JP7601686B2 - 積層フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、高度に紙粉低減化が可能であり、印刷性にも優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
前記基材層は、熱可塑性樹脂Aとフィラーとを含み、
前記第一の樹脂層は、前記熱可塑性樹脂Aよりも低融点の熱可塑性樹脂Bとフィラーとを含む、空孔率が15%以下の層であり、
前記インク受容層は、エマルジョン由来の樹脂成分を含有し、前記樹脂成分の最低造膜温度が100℃以下である、
積層フィルム。
(2)前記第一の樹脂層における前記フィラーの含有量が10質量%以上である前記(1)に記載の積層フィルム。
(3)前記熱可塑性樹脂Aが、プロピレン単独重合体である前記(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)前記熱可塑性樹脂Bが、プロピレンと、プロピレンと共重合可能なモノマーとのランダム共重合体である前記(1)~(3)のいずれか1に記載の積層フィルム。
(5)前記樹脂成分の体積平均粒径が0.01~3.0μmである前記(1)~(4)のいずれか1に記載の積層フィルム。
(6)前記基材層の前記第一の樹脂層とは反対側の面に、さらに第二の樹脂層を有し、
前記第二の樹脂層の空孔率が15%以下である前記(1)~(5)のいずれか1に記載の積層フィルム。
(7)前記基材層及び前記第一の樹脂層が、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムである前記(1)~(6)のいずれか1に記載の積層フィルム。
(8)インク受容層、第一の樹脂層、及び基材層をこの順に積層する、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の積層フィルムの製造方法であって、
前記基材層に前記第一の樹脂層を積層した後に、少なくとも1軸方向に同時延伸する工程を含む、製造方法。
本発明の積層フィルムは、インク受容層、第一の樹脂層、及び基材層をこの順に有する積層フィルムであって、
前記基材層は、熱可塑性樹脂Aとフィラーとを含み、
前記第一の樹脂層は、前記熱可塑性樹脂Aよりも低融点の熱可塑性樹脂Bとフィラーとを含む、空孔率が15%以下の層であり、
前記インク受容層は、エマルジョン由来の成分を含有し、前記樹脂成分の最低造膜温度が100℃以下である。
本発明の積層フィルムは、基材層の上に空孔率が15%以下の第一の樹脂層を有する。通常、フィラーを含む樹脂フィルムは延伸の際にフィラーに起因する空孔が生じるが、本発明の積層フィルムにおける第一の樹脂層は、フィラーを含む延伸フィルムであるにもかかわらず空孔率が低いという特徴を有し、その結果として基材層及び第一の樹脂層に含まれるフィラーの脱離を抑制することができ、紙粉を低減できるものと考えられる。
上記のような第一の樹脂層が形成できるのは、以下の理由による。後述するように、本発明の積層フィルムは、その製造において、基材層と第一の樹脂層とを積層し同時延伸することにより好ましく得られる。ここで、本発明の積層フィルムの第一の樹脂層に用いられる樹脂(熱可塑性樹脂B)は、基材層に用いられる樹脂(熱可塑性樹脂A)よりも融点が低い。そのため、基材層と第一の樹脂層とを積層し同時延伸する際には、より融点の高い熱可塑性樹脂Aが延伸可能な延伸温度とする必要があり、熱可塑性樹脂Bを含む第一の樹脂層は溶融状態にて延伸される。これにより、基材層ではフィラーに起因する空孔が生じるものの、第一の樹脂層では空孔が生じにくくなり、第一の樹脂層の空孔率を15%以下とすることが可能となる。
以下、各層について説明する。
基材層は、機械的強度に優れた樹脂フィルムであり、積層フィルムの支持体として設けられる。基材層は、熱可塑性樹脂Aとフィラーとを含む樹脂組成物をフィルム成形することによって形成され得る。
基材層は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムである。
熱可塑性樹脂Aはポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はポリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。
グラフト変性には公知の手法を用いることができる。具体的には、グラフトモノマーとして不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いたグラフト変性物を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸等を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物、又は金属塩等を挙げることができる。
基材層は、フィラーを含有する。使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。フィラーにより、フィルムの白色度又は不透明度の調整が容易となるほか、樹脂と比べて安価であるためコスト削減にもつながる。また、延伸によってフィルム内部に空孔が形成されやすく、基材層、ひいては積層フィルムの軽量化が可能となる。基材層が多孔質であると、積層フィルムの断熱性も向上しやすい。
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、又はガラスファイバー等の無機粒子を使用することができる。無機フィラーのレーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径は、通常は0.01~15μmであり、好ましくは0.1~5μmである。
