<ガスセンサの概略構成>
図1は、本実施の形態に係るガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。ガスセンサ100は、センサ素子101によってNOxを検知し、その濃度を測定する、限界電流型のNOxセンサである。また、ガスセンサ100は、各部の動作を制御するとともに、センサ素子101を流れるNOx電流に基づいてNOx濃度を特定するコントローラ110をさらに備える。図1は、センサ素子101の長手方向に沿った垂直断面図を含んでいる。
センサ素子101は、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニア(ZrO2)からなる(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などからなる)、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの固体電解質層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する、平板状の(長尺板状の)素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。なお、以降においては、図1におけるこれら6つの層のそれぞれの上側の面を単に上面、下側の面を単に下面と称することがある。また、センサ素子101のうち固体電解質からなる部分全体を基体部と総称する。
係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10を兼ねる第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40と、第4拡散律速部60と、第3内部空所61とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40、第3内部空所61とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間(領域)である。なお、ガス導入口10についても同様に、第1拡散律速部11とは別に、センサ素子101の先端面(図面視左端)においてスペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられてなる態様であってもよい。係る場合、第1拡散律速部11がガス導入口10よりも内部に隣接形成されることになる。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30と、第4拡散律速部60とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第3内部空所61に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10(第1拡散律速部11)は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
第1拡散律速部11は、取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面(センサ素子101の一方主面)の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側(空所外)ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)に形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成されてなる。これら天井電極部22aと底部電極部22bとは、第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に設けられた導通部にて接続されてなる(図示省略)。
天井電極部22aおよび底部電極部22bは、平面視矩形状に設けられてなる。ただし、天井電極部22aのみ、あるいは、底部電極部22bのみが設けられる態様であってもよい。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極として形成される。特に、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。例えば、5%~40%の気孔率を有し、Auを0.6wt~1.4wt%程度含むAu-Pt合金とZrO2とのサーメット電極として、5μm~20μmの厚みに形成される。Au-Pt合金とZrO2との重量比率は、Pt:ZrO2=7.0:3.0~5.0:5.0程度であればよい。
一方、外側ポンプ電極23は、例えばPtあるいはその合金とZrO2とのサーメット電極として、平面視矩形状に形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に可変電源24によって所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向に主ポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。なお、主ポンプセル21において内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に印加されるポンプ電圧Vp0を、主ポンプ電圧Vp0とも称する。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセルである主センサセル80が構成されている。
主センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。
