JP7518643B2 - 果実酒及び果実酒の製造方法 - Google Patents

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本発明は、果実酒及び果実酒の製造方法に関し、特に、シードル等の果実酒及びその製造方法に関する。
搾汁後のリンゴ果汁を発酵させた果実酒(例:シードル)は、フレッシュですっきりした味わいが特徴である。
シードル等の果実酒に関する技術として、特許文献1(特開2018-186794号公報)には、甘味及び生食用果実風味が低減され、アルコール飲料である果実酒らしい複雑な香味に優れた酸化防止剤無添加果実酒を提供することを課題とした技術が開示されている。特許文献1には、この課題を解決するものとして、オークラクトン及びオイゲノールからなる群から選択される少なくとも一種の樽香気成分を10ppb以上の濃度で含有する点が記載されている。
特開2018-186794号公報
シードル等の果実由来の果実酒において、新たな風味を付与することができれば、一定の需要を喚起できると考えられる。そこで、本発明の課題は、新たな風味を付与することのできる果実酒及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は以下の事項を含む。
[1]果汁を80℃以上、100℃以下で10分以上、保持する工程と、前記保持する工程の後に、前記果汁を発酵させる工程と、を含む、β-ダマセノンを5ppb以上の量で含む果実酒の製造方法。
[2]前記保持する工程が、前記果汁を、90℃以上100℃以下で、30分以上保持する工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]前記果実酒が、β-ダマセノンを、5ppb以上、30ppb以下の量で含む、[1]又は[2]記載の方法。
[4]前記果汁が、リンゴ果汁である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記果実酒が、発泡性である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記保持する工程の後、前記果汁を希釈することなく、前記発酵する工程が行われる、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]果汁を80℃以上、100℃以下で10分以上保持する工程と、前記保持する工程の後に、前記果汁を発酵させる工程とを含む、β-ダマセノンを5ppb以上の量で含む果実酒のコンポート様風味付与方法。
[8]前記果汁が、リンゴ果汁である、[7]に記載の方法。
[9]β-ダマセノン濃度が、5ppb以上、30ppb以下である果実酒。
[10]リンゴ由来の飲料である、[9]に記載の果実酒。
[11]発泡性である、[9]又は[10]に記載の果実酒。
本発明によれば、新たな風味を付与することのできる果実酒及びその製造方法が提供される。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態は、果汁を発酵して得られる果実酒に関する。
本実施形態に係る果実酒は、以下に詳述する特定の条件で果汁を保持する工程と、加熱後の果汁を発酵させる工程とを有する方法により、得ることができる。特定の条件で果汁を保持する工程を備えることにより、果実酒にこれまでにない風味を付与することができる。
果実酒の原料となる果実としては、特に限定されるものではないが、リンゴ、ブドウ、ウメ、イチゴ、モモ、及び洋ナシ等が挙げられる。これらの中でも、リンゴが好ましい。すなわち、果汁としては、リンゴ果汁を用いることが好ましい。リンゴ果汁を特定の条件で保持することにより、コンポート様の風味が付与され、これまでにない風味を有する果実酒が得られる。
なお、コンポートとは、果実を水や薄い砂糖水で煮込んだ、ヨーロッパの伝統的な果実の保存食である。ジャムに比べ、果実自体の風味や食感が残っており、かつ糖度が低い。但し(リンゴ)ジャムや(アップル)パイに近い風味を有する。
また、本実施形態に係る果実酒は、発泡性であることが好ましい。より好ましくは、本実施形態に係る果実酒は、シードル(リンゴを原料とした発泡性の果実酒)である。
以下に、本実施形態に係る果実酒の製造方法を詳述する。
まず、リンゴの果実を搾り、生の果汁を準備する。
果汁としては、例えば、Brixが、5~20%のものが用いられる。Brixは、好ましくは、10~16%である。果汁は、搾汁後酵素処理し、固形分をろ過して除去する。
続いて、準備した果汁を、80℃以上、100℃以下で10分以上保持(加熱)する。保持温度が80℃以上であれば、コンポート様の風味が十分に付与された果実酒が得られる。また、保持温度が100℃以下であれば、不快な風味が付与されることもない。保持温度は、好ましくは、90℃以上100℃以下である。
保持工程における加熱時間は、10分以上であればよい。10分以上であれば、コンポート様の風味が十分に付与される。加熱時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上である。
また、保持時間は、好ましくは150分以下、より好ましくは120分以下、更に好ましくは90分以下である。このような範囲内であれば、不快な風味が付与されることもない。
保持工程は、常圧下、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