有機フィラーとしては、基材層の主成分であるポリオレフィン系樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。そのような有機フィラーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、又はポリメタクリレート等のポリマーであって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170~300℃)又は高いガラス転移温度(例えば170~280℃)を有し、かつ非相溶の有機粒子を使用できる。
基材層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、多孔化の観点から5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、強度維持の観点から60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤等を、基材層全量に対して通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
光安定剤としては、例えば立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、又はベンゾフェノン系光安定剤を、基材層全量に対して通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらは、例えばフィラーを分散させる目的で、基材層全量に対して通常0.01~4質量%の範囲内で使用することができる。
基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。多層化により、機械特性、筆記性、耐擦過性又は2次加工適性等の様々な機能を基材層に付与することが可能となる。
基材層は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムを含み、詳しくは、後述の第一の樹脂層と共に少なくとも1軸方向に同時延伸された延伸フィルムを含む。機械的強度の観点からは、2軸延伸フィルムを含むことが好ましい。
延伸フィルムを含む基材層は、機械的強度が高く、厚みの均一性に優れているため、後加工性に優れた積層フィルムを得ることができる。また、延伸によりフィラーに起因する空孔が生じるため、フィルムの軽量化が可能となる。
基材層が多層構造である場合、各層の延伸軸数は、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸であってもよい。
軽量化又は白色度の向上等の観点からは、基材層の空孔率は、0%を超えることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。一方、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。空孔率が50%以下であれば、隣接して形成される空孔同士が繋がりにくく、強度を維持しやすい。また、基材層の延伸後に他層を積層する場合において、他層積層前に基材層中のフィラーが基材層から脱離することを抑制しやすい。
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めることができる。
本発明の積層フィルムは、基材層上に第一の樹脂層を有する。第一の樹脂層は、基材層中に含まれる熱可塑性樹脂Aよりも低融点の熱可塑性樹脂Bとフィラーとを含む樹脂組成物をフィルム成形することによって形成され得る。
第一の樹脂層は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムである。
熱可塑性樹脂Bは上述の熱可塑性樹脂Aよりも低融点の樹脂である。そのため、積層フィルムの製造において、基材層と第一の樹脂層とを積層し、熱可塑性樹脂Aが延伸可能な延伸温度にて同時延伸する際に熱可塑性樹脂Bが溶融し、第一の樹脂層中に空孔が生じにくくなる。結果、基材層及び第一の樹脂層に含まれるフィラーの脱落を抑制することができ、紙粉発生を低減できる。
なお、上述の基材層に含まれる熱可塑性樹脂Aが2種以上である場合には、熱可塑性樹脂Bは、少なくとも主成分である熱可塑性樹脂Aよりも低融点である。ここで、「主成分である熱可塑性樹脂A」とは、熱可塑性樹脂Aの総量に対して50質量%以上含まれる成分を表す。
なかでも、プロピレンと、プロピレンと共重合可能なモノマーとのランダム共重合体が好ましく、具体的には、プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、又は1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体が好ましく、特にプロピレン-エチレンランダム共重合体が好ましい。
第一の樹脂層は、フィラーを含有する。第一の樹脂層において使用できるフィラーの具体例としては、上述の基材層に含まれるフィラーの具体例として挙げられた無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。
第一の樹脂層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
上記下限以上とすることによって、フィラーの添加による白色化、コスト削減効果等が得られやすい。また、上記上限以下とすることによって、本発明による紙粉低減効果が発揮されやすく、樹脂フィルムの製膜性や強度が良好となる。
第一の樹脂層は、必要に応じて、上述の基材層が含みうるその他の成分を含有することができ、具体例及び好ましい使用量についても同様である。
