JP7528449B2 - 硫化物系固体電解質の製造方法 - Google Patents

硫化物系固体電解質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫化物系固体電解質の製造方法、並びにその製造方法により得られるLGPS型硫化物系固体電解質に関する。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、更には定置型蓄電システムなどの用途において、リチウムイオン二次電池の需要が増加している。しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池は、電解液として可燃性の有機溶剤を使用しており、有機溶剤が漏れないように強固な外装を必要とする。また、携帯型のパソコン等においては、万が一、電解液が漏れ出した時のリスクに備えた構造を取る必要があるなど、機器の構造に対する制約も出ている。
更には、自動車や飛行機等の移動体にまでその用途が広がり、定置型のリチウムイオン二次電池においては大きな容量が求められている。このような状況の下、安全性が従来よりも重視される傾向にあり、有機溶剤等の有害な物質を使用しない全固体リチウムイオン二次電池の開発に力が注がれている。
例えば、全固体リチウムイオン二次電池における固体電解質として、酸化物、リン酸化合物、有機高分子、硫化物等を使用することが検討されている。
これらの固体電解質の中で、硫化物はイオン伝導度が高く、比較的やわらかく固体-固体間の界面を形成しやすい特徴がある。活物質に対しても安定であり、実用的な固体電解質として開発が進んでいる。
固体電解質に要求される性能の1つに粒径がある。全固体リチウムイオン二次電池における電極層は、電極活物質と固体電解質とを組み合わせて作製されるが、電極活物質と固体電解質との良好な接触界面を形成する目的で、粒径の小さな固体電解質が望まれている。同様に、正極層と負極層とを隔てる固体電解質層においても、より薄い層を形成する目的で、粒径の小さな固体電解質が望まれている。以上の理由で、硫化物系固体電解質の粉砕方法が種々検討されている。
硫化物系固体電解質の粉砕方法として、ジェットミル、ビーズミル、ピンミル、遊星ボールミル等が知られている。特許文献1では、アルジロダイト型固体電解質をジェットミルやビーズミルで粉砕することにより、粒径が小さく且つイオン伝導度が高い微粒子を得ている。しかしながら、LGPS型固体電解質では、同様にビーズミルやジェットミルを用いて粉砕すると、イオン伝導度が低下するという問題があった。
同様に、特許文献2では、LGPS型固体電解質の遊星ボールミルによる粉砕方法が開示されているが、遊星ボールミルを用いた場合にも、粉砕処理を行うとイオン伝導度が大きく低下するという問題があった。
特開2019-36536号公報 特開2019-102412号公報
このような状況の下、イオン伝導度が高く、且つ、粒径が小さいLGPS型硫化物系固体電解質の製造方法を提供することが望まれている。
そこで、本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を行ったところ、LGPS型固体電解質の粉砕方法としてボールミルが適していることを見出した。数μmサイズの粉末を得る粉砕方法として、遊星ボールミルやジェットミルが一般的であるが、LGPS型固体電解質を粉砕する場合には、強い粉砕エネルギーによって固体電解質の結晶構造が崩れてしまい、ひいてはイオン伝導度が低下してしまう。それに対して、ボールミルは、遊星ボールミルやジェットミルと比較して粉砕力は弱いが、結晶構造の崩れを抑えることができ、イオン伝導度の低下も抑えることができる。さらに、LGPS型固体電解質は、ボールミルの弱い粉砕力でも十分に微細化することができることを見出した。これは、LGPS型固体電解質が、アルジロダイト型等の他の硫化物系固体電解質と比べて軟質であるためだと思われる。以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
<1>
粗粒子状LGPS型固体電解質を、ボールミルを用いて粉砕し、粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物を熱処理することにより、粉砕及び熱処理されたLGPS型固体電解質を得る工程と、
を含む、全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法。
<2>
前記粉砕物を得る工程が、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えることをさらに含む、<1>に記載の全固体リチウム電池用固体電解質の製造方法。
<3>
前記溶剤が、粗粒子状のLGPS型固体電解質に対して10wt%以下の量で加えられる、<2>に記載の全固体リチウム電池用固体電解質の製造方法。
<4>
前記溶剤が、ニトリル系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される1以上の溶剤である、<2>または<3>に記載の全固体リチウム電池用固体電解質の製造方法。
