JP7563105B2 - 防曇性樹脂組成物及び積層フィルム - Google Patents

防曇性樹脂組成物及び積層フィルム Download PDF

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Description

本発明は防曇性樹脂組成物及び該樹脂組成物により形成される樹脂層を備えた積層フィルムに関するものである。
ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。
ポリエステルフィルムの用途として、防曇性を付与した防曇フィルムが提案されている。防曇フィルムとしては、界面活性剤を用いたものが知られているが、使用上の課題として、界面活性剤系はブリードアウトによって、防曇性を発現させており、防曇性樹脂層表面がべたつく、あるいは防曇性樹脂層をこすると容易に脱落する問題がある。
これに対し、防曇性に優れた被膜を形成した二軸延伸ポリエステルフィルムとして、ポリビニルアルコールとイソブチレン-無水マレイン酸共重合物から形成される塗布層が設けられた防曇性二軸延伸ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献1参照)。
特開平5-310976号公報
特許文献1に記載の防曇性樹脂層は防曇性が良好であるが、基材フィルムに対する防曇性樹脂層の密着性が高いため、防曇性樹脂層を剥離することが容易ではなく、リサイクル性の面で課題があった。すなわち、使用時には適度に防曇性が必要であるが、ポリエステルフィルムのリサイクルを考えた場合には、使用後には速やかに防曇性樹脂層を除去して、フィルムを再利用したい場合がある。
そのため、使用時には適度に防曇性があり、それでいて、リサイクル性が良好な防曇性樹脂層を備えた積層フィルムが必要とされる状況にあった。
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、使用時には防曇性能が良好であり、使用後は防曇性樹脂層を剥離して基材フィルムをリサイクルすることが可能な積層フィルム及び該防曇性樹脂層を構成する防曇性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成からなる防曇性樹脂組成物および該樹脂組成物により形成される防曇性樹脂層を備える積層フィルムを用いれば、上記の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[21]を提供するものである。
[1](A)ケン化度が50~99モル%であり、平均重合度が200以上1800以下であるポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(B)酸触媒および(C)アンモニウム塩基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含む防曇性樹脂組成物。
[2](A’)変性ポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(B)酸触媒および(C)アンモニウム塩基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含む防曇性樹脂組成物。
[3]さらに(D)架橋剤を含有する上記[1]または[2]に記載の防曇性樹脂組成物。
[4]前記防曇性樹脂組成物中の前記(B)成分の含有量が10質量%以下、(C)成分の含有量が30質量%以下である上記[1]または[2]に記載の防曇性樹脂組成物。
[5](D)成分の含有量が20質量%以下である上記[3]に記載の防曇性樹脂組成物。
[6]基材フィルムの少なくとも片面に上記[1]~[5]のいずれかに記載の防曇性樹脂組成物により形成される防曇性樹脂層を備えた積層フィルム。
[7]防曇性樹脂層表面に水滴滴下20~60秒経過後の水滴接触角平均値、および拡張法による液体吐出後20~60秒経過後の前進接触角平均値の差(前進接触角-水滴接触角)が1°以上である上記[6]に記載の積層フィルム。
[8]前記防曇性樹脂層表面に水滴滴下後、60秒経後の接触角が35°以下である、上記[6]又は[7]に記載の積層フィルム。
[9]40℃の湯煎上に防曇性樹脂層を1分間晒した後の防曇性評価がランク2以上である、上記[6]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
ランク2:形成された水膜でにじみが見えたが、フィルムを通した視界は良好
[10]浸水処理(23℃で1分間浸漬)後の防曇性評価がランク2以上である、上記[6]~[9]の何れかに記載の積層フィルム。
[11]23℃の水に1時間浸漬した後、防曇性樹脂層の塗膜残存率(%)が55%以下である、上記[6]~[10]の何れかに記載の積層フィルム。
[12]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、上記[6]~[11]の何れかに記載の積層フィルム。
[13]前記基材フィルムが無延伸または少なくとも一軸方向に延伸したポリエステルフィルムである、上記[6]~[12]の何れかに記載の積層フィルム。
[14]前記防曇性樹脂層の厚み(乾燥後)が0.01μm~1μmである、上記[6]~[13]の何れかに記載の積層フィルム。
[15]前記防曇性樹脂層の反対面に機能層を備えた、上記[6]~[14]の何れかに記載の積層フィルム。
[16]前記機能層が視認性向上層である、上記[15]に記載の積層フィルム。
[17]前記視認性向上層がフッ素含有化合物と架橋剤を含む樹脂組成物により形成される樹脂層である、上記[16]に記載の積層フィルム。
[18]上記[6]~[17]の何れかに記載の積層フィルムを水および/またはアルコール系溶媒で処理した後、再利用する積層フィルムの使用方法。
[19]フェイスシールド用である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の防曇性樹脂組成物。
[20]フェイスシールド用である、上記[6]~[17]の何れかに記載の積層フィルム。
[21]フェイスシールドとしての上記[18]に記載の使用方法。
本発明によれば、良好な防曇性を有し、それでいてリサイクル性の良好な積層フィルムを提供することができ、その工業的な利用価値は高い。
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は次に説明する実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[防曇性樹脂組成物]
本発明の防曇性樹脂組成物は、(A)ケン化度が50~99モル%であり、平均重合度が200以上1800以下であるポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(B)酸触媒および(C)アンモニウム塩基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが特徴である。基材フィルムの少なくとも片面に、このような樹脂組成物により形成される防曇性樹脂層を備えることで、防曇性に優れ、基材フィルムのリサイクルが容易な積層フィルムを提供することができる。
本発明の防曇性樹脂組成物は、(A)ポリビニルアルコール系樹脂を必須の構成要件とし、(B)酸触媒および(C)アンモニウム塩基含有化合物の少なくともいずれかを含有する。したがって、(A)成分と(B)成分の組み合わせでもよく、(A)成分と(C)成分の組み合わせでもよい。また、(A)、(B)および(C)成分のすべてを含んでいてもよい。
(A)ポリビニルアルコール系樹脂
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する場合がある)は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
本発明におけるPVA系樹脂のケン化度は50~99モル%である。PVA系樹脂のケン化度が50モル%未満であると所望する防曇性能を得るのが困難である。一方、ケン化度が99モル%を超えると防曇性樹脂組成物の安定性が低下する傾向があり、また水溶性が低いためにリサイクル性に劣る場合がある。以上の観点から、PVA系樹脂のケン化度は、好ましくは、50~95モル%、更に好ましくは50~88モル%である。
なお、PVA系樹脂のケン化度の測定はJIS K 6726に準じて測定する。
PVA系樹脂の平均重合度は、200以上1800以下であり、300以上1500以下がより好ましく、500以上1200以下がさらに好ましい。PVA系樹脂の平均重合度が下限を下回る場合には、連続した防曇性樹脂層の被膜成形が困難である。一方、平均重合度が上限を超える場合には、防曇性樹脂組成物の粘度が高く、コートスジ、塗布ムラなどが発生し易い傾向にある。
なお、PVA系樹脂の平均重合度はJIS K 6726に準拠して測定する。
PVA系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたポリビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが好適である。
