JP7551085B2 - ボーラス材 - Google Patents

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本発明は、放射線治療に用いられるボーラス材に関するものである。
人体に放射線を照射して人体内部の癌組織等に対して放射線治療を行う際には、放射線を患部に集中させ、患部以外の健全組織はできるだけ被曝を避けることが望まれる。このためには放射線エネルギのピーク点を患部の深さに一致させることが必要である。
そこで特許文献1~特許文献3に示されるように、ボーラス材と呼ばれる材料を人体の表面に貼り付けて放射線エネルギのピーク点の位置を調整し、患部の深さに一致させることが行われている。特許文献1は水性ゲルからなるボーラス材を開示し、特許文献2はポリウレタン系のボーラス材を開示し、特許文献3はシリコーンゴム系で積層構造のボーラス材を開示している。
ボーラス材には、比重が人体に近い1.0付近であること、医師が照射点を視認し易いように透明であること、人体に密着させやすく、しかもアレルギー反応を生じないことなどの多くの特性が要求されている。しかし人体の凹凸に密着させ易いようにするためには変形させ易い軟質材としなければならず、軟質材とすると強度が低下し易いため、既存のボーラス材は、変形特性と強度のバランスの点において、満足できないものがあった。
特開昭62-204770号公報 特開2018-76478号公報 特開平11-221294号公報
従って本発明の目的は、人体に密着させ易い変形特性と強度をバランスさせた、新規なボーラス材を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明者はボーラス材の基材として、変形特性に優れた熱可塑性エラストマー(TPE)に着目した。熱可塑性エラストマーは常温ではエラストマーの性質を示すが、高温では塑性変形が可能となる高分子材料である。このような特性を発現するために、熱可塑性エラストマーは高温では流動するが常温では塑性変形を防止するハードセグメントと、ゴムのような弾性を発揮するソフトセグメントとを持っている。
熱可塑性エラストマーには各種のタイプがあるが、本発明者は変形特性と強度に優れたスチレン系の熱可塑性エラストマーに着目した。ところがこのスチレン系の熱可塑性エラストマーは、比重が0.84-0.87であって人体の比重である1.0から外れており、この比重差が放射線の透過性に影響を及ぼすため、そのままボーラス材として使用するには不適当であった。本発明者はこの問題を解決するために検討を重ねた結果、比重が1.0よりも大きい特定の粉末を添加することにより、透明性を損なうことなく、比重を0.9~1.1の範囲とすることに成功した。
本発明はこの知見に基づいて完成されたものであり、ポリスチレンをハードセグメントとするスチレン系の熱可塑性エラストマー(但し、鉱物油を含有するものを除く)に、屈折率が1.4~1.6の充填材を添加した材料からなることを特徴とするものである。
なお、上記の充填剤は、硫酸カルシウム、ロー石クレー、タルク、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリンクレー、マイカ、水酸化マグネシウム、アスベスト(クリソタイル)、硫酸カルシウム、ベントナイト、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、含水ケイ酸カルシウム、石英ガラス、含水ケイ酸などのホワイトカーボン、ガラスフィラー、コロイダルシリカなどの無機フィラーや、ポリスチレン、ポリカーボネート、コポリエステル、ポリカーボネート、ポロプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどを微粉砕した有機フィラーを添加することが望ましく、中でも、含水ケイ酸などのホワイトカーボンを添加することにより、全体の比重を0.9~1.1の範囲とすることが好ましい。
本発明のボーラス材は、変形特性に優れたスチレン系の熱可塑性エラストマーを主材とするものであるから、人体の凹凸に合わせて容易に変形し、人体に密着させ易い。しかも強度があり損傷しにくいので、繰り返し使用することも可能である。また本発明のボーラス材は、主材の屈折率と同じ1.4~1.6の屈折率を持つ充填材を添加して比重を0.9~1.1の範囲にまで高めたので、放射線の透過性を損なわず、また透明性も損なわれない利点がある。
ボーラス材の原理説明図である。 基材の構造概念図である。
図1にボーラス材の原理を示す。