<5>
前記溶剤が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、及びヘプタンからなる群より選択される、<4>に記載の全固体リチウム電池用固体電解質の製造方法。
<6>
前記LGPS型固体電解質が、硫黄元素、リン元素、ケイ素元素、塩素元素およびリチウム元素から構成される、<1>~<5>に記載の全固体リチウム電池用固体電解質の製造方法。
<7>
粉砕及び熱処理された固体電解質が、粉砕前の粗粒子状LGPS型固体電解質と比較して、イオン伝導度の低下が2.0mS/cm以下であり、且つ、メジアン径が10μm以下である、<1>~<6>に記載の全固体リチウム電池用固体電解質の製造方法。
本発明によれば、イオン伝導度が高く、且つ、粒径が小さいLGPS型硫化物系固体電解質の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質の結晶構造を示す概略図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る全固体電池の概略断面図である。 図3は、実施例1~5、比較例2、および参考例で得られた硫化物系固体電解質のX線回折測定の結果を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下に説明する材料及び構成等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本明細書において、LGPS型固体電解質とは、Li、P及びSを含む、特定の結晶構造を有する固体電解質を言うが、例えば、Li、M(MはGe、Si及びSnからなる群より選ばれる一種以上の元素)、P及びSを含む固体電解質が挙げられる。
LGPS型固体電解質の結晶構造は、図1に示されるように、Li元素およびS元素から構成される八面体Oと、P、Ge、Si,およびSnからなる群より選ばれる一種以上の元素およびS元素から構成される四面体T1と、P元素およびS元素から構成される四面体T2とを有し、前期四面体T1および前記八面体O稜を共有し、前記四面体T2および前記八面体Oは頂点を共有することを特徴とする。
LGPS型固体電解質は、X線回折(CuKα:λ=1.5405Å)において、少なくとも、2θ=20.18°±0.50°、20.44°±0.50°、26.96°±0.50°、及び29.58°±0.50°の位置にピークを有する。
1.粗粒子状LGPS型固体電解質の製造
本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法の対象となる、粗粒子状LGPS型固体電解質は、特許第5527673号公報に記載のメカニカルミリング法、国際公開番号WO2019/044517号公報に記載の液相合成法等の既知の方法で製造することができる。以下、Li、Si、P、およびSを構成元素とするLGPS型固体電解質を例に製造方法を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
メカニカルミリング法
LiS、P、およびSiSの粉末を混ぜ合わせた後、遊星ボールミル等を用いて粉砕・混合処理を行うことにより、LGPS型固体電解質の前駆体を得る。次に、得られたLGPS型固体電解質の前駆体を加熱処理することにより、粗粒子状のLGPS型固体電解質を得ることができる。メカニカルミリング法の特徴は、強力な機械的エネルギーを加えることによって組成の均一化および非晶質化を行う点にある。
液相合成法
アセトニトリルやテトラヒドロフラン等の有機溶剤中でLiSとPとを反応させることにより溶解させた溶液に、LiS、およびSiSの粉末を加えて懸濁液を得る。次に、有機溶剤を留去することにより、LGPS型固体電解質の前駆体を得る。続いて、得られた前駆体を加熱処理することにより、粗粒子状のLGPS型固体電解質を得ることができる。液相合成法の特徴は、原料の一部あるいは全部を有機溶剤中で反応・溶解させることよって、組成の均一化および非晶質化を行う点にある。
2.本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法
本発明は、硫化物系固体電解質の製造方法、より詳細には、粉砕工程によってイオン電導度が低下しない、LGPS型硫化物系固体電解質の製造方法を提供する。
本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法は、
粗粒子状LGPS型固体電解質を、ボールミルを用いて粉砕し、粉砕物を得る工程(以下「粉砕工程」ともいう)と、
前記粉砕物を熱処理することにより、粉砕及び熱処理されたLGPS型固体電解質を得る工程(以下「熱処理工程」ともいう)と、
