以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態における電動機駆動制御システムは、電動機を、制御しつつ、駆動するシステムであり、例えば、電動機と、前記電動機を制御する電動機駆動制御部とを備える、この電動機駆動制御部は、時間経過に従ってトルクの大きさが増減する脈動トルクを表す脈動モデルを用いることによって、次の制御タイミングで生じる脈動トルクを推定する脈動トルク推定部と、前記脈動トルク推定部で推定した脈動トルクを打ち消すための補償値を生成する補償値生成部と、前記補償値生成部で生成した補償値に基づく制御指令値で前記電動機を制御して駆動する駆動制御部とを備える、ここで、前記脈動トルクは、前記電動機の円周方向における起磁力分布の空間高周波成分に起因する第1脈動トルク、および、コギングトルクである第2脈動トルクのうちの少なくとも一方を含む。以下、このような電動機駆動制御部とを備える電動機駆動制御システムについて、より具体的に説明する。
図1は、実施形態における電動機駆動制御システムの構成を示すブロック図である。図2は、前記電動機駆動制御システムにおけるインバータ回路の構成を示す回路図である。図3は、電流制御系のブロック図である。図4は、速度制御系のブロック図である。
実施形態における電動機駆動制御システムSは、例えば、図1に示すように、電動機Mと、インバータ回路IVと、PWM変調器PWと、2相3相変換部CV1と、駆動制御部DCと、3相2相変換部CV2と、回転速度処理部RSCと、電流測定部CSと、回転角度測定部VSと、脈動トルク推定部PTと、補償値生成部CVとを備える。
電動機Mは、インバータ回路IVに接続され、インバータ回路IVの交流出力で駆動される電動機である。例えば、電動機Mは、インバータ回路IVから出力されるU相、V相およびW相の三相交流電力で駆動される同期電動機、より具体的には、本実施形態では表面型永久磁石式同期電動機(Surface mounted permanent magnet synchronous motor、SPMSM)であり、その速度制御を対象としている。なお、電動機Mは、これに限定されるものではなく、例えば、例えば、誘導電動機(induction motor、IM)やSRモータ(Switched Reluctance motor、SRM)等の他の種類であってもよい。
PWM変調器PWは、変更可能なパスル幅で矩形波を出力する回路であり、インバータ回路IVは、直流電力を交流電力に変換する回路であり、本実施形態では、PWM変調器PWおよびインバータ回路IVにより、三相交流電力で電動機を駆動する、いわゆる3相PWMインバータモータドライバが構成される。これらPWM変調器PWおよびインバータ回路IVは、2相3相変換部CV1を介して駆動制御部DCに接続され、駆動制御部DCの制御に従って、直流電源Vdcからの直流電力を、所定の周波数の交流電力へ変換する。より具体的には、PWM変調器PWは、駆動制御部DCの制御に従った周波数およびパルス幅の矩形波を制御信号(IV制御信号)としてインバータ回路IVへ出力する回路である。インバータ回路IVは、PWM変調器PWに接続され、PWM変調器PWからのIV制御信号に従って、直流電源Vdcの直流電力を、所定の周波数の交流電力へ変換する回路である。インバータ回路IVは、例えば、図2に示すように、直列に接続された2個のスイッチング素子Trを1組として、互いに並列に接続された3組Tr1、Tr4;Tr2、Tr5;Tr3、Tr6を備える。より具体的には、インバータ回路IVは、6個の第1ないし第6スイッチングTr1~Tr6を備える。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の、オンオフするスイッチ機能を持つ電力用半導体素子である。第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3の各一方端子(例えば各コレクタ端子)は、それぞれ、直流電源Vdcの一方端子に接続される。第1スイッチング素子Tr1の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第4スイッチング素子Tr4の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。第2スイッチング素子Tr2の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第5スイッチング素子Tr5の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。第3スイッチング素子Tr3の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第6スイッチング素子Tr6の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。これら第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6の各他方端子(例えば各エミッタ端子)は、それぞれ、直流電源Vdcの他方端子に接続される。