PVA系樹脂は、未変性ポリビニルアルコール樹脂を使用してもよいし、変性ポリビニルアルコール樹脂を使用してもよいが、変性ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
本発明の防曇性樹脂組成物としては、(A’)変性ポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(B)酸触媒および(C)アンモニウム塩基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含む防曇性樹脂組成物であってもよい。ここで変性ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は特に限定されないが、200以上1800以下であることが好ましく、300以上1500以下がより好ましく、500以上1200以下がさらに好ましい。ケン化度についても特に制限はないが、50~99モル%であることが好ましく、50~95モル%がより好ましく、50~88モル%がさらに好ましい。
(A’)変性ポリビニルアルコール系樹脂
本発明において、変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、上記ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーを共重合させて得たものが挙げられる。共重合モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物などの誘導体;アセト酢酸ビニル、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等のカルボン酸などの不飽和酸類、その塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレン基含有モノマー;N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N-アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3-ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有モノマー等;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物;酢酸イソプロペニル、1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート等が挙げられる。かかる共重合モノマーの含有量は、重合体全量を基準として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
これらの共重合モノマーのうち、防曇性を良好とする観点から、ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとして、アセトアセチル基含有単量体、カルボン酸などの不飽和酸類、ポリオキシアルキレン基含有モノマー、カチオン基含有モノマーが特に好ましい。
また、後に詳述する浸水処理前後の防曇性を良好とする観点から、ビニルアルコール構造単位とエチレンオキサイド基含有構造単位、またはビニルアルコール構造単位とアセトアセチル基含有構造単位の組み合わせから構成される変性ポリビニルアルコールが好ましい。
ビニルエステル系モノマー及び共重合モノマーを重合する方法に関しては特に限定されるわけではなく、従来から公知の手法を採用することができる。具体的には塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合又は乳化重合などが例示される。
(B)酸触媒
本発明において、酸触媒を併用することにより、PVA系樹脂の防曇性能を向上できることを見出した。酸触媒の併用により、PVA系樹脂のケン化が進行する、もしくは架橋が生じることにより、防曇性能が向上すると推測される。PVA系樹脂はそのケン化度や重合度によっては、水等の溶媒に対しての溶解性が低いため塗工液の調合が困難になったり、粘度が高いため塗工時にスジが発生して塗膜外観を悪化させたりする課題を抱えるが、酸触媒の併用によって、加工性と塗膜性能とを両立した加工が可能となる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、2-スルホ安息香酸、2-スルホ安息香酸無水物、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等の有機酸類および前記酸類を含む窒素化合物、例えば、1-アミノ-2-プロパノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-(メチルアミノ)エタノール、2-ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ジイソプロパノールアミン、3-アミノプロパノール、2-メチルアミノ-2-メチルプロパノール、モルホリン、オキサゾリジン、4,4-ジメチルオキサゾリジン、3,4,4-トリメチルオキサゾリジンなどでブロックしたもの(酸とアミンとの反応物)が挙げられる。
(C)アンモニウム塩基含有化合物
本発明において、アンモニウム塩基含有化合物を併用することにより、防曇性能を向上させることが可能であることを見出した。またアンモニウム塩基含有化合物の併用により、さらに防曇性樹脂層に抗菌性も付与できることを見出した。これにより、優れた防曇性を持つとともに、抗菌性も持つことで衛生面の観点でも優れたフィルムを提供することが可能となる。
アンモニウム塩基含有化合物としては、アンモニウム塩基を有する高分子化合物であることが好ましい。例えば、アンモニウム塩基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式(1)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体を挙げることができる。この単独重合体やその他の複数の成分を共重合した共重合体でも構わない。
上記式(1)中、Rは-O-または-NH-、Rは炭素数1~6のアルキレン基、または式(1)の構造を成立し得るその他の構造、R、R、R、Rはそれぞれが、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲン等である。
としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、R、R、R、Rはそれぞれ水素又はメチル基が好ましい。
数平均分子量としては、5000~100000の範囲が好ましく、10000~50000の範囲がより好ましく、20000~40000の範囲がさらに好ましい。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量である。
上記式(1)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体の場合、他の材料との相溶性を高め、得られる防曇性樹脂層の透明性向上の観点などから、他の繰り返し単位と共重合していることが好ましい。他の繰り返し単位は、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキル;n-メチロールアクリルアミド等のアクリルアミドを挙げることができる。
上記式(1)中のXは、本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えばハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等を挙げることができる。
(D)架橋剤
本発明の防曇性樹脂組成物には、防曇性樹脂層の、浸水時の耐久性向上を目的として、架橋剤を使用してもよい。
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも、浸水時の耐久性向上の観点から、オキサゾリン化合物またはエポキシ化合物が好ましい。
また防曇性が得られつつ、塗膜の耐久性を向上させるという観点から、架橋剤中の反応性官能基の量は、好ましくは0.5~17mmol/g、より好ましくは1~13mmol/g、さらに好ましくは2~10mmol/g、特に好ましくは3~8mmol/gの範囲である。
反応性官能基は、例えば、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基、エポキシ化合物のグリシジル基、メラミン化合物のイミノ基、アルキロール基、アルコキシアルキル基、イソシアネート系化合物のイソシアネート基、カルボジイミド系化合物のカルボジイミド基、シランカップリング化合物のシリル基が挙げられる。
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作製できる。