を含む。本発明の方法において、LGPS型硫化物系固体電解質に対してボールミルを用いて粉砕することにより、イオン伝導度の低下を抑制しながら粉砕することができ、イオン伝導度が高く、且つ、粒径が小さい、全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質を得ることができる。具体的には、メジアン径が10μm以下、特には5μm以下の固体電解質の粒子を得ることができる。なお、本発明で定義するメジアン径とは、体積基準での粒度分布ヒストグラムにおいて、頻度の累積が50%になる粒子径のことであり、メディアン径と呼ばれることもあり、D50と表記されることもある。また、粒度分布の測定手段としては、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、沈降法、ふるい分け法などが挙げられるが、本発明で定義するメジアン径はレーザー回折・散乱法での測定値である。
(1)粉砕工程
上述のように、本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法は、粗粒子状LGPS型固体電解質を、ボールミルを用いて粉砕し、粉砕物を得る工程を含む。前記粉砕物を得る工程において、粉砕の条件(温度、回転数など)は、使用する装置や、固体電解質の状態などを考慮して適宜調整することができる。
なお、本発明で定義するボールミルとは、粉砕機の1種であり、セラミックなどの硬質のボールと、粉砕対象の粉とを円筒形の容器に入れて自転運動させることによって、粉砕対象をすりつぶして微細な粉末を作る装置のことである。
本発明の一実施形態において、前記粉砕物を得る工程は、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えることをさらに含むことができる。すなわち、本発明の実施形態において、前記粉砕物を得る工程は、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えて実施してもよく、あるいは、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えることなく実施してもよい。本発明の一実施形態において、前記粉砕物を得る工程は、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えて実施される。本発明の別の実施形態において、前記粉砕物を得る工程は、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えることなく、実施される。本発明の好ましい実施形態において、前記粉砕工程は、溶剤を加えて実施され得る。
本発明の一実施形態において、前記粉砕物を得る工程において溶剤を加えて粉砕する場合、前記溶剤は、粗粒子状のLGPS型固体電解質に対して10wt%以下の量で加えることができる。前記粉砕物を得る工程において溶剤を加える場合、加える溶剤の量が上記の範囲内にあれば、粗粒子状のLGPS型固体電解質がより細かく粉砕され得、また、固体電解質のボールミル容器やボールへの固着が抑えられて回収が容易となる。加える溶剤の量が上記範囲より多いと、固体電解質が変質してイオン伝導度が低下することがある。また、加える溶剤の量が上記範囲より添加量が多いと、固体電解質がボールミルの容器やボールに強く固着することがあり、回収が困難となり得る。
前記粉砕物を得る工程において、前記溶剤の量は、ボールミル容器の容積や溶剤の種類などにも依るので一概には規定できないが、粗粒子状の固体電解質に対して、0超10wt%以下であり、好ましくは0.1以上10wt%以下であってよく、より好ましくは0.1以上2wt%以下であってよい。
前記粉砕物を得る工程において用いることができる溶剤は、粗粒子状のLGPS型固体電解質がより細かく粉砕され得るものであれば限定されないが、例えば、ニトリル系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される1以上の溶剤を用いることができる。上記の溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、2-メチルブチロニトリル、イソバレロニトリル、ピバロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、ベンゾニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、上記ニトリル系溶剤は、アセトニトリルであってよい。
上記エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、上記エーテル系溶剤は、テトラヒドロフランであってよい。
上記炭化水素系溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、及び芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、炭素数6~C11の飽和脂肪族炭化水素系溶剤などが挙げられるが、これに限定されない。炭素数6~C11の飽和脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、などが挙げられるが、これらに限定されない。芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、上記炭化水素系溶剤は、トルエン、n-ヘプタンであってよい。