第一の樹脂層は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムであり、詳しくは、上述の基材層と共に少なくとも1軸方向に同時延伸された延伸フィルムである。第一の樹脂層は、フィラーを含有する延伸フィルムであるにも関わらず、空孔率が低いという特徴を有し、これによりフィラー添加による白色化やコスト削減効果を発揮するとともに、紙粉発生を抑制できる。また、延伸により厚みの均一性に優れているため、後加工性に優れた積層フィルムを得ることができる。
本発明の積層フィルムにおいて、第一の樹脂層の空孔率は15%以下である。空孔率を15%以下とすることによって、第一の樹脂層中に含まれるフィラー、及び基材層中に含まれるフィラーの脱離を抑制し、紙粉を低減することができる。紙粉低減効果の観点から、空孔率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
なお、空孔率の下限値は特に限定されず、0%であっても0%超であってもよい。ただし、上述のように第一の樹脂層は延伸フィルムであるため、延伸の影響を鑑みると、概ね0%超である。
上記空孔率は、基材層における空孔率と同様に求めることができる。
インク受容層は、第一の樹脂層上に設けられ、本発明の積層フィルムの最表面に位置する。インク受容層上には印刷によってインクが転写される。
エマルジョンは、分散媒中に微粒子状の樹脂成分(樹脂粒子)が乳化又は分散した液体である。本発明において、樹脂成分(樹脂粒子)とは、分散媒中に分散してエマルジョンを構成する微粒子状の樹脂をいう。取り扱いの容易性の観点からは、水性分散媒中に樹脂粒子が乳化又は分散したO/W系エマルジョンが好ましい。
これは、エマルジョンがインク受容層に疎水性を付与し、過度な親水化を抑えるためと推測される。このような作用により、インク受容層の周囲の水分がインク受容層上に転写されたインクと接触することによるインクの滲みが抑えられ、印刷性が改善される。
エマルジョンに含まれる樹脂成分(樹脂粒子)の体積平均粒径は、0.01~3.0μmであることが好ましい。樹脂成分(樹脂粒子)の体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定される。
樹脂成分の最低造膜温度(MFT:Minimum film forming temperature)は100℃以下である。MFTを100℃以下とすることによって、インク受容層の製膜性、特に常温での製膜性が良好となり、紙粉低減効果がより向上する。MFTは80℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下である。下限は特に指定されないが、通常-20℃以上である。
エマルジョン中の樹脂成分として使用できる樹脂の種類としては、例えばウレタン系樹脂、オレフィン系共重合体又はスチレン系樹脂等が挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂又はオレフィン系共重合体が好ましく、最低造膜温度の観点からウレタン系樹脂がさらに好ましい。
ウレタン系樹脂としては、カチオン性のウレタン系樹脂を好ましく使用できる。カチオン性のウレタン系樹脂は、ポリウレタン樹脂骨格にカチオン性基を導入した共重合体である。この共重合体は、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオールを、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン樹脂を生成した後、これを4級化剤で4級化することにより生成することができる。あるいは、N,N-ジアルキルアルカノールアミン類;N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-ブチル-N,N-ジエタノールアミン等のN-アルキル-N,N-ジアルカノールアミン類;及びトリアルカノールアミン類からなる群から選択される1種以上を、ポリオールの一部に添加した後、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン樹脂を生成し、これを4級化剤で4級化することによっても、生成することができる。
オレフィン系共重合体としては、乳化性が良好な、カルボキシ基あるいはその塩を共重合成分として含有するか、又は繰り返し単位中にエステル結合を含むオレフィン系共重合体を用いることが好ましい。カルボキシ基あるいはその塩を共重合成分として含有するオレフィン系共重合体の代表例としては、オレフィン系単量体と不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体及びその塩等が例示できる。これらのオレフィン系共重合体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エマルジョンにおける樹脂成分の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、同含有量は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。含有量が上記下限値以上又は上記上限値以下であれば、樹脂成分(樹脂粒子)の体積平均粒径が0.01~3.0μmのエマルジョンの調製が容易になる。
インク受容層におけるエマルジョンに由来する成分の固形分の含有量は、インク受容層の固形分全量に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。同含有量は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、積層フィルムの紙粉低減効果及び印刷性が高まりやすく、上記上限値以下であれば、エマルジョンの調製が容易になる。
エマルジョンには、必要に応じて分散剤が添加されていてもよい。これにより、樹脂成分を分散媒中に均一に分散させることができ、均一な塗膜が得られやすい。