さらに、コントローラ110が、起電力V0が一定となるように主ポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することで、主ポンプ電流Ip0が制御されている。これにより、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保たれるようになっている。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧をさらに調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、補助ポンプセル50が作動することによって調整される。第2内部空所40においては、被測定ガスの酸素濃度がさらに高精度に調整される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様の形態にて、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成されてなり、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成されてなる。これら天井電極部51aと底部電極部51bは、平面視矩形状をなしているとともに、第2内部空所40の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に設けられた導通部にて接続されてなる(図示省略)。
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、コントローラ110による制御のもと、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧(補助ポンプ電圧)Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセルである補助センサセル81が構成されている。
この補助センサセル81にて検出される、第2内部空所40内の酸素分圧に応じた起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、その補助ポンプ電流Ip1が、主センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、補助ポンプ電流Ip1は、制御信号として主センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
第4拡散律速部60は、第2内部空所40で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所61に導く部位である。
第3内部空所61は、第4拡散律速部60を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間(測定用内部空所)として設けられている。NOx濃度の測定は、第3内部空所61において、測定ポンプセル41が動作することによりなされる。第3内部空所61には、第2内部空所40において酸素濃度が高精度に調整された被測定ガスが導入されるため、ガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
測定ポンプセル41は、第3内部空所61内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定ポンプセル41は、第3内部空所61に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、貴金属と固体電解質との多孔質サーメット電極である。例えばPtあるいはPtとRhなどの他の貴金属との合金と、センサ素子101の構成材料たるZrO2とのサーメット電極として形成される。測定電極44は、第3内部空所61内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
測定ポンプセル41においては、コントローラ110による制御のもと、測定電極44の周囲の雰囲気中におけるNOxの分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
ただし、本実施の形態においては、測定電極44が、気孔の存在しない領域と気孔の存在する領域との2層構成を有してなる。その詳細については後述する。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセルである測定センサセル82が構成されている。測定センサセル82にて検出される、測定電極44の周囲の酸素分圧に応じた起電力V2に基づいて、可変電源46が制御される。
第3内部空所61内に導かれた被測定ガス中のNOxは測定電極44により還元され(2NO→N2+O2)、酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定センサセル82にて検出された起電力V2が一定となるように可変電源46の電圧(測定ポンプ電圧)Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中のNOxの濃度に比例するものであるから、測定ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中のNOx濃度が算出されることとなる。以降、係るポンプ電流Ip2のことを、NOx電流Ip2とも称する。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
センサ素子101は、さらに、基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。
ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータエレメント72と、ヒータリード72aと、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、図1においては図示を省略するヒータ抵抗検出リードとを、主として備えている。また、ヒータ部70は、ヒータ電極71を除いて、センサ素子101の基体部に埋設されてなる。
