JP7572205B2 - 堆肥の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態の一つは、堆肥および堆肥の製造方法に関する。例えば、本発明の実施形態の一つは、水溶性リン酸を豊富に含有する堆肥とその製造方法に関する。
家畜などの動物からの排泄物は、堆肥の原料となる有機肥料源として利用することができる。例えば特許文献1には、動物の排泄物である糞と酸化カルシウムや酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化マンガンなどを含む鉄鋼スラグを混合することで、植物の生育に有効な堆肥が製造できることが開示されている。
特開2012-180266号公報
本発明の実施形態の一つは、堆肥とその製造方法を提供することを課題の一つとする。例えば本発明の実施形態の一つは、新規な組成を有する堆肥とその製造方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、即効性の水溶性リン酸を豊富に含む堆肥とその製造方法を提供することを課題の一つとする。
本発明の実施形態の一つは、堆肥を製造する方法である。この方法は、リン酸鉄(III)を含む炭化物を有機肥料源と混合して混合物を調製すること、上記混合物を嫌気性条件下で処理すること、および嫌気性条件下で処理された上記混合物を塩基と混合することを含む。
本発明の実施形態の一つは、堆肥である。この堆肥は、炭化物、水溶性リン酸、ならびに酸化鉄(III)、炭酸鉄(III)、および水酸化鉄(III)の少なくとも一つを含む。
本発明の実施形態の一つに係る堆肥の製造方法を示すフロー。 本発明の実施形態の一つに係る堆肥の製造のための製造装置の模式図。 本発明の実施形態の一つに係る堆肥の製造方法を利用する二酸化炭素の貯留を示す概念図。
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
本明細書では、「リン酸」という用語は、狭義のリン酸、すなわち、H3PO4の化学式で表される化合物を意味するだけでなく、リン酸(H3PO4)のほか、種々のリン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩を示す用語として用いられる。したがって、例えばリン酸鉄は、特記しない限り、リン酸鉄のみならず、リン酸一水素鉄、リン酸二水素鉄を意味し、含まれる鉄イオンも2価でも3価でもよい。
1.堆肥
本発明の実施形態の一つに係る堆肥は、炭化物(炭)、水溶性リン酸、ならびに酸化鉄(III)、炭酸鉄(III)、および水酸化鉄(III)から選択される鉄化合物の少なくとも一つを含む。その他の成分として、水に加え、非水溶性リン酸(例えば、水に不溶であり、かつ2%クエン酸水溶液に可溶なリン酸(ク溶性リン酸))や含硫黄化合物、含マンガン化合物、含ホウ素化合物、堆肥の原料である有機肥料源に含まれる繊維質などが含まれていてもよい。以下、これらの各成分について説明する。
1-1.炭化物
炭化物は、炭素を主成分として有し、数nmから数十μmの断面径を有する細孔を備える多孔質材料である。炭化物の比重は、0.05g/cm3以上0.8g/cm3以下、または0.1g/cm3以上0.5g/cm3以下であってもよい。炭化物には0価の鉄が含まれていてもよく、2価または3価のリン酸鉄や塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、酸化鉄、臭化鉄などの鉄化合物が含まれていてもよい。これらの鉄や鉄化合物は、炭化物の表面上や細孔内に吸着または担持された状態で炭化物に含まれる。本堆肥中に含まれる炭化物の割合に限定はないが、例えば2重量%以上40重量%以下または5重量%以上35重量%以下である。
1-2.水溶性リン酸
