JP7570087B2 - 病的バリアントを利用した前立腺がんの検査方法 - Google Patents
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遺伝子バリアントを国際的データベースClinVar(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/)で確認するとともに、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が作成したガイドラインを使用して、1,456個の遺伝子バリアントについて、一つ一つ病的バリアントか否かを調べた結果、最終的にClinVarの結果と合わせて、同定した遺伝子バリアント1,456個中136個(9.3%)が病的バリアントであると判定した。そして、これらの病的バリアントを有する頻度が健常人と比較して前立腺がん患者、特に59歳以下の前立腺がん患者で有意に多いことを見出し、同定した病的バリアントの保有の有無により、前立腺がんリスクの検査を効率よく行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
[1]前立腺がんの検査方法であって、対象由来の試料を用い、表1に記載の136種類の病的バリアントのうち、1つ以上の存在について解析することを特徴とする、方法。
[2]前記表1の136種類の病的バリアントのうち、No.3、5、7、8、10、11、13、15、17、18、22~27、29、30、32、34、36、39~41、44~56、59、61、62、64~75、77~86、88~93、95、101~111、113~116、118、122~124、126、128、129、および131~136から選択される1つ以上の病的バリアントの存在を解析することを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3]前記病的バリアントのうち、BRCA2、HOXB13またはATM遺伝子上の病的バリアントの存在を解析する、[1]または[2]に記載の方法。
[4]少なくとも、表2に記載された、No. 24、No. 61、No. 75およびNo. 114のうちの、1つ以上の病的バリアントの存在について解析する、[3]に記載の方法。
[5]表1に記載の病的バリアントのうち、少なくとも10種類以上の病的バリアントについて解析する、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前立腺がんが若年性の前立腺がんである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記表1に記載の136種類の病的バリアントのうちの1つ以上の病的バリアントの存在を解析するための試薬を含む、前立腺がんの検査用試薬。
た病的バリアントのうち、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、10個以上、20個以上、30個以上、40個以上、または50個以上について解析することが好ましい。
なお、「病的バリアントの存在について解析する」とは、病的バリアントを含む領域の塩基配列を解析し、該当配列が病的バリアントを含むか否かを解析することをいう。
NBN遺伝子は、DNA二本鎖切断修復機構やDNA損傷チェックポイント機構に関わるタンパク質をコードする遺伝子であり、前立腺がんとの関連性が知られている(非特許文献1)。例えば、No.5の病的バリアントはGenome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)に登録されている第8染色体のゲノム配列の90992961番目の塩基におけるC/A多型であり、この塩基が変異型(Alt)のAである場合に病的バリアントを保有しているということができる。
ATM遺伝子は細胞周期チェックポイントキナーゼであり、がん抑制タンパクp53やBRCA1などの制御に関わるタンパク質をコードする遺伝子であり、前立腺がんとの関連性が知られている(非特許文献1)。例えば、No.1の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第11染色体のゲノム配列の108098418番目の塩基におけるC/T多型であり、この塩基が変異型(Alt)のTである場合に病的バリアントを保有しているということができる。
BRCA2(breast cancer susceptibility gene II)遺伝子はがん抑制遺伝子として知られている遺伝子であり、乳がんの原因遺伝子であるが、前立腺がんとの関連性も知られている(非特許文献1)。例えば、No.39の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第13染色体のゲノム配列の32893464番目の塩基におけるT/C多型であり、この塩基が変異型(Alt)のCである場合に病的バリアントを保有しているということができる。
PALB2遺伝子はBRCA2タンパクと結合し、核内の安定した局在や集積に関わるタンパク質をコードする遺伝子であり、前立腺がんとの関連性が知られている(非特許文献1)。例えば、No.91の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第16染色体のゲノム配列の23634387番目の塩基におけるT/A多型であり、この塩基が変異型(Alt)のAである場合に病的バリアントを保有しているということができる。
BRCA1(breast cancer susceptibility gene I)遺伝子はがん抑制遺伝子として知られている遺伝子であり、乳がんの原因遺伝子であるが、前立腺がんとの関連性も知られている(非特許文献1)。例えば、No.101の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第17染色体のゲノム配列の41226411番目の塩基におけるG/A多型であり、この塩基が変異型(Alt)のAである場合に病的バリアントを保有しているということができる。
