JP7510046B2 - クラッド材 - Google Patents
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Description
前記オーステナイト系ステンレス鋼板の前記アルミニウム合金板との界面に近接する表層部において、マルテンサイトの面積率が5.0%以下、かつ、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が8.0以上であり、
前記アルミニウム合金板の前記オーステナイト系ステンレス鋼板との界面に近接する表層部において、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が4.0以上である、
クラッド材。」を要旨とする。
本発明のクラッド材は、オーステナイト系ステンレス鋼板層と、アルミニウム合金板層とを備えるクラッド材であり、各層の界面に近接する表層部における{110}<112>方位の集積度を高めることが重要である。
本発明のクラッド材を構成するオーステナイト系ステンレス鋼板は、所定の金属組織を備える。以下、オーステナイト系ステンレス鋼板の金属組織、化学組成、製造方法の順で説明する。
上述のように、優れた剥離強度を得るためには、オーステナイト系ステンレス鋼板のアルミニウム合金板との接触箇所(界面)に近接する表層部における金属組織の制御が重要となる。具体的には、鋼板の表層部におけるマルテンサイトの面積率、オーステナイト粒の平均粒径および{110}<112>方位のX線ランダム強度比を、以下に示す範囲に調整する必要がある。それぞれの規定について詳しく説明する。
鋼板の表層部にマルテンサイトが多いと拡散接合またはレーザー加工などで熱が加えられる際に、オーステナイト相へ変態し、鋼板の平坦度を低下させることで剥離強度を低下させる。加えて、オーステナイト相の面積率が低減することから{110}<112>方位粒の組織全体に占める分率も低下してしまう。そのため、鋼板の表層部におけるマルテンサイトの面積率は、5.0%以下とする。
{110}<112>方位は、オーステナイトの圧延加工集合組織の代表的な主方位である。鋼板の表層部(接合面)での同方位への集積を8.0以上とすることで、高い剥離強度が確保される。このため、この方位のX線ランダム強度比の下限を8.0とする。{110}<112>方位のX線ランダム強度比は8.5以上とすることが好ましく、9.0以上とすることがより好ましい。上限は特に設けないが、X線ランダム強度比が20.0を超えると、隣接する結晶粒との方位差15°以上を満足できなくなり、有効な結晶粒界として作用しなくなることから、この値を上限とすることが望ましい。
表層部のオーステナイト粒の平均粒径を5μm以下とすることにより、単位面積当たりの結晶粒数が増加し、{110}<112>方位粒の存在頻度が平均化されるため、剥離強度が向上すると考えられる。したがって、本発明では、鋼板の表層部におけるオーステナイト粒の平均粒径の上限を5μmとすることが好ましい。また、エッチング加工等を行う場合、加工面が平滑になるというメリットもある。
D=(2S/π)0.5 ・・・(iii)
クラッド材を構成するオーステナイト系ステンレス鋼板については、上記の金属組織を有するものであれば、化学組成は特に限定しない。例えば、質量%で、
C:0.005~0.15%、
Si:1.0%以下、
Mn:1.5%以下、
Cr:15.0~20.0%、
Ni:6.0~15.0%、
N:0.005~0.15%、
Nb:0.01~0.50%、
Mo:0~2.0%、
Cu:0~1.5%、
V:0~0.15%、
Ti:0~0.30%、
B:0~0.010%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で求められるMd30値が20~60℃である化学組成が例示される。
Md30値=497-462×(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-20×(Ni+Cu)-18.7Mo ・・・(i)
但し、上記式中の元素記号は、各元素の鋼中の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。
Cは、安価に鋼板の強度を高める強力な固溶強化元素である。また、Nbと結合して微細なNb化合物を析出し、再結晶および粒成長を抑制する効果を有する。しかし、Cは強力なオーステナイト安定化元素でもあり、その含有量が過剰であると、結晶粒微細化に必要な加工誘起変態が起こらなくなる。また、結晶粒微細化を目的とする低温での最終焼鈍時に粗大なCr炭化物が結晶粒界に析出し、Cr欠乏相が形成するため、ステンレス鋼として必要な耐食性が維持できない。したがって、C含有量は0.005~0.15%とするのがよい。C含有量は0.01%以上であるのが好ましい。また、C含有量は0.13%以下であるのが好ましく、0.12%以下であるのがより好ましい。