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6における、スイッチング素子TrをオンオフするためのIV制御信号が入力される各制御端子(例えばゲート端子)は、PWM変調器PWに接続される。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6それぞれにおいて、その一方端子と他方端子との各間それぞれには、他方端子にアノード端子を接続した各ダイオードD1~D6が接続される。そして、第1スイッチング素子Tr1と第4スイッチング素子Tr4とを接続する第1接続点は、例えばU相の交流電流を出力し、電動機MのU相を接続する入力端子に接続される。第2スイッチング素子Tr2と第5スイッチング素子Tr5とを接続する第2接続点は、例えばV相の交流電流を出力し、電動機MのV相を接続する入力端子に接続される。第3スイッチング素子Tr3と第6スイッチング素子Tr6とを接続する第3接続点は、例えばW相の交流電流を出力し、電動機MのW相を接続する入力端子に接続される。このような構成では、インバータ回路IVは、いわゆる2レベル3相インバータ回路であり、各組の一方のスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3と他方のスイッチング素子Tr4、Tr5、Tr6とは、互いに逆のスイッチング態様(一方がオンの場合には他方がオフで、一方がオフの場合には他方がオンである態様)となるように、PWM変調器PWからのIV制御信号に従って制御され、直流電源Vdcの直流電力を変換してU相、V相およびW相の3相の交流電流を電動機Mへ出力する。
電流測定部CSは、3相2相変換部CV2に接続され、インバータ回路IVから電動機Mへ流れる電流、本実施形態では、U相電流、V相電流およびW相電流それぞれを測定し、その各測定結果を3相2相変換部CV2へ出力する装置である。電流測定部CSは、例えば交流電流計を備えて構成される。
回転角度測定部VSは、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2、回転速度処理部RSCおよび脈動トルク推定部PTそれぞれに接続され、電動機Mにおける磁極位置を角度で測定し、その測定結果(回転角度、電気角(=機械角/電動機Mの極対数))を2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2、回転速度処理部RSCおよび脈動トルク推定部PTそれぞれに出力する装置である。回転角度測定部VSは、例えば、ロータリエンコーダ(パルスジェネレータ)や、ホールIC等を備えて構成される。なお、センサレスの場合には、回転角度測定部VSは、電動機Mのモデルを用いて電流および電圧から電動機Mの回転角度を求めてもよい。
2相3相変換部CV1は、駆動制御部DCに接続され、回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)および駆動制御部DCで生成された電圧指令値vd
*、vq
*から、この電圧指令値vd
*、vq
*に対応するU相電流、V相電流およびW相電流をインバータ回路IVから出力するようにPWM変調器PWを制御するための制御信号(PWM制御信号)を求め、このPWM制御信号をPWM変調器PWへ出力するものである。
3相2相変換部CV2は、駆動制御部DCに接続され、電流測定部CSから入力された測定結果(U相電流、V相電流およびW相電流)および回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、いわゆるクラーク(Clarke)変換およびパーク(Park)変換によって、励磁電流(d軸電流)idおよびトルク分電流(q軸電流)iqを求め、この求めたd軸電流idおよびq軸電流iqを駆動制御部DCへ出力するものである。
回転速度処理部RSCは、駆動制御部DCに接続され、回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、電動機Mの回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmを駆動制御部DCへ出力するものである。例えば、回転角度測定部VSで測定された回転角度θeを時間微分して電動機Mの極対数pの逆数を乗じることによって回転速度ωmが求められる。
駆動制御部DCは、補償値生成部CVで後述のように生成した補償値に基づく制御指令値で電動機Mを制御して駆動するものである。より具体的には、駆動制御部DCは、制御目標に応じたフィードバック制御で電動機Mを制御する装置であって、前記制御目標に基づくd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令生成部GId、GIqと、前記電流指令生成部GId、GIqで生成したd軸電流指令値およびq軸電流指令値と前記電動機Mに給電された電流値に対応するd軸電流値およびq軸電流値との各偏差を、前記d軸電流指令値およびq軸電流指令値から前記d軸電流値およびq軸電流値をそれぞれ減算することによって生成する偏差生成部SM2d、SM2qと、前記偏差生成部SM2d、SM2qで生成した各偏差に基づくd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を例えばいわゆるPI制御で生成する電流制御部GVd、GVqとを備える。本実施形態では、電動機Mは、永久磁石型同期電動機(PMSM)、より具体的には、表面型永久磁石式同期電動機(SPMSM)であるので、トルクに寄与するのは、q軸のみであり、d軸の制御目標は、常に、定数0となり、d軸の電流指令生成部GIdは、図1に示すように、省略される。したがって、このd軸の制御目標0は、d軸の偏差生成部SM2dに入力される。q軸の電流指令生成部GIqは、図1に示すように、制御目標ωm
