JP7501871B2 - 口唇荒れの評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、口唇荒れの評価方法などに関する。
口唇に関しては、湿度の高い夏期にも唇の荒れ症状を呈する場合があり、このため口唇保護など多様な用途でリップクリームを、男女を問わず通年使用するようになってきている。さらに、口唇荒れの状況が口紅を塗布した際の仕上がり効果に大きく影響を与えるため、リップクリームを口紅下地として使用する女性も多い。加えて、近年では保湿機能を付与した口紅も口唇荒れを防ぐ目的で開発されている。
このように、口唇荒れを改善できる化粧料を求めるニーズは高い。例えば、特許文献1には、口唇荒れを改善するために、アプリコットエキス、アプリコットオイル、ウーロン茶エキス、及びニンジンエキスから選ばれる少なくとも1種以上を配合した、口唇用化粧料が提案されている。
特開2004-59441号公報
Bowstra J. A. et. al., J. Invest. Dermatol., 117, 710-717(2001). 新井清一ら,香粧会誌,Vol.13,No.2,p64-68,(1989).
ここで、口唇は、皮膚と口腔粘膜との境界部位となっており、皮膚と粘膜との両方の特性を併せ持つため、通常の皮膚とは違った特性を有する。例えば、皮膚のターンオーバーが一般に20~25日程度であるのに対し、口唇のターンオーバーは一般に3~4日であることが知られている。さらに口唇は角層が非常に薄く、皮脂腺や汗腺がないため、皮脂膜や天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor:NMF)の供給がされないなど、通常の皮膚とは構造が大きく異なり、一般的に皮膚より荒れの程度が酷く、荒れが発生する頻度が高いことが知られている。
このため、口唇状態を評価する場合は、口唇固有の生理機能特性を把握した専門評価者が、目視観察による官能評価を行っていた。このように口唇状態を評価する場合には、口唇に関する高い知識と、官能評価に関する高い習熟度との両方を有する口唇評価の専門評価者を、その都度、必要としていた。
しかしながら、本発明者らは、口唇評価の専門評価者に頼ることなく、できるだけ口唇状態の評価をより客観的に行うことができる口唇荒れの評価を鋭意検討した。
そこで、本発明者らは、より客観的に口唇荒れ評価を行う技術を提供することを主な目的とする。
ここで、角層細胞間脂質とは、皮膚最上層にある角層細胞の間を埋める多層の脂質膜を構成する脂質をいう。角層細胞間脂質は、主にセラミド、遊離脂肪酸、コレステロールなどから構成されており、それらが規則的に配列したラメラ構造をとり、それが何層にも重なって存在している。角層では、これら細胞間脂質が垂直方向と水平方向に構造を形成しており、垂直方向に、長周期ラメラ構造、短周期ラメラ構造、液晶を形成しており、水平方向に、オルソロンビック構造、ヘキサゴナル構造、流動相を形成していることが知られている(例えば、非特許文献1(J. Invest. Dermatol., 117, 710-717(2001).)参照)。このうち、水平方向に形成している構造を「細胞間脂質充填構造」と呼んでいる。角層においては、これらの構造が複雑に形成されながら角層のバリア機能を発揮している。
ラメラ構造としては、脂質分子の長軸方向への配向の周期が約13nmの長周期ラメラ構造と、周期が約6nmの短周期ラメラ構造が知られている。また、ラメラ方向に直行する横断面での炭化水素鎖の並び方(炭化水素鎖側方充填構造)が、全ての格子面間隔で等しいヘキサゴナル構造(六方晶:格子定数は約0.41nm)と、最も密に詰まっているオルソロンビック構造(斜方晶:格子定数は約0.37nm及び約0.41nm)と、そして流動相の3種類が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
ラメラ構造の周期構造は、小角X線回折などの方法を用いて測定することができる。一方、ラメラ構造の炭化水素鎖側方充填構造は、広角X線回折法、電子線回折法、フーリエ変換IR(FTIR)法等の方法を用いて測定することができる。
一般的に皮膚での角層バリア機能を評価する際には、オルソロンビック構造及びヘキサゴナル構造から構成される存在比率(Ort.率)を用いて評価を行うことから、本発明者らは、被験者の口唇角層を解析して得られたオルソロンビック構造及びヘキサゴナル構造から構成される存在比率(Ort.率)を用いて、口唇荒れの評価を試みたものの、良好に口唇荒れを評価することができなかった。
本発明者らは、更に鋭意検討したところ、図1に示すように、口唇角層中の細胞間脂質充填構造におけるオルソロンビック構造、ヘキサゴナル構造、流動相の3つの回折像を得ることができたこと、さらに、外周部分のリング像の有無で、流動相が形成されている回折像と、オルソロンビック構造及びヘキサゴナル構造が形成されている回折像とを、区別できることを見出した。さらに、本発明者らは、被験者1名から採取した複数の試料から得た複数の回折像から、流動相の出現割合を解析し、この解析された流動相の出現割合は、水分量と相関関係があることも見出した。
また、本発明者らは、得られた回折像から散乱強度プロファイルを求め、当該散乱強度プロファイルのなかで、特定の結晶構造を検出しない当該領域内の2か所の散乱強度値の比率(H/H, H<H)を口唇角層細胞の厚さとして解析し、この解析された口唇角層細胞の厚さは、口唇角層の水分量と相関関係があることも見出した。
さらに、通常、口唇角層細胞の厚さを解析する場合、厚さを測るために部分摘出などのような高い侵襲的な方法にて、口唇の組織を採取していた。しかしながら、本発明者らは、簡便かつ、低侵襲的な方法(例えば、ストリッピング方法)を用いても、口唇角層細胞の厚さについて解析できることを見出した。
このように、本発明者らは、解析された流動相の出現割合及び口唇角層細胞の厚さのそれぞれが口唇角層の水分量と相関性があることを新たに見出した。さらに、口唇角層の水分量は、口唇荒れ評価と相関関係にあることが知られている。例えば、非特許文献2(香粧会誌Vol.13,No.2(1989)p64-68)の表1及び表3では、口唇荒れの基準に基づいた目視観察結果と問診者の口唇水分量との回帰式が示され、口唇荒れ評価と口唇角層の水分量とに負の相関があることが記載されている。
そこで、本発明者らは、(1)口唇荒れの目視評価と口唇角層の水分量との関連性、及び流動相の出現割合と口唇角層の水分量との関連性、(2)口唇荒れの目視評価と口唇角層の水分量との関連性、及び口唇角層細胞の厚さと口唇角層の水分量との関連性に基づいて、後記〔実施例〕に示すように、流動相の出現割合又は口唇角層細胞の厚さを、口唇荒れ評価に利用できることを見出した。
すなわち、本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、解析された、(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合、及び(B)口唇角層細胞の厚さのそれぞれが、口唇荒れ評価と相関性があり、これらを指標にできることを見出した。これにより、本発明者らは、官能評価のような主観的ではなく、より客観的で、再現性が得やすい口唇荒れ評価を行う技術を提供することができ、本発明を完成させた。