Siは、溶製時の脱酸材として使用され、鋼の強化にも寄与する。しかし、Si含有量が過剰であると、粗大な酸化物を形成する可能性が高く、加工性を低下させる。したがって、Si含有量は1.0%以下とするのがよい。Si含有量は0.6%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Si含有量は0.1%以上であるのが好ましい。
Mnは、熱間加工時の脆性破壊の防止と鋼の強化に寄与する。しかし、Mnは、強力なオーステナイト生成元素であるため、Mn含有量が過剰であると、冷間圧延時に生成する加工誘起マルテンサイトが少なくなり、最終焼鈍で微細結晶粒を得ることができなくなる。したがって、Mn含有量は1.5%以下とするのがよい。Mn含有量は1.2%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Mn含有量は0.1%以上であるのが好ましい。
Crは、ステンレス鋼の基本元素であり、鋼材表面に酸化物層を形成し、耐食性を高める作用を奏する。しかし、Crは、強力なフェライト安定化元素であるため、Cr含有量が過剰であると、δフェライトが生成する。このδフェライトは素材の熱間加工性を劣化させる。したがって、Cr含有量は15.0~20.0%とするのがよい。Cr含有量は16.0%以上であるのが好ましく、19.0%以下であるのが好ましい。
Niは、オーステナイト生成元素であり、室温でオーステナイト相を安定化させる作用を有する元素である。しかし、Ni含有量が過剰であると、オーステナイト相が安定化し過ぎて、冷間圧延時の加工誘起マルテンサイト変態が起こらなくなる。さらに、Niは高価な元素であり、含有量の過度な増大はコストの大幅な上昇を招く。したがって、Ni含有量は6.0~15.0%とするのがよい。Ni含有量は6.5%以上であるのが好ましい。また、Ni含有量は11.0%以下であるのが好ましく、9.0%以下であるのがより好ましい。
Nは、Cと同様に、強力な固溶強化元素であり、鋼の強度向上に寄与する。また、Nbと結合して微細なNb化合物として熱間圧延時または焼鈍時に析出し、再結晶および粒成長を抑制する効果がある。しかし、N含有量が過剰であり、鋼板の製造過程で多数かつ粗大な窒化物が生成した場合、熱間加工性を顕著に劣化させ、製造を困難にする。また、Cと同様に、強力なオーステナイト安定化元素でもあり、N含有量が過剰であると、結晶粒微細化に必要な加工誘起変態が起こらなくなる。したがって、N含有量は0.005~0.15%とするのがよい。N含有量は0.01%以上であるのが好ましい。また、N含有量は0.13%以下であるのが好ましく、0.12%以下であるのがより好ましい。
Nbは、焼鈍時に微細な炭化物または窒化物を生成し、ピン止め効果により結晶の粒成長を抑制することから、素材の結晶粒の微細化に有効な元素である。また、Nbは固溶して、または炭窒化物として熱間加工中の再結晶を抑制することでオーステナイトの加工集合組織を発達させる。しかし、Nb含有量が過剰であると、再結晶を抑制し、焼鈍後に未再結晶部が多量に残存する他、熱間加工性も劣化させる。また、Nbは極めて高価な元素であり、含有量の過度な増大はコストの大幅な上昇を招く。したがって、Nb含有量は0.01~0.50%とするのがよい。Nb含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.04%以上であるのがより好ましい。また、Nb含有量は0.30%以下であるのが好ましく、0.20%以下であるのがより好ましい。
Moは、材料の耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Moは極めて高価であり、含有量の過度な増大はコストの大幅な上昇を招く。したがって、Mo含有量は2.0%以下とするのがよい。Mo含有量は1.0%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Mo含有量は0.1%以上であるのが好ましい。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト相の安定度の調整に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Cu含有量が過剰であると、製造過程で粒界に偏析する。このような粒界偏析は、熟間加工性を顕著に劣化させ、製造を困難にする。したがって、Cu含有量は1.5%以下とするのがよい。Cu含有量は1.0%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Cu含有量は0.1%以上であるのが好ましい。
Ti:0~0.30%
VおよびTiは、Nbと同様、再結晶を抑制し、望ましい集合組織を強め、結晶粒の微細化に有効な元素であるため、必要に応じてこれらから選択される1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、上記元素を過剰に含有させると、加工性の劣化を招く。したがって、V:0.15%以下、Ti:0.30%以下とするのがよい。一方、上記効果を得るためには、V:0.01%以上およびTi:0.01%以上から選択される1種以上を含有させるのが好ましい。