水溶性リン酸としては、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩、リン酸一水素リチウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸一水素アンモニウムなどのリン酸一水素塩、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウムなどのリン酸二水素塩などが例示され、代表的にはリン酸ナトリウムやリン酸カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩、リン酸一水素ナトリウムやリン酸一水素カリウムなどのアルカリ金属のリン酸一水素塩が挙げられる。これらの水溶性リン酸は、本堆肥中に比較的高濃度で含まれる。具体的には、本堆肥中の全リン酸に対して30%以上70%以下、40%以上60%以下、または40%以上50%以下の濃度で含まれてもよい。なお、全リン酸とは水溶性リン酸と非水溶性リン酸の全体を指し、例えば本堆肥中に1重量%以上21重量%以下または5重量%以上15重量%以下の濃度で含まれる。
水溶性リン酸の濃度は、例えばバナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法を用いて決定することができる。この方法では、例えば、堆肥に水を加え、所定量の水可溶部を試料として採取する。この試料に硝酸(1+1)を加えて加熱し、非オルトりん酸をオルトりん酸イオンに加水分解する。その後、バナジン(V)酸アンモニウム、七モリブデン酸六アンモニウムおよび硝酸を加えてりんバナドモリブデン酸塩を生成する。紫外・可視分光光度計を用いてりんバナドモリブデン酸塩の吸収(例えば420nmにおける吸収)を測定することで、水溶性リン酸が定量される。
全リン酸の定量では、バナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法を用いることができる。例えば、所定量の堆肥を硝酸または過塩素酸を用いて分解し、その後バナジン(V)酸アンモニウム、七モリブデン酸六アンモニウム、および硝酸を加える。生成するりんバナドモリブデン酸塩の吸収(例えば420nmにおける吸収)を紫外・可視分光光度計を用いて測定することで、全リン酸が定量される。
1-3.鉄化合物
鉄化合物は、酸化鉄(III)、炭酸鉄(III)、および水酸化鉄(III)の少なくとも一つを含む。鉄化合物は、単一の化合物で構成されていてもよく、混合物であってもよい。堆肥中、鉄化合物の一部は炭化物に吸着または担持されていてもよく、他の一部は炭化物から遊離した状態で存在していてもよい。鉄化合物は、本堆肥中、0.1重量%以上10重量%以下の濃度で含まれてもよい。
1-4.その他の成分
上述した非水溶性リン酸としては、リン酸水素カルシウムやリン酸二水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの非水溶性リン酸は、例えば後述する堆肥の製造工程で原料として用いられる炭化物上に担持または吸着された化合物、および/または有機肥料源に由来する。
含硫黄化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の硫酸塩などが例示される。含マンガン化合物としては、硫酸マンガンや硝酸マンガン、塩化マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガン塩が挙げられる。含ホウ素化合物としては、上述したホウ酸マンガンのほか、ホウ酸が例示される。堆肥中のこれらの含硫黄化合物、含マンガン化合物、含ホウ素化合物のそれぞれの濃度は、例えば0.01重量%以上1重量%以下でもよい。
上述したように、本堆肥には比較的高濃度で水溶性リン酸が含まれるため、本堆肥は植物の生長に対して即効性のある肥料として機能することができる。また、本堆肥には多孔質材料である炭化物が含まれる。このような炭化物は、土壌の保湿性を向上させるだけでなく、バイオリアクターとしても機能し、細孔に共生する微小動物や微生物によって土壌に養分や水分、酸素などをバランスよく供給することができる。このことから、本堆肥は土壌改良にも寄与することができる。
2.堆肥の製造方法
以下、本発明の実施形態の一つに係る、本堆肥の製造方法について述べる。この製造方法のフローは図1に示される。
2-1.炭化物
(1)バイオマスの炭化による炭化物の調製
