JP7601876B2 - ポリビニルアルコールフィルム、及びそれを用いた光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコールフィルム、及びそれを用いた光学フィルムの製造方法に関する。
光の透過及び遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記する場合がある)に染色工程、延伸工程(一軸延伸工程)、及び必要に応じてさらにホウ素化合物等による固定処理工程を施して偏光フィルムを製造した後、その偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜を貼り合わせることによって製造される。
LCDは、電卓及び腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広範囲において用いられるようになっている。近年のLCDの高性能化に対応して、LCDの構成要素である偏光板についても高性能化が求められている。具体的には、より優れた光学性能を有し、かつ高温においても寸法安定性に優れた偏光板が求められている。したがって、偏光板に用いる偏光フィルムについても、より優れた光学性能(偏光性能)を有し、かつ高温下における収縮応力が小さいことが求められている。
しかしながら、偏光フィルムにおいて、光学性能(偏光性能)を高めつつ、高温下における収縮応力を小さくすることは容易ではない。これは、一般に偏光フィルムの偏光性能と収縮応力にはトレード・オフの関係が成立するためである。すなわち、偏光フィルムの偏光性能を高くしようとすれば収縮応力が大きくなり、収縮応力を小さくしようとすれば偏光性能が低下する。
特許文献1には、平均重合度が2500~3500のPVAを含むPVAフィルムを用い、所定の架橋延伸工程を採用することによって、偏光性能に優れ収縮応力が小さい偏光フィルムが得られることが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法で偏光フィルムを製造しても、PVAフィルムの製膜条件等によっては得られる偏光フィルムの偏光性能と収縮応力の両立が困難な場合があり、PVAフィルムの結晶構造の観点からの改善の余地があった。
一方、特許文献2には、小角X線散乱法により求められる長周期と非晶部の厚さを特定範囲としたPVAフィルムを用いることで、偏光性能(偏光度、単体透過率)の面内均一性に優れ、大面積化、高精細化に対応した偏光膜が得られることが記載されている。また、特許文献3には、水中での結晶長周期が特定範囲であるPVAフィルムを用いることで、長波長領域の吸光度が高く、しかも偏光度の高い偏光フィルムを製造できることが記載されている。しかしながら、特許文献2、3では、偏光フィルムの収縮応力については考慮されておらず、当然、偏光フィルムの偏光性能と収縮応力の両立についても考慮されていない。
特開2017-142347号公報 特開2006-188655号公報 WO2013/146147号公報
そこで本発明は、光学性能に優れ、高温下における収縮応力が小さい光学フィルムを製造することができるPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムを用いた光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、PVAフィルムの膨潤前後での結晶構造、特に結晶長周期の変化に着目して鋭意検討した結果、PVAフィルムの水/メタノール混合溶媒浸漬前後の結晶長周期の変化量と浸漬前の結晶長周期との比を特定範囲とすることで、光学性能に優れ、高温下における収縮応力が小さい光学フィルムが得られることを見出した。そして、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[7]に関する。
[1]水/メタノール混合溶媒中(体積比率:2/8)で行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Dsと、前記混合溶媒に浸漬する前に行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Daとが以下の式を満たす、PVAフィルム。
0.3≦(Ds-Da)/Da<0.5
[2]前記結晶長周期Daが10.0~12.5nmである、[1]に記載のPVAフィルム。
[3]前記PVAフィルム中に含まれるPVAがエチレン単位を含有し、その含有量が1~8モル%である、[1]または[2]に記載のPVAフィルム。
[4]フィルムの平均厚さが15~60μmである、[1]から[3]のいずれかに記載のPVAフィルム。
[5]光学フィルム製造用の原反フィルムである、[1]から[4]のいずれかに記載のPVAフィルム。