HOXB13遺伝子は転写因子の一つであり、胚発生に重要なタンパク質をコードする遺伝子であり、前立腺がんとの関連性が知られている(非特許文献1)。例えば、No.111の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第17染色体のゲノム配列の46804205番目の塩基におけるG/A一塩基多型変異であり、この塩基が変異型(Alt)のAである場合に病的バリアントを保有しているということができる。
BRIP1遺伝子はBRCA1タンパクと複合体を形成し、DNA二本鎖切断修復機構を有するタンパク質をコードする遺伝子であり、前立腺がんとの関連性が知られている(非特許文献1)。例えば、No.116の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第16染色体のゲノム配列の59760814番目の塩基の次の位置におけるTの挿入変異であり、この塩基が変異型(Alt)のTの挿入である場合に病的バリアントを保有しているということができる。
CHEK2遺伝子は細胞周期チェックポイント制御およびがん抑制の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子であり、前立腺がんとの関連性が知られている(非特許文献1)。例えば、No.128の病的バリアントはGRCh37/Hg19に登録されている第22染色体のゲノム配列の29083910番目の塩基におけるGの欠失変異であり、この塩基が変異型(Alt)の欠失型である場合に病的バリアントを保有しているということができる。
なお、表1のうち、上記以外のバリアントは今回の解析では健常人で高い割合で検出されたものの、解析の母集団を増やすことで、前立腺がん患者での割合が多い結果になると考えられるので、上記以外の病的バリアントについてもその存在によって前立腺がんリスクを解析可能である。
Accession No. NC_000011.10の108,164,048番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)の一塩基多型変異を意味し、この塩基がTである場合が病的バリアントであり、前立腺がんの可能性または発症リスクが高い。また、対立遺伝子を考慮して解析した場合は、TT>CT>CCの順で前立腺がんの可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がTである被験者には、前立腺がんの予防または治療を行うことが考えられる。
Ref. TTTTAAATTATATTTAGGTATTGGACTTGTTGAAATACTTAGTGATAGATA(配列番号1)
Alt. TTTTAAATTATATTTAGGTATTGGATTTGTTGAAATACTTAGTGATAGATA(配列番号2)
Ref. AAATCGTTTGTGTTTCACATGAAACAATTAAAAAAGTGAAAGACATATTTACAG(配列番号3)
Alt. AAATCGTTTGTGTTTCACATGAAAC AAAAAAGTGAAAGACATATTTACAG(配列番号4)
番号6(変異型: Alt.)に示した。
Ref. TTGTTTCCTAGGCACAATAAAAGATCGAAGATTGTTTATGCATCATGTTTC(配列番号5)
Alt. TTGTTTCCTAGGCACAATAAAAGATTGAAGATTGTTTATGCATCATGTTTC(配列番号6)
Ref. CATAGGCTGGTAGGTTCCCGGATATCCCGGATAGAAGGCAAACTCAGTGGG(配列番号7)
Alt. CATAGGCTGGTAGGTTCCCGGATATTCCGGATAGAAGGCAAACTCAGTGGG(配列番号8)
この場合、各バリアントの対立遺伝子の数とオッズ比を考慮してリスクスコアを算出し、得られたリスクスコアに基づき、前立腺がんのリスクを判定することもできる。
なお、表1に記載の病的バリアントと、それ以外のSNPなどのバリアントと組み合わせて解析してもよい。
なお、いずれのバリアントも、二本鎖DNAのどちらの鎖を解析してもよい。例えば、各配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。
病的バリアントの存在の解析(以下、単に、バリアント解析とよぶ)に用いる試料は、対
象由来の、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されない。バリアントの解析に用いる試料としては、例えば、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。バリアントの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
本発明の方法により判定された結果は、必要に応じて医師等に提供される。結果を提供された医師等は、血液検査、X線検査、CT検査等の必要な検査を行った上で、発症リスクや進行リスクを診断することができる。医師等が前立腺がんの発症リスクや進行リスクが高いと診断した場合には、手術、抗がん剤治療等の治療を施すことができる。また、リスク
が低いと診断した場合には、患者に取って負担が大きいこれらの治療を回避することができる。
本発明はまた、前立腺がんを検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、上記バリアント部位をカバーする塩基配列を含み、ハイブリダイズの有無によってバリアント部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1~8(病的バリアントの配列は配列番号2、4、6、8)のいずれかに示す塩基配列のバリアント部位の塩基を含む配列、またはその相補配列を有する15塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さは好ましくは、15~35塩基であり、より好ましくは20~35塩基である。