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面(センサ素子101の他方主面)に接する態様にて形成されてなる電極である。
ヒータエレメント72は、第2基板層2と第3基板層3との間に設けられた抵抗発熱体である。ヒータエレメント72は、図1においては図示を省略する、センサ素子101の外部に備わる図示しないヒータ電源から、通電経路であるヒータ電極71、スルーホール73、およびヒータリード72aを通じて給電されることより、発熱する。ヒータエレメント72は、Ptにて、あるいはPtを主成分として、形成されてなる。ヒータエレメント72は、センサ素子101のガス流通部が備わる側の所定範囲に、素子厚み方向においてガス流通部と対向するように埋設されている。ヒータエレメント72は、10μm~20μm程度の厚みを有するように設けられる。
センサ素子101においては、ヒータ電極71を通じてヒータエレメント72に電流を流すことにより、ヒータエレメント72を発熱させることで、センサ素子101の各部を所定の温度に加熱、保温することができるようになっている。具体的には、センサ素子101は、ガス流通部付近の固体電解質および電極の温度が700℃~900℃程度になるように加熱される。係る加熱によって、センサ素子101において基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性が高められる。なお、ガスセンサ100が使用される際の(センサ素子101が駆動される際の)ヒータエレメント72による加熱温度を、センサ素子駆動温度と称する。
ヒータエレメント72による発熱の程度(ヒータ温度)は、ヒータエレメント72の抵抗値の大きさ(ヒータ抵抗)によって把握される。
なお、図1においては図示を省略しているが、センサ素子101の一先端部側(図面視左端側)の所定範囲の外周に、センサ素子101を覆う単層または多層の多孔質層である耐熱衝撃保護層がさらに備わる態様であってもよい。係る耐熱衝撃保護層は、ガスセンサ100の使用時に被測定ガスに含まれる水分がセンサ素子101に付着して凝縮することに伴い生じる熱衝撃により、センサ素子101にクラックが発生することを防ぐ目的や、被測定ガス中に混在する被毒物質がセンサ素子101の内部に入り込むことを防ぐ目的で、設けられる。なお、センサ素子101と耐熱衝撃保護層との間に層状の空隙(空隙層)が形成される態様であってもよい。
<測定電極の詳細構成>
次に、上述のような構成を有するセンサ素子101に備わる測定電極44の構成について、より詳細に説明する。図2は、素子厚み方向に沿った測定電極44の部分断面を示すモデル図である。なお、図2に示す破線La、Lbは理解の容易のために付している。
図2においては、破線Laより下側が固体電解質(ジルコニア)からなる第1固体電解質層4であり、係る第1固体電解質層4の上に測定電極44が設けられてなる。そして、測定電極44の上方が第3内部空所61(より詳細には第3内部空所61のうち測定電極44によって占められていない部分であるが、以降においては便宜上、単に第3内部空所61と称する)となっている。
上述したように、測定電極44は、例えばPtあるいはそのRhなどとの合金である貴金属と、固体電解質(ジルコニア)との多孔質サーメット電極である。それゆえ、測定電極44は、図2に示すように、図面視白色の貴金属NMからなる部分と、図面視灰色(あるいは薄灰色)の固体電解質SEからなる部分と、図面視黒色(あるいは濃灰色)の気孔CVからなる部分とが、混在した構成を有してなる。なお、図2においては第1固体電解質層4も固体電解質SEと同じく図面視灰色をなしている。これは、両者がともにジルコニアからなることに相当している。また、第3内部空所61も気孔CVと同じく図面視黒色をなしているが、これは、両者がともに空間あるいは空隙であることに相当している。
ただし、本実施の形態に係る測定電極44は、その全体にわたって貴金属NM、固体電解質SE、および気孔CVという3つの部分(相)がランダムに混在した構成を有するのではなく、貴金属NMと固体電解質SEのみがランダムに混在し気孔CVが存在しない下側層(2相領域とも称する)44Lと、貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとがランダムに混在する上側層(3相領域とも称する)44Uとの2層構成となっている。図2においては、下側層44Lと上側層44Uとの境界を破線Lbにて示している。
別の見方をすれば、破線Laは、測定電極44の厚み方向における貴金属NMの存在範囲の最下端を示しており、破線Lbは、測定電極44の厚み方向における気孔CVの存在範囲の最下端を示している。さらに別の表現をすれば、破線Laは、測定電極44の厚み方向における、貴金属NMが存在する領域と貴金属NMが存在しない領域との境界であるともいえ、破線Lbは、測定電極44の厚み方向における、気孔CVが存在する領域と気孔CVが存在しない領域との境界であるともいえる。
なお、以降においては、測定電極44を構成する固体電解質SEのうち、センサ素子101の固体電解質からなる基体部に連続する部分(破線Laを超えて基体部に連続する部分)を特に連続領域REと称する。さらに、連続領域REのうち下側層44Lに属する部分(破線Laと破線Lbの間に位置する部分)を下側連続領域RELと称し、連続領域REのうち上側層44Uに属する部分(破線Lbと第3内部空所61の間に位置する部分)を上側連続領域REUと称する。
図2においてはさらに、モデル図の左側に、測定電極44における各部分の平均体積比率の厚み方向変化を例示している。ただし、測定電極44全体の厚みをt0とし、下側層44Lの厚みをtLとし、上側層44Uの厚みをtUとしている。