*(k)と回転速度処理部RSCで求めた電動機Mの回転速度ωmとの偏差を、前記制御目標ωm
*(k)から前記電動機Mの回転速度ωmを減算することによって求める偏差生成部SM1qと、前記偏差生成部SM1qで求めた偏差に応じたq軸電流指令値を例えばPI制御で生成する生成部PIとを備える。
このような構成の駆動制御部DCは、電動機Mの駆動電流を制御する電流制御系および前記電動機Mの速度を制御する速度制御系を含んでいる。
脈動トルク推定部PTは、補償値生成部CVに接続され、時間経過に従ってトルクの大きさが増減する脈動トルクを表す脈動モデルを用いることによって、次の制御タイミングで生じる脈動トルクを推定するものである。前記脈動トルクは、例えば、前記電動機Mの円周方向における起磁力分布の空間高周波成分に起因する第1脈動トルク、および、コギングトルクである第2脈動トルクのうちの少なくとも一方を含む。本実施形態では、次式1のように、第1および第2脈動トルクpn、Tcog、の両方を含むように脈動トルクTdistがモデル化されるが、例えば電動機駆動制御システムSの仕様等に応じて、一方が省略されて脈動トルクTdistがモデル化されてもよい。
ここで、id(k)は、k番目の制御におけるd軸電流であり、iq(k)は、k番目の制御におけるq軸電流であり、θe(k)は、k番目の制御における電動機Mの回転角度である。φdh(θe)は、d軸上の鎖交磁束の高調波成分であり、φqh(θe)は、q軸上の鎖交磁束の高調波成分である。この式1の第1項は、前記第1脈動トルクpnを表し、前記式1の第2項は、前記第2脈動トルクTcogを表している。この第1脈動トルクpnは、例えば、電動機Mの円周方向における起磁力分布がサインカーブとなる理想状態からのズレによって生じる。
この第1脈動トルクpnにおけるφdh(θe)およびφqh(θe)は、例えば、無負荷で前記電動機Mを駆動して得られた逆起電圧値νd、νqを検出して次式2に用いることによって求められ、これによって第1脈動トルクpnが求められる。Ψは、電動機Mにおける永久磁石の差交磁束である。あるいは、例えば、φdh(θe)およびφqh(θe)は、同様の駆動状態を模擬したシミュレーションによって、もしくは、いわゆるFEM解析から求められる。
この第2脈動トルクTcogは、例えば、同様に、無負荷で前記電動機Mを駆動して得られた推力値を検出することによって求められる。あるいは、例えば、第2脈動トルクTcogは、同様の駆動状態を模擬したシミュレーションによって、もしくは、いわゆるFEM解析から求められる。
本実施形態では、電動機Mの回転角度θe(k)に依存して変化する脈動トルクTdistが上述の式1の脈動モデルによって推定され、この推定された脈動トルクTdistを打ち消す補償値を制御指令に加えることで、脈動トルクTdistが抑制される。ここで、回転角度測定部VSにより検出した回転角度θe(k)から推定した脈動トルクTdistは、現在での回転角度θe(k)で発生する脈動トルクTdistの推定値であり、実際には、補償値を生成するための処理時間が必要となるので、少なくとも1制御周期の前記処理時間が経過しているため、脈動トルクTdistの推定値と実際に発生する脈動トルクTdistとの間で前記処理時間の遅れが生じ、この遅れに起因する不整合がこれら両者間に生じる。特に、高速で回転している場合は、この不整合が制御に大きく影響し、脈動トルクTdistの抑制が難しくなる。脈動トルクTdistを抑制するためには、この遅れを補償する必要があり、本実施形態では、脈動トルクTdistの推定に用いる回転角度θe(k)の遅れが補償される。本実施形態では、前記遅れ(前記処理時間)が1制御周期Tsの時間とされ、1制御周期Tsの時間だけ経過した回転角度θe(k+1)が次式3によって推定され、この回転角度の推定値θe(k+1)を、脈動トルクTdistの推定に用いることによって、前記遅れが補償される。なお、現在、k番目の制御の場合、(k+1)、(k+2)、(k+3)、・・・は、予測値であることを表している。