よって、本発明は、以下の〔1〕~〔6〕のとおりである。
〔1〕
(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合又は(B)口唇角層細胞の厚さを指標とする、口唇荒れの評価方法。
〔2〕
前記(A)又は前記(B)が、広角X線回折法及び/又は電子線回折法を用いて解析されるものである、前記〔1〕に記載の口唇荒れの評価方法。
〔3〕
前記(A)又は前記(B)が、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られたものである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の口唇荒れの評価方法。
〔4〕
前記採取が、ストリッピング方法によるものである、前記〔3〕に記載の口唇荒れの評価方法。
〔5〕
前記(A)を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の値を、予め設定されている口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを評価する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の口唇荒れの評価方法。
〔6〕
前記(B)を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇角層細胞の厚さを、予め設定されている口唇角層細胞の厚さの評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを評価する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の口唇荒れの評価方法。
本発明によれば、より客観的に口唇荒れ評価を行う技術を提供することができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
電子線回折を用いて得られた口唇角層中の各細胞間脂質充填構造の回折像を示す。(a)流動相を示す電子線回折像、(b)ヘキサゴナル構造を示す電子線回折像、(c)及び(d)オルソロンビック構造を示す電子線回折像を示す。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。なお、数値における上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
1.本発明に係る口唇荒れの評価方法
本発明は(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合(以下、「(A)流動相の出現割合」ともいう)、(B)口唇角層細胞の厚さ、又はこれらの組み合わせを、指標とする、口唇荒れの評価方法を提供することができる。
前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」が、広角X線回折法及び/又は電子線回折法を用いて解析されたものであることが好適である。
前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」が、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られたものであることが好適である。
前記採取が、ストリッピング方法によるものであることが好適である。
対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を、予め設定されている評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを評価することが好適である。
このとき、得られた対象者の口唇荒れの評価は、相対評価であってもよいし、数値評価であってもよい。相対評価として、例えば、他の対象者の解析結果、対象者の過去の解析結果や文献値、また口唇荒れの平均値や正常値などを評価基準とし、この評価基準との対比による対比評価(良い、悪いなど)であってもよい。数値評価として、例えば、被験者や文献などから得られた推定モデル又は推定式を評価基準として、当該評価基準から得られた数値による数値評価であってもよい。
さらに、前記評価基準が、前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の官能評価(好適には口唇荒れの目視評価)との関連性に基づき得られたものであることが好適である。
本明細書において、「口唇状態」とは、唇の表面付近(角層)の状態であって、例えば、口唇の色艶、口唇の弾力性、口唇の荒れなど外観的な評価などが挙げられる。「口唇荒れ」は、例えば、カサツキなどの乾燥状態、皮むけ、ひび割れ、亀裂や痛みなどを伴うひび割れなどが挙げられる(例えば、非特許文献2など参照)。
従来、対象者の口唇荒れの評価は、口唇評価に関する専門評価者による官能評価に専ら頼っていたが、本発明の方法を用いることで、特別な口唇評価の専門評価者に頼ることなく、できるだけ機器分析を用いて口唇状態の評価をより客観的に行いつつ、口唇評価の習熟度が低い評価者であっても口唇評価に関する専門評価者と同等程度の精度を有する口唇荒れの評価を容易にすることができる。
このように、本発明であれば、より客観的に口唇荒れ評価を行う技術を提供することができる。
1-1.対象者及び対象部位
本発明を適用する対象者は、特に限定されず、老若男女を問わない。対象者の人種は特に限定されないが、好ましくはモンゴロイド人種である。
本発明の方法における「評価対象部位」、すなわち対象者からの採取部位は、口腔内を含めない口唇の表面(より好適には外気にさらされる口唇角層部分)であることが好適であり、さらにより好適には、下唇中央部の表面である。評価対象部位となる口唇及びその周辺部は、口唇用洗浄剤などにて予め洗浄されていることが、好ましい。
本発明における対象部位の採取方法としては、特に限定されないが、例えば、ストリッピング方法(例えば、グリッドストリッピング方法、テープストリッピング方法など)、擦過法、バイオプシー(生検)法などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用してもよい。このうち、低侵襲的に剥離・採取できることから対象者への負担を軽減でき、かつ簡便である観点から、ストリッピング方法が好ましく、より好ましくはテープストリッピング方法及び/又はグリッドストリッピング方法であり、さらに好ましくはグリッドストリッピング方法である。
グリッドストリッピング方法の好適な態様として、解析用のグリッドに粘着剤を塗布し、その粘着剤付きのグリッドの接着剤面を口唇に直接貼り付け、口唇の角層細胞を採取、固定する方法であることが挙げられるが、これに限定されない。グリッドを用いると、グリッドを光学顕微鏡により観察し、グリッドのメッシュ上に角層細胞が採取されていることを確認することもできる。