局所的にはばらつきがあるものの、平均的に見ると、上側層44Uにおける貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVの体積比率は、図2に示すように上側層44Uの厚みtUの範囲全般において略一定となっている。これに対し、下側層44Lにおいては、気孔CVの体積比率が0となる一方で、固体電解質SEの体積比率は、厚み範囲全般において略一定となっており、その値は、上側層44Uにおける値よりも大きくなっている。なお、図2においては貴金属NMの体積比率が測定電極44で一定となっているが、これは必須の態様ではない。
すなわち、本実施の形態に係るセンサ素子101が備える測定電極44は、全体としては貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとが混在する多孔質サーメット電極として設けられながらも、実際にこれら3相が混在するのは電極上面側に所定の厚みtUにて備わる上側層44Uのみとなっており、その下方の、第1固体電解質層4の上面から所定の厚みtLの範囲は、気孔CVが存在せずそれゆえに上側層44Uよりも固体電解質SEの体積比率が大きい、2相構成の下側層44Lとなっている、という特徴を有する。
換言すれば、測定電極44においては、固体電解質からなる基体部(より具体的には第1固体電解質層4)と測定電極44との境界(破線La)と、気孔CVが存在する領域と存在しない領域との境界(破線Lb)とが、相異なっている。
図3は、比較のために示す、電極全体において3相がランダムに混在した構成を有する測定電極44Zの部分断面のモデル図である。センサ素子における測定電極44Zの配置位置は、測定電極44と同じにしている。図3に示す測定電極44Zにおいても、図面視白色の部分が貴金属NMであり、図面視灰色の部分が固体電解質SEであり、図面視黒色の部分が気孔CVである。
また、図3においても、モデル図の左側に、測定電極44Zにおける各部分の平均体積比率の厚み方向変化を例示している。ただし、測定電極44Zの厚みは、測定電極44の厚みと同じt0とし、各相の平均体積比率は、測定電極44の上側層44Uにおける平均体積比率と同じであるとしている。
局所的にはばらつきがあるものの、平均的に見ると、測定電極44Zにおける貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVの体積比率は、図3に示すように測定電極44Zの厚みt0の範囲全般において略一定となっている。
また、測定電極44Zにおいては、気孔CVが存在する領域と存在しない領域との境界が、固体電解質からなる基体部(より具体的には第1固体電解質層4)と測定電極44Zとの境界と一致している。
測定電極44と測定電極44Zとは、電極内における物質移動のプロセスという点では共通している。すなわち、素子外部から第3内部空所61に配置された測定電極44あるいは44Zに到達した被測定ガスに含まれるNOxや微量のO2は、気孔CVの中を移動して触媒たる貴金属NMに接触する。貴金属NMの主成分たるPtは、NOxを分解してO2を生成させ、O2から電子を奪い酸素イオンを生成する。そして、これにより生じた酸素イオンは、貴金属NMと固体電解質SEの二相界面にてPtから固体電解質SEに取り込まれ、測定ポンプセル41において測定電極44あるいは44Zと外側ポンプ電極23との間に生じている電位差によってセンサ素子101内を移動することになる。
ただし、全体として3相構成となっている測定電極44Zの場合、気孔CVが第1固体電解質層4の近傍にまであるいは第1固体電解質層4に隣接して存在しており、固体電解質SEと気孔CVとの界面の存在比率が相対的に高い一方で、貴金属NMと固体電解質SEとの界面の存在割合が相対的に低い。このため、貴金属に接触するものの固体電解質に取り込まれない余剰酸素が発生しやすく、それゆえ、Ptを主とする貴金属が余剰酸素によって酸化されることを原因とする測定電極の劣化が、生じやすくなっている。
これに対し、測定電極44の場合、酸素が流通する気孔CVが存在するのは上側層44Uのみである一方で、下側層44Lに存在する固体電解質SEはほぼ、基体部から連続する下側連続領域RELであって、かつ、貴金属NMのみと接しているので、従来のガスセンサよりも貴金属NMと固体電解質SEの2相界面の比率が高く、特に下側層44Lに存在する界面は係る2相界面のみであることから、余剰酸素が貴金属NMと接触する対応にて気孔CV内に滞留し、測定電極44を劣化させることが、生じにくくなっている。
すなわち、本実施の形態に係るガスセンサ100においては、余剰酸素の存在に起因した測定電極44の劣化が好適に抑制されてなる。ゆえに、ガスセンサ100を継続的に使用したとしても、測定感度が劣化することが、好適に抑制されるようになっている。
好ましくは、測定電極44は10μm~30μmの厚みを有し、かつ、厚み比tU:tLは95:5~10:90の範囲とされる。これは、換言すれば、測定電極44の最上部から気孔CVの存在範囲の最下端(破線Lb)までの距離tUと、測定電極44の最下部から気孔CVの存在範囲の最下端までの距離tLとの比が、95:5~10:90の範囲とされるということでもある。
また、上側層44Uにおける固体電解質SEの体積比は20%~40%とされ、下側層44Lにおける固体電解質SEの体積比は50%~60%とされる。
これらの場合、ガスセンサ100を継続的に使用した場合におけるNOx電流Ip2の初期値に対する変化率が、6%以下に抑制される。すなわち、ガスセンサ100を継続的に使用した場合の測定感度の劣化が、6%以下に抑制される。
より好ましくは、厚み比tU:tLは90:10~30:70の範囲とされる。係る場合、ガスセンサ100を継続的に使用した場合におけるNOx電流Ip2の初期値に対する変化率が、すなわち、ガスセンサ100を継続的に使用した場合の測定感度の劣化が、概ね3%以下に抑制される。また、上側層44Uの厚み比率が小さくそれゆえに測定電極44に気孔が少ない場合に起こり得る、被測定ガスをイオン化するサイトが少ないことに起因した測定ポンプセル41のポンプ能力の低下も、抑制される。
なお、第1固体電解質層4から連続する固体電解質が、貴金属部分に入り込んでなる測定電極44の構成は、いわゆるアンカー効果を奏する。それゆえ、本実施の形態に係るガスセンサ100において採用される測定電極44の構成は、該測定電極44の剥離を抑制するという点からも効果的なものとなっている。