[6][1]から[5]のいずれかに記載のPVAフィルムを一軸延伸する、光学フィルムの製造方法。
[7]PVAフィルムを膨潤させる膨潤工程を含む、[6]に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明により、光学性能に優れ、高温下における収縮応力が小さい光学フィルムを製造することができるPVAフィルム、このようなPVAフィルムを用いた光学フィルムの製造方法及び光学フィルムが提供される。
小角X線散乱測定で得られる散乱曲線において、ピークトップの散乱ベクトルq(nm-1)を設定する際の参考図である。 実施例1~3及び比較例1~3で得られた偏光フィルムについて、単体透過率が44.0%のときの偏光度を収縮応力に対してプロットした図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
<PVAフィルム>
(小角X線散乱測定)
本発明のPVAフィルムは、水/メタノール混合溶媒中(体積比率:2/8)で行った、小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Dsと、前記混合溶媒に浸漬する前に行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Daとが、0.3≦(Ds-Da)/Da<0.5の式を満たす。
小角X線散乱測定では、試料にX線を照射した際、X線が原子の周りにある電子によって散乱又は干渉して起こる回折を解析する。特に、2θ<10°以下の低角領域に現れる回折を解析することで、測定対象である試料の構造を評価することができ、通常、数nm~数十nm程度の大きさの構造を評価できるとされている。例えば、測定対象である試料の結晶長周期(ポリマー中にランダムに存在する結晶間距離の平均値)を評価することができる。
一般に、規則正しく配列している物質にX線を入射すると、X線が散乱される。散乱したX線は互いに干渉し合い、特定の方向で強め合う。ブラッグの式によれば、dを格子間距離、θをブラッグ角、λをX線の波長とした時に、2d・sinθ=nλのブラッグの式を満たす方向でのみ、この散乱による回折X線が観測される。
PVAフィルムには、PVAの分子鎖が折り畳まれた状態である結晶部(ラメラ結晶)とPVAの分子鎖が折り畳まれずほどけた状態である非晶部が存在する。そして、本発明では、結晶部(ラメラ結晶)同士の結晶間距離の平均値を結晶長周期とする。この結晶長周期は、PVAフィルムに対して小角X線散乱測定を行って得られる散乱曲線の回折ピークから求めることができる。そして、PVAフィルムが光学フィルム製造用の原反フィルムである場合には、この結晶長周期に由来する回折ピークは、散乱ベクトルq(nm-1)が0.5nm-1付近に出現することが一般に知られている。
(結晶長周期の算出)
本発明では、小角X線散乱測定の対象であるPVAフィルムを以下の通り調製し、測定サンプルとした。まず、測定対象であるPVAフィルムを幅方向(TD方向)、機械流れ方向(MD方向)の区別無く、2cm×1cmのサイズに複数枚カットした。このカットしたPVAフィルムを、温度20℃、湿度65%の条件で24時間保管した後、測定セルに10枚積層し、測定サンプルとした。ここで、この測定サンプルを空気(温度20℃、湿度65%)中で小角X線散乱測定を行った際に得られる散乱曲線から求めた結晶長周期が、後述の結晶長周期Daである。また、同様に2cm×1cmのサイズに複数枚カットしたPVAフィルムを、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)に24時間浸漬した後、該混合溶媒で満たした測定セルに10枚積層し、測定サンプルとした。ここで、この測定サンプルに対して小角X線散乱測定を行った際に得られる散乱曲線から求めた結晶長周期が、後述の結晶長周期Dsである。
測定サンプルの調製において、測定セルは、厚さ7.5μmのカプトンフィルムを入射光側と反射光側の窓材として用い、窓材間の間隔を約1.5mmとした。このような構造とすることで、測定サンプルを測定セル中に密閉することができる。また、この測定セルを用いることで、下記測定装置における通常測定の配置で、測定対象であるPVAフィルムを該混合溶媒中に配置することができる。
本発明において、小角X線散乱測定は、ナノスケールX線構造評価装置「Nano Viewer」(株式会社リガク製)により行った。測定条件は以下の通りである。
透過測定
X線:CuKα線
波長:0.15418nm
出力:40kV-20mA
第1スリット:φ0.4mm
第2スリット:φ0.2mm
第3スリット:φ0.45mm
検出器:半導体2次元検出器 PILATUS-100K(測定面積=33.5×83.8mm)
ピクセルサイズ:0.172mm角
カメラ長:1004.51mm
ビームストッパー径:4mm
X線露光時間:1時間
測定モード:通常測定