分散剤としては、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
非イオン性水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール及びそれらの変性物、又はヒドロキシエチルセルローズ等が例示できる。
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、又はトリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド等が例示できる。
カチオン性水溶性高分子としては、四級アンモニウム塩構造あるいはホスホニウム塩構造を有するポリマー、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、又は四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマー等が例示できる。
これらのなかで、第一の樹脂層との密着性の観点から、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、又は四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマー等のカチオン性水溶性高分子を用いることが特に好ましい。
エマルジョンの水性分散媒としては、用いる樹脂成分を溶解しないか、溶解し難い水性分散媒を用いることができる。そのような水性分散媒の具体例としては、水の他、エタノール、イソプロパノール、又はアセトン等の溶媒と水との混合液等を挙げることができる。
インク受容層は、エマルジョンに由来する樹脂成分以外の、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、各種インクとの親和性が高いエチレンイミン系樹脂が好ましい。
塗工液中のエチレンイミン系樹脂の含有量は、固形分換算で、上記エマルジョンの固形分100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。一方、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。同含有量が上記下限値以上であれば、印刷品質が向上しやすく、上記上限値以下であればエマルジョン由来の樹脂成分を使用することによる紙粉低減効果を阻害しにくい。
インク受容層は、必要に応じて帯電防止剤等のその他の添加剤を、印刷性を損なわない範囲で含有してもよい。
帯電防止剤は、フィルム表面の帯電による埃の付着、又は印刷時の静電気によるトラブル等を減らすことができる。
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン型、アニオン型、両性型、又はノニオン型の帯電防止剤等を用いることができる。また、低分子量型の帯電防止剤であってもよく、高分子量(ポリマー)型の帯電防止剤であってもよい。
これらの帯電防止剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エマルジョンには、必要に応じてさらに固定化剤が添加されていてもよい。固定化剤を含むことにより、製膜後に樹脂成分が積層フィルムから剥がれにくくなる。そのため、インク受容層中の樹脂成分に由来する紙粉を低減することができる。
固定化剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。
エマルジョンにおける固定剤の添加量は、固形分換算で、樹脂成分100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、基材層の第一の樹脂層とは反対側の面に、さらに空孔率が15%以下である第二の樹脂層を有していることが好ましい。空孔率の低い第二の樹脂層を設けることにより、基材層の第一の樹脂層とは反対側の面から、基材層に含まれるフィラーが脱離することを抑制し、紙粉をさらに低減することができる。
第二の樹脂層は、延伸フィルムであることが好ましい。
第二の樹脂層は、延伸されていてもいなくてもよいが、機械的強度の観点からは、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。ただし、第二の樹脂層が上記第二の好ましい態様、すなわち、第一の樹脂層と同様の樹脂フィルムである場合には、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムである。詳しくは、基材層と共に、又は、基材層及び第一の樹脂層と共に、少なくとも1軸方向に同時延伸された延伸フィルムである。
第二の樹脂層の空孔率は紙粉低減効果の観点から、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
上記空孔率は、基材層における空孔率と同様に求めることができる。
本発明の積層フィルムは、上述したインク受容層、第一の樹脂層、基材層及び第二の樹脂層以外の他の層を有してもよい。例えば、製造効率の観点から各層を個別に形成した後に積層する場合、第一の樹脂層又は第二の樹脂層の支持体としての役割も有し、更に、基材層との貼合を良好に行う効果をもつその他の樹脂層が設けられてもよい。その他の樹脂層は、共押出等によって第一の樹脂層又は第二の樹脂層とともに形成される。
積層後のその他の樹脂層は、基材層と良好に密着し、積層フィルムの機械的強度を高める支持体として機能し得る。すなわち、その他の樹脂層/基材層/その他の樹脂層は3層構造の基材層といえる。
(各層の厚み)
基材層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、基材層の厚みは、500μm以下であることが好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がより好ましい。基材層の厚みが上記範囲内であれば、基材としての適度な剛性やコシが得られやすい。