Bは、粒界を強化する元素であり、熱間加工性の改善に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させると、かえって加工性の劣化を招く。したがって、B含有量は0.010%以下とするのがよい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.001%以上であるのが好ましい。
本発明が対象とする準安定オーステナイト系ステンレス鋼では、冷間圧延時におけるオーステナイトから加工誘起マルテンサイト(マルテンサイト)への変態と、その後の熱処理における加工誘起マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態を活用することにより、微細結晶粒が得られる。
Md30値=497-462×(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-20×(Ni+Cu)-18.7Mo ・・・(i)
但し、上記式中の元素記号は、各元素の鋼中の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法については特に制限は設けないが、以下に示す方法により製造することが可能である。本発明の製造方法では、同鋼を常法により溶製、鋳造し、熱間圧延に供する鋼片を得る。この鋼片は、鋼塊を鍛造または圧延したものでもよいが、生産性の観点から、連続鋳造により鋼片を製造することが好ましい。また、薄スラブキャスター等を用いて製造してもよい。
通常、鋼片は鋳造後、冷却し、熱間圧延を行うために、再度、加熱する。この場合、熱間圧延を行う際の鋼片の加熱温度は1150℃以上とする。これは、加熱温度が1150℃未満となると、粗大なNb炭窒化物が溶け残り、熱間加工中の割れの起点となる可能性があると共に、熱延中の集合組織のランダム化を促進(望ましい集合組織の形成が抑制)するためである。加熱温度は1170℃以上とすることが望ましい。加熱温度の上限は特に規定しないが、1400℃超に加熱することは生産性の低下に繋がると共に、通常の圧延では発達しない方位の成長を招くおそれがあることから、この温度を上限とすることが望ましい。なお、溶製した鋼を鋳造後、直ちに熱間圧延を行う連続鋳造-直接圧延(CC-DR)のようなプロセスを採用してもよい。
本発明の鋼板の製造方法においては、880~1000℃の温度域で熱間圧延を終了する。終了温度が880℃未満で圧延が行われると、変形抵抗が高くなりすぎて生産性を著しく阻害するとともに、熱延板の表層部の剪断層の発達が促される。終了温度は900℃以上とすることが望ましい。一方、熱間圧延の終了温度が1000℃超となるとすべての圧延パスで再結晶が生じることで熱延板の集合組織がランダム化し、表層部での{110}<112>が低減する。終了温度は980℃以下とすることが望ましく、950℃以下とすることがより望ましい。
L=(√(R×(tin-tout)))/((2tout+tin)/3) ・・・(ii)
但し、式中における記号の意味は以下のとおりである。
L:各パスでの形状比
R:各パスでのロール半径(mm)
tin:各パスでの入側板厚(mm)
tout:各パスでの出側板厚(mm)
上記の条件で熱間圧延を終了した鋼板を、900℃以下の温度範囲で巻き取る。巻取温度が900℃超となると巻取り中に再結晶が進行し、望ましい集合組織が弱くなる。巻取温度は880℃以下とすることが望ましく、850℃以下とすることがより望ましい。巻取温度の下限は特に規定しないが、550℃未満にすることは特段の効果がないばかりかコイルの強度を高め、巻き戻しを困難にすることからこの温度を下限とすることが望ましい。
最終冷延の圧延率が40%未満の場合、冷間圧延中のマルテンサイト変態が十分に起こらず、その後の焼鈍中の逆変態による細粒化が起こらない。さらに、加工集合組織が形成されないことから{110}<112>が発達しない。一方、圧延率が90%超となると通常の圧延と異なる方位が発達し{110}<112>が低減するのに加え、装置への負荷も極めて高くなる。したがって、圧延率を40~90%とする。圧延率は45%以上とすることが望ましく、50%以上とすることがより望ましい。また、圧延率は85%以下とすることが望ましく、80%以下とすることがより望ましい。
最終焼鈍到達温度が600℃未満では逆変態が生じず、粒径5μm以下を達成することができない。一方、最終焼鈍の到達温度を1000℃超とすると、粒成長を促し、粒径を粗大化させるとともに、{110}<112>以外の方位が発達する。したがって、最終焼鈍到達温度は600~1000℃とする。最終焼鈍到達温度は650℃以上とすることが望ましく、700℃以上とすることがより望ましい。また、最終焼鈍到達温度は980℃以下とすることが望ましく、970℃以下とすることがより望ましい。