したがって、本実施形態では、脈動トルク推定部PTは、回転角度測定部VSに接続され、回転角度測定部VSで測定した電動機Mの回転角度θe(k)に基づいて、1制御周期Tsの時間だけ経過した回転角度θe(k+1)を上記式3によって推定する回転角度推定部DAと、前記回転角度推定部DAに接続され、前記回転角度推定部DAで推定した1制御周期Ts後の回転角度θe(k+1)に基づいて第1脈動トルクpnを推定する、上記式1の第1項に相当する第1脈動トルク推定部PNと、前記回転角度推定部DAに接続され、前記回転角度推定部DAで推定した1制御周期Ts後の回転角度θe(k+1)に基づいて第2脈動トルクTcogを推定する、上記式1の第2項に相当する第2脈動トルク推定部TCと、前記第1脈動トルク推定部PNで推定した第1脈動トルクpnと前記第2脈動トルク推定部TCで推定した第2脈動トルクTcogとを加算する加算部SMとを備える。
補償値生成部CVは、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクを打ち消すための補償値を生成するものである。
本実施形態では、脈動トルクTdisの周波数が低い場合には、駆動制御部DC自体で脈動トルクTdisを打ち消すことができるので、このような場合には、補償値生成部CVは、前記補償値を生成しない。より具体的には、駆動制御部DCにおける電流および速度の各制御系の制御指令値を入力とする各閉ループ伝達関数が求められ、これらの各遮断周波数(カットオフ周波数)に応じて補償値の生成の可否および前記補償値の入力箇所が決定される。すなわち、補償値生成部CVは、脈動トルクの周波数、駆動制御部DCの前記電流制御系が前記脈動トルクに追従できる前記電流制御系の第1周波数帯域および前記駆動制御部DCの前記速度制御系が前記脈動トルクに追従できる前記速度制御系の第2周波数帯域に基づいて前記補償値を生成するか否かを決定し、前記補償値を生成すると決定した場合に前記補償値を生成する。
より詳しくは、前記電流制御系は、例えば、図3に示すように近似され、制御目標のq軸電流iq
*と電動機Mのq軸電流iqとの偏差を、前記制御目標のq軸電流iq
*から前記電動機Mのq軸電流iqを減算することによって求める減算器11と、前記減算器11で求めた偏差に基づいて電動機Mをフィードバック制御する制御器12と、前記制御器12によって制御される電動機Mの電気回路13とを備える。制御器12は、例えば、kPi+kIi/sで表され、電動機Mの電気回路13は、例えば、1/(Ls+R)で表される。
この前記電流制御系における制御目標のq軸電流iq
*から実電流iqまでの閉ループ伝達関数Giq(s)は、次式4で表され、例えば、kPi=ωcfi×Lとし、kIi=kPi×(R/L)とすると、次式5で表される。
ここで、Lは、電動機Mの巻線のインダクタンスであり、Rは、電動機Mの巻線の抵抗であり、ωcfiは、前記電流制御系の遮断周波数である。sは、ラプラス変換の演算子である。上述のkPi=ωcfi×Lとし、kIi=kPi×(R/L)のゲイン設定は、一例であり、この他のゲイン設定でも、上記式4から遮断周波数は、求められ得る。
上記式5から、前記電流制御系は、遮断周波数ωcfiの1次遅れとなる。このため、遮断周波数ωcfi以下の周波数(第1周波数帯域FW1;0<FW1≦ωcfi)では、この電流制御系は、制御対象の時間変化に追従でき、脈動トルクを打ち消すことができる。
同様に、前記速度制御系は、例えば、図4に示すように近似され、制御目標の回転速度ωm
*と電動機Mの回転速度ωmとの偏差を、前記制御目標の回転速度ωm
*から前記電動機Mの回転速度ωmを減算することによって求める減算器21と、前記減算器21で求めた偏差に基づいて電動機Mをフィードバック制御する制御器22と、前記制御器22によって制御される電動機Mの電気回路23とを備える。制御器22は、例えば、kPs+kIs/sで表され、電動機Mの電気回路23は、例えば、1/Jsで表される。Jは、電動機Mの慣性モーメントである。外乱トルクTdは、制御器22の出力に混入される(加算される)。ただし、前記速度制御系の周波数応答は、前記電流制御系よりも十分に小さいと仮定された。
この前記速度制御系における制御目標の回転速度ωm
*から実回転速度ωmまでの閉ループ伝達関数Gis(s)は、次式6で表され、例えば、kPs=ωcfs×Jとすると、次式7で表される。さらに、外乱トルクTdから実回転速度ωmまでの伝達関数は、次式8で表される。
上記式8から、遮断周波数ωcfs以下の周波数(第2周波数帯域FW2;0<FW2≦ωcfs)では、この速度制御系は、制御対象の時間変化に追従でき、外乱トルクTd、すなわち、本実施形態では脈動トルクを打ち消すことができる。
一方、第1および第2脈動トルクpn、Tcogは、電動機Mの回転速度に依存した周期で発生する。第1脈動トルクpnの周波数fmagは、その主成分をm次とすると、次式9で表される。なお、集中巻きの表面型永久磁石式同期電動機(SPMSM)は、m=6であることが一般に知られている。第2脈動トルクTcogが生じる回転角度の周期は、次式10で表され、回転速度から、第2脈動トルクTcogの周波数fcogは、次式11で表される。なお、nsは、電動機Mのスロット数であり、lcm(A、B)は、AtoBとの最小公倍数を求める演算子である。