本発明の積層フィルムは、インク受容層、第一の樹脂層、及び基材層をこの順に積層することにより製造することができ、基材層に第一の樹脂層を積層した後に少なくとも1軸方向に同時延伸する工程を含むことにより好適に製造される。
例えば、本発明の積層フィルムは、第一の樹脂層及び基材層のフィルムを形成して積層し同時延伸した後、第一の樹脂層上にインク受容層形成用の塗工液を塗工してインク受容層を形成することにより、製造することができる。
フィルムの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いることができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルムが成形されてもよい。
図1に例示する積層フィルム10Aでは、インク受容層3、第一の樹脂層2、及び基材層1がこの順に積層されている。インク受容層3上には印刷によって印刷層5が形成され得る。
図2は、第二の樹脂層4をさらに設けた場合の積層フィルム10Bを示す。
<基材層の延伸>
基材層は、第一の樹脂層の積層前に延伸してもよいし、無延伸であってもよいが、第一の樹脂層の積層後に少なくとも1軸方向に同時延伸する。
機械的強度の観点からは、基材層は2軸延伸することが好ましい。第一の樹脂層の積層後に同時に2軸延伸してもよいが、第一の樹脂層の積層前に1軸方向に延伸し、第一の樹脂層の積層後に、積層前の延伸方向と垂直方向にさらに延伸して2軸延伸とすることがより好ましい。
第一の樹脂層は、積層前は無延伸であり、基材層に積層された後に少なくとも1軸方向に同時延伸される。第一の樹脂層は1軸延伸であっても2軸延伸であってもよいが、1軸延伸することが好ましい。
第二の樹脂層が上述の第一の好ましい態様、すなわち基材層と同様の樹脂を含む樹脂フィルムである場合、第二の樹脂層は延伸してもよいし、無延伸であってもよいが、機械的強度の観点からは、基材層に積層される前、又は積層後、又はその両方において、少なくとも1軸方向に延伸することが好ましい。
第二の樹脂層が上述の第二の好ましい態様、すなわち第一の樹脂層と同様の樹脂フィルムである場合には、基材層に積層された後に、基材層と共に、又は、基材層及び第一の樹脂層と共に、少なくとも1軸方向に同時延伸される。
なお、基材層と第一の樹脂層とを積層後に同時延伸する際の延伸温度は、基材層に含まれる熱可塑性樹脂Aにおける上記の好ましい温度範囲であり、且つ、第一の樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂Bよりも高い温度とする。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、上限が通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、上限が通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
第一の樹脂層は、インク受容層との密着性を高める観点から、表面処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
インク受容層は、インク受容層形成用の塗工液を調製し、第一の樹脂層上に塗工することにより、形成することができる。
インク受容層形成用の塗工液は、上述したエマルジョン由来の樹脂成分に必要に応じて添加剤などを配合することにより、調製できる。
塗工量が上記下限値以上であることにより、さらなる紙粉低減効果が得られやすい。一方、上記上限値以下とすることにより、得られるインク受容層のべたつきを抑制しやすくなり、コスト削減にもつながる。
また、インク受容層の形成は、インク受容層以外の各層を形成するためのラインと同じラインで行ってもよいし、別のラインで行ってもよい。
本発明の積層フィルムのインク受容層の表面に印刷することにより、印刷層が形成され得る。
使用できる印刷方式としては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、又は電子写真記録方式等種々の公知の手法を用いることが可能である。これらのなかでも、耐候性と耐水性が優れた印刷物を得やすいオフセット印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷方式が好ましい。さらに印刷インクとしては、油性インク、水性インク又は紫外線硬化型インク等を用いることが可能である。
実施例及び比較例にて使用した原料は以下のとおりである。
(熱可塑性樹脂)
・プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY-4、日本ポリプロ社製、MFR:5.0g/10min(230℃、2.16kg荷重)、融点:164℃、密度:0.9g/cm3)
・プロピレン-エチレンランダム共重合体(商品名:ウィンテックWFW4、日本ポリプロ社製、融点:135℃)
・ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製、融点:132℃)
重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800(備北粉化学工業社製)、平均粒径:1.2μm)
カチオン性ポリウレタン水分散体(商品名:ハイドランCP-7050、DIC(株)製:MFT<5℃)を、エマルジョン(E)として使用した。このエマルジョン(E)の固形分は25質量%、エマルジョン(E)中の樹脂成分(樹脂粒子)の体積平均粒径は0.07μmであった。
上記体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定した。