使用する溶剤は含水率の低いものが好ましく、水分量が1000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。脱水方法としては、蒸留やカラムによる精製、モレキュラーシーブスの添加などの常法を用いることができる。
ボールミルで使用するボールの材質としては、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素などが挙げられるが、これらに限定されない。ボールの径は特に限定されないが、0.1mmφ~30mmφが好ましく、0.3mmφ~10mmφがより好ましく、1mmφ~5mmφが特に好ましい。
前記粉砕物を得る工程において、ボールミル容器は不活性ガスを充填して密封することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられ、アルゴンが特に好ましい。不活性ガス中の酸素および水分の濃度は低いことが好ましく、どちらも1000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
ボールミル容器内の温度は、LGPS型固体電解質が熱分解しない温度、且つ、粒成長しない温度であれば特に限定されないが、-10℃~120℃の範囲が好ましく、0℃~60℃の範囲がより好ましく、10℃~40℃の範囲が特に好ましい。
ボールミル容器の回転数は、臨界回転数未満が好ましく、臨界回転数の50%~90%の範囲がより好ましく、臨界回転数の60%~80%の範囲が特に好ましい。臨界回転数とは、内容物(ボールおよび粉砕対象)が遠心力で容器内壁に圧着され、内容物が落下しなくなる時の回転数をいう。また、粉砕処理の時間は特に限定されないが、1時間~96時間の範囲であり、好ましくは3時間~48時間の範囲であり、より好ましくは6時間~24時間の範囲である。粉砕時間が短いと、粒径が十分に小さくならない場合がある。また、粉砕時間が長いと、固体電解質の結晶構造が崩れて、イオン伝導度が低下する場合がある。
(2)熱処理工程
上述のように、本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法は、前記粉砕物を熱処理することにより、粉砕及び熱処理されたLGPS型固体電解質を得る工程を含む。前記粉砕工程を実施すると、結晶性が低下するためイオン伝導度が低下するが、その後熱処理工程を実施することにより、結晶性が回復してイオン伝導度を向上させることができる。
前記熱処理工程は、前記粉砕工程により得られたLGPS型固体電解質の粉砕物が粒成長しない温度で実施される。前記熱処理工程において、熱処理の条件は、使用する装置や、固体電解質の状態などを考慮して適宜調整することができる。前記熱処理工程において、熱処理温度は、300℃~700℃の範囲であってよく、好ましくは350℃~650℃の範囲であってよく、より好ましくは400℃~600℃の範囲であってよい。熱処理温度が上記範囲にあれば、所望の結晶を容易に得ることができる。300℃よりも温度が低いと所望の結晶が生じにくく、一方、700℃よりも温度が高いと、目的とする以外の結晶が生成し、イオン伝導度が低下しやすくなる。
熱処理工程は、真空もしくは不活性ガス雰囲気下で実施することができ、好ましくは不活性ガス雰囲気下で実施することができる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを使用することができるが、中でもアルゴンが好ましい。酸素や水分の濃度が低いことが好ましく、どちらも1000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
3.本発明の方法により得られる全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質
上記のようにして得られる本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質は、各種手段によって所望の成形体とし、以下に記載する全固体電池をはじめとする各種用途に使用することができる。成形方法は特に限定されない。例えば、後述する<全固体電池>において述べた全固体電池を構成する各層の成形方法と同様の方法を使用することができる。
<全固体電池>
本発明の硫化物系固体電解質は、例えば、全固体電池用の固体電解質として使用され得る。また、本発明の更なる実施形態によれば、上述した全固体電池用固体電解質を含む全固体電池が提供される。
ここで「全固体電池」とは、全固体リチウムイオン二次電池である。図2は、本発明の一実施形態に係る全固体電池の概略断面図である。全固体電池10は、正極層1と負極層3との間に固体電解質層2が配置された構造を有する。全固体電池10は、携帯電話、パソコン、自動車等をはじめとする各種機器において使用することができる。