まず、炭化物を調製する。具体的には、バイオマスなどの有機物を低酸素濃度で加熱する。ここで、バイオマスとは有機物の一種である、生体由来の物質とその代謝物である。炭化物の調製において利用可能なバイオマスとしては、木に由来する材料が挙げられる。具体的には、板状や柱状の木材、間伐材、剪定廃材、建築廃木材、粉末状のおがくず、パーティクルボートなどの木製成形品が挙げられる。木の種類に制約はなく、スギやヒノキ、竹でもよい。あるいは籾殻、バガス、トウモロコシの軸や葉などの農業廃棄物、藁や麦わら、乾草などの農業副産物もバイオマスの一例として挙げられる。あるいは麻や亜麻、綿、サイザル麻、アバカ、ヤシ毛などの繊維の原料となる植物もバイオマスとして挙げられる。あるいは、バイオマスは海藻などの藻類でもよく、食品残渣や、動物の糞尿から得られるサイレージでもよい。
(2)炭化物への鉄化合物の担持
次に、バイオマスの炭化によって得られる炭化物の表面上や細孔内に鉄化合物を吸着または担持させる。具体的には、常圧または減圧雰囲気下、炭化物を鉄化合物を含む溶液または懸濁液に浸漬して鉄化合物を炭化物に吸着または担持させる。鉄化合物としては、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)(ポリ硫酸鉄を含む)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)などが典型例として挙げられる。
次に、鉄化合物が吸着または担持された炭化物を加熱する。加熱温度は、100℃以上900℃以下、500℃以上800℃以下、または600℃以上750℃以下の範囲で適宜選択すればよい。加熱により水が除去され、鉄化合物担持炭化物が得られる。
浸漬後の炭化物の加熱は、水素や一酸化炭素などの還元性ガス雰囲気下で行ってもよい。これにより、鉄化合物の一部は還元的に熱分解して0価の鉄金属となり得るものの、鉄化合物の一部は2価若しくは3価の鉄化合物、またはこれらの混合物として炭化物の表面や細孔内に吸着または担持される。
鉄化合物担持炭化物中の鉄の含有量は、鉄担持炭化物に対して1質量%以上50質量%以下、3質量%以上30質量%以下、5質量%以上25質量%以下、または10質量%以上25質量%以下となるよう、浸漬条件や加熱条件を調整すればよい。鉄化合物担持炭化物に含まれる鉄は、例えば誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)などで定量することができる。
(3)リン酸鉄を含む炭化物の調製
引き続き、鉄化合物担持炭化物をリン酸を含む水(以下、処理水)と接触させ、リン酸鉄含有炭化物を調製する。処理水は、例えばリン酸ナトリウムやリン酸カリウムなどのリン酸塩を水に溶解して調製してもよいが、河川や湖沼、海などの水域の水を処理水として利用してもよい。例えば、河川や湖沼、海中に鉄担持炭化物が充填された容器を設置し、鉄化合物担持炭化物を水域の水と接触させてもよい。これにより、河川や湖沼、海の水中に含まれるリン酸が鉄化合物担持炭化物上の鉄化合物と反応し、水に対して溶解性の低いリン酸鉄(III)として炭化物に吸着または担持されとともに、水域中のリン酸やリンを含有する有機化合物などが除去される。すなわち、本方法により、リン酸鉄を含む炭化物を低コストで調製できるだけでなく、各種水域の浄水や水質改善を同時に行うことができる。
2-2.堆肥化
引き続き、リン酸鉄含有炭化物を原料の一つとして用い、堆肥化を行う。
(1)有機肥料源との混合
まず、上述した方法で得られるリン酸鉄含有炭化物と有機肥料源を混合する。有機肥料源に対するリン酸鉄含有炭化物の量に制約はないが、例えば有機肥料源に対して10重量%以上40重量%以下または15重量%以上25重量%以下のリン酸鉄含有炭化物を加えればよい。得られる混合物(一次混合物)の粘度が高い場合には、さらに水を加えて粘度を調整してもよい。有機肥料源としては、牛糞や豚糞、鶏糞などの動物の糞や尿、食品残渣などの食品廃棄物、農産廃棄物、生ごみ、汚泥などに例示される、生物由来の易分解性有機物が挙げられる。易分解性有機物か否かの判断は、例えば土壌と混合した後の二酸化炭素発生量や酸性デタージェント可溶有機物(AD可溶有機物)含量を指標の一つとして用いることができる。