撹拌機、環流冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミン P-1000)25質量%水溶液100質量部、1-クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部を導入した。次いで、窒素気流下で撹拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行った。この溶液に水を添加して固形分濃度を20質量%に調整し、エチレンイミン系樹脂の溶液(F)を得た。
上記ウレタン系樹脂のエマルジョン(E)と、エチレンイミン系樹脂溶液(F)とを、固形分濃度比が80質量部:20質量部となるように混合し、塗工液(1)として用いた。
上記エチレンイミン系樹脂溶液(F)を塗工液(2)として用いた。
(実施例1)
74質量部のプロピレン単独重合体(ノバテックPP FY-4)、10質量部のポリエチレン(ノバテックHD HJ360)、及び16質量部の重質炭酸カルシウム(ソフトン1800)とからなる樹脂組成物を、230℃に設定した押出機にて溶融混練した。その後、250℃に設定した押出ダイに供給してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、基材層を形成した。
これにより、第一の樹脂層が基材層上に積層された。
第一の樹脂層の形成に用いる熱可塑性樹脂の配合比率を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層フィルムを得た。
インク受容層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の積層フィルムを得た。
インク受容層を形成する塗工液(1)を塗工液(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、参考例1の積層フィルムを得た。
各実施例及び比較例の積層フィルムについて、紙粉低減効果、及び印刷性を次のようにして評価した。
各積層樹脂フィルムをA3サイズに断裁し、オフセット印刷機(機器名:RYOBI3300CR、リョービ製)およびUVオフセット印刷用インキ(製品名:BC161、T&K TOKA製)を用いて上述の裁断した積層フィルム2000枚に印刷を施した。この印刷後、ブランケットに付着している紙粉を目視で確認し、下記評価基準に従い評価した。下記評価基準の3以上が合格レベルである。
4(良) :紙粉の付着がない
3(可) :紙粉が一部に付着している
2(不可):紙粉が複数個所に付着している
1(不可):紙粉が全面に付着している
紫外線硬化型インクジェット印刷機(商品名「OceArizona250GT」、Oce社製)と紫外線硬化型インクジェット印刷用インク(墨)を用いて、印刷品質評価を行った。
各積層樹脂フィルムをA3サイズに断裁し印刷用紙を作製した。23℃・50%相対湿度の雰囲気下で上述の印刷用紙を3日間保存した後、上記の印刷機を用いてインク受容層の面に100%ベタにて文字(罫線太さ:5pt)を印刷した。印刷後の文字の目視観察を行い、インクの滲みから印刷品質を以下の基準で評価した。下記評価基準の2以上が合格レベルである。
3:良 (インキ滲みが認められない)
2:可 (インキ滲みがわずかに認められる)
1:不可(インキ滲みが認められる)
実施例では、フィラーを含むことによる軽量化、白色化、コスト削減効果を維持しつつ、紙粉の低減が可能で印刷性にも優れた積層フィルムが得られた。
1・・・基材層
2・・・第一の樹脂層
3・・・インク受容層
4・・・第二の樹脂層
5・・・印刷層
Claims (8)
- インク受容層、第一の樹脂層、及び基材層をこの順に有する積層フィルムであって、
前記基材層は、熱可塑性樹脂Aとフィラーとを含み、
前記第一の樹脂層は、前記熱可塑性樹脂Aよりも低融点の熱可塑性樹脂Bとフィラーとを含む、空孔率が15%以下の層であり、
前記インク受容層は、エマルジョン由来の樹脂成分を含有し、前記樹脂成分の最低造膜温度が100℃以下である、
積層フィルム。 - 前記第一の樹脂層における前記フィラーの含有量が10質量%以上である請求項1に記載の積層フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂Aが、プロピレン単独重合体である請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂Bが、プロピレンと、プロピレンと共重合可能なモノマーとのランダム共重合体である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
- 前記樹脂成分の体積平均粒径が0.01~3.0μmである請求項1~4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
- 前記基材層の前記第一の樹脂層とは反対側の面に、さらに第二の樹脂層を有し、
前記第二の樹脂層の空孔率が15%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルム。 - 前記基材層及び前記第一の樹脂層が、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムである請求項1~6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
- インク受容層、第一の樹脂層、及び基材層をこの順に積層する、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
前記基材層に前記第一の樹脂層を積層した後に、少なくとも1軸方向に同時延伸する工程を含む、製造方法。
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