本発明の硫化物系固体電解質は、正極層1、負極層3および固体電解質層2のいずれか一層以上に、固体電解質として含まれてよい。固体電解質は、本発明の硫化物系固体電解質単独で構成されてもよいし、必要に応じて、酸化物固体電解質(例えば、LiLaZr12)、硫化物系固体電解質(例えば、LiS-P)、その他の錯体水素化物固体電解質(例えば、LiBH、3LiBH-LiI)などを適宜組み合わせて使用してもよい。正極層1または負極層3に本発明の硫化物系固体電解質が含まれる場合、本発明の硫化物系固体電解質と公知のリチウムイオン二次電池用正極活物質または負極活物質とを組み合わせて使用する。正極層1または負極層3に含まれる本発明の硫化物系固体電解質の量比は、特に制限されない。
全固体電池は、上述した各層を成形して積層することによって作製されるが、各層の成形方法および積層方法については、特に制限されない。
例えば、固体電解質および/または電極活物質を溶剤に分散させてスラリー状としたものをドクターブレードまたはスピンコート等により塗布し、それを圧延することにより製膜する方法;真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等を用いて製膜および積層を行う気相法;ホットプレスまたは温度をかけないコールドプレスによって粉末を成形し、それを積層していく加圧成形法等がある。
本発明の硫化物系固体電解質は比較的柔らかいことから、加圧成形法によって各層を成形および積層して全固体電池を作製することが特に好ましい。加圧成形法としては、加温して行うホットプレスと加温しないコールドプレスとがあるが、コールドプレスでも十分に成形することができる。
なお、本発明には、本発明の硫化物系固体電解質を加熱成形してなる成形体が包含される。該成形体は、全固体電池として好適に用いられる。また、本発明には、本発明の硫化物系固体電解質を加熱成形する工程を含む、全固体電池の製造方法が包含される。
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
<X線回折測定>
X線回折測定は、硫化物系固体電解質の粉末について、Ar雰囲気下、室温(25℃)で、PANalytical社製「X’Pert3 Powder」を用い、CuKα:λ=1.5405Åにて実施した。
<リチウムイオン伝導度測定>
硫化物系固体電解質を一軸成型(420MPa)に供し、厚さ約1mm、直径10mmのディスクを得た後、全固体電池評価セル(宝泉株式会社製)を用い、室温(25℃)において、四端子法による交流インピーダンス測定(Solartron社製「SI1260 IMPEDANCE/GAIN―PHASE ANALYZER」)を行い、リチウムイオン伝導度を算出した。
具体的には、サンプルを25℃に設定した恒温槽に入れて30分間保持した後にリチウムイオン伝導度を測定した。測定周波数範囲は0.1Hz~1MHz、振幅は50mVとした。
<メジアン径の測定>
硫化物系固体電解質の粉末について、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクトロトラック・ベル社製「MT3300EXII」)を用いて粒度分布を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)を求めた。
製造例
まず、下記に例示される工程に従い、本発明の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法の対象となる、粗粒子状LGPS型固体電解質を製造した。
<溶液化工程1>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:P:=1:1のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を1.42g、およびP(シグマ・アルドリッチ社製、純度99%)を6.87g量り取った。次に、アセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)75gに対して、LiS、Pの順に加え、室温下で3時間混合した。混合物は徐々に溶解し、Li-P-S均一溶液を得た。
<溶液化工程2>
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:SiS=0.5:1のモル比となるように、LiS(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.8%)を4g、およびSiS(三津和化学社製)を16g量り取った。次に、アセトニトリル(和光純薬工業社製、超脱水グレード)610gに対して加え、室温下で24時間混合した。混合物は徐々に溶解したが、この段階では原料中の不純物が残存していた。
得られた溶液をメンブランフィルター(PTFE、孔径1.0μm)を用いて濾過することで、濾滓として2.0g、濾液(Li-Si-S均一溶液)として578g得られた。Li-Si-S均一溶液のICP分析を行った結果、Li/Si(モル比)は50.6/49.4であった。また、(LiS+SiS)の濃度は3.07wt%であった。