有機肥料源から発生する二酸化炭素の定量は、所定量の試料と土壌の混合物に水を加えて培養を開始し、培養中発生する二酸化炭素を定量することで行えばよい。発生した二酸化炭素は水酸化ナトリウム水溶液で捕集すればよく、これに塩化バリウムを加えて炭酸バリウムとして沈殿させ、炭酸バリウムを塩酸で滴定することで二酸化炭素を定量することができる。例えば、培養開始から10日後までに発生する二酸化炭素の量が、乾燥した試料1gあたり200mg以上、300mg以上、または400mg以上であれば、この試料は易分解性有機物であり、本堆肥を製造するための有機肥料源として利用可能であると判断することができる。
AD可溶有機物の定量は、例えば試料を酸性デタージェント溶液(例えば、0.5mol/Lの硫酸1Lに臭化セチルトリメチルアンモニウム20gを溶解した溶液)中で1時間煮沸し、ろ過する。残渣を洗浄、乾燥して秤量する。その後、残渣を灰化して秤量し、灰化前との重量差を酸性デタージェント繊維(ADF)の量として求める。AD可溶有機物はADF以外の有機物であるため、試料重量からADFと灰化後の残渣の重量を引くことでAD可溶有機物が算出される。このようにして得られるAD可溶有機物の量が、乾燥した試料1gあたり500mg以上、600mg以上、または700mg以上であれば、この試料は易分解性有機物であり、本堆肥を製造するための有機肥料源として利用可能であると判断することができる。
ただし、本発明の実施形態では、有機肥料源は上述した指標やその数値によって限定されることは無く、嫌気性微生物によって分解される有機物であれば有機肥料源として用いることができる。
リン酸鉄含有炭化物と有機肥料源との混合は、密閉可能な、または嫌気性条件を維持可能なチャンバー内で行えばよく、チャンバーの構成や形状に制約はない。例えば図2に示すように、ホッパー104が搭載されたチャンバー100にリン酸鉄含有炭化物と有機肥料源を投入する。ホッパー104とチャンバー100の間には、リン酸鉄含有炭化物と有機肥料源をチャンバー100へ搬送するためのスクリューフィーダ106を設けてもよい。嫌気性微生物による分解を促進するため、チャンバー100は回転できるように構成してもよく、あるいはチャンバー内に撹拌機102を設けてもよい。チャンバー100は外気を遮断できるよう、密閉できるように構成してもよい。また、図示しないが、チャンバー100内部に水を加えるため、あるいはチャンバー100内の気体を置換するための一つまたは複数の開口をチャンバー100に設けてもよい。また、嫌気的な環境であれば、必ずしもチャンバー内でリン酸鉄含有炭化物と有機肥料源との混合をする必要はない。例えば、リン酸鉄含有炭化物および有機肥料源を堆積して発酵させ、その内部を嫌気的な環境としてもよい。
(2)嫌気性処理
引き続き、リン酸鉄含有炭化物と有機肥料源との混合によって得られる一次混合物を嫌気性条件下で処理し、有機肥料源に含まれる有機物を分解する。この嫌気性処理は、チャンバー100内で行ってもよく、チャンバー100とは異なるチャンバーで行ってもよい。嫌気性処理は、有機肥料源に含まれる嫌気性微生物の作用によって行ってもよいが、有機物の分解を促進するため、別途嫌気性微生物を加えてもよい。嫌気性微生物としては、硝酸塩還元菌、鉄還元菌、硫酸塩還元菌、酸生成菌、酢酸生成菌、メタン生成古細菌などが挙げられ、好ましくは鉄還元菌やメタン生成古細菌である。嫌気性処理は、チャンバー100が置かれる外部環境の温度で行ってもよく、あるいは図示しないヒータを用いて加熱しながら行ってもよい。加熱する場合には、その温度は、例えば30℃以上60℃以下とすればよい。嫌気性処理の時間も任意に設定することができ、例えば1日以上120日以下、10日以上60日以下、あるいは15日以上30日以下の範囲から適宜選択すればよい。