本発明のクラッド材を構成するアルミニウム合金板は、所定の金属組織を備える。以下、アルミニウム合金板の金属組織、化学組成、製造方法の順で説明する。
{110}<112>方位のX線ランダム強度比:4.0以上
アルミニウム合金板のオーステナイト系ステンレス鋼板との界面に近接する表層部において、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が4.0以上であることが必要である。このアルミニウム合金板の表層部は、オーステナイト系ステンレス鋼板の表層部と同じ金属面({110}<112>方位)を多く備えるため、高い剥離強度を確保することができる。
アルミニウム合金板の化学組成については、上記の金属組織を有するものであれば、化学組成は特に限定しない。ただし、析出強化型アルミニウム合金であれば、{110}<112>方位のX線ランダム強度比を大きくしやすい。析出強化型アルミニウム合金としては、例えば、2000系アルミニウム合金(Cu等の元素を添加したアルミニウム合金)、6000系アルミニウム合金(Mg、Si等の元素を添加したアルミニウム合金)などが挙げられる。
アルミニウム合金板の製造方法については特に制約はないが、強い{110}<112>方位を発達させるためには60%以上の冷間圧延を施すことが望ましい。また、表層にて{110}<112>を発達させる観点では冷間圧延を実施する際のロール径は100mm以上が望ましい。
本発明のクラッド材は、上記の条件を備えるオーステナイト系ステンレス鋼板およびアルミニウム合金板を積層し、圧延または圧着すること、さらには熱処理を行うことにより、拡散接合を生じさせて製造することができる。各層の界面に酸化物が形成され接合強度に悪影響を及ぼす場合があるので、圧延または圧着および熱処理は、真空中などの各層の表面に酸化物が形成されにくい条件で行うのが良い。また、圧延または圧着および熱処理は、下記の条件を満たすのが好ましい。
圧着の際は20~200MPaの圧力を負荷するのがよい。圧力が20MPa未満では十分な剥離強度が得られない。一方200MPa超の圧力を負荷しても特段の効果が得られずコスト増を招くことからこの値を上限とすることが望ましい。
Claims (4)
- オーステナイト系ステンレス鋼板と、アルミニウム合金板とのクラッド材であって、
前記オーステナイト系ステンレス鋼板が、Nb:0.01~0.50%を含み、下記式から算出されるMd30値が20~60℃であり、
前記オーステナイト系ステンレス鋼板の前記アルミニウム合金板との界面から15~20μmの表層部において、マルテンサイトの面積率が5.0%以下、かつ、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が8.0以上であり、
前記アルミニウム合金板の前記オーステナイト系ステンレス鋼板との界面から15~20μmの表層部において、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が4.0以上である、
クラッド材。
Md30値=497-462×(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-20×(Ni+Cu)-18.7Mo
但し、上記式中の元素記号は、各元素の鋼中の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0を代入するものとする。 - 前記オーステナイト系ステンレス鋼板の化学組成が、
質量%で、
C:0.005~0.15%、
Si:1.0%以下、
Mn:1.5%以下、
Cr:15.0~20.0%、
Ni:6.0~15.0%、
N:0.005~0.15%、
Nb:0.01~0.50%、
Mo:0~2.0%、
Cu:0~1.5%、
V:0~0.15%、
Ti:0~0.30%、
B:0~0.010%、
残部:Feおよび不純物である、
請求項1に記載のクラッド材。 - 前記クラッド材の総厚さが0.6mm以下である、
請求項1または2に記載のクラッド材。 - オーステナイト系ステンレス鋼板と、アルミニウム合金板とのクラッド材であって、
前記オーステナイト系ステンレス鋼板の前記アルミニウム合金板との界面から15~20μmの表層部において、マルテンサイトの面積率が5.0%以下、かつ、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が8.0以上であり、
前記アルミニウム合金板の前記オーステナイト系ステンレス鋼板との界面から15~20μmの表層部において、{110}<112>方位のX線ランダム強度比が4.0以上であり、
JIS K 6854:1999に記載のT字剥離試験法に従って、幅10mm、長さ150mmの剥離試験片を用いて、180mm/分の引張速度で実施した剥離強度が、20MPa以上である、
クラッド材。
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