<溶液混合工程>
Si:P=1:1のモル比となるように、Li-P-S均一溶液を82.9g、Li-Si-S均一溶液を233.0g混合して均一混合溶液を調製した。さらに、LiCl(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.99%)0.52gを撹拌しながら加え、室温下で3時間混合した。
<スラリー化工程>
得られた均一混合溶液中に、LiSを6.27g撹拌しながら加え、室温下で12時間混合してスラリー液を調製した。一連の操作は、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で実施した。なお、以上の操作で加えた全ての原料のモル比は、LiS:P:SiS:LiCl=6.45:1:2:0.40となり、元素組成はLi3.33Si0.500.503.86Cl0.10となる。
<乾燥工程>
得られたスラリー液を、真空下、180℃で4時間乾燥させることで、溶剤を除去した。溶剤除去は溶液を撹拌しながら行った。その後、室温まで冷却して前駆体を得た。
<加熱処理工程>
得られた前駆体をグローブボックス内でガラス製反応管に入れて、前駆体が大気に暴露しないように電気管状炉に設置した。反応管にアルゴン(G3グレード)を吹き込み、3時間かけて475℃まで昇温し、その後8時間475℃で焼成することにより、LGPS型固体電解質を得た。
参考例
上記製造例により製造した、粗粒子状のLGPS型固体電解質のX線回折測定を行った結果、LGPS型固体電解質の結晶相に帰属される2θ=19.95°、20.16°、26.70°、29.35°にピークが観測された。イオン伝導度は6.1mS/cmであり、メジアン径は69.7μmであった。
実施例1
<粉砕工程>
上記製造例により製造した粗粒子状LGPS型固体電解質1gを、直径3mmφのジルコニアボール80gと共に50ccのデュラン瓶に入れ密閉した。上記計量、添加、密閉作業は全てアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で実施し、使用する器具類は全て乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。
この容器をボールミル架台(株式会社アサヒ理化製作所製、AV-1型)を用いて、常温にて120rpmにて12h回転させて粉砕処理を行った。固体電解質を0.77g回収し、イオン伝導度測定を行った結果、粉砕処理後における固体電解質のイオン伝導度は2.7mS/cmであった。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を、ガラス容器に入れアルゴン下、475℃、4時間の熱処理を行った。熱処理後の固体電解質のX線回折測定を行った結果、LGPS型固体電解質の結晶相に帰属される2θ=19.97°、20.17°、26.73°、29.35°にピークが観測された。イオン伝導度は6.2mS/cmであり、メジアン径は9.4μmであった。
実施例2
<粉砕工程>
上記製造例により製造したLGPS型固体電解質1gを、直径5mmφのジルコニアボール80gとともに50ccのデュラン瓶に入れた後、溶剤として、テトラヒドロフラン(Wako製、超脱水グレード)を18mg(固体電解質に対して1.8wt%)添加した以外は実施例1と同様に粉砕処理を行った。固体電解質の回収量は0.89gであった。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を実施例1と同様の方法で熱処理した。X線回折測定の結果、実施例1と同様にLGPS型固体電解質の結晶相が観測された。イオン伝導度は6.0mS/cmであり、メジアン径は4.2μmであった。
実施例3
<粉砕工程>
溶剤として、テトラヒドロフランの代わりにアセトニトリル(Wako製、超脱水グレード)を18mg添加した以外は実施例2と同様に粉砕処理を行った。固体電解質の回収量は0.87gであった。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を実施例1と同様の方法で熱処理した。X線回折測定の結果、実施例1と同様にLGPS型固体電解質の結晶相が観測された。イオン伝導度は7.4mS/cmであり、メジアン径は8.8μmであった。
実施例4
<粉砕工程>
溶剤として、テトラヒドロフランの代わりにトルエン(Wako製、超脱水グレード)を18mg添加した以外は実施例2と同様に粉砕処理を行った。固体電解質の回収量は0.83gであった。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を実施例1と同様の方法で熱処理した。X線回折測定の結果、実施例1と同様にLGPS型固体電解質の結晶相が観測された。イオン伝導度は5.8mS/cmであり、メジアン径は6.3μmであった。
実施例5
<粉砕工程>