この嫌気性処理では、有機物の分解に伴ってチャンバー100内は還元的環境となり、一次混合物の酸化還元電位(ORP)が負に大きくなる。このため、3価のリン酸鉄は2価のリン酸鉄に還元される。このため、3価の鉄化合物を電子受容体として利用する鉄還元菌が含まれる場合、この鉄還元菌の作用を受け、鉄化合物含有炭化物に含まれる3価のリン酸鉄が2価のリン酸鉄へ還元される。2価のリン酸鉄は3価のリン酸鉄と比較して水に対する溶解度が高いため、リン酸鉄は一次混合物中に含まれる水に少なくとも一部が溶解し、2価の鉄イオンとリン酸イオンに解離する。例えば鉄化合物含有炭化物に含まれる3価のリン酸鉄がFePO4の場合、2価のリン酸鉄Fe3(PO42が生成する。
(3)塩基の添加
引き続き、嫌気性処理された一次混合物と塩基を混合する。塩基としては、3価の鉄イオンと結合することで水に対する溶解性の低い鉄化合物を与える陰イオン、およびリン酸イオンと結合して可溶性リン酸を与える陽イオンがイオン結合した塩基を用いることができる。具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、およびアルカリ金属の炭酸水素塩が挙げられる。塩基は、水溶液として加えてもよく、あるいは固体状態で加えてもよい。塩基の添加によりイオン交換が生じ、嫌気性処理によって解離した2価の鉄イオンとリン酸イオンがそれぞれ塩基の陰イオンと陽イオンとイオン結合する。例えばアルカリ金属の水酸化物を塩基として用いた場合、リン酸のアルカリ金属塩が生成するとともに、2価の水酸化鉄が生成する。アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩を塩基として用いた場合、リン酸のアルカリ金属塩が生成するとともに、それぞれ2価の炭酸鉄と炭酸水素鉄が生成する。
塩基の添加は、有機肥料源と鉄化合物含有炭化物を混合するチャンバー100内で行ってもよく、あるいはチャンバー100とは異なるチャンバーで行ってもよい。例えば図2に示すように、ロータリーバルブなどのバルブ108を介してチャンバー100に接続されるチャンバー110に一次混合物を搬送し、チャンバー110に塩基を投入してもよい。図示しないが、チャンバー100、110は互いに接続されていなくてもよい。チャンバー100と同様、チャンバー110にもホッパー112や撹拌機114を設けてもよく、さらに図示しないスクリューフィーダを設けてもよい。塩基との混合が完了して得られる混合物(二次混合物)は、例えばロータリーバルブなどのバルブ116を用いてチャンバー110から取り出せばよい。
なお、上記(2)嫌気性処理と(3)塩基の添加は同時に行ってもよい。例えば、リン酸鉄含有炭化物と有機肥料源との混合によって得られる一次混合物に塩基を添加した後、嫌気性条件下で処理し有機肥料源に含まれる有機物を分解してもよい。または、リン酸鉄含有炭化物、有機肥料源、および塩基を混合した後、嫌気性条件下で処理し、有機肥料源に含まれる有機物を分解してもよい。
(4)殺菌処理
以上のステップにより、本発明の実施形態の一つに係る堆肥を製造することができるが、引き続き殺菌処理を行ってもよい。殺菌処理は、好ましくは堆肥を酸化的雰囲気下で処理することで行う。酸化的雰囲気下の処理は、例えば酸素を含むガス(酸素ガス、空気)を堆肥に接触させる(曝気)ことで行ってもよい。この時、さらに紫外線を堆肥に照射してもよい。この殺菌処理により、有機肥料源に含まれる細菌や微生物などを除去または低減することができる。さらに、有機肥料源に含まれる水、または別途加えた水を蒸発させて水分量を適切に制御することができ、その結果、取り扱いの容易な堆肥を得ることができる。
上述したように、嫌気性処理によって生じる2価のリン酸鉄から遊離したリン酸イオンは、添加された塩基の陽イオンと反応し、アルカリ金属のリン酸塩やリン酸一水素塩、リン酸二水素塩を与える。これらの塩は水溶性であるため、本発明の実施形態の一つに係る堆肥は優れた水溶性リン酸の供給源として機能し、即効性の肥料として植物の生長に寄与することができる。