以上から、第1脈動トルクpnの周波数fmagが前記電流制御系の遮断周波数ωcfi以下の場合(2πfmag≦ωcfi)では、第1脈動トルクpnは、この電流制御系で追従でき、第1脈動トルクpnの周波数fmagが前記電流制御系の遮断周波数ωcfiを超える場合(2πfmag>ωcfi)では、第1脈動トルクpnは、駆動制御部DCの入力側、図1に示す例では、電流制御部GVqの入力に補償値を用いて打ち消せばよい。第2脈動トルクTcogの周波数fcogが前記電流制御系の遮断周波数ωcfi以下の場合(2πfcog≦ωcfi)では、第2脈動トルクTcogは、この電流制御系で追従でき、第2脈動トルクTcogの周波数fcogが前記電流制御系の遮断周波数ωcfiを超える場合(2πfcog>ωcfi)では、第2脈動トルクTcogは、駆動制御部DCの入力側、図1に示す例では、電流制御部GVqの入力に補償値を用いて打ち消せばよい。同様に、第1脈動トルクpnの周波数fmagが前記速度制御系の遮断周波数ωcfs以下の場合(2πfmag≦ωcfs)では、第1脈動トルクpnは、この速度制御系で追従でき、第1脈動トルクpnの周波数fmagが前記速度制御系の遮断周波数ωcfsを超える場合(2πfmag>ωcfs)では、第1脈動トルクpnは、駆動制御部DCの出力、図1に示す例では、電流制御部GVqの出力に補償値を用いて打ち消せばよい。第2脈動トルクTcogの周波数fcogが前記速度制御系の遮断周波数ωcfs以下の場合(2πfcog≦ωcfs)では、第2脈動トルクTcogは、この速度制御系で追従でき、第2脈動トルクTcogの周波数fcogが前記速度制御系の遮断周波数ωcfsを超える場合(2πfcog>ωcfs)では、第2脈動トルクTcogは、駆動制御部DCの出力、図1に示す例では、電流制御部GVqの出力に補償値を用いて打ち消せばよい。
したがって、補償値生成部CVは、より詳しくは、図1に示すように、第1可変増幅部VA1と、第2可変増幅部VA2と、第1減算部SM3と、第2減算部SM4と、ゲイン制御部GCとを備える。
第1可変増幅部VA1は、入力側で脈動トルク推定部PTの加算部SMに接続され、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisをゲインKTIで増幅することによって、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisを打ち消すための、q軸電流指令値の補償値を生成するものである。第1可変増幅部VA1は、出力側で第1減算部SB3に接続され、d軸電流指令値の補償値を第1減算部SB3に出力する。
第2可変増幅部VA2は、入力側で脈動トルク推定部PTの加算部SMに接続され、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisをゲインKIVで増幅することによって、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisを打ち消すための、q軸電圧指令値の補償値を生成するものである。第2可変増幅部VA2は、出力側で第2減算部SB4に接続され、q軸電圧指令値の補償値を第2減算部SB4に出力する。
第1減算部SB3は、偏差生成部SM2qと電流制御部GVqとの間に介装され、偏差生成部SM2qで生成した偏差から、第1可変増幅部VA1で生成したq軸電流指令値の補償値を減算するものである。減算することによって、第1可変増幅部VA1で生成したq軸電流指令値の補償値が、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisを打ち消すように、偏差生成部SM2qで生成した偏差に取り入れられる。
第2減算部SB4は、電流制御部GVqと2相3相変換部CV1との間に介装され、電流制御部GVqで生成したq軸電圧指令値から、第2可変増幅部VA2で生成したd軸電圧指令値の補償値を減算するものである。減算することによって、第2可変増幅部VA2で生成したq軸電圧指令値の補償値が、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisを打ち消すように、電流制御部GVqで生成したq軸電圧指令値に取り入れられる。
このように電流制御部GVqの入力に補償値を入力しても補償しきれない脈動トルクに対し、本実施形態では、電流制御部GVqの出力に補償値が、直接、入力される。
ゲイン制御部GCは、第1および第2可変増幅部VA1、VA2それぞれに接続され、第1および第2可変増幅部VA1、VA2の各ゲインKTI、KIVを制御するものである。
より具体的には、ゲイン制御部GCは、第1に、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfmag>ωcfi)および前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfcog>ωcfi)のうちのいずれでもない場合では、駆動制御部DCが追従できるので、前記補償値(q軸電流指令値の補償値およびq軸電圧指令値の補償値)を生成しないように決定する。すなわち、ゲイン制御部GCは、第1および第2可変増幅部VA1、VA2の各ゲインKTI、KIVを0に制御する(KTI=0、KIV=0)。