<境界位置の特定例>
次に、上述のような構成を有する測定電極44の厚み方向における貴金属NMの存在範囲の最下端でもある、貴金属NMが存在する領域と貴金属NMが存在しない領域との境界位置と、気孔CVの存在範囲の最下端でもある、気孔CVが存在する領域と気孔CVが存在しない領域との境界位置とを評価する際の、それぞれの境界位置(破線La、Lb)の特定の仕方について、例示的に説明する。
まず、図2に示すような、厚み方向に沿った測定電極44の断面像を、例えばSEM(走査電子顕微鏡)などにより撮像する。その際には、撮像画像において測定電極44がなるべく水平になるように、かつ、測定電極44の少なくとも下側層44Lの厚み方向の全範囲と、測定電極44と第1固体電解質層4との境界近傍とが含まれるように、撮像範囲を設定する。なお、得られた撮像画像において3相のそれぞれの界面を明確に特定できることが必要であるという観点から、撮像倍率は500倍~1000倍程度とするのが好ましい。係る場合、素子長手方向の100μm~200μm程度の範囲の断面像が得られる。
続いて、得られた撮像画像データを公知の画像処理手法に基づいて解析し、貴金属NMと、固体電解質SE(および第1固体電解質層4)と、気孔CV(および第3内部空所61)のそれぞれの存在範囲(それぞれに該当する全ての画素)を特定する。例えば、撮像画像がSEM像である場合、明度の相違などから、該撮像画像のそれぞれの画素がどの相に該当するかを特定することが可能である。
続いて、撮像画像における貴金属NMの再下端位置を与える座標点(画素位置)を、撮像画像データに基づいて特定する。図2の場合であれば、点Aがこれに該当するものとする。すると、係る点Aを通り撮像画像の左右方向に平行な直線が、貴金属NMの存在範囲の最下端を示す破線Laに該当することになる。
ただし、撮像に際しては測定電極44がなるべく水平になるようにしているとはいえ、得られた撮像画像においては、測定電極44が少なからず傾斜している場合もある。この点を踏まえ、撮像画像における貴金属NMの範囲から再下端位置の座標点(例えば図2の点A)とその次に下方に位置する座標点(例えば図2の点B)とを特定し、点Aと点Bを通る直線が水平となるように、撮像画像を補正し、補正後の撮像画像において点Aと点Bとを取る直線を、貴金属NMの存在範囲の最下端を示す破線Laとしてもよい。
破線Laが特定されると、続いて、(補正後の)撮像画像における気孔CVの再下端位置を与える座標点(画素位置)を、撮像画像データに基づいて特定する。図2の場合であれば、点Cがこれに該当するものとする。すると、係る点Cを通り撮像画像の左右方向に平行な直線が、気孔CVの存在範囲の最下端を示す破線Lbに該当することになる。
以上のように特定された破線Laと破線Lbとの距離が、下側層44Lの厚みtLとして特定される。
さらに、図2においては、点Dが測定電極44の(上側層44Uの)最も高い位置であり、破線Lbと係る点Dとの距離が、上側層44Uの厚みtUとして特定される。
<センサ素子の製造プロセス>
次に、上述のような構成および特徴を有するセンサ素子101を製造するプロセスについて説明する。本実施の形態においては、ジルコニアをセラミックス成分として含むグリーンシート(基材テープとも称する)からなる積層体を形成し、該積層体を切断・焼成することによってセンサ素子101を作製する。
以下においては、図1に示した6つの層からなるセンサ素子101を作製する場合を例として説明する。係る場合、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6とに対応する6枚のグリーンシートが用意されることになる。図4は、センサ素子101を作製する際の処理の流れを示す図である。
センサ素子101を作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示省略)を用意する(ステップS1)。6つの層からなるセンサ素子101を作製する場合であれば、各層に対応させて6枚のブランクシートが用意される。
ブランクシートは、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パターン形成に先立つブランクシートの段階で、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、対応する層が内部空間を構成するグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、センサ素子101の各層に対応するそれぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はない。
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対してパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、各種電極のパターンや、ヒータエレメント72やヒータ絶縁層74などのパターンや、図示を省略している内部配線のパターンなどが、形成される。
また、係るパターン印刷のタイミングで、第1拡散律速部11、第2拡散律速部13、および第3拡散律速部30を形成するための昇華性材料の塗布あるいは配置も併せてなされる。
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
ただし、これらのパターンの形成のうち、最終的に測定電極44となるパターンの形成には、従来とは異なる手法が採用される。この点については後述する。
各ブランクシートに対するパターン印刷が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断してセンサ素子101個々の単位(素子体と称する)に切り出す(ステップS5)。