研究サンプル
2003年~2018年に、日本全国から、前立腺がんを含む様々な病気の患者からDNAおよび臨床情報を集めるバイオバンク・ジャパンのデータベースから全研究サンプルを得た。本研究では、前立腺がん患者7,744名および男性対照12,520名において病院登録研究を行った。全参加者は、インフォームドコンセントの同意書を提出した。本研究は、東京大学医科学研究所倫理委員会および理化学研究所生命医科学研究センターにより承認された。
非特許文献1において前立腺がんに関係する報告された8つの遺伝子(ATM、BRCA1、BRCA2、BRCA1相互作用タンパク質C末端ヘリカーゼ1[BRIP1]、CHEK2、HOXB13、NBN、およびPALB2)を選択した。
マルチPCRベースの標的配列法(Hum Mol Genet. 2016;25(22):5027-5034.)によって全8遺伝子(37,982bp)の完全コード領域および2bpフランキングイントロン
配列を解析した。その結果、最終的に、患者7,636名の患者および対照個体12,366名において1456遺伝子バリアントを同定し、標的領域の99.98%を少なくとも20シーケンスリードによりカバーした。
米国遺伝医学とゲノム会議および分子病理学協会(ACMG/AMP)ガイドライン(Genet Med. 2015;17(5):405-424, Nat Rev Genet. 2017;18(10):599-612.)、ならびにClinVarに登録された疾患関連性に関する基準(Nucleic Acids Res. 2016;44(D1):D862-D868.)を使用して臨床的有意性を決定した。そして、ACMG/AMPガイドラインによる疾患関連性分類および/またはClinVarにおける疾患関連性の分類に基づいて病的バリアントを決定とした。
症例-対照関連分析を、支配的モデル下、フィッシャーの直接確率検定を使用して行った。病的バリアントと個体群統計的および臨床特徴との関連を調査するため、連続変数に対するt検定および離散変数に対するフィッシャーの直接確率検定またはコクラン・アーミテージ検定を使用した。全統計検定は両側であり、0.05未満のPはボンフェローニ補正を8遺伝子およびPCaの各々の間の関連分析に適用する場合を除いて、統計的に有意とした(P<0.006=0.05/8)。R統計パッケージ(バージョン3.1.3)を使用して全解析を行った。
バイオバンク・ジャパンによって収集された前立腺がん患者(疾患群)7,636人および対照群12,366人のDNAを、前立腺がんの原因として知られる8遺伝子について解析した結果、1,456個の遺伝子バリアントを同定した。同定された遺伝子バリアントを国際的データベースClinVar(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/)で確認したところ、登録されていたのは670個(46.0%)だけであった。また、そのうち58個は病的バリアント、216個は病的バリアントではない遺伝子バリアント、残りの396個は判定不能であった。そこで、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が作成したガイドラインを使用して、1,456個の遺伝子バリアントについて、一つ一つ病的バリアントか否かを調べたところ、最終的にClinVarの結果と合わせて、今回同定した遺伝子バリアント1,456個中136個(9.3%)が病的バリアントであると判定された(表1)。
一方、10人以上で共有する頻度が高い病的バリアントが、ATM遺伝子では1個、BRCA2遺伝子では2個、HOXB13遺伝子では1個見つかった(図1)。このうち、ATMとHOXB13で見つかった2個のバリアントは、これまでClinVarに登録のない新しい病的バリアントであった。
Claims (7)
- 前立腺がんの可能性および/または発症リスクの検査方法であって、対象由来の試料を用い、表1に記載の136種類の病的バリアントのうち、BRCA2、HOXB13、ATM遺伝子上の病的バリアントであるNo.8~43、45~74、77~90、および111~115から選択される1つ以上の存在について解析することを特徴とする、方法であって、
前記病的バリアントを含む塩基配列の表1記載の塩基(Ref)に相当する塩基における
多型を分析し、該分析結果に基づいて、
病的バリアントを含む塩基配列の表1記載の塩基(Ref)に相当する塩基が、表1記載
の塩基(Alt)である場合、
前立腺がんの可能性および/または発症リスクが高いと判定される、方法。
- 前記表1の136種類の病的バリアントのうち、No. 8、10、11、13、15、17、18、22~27、29、30、32、34、36、39~41、45~56、59、61、62、64~74、77~86、88~90、111、および113~115から選択される1つ以上の病的バリアントの存在を解析することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 表1に記載の病的バリアントのうち、少なくとも10種類以上の病的バリアントについて解析する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 前立腺がんが若年性の前立腺がんである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
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| JCO Precision Oncology,2020年03月04日,4,139-151 |
| Lancet,2016年,387,70-82 |
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