェア回路の組み合わせを含む回路としてもよい。また、メモリには、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体によって構成してもよい。これは、第2実施形態の車体すべり角推定装置102や、各実施形態の操舵制御装置2等、各制御装置2,41,42,43,44,101についても同様である。
・上記各実施形態は、操舵装置1を、モータ21の回転をラック軸12に伝達することによって、モータトルクをアシスト力として操舵機構5に付与する、所謂、ラックアシスト型の操舵装置として実現することもできる。また、上記各実施形態は、操舵装置1を、ステアリングホイール3と、転舵輪4との間の動力伝達路が分離可能な構造とし、ステアバイワイヤ式の操舵装置として実現することもできる。この場合、ステアリングホイール3と、転舵輪4との間の動力伝達路は、機械的に常時分離した構造であってもよいし、クラッチにより分離可能な構造であってもよい。
40,102…車体すべり角推定装置
61…事前推定量演算部(車体すべり角推定値演算部)
62…システムノイズ分散値演算部
64…すべり角推定精度判定部
A…車両
EKF…拡張カルマンフィルタ(非線形カルマンフィルタ)

Claims (6)

  1. 車両の進行方向との間の当該車両の重心点を通る鉛直軸周りの角度である車体すべり角を状態変数とし、前記車両の幅方向に生じている横加速度を含む観測値を持ち、前記車体すべり角を変数に含むモデルに基づき定義される運動方程式を用いて構成された非線形カルマンフィルタを用いて前記車体すべり角の推定値である車体すべり角推定値を演算する車体すべり角推定装置において、
    前記運動方程式で定義されるモデルに基づいて、前記車体すべり角推定値を演算する車体すべり角推定値演算部と、
    前記運動方程式を用いた演算について前記車体すべり角推定値の推定精度を判定するすべり角推定精度判定部と、を備え、
    前記車体すべり角推定値演算部は、前記すべり角推定精度判定部の判定結果に基づいて、前記運動方程式で定義されるモデルが異なる第1の演算状態と、第2の演算状態とを含む複数の演算状態を有しており、
    前記第1の演算状態は、前記車体すべり角と、前記車両の前後輪のタイヤに路面から前記車両の前後方向に対して鉛直な幅方向に作用する力であるタイヤ横力とを変数に含むモデルに基づき定義される第1の運動方程式を用いて前記車体すべり角推定値を演算する状態であり、
    前記第2の演算状態は、前記第1の運動方程式に対して前記タイヤ横力に関する成分を、前記車体すべり角推定値を演算するなかで得られる前記横加速度に関する成分に置き換えて定義される第2の運動方程式を用いて前記車体すべり角推定値を演算する状態であり、
    前記車体すべり角推定値演算部は、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が高いことが判定される場合に前記第1の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算する一方、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が低いことが判定される場合に前記第2の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算するように構成されている
    ことを特徴とする車体すべり角推定装置。
  2. 前記第2の演算状態にて、前記タイヤ横力に関する成分に対して置き換えられる前記横加速度に関する成分は、前記横加速度の推定値である横加速度推定値に関する成分である請求項1に記載の車体すべり角推定装置。
  3. 前記すべり角推定精度判定部は、前記タイヤが生じさせている現在の摩擦力を、前記タイヤで生じさせることのできる最大摩擦力で除算して得られる値で定義されるタイヤグリップ消費率に基づいて、前記タイヤグリップ消費率の大小の間で当該タイヤグリップ消費率が小さくて前記タイヤ横力の変化が飽和していないことを示す場合に前記推定精度が高いことを判定する一方、前記タイヤグリップ消費率の大小の間で当該タイヤグリップ消費率が大きくて前記タイヤ横力の変化が飽和していることを示す場合に前記推定精度が低いことを判定するものである請求項1又は請求項2に記載の車体すべり角推定装置。
  4. 前記すべり角推定精度判定部は、前記推定精度を前記車体すべり角推定値のばらつき具合を示す指標に基づいて、前記指標の大小の間で当該指標が小さい場合に前記推定精度が高いことを判定する一方、前記指標の大小の間で当該指標が大きい場合に前記推定精度が低いことを判定するものであり、
    前記車体すべり角推定値演算部は、前記第1の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算するなかで、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が高いことが判定される場合に前記第1の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算する一方、前記すべり角推定精度判定部にて前記推定精度が低いことが判定される場合に前記第2の演算状態で前記車体すべり角推定値を演算するように構成されている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の車体すべり角推定装置。
  5. 前記観測値として、前記車両に生じている横加速度及びヨーレートと、前記車両の転舵輪を上方から見た場合の転舵の中心のアライニングトルクとを少なくとも含んでいる請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の車体すべり角推定装置。
  6. 前記非線形カルマンフィルタは、拡張カルマンフィルタである請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の車体すべり角推定装置。
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