切り出された素子体を、1300℃~1500℃程度の焼成温度で焼成する(ステップS6)。これにより、センサ素子101が作製される。すなわち、センサ素子101は、固体電解質層と電極との一体焼成によって生成されるものである。その際の焼成温度は、1200℃以上1500℃以下(例えば1400℃)が好適である。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、センサ素子101においては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。
このようにして得られたセンサ素子101は、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100の本体(図示せず)に組み込まれる。
<測定電極の形成手法>
上述したように、本実施の形態においては、上述のような2層構成を有する測定電極44がセンサ素子101に設けられる。係る測定電極44の形成について説明する。
図5は、最終的に測定電極44となるパターンの形成手順について示す図である。測定電極44となるパターンの形成手法としては、製法Aと製法Bの2通りがある。
製法Aではまず、グリーンシートと同じくジルコニアをセラミックス成分として含む電解質ペーストを、第1固体電解質層4を形成するためのグリーンシートの上面の、測定電極44の形成対象位置に塗布する(ステップS21A)。電解質ペーストとは、固体電解質たるジルコニアの粉末と、バインダーその他の有機成分とを混合しペースト状としたものである。
続いて、この電解質ペーストの塗布により形成された塗布膜の上に、3成分混合ペーストを重畳的に塗布する(ステップS22)。ここで、3成分混合ペーストとは、Ptを主成分とする貴金属の粉末と、セラミックス成分たるジルコニアの粉末と、最終的に形成される測定電極44に気孔CVを形成するための昇華性材料である造孔材の粉末と、バインダーその他の有機成分とを混合し、ペースト状としたものである。
3成分混合ペーストの塗布が完了すると、続いて、電解質ペーストと3成分混合ペーストとが重畳してなるペースト塗布膜(ペースト二重膜)を、所定の押圧手段で押圧(プレス)する(ステップS23)。係る押圧により、3成分混合ペーストの塗布膜に含まれる貴金属粒子と造孔材粒子の一部が電解質ペーストの塗布膜に入り込む。
その後、上述のように素子体を対象とする焼成がなされると、係るペースト二重膜も焼成され、有機成分の揮発さらには貴金属NMと固体電解質SEの焼結が進行する。この際、電解質ペースト中の固体電解質はグリーンシートの固体電解質と一体となり、電解質ペーストに貴金属粒子が入り込んだ部分は焼結の進行とともに下側層44Lとなる。一方で、3成分混合ペーストの塗布部分においては、貴金属NMと固体電解質SEの焼結とともに造孔材が昇華して気孔CVが形成され、最終的に貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとが混在した上側層44Uが得られる。結果として、図2に示すような2層構成の測定電極44が形成される。
なお、電解質ペーストと3成分混合ペーストの塗布厚および塗布面積は、焼成による収縮や、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44における上側層44Uと下側層44Lとの厚み、および、測定電極44の平面面積が、所望の値となるように設定されればよい。例えば、あらかじめ実験的に、電解質ペーストと3成分混合ペーストの塗布厚および塗布面積と、測定電極44における上側層44Uと下側層44Lとの厚み、および、測定電極44の平面面積との関係を特定しておくようにしてもよい。また、3成分混合ペーストにおける貴金属の粉末と、固体電解質たるジルコニアの粉末と、造孔材の粉末との混合比は、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44の上側層44U(3相領域)における貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとの体積比率が所望の値にあるように設定されればよい。
一方、製法Bでは、2成分混合ペーストを、第1固体電解質層4を形成するためのグリーンシートの上面の、測定電極44の形成対象位置に塗布する(ステップS21B)。ここで、2成分混合ペーストとは、Ptを主成分とする貴金属の粉末と、セラミックス成分たるジルコニアの粉末と、バインダーその他の有機成分とを混合し、ペースト状としたものである。
以降は、製法Aと同様、2成分混合ペーストの塗布により形成された塗布膜の上に、3成分混合ペーストを重畳的に塗布し(ステップS22)、さらに、2成分混合ペーストと3成分混合ペーストとが重畳してなるペースト塗布膜(ペースト二重膜)を、所定の押圧手段で押圧(プレス)する(ステップS23)。
係る製法Bの場合も、押圧により3成分混合ペーストの塗布膜に含まれる貴金属粒子と造孔材粒子の一部が2成分混合ペーストの塗布膜に入り込む。
その後、上述のように素子体を対象とする焼成がなされると、係るペースト二重膜も焼成され、有機成分の揮発さらには貴金属NMと固体電解質SEの焼結が進行する。これにより、2成分混合ペーストの塗布部分は下側層となる。一方で、3成分混合ペーストの塗布部分においては、貴金属NMと固体電解質SEの焼結とともに造孔材が昇華して気孔CVが形成され、最終的に貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとが混在した上側層44Uが得られる。この場合も、結果として、図2に示すような2層構成の測定電極44が形成される。