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中では2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物並びにグリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル;モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル;グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。密着性向上の観点から、ポリエーテル系のエポキシ化合物が好ましい。また、エポキシ基の量としては、2官能より、3官能以上の多官能であるポリエポキシ化合物が好ましい。
(メラミン化合物)
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)及びイソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物及びカルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば、重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール及びエチルフェノールなどのフェノール系化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール及びエタノールなどのアルコール系化合物;イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物;ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン及びエチレンイミンなどのアミン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
また、イソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
カルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
カルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100~1000、好ましくは250~800、より好ましくは300~700の範囲である。上記範囲で使用することで、塗膜の耐久性が向上する。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩及びヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
((E)その他任意成分)
防曇性樹脂層を形成する際には、塗布外観や透明性、造膜性の向上等のために、防曇性樹脂組成物に、バインダーとして従来公知の各種のポリマー、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を併用することも可能である。
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、ブロッキング性や滑り性改良等を目的とした粒子の併用、抗菌性や抗ウイルス性を目的とした抗菌性能を持つ材料の併用、耐候性を目的とした紫外線吸収剤の併用を行うこともできる。その中でも衛生面の観点から抗菌性能を持つ材料を併用していることが好ましい。
抗菌性能を持つ材料とは細菌および真菌に対してMIC(最小発育阻止濃度)を有している薬剤であり、無機系抗菌剤や有機系抗菌剤が挙げられる。この中でも樹脂層との相溶性が良く、防曇性樹脂層の透明性を良好に保つことができるという観点から有機系抗菌剤が好ましい。
無機系抗菌剤としては、例えば、銀系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、銅系抗菌剤などが挙げられる。これらは銀イオン、亜鉛イオンおよび銅イオンから選択される一種以上が無機化合物に担持されたものであり、無機化合物としては、ゼオライト、ガラス、タルク、シリカゲル、ケイ酸塩、マイカ、セピオライトなどが挙げられる。複数のイオン種を用いる場合は、各イオンが同じ無機化合物に担持されていてもよい。具体的には、銀イオンと亜鉛イオンがガラスに担持された無機系抗菌剤が挙げられる。また、複数のイオン種を用いる場合、各イオンが異なる無機化合物に担持されていてもよい。具体的には、銀イオンがガラスに担持された無機系抗菌剤と、亜鉛イオンがゼオライトに担持された無機系抗菌剤などである。
有機系抗菌剤としては、特に限定されないが、例えば、前述のアンモニウム塩基含有化合物、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩酸塩、ポリビグアナイド塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドなどのビグアナイド系抗菌剤;ジンクピリチオン(ビス(2-ピリジチオ-1-オキシド)亜鉛)、デンシル(2,3,5,6,-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン)、カッパーピリチオン(ビス(2-ピリジチオ-1-オキシド)銅)などのピリジン系抗菌剤;OIT(2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、MIT(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、CMI(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、BIT(1,2-ベンゾイソチアゾロン)、n-ブチルBIT(N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾロン-3)などのチアゾリン系抗菌剤;ヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジクロロ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン系抗菌剤;チアベンダゾール(2-(4-チアゾリル)-ベンツイミダゾール)、カルベンダジム(メチル-2-ベンツイミダゾールカルバメート)などのイミダゾール系抗菌剤;テブコナゾール((±)-α-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-α-(1,1-ジメチルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール)などのトリアゾール系抗菌剤;ジヨードメチルパラトリルスルホン、ポリビニルピロリドンヨード、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマートなどのヨウ素系抗菌剤;10,10’-オキシビス-10H-フェノキシアルシンなどのヒ素系抗菌剤;トリクロサンなどのエーテル系抗菌剤;トリクロカルバン(3,4,4’-トリクロロカルバニリド)、ハロカルバン(4,4-ジクロロ-3-(3-フルオロメチル)-カルバニリド)、クロロタロニル(2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル)、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸などの有機塩素系抗菌剤;ジクロフルアニド、トリフルアニドなどのスルファミド系抗菌剤;塩化ベンゾトニウム、セチルピリジニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩素系抗菌剤;BCA(α-ブロモシンナムアルデヒド)などのアルデヒド系抗菌剤;マグネシウム2水素ビスモノペルオキシフタラート、ウンデシレン酸亜鉛などのカルボン酸系抗菌剤;ラウリシジン(グリセロールラウレート)などのエステル系抗菌剤;ブチルパラベン(ブチル-p-ヒドロキシベンゾエート)、オルトフェニルフェノールナトリウムなどのフェノール系抗菌剤;N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどのカーバメイト系抗菌剤などが挙げられる。これらの中でも少量で効果が得られる点や安全性の観点で、ポリアミノプロピルビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドなどのビグアナイド系抗菌剤が好ましい。
抗菌剤を添加する場合、防曇性樹脂層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、0~10質量%、好ましくは0.03~8質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。上記下限値以上であれば、十分な抗菌性能が得られ、上記上限値以下であれば、皮膚感作性など影響がない。
なお、後述する防曇性樹脂層には、上述の防曇性樹脂組成物により構成されるが、防曇性樹脂組成物中の各種化合物の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
防曇性樹脂層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、(A)PVA系樹脂は通常、40~99質量%、好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~99質量%である。(A)PVA系樹脂の含有量が上限値以下であると、防曇性樹脂層の強度や透明性が良好であり、一方、下限値以上であると十分な防曇性能が得られる。