さらに、グリッドストリッピング方法の前処理として、テープストリッピング方法を用いることが、口唇荒れ評価をより精度よくできる観点から、より好適である。テープストリッピング方法を前処理に用いることで、採取部位の口唇表面にある古い表面層や付着物を容易に除去し、それらによる影響の少ない口唇角層細胞を採取することができる。例えば、シリコン系感圧粘着剤を塗布した粘着性樹脂テープ(例えば、PTFEテープ)を用いてもよく、医療用に使用可能な粘着テープが好適である。
1-2.解析方法
本発明の口唇荒れの評価方法において、指標となる前記「(A)流動相の出現割合」及び前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を解析する方法として、例えば、広角X線回折法及び/又は電子線回折法を用いることができるが、これらに限定されない。これら方法は、一般的な解析装置を使用する方法を適宜採用することができ、より具体的には、例えば、広角X線回折装置、電子線回折装置などから選択される1種又は2種以上を使用する方法を採用することができる。
本発明の口唇荒れの評価方法において、このうち、電子線回折法及び/又は広角X線回折法が、前記「(A)流動相の出現割合」及び前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」に関する良好な解析像を得ることができるので、好ましい。
<電子線回折法>
電子線回折には、例えば加速電圧が100kV~200kV程度の一般的な透過型電子顕微鏡を使用することができる。電子の発生方法としては、タングステンやLaBフィラメント、フィールドエミッションによるものなどが挙げられるが、微量の試料で簡便に測定できる観点から、フィールドエミッションを使用するのが望ましい。また角層に対する電子線のビームダメージの影響を低減化する観点から、電子線の照射量を極力小さく設定する必要があるため、検出器としては、イメージングプレートやCCDなどの高感度のものを使用することが好ましい。以上の設定を行うことで、指標となる前記「(A)流動相の出現割合」及び前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」等に関する情報を得ることができる。
<広角X線回折法>
広角X線回折には、角層構造を測定可能である一般的な装置を特に制限なく用いることができ、例えばSPring-8、あいちシンクロトロン光センター、高エネルギー加速器研究機構などの施設での測定が望ましい。X線回折プロファイルは、散乱ベクトルs=1.0~3.0nm-1程度の範囲を広角領域として設定することで、指標となる前記「(A)流動相の出現割合」及び前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」等に関する情報を得ることができる。
1-3.(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合
本発明に係る口唇荒れの評価方法では、上記「1-1.」「1-2.」、下記「1-4.」「1-5.」「2.」「3.」などの構成と重複する、口唇角層、電子線回折などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「2.」「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
本発明の評価方法は、解析された「(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合」を指標とすることが好適である。より好適には、電子線回折法又は広角X線回折法を用いて解析される「(A)流動相の出現割合」である。当該「(A)流動相の出現割合」に基づき、得られる対象者の口唇荒れ評価は、相対評価であってもよいし、数値評価であってもよい。
本発明の評価方法では、前記「(A)流動相の出現割合」を指標とすることで、特別な口唇評価の専門評価者に頼ることなく、機器分析を用いて口唇状態の評価をより客観的に行うことができる。さらに、前記「(A)流動相の出現割合」を指標とすることで、口唇評価の習熟度が低い評価者であっても、習熟度が高い専門評価者と同等程度の精度を有する口唇荒れの評価を容易にすることができる。
本発明の評価方法に用いられる指標である「(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合」は、下記<流動相の回折像の出現割合(A)の算出方法>にて、算出することができる。
<流動相の回折像の出現割合(A)の算出方法>
対象者の口唇角層が採取された単数又は複数の試料(好適には試料を含むグリッド)について、回折法を用いて試料の回折像を取得する。試料は、複数が好ましく、例えば、10以上又は15以上であることが、より良好な出現割合を得る観点から、好ましい。また、回折像は、電子線回折像又は広角X線回折像が好適である。
試料から回折像を取得後、対象者の回折像の全枚数(N)のうち、流動相の回折像と判別された枚数(N)を数え、下記式1により[A]を算出することができる。
[A:流動相の回折像の出現割合]=
[N:流動相の回折像の枚数]/[N:対象者の全回折像の枚数]・・・式1
より好適な対象者の流動相の回折像の判別方法の態様について、以下に〔対象者の流動相の回折像の判別方法〕を説明するが、本発明の回折像の判別方法はこれに限定されない。
図1に、典型的な(a)流動相の回折像、(b)ヘキサゴナル構造の回折像、(c)及び(d)オルソロンビック構造の回折像を示す。図1に示す、(b)ヘキサゴナル構造の回折像、(c)及び(d)オルソロンビック構造の回折像のそれぞれには、外周部分にリング像(矢印で示す部分)が見られる。一方で、(a)流動相の回折像には、外周部分にリング像が見られない。またそこで、これらの特性を利用して外周部分にあるリング像の有無を指標とし、流動相の回折像を判別することができる。
<前記「(A)流動相の出現割合」と口唇状態の関連性>
さらに、後記実施例に示すように、前記「(A)流動相の出現割合」は、口唇角層の水分量と、負の相関関係がある。さらに、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価(点数が高いほど悪い評価)にも、負の相関関係があることが知られている。
このことから、「(A)流動相の出現割合」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性に基づき得られた評価基準と対比することで、対象者の「(A)流動相の出現割合」から口唇状態を評価することができる。
このとき、「(A)流動相の出現割合」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性について予め統計処理することで、これらに基づいた推定モデル又は推定式を得、この推定モデル又は推定式を評価基準とし、当該評価基準に基づいて、対象者の「(A)流動相の出現割合」から口唇状態を評価してもよい。
例えば、例1として、対象者の過去の解析結果から選択された「(A)流動相の出現割合」を評価基準とした後に、対象者の「(A)流動相の出現割合」を当該評価基準と対比することで、過去の口唇荒れよりも、荒れが強い(もしくは「より悪い」)又は荒れが弱い(もしくは「より良い」あるいは「正常」)と判別することができる。また、当該評価基準は、口唇荒れに関する被験者の平均値、口唇の正常値など公知の評価基準であってもよい。