なお、製法Bの場合も、2成分混合ペーストと3成分混合ペーストの塗布厚および塗布面積は、焼成による収縮や、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44における上側層44Uと下側層44Lとの厚み、および、測定電極44の平面面積が、所望の値となるように設定されればよい。また、2成分混合ペーストにおける貴金属の粉末と、固体電解質たるジルコニアの粉末との混合比は、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44の下側層44L(2相領域)における貴金属NMと固体電解質SEとの体積比率が所望の値にあるように設定されればよい。同様に、3成分混合ペーストにおける貴金属の粉末と、固体電解質たるジルコニアの粉末と、造孔材の粉末との混合比は、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44の上側層44U(3相領域)における貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとの体積比率が所望の値にあるように設定されればよい。製法Aの場合と同様、これらの値の間の関係についても、あらかじめ実験的に特定されてよい。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、限界電流型のガスセンサのセンサ素子に備わる測定電極を、全体としては多孔質サーメット電極として設けつつも、貴金属と固体電解質のみが存在し気孔が存在しない下側層と、貴金属と固体電解質と気孔とが混在する上側層との2層構成とすることで、測定電極内に取り込みきれない余剰酸素の存在に起因した測定電極の劣化が好適に抑制されてなる。これにより、継続的に使用したとしても測定感度が劣化することが好適に抑制されたガスセンサが、実現される。
<変形例>
上述の実施の形態において測定電極44に採用されてなる、気孔の存在しない領域と気孔の存在する領域との2層構成を、測定電極44と同様にAu-Pt合金とZrO2とのサーメットとして設けられる内側ポンプ電極22や補助ポンプ電極51に適用する態様であってもよい。係る場合、これらの電極においてもアンカー効果に伴う剥離抑制の効果が得られる。このような内側ポンプ電極22や補助ポンプ電極51も、測定電極44と同様のプロセスにて形成することが出来る。
また、上述の実施の形態においては、測定電極44となるパターンの形成手法として、製法Aと製法Bの2通りを示しているが、これらに代わる形成手法である製法Cが採用されてよい。
製法Cは、製法Aで用いた電解質ペーストと、製法Bで用いた2成分混合ペーストと、製法Aおよび製法Bで用いた3成分混合ペーストとをこの順に、第1固体電解質層4を形成するためのグリーンシートの上面の、測定電極44の形成対象位置に塗布したうえで、所定の押圧手段で押圧(プレス)するというものである。
製法Cの場合も、電解質ペーストと2成分混合ペーストと3成分混合ペーストの塗布厚および塗布面積は、焼成による収縮や、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44における上側層44Uと下側層44Lとの厚み、および、測定電極44の平面面積が、所望の値となるように設定されればよい。また、2成分混合ペーストにおける貴金属の粉末と、固体電解質たるジルコニアの粉末との混合比は、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44の下側層44L(2相領域)における貴金属NMと固体電解質SEとの体積比率が所望の値にあるように設定されればよい。同様に、3成分混合ペーストにおける貴金属の粉末と、固体電解質たるジルコニアの粉末と、造孔材の粉末との混合比は、押圧による貴金属粒子および造孔材粒子の入り込みを加味しつつ、最終的に形成される測定電極44の上側層44U(3相領域)における貴金属NMと固体電解質SEと気孔CVとの体積比率が所望の値にあるように設定されればよい。製法Aおよび製法Bの場合と同様、これらの値の間の関係についても、あらかじめ実験的に特定されてよい。
実施例として、測定電極44の作製条件が異なる6種類のガスセンサ100(実施例1~実施例6)を作製し、得られたガスセンサ100について、測定電極44の上側層44Uと下側層44Lにおける各相(貴金属、固体電解質、気孔)の体積比と、2つの層の厚み比tU:tLとを評価した。また、継続的な使用に伴う測定電極の劣化の度合を評価するべく、大気中での連続駆動試験を行った。
測定電極44の形成に際しては、製法を製法Aと製法Bとの2水準に違え、それぞれの製法について、主として上側層44Uを形成するための3成分混合ペーストにおける貴金属粉末、固体電解質粉末、および造孔材の重量比を2水準に違えた。製法Aに用いる電解質ペーストと、製法Bに用いる2成分混合ペーストについては、それぞれ1種類とした。
また、従来例として、全体を3成分混合ペーストで形成した測定電極44Zを備えるガスセンサも作製し(以下、係る作製手法を従来製法と称する)、実施例のガスセンサと同様に、測定電極44Zの各相(貴金属、固体電解質、気孔)の体積比の評価と、大気中での連続駆動試験を行った。
表1に、実施例1~実施例6の測定電極44および従来例の測定電極44Zの作製に用いたペーストにおける貴金属粉末、固体電解質粉末、および造孔材の重量比(成分比)を一覧にして示す。
表1において、「上側層形成用」欄には3成分混合ペーストの重量比が示されており、「下側層形成用」欄には電解質ペーストと2成分混合ペーストの重量比が示されている。
表1に示すように、3成分混合ペーストに用いる貴金属粉末、固体電解質粉末、および造孔材の重量比をそれぞれa、b、cとし、2成分混合ペーストに用いる貴金属粉末および固体電解質粉末の重量比をそれぞれd、eとしたときに、3成分混合ペーストについては、a:b:c=10:2:1(実施例1、実施例4、実施例6)とa:b:c=30:10:1(実施例2、実施例3、実施例5)のいずれかの重量比とした。また、2成分混合ペーストについては、3成分混合ペーストにおける造孔材の混合比cを1としたときの値が(c:)d:e=(1:)5:1となるようにした(実施例4、実施例5、実施例6)。さらに、電解質ペーストに含まれる固体電解質粉末についても、3成分混合ペーストにおける造孔材の混合比cに対する比を便宜上eで表した場合に、c:e=1:10となるようにした(実施例1、実施例2、実施例3)。