ゲイン制御部GCは、第2に、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfmag>ωcfi)および前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfcog>ωcfi)のうちの少なくともいずれかである場合であって、かつ、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第2周波数帯域FW2を超えている場合(2πfmag>ωcfs)および前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第2周波数帯域FW2を超えている場合(2πfcog>ωcfs)のうちのいずれでもない場合、前記駆動制御部DCの入力側、図1に示す例では電流制御部GVqの入力に用いる前記補償値(q軸電流指令値の補償値)を生成するように決定する。すなわち、ゲイン制御部GCは、第1可変増幅部VA1のゲインKTIを後述のような値に制御し、第2可変増幅部VA2のゲインKIVを0に制御する(KTI≠0、KIV=0)。これによって電流制御部GVqの入力にq軸電流指令値の補償値が用いられ、第1減算部SB3によって、偏差生成部SM2qで生成した偏差から、第1可変増幅部VA1で生成したq軸電流指令値の補償値が減算される。
ゲイン制御部GCは、第3に、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfmag>ωcfi)および前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfcog>ωcfi)のうちの少なくともいずれかである場合であって、かつ、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第2周波数帯域FW2を超えている場合(2πfmag>ωcfs)および前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第2周波数帯域FW2を超えている場合(2πfcog>ωcfs)のうちの少なくともいずれかである場合、前記駆動制御部DCの出力、図1に示す例では電流制御部GVqの出力に用いる前記補償値(q軸電圧指令値の補償値)を生成するように決定する。すなわち、ゲイン制御部GCは、第1可変増幅部VA1のゲインKTIを0に制御し、第2可変増幅部VA2のゲインKIVを後述のような値に制御する(KTI=0、KIV≠0)。これによって電流制御部GVqの出力にq軸電圧指令値の補償値が用いられ、第2減算部SB4によって、電流制御部GVqで生成したq軸電圧指令値から、第2可変増幅部VA2で生成したq軸電圧指令値の補償値が減算される。
ここで、第1および第2可変増幅部VA1、VA2の各ゲインKTI、KIVは、例えば、チューニングによって、求められて設定されてよいが、次式12、次式13によって求められてもよい。前記ゲインKTIを求める式12は、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisを打ち消す電流を、脈動トルク推定部PTで推定した脈動トルクTdisおよび電動機Mの特性パラメータp、Ψに基づいて求めるように、設定されている。前記ゲインKIVを求める式13は、前記ゲインKTIを電圧に変換するように、設定されている。ここで、kTI、kIVは、電動機Mにおける設計値と実機の値との差異や前記ゲインKTIを電圧に変換する際に巻き線のインダクタンスLを考慮していないため、これらに起因するズレを調整するための調整パラメータであり、予め適宜に設定される。
このような脈動トルク推定部PT、補償値生成部CV、駆動制御部DC、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCは、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよびその周辺回路を備えて構成されるマイクロプロセッサで構成可能であり、脈動トルク推定部PT、補償値生成部CV、駆動制御部DC、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCは、所定のプログラムの実行により、前記CPUに機能的に構成される。このときに、脈動トルク推定部PTにおける回転角度推定部DA、第1脈動トルク推定部PN、第2脈動トルク推定部TCおよび加算部SM、補償値生成部CVにおけるゲイン制御部GC、第1可変増幅部VA1、第2可変増幅部VA2、第1減算部SB3および第2減算部SB4、ならびに、駆動制御部DCにおける電流指令生成部GIq(偏差生成部SM1q、生成部PI)、偏差生成部SM2d、SM2qおよび電流制御部GVd、GVqは、前記CPUに機能的に構成される。
次に、本実施形態の動作について説明する。図5は、前記電動機駆動制御システムにおける動作を示すフローチャートである。