一方、嫌気性処理によって生じる2価のリン酸鉄から遊離した鉄イオン(II)は、塩基の陰イオンと反応し、2価の鉄化合物(水酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、炭酸水素鉄(II)など)を生成する。この2価の鉄化合物は、一次混合物または二次混合物に含まれる酸素により、あるいは殺菌処理における酸化的雰囲気中の酸素により速やかに酸化され、3価の鉄化合物(水酸化鉄(III)、炭酸鉄(III)、酸化鉄(III)など)となる。例えば、水中で存在する炭酸水素鉄(II)も酸化的に分解され、水酸化鉄(III)を与える。これらの3価の鉄化合物は水に対する溶解性が低いため、堆肥中に析出する。したがって、析出した3価の鉄化合物と水溶性リン酸との反応(イオン交換)の頻度因子は極めて小さく、これらの反応は非常に遅い。その結果、水溶性リン酸は、析出した3価の鉄化合物によってほとんど消失することはなく、本堆肥は即効性の肥料としての機能を維持することができる。
(5)その他の工程
得られた堆肥は肥料として単独で利用してもよく、あるいは上述した含硫黄化合物、含マンガン化合物、または含ホウ素化合物を含む肥料助剤と混合した後に利用してもよい。この場合、肥料助剤は、堆肥中の含硫黄化合物、含マンガン化合物、または含ホウ素化合物の濃度が、例えば0.01重量%以上1重量%以下となるように添加すればよい。混合はミキサーを用いて行えばよく、ミキサーはフリーフォールミキサー、強制ミキサー、Y分岐ミキサー、アジテータミキサー、あるいはパドルミキサーなどから任意に選択することができる。
さらに、得られた堆肥の乾燥、成形などを行ってもよい。成形では、堆肥をペレット状、棒状、粒状、粉状などの任意の形状に加工すればよい。必要に応じ、堆肥の粒径を調整するために解砕や分級を行ってもよい。例えば、平均粒径が10mm以下または0.1mm以上10mm以下となるように堆肥を解砕、分級すればよい。解砕は解砕機を用いて行えばよく、例えば振動ミル、ジェットミル、ボールミル、ローラーミル、ロッドミル、ハンマーミル、インパクトミル、回転ミル、ピンミル、ピン-ディスクミル、あるいは遊星ミルなどの解砕機を利用することができる。解砕機を用いて堆肥を解砕することで表面積が増大し、その結果、水溶性リン酸の土壌への溶出が促進される。分級は分級機を用いて行われ、分級機としては乾式分級式分級機でも湿式分級機のいずれを採用してもよい。例えば気流分級機、重力場分級機、慣性力場分級機、遠心力場分級機などが分級機として例示される。
上述した方法により製造される本発明の実施形態の一つに係る堆肥は、水溶性リン酸を豊富に含むため、化学肥料に匹敵する即効性を示し、追肥に適した肥料として機能することができる。また、主成分である炭化物や有機肥料源は天然資源に由来するため、この堆肥を用いる農法は有機農法の一種と認識することも可能である。
さらに、主成分である炭化物は、バイオマスの炭化によって得ることができる。すなわち、光合成による二酸化炭素の固定によって産出される植物に由来するバイオマスを有効活用することで炭化物が調製される。さらに、この炭化物を利用して堆肥を製造する過程で各種水系の水質改善ができるとともに、本堆肥を土壌へ散布することで、植物によって固定された二酸化炭素を炭化物として地中に貯留することができる。
より具体的に説明すると、図3に示すように、本発明の各実施形態により、バイオマスが炭化されて炭化物が調製され(1)、さらに炭化物から鉄化合物が担持された炭化物が調製される(2)。この鉄化合物担持炭化物は、リン酸鉄含有炭化物へ変換される際に水の浄化に寄与するとともに(3)、有機肥料源との混合、嫌気性処理、塩基との混合を含む一連の過程を通してバイオマスを起源とする炭化物を含む堆肥へ変換される(4)。この堆肥は即効性肥料として土壌に散布され、植物の育成に利用される(5)。植物は大気中の二酸化炭素を光合成によって固定し、食料や構造材料を提供するとともに、炭化物の原料となるバイオマスを副生する(6)。
この(1)から(6)の一連のプロセスによって構築されるサイクルにより、大気中の二酸化炭素が光合成によって有機物として固定化され、この有機物が食料や材料として利用されるとともにバイオマスが副生される。バイオマスは炭化によって炭化物へ変換され、最終的には堆肥として地中に散布される。したがって、大気中の二酸化炭素は炭素として地中に貯留され、これにより、大気中の二酸化炭素の削減に寄与する。また、本堆肥を製造する際に塩基として炭酸塩を用いることで、さらに二酸化炭素を炭酸鉄として固定することができるため、大気中の二酸化炭素の削減に対してより一層の貢献が可能である。