例えば、例2として、対象者の「(A)流動相の出現割合」が高いほど、口唇角層の水分量が低いと判別することができ、さらに判別された水分量が低いほど、口唇の状態が悪く、口唇荒れが「強い」と判別することができる。一方で、対象者の「(A)流動相の出現割合」が低いほど、口唇角層の水分量が高いと判別することができ、さらに判別された水分量が高いほど、口唇の状態が良く、口唇荒れが「弱い」と判別することができる。
例えば、例3として、「(A)流動相の出現割合」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性に基づいて得られた推定モデル又は推定式を評価基準として用いた場合、対象者の「(A)流動相の出現割合」が高いほど、口唇の状態が悪く、口唇荒れが「強い」と判別することができる。一方で、対象者の「(A)流動相の出現割合」が低いほど、口唇の状態が良く、口唇荒れが「弱い」と判別することができる。当該推定モデル又は推定式に基づき、口唇荒れの評価を数値化してもよい。
なお、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性(具体的には、回帰式など)については、例えば、非特許文献2(香粧会誌Vol.13,No.2(1989)p64-68)の記載内容を参考にすることができるがこの公知文献に限定されず、公知又は将来の知見などであってもよい。本発明では、以下のように記載されている非特許文献2に記載の表1及び表3の口唇荒れの評価、並びに口唇荒れ評価及び口唇角層の水分量の回帰式を採用してもよい。
<前記「(A)流動相の出現割合」に基づく評価方法の例>
本発明の評価方法における好ましい態様として、前記「(A)流動相の出現割合」を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の値を、予め設定されている口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の評価基準と対比して、対象者の口唇荒れを評価することがより好適である。当該評価基準は、前記「(A)流動相の出現割合」と、口唇角層の水分量と、口唇荒れの目視評価との関連性に基づき得られたものであることが好適である。
前記「(A)流動相の出現割合」に基づき、得られる対象者の口唇荒れ評価は、相対評価であってもよいし、数値評価であってもよい。相対評価として、例えば、他の対象者の解析結果、対象者の過去の解析結果や文献値、また口唇荒れ評価の平均値や正常値などを評価基準とし、この評価基準との対比による対比評価(良い、悪いなど)であってもよい。数値評価として、例えば、被験者や文献などから得られた推定モデル又は推定式を評価基準として用いて、当該評価基準から得られた数値による数値評価であってもよい。
数値評価を得る場合、例えば、対象者の「(A)流動相の出現割合」を、前記「(A)流動相の出現割合」と「口唇角層の水分量」との相関関係に当てはめて「口唇角層の水分量」を得、次いで得られた当該水分量を、「口唇角層の水分量」と「口唇荒れの目視評価」との相関関係に当てはめてもよい。また、数値評価を得る場合、例えば、対象者の「(A)流動相の出現割合」を、前記「(A)流動相の出現割合」と「口唇角層の水分量」と「口唇荒れ評価」との関連性に基づき得られた推定モデル又は推定式に当てはめてもよい。
また、本発明における別の好ましい態様として、本発明の評価方法は、判別工程を含み、当該判別工程として、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の値を、予め設定されている口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを判別することが好適である。
本発明の口唇荒れの判別工程では、前記「(A)流動相の出現割合」が高いほど、口唇荒れが「強い」と判別することができる。このため、好適な態様として、予め設定されている口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合を、好適には0.5以上、より好適には0.6以上と設定することで、より精度よく口唇荒れが「強い」と判別することができる。さらに、予め設定する「(A)流動相の出現割合」の基準値を、例えば、0.7以上、0.8以上、又は0.9以上などと高く設定することで、口唇荒れが「強い」を精度よく判別することもできる。
さらに、本発明の評価方法は、解析方法にて対象者の口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の値を解析する解析工程、及び、当該解析結果である対象者の「(A)流動相の出現割合」を、予め設定されている「(A)流動相の出現割合」の評価基準と対比し、前記対象者の口唇荒れを判別する判別工程を含むことが好適である。
さらに、本発明の評価方法は、対象者の口唇から口唇角層を採取する採取工程を含み、前記採取工程、前記解析工程及び前記判別工程を含むことが、よりさらに好適である。当該採取として、ストリッピング方法による採取が、低侵襲的の観点から、より好適である。
1-4.(B)口唇角層細胞の厚さ
本発明に係る口唇荒れの評価方法では、上記「1-1.」「1-2.」「1-3.」、下記「1-5.」「2.」「3.」などの構成と重複する、口唇角層、電子線回折などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「2.」「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
本発明の評価方法は、解析された「(B)口唇角層細胞の厚さ」を指標とすることが好適である。より好適には、電子線回折法又は広角X線回折法を用いて解析される「(B)口唇角層細胞の厚さ」である。当該「B)口唇角層細胞の厚さ」に基づき、得られる対象者の口唇荒れ評価は、相対評価であってもよいし、数値評価であってもよい。なお、「角層細胞の厚さ」とは、「この角層細胞1つあたりの厚さ」のことをいう。
本発明の評価方法では、前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を指標とすることで、特別な口唇評価の専門評価者に頼ることなく、機器分析を用いて口唇状態の評価をより客観的に行うことができる。さらに、前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を指標とすることで、口唇評価の習熟度が低い評価者であっても、習熟度が高い専門評価者と同等程度の精度を有する口唇荒れの評価を容易にすることができる。
本発明の評価方法に用いられる指標である「(B)口唇角層細胞の厚さ」は、下記<口唇角層細胞の厚さ(H/H)の算出方法>にて、算出することができる。「(B)口唇角層の厚さ」は、口唇角層細胞の厚さ比率(H/H,H<H)であることが好適である。
<口唇角層細胞の厚さ(H/H)の算出方法>
対象者の口唇角層が採取された単数又は複数の試料(好適には試料を含むグリッド)について、回折法を用いて試料の回折像を取得する。試料は、複数が好ましく、例えば、10以上又は15以上であることが、より良好な出現割合を得る観点から、好ましい。また、回折像は、電子線回折像又は広角X線回折像が好適である。