防曇性樹脂層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、(B)酸触媒は通常、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。(B)酸触媒の比率が上限値以下であると、十分な防曇性が得られ、かつ防曇性樹脂層の外観が良好になる。一方、(B)酸触媒を用いる場合には、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、十分な防曇性が得られる。
防曇性樹脂層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、(C)アンモニウム塩基含有化合物は通常、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。(C)アンモニウム塩基含有化合物の比率が上限値以下であると、他の成分の比率が十分であり、防曇性や造膜性が良好になる。一方、(C)成分を用いる場合には、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、十分な防曇性が得られ、かつ抗菌性能が良好となる。
(D)架橋剤を併用する場合、防曇性樹脂層組成物中の全不揮発成分に占める割合として通常、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。前記範囲を満足することで、良好な耐水性を得ることができるほか、防曇性樹脂層の強度が向上する。一方、(D)成分を用いる場合には、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、十分な防曇性が得られ、かつ抗菌性能が良好となる。
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に防曇性樹脂層を備えており、防曇性樹脂層は上述の本発明の防曇性樹脂組成物により形成されたものである。なお、防曇性樹脂層は、防曇性樹脂組成物を塗布して乾燥したものでもよく、硬化したものでもよい。
<基材フィルム>
基材フィルムとしては、本発明の効果を奏するものであれば、特に限定されないが、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有するポリエステルフィルムが好ましい。
基材フィルムを構成するポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、2層構造、3層構造などでもよいし、本発明の要旨を逸脱しない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。また、ポリエステルフィルムとしては、無延伸フィルムまたは少なくとも一軸方向に延伸したポリエステルフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムまたは無延伸ポリエステルフィルムがより好ましく、二軸延伸フィルムがさらに好ましい。
使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸等の1種または2種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の1種または2種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。また、ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、ポリエステルフィルムの最外層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエスエルは、エステル化もしくはエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
ポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性向上のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
フィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。配合する粒子の種類は、易滑性の付与が可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子;アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μmの範囲である。5μm以下であると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じない。また、フィルムの透明性が良好となる。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常5質量%未満、好ましくは0.0003~3質量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、透明性の観点から良好なフィルムとなる。一方、上記範囲で粒子を含有することで滑り性の点でも良好となる。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、ポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
基材フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、25~1000μm、好ましくは30~800μm、より好ましくは35~600μm、さらに好ましくは40~400μmの範囲である。
次にポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
(無延伸ポリエステルフィルム)
先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを、押出機を用いてダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/または液体塗布密着法が好ましく採用される。このようにして、無延伸ポリエステルフィルムを得る。
(延伸ポリエステルフィルム)
前記方法により得られた未延伸シートは、次に一軸方向に、さらには二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3~7倍、好ましくは3.5~6倍である。そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向及び幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4~50倍、好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
<防曇性樹脂層>
防曇性樹脂層は、前述の防曇性樹脂組成物により形成された層である。
防曇性樹脂層の厚み(乾燥後)は、好ましくは0.01μm以上1μm以下、より好ましくは0.02μm以上0.5μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上0.1μm以下、特に好ましくは0.03μm以上0.08μm以下である。防曇性樹脂層の厚みが上記の範囲内であれば、良好な防曇性を付与できる。
防曇性樹脂層の形成方法は特に限定されず、インラインコーティング、オフラインコーティング等があるが、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムの何れかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と防曇性樹脂層の形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、防曇性樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
また、延伸前にフィルム上に防曇性樹脂層を設けることにより、防曇性樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより防曇性樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等により、フィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、防曇性樹脂層の造膜性が向上し、防曇性樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な防曇性樹脂層とすることができる。
インラインコーティングによって防曇性樹脂層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1~50質量%程度を目安に調整した防曇性樹脂層組成物をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層フィルムを製造するのが好ましい。本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、防曇性樹脂組成物中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