製法Aにて測定電極44を形成した実施例1ないし実施例3においては、電解質ペーストの狙いの塗布厚を10μmとし、3成分混合ペーストの狙いの塗布厚を15μmとした。
製法Bにて測定電極44を形成した実施例4ないし実施例6においては、2成分混合ペーストの狙いの塗布厚を5μmとし、3成分混合ペーストの狙いの塗布厚を15μmとした。
また、従来製法にて測定電極44Zを作製した従来例においては、3成分混合ペーストにおいてa:b:c=10:2:1とし、3成分混合ペーストの狙いの塗布厚は15μmとした。
測定電極44の上側層44Uと下側層44Lにおける各相の体積比と、両層の厚み比tU:tLとを表2に示す。なお、従来例の測定電極44Zにおける体積比は便宜上、「上側層」欄に示している。
表2においては、上側層44Uにおける貴金属NM、固体電解質SE、および気孔CVの体積比をそれぞれP1(%)、P2(%)、P3(%)とし、下側層44Lにおける貴金属NMおよび固体電解質SEの体積比をそれぞれP4(%)、P5(%)としている。P1+P2+P3=P4+P5=100(%)である。
測定電極44および測定電極44Zにおける各相の体積比は、それぞれについて断面SEM像を撮像し、係る断面SEM像に対し公知の画像処理を行うことにより求めた。概略的には、貴金属NMの存在領域が白色、固体電解質SEの存在領域が灰色、気孔あるいは内部空所の存在領域が黒色となるように当該断面SEM像を3値化し、それぞれの領域の面積比(断面積比)を体積比とした。
また、上側層44Uと下側層44Lの厚み比tU:tLは、測定電極44の断面SEM像に基づいて上側層44Uの厚みtUと下側層44Lの厚みtLとを特定することにより行った。
表2に示す結果は、実施例1~実施例6のいずれにおいても、測定電極44が上側層44Uと下側層44Lとの2層構成を有していることを示している。
より詳細にみれば、測定電極44の作製方法は異なるものの3成分混合ペーストにおける重量比a:b:cが10:2:1で共通する実施例1、実施例4、および実施例6では、P1、P2、P3、P4、P5の値はそれぞれ、同じとなった。このうち、上側層44Uと下側層44Lの貴金属NMの体積比についてはP1=P4=40%であった。また、固体電解質SEの体積比については、上側層44Uにおける値P2は20%であったのに対し、下側層44Lにおける値P5はそれよりも大きい60%であった。
これに対し、測定電極44の作製方法は異なるものの3成分混合ペーストにおける重量比a:b:cが30:10:1で共通する実施例2、実施例3、および実施例5では、P1、P2、P3の値はそれぞれに同じとなったが、P4、P5の値については実施例2および実施例3と実施例5との間で5%ずつ相違した。すなわち、実施例2、実施例3、および実施例5のいずれにおいても、上側層44Uにおける貴金属NMの体積比P1の値は45%であり、固体電解質SEの体積比P2の値は40%であったのに対し、下側層44Lにおける貴金属NMの体積比P4の値は、実施例2および実施例3では45%で、実施例5では40%であった。これに対応して、固体電解質SEの体積比P5の値は、実施例2および実施例3では55%で、実施例5では60%であった。
ただし、いずれの実施例においても、上側層44Uにおける固体電解質SEの体積比よりも、下側層44Lにおける固体電解質SEの体積比の方が高かった。具体的には、上側層44Uにおける固体電解質SEの体積比は20%~40%なる範囲内にあり、下側層44Lにおける固体電解質SEの体積比は50%~60%なる範囲内にあった。
なお、従来例の測定電極44Zにおける各相の体積比P1、P2、P3は、同じ重量比の三成分混合ペーストを用いた実施例1および実施例4と同じであった。
また、上側層44Uと下側層44Lの厚み比tU:tLについていえば、製法Aで作製した実施例1ないし実施例3においてはいずれも、値tUの方が大きな値となったが、製法Bで作製した実施例4ないし実施例6では、上側層44Uにおける体積比に応じて、値tUと値tLの大小関係が相異なった。
ただし、いずれの実施例においても、厚み比tU:tLは95:5~10:90の範囲内にあった。
大気中での連続駆動試験は、それぞれのガスセンサを25±5℃の大気雰囲気中で3000時間連続して動作させ、動作開始時、1000時間経過後、2000時間経過後、3000時間経過後のそれぞれの時点におけるNOx電流の値(NOx出力とも称する)を測定することにより行った。動作開始時のNOx電流値を基準とした、各測定タイミングにおけるNOx電流の変化率をNOx出力変化率として算出した。NOx出力変化率は、測定電極44あるいは測定電極44Zの劣化の度合を示す指標となる値である。
図6は、連続駆動試験の結果を示すグラフである。図6においては、横軸に駆動時間をとし、縦軸にNOx出力変化率としている。
図6に示すように、従来例のガスセンサにおいては駆動時間の経過とともにNOx出力が顕著に変化し、3000時間経過時点におけるNOx出力変化率はばらつきも考慮すると11.5%±3.5%程度となったのに対し、実施例1~実施例6のガスセンサの場合は、3000時間経過時点でもNOx出力変化率は最大でも6%程度に留まっていた。このことは、実施例1~実施例6のガスセンサにおいては、3000時間経過後においても測定電極の劣化が抑制されていること意味する。
特に、実施例3を除くガスセンサにおいては、3000時間経過時点におけるNOx出力変化率が概ね3%以下に留まっており、これらのガスセンサにおいては、測定電極の劣化がより好適に抑制されているものと判断される。
以上の連続駆動試験の結果は、限界電流型のガスセンサのセンサ素子において、測定電極を、貴金属と固体電解質との2相構成の下側層と貴金属と固体電解質と気孔との3相構成の上側層との2層構成として設けることにより、ガスセンサを継続的に使用した場合の測定電極の劣化が抑制できることを示している。