得られた解析像から散乱強度プロファイルを求め、当該散乱強度プロファイルのなかで、特定の結晶構造を検出しない当該領域内の2か所の散乱強度値(H/H, H<H)から〔H/H〕比率を求め、この〔H/H〕比率を「口唇角層細胞の厚さ」とすることができる。
好適な態様として、複数の試料から複数の回折像を取得後、各回折像を、ビーム中心から方位角方向に散乱強度を一周積算することにより得られる散乱強度プロファイルを、散乱ベクトルの絶対値s=2sinθ/λ(2θ;散乱角、λ;波長)の関数として、求める。当該散乱強度プロファイルのなかで、特定の結晶構造を検出しない当該領域内の2か所の強度値の比率〔H/H,H<H〕を口唇角層細胞の厚さとする。
さらに好適な態様として、得られた散乱強度プロファイルから、s=1.25nm-1 の散乱強度値(H)とs=1.55nm-1の散乱強度値(H)を得た後、〔H/H〕(・・・式2)から、口唇角層細胞の厚さを求めることができる。このH、Hは、特定の結晶構造を検出しないと考えられる領域の散乱強度値である。これらの散乱強度値であれば、口唇角層細胞自体に対する照射線の散乱の強度を知ることができるため、この比率〔H/H〕を取得することで、この比率を角層の厚さとすることができる。
<前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」と口唇状態の関連性>
さらに、後記実施例に示すように、「(B)口唇角層細胞の厚さ」は、口唇角層の水分量と、負の相関関係がある。さらに、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価(点数が高いほど悪い評価)にも、負の相関関係があることが知られている。
このことから、「(B)口唇角層細胞の厚さ」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性に基づき得られた評価基準と対比することで、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」から口唇状態を評価することができる。
このとき、「(B)口唇角層細胞の厚さ」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性について予め統計処理することで、これらに基づいた推定モデル又は推定式を得、この推定モデル又は推定式を評価基準とし、当該評価基準に基づいて、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」から口唇状態を評価してもよい。
例えば、例1として、対象者の過去の解析結果から選択された「(B)口唇角層細胞の厚さ」を評価基準とした後に、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」を当該評価基準と対比することで、過去の口唇荒れよりも、荒れが強い(もしくは「より悪い」)又は荒れが弱い(もしくは「より良い」あるいは「正常」)と判別することができる。また、当該評価基準は、口唇荒れに関する被験者の平均値、口唇の正常値など公知の評価基準であってもよい。
例えば、例2として、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」が高いほど、口唇角層の水分量が低いと判別することができ、さらに判別された水分量が低いほど、口唇の状態が悪く、口唇荒れが「強い」と判別することができる。一方で、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」が低いほど、口唇角層の水分量が高いと判別することができ、さらに判別された水分量が高いほど、口唇の状態が良く、口唇荒れが「弱い」と判別することができる。
例えば、例3として、「(B)口唇角層細胞の厚さ」と、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性に基づいて得られた推定モデル又は推定式を評価基準として用いた場合、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」が高いほど、口唇の状態が悪く、口唇荒れが「強い」と判別することができる。一方で、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」が低いほど、口唇の状態が良く、口唇荒れが「弱い」と判別することができる。当該推定モデル又は推定式に基づき、口唇荒れの評価を数値化してもよい。
なお、口唇角層の水分量と、口唇状態の目視評価との関連性(具体的には、回帰式など)については、上記「1-3.(A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合」の記載と同様であるので省略する。
<「(B)口唇角層細胞の厚さ」に基づく評価方法の例>
本発明の評価方法における好ましい態様として、前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇角層細胞の厚さの値を、予め設定されている口唇角層細胞の厚さの評価基準と対比して、対象者の口唇荒れを評価することがより好適である。当該評価基準は、前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」と、口唇角層の水分量と、口唇荒れの目視評価との関連性に基づき得られたものであることが好適である。
前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」に基づき、得られる対象者の口唇荒れ評価は、相対評価であってもよいし、数値評価であってもよい。相対評価として、例えば、他の対象者の解析結果、対象者の過去の解析結果や文献値、また口唇荒れ評価の平均値や正常値などを評価基準とし、この評価基準との対比による対比評価(良い、悪いなど)であってもよい。数値評価として、例えば、被験者や文献などから得られた推定モデル又は推定式を評価基準として用いて、当該評価基準から得られた数値による数値評価であってもよい。
数値評価を得る場合、例えば、対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」を、前記「(B)口唇角層の厚さ」と「口唇角層の水分量」との相関関係に当てはめて「口唇角層の水分量」を得、次いで得られた当該水分量を、「口唇角層の水分量」と「口唇荒れの目視評価」との相関関係に当てはめてもよい。また、数値評価を得る場合、例えば、対象者の「(B)口唇角層の厚さ」を、前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」と「口唇角層の水分量」と「口唇荒れ評価」との関連性に基づき得られた推定モデル又は推定式に当てはめてもよい。
また、本発明における別の好ましい態様として、本発明の評価方法は、判別工程を含み、当該判別工程として、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇角層細胞の厚さの値を、予め設定されている口唇角層細胞の厚さの評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを判別することが好適である。