防曇性樹脂層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
ポリエステルフィルム上に防曇性樹脂層を形成する際の乾燥及び硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより防曇性樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
一方、インラインコーティングにより防曇性樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明の積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム(基材フィルム)にはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
防曇性樹脂層中の各種成分の分析は、例えばTOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
<機能層>
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に防曇性樹脂層を備えることが特徴である。防曇性樹脂層は基材フィルムの片面に設けてもよいし、両方の面に設けてもよい。また基材フィルムの片面に防曇性樹脂層を形成し、もう一方の面には異なる機能層を設けてもよい。
機能層としては、例えば、低反射や透過率向上などの機能を持つ視認性向上層、傷つきを防止するためのハードコート層、清潔さを保つための抗菌層などが挙げられる。
なお、機能層は機能層形成組成物(樹脂層形成組成物)を調製しておき、基材フィルムに塗布することで形成するとよい。
<視認性向上層>
視認性向上層は、低反射率設計にした層であり、全光線透過率を向上させることができる機能層である。機能層を低反射設計にすることにより、光や物の映り込みを防ぐことが可能となる。さらに反射率と全光線透過率は相互に関係する特性であり、光の吸収が少なく、透明性が高いポリエステルフィルムでは、低い反射率にすることで高い全光線透過率を示し、視認性を向上させることが可能となる。
視認性向上層は、絶対反射率が波長300~800nmの範囲に1つの極小値を有し、当該極小値が3.0%以下であることが好ましい。極小値の波長としてより好ましい条件は、400~700nmの範囲、さらに好ましくは450~650nmの範囲である。また、極小値は2.5%以下、さらには2.0%以下が好ましい。
視認性向上層としては屈折率が低い樹脂を含むことが好ましい。屈折率が低い樹脂としてはフッ素含有化合物、アクリル樹脂などが挙げられる。
(フッ素含有化合物)
フッ素含有化合物としては、塗膜の強度を高めるという観点からフッ素含有樹脂であることが好ましい。フッ素含有樹脂の具体例としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等を単量体とするフルオロオレフィン系共重合樹脂;フルオロメチレンエーテル基、ジフルオロメチレンエーテル基、フルオロエチレンエーテル基、ジフルオロエチレンエーテル基、テトラフルオロエチレンエーテル基、ヘキサフルオロプロピレンエーテル基等の水素原子の一部又は全てがフッ素原子に置換化されたポリアルキレンエーテル基とその他の単量体とを重合してなるフッ素系共重合樹脂;ヒドロキシ基含有のフッ素樹脂共重合体と(メタ)アクリル酸エステル系化合物又は他の単量体とをグラフト重合してなるフッ素系共重合樹脂;パーフルオロアルキル基を有するビニル重合体等が挙げられる。
中でも屈折率が低く、より効果的に反射を抑えて透過率を向上できるという観点から、フルオロオレフィン系共重合樹脂や、水素原子の一部又は全てがフッ素化されたポリアルキレンエーテル基を含むフッ素樹脂共重合体が好ましい。
水素原子の一部又は全てがフッ素原子に置換されたポリアルキレンエーテルとその他の単量体を重合してなるフッ素系共重合樹脂としては、ポリフルオロアルキレンエーテル基を有するウレタン樹脂、ポリフルオロアルキレンエーテル基を有するポリエステル樹脂、ポリフルオロアルキレンエーテル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
ポリフルオロアルキレンエーテル基を有するウレタン樹脂を構成するその他の単量体としては、イソシアネート化合物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が例示される。
ウレタン樹脂を構成するその他の単量体として、その他に、フッ素原子を含まないポリオール類、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等のカルボキシ基を有するポリオール等が挙げられる。これらの中でも、水を分散溶媒とする場合に自己乳化できるという観点からカルボキシ基を有するポリオールを含むことが好ましく、中でもジメチロールプロパン酸がより好ましい。
視認性向上層は、フッ素含有化合物を含む樹脂層形成組成物により形成されてなることが好ましい。樹脂層形成組成物は、不揮発成分としてフッ素含有化合物からなるものでもよいし、その他の成分を含有してもよい。
また、視認性向上層は、フッ素含有化合物と架橋剤を含む樹脂層形成組成物を硬化されてなることがより好ましい。このように架橋剤を含む樹脂層形成組成物を硬化することで、視認性向上層の強度が向上する。なお、架橋剤の詳細は、後述する通りである。
視認性向上層形成組成物におけるフッ素含有化合物の含有量は、樹脂層形成組成物における不揮発成分に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは40~98質量%、更に好ましくは50~95質量%の範囲である。30質量%以上とすることで、視認性向上層の屈折率を効果的に下げ、反射率を抑えて全光線透過率を向上させることが可能となる。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、更にはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、基材との密着性をより向上させるために、ヒドロキシ基、アミノ基を含有することも可能である。
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシ基含有モノマー類及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体;プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
<ハードコート層>
ハードコート層としては、鉛筆硬度がF以上であることが好ましい。鉛筆硬度がF以上であることで、積層フィルムの表面を傷や汚れなどから保護することができる。以上の観点から、鉛筆硬度はH以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。
ハードコート層は、各種ハードコート剤を用いることができ、上記鉛筆硬度を得られるものであれば限定されないが、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物を含有するハードコート剤を用いて形成された層が挙げられる。
具体的には、活性エネルギー線の照射により硬化物を形成する重合性モノマーや重合性オリゴマー等を含んでいてもよい。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
より具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコールの(メタ)アクリル誘導体;ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のモノマー又はオリゴマーが挙げられる。これら重合性モノマー又は重合性オリゴマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも高い表面硬度が得られる点で多官能アルコールの(メタ)アクリル誘導体やウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
<抗菌層>
抗菌層は細菌および真菌に対して発育阻止効果を有する機能層であり、抗菌層表面の細菌の増殖を抑え、フィルムを清潔に保つ効果が得られる。抗菌層は前述の無機系抗菌剤や有機系抗菌剤などの抗菌剤を含む層が挙げられ、防曇性樹脂層と同一の組成であっても、異なる組成であっても良い。
抗菌層は抗菌剤をフィルム表面に保持するために各種のポリマーを併用することが好ましい。ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でもポリエステルフィルムへの密着性が優れるという点において、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ;多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノ-ルA-エチレングリコ-ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