例えば人体の表面10から患部組織11までの深さがdであるとき、図1(A)に示すようにそのまま放射線を照射すると、右側のグラフに示すように放射線量のピーク点Pの位置がdよりもΔdだけ下方となり、放射線量は患部組織11で最大とはならないことがある。このような場合、図1(B)に示すように、厚みがΔdで放射線の透過性が人体と等価なボーラス材12を人体の表面10に密着させれば、最大線量となるピーク点Pの位置はΔdだけ上方にシフトし、放射線量を患部組織11で最大とすることができる。このほかボーラス材は人体の凹凸部に貼り付け、線量分布を均一化するために使用されることもある。
以下に本発明のボーラス材について説明する。
本発明のボーラス材は、ポリスチレンをハードセグメントとし、ポリエチレン・ポリブチレン等をソフトセグメントとするスチレン系の熱可塑性エラストマーを基材とする。図2にその構造概念を示す。黒丸で示すのがハードセグメント、バネ状の線で示すのがソフトセグメントであり、これらがブロック状に共重合した構造を持つ。これはポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体の水素添加により得られるSEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)と呼ばれる材料である。
その他、ボーラス材としては、ポリスチレンをハードセグメントとするスチレン系の熱可塑性エラストマーである、スチレン-エチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体などが挙げれれるが、人体の凹凸に合わせて容易に変形し、人体に適度に密着させ易く、しかも強度があり損傷しにくい等の観点から、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体の水素添加により得られるSEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)が好ましい。
このスチレン系の熱可塑性エラストマーは、常温では架橋ゴムに近い優れたゴム弾性を有するため、人体の凹凸に密着させ易い。しかも140~230℃に加熱すると流動性を示し、一般の樹脂と同様に成形することができる。さらに透明性に優れ、JIS K 6251の試験方法による引張強さは1.3MPaと十分な強度を持つ。このスチレン系の熱可塑性エラストマー材料自体は既存のもので、多くのメーカーから市販されている。しかし前記したように、この材料は比重が0.84-0.87であってそのままではボーラス材としては不適当であるため、充填材を添加して比重を1.0付近まで高める。この充填材としては、比重が1.0よりも大きく、かつ屈折率が基材であるスチレン系の熱可塑性エラストマーとほぼ等しい1.4~1.6のものとする。充填材を選択したのは、透明性の低下を防止するためである。
充填材としては、硫酸カルシウム、ロー石クレー、タルク、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリンクレー、マイカ、水酸化マグネシウム、アスベスト(クリソタイル)、硫酸カルシウム、ベントナイト、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、含水ケイ酸カルシウム、石英ガラス、ホワイトカーボン、ガラスフィラー、コロイダルシリカ酸化ジルコニウム、含水ケイ酸、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛などがあるが、屈折率が酸化ジルコニウムは2.00-2.05、酸化マグネシウムは1.73、二酸化チタンは2.20-2.72、酸化亜鉛は2.00であって何れも上記の範囲を外れる。これに対して、含水ケイ酸、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ロー石クレー、タルク、アルミナ、カオリンクレー、マイカ、水酸化マグネシウム、アスベスト(クリソタイル)、硫酸カルシウム、ベントナイト、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、含水ケイ酸カルシウム、石英ガラス、ホワイトカーボン、ガラスフィラー、コロイダルシリカ酸化ジルコニウム、含水ケイ酸、炭酸カルシウムなどの無機フィラーや、ポリスチレン、ポリカーボネート、コポリエステル、ポリカーボネート、ポロプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどを微粉砕した有機フィラーの屈折率は、1.4~1.6であるため、これらを選択することが好ましい。基材と充填材の屈折率の差が大きいと白濁し易くなり、放射線の透過性及び透明性に悪影響を生ずる。