本発明の口唇荒れの判別工程では、前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」が高いほど、口唇荒れが「強い」と判別することができる。このため、好適な態様として、予め設定されている口唇角層細胞の厚さを、好適には0.80以上と設定することで、精度よく口唇の荒れが認められると判別することができる。さらに、予め設定する「(B)口唇角層細胞の厚さ」の基準値を、例えば、0.82以上、0.84以上又は0.86以上などと高く設定することで、口唇荒れが「強い」を精度よく判別することもできる。
さらに、本発明の評価方法は、解析方法にて対象者の口唇角層細胞の厚さの値を解析する解析工程、及び、当該解析結果である対象者の「(B)口唇角層細胞の厚さ」を、予め設定されている「(B)口唇角層細胞の厚さ」の評価基準と対比し、前記対象者の口唇荒れを判別する判別工程を含むことが好適である。
さらに、本発明の評価方法は、対象者の口唇から口唇角層を採取する採取工程を含み、前記採取工程、前記解析工程及び前記判別工程を含むことが、よりさらに好適である。当該採取として、ストリッピング方法による採取が、低侵襲的の観点から、より好適である。
1-5.口唇状態を評価するための推定モデル又は推定式
本発明の口唇状態(好適には口唇荒れ)を評価するための推定モデル又は推定式(以下、「口唇状態評価の推定モデル又は推定式」ともいう)は、公知の統計学的処理により得ることができる。例えば、以下の方法により求めることができる。この口唇状態評価の推定モデル又は推定式を得る際に、後記〔実施例〕のように被験者を用いて行うことが好ましく、当該被験者は、想定する対象者に応じて、老若男女、人種などを適宜設定してもよい。
被験者群における、口唇角層の水分量測定装置を用いて、この実測の評価値又は測定値(以下、「実測値」ともいう)を得る。被験者群における被験者人数は、特に限定されない。被験者に対する口唇角層の水分量測定は、後記〔実施例〕を参照にして行うことができる。
また、被験者群において、解析方法を用いて解析される「(A)流動相の出現割合」、「(B)口唇角層細胞の厚さ」の各値を得ることができる。
そして、被験者ごとに、「(A)流動相の出現割合」、「(B)口唇角層の厚さ」の各値(説明変数)と、口唇角層の水分量(目的変数)との関係を、スコア化(例えば、xy座標)することができる。例えば、「(A)流動相の出現割合」と口唇角層の水分量との関係、「(B)口唇角層細胞の厚さ」と口唇角層の水分量との関係が挙げられ、これらから1種又は2種以上を選択することができる。
なお、口唇角層の水分量(説明変数)と口唇状態の評価(目的変数)との関係は、被験者から得てもよいし、公知の文献などから採用してもよい。例えば、非特許文献2(香粧会誌Vol.13,No.2(1989)p64-68)に記載されている、目視観察による5段階(1点(正常)~5点(悪い状態))の口唇荒れ評価グレード(官能評価試験)、及び、口唇角層の水分量と口唇状態の評価の回帰式を採用することができる。
本発明においては、被験者群を、目的変数と説明変数にてスコア化した後に、これらの相関関係を求め、この相関関係に基づいて、口唇状態評価の推定モデル又は推定式を立てることが好ましい。また、口唇状態評価の推定モデル又は推定式は、回帰分析にて求められた回帰式であることが好適である。
このように、本発明では、被験者群から得られた各実測値のデータに基づき、口唇状態評価の推定モデル又は推定式を立てることができ、当該推定モデル又は推定式はさらなる実測値のデータを追加して再構築してもよい。
また、実測値のデータとして、被験者の過去の実測値であってもよく、文献などの過去の知見を用いてもよく、又は、別の被験者の実測値や新たな実測値を用いてもよい。
これにより、本発明で用いる口唇状態評価(好適には口唇荒れ評価)の推定モデル又は推定式は、対象者の口唇状態(好適には口唇荒れ)の評価を、より客観的に、より精度よく、数値化し、推定することができる。
本発明で用いる口唇状態評価の推定モデル又は推定式を得る際に使用する分析として、例えば判別分析(線形判別分析、二次判別分析、混合判別分析等)、主成分分析、因子分析、数量化理論(1~3類)、回帰分析(MLR、PLS、PCR、ロジスティック)、多次元尺度法、教師ありクラスター、ニューラルネット、アンサンブル学習等、が例示できる。これらの中から、非線形的手法ではない、回帰分析(単回帰分析、重回帰分析)、判別分析及び数量化理論1類がより好ましい。また推定式の精度を確保するために説明変数の取捨選択を行うことがより好ましい。かような解析方法のソフトウェアは市販品(例えば、SPSS社製、SAS Institute社製及びMathLab社製等)或いはフリーソフトを用いることができる。
なお、本発明の評価方法では、下記「2.」「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
2.口唇状態の予防、治療、又は改善用の被験物質の探索方法
本発明は、別の側面として、前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を指標とする口唇状態の評価方法を用いることを特徴とする、口唇状態(好適には口唇荒れ)の予防、治療又は改善に使用するための被験物質の探索方法を提供することができる。これにより、被験物質を含む予防、治療もしくは改善用の組成物を提供したり、予防、治療もしくは改善用の組成物への被験物質の使用、又は予防、治療もしくは改善用組成物を製造するための被験物質の使用を提供したりすることもできる。なお、評価対象部位として、口唇用化粧料を使用し得る部位が好ましい。
このとき、被験物質を口唇に対して使用する前の対象者の口唇状態と、使用した後の対象者の口唇状態とを対比することが好適である。同一の対象者が好ましい。これにより、口唇状態に対する被験物質の性質を判定することができる。例えば、被験物質の使用によって、対象者の口唇状態の評価が良くなった場合には、被験物質を、口唇荒れの予防、治療、又は改善用とすることができる。また、被験物質の使用量、使用期間、1日当たりの使用回数、連続的又は断続的などは、適宜設定することができる。当該被験物質は、被験物質を含む組成物であってもよい。
前記使用として、塗布、投与、又は摂取のいずれでもよいが、塗布が好ましい。
本発明の探索方法における好適な態様として、
使用前の口唇状態及び使用後の口唇状態を、前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」を指標とする口唇状態の評価方法を用いて評価する評価工程と、
使用前の評価と使用後の評価とを対比し、被験物質の性質を判定する判定工程と、を含むことが、好適である。この判定工程により、対象者に対して、被験物質が、口唇荒れの予防、治療、又は改善用として、適しているかどうかを判定することができる。
本発明の探索方法における評価工程において、口唇状態評価の推定モデル又は推定式を評価基準として用いてもよい。