1.リン酸鉄含有炭化物の調製
スギ由来の木材を炭化して得られる炭化物400gを10Lのポリ硫酸第二鉄(II)の水溶液(鉄含有率11%)に、通常大気圧をゼロとしたゲージ圧で-0.09MPa、室温にて10分浸漬した。その後、炭化物を105℃で24時間乾燥させ、さらに窒素および一酸化炭素ガスの存在下、900℃で1時間加熱することで、鉄化合物担持炭化物を得た。鉄化合物含有炭化物中の鉄の含有量は、粉砕した鉄化合物担持炭化物をJIS K 1474に従って処理することで鉄を抽出し、抽出された鉄の含有量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(PerkinElmer社製、Optima 5300 DV)で測定することで求めた。その結果、鉄化合物担持炭化物の全量に対して21重量%の鉄が含まれることが確認された。
2kgの鉄化合物担持炭化物を充填させたカラムに、下水汚泥脱水分離液を2L/日の流量で4日間通水した。なお、ここで用いた下水汚泥脱水分離液は、神奈川県の下水処理場で汚泥を遠心分離して得られたろ液である。その後、得られたリン酸鉄含有炭化物を105℃で8時間乾燥させた。
2.実施例1
本実施例では、リン酸鉄含有炭化物を嫌気性条件下で処理した結果について説明する。
2-1.実験
200mLのポリプロピレン製容器に水40mL、リン酸鉄含有炭化物を5g、水田土壌2gを加えた。さらに有機肥料源として犬用飼料(MARS社製、Pedigree(登録商標))1gを加え、得られた一次混合物を攪拌した。その後、1日ごとに有機肥料源を1gずつ加え、13日間攪拌を続けた。有機肥料源の総量は13gであった。比較例1として、ガス化発電装置で副生した木炭2gとリン酸鉄(III)(富士フィルム和光純薬社製、リン酸鉄(III)n水和物)1.5gをリン酸鉄含有炭化物の替わりに用い、同様の実験を行った。
得られた一次混合物のpHはpHメータ(HORIBA社製計量法型式JF25)を用いて測定し、酸化還元電位ORPはHORIBA社製ガラス電極式水素イオン濃度指示計D―52を用いて測定した。全鉄量と水可溶部の鉄量は、鉄化合物担持炭化物の鉄含有量の測定と同様に測定した。全鉄量の測定では、一次混合物を均一に撹拌した状態でサンプリングした試料を用いた。一方、水可溶部の鉄量の測定では、混合物をろ過し、得られたろ液を試料として用いた。
2-2.結果と考察
一次混合物の測定結果を表1に示す。表1に示すように、pHとORPは実施例1と比較例1の間で大きな差は見られない。実施例1と比較例1における一次混合物の初期のpHはそれぞれ9.1、9.2であり、これらの初期pHと比較すると、13日後のpHは大幅に低下している。この結果は、実施例1と比較例1で用いた水田土壌に含まれる嫌気性微生物の作用によって還元的環境が得られていることを意味する。ここで、全鉄に対する水可溶部中の鉄の重量比(WFe/TFe)を比較すると、比較例1に対して実施例1が極めて高いことが分かる。比較例1における低いWFe/TFeは、試薬由来のリン酸鉄(III)は鉄イオンとリン酸イオンの結合力が強く、一次混合物中で殆ど溶解しないためと考えられる。一方、実施例1において高いWFe/TFeが得られたのは、炭化物に担持されたリン酸鉄(III)は常温での結合により生成されたため、鉄イオンとリン酸イオンの結合力が弱く、溶解性が高いためと考えられる。
Figure 0007572205000001
以上の結果は、嫌気性微生物の作用により、リン酸鉄含有炭化物と有機肥料源の一次混合物においてリン酸鉄(III)の還元が速やかに進行し、水に可溶なリン酸鉄(II)が効率よく生成することを示唆している。
3.実施例2
本実施例では、リン酸鉄含有炭化物と有機肥料源の一次混合物を嫌気性条件下で処理した後、塩基を混合した結果について述べる。
3-1.実験
実施例1と同様の方法で一次混合物を13日間嫌気性条件下で処理した。この後、一次混合物に炭酸ナトリウムを加え、その後24時間攪拌した。炭酸ナトリウムの添加量を4.5g、9.0g、22.5gと変化させ、それぞれ実施例2から4の二次混合物を得た。