このような電動機駆動制御システムSでは、電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。そして、例えば、プログラムの実行によって、前記CPUには、脈動トルク推定部PT、補償値生成部CV、駆動制御部DC、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCが機能的に構成され、脈動トルク推定部PTには、る回転角度推定部DA、第1脈動トルク推定部PN、第2脈動トルク推定部TCおよび加算部SMが機能的に構成され、補償値生成部CVには、ゲイン制御部GC、第1可変増幅部VA1、第2可変増幅部VA2、第1減算部SB3および第2減算部SB4が機能的に構成され、駆動制御部DCには、電流指令生成部GIq(偏差生成部SM1q、生成部PI)、偏差生成部SM2d、SM2qおよび電流制御部GVd、GVqが機能的に構成される。
そして、脈動トルクを打ち消すための制御に関し、図5に示す処理S1ないし処理S8の各処理が、電動機Mの駆動が停止されるまで、所定の制御周期Tsごとに繰り返し実行される。
図5において、電動機駆動制御システムSは、脈動トルク推定部PTの回転角度推定部DAによって、回転角度測定部VSから、電動機Mの回転角度θe(k)を取得する(S1)。
次に、電動機駆動制御システムSは、回転角度推定部DAによって、1制御周期Tsの時間だけ経過した回転角度θe(k+1)(次の制御タイミングでの回転角度θe(k+1)を推定する(S2)。
電動機駆動制御システムSは、脈動トルク推定部PTの第1脈動トルク推定部PNによって、前記処理S2で回転角度推定部DAによって推定した1制御周期Ts後の回転角度θe(k+1)に基づいて第1脈動トルクpnを推定し、脈動トルク推定部PTの第2脈動トルク推定部PNによって、前記回転角度θe(k+1)に基づいて第2脈動トルクpcogを推定し、脈動トルク推定部PTの加算部SMによって、これら第1および第2脈動トルクpn、Tcogを加算し、これによって脈動トルクTdis(=pn+Tcog)を推定する(S3)。この推定した脈動トルクは、加算部SMから、補償値生成部CVにおける第1および第2可変増幅部VA1、VA2それぞれへ出力される。
次に、電動機駆動制御システムSは、補償値生成部CVのゲイン制御部GCによって、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfmag>ωcfi)、および、前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第1周波数帯域FW1を超えている場合(2πfcog>ωcfi)のうちのいずれかであるか否かを判定する(S4)。この判定の結果、前記各場合のうちのいずれでもない場合(No)では、電動機駆動制御システムSは、次に、処理S5を実行した後に、今回の制御タイミングでの本処理を終了する。一方、前記判定の結果、前記各場合のうちの少なくともいずれかである場合(Yes、2πfmag>ωcfiの場合、2πfcog>ωcfiの場合、2πfmag>ωcfiかつ2πfcog>ωcfiの場合のうちのいずれかである場合)では、電動機駆動制御システムSは、次に、処理S6を実行する。
この処理S5では、電動機駆動制御システムSは、補償値生成部CVのゲイン制御部GCによって、第1および第2可変増幅部VA1、VA2の各ゲインKTI、KIVを0に制御する(KTI=0、KIV=0)。したがって、前記脈動トルクTdisは、駆動制御部DCによって低減される。
前記処理S6では、電動機駆動制御システムSは、ゲイン制御部GCによって、前記脈動トルクTdisにおける第1脈動トルクpnの周波数fmagが第2周波数帯域FW2を超えている場合(2πfmag>ωcfs)および前記脈動トルクTdisにおける第2脈動トルクTcogの周波数fcogが第2周波数帯域FW2を超えている場合(2πfcog>ωcfs)のうちのいずれであるか否かを判定する。この判定の結果、前記各場合のうちのいずれでもない場合(No)では、電動機駆動制御システムSは、次に、処理S7を実行した後に、今回の制御タイミングでの本処理を終了する。一方、前記判定の結果、前記各場合のうちの少なくともいずれかである場合(Yes、2πfmag>ωcfsの場合、2πfcog>ωcfsの場合、2πfmag>ωcfsかつ2πfcog>ωcfsの場合のうちのいずれかである場合)では、電動機駆動制御システムSは、次に、処理S8を実行した後に、今回の制御タイミングでの本処理を終了する。
この処理S7では、電動機駆動制御システムSは、ゲイン制御部GCによって、第1可変増幅部VA1のゲインKTIを前記式12によって求め、この求めたゲインKTIになるように第1可変増幅部VA1を制御し、第2可変増幅部VA2のゲインKIVを0に制御する(KTI≠0、KIV=0)。この処理S7の実行によって電流制御部GVqの入力にq軸電流指令値の補償値が用いられ、第1減算部SB3によって、偏差生成部SM2qで生成した偏差から、第1可変増幅部VA1で生成したq軸電流指令値の補償値が減算され、これにより、前記脈動トルクTdisがこのq軸電流指令値の補償値によって低減される。