なお、含水ケイ酸の比重は1.8-2.2であり、炭酸カルシウムの比重は結晶構造により異なるが、2.5-2.9である。また、その他の充填剤の比重も1.0以上である。これらの添加量は添加後の全体の比重が1に近くなるように、適宜設定することができるが、10重量%から35重量%が好ましい。添加量が10重量%より少ないと、十分な強度が確保出来ず、35重量%よりも多いと、人体への密着性が低下する。
充填材の粒径は透明性に大きく影響することはない。しかし強度には影響するため、10μm以下とすることが好ましい。後記する実施例では平均粒径が0.05μmの含水ケイ酸の微粒子と、平均粒径が5μmの炭酸カルシウム粒子を用いている。
上記したスチレン系の熱可塑性エラストマーの基材に上記の充填材を添加して加熱混錬し、通常の樹脂と同様にシート状に成形してボーラス材を得ることができる。また、必ずしもシート状とする必要はなく、人体の形状に合わせて立体的な形状に成形することもできる。熱可塑性エラストマーは加硫の必要がなく、所望形状の成形品を得ることができる。
本発明のボーラス材は柔軟性があって容易に変形し、適度の粘着性もあるため、人体に密着させ易い。しかも強度があり損傷しにくいので、繰り返し使用することも可能である。また放射線の透過性を損なわず、透明性も損なわれない利点がある。次に本発明の実施例を示す。
表1に示す通り、ポリスチレンをハードセグメントとし、ポリエチレン・ポリブチレンをソフトセグメントとするスチレン系の熱可塑性エラストマーを基材とし、充填材を添加しないもの(比較例1)、含水ケイ酸を25質量%添加したもの(実施例1)、炭酸カルシウムを10質量%添加したもの(実施例2)、酸化マグネシウムを25質量%添加したもの(比較例2)を作成した。また、基材をシリコンポリマーとし、含水ケイ酸を25質量%添加したもの(比較例3)を作成した。なお、エラストマー及び充填剤の混練は、ヒーター付加圧式ニーダーにて、混練り空間を約140℃に設定して行った。何れもシート状に成形しボーラス材とした。シートは、混練りしたコンパウンドを上部から、均一に加圧することにより作成した。
これらの5つの試料につき、人体への密着性、透明性、比重、引張強さを評価し、表1に記載した。なお、透明性は、人体に放射線用シートを密着させた状態で、人体が目視で認識できるかによって評価を行った。はっきりと認識できる場合は〇、はっきりと認識できない場合は×として評価した。また、人体への密着性は、成形したシートを、人体の手の甲に被せ、前記手の甲を傾けた場合に生じる隙間の有無及び、ずれが生じるかにより評価を行った。手の甲とシートとの間に、隙間と傾けることによるずれが生じない場合は〇、若干のすれ生じる場合は△、著しくずれが生じる場合は×として評価した。比重は、アルキメデス法による比重測定装置で測定した。引張強さはJIS K 6251に規定される試験方法により測定した。
Figure 0007551085000001
この結果、実施例1と実施例2と実施例3のボーラス材は透明性に問題はなく、比重は人体に近い1.0となった。また引張強さは充填材を添加しない比較例1よりも大きくなり、充填材による強度向上効果が確認された。
これに対して比較例1は比重が0.86であり、人体の比重とは異なるため放射線の透過性を阻害するおそれがある。充填材を酸化マグネシウムとした比較例2は透明性が低下した。また基材をシリコンポリマーとした比較例3は、比重が1.4と大きいため放射線の透過性を阻害するおそれがあるうえ、柔軟性が失われ、人体への密着性が低下した。
10 人体の表面
11 患部組織
12 ボーラス材

Claims (3)

  1. ポリスチレンをハードセグメントとするスチレン系の熱可塑性エラストマー(但し、鉱物油を含有するものを除く)に、屈折率が1.4~1.6の充填材を添加した材料からなることを特徴とするボーラス材。
  2. 充填剤が、含水ケイ酸又は炭酸カルシウムの粉末であることを特徴とする請求項1に記載のボーラス材。
  3. 充填剤を添加することにより、比重を0.9~1.1の範囲としたことを特徴とする請求項1または2に記載のボーラス材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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