保持工程の後、果汁を30℃以下(好ましくは8~10℃)にまで冷却する。冷却後、特に希釈などすることなく、酵母を果汁に添加し、約2~4週間アルコール発酵させる。アルコール発酵により、エタノールと炭酸ガスが発生し、発泡性の飲料が得られる。必要に応じて、炭酸ガスを更に果汁に導入し、発泡性を補ってもよい。なお、エタノール濃度は、最終的には、2~5容量%程度になる。
以上により、本実施形態に係る果実酒が得られる。本実施形態によれば、特定の条件で保持した果汁を発酵させることにより、コンポート様の風味が付与された果実酒が得られる。
また、本実施形態によれば、上記の保持工程を経ることによって、果実酒中のβ-ダマセノン濃度が増加する。そして、本発明者の知見によれば、最終的に得られる果実酒中のβ-ダマセノン濃度が5ppb以上になるような条件で保持工程を行った場合、コンポート様の風味が十分に付与される。β-ダマセノン濃度は、好ましくは、5ppb以上30ppb以下である。
すなわち、β-ダマセノン濃度が5ppb以上、好ましくは5~30ppbになるように保持工程を実施することにより、コンポート様の風味が十分に付与された果実酒を得ることができる。また、不快な風味が付与されることもない。
また、本発明は、β-ダマセノンを5ppb以上、好ましくは5~30ppbの濃度で含む果実酒にも関する。β-ダマセノンの濃度は、上述の実施形態で述べたように、特定の保持工程を実施することにより増やすことができるが、他の方法によって増やすこともできる。例えば、製造工程中でβ-ダマセノンを含む香料を添加することにより、所望する量のβ-ダマセノンを果実酒に含有させることもできる。このようにしてβ‐ダマセノン濃度を所定量含有させた果実酒も、コンポート様の風味を有するものになる。
以下、本発明をより詳細に説明するため、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
(例1)
品種「ふじ」由来のリンゴ果汁を準備した。準備したリンゴ果汁(Brix:13.3%)1Lを、メディウムびんに入れ、特に加熱保持などをすることなく、酵母を添加して、8℃で19日、発酵させた。これにより、例1に係る果実酒を得た。なお、アルコール濃度は、3容量%であった。
(例2)
品種「ふじ」由来のリンゴ果汁(Brix:13.3%)を、1L準備し、メディウムびんに入れ、IHヒーターを用い、湯煎により90℃に加熱し、30分間、保持した。保持後、果汁を8℃まで冷却した。冷却後、果汁に酵母を添加し、例1と同様に発酵させた。これにより、例2に係る果実酒を得た。なお、アルコール濃度は、3容量%であった。
(例3)
保持工程における条件を、90℃で60分とした。その他の点は例2と同様にして、例3に係る果実酒を得た。
(例4)
保持工程における条件を、90℃で120分とした。その他の点は例2と同様にして、例4に係る果実酒を得た。
(例5)
保持工程における条件を、60℃に加熱した後、インキュベーターを用いて60分間保持とした。その他の点は例2と同様にして、例5に係る果実酒を得た
(例6)
保持工程において、オートクレーブを用いて果汁を104℃まで加熱した後、60分間保持した。その他の点は例2と同様にして、例6に係る果実酒を得た。
得られた各飲料について、6名のパネルにより、官能評価を行った。また、β-ダマセノン濃度を測定した。
[官能評価]
官能評価については、「コンポート様の風味」、「フレッシュ感(風味及び呈味)」、「美味しさ」、「香り」、及び「味」について評価した。
「コンポート様の風味」及び「フレッシュ感」は、以下の基準で評価を行った。
「コンポート様の風味」
4:非常に強い
3:強い
2:やや強い
1:感じない
「フレッシュ感」
4:非常に強い
3:強い
2:やや強い
1:感じない
「美味しさ」についても、4段階で評価した。数値が大きいほど、美味しいことを示す。「香り」及び「味」については、各パネルからコメントを収集した。
[β-ダマセノン濃度]
β-ダマセノン濃度は、以下の方法により測定した。
攪拌枝吸着抽出法(SBSE法:Stir Bar Sorptive Extraction)を用いた。詳細には、最終製品である果実酒中に、内部標準としてD5-Linalool溶液を20pptになるように添加した。試料を10倍希釈し、希釈サンプル15gを30mL容バイアルに採取した。48μLのPDMS(ポリジメチルシロキサン)でコーティングした攪拌枝(長さ=20mm;Twister(商品名);Gerstel社製)をバイアルに入れ、蓋を締め、40℃で2時間攪拌し、攪拌枝に香気成分を吸着させた。攪拌枝をバイアルから取り出し、水滴を完全に除去後、加熱脱着ユニット(Thermal desorption unit(TDU);Gerstel社製)とプログラマブル温度-蒸発インレット(Programmable temperature-vaporization inlet;CIS4;Gerstel社製)を装備したGC-MSに挿入した。
GC-MS条件は、以下の通りである。
ガスクロマトグラフ:アジレント・テクノロジー社製6890
検出器:MSD5973N四重極マススペクトル(Agilent Technologies社製)
カラム:DB-WAX capillary column(長さ:20m、内径:0.18mm、膜厚:0.18μm、Agilent Technologies社製)
注入口:250℃ パルス化スプリットレスインジェクションモード(pulsed splitless injection mode)
注入量:1μL
キャリアガス:ヘリウム(1mL/min).