(架橋剤)
機能層形成組成物は、塗膜の強度を向上させる観点で、更に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも樹脂層の耐久性を向上できるという観点から、メラミン化合物が好適に用いられる。架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n-ブチロール化、イソブチロール化等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられ、これらの中ではメチルアルコールがより好ましい。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。さらに、メラミン化合物の反応性を上げるために、樹脂層形成組成物には、更に触媒を配合してもよい。
なお、上記した架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において反応させて、樹脂層の性能を向上させるように設計するとよい。形成される樹脂層中には、架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測される。
機能層における架橋剤の含有量は、機能層形成組成物における不揮発成分に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%、更に好ましくは8~30質量%の範囲である。1質量%以上とすることで、架橋剤を配合したことによる効果を発揮しやすくなる。また、50質量%以下とすることで、屈折率を低く保つことができ、透明性を維持することができる。
機能層の厚み(乾燥後)は、好ましくは0.04μm以上0.15μm以下、より好ましくは0.06μm以上0.13μm以下である。機能層の厚みが上記の範囲内であれば、全光線透過率が高く、視認性を良好にできる。
機能層を設ける方法としては、防曇性樹脂層の形成と同様であり、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
ポリエステルフィルム上に機能層を形成する際の乾燥及び硬化条件に関しても、防曇性樹脂層の形成と同様であり、例えばオフラインコーティングにより機能層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
一方、インラインコーティングにより機能層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよいこと、及び基材フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよいことは、防曇性樹脂層を形成する場合と同様である。
なお、機能層中の各種成分の分析についても、防曇性樹脂層の分析と同様に、例えばTOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
[積層フィルムの特性]
1)水滴接触角と拡張法前進角の差
本発明の積層フィルムは、防曇性樹脂層表面に水滴滴下20~60秒経過後の水滴接触角平均値、および拡張法による液体吐出後20~60秒経過後の前進接触角平均値の差(前進接触角-水滴接触角)が1°以上である。
より詳細には、自動接触角計(DataPhysics社製、型式OCA20)を用いて測定した、水滴滴下20~60秒経過後の水滴接触角平均値、および拡張法による液体吐出後20~60秒経過後の前進接触角平均値の差(前進接触角-水滴接触角)が1°以上であり、好ましくは3°以上、より好ましくは4°以上、さらに好ましくは5°以上である。
水滴が防曇性樹脂層表面に接触した際、樹脂層表面から、防曇性樹脂層由来の成分が一部、水滴に溶出しながら樹脂層表面に濡れ広がっていると考えられる。そのため、前進接触角と水滴接触角の差が1°より小さい場合、防曇性樹脂層成分が水滴に溶出する速度よりも早く、新たに接触した水滴が防曇性樹脂層表面に濡れ広がるため、樹脂層表面に形成される水膜の粘度差が、着弾した水滴の位置によって大きくなることでにじみが生じ、フィルムを通して、向こう側の景色を見ようとしても、視界が悪く、視認性が低下すると推察される。
2)水滴接触角
本発明の積層フィルムは、防曇性樹脂層表面に水滴滴下後、60秒経過後の接触角が35°以下であることが好ましい。
より詳細には、本発明の積層フィルムにおける防曇性樹脂層は、自動接触角計(DataPhysics社製、型式OCA20)を用いて測定した、水滴滴下60秒経過後の接触角が35°以下であるのが好ましく、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは25°以下、特に好ましくは20°以下である。当該接触角が上記範囲であると防曇性能に優れる。
3)防曇性樹脂層の膜厚
防曇性樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作製した切片をRuO染色し、防曇性樹脂層断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
4)防曇性(初期)
本発明の積層フィルムは、40℃の湯煎上に防曇性樹脂層を1分間晒した後の防曇性評価がランク2以上であることが好ましい。ランクは下記基準に基づくものであり、数値が大きいほど良好である。
(判定基準)
ランク1:フィルム表面に水滴が形成されて曇り、フィルムを通した視認性が低下した
ランク2:フィルム表面に形成された水膜ににじみが見えたが、フィルムを通した視認性への影響は無かった
ランク3:フィルム表面に明確な変化は見られず、フィルムを通した視認性は良好だった
5)浸水処理後の防曇性
本発明の積層フィルムは、23℃の水に1分間浸漬した後の防曇性評価がランク2以上であることが好ましい。ランクは上記したものと同様である。
6)防曇性樹脂層の塗膜残存率
本発明の積層フィルムは、23℃の水に1時間浸漬した後、防曇性樹脂層の塗膜残存率が70%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、45%以下であることが特に好ましい。防曇性被膜の残存率が小さいほどリサイクル性が高いことを意味する。
23℃の水に1時間浸漬した後、上記3)防曇性樹脂層の膜厚と同様の手法によって浸漬後の防曇性樹脂層の膜厚を測定した。浸漬前後の防曇性樹脂層の膜厚より、塗膜残存率を算出した。
塗膜残存率が小さいほど、防曇性樹脂層の除去が容易であり、リサイクル性が良好であることを示す。
7)全光線透過率
株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、JIS K 7361に準じて測定した。全光線透過率としては、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上である。
[積層フィルムの再利用]
本発明の積層フィルムは、一定期間利用した後、その役目を終えると再利用する、リサイクル性も考慮した設計にしているのが特徴である。すなわち、本発明の積層フィルムは、防曇性樹脂層または防曇性樹脂層に加えて機能層を溶媒等に溶解させ、または剥離して、基材フィルム(積層フィルム)を再利用する使用方法である。
より具体的には、積層フィルムを構成する、防曇性樹脂層あるいは機能層を、洗浄剤を用いて、除去するものである。除去の方法としては、例えば、水あるいは溶媒の入った洗浄槽に浸漬する浸漬法、水あるいは溶媒を塗布する塗布法、気化した水あるいは溶媒を吹き付ける吹き付け法などが挙げられる。これらのうち、機能層への水あるいは溶媒の浸透性から、浸漬法が好ましい。
洗浄剤としては、取り扱い性の点から、水系が好ましく、溶媒としては、アルコール類を使用するのが好ましい。
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。洗浄性の観点からは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びベンジルアルコールがより好ましい。
また、洗浄性の観点から、アルコール類の酸性度定数(pKa)が10.0以上、20.0以下の範囲であることが好ましく、10.0以上、18.0以下がより好ましく、12.0以上、16.0以下がさらに好ましく、14.0以上、15.6以下の範囲が特に好ましく、14.0以上、15.4以下が最も好ましい。
一部アルコールの酸性度定数(pKa)を次に示す。ベンジルアルコール(pKa=15.4)、メタノール(pKa=15.5)、エタノール(pKa=16.0)、1-プロパノール(pKa=16.1)、2-プロパノール(pKa=17.1)、1-ブタノール(pKa=16.1)、tert-ブタノール(pKa=18.0)。
上記に示すアルコールの酸性度定数(pKa)の値から、酸性度定数(pKa)15.4以下のアルコール類とは、メタノールよりも酸性度定数(pKa)が小さいアルコール類と言える。
浸漬法における溶媒の温度としては、室温(20℃)以上であることが好ましい。室温(20℃)以上であると、溶媒の粘度が低く、機能層へ浸透しやすいため良好な洗浄性が得られる。以上の観点から、浸漬法における洗浄剤の温度としては40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