pH、ORP、全鉄量、水可溶部の鉄量は、実施例1と同様に測定した。全リン酸濃度と水可溶部のリン酸濃度は、いずれもバナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法によって測定した。紫外・可視分光光度計は、島津社製〇〇UV―2600を用いた。
3-2.結果と考察
分析結果を表2に示す。表2の実施例2から4に示すように、炭酸ナトリウムを添加することで、全鉄量に対する水可溶部中の鉄の重量比(WFe/TFe)が増加する傾向がある。このことは、炭酸ナトリウムを添加することで、二次混合物に炭酸ガスが発生して嫌気反応が促進され、鉄の還元反応が進み、水可溶部中の鉄(II)イオンが増加するためと考えられる。
二次混合物における全リン酸に対する水可溶部のリン酸の重量比Wp/Tpは、塩基の添加量が増大するに伴って増大する。また、塩基を添加しなかった比較例2では、Wp/Tpは極めて低い。このことは、嫌気性条件下の処理によって生成する水溶性リン酸鉄(II)に由来するリン酸イオンが、塩基に含まれるアルカリ金属イオンとイオン結合し、二次混合物中で水溶性リン酸ナトリウムとして存在していることを示している。
Figure 0007572205000002
以上の結果は、リン酸鉄を含む炭化物と有機肥料源の混合物を嫌気性条件下で処理した後にアルカリ金属を陽イオンとして含む塩基と混合することで、嫌気性条件下において生成したリン酸鉄(II)と塩基とのイオン交換が進行し、その結果、水溶性のリン酸(アルカリ金属のリン酸塩)が生成することを示している。このことから、本発明の実施形態の一つに係る製造方法を適用することにより、水溶性リン酸を豊富に含む堆肥を製造できることが理解される。
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
100:チャンバー、102:撹拌機、104:ホッパー、106:スクリューフィーダ、108:バルブ、110:チャンバー、112:ホッパー、114:撹拌機、116:バルブ

Claims (9)

  1. リン酸鉄(III)を含む炭化物を有機肥料源と混合して混合物を調製すること、
    前記混合物を嫌気性条件下で処理すること、および
    前記嫌気性条件下で処理された前記混合物を塩基と混合することを含む、堆肥を製造する方法。
  2. 前記塩基と混合された前記混合物を酸化的雰囲気下で処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸化的雰囲気下での前記処理は、前記混合物を空気と接触させることによって行われる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記塩基との混合の前に、前記混合物に嫌気性微生物を加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記炭化物は、リン酸を含む水に鉄化合物を含む炭化物を接触させることで調製される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記有機肥料源は、動物の糞と食品残渣の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記炭化物と前記有機肥料源との前記混合は、前記有機肥料源に対する前記炭化物の重量比が10%以上40%以上となるように行われる、請求項1に記載の方法。
  8. 前記塩基は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、およびアルカリ金属の炭酸水素塩から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記混合物と前記塩基との前記混合は、前記炭化物に含まれる鉄に対する前記塩基のモル比が10以上20以下となるように行われる、請求項1に記載の方法。
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