前記処理S8では、電動機駆動制御システムSは、ゲイン制御部GCによって、第1可変増幅部VA1のゲインKTIを0に制御し、第2可変増幅部VA2のゲインKIVを前記式13によって求め、後述のような値に制御する(KTI=0、KIV≠0)。なお、このゲインKIVを前記式13によって求めるために前記式12によってゲインKTIが求められるが、第1可変増幅部VA1のゲインKTIは、上述の通り、0に制御される。この処理S8の実行によって電流制御部GVqの出力にq軸電圧指令値の補償値が用いられ、第2減算部SB4によって、電流制御部GVqで生成したq軸電圧指令値から、第2可変増幅部VA2で生成したq軸電圧指令値の補償値が減算され、これにより、前記脈動トルクTdisがこのq軸電圧指令値の補償値によって低減される。
以上説明したように、本実施形態における電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、次の制御タイミングで生じる脈動トルクTdisを推定し、この推定した脈動トルクTdisを打ち消すための補償値を生成するので、電動機M自体に生じる第1および第2脈動トルクpn、Tcogのうちの少なくとも一方、上述では両方を含む脈動トルクTdisをより適切に抑制できる。このため、上記電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、低振動や低騒音を実現でき、目標速度や目標位置により精度良く追従できる。
上記電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、前記脈動トルクTdis、上述では第1および第2脈動トルクpn、Tcogの各周波数fmag、fcog、第1周波数帯域FW1および第2周波数帯域FW2に基づいて前記補償値を生成するか否かを決定するので、適切に前記補償値を生成できる。
前記特許文献1は、低速時では、脈動の周波数が小さく、電流制御部のみで脈動を抑制ができる場合でも、電圧指令の基本値に電圧指令補正値を重電する構成であり、ゲインの設定が適切でない場合、電圧指令補正値が外乱となってしまう虞もある。しかしながら、上記電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、前記処理S4において、2πfmag>ωcfiおよび2πfcog>ωcfiのうちのいずれでもない場合(No)には、処理S5が実行され、第1および第2可変増幅部VA1、VA2の各ゲインKTI、KIVが0に制御されるので、前記補償値が生成されず、前記外乱となることが防止される。
なお、上述の実施形態では、電動機Mが表面型永久磁石式同期電動機(SPMSM)であるので、トルクに寄与するq軸のみに対し、必要に応じて脈動トルクを打ち消すための補償値が導入されたが、電動機Mの種類に応じて、q軸およびd軸に対し、脈動トルクを打ち消すための補償値が導入されてもよい。
また、上述の実施形態において、補償値生成部CVは、前記補償値に基づく制御指令値に対応する電圧値が前記電動機に給電する電源における所定の出力電圧値を超える場合には、前記補償値を生成しないことが好ましい。前記所定の出力電圧値は、予め適宜に設定され、例えば、電源に接続する電動機MやインバータIVの仕様や運転条件等を考慮して設定される。このような電動機駆動制御システムS、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法は、電源の定格電圧値以内で電動機Mを制御するので、制御の不安定化を回避できる。特に、前記特許文献1では、上述のように、前記重畳後の電圧指令を、フィードバック制御を介さずに直接PWM制御部に入力しているため、前記重畳後の電圧指令に対応する電圧値が電源電圧を超えると、制御が困難となるが、この変形形態では、このような事態が回避できる。
図6は、変形形態における電動機駆動制御システムにおける動作を示すフローチャートである。このような変形形態における電動機駆動制御システムは、図6に示すように、図5を用いて上述した処理S8の実行前に、処理S11を実行する。すなわち、変形形態における電動機駆動制御システムは、図5を用いて上述した処理S1ないし処理S7の各処理を実行し、処理S6での判定の結果、前記各場合のうちの少なくともいずれかである場合(Yes)では、電動機駆動制御システムSは、次に、処理S11を実行する。
この処理S11では、電動機駆動制御システムSは、補償値生成部CVのゲイン制御部GCによって、前記補償値に基づく制御指令値に対応する電圧値vd
*、vq
*が電動機Mに給電する電源の定格電圧値Vdcを超えているか否かを判定する。より具体的には、ゲイン制御部GCは、前記補償値に基づく制御指令値に対応する電圧値vd
*、vq
*がマージンaを考慮した定格電圧値Vdcのa倍以下であるか否かを判定する(√(vd
*+vq
*)≦a×Vdc)。aは、1未満で予め適宜に設定され、例えば、0.9<a<1の範囲のいずれかの値に設定される。この判定の結果、前記vd
*、vq
*がa×Vdc以下である場合(Yes)には、電動機駆動制御システムSは、次に、図5を用いて上述した処理S8を実行した後に、今回の制御タイミングでの本処理を終了する。一方、前記判定の結果、前記vd
*、vq
*がa×Vdc以下ではない場合(No)には、電動機駆動制御システムSは、何も実行せずに、今回の制御タイミングでの本処理を終了する。これにより、制御の不安定化が回避される。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。