また、溶媒の温度の上限値としては、洗浄剤を溶液状態で用いる場合には、沸点以下の温度が好ましい。本願の好適な態様である水系洗浄剤の場合は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
防曇性樹脂層のみから構成される場合、水あるいは温水の利用、防曇性樹脂層と機能層とを備えた場合には、アルコール類のみ、あるいは水とアルコール類とを併用するなど、水あるいはアルコール類の溶媒を適宜、使い分けることで、積層フィルムの防曇性樹脂層あるいは機能層を効率的に除去することができる。
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した 場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない範囲において、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法及び評価方法は次の通りである。
(1)ポリエステルの固有粘度
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)粒子の平均粒径
TEM(Hitachi社製 H-7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
(3)防曇性樹脂層の膜厚
防曇性樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作製した切片をRuO染色し、防曇性樹脂層断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
(4)水滴接触角
23℃、50%RHの環境下で24時間以上調湿したフィルムサンプルの防曇層表面の接触角を、自動接触角計(DataPhysics社製、型式OCA20)を用いて、2μLの水滴を防曇層表面へ接触後、60秒経過後の水滴接触角、および20~60秒経過後の水滴接触角平均値を測定した。
(5)拡張法による前進接触角
23℃、50%RHの環境下で24時間以上調湿したフィルムサンプルの防曇層表面の接触角を、自動接触角計(DataPhysics社製、型式OCA20)を用いて、防曇層表面に2μLの水滴を接触後、できた水滴の中央に水供給シリンジの先端を接触させ、0.06μL/秒の流量で水を供給し、20~60秒後の水滴の前進接触角平均値を測定した。
(6)防曇性(初期)
40℃の湯煎上に防曇性樹脂層を1分間晒した後の防曇性を下記基準により評価した。
(判定基準)
ランク1:形成された水滴で曇り、フィルムを通した視界が遮られた
ランク2:形成された水膜でにじみが見えたが、フィルムを通した視界は良好だった
ランク3:フィルムを通した視界に影響は無かった
(7)浸水処理後の防曇性評価
試料フィルムを23℃の水に1分間浸漬した後、防曇性(初期)と同様の基準により評価した。
(8)防曇性樹脂層の塗膜残存率
23℃の水に1時間浸漬した後、上記(3)防曇性樹脂層の膜厚と同様の手法によって浸漬後の防曇性樹脂層の膜厚を測定した。
塗膜残存率が小さいほど、防曇性樹脂層の除去が容易であり、リサイクル性が良好であることを示す。
(9)フィルムヘーズ
株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、JIS K 7361に準じて、積層フィルムのヘーズを測定した。
(10)全光線透過率
株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、JIS K 7361に準じて、積層フィルムの全光線透過率を測定した。評価基準を以下として判定した。
◎:全光線透過率が95%以上
〇:全光線透過率が93%以上95%未満
△:全光線透過率が90%以上93%未満
×:全光線透過率が90%未満
(11)機能層からの絶対反射率極小値の測定方法
あらかじめ、機能層の測定裏面(防曇性樹脂層面)に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V-670 および自動絶対反射率測定装置 ARMN-735)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで、機能層表面を波長範囲300~800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における波長(ボトム波長)と絶対反射率を評価した。
(12)抗菌性能
大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する24時間培養後の抗菌活性値を、JIS Z 2801に準じて測定した。抗菌活性値算出時の無加工試験片は、表面処理を行っていない二軸延伸ポリエステルフィルム(防曇性樹脂層を塗布しない以外は実施例1と同様にして作製したフィルム)を用いた。
(13)総合評価
防曇性(初期・浸水処理後)、防曇性樹脂層の塗膜残存率を総合評価した。
A:防曇性がいずれもランク3であり、塗膜残存率が30%以下
B:防曇性(初期)がランク3であり、防曇性(浸水処理後)ランク2であり、塗膜残存率が30%以下
C:防曇性がともにランク2であり、塗膜残存率が30%以下、もしくは防曇性(初期)がランク3であり、防曇性(浸水処理後)がランク2であり、塗膜残存率が30%より大きい
D:防曇性がともにランク2であり、塗膜残存率が30%より大きい
E:防曇性の少なくとも一方がランク1
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
<ポリエステル(1)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール55質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.04質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.02質量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04質量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。温度は230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65のポリエステル(1)を得た。
<ポリエステル(2)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール45質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.06質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03質量部を添加した後、エチレングリコールに分散させた平均粒径2.7μmのシリカ粒子を0.3質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。温度は230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65のポリエステル(2)を得た。
防曇性樹脂層組成物としては下記を用いた。
(A)ポリビニルアルコール系樹脂(変性ポリビニルアルコール系樹脂含む)
A1:ケン化度 88モル%、平均重合度600のPVA(PVA系樹脂)
A2:ケン化度 50モル%、平均重合度200の、ポリエチレンオキサイド基を有するPVA(変性PVA系樹脂)
(B)酸触媒
2-スルホ安息香酸無水物
(C)アンモニウム塩基含有化合物
ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート・メタンスルホナート)、数平均分子量30000
(D)架橋剤
D1:オキサゾリン化合物:オキサゾリン基含有アクリルポリマー(オキサゾリン基量4.5mmol/g)
D2:エポキシ系架橋剤:水溶性ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(グリシジル基量6.5mmol/g)
D3:メラミン化合物:メチロール基、メトキシ基及びイミノ基を有する部分エーテル化メラミン(メチロール基、メトキシ基、イミノ基の合計官能基量19.8mmol/g)
(E)その他成分
E1:ポリアミノプロピルビグアナイド塩酸塩(有機系抗菌剤)
E2:ショ糖脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製 リケマールA)
(機能層形成組成物12)
フッ素含有化合物:メラミン化合物=80:20(質量%)の組成物
フッ素含有化合物:イソホロンジイソシアネート/ジメチロールプロパン酸/パーフルオロエーテルグリコール(ジフルオロエチレンオキサイド:ジフルオロメチレンオキサイド:テトラフルオロエチレンオキサイド=5:43:52(mol%)の共重合体)=49/28/23(mol%)である、フッ素系ポリエーテルウレタン樹脂の水分散体
実施例1