本発明の探索方法として、評価工程の前に、本発明における口唇荒れの予防、治療、又は改善用の被験物質の探索方法の一例として、対象者の口唇に対して被験物質を所定期間使用する使用工程を含んでもよい。
なお、本明細書において、「予防」とは、適用対象における症状若しくは疾患の発症の防止若しくは発症の遅延、又は適用対象における症状若しくは疾患の発症の危険性を低下させること等をいう。本明細書において、「改善」とは、適用対象における疾患、症状又は状態の好転又は維持;悪化の防止又は遅延;進行の逆転、防止又は遅延をいう。
なお、本発明の探索方法では、上記「1.」、下記「3.」などの構成と重複する、口唇角層、電子線回折、推定式などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
3.その他の実施形態
本実施形態では、上記「1.」「2.」などの構成と重複する、口唇角層、電子線回折、推定式などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「2.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
本発明に係る実施形態を、上述した方法(例えば、本発明の評価方法、本発明の探索方法)を実施するための装置又は当該装置に備える制御部(当該制御部はCPUなどを含む)によって実現させることも可能であり、これら装置又は制御部を提供することができる。当該実施するための装置として、例えば、コンピュータ、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレットPC、PLC、サーバ、クラウドサービスなどが挙げられる。さらに、前記実施するための装置などには、タッチパネルやキーボードなどの入力部、各部間の送受信部やネットワーク、ネットワークアクセス部などの通信部、タッチパネルやディスプレイなどの表示部などを適宜備えてもよい。これにより、本実施形態を実施することができる。
また、本実施形態を、記憶媒体(不揮発性メモリ(USBメモリなど)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、CD、DVD、ブルーレイなど)などを備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、前記制御部によって実現させることも可能である。本実施形態の方法をプログラムとして提供することができる。本実施形態の方法を記憶した記憶媒体を提供することができる。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。
また、前記制御部は、本発明の評価方法における口唇荒れの判別工程、又は被験物質の探索方法における被験物質の判定工程を適宜行うことができ、さらに対象者の口唇角層の解析工程を適宜行ってもよい。当該解析工程は、解析装置で対象者の口唇角層の解析を行った後に、当該解析データを制御部に送信してもよい。また、記憶媒体は、解析データ、評価基準データなどの各種データを記憶することができ、各種データを適宜、制御部に送信することができる。
また、前記制御部、前記記憶媒体又は前記プログラムなどを含む、本発明の口唇荒れ評価方法又は組成物の探索方法の実施を制御するように構成されている、口唇荒れ評価システム又は組成物の検索システムなどのシステムなどを提供することができる。これにより、本実施形態を実施することができる。
また、本実施形態での一例として、コンピュータに、前記(A)を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の値を、予め設定されている口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを評価する機能と、を含む、口唇荒れ評価を実現させるプログラムを提供することができ、これに限定されない。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。
また、本実施形態での一例として、コンピュータに、前記(B)を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇角層細胞の厚さを、予め設定されている口唇角層細胞の厚さの評価基準と対比し、対象者の口唇荒れを評価する機能と、を含む、口唇荒れ評価を実現させるプログラムを提供することができ、これに限定されない。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。
本実施形態において、本実施形態の評価又は探索を行うための各ステップを、予め記憶部に記憶しておくことが好適である。
また、本発明の各ステップを実行することによって、対象者の口唇状態を推定することができ、この推定値は、口唇状態(好適には口唇荒れ)の評価値として使用することができる。
例えば、対象者における前記「(A)流動相の出現割合」及び/又は前記「(B)口唇角層細胞の厚さ」の値を求め、当該値を、本実施形態の予測モデル又は推定式に適用することにより、対象者の口唇状態を評価することができる。これにより、対象者の口唇状態を、より精度高く、より客観的に評価することができ、また、本実施形態は、医師が行わなくとも、オペレータ、評価者、又は測定機器によって、評価することができる。
なお、本実施形態は、非治療目的に使用してもよいし、その評価結果を最終的に治療目的に役立ててもよい。本発明は、医師の直接的な医療行為ではなく、例えば、口唇状態(好適には口唇荒れ)の診断を補助する方法等に適用することが可能である。ここで、「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念であり、非治療目的とは、例えば、美容目的又はメイクアップ目的等が挙げられる。
以下の実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
<被験者>
被験者14名(男女を含む)、22~34歳、男女(日本人:モンゴロイド人種)。
被験者は、メイク落とし洗顔料を使用し、口唇及びその周辺部を洗浄した。その後、臨床試験室(温度21±1°C、湿度50±5%)で20分以上馴化後に、口唇に関する以下の各試験(水分量測定試験、経皮水分蒸散量測定試験、電子線回折法を用いた試験)を実施した。
<水分量測定>
使用機器:Skin Moisture Sensor MY-808S(Scalar corporation社製)
測定部位:下唇中央部
評価方法:被験者1名当たり、3回測定し、3回の測定値の平均値を採用する。
<水分蒸散量測定>
使用機器:VAPOMETER(Delfin社製)
測定部位:下唇中央部
評価方法:被験者1名当たり、5回測定し、5回の測定値の平均値を採用する。
<電子線回折法を用いた試験>
洗浄後の各被験者の口唇の表面に、下記のグリッドストリッピング方法にて、口唇の角層をTHIN BARグリッドに採取した。このグリッドに採取した口唇角層を光学顕微鏡により観察し、口唇角層が採取されていることを確認した。
<グリッドストリッピング方法>
使用テープ :アズフロンテープ(太洋社製)(シリコン系感圧粘着剤を塗布したPTFEテープ)最大で幅13mm×長さ13mm
使用グリッド :THIN BARグリッド(日新EM社製) 直径3mm