溶剤として添加するテトラヒドロフラン(Wako製、超脱水グレード)を90mg(固体電解質に対して9.0wt%)に変更した以外は実施例2と同様に粉砕処理を行った。固体電解質の回収量は1.00gであった。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を実施例1と同様の方法で熱処理した。X線回折測定の結果、実施例1と同様にLGPS型固体電解質の結晶相が観測された。イオン伝導度は4.5mS/cmであり、メジアン径は4.1μmであった。
比較例1
<粉砕工程>
溶剤として添加するテトラヒドロフラン(Wako製、超脱水グレード)を180mg(固体電解質に対して18.0wt%)に変更した以外は実施例2と同様に粉砕処理を行った。粉砕処理後、固体電解質を回収しようとしたが、固体電解質が容器の壁面やボールに強く固着して回収は困難であった。
比較例2
<粉砕工程>
上記製造例により製造したLGPS型固体電解質10gを、ジェットミル(株式会社アイシンナノテクノロジー製、NJ-50)を用いて、入口圧2.0MPa、粉砕圧1.2MPa、処理速度60g/hにて粉砕して、粉砕された固体電解質7.8gを回収した。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を実施例1と同様の方法で熱処理した。X線回折測定を行ったところ、LGPS型の結晶構造の他に、25.30°と29.80°にアルジロダイトに帰属される不純物相が観測された。イオン伝導度は2.6mS/cmであり、メジアン径は12.4μmであった。
比較例3
<粉砕工程>
上記製造例により製造したLGPS型固体電解質1.5g、0.3mmφのジルコニアビーズ53g、イソブチロニトリル4ml、およびトルエン6mlを、容積45ccの遊星ボールミル用容器に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、P-7クラシックライン)を用いて回転数300rpmで15時間の粉砕処理を行った。粉砕後、ジルコニアビーズを除去して懸濁液を得た。得られた懸濁液を、エバポレーターを用いて減圧下、180℃で2時間の乾燥を行い、粉砕された固体電解質0.51gを回収した。
<熱処理工程>
粉砕処理後の固体電解質を実施例1と同様の方法で熱処理した。X線回折測定を行ったところ、LGPS型の結晶構造の他に、25.25°と29.75°にアルジロダイトに帰属される不純物相が観測された。イオン伝導度は2.5mS/cmであり、メジアン径は1.9μmであった。
参考例、実施例1~5、及び比較例1~3で得られた固体電解質の回収率、イオン伝導度、粉砕前と比較したイオン伝導の低下、およびメジアン径の測定結果を下記表1に、X線回折パターンの測定結果を下記図3に示す。
上述のように、本発明によれば、イオン伝導度が高く、且つ、粒径が小さいLGPS型硫化物系固体電解質の製造方法を提供することができる。また、本発明の方法により得られる、上記のLGPS型硫化物系固体電解質は、全固体リチウム電池用に適する。
1 正極層
2 固体電解質層
3 負極層
10 全固体電池

Claims (5)

  1. 粗粒子状LGPS型固体電解質を、ボールミルを用いて粉砕し、粉砕物を得る工程と、
    前記粉砕物を熱処理することにより、粉砕及び熱処理されたLGPS型固体電解質を得る工程と、
    を含む、全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法であって、
    前記粉砕物を得る工程が、粗粒子状のLGPS型固体電解質に溶剤を加えることをさらに含み、
    前記溶剤が、粗粒子状のLGPS型固体電解質に対して0wt%10wt%以下の量で加えられる、全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法。
  2. 前記溶剤が、ニトリル系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される1以上の溶剤である、請求項1に記載の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法。
  3. 前記溶剤が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、及びヘプタンからなる群より選択される、請求項2に記載の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法。
  4. 前記LGPS型固体電解質が、硫黄元素、リン元素、ケイ素元素、塩素元素およびリチウム元素から構成される、請求項1~3に記載の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法。
  5. 粉砕及び熱処理された固体電解質が、粉砕前の粗粒子状LGPS型固体電解質と比較して、イオン伝導度の低下が2.0mS/cm以下であり、且つ、メジアン径が10μm以下である、請求項1~4に記載の全固体リチウム電池用LGPS型固体電解質の製造方法。
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