ポリエステル(1)とポリエステル(2)とを質量比で92/8でブレンドしたものをA層、およびポリエステル(1)のみをB層の原料として、押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融し、A層を二分配して再外層(表層)、B層を中間層とする2種三層(A/B/A)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/A=5/90/5となるよう共押出し、表面温度40~50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させ、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す防曇性樹脂層組成物1を塗布し、次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.3倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、膜厚(乾燥後)が0.07μmの防曇性樹脂層を有する、厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例2~10および比較例1
防曇性樹脂組成物を表1、表2に示すように変更する以外は実施例1と同様に実施して、積層フィルムを得た。
実施例11
実施例1において、一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す防曇性樹脂組成物4を塗布して、膜厚(乾燥後)が0.07μmの防曇性樹脂層を有する厚み50μmの一軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例12
実施例1において、一軸延伸フィルムの片面に防曇性樹脂層組成物4を塗布し、一軸延伸フィルムのもう一方の面にも、膜厚(乾燥後)が0.09μmとなるように防曇性樹脂組成物4を塗布し、次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.3倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、膜厚(乾燥後)が0.07μmの防曇性樹脂層と、もう一方の面に膜厚(乾燥後)が0.09μmの防曇性樹脂層を有する厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例13
実施例1において、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記表1に示す防曇性樹脂組成物4を塗布し、もう一方の面に、上記に記載する樹脂組成物12を塗布して、膜厚(乾燥後)が0.07μmの防曇性樹脂層と、もう一方の面に膜厚(乾燥後)が0.09μmの機能層(視認性向上層)を有する厚み250μmの無延伸ポリエステルフィルムを得た。
参考例1
実施例1において、防曇性樹脂組成物1に代えて、防曇性樹脂組成物11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
本発明の防曇性樹脂組成物および積層フィルムは、良好な防曇性能を維持しながら、それでいて、リサイクル性が良好である。例えば、農業用、医療用、包装用など、各種防曇性が必要とされる用途に好適である。その中でも、特にフェイスシールド用に好適である。さらに、その中でも特に使い捨て用途に好適であり、回収してリサイクルすることが可能である。

Claims (23)

  1. (A)ケン化度が50~99モル%であり、平均重合度が200以上1800以下であるポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(C)アンモニウム塩基含有化合物を含む防曇性樹脂組成物であって、前記防曇性樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、前記(C)アンモニウム塩基含有化合物の含有量が50質量%以下5質量%以上である、防曇性樹脂組成物
  2. 前記ポリビニルアルコール系樹脂が変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1に記載の防曇性樹脂組成物。
  3. さらに(D)架橋剤を含有する請求項1または2に記載の防曇性樹脂組成物。
  4. 前記(D)架橋剤の含有量が前記防曇性樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として20質量%以下である請求項3に記載の防曇性樹脂組成物。
  5. 基材フィルムの少なくとも片面に請求項1~のいずれか1項に記載の防曇性樹脂組成物により形成された防曇性樹脂層を備えた積層フィルム。
  6. 基材フィルムの少なくとも片面に防曇性樹脂組成物により形成された防曇性樹脂層を備えた積層フィルムであって、前記防曇性樹脂組成物が、(A)ケン化度が50~99モル%であり、平均重合度が200以上1800以下であるポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(C)アンモニウム塩基含有化合物を含み、前記防曇性樹脂層の厚み(乾燥後)が0.01μm~1μmである、積層フィルム。
  7. 前記防曇性樹脂層表面に水滴滴下20~60秒経過後の水滴接触角平均値、および拡張法による液体吐出後20~60秒経過後の前進接触角平均値の差(前進接触角-水滴接触角)が1°以上である請求項5又は6に記載の積層フィルム。
  8. 前記防曇性樹脂層表面に水滴滴下後、60秒経後の接触角が35°以下である、請求項5~のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  9. 40℃の湯煎上に前記防曇性樹脂層を1分間晒した後の防曇性評価がランク2以上である、請求項~8のいずれか1項に記載の積層フィルム。
    ランク2:形成された水膜でにじみが見えたが、フィルムを通した視界は良好
  10. 浸水処理(23℃で1分間浸漬)後の防曇性評価がランク2以上である、請求項~9のいずれか1項に記載の積層フィルム。
    ランク2:形成された水膜でにじみが見えたが、フィルムを通した視界は良好
  11. 23℃の水に1時間浸漬した後、前記防曇性樹脂層の塗膜残存率(%)が55%以下である、請求項~10のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  12. 前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項~11のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  13. 前記基材フィルムが無延伸または少なくとも一軸方向に延伸したポリエステルフィルムである、請求項~12のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  14. 前記防曇性樹脂層の厚み(乾燥後)が0.01μm~1μmである、請求項~13のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  15. 前記防曇性樹脂層の反対面に機能層を備えた、請求項~14のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  16. 前記機能層が視認性向上層である、請求項15に記載の積層フィルム。
  17. 前記視認性向上層がフッ素含有化合物と架橋剤を含む樹脂組成物を硬化させた樹脂層である、請求項16に記載の積層フィルム。
  18. 請求項~17のいずれか1項に記載の積層フィルムを水および/またはアルコール系溶媒で処理した後、再利用する積層フィルムの使用方法。
  19. 基材フィルムの少なくとも片面に防曇性樹脂組成物により形成された防曇性樹脂層を備えた積層フィルムを水および/またはアルコール系溶媒で処理した後、再利用する積層フィルムの使用方法であって、前記防曇性樹脂組成物が、(A)ケン化度が50~99モル%であり、平均重合度が200以上1800以下であるポリビニルアルコール系樹脂を含み、かつ(B)酸触媒および(C)アンモニウム塩基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、積層フィルムの使用方法。
  20. 前記防曇性樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、前記(B)酸触媒の含有量が10質量%以下0.1質量%以上であり、前記(C)アンモニウム塩基含有化合物の含有量が50質量%以下5質量%以上である、請求項19に記載の積層フィルムの使用方法
  21. フェイスシールド用である、請求項1~のいずれか1項に記載の防曇性樹脂組成物。
  22. フェイスシールド用である、請求項~17のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  23. フェイスシールドとしての請求項18~20のいずれか1項に記載の積層フィルムの使用方法。
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