採取方法:アズフロンテープを採取部位(下唇中央部)に接触させてアズフロンテープを用いて口唇角層をストリッピングする。ストリッピング後、ストリッピング後の採取部位に、粘着剤を塗布したTHIN BARグリッドの粘着剤部分を押し当ててストリッピングを行う。これによりTHIN BARグリッドの粘着剤部分に口唇角層を採取する。メッシュへ採取した角層を光学顕微鏡により観察し、角層細胞が採取されているかどうかを確認する。
なお、ストリッピング前に、THIN BARグリッドの片面には、粘着剤を塗布して、粘着剤付きのTHIN BARグリッドを作製しておく。
<電子顕微鏡>
透過型電子顕微鏡:JEM-1400(日本電子社製)
検出器:CCDカメラ(Side-mounted TEM CCD camera Gatan ES500W Erlangshen)
加速電圧100kV
<電子線回折法>
グリッドストリッピング方法により中空状態で保持された角層を電子顕微鏡内に挿入し、加速電圧を100kV、装置設定上のカメラ長を150cmにして、角層由来の電子線回折像を取得した。角層に対する電子線のビームダメージの影響を抑制するため、単位時間、単位面積あたりの電子線の照射量を1e/nm-2/s程度に、露光時間を0.5秒に設定して実験を実施した。
被験者1人、1部位あたり15以上の回折像を取得した。
<電子線回折法による流動相の回折像の出現割合の算出方法>
上記<流動相の解析像の出現割合(A)の算出方法>に基づき、電子線回折法による流動相の回折像の出現割合を求めた。
より具体的には、取得した1被験者の全回折像の枚数(Na)のうち、流動相の回折像の枚数(Nf)を目視にて計測し、下記式により、1被験者[Af]を算出した。流動相の回折像であるかどうかは、外周部分にあるリング像を指標とし、このリング像が見られない場合に、流動相の回折像と判別した。他の被験者も同様にして流動相の回折像の出現割合を求めた。
[Af:流動相の回折像の出現割合]=
[Nf:流動相の回折像の枚数]/[Na:取得した全回折像の枚数]
全被験者から得られた、流動相の回折像の出現割合の値と、口唇角層の水分量からピアソンの積率相関係数R値を算出し、さらに経皮水分蒸散量との相関係数も算出した。これらの結果を表1に示す。
<電子線回折法による口唇角層細胞の厚さ(H/H)の算出方法>
上記<口唇角層細胞の厚さ(H/H)の算出方法>に基づき、電子線回折法による口唇角層細胞の厚さ(H/H)を求めた。
より具体的には、口唇角層細胞の厚さの指標を得るために、取得した1被験者の全回折像を、方位角方向に積算して、逆光子空間における回折強度分布プロファイルを作成し、得られたプロファイルの強度から角層の厚さの指標(H/H)を求めた。他の被験者も同様にして口唇角層細胞の厚さ(H/H)を求めた。
全被験者から得られた、口唇角層細胞の厚さ(H/H)値と、口唇角層の水分量と、からピアソンの積率相関係数R値を算出し、さらに経皮水分蒸散量との相関係数も算出した。これらの結果を表1に示す。
「流動相を示す回折像の出現割合」及び「口唇角層細胞の厚さ」ともに、口唇角層の水分量と相関関係が認められた。一方、経皮水分蒸散量との相関関係は弱い又は認められなかった。
そして、流動相の出現割合のAを説明変数x、水分量を目的変数yとしたときに、以下の回帰直線1が得られた。
回帰直線1:y=-3.868x+27.296
例えば、A=0.833のとき、水分量が23.92となった。このときの被験者の実測値A=0.833のときの口唇角層の水分量の実測値は22.6であった。
また、口唇角層細胞の厚さのH/Hを説明変数x、水分量を目的変数yとしたときに、以下の回帰直線2が得られた。
回帰直線2:y=-67.967x+82.727
例えば、H/H1-=0.865のとき、水分量が23.92となった。このときの実測値(H/H)0.865のときの口唇角層の水分量の実測値は22.6であった。
ここで、非特許文献2(香粧会誌Vol.13,No.2(1989)p64-68)の表1には、口唇荒れの評価として、グレード1:Feature/正常(surface smooth, no peeling)、グレード2:Feature/微細鱗屑(カサツキ)(slight dryness with small scales)、グレード3:Feature/落屑中程度(皮むけ)(Moderate dryness with numerous)、グレード4:Feature/落屑顕著(皮むけ)(Exterme dryness with prominet)、グレード5:Feature/亀裂(切れ)(Rhagades and scales)の5段階評価が記載されている。
また、非特許文献2の表3には、口唇荒れの評価と口唇角層の水分量とに相関関係があるとされており、口唇の荒れの程度が高いほど、口唇表面の水分量が低い傾向にあると記載されている。口唇荒れ評価(x)と口唇角層の水分量(y)との回帰式(HS)は、y=-0.012x+2.515と記載されている。
さらに、流動相の出現割合Aから回帰直線1から算出された口唇角層の水分量23.92と、口唇角層細胞の厚さから回帰直線2から算出された口唇角層の水分量23.92を、非特許文献2の表3に記載の回帰式(HS)のxに、それぞれに代入した。
その結果、それぞれy=2.23であった。さらに、非特許文献2の表1に記載の荒れ評価グレードからすると、それぞれ、「かさつき(2点)」がある、と判別することができた。
このことから、この試験とは別の被験者(すなわち、対象者)の口唇から採取された口唇を解析して得られた流動相の回折像の出現割合及び/又は口唇角層細胞の厚さを指標とし、この指標に基づき、対象者の口唇状態(好適には口唇荒れ)を評価することができることが確認できた。

Claims (5)

  1. (A)口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合を指標とする、口唇荒れの評価方法。
  2. 前記(A)が、広角X線回折法及び/又は電子線回折法を用いて解析されたものである、請求項1に記載の口唇荒れの評価方法。
  3. 前記(A)が、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られたものである、請求項1又は2に記載の口唇荒れの評価方法。
  4. 前記採取が、ストリッピング方法によるものである、請求項3に記載の口唇荒れの評価方法。
  5. 前記(A)を指標とし、対象者の口唇から採取された角層を解析して得られた、口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の値を、予め設定されている口唇の角層中の細胞間脂質充填構造における流動相の出現割合の評価基準に対して、高いことは口唇の状態が悪いことを示し、低いことは口唇の状態が良いことを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の口唇荒れの評価方法。
JP2020182278A 2020-10-30 2020-10-30 口唇荒れの評価方法 Active JP7501871B2 (ja)

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