カラム温度設定:40℃(5分保持)-(3℃/min)-240℃(20分)
質量-電荷比(mass-to-charge ratio):30~350(m/z),
イオン化条件:70eV、シングルイオン-モニタリングモード(single ion-monitoring(SIM) mode)
定量:β‐ダマセノンのピークエリア面積と内部標準品のピークエリア面積との比較によって行った。
表1~3に、官能評価結果及びβ-ダマセノン濃度の測定結果を示す。
保持工程を行わなかった例1に係る飲料では、フレッシュ感に優れていたが、コンポート様の風味は感じられなかった。
一方、90℃で30~120分間の保持工程を行った例2~例4に係る飲料では、保持時間とともにフレッシュ感が減少し、代わりに、コンポート様の風味が付与されていく傾向にあった。また、味に関して、否定的なコメントは得られなかった。美味しさとしても、例1に係る飲料とほぼ同等以上の評価が得られた。
このことから、発酵工程の前に、80℃以上100℃以下で10分以上の保持工程を行うことによって、コンポート様の風味が付与され、高温での保持工程を行わない場合とは異なる香り及び味を有する果実酒が得られることが判る。そして、そのようなコンポート様の風味が付与された果実酒を好ましいと感じる需要者も存在することが判る。
なお、保持工程を60℃60分とした例5に係る飲料においては、フレッシュ感が損なわれる一方で、コンポート様の風味はさほど付与されなかった。
また、保持工程を104℃で60分間とした例6に係る飲料においては、フレッシュ感が大きく損なわれていた。また、味として、苦味やエグ味といった否定的なコメントがみられ、美味しさにも劣っていた。
更に、対照である例1のβ-ダマセノン濃度は0.5ppbであったのに対し、保持工程を経た例2~例6においては、β-ダマセノン濃度が例1に比べて増加していた。このうち、β-ダマセノン濃度が5ppb以上である例2~4及び6においては、コンポート様の風味が十分に付与されていた。また、β-ダマセノン濃度が5~30ppbの範囲にある例2~4においては、上述のように、例1と同等以上の美味しさが得られていた。
Figure 0007518643000001
Figure 0007518643000002
Figure 0007518643000003

Claims (5)

  1. 果汁を80℃以上、100℃以下で10分以上保持する工程と、
    前記保持する工程の後に、前記果汁を発酵させる工程と、を含み、
    前記果汁が、リンゴ果汁であり、
    前記保持する工程が、前記果汁を、90℃以上100℃以下で、30分以上保持する工程を含
    β-ダマセノンを5ppb以上の量で含む果実酒の製造方法。
  2. 前記果実酒が、β-ダマセノンを、5ppb以上、30ppb以下の量で含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記果実酒が、発泡性である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記保持する工程の後、前記果汁を希釈することなく、前記発酵する工程が行われる、請求項1~のいずれかに記載の方法。
  5. 果汁を80℃以上、100℃以下で10分以上保持する工程と、
    前記保持する工程の後に、前記果汁を発酵させる工程と、を含み、
    前記果汁が、リンゴ果汁であり、
    前記保持する工程が、前記果汁を、90℃以上100℃以下で、30分以上保持する工程を含む、
    β-ダマセノンを5ppb以上の量で含む果実酒のコンポート様風味付与方法。
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