環境温度:室温(20℃)
PVAフィルムの小角X線散乱測定では、PVAフィルムからの散乱にスリットなどの装置、X線通過部分の空気、セル内部の溶媒からの散乱が重なるため、これらの散乱をバックグラウンドとして補正する必要がある。そのため、測定サンプルを測定して得られた散乱強度から、別途算出した上記バックグラウンドの散乱強度を差し引くことで、補正を行った。さらに、2次元検出器で測定された小角X線散乱の散乱強度像から、散乱ベクトルq(nm-1)に対する散乱強度を方位角方向に積分し、散乱ベクトルq(nm-1)と散乱強度I(q)の一次元プロファイルの関係を導いて、散乱曲線を得た。
上記のように、PVAフィルムの小角X線散乱測定では、PVAフィルムの結晶長周期に由来する回折ピークは、散乱曲線において、散乱ベクトルq(nm-1)が0.5nm-1付近に出現する。本発明においては、この回折ピークのピークトップの散乱ベクトルq(nm-1)の値から結晶長周期Ds及び結晶長周期Daを算出した。ここで、このピークトップは、散乱ベクトルq(nm-1)が0.2以上1.0以下の範囲において、散乱曲線が上に凸となる変曲点である(図1参照)。
上記で求めた散乱ベクトルq(nm-1)の値から、結晶長周期Ds及び結晶長周期Daを求める式は以下の通りである。
結晶長周期(nm) = 2π/q
本発明において、水/メタノール混合溶媒中(体積比率:2/8)で行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Dsと、前記混合溶媒に浸漬する前に行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Daとが、0.3≦(Ds-Da)/Da<0.5の式を満たすことが重要である。
ここで、(Ds-Da)/Daは、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)に浸漬する前後の結晶長周期の増加率を意味する。水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)中で小角X線散乱測定を行うことにより、PVAフィルムを水に浸漬した際の膨潤初期の結晶溶解状態を評価することができる。(Ds-Da)/Da(以下、「結晶長周期の増加率」と称することがある)は0.5未満であることが好ましく、0.4未満であることがより好ましい。(Ds-Da)/Daは0.3以上であることが好ましく、0.32以上であることがより好ましい。結晶長周期の増加率が大きすぎる場合、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルムが水等の溶媒で膨潤することによって、PVAフィルム中のラメラ結晶間の距離が広がりやすい。すなわち、PVAフィルム中のラメラ結晶間に存在する非晶部において、PVAの分子鎖の相互作用が小さくなりやすいと考えられる。その結果、光学フィルムを製造する際の延伸工程において、PVAフィルムに加えられる延伸応力がPVAの分子鎖の配向に十分に寄与できず、得られる光学フィルムの光学性能が低くなる虞がある。一方、結晶長周期の増加率が小さすぎる場合、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルム中の非晶部が水等の溶媒で膨潤し難いと考えられる。すなわち、光学フィルムを製造する際の延伸工程において、PVAフィルム中のラメラ結晶が溶解しにくく延伸応力が結晶部に集中しやすい。その結果、PVAフィルム中の非晶部においてPVAの分子鎖が十分に配向せず、得られる光学フィルムの光学性能と収縮応力を両立できない場合がある。
本発明において、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)に浸漬する前に行った小角X線散乱測定から求められる、PVAフィルムの結晶長周期Daは10.0nm以上であることが好ましい。また、結晶長周期Daは12.5nm以下であることが好ましい。ここで、結晶長周期Daは、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)に浸漬する前、すなわち空気中(温度20℃、湿度65%)で小角X線散乱測定を行って求められる。結晶長周期Daの下限は11.0nmであることがより好ましい。結晶長周期Daの上限は12.3nmであることがより好ましい。結晶長周期Daが10.0nm未満であると、PVAフィルム中のラメラ結晶の厚みが小さい結晶構造と推定される。ラメラ結晶の厚みが小さいと、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルムを水等の溶媒中に浸漬させたときにPVAフィルム中のラメラ結晶の微結晶が溶解しやすくなる。その結果、PVAフィルムが柔らかくなり、膨潤工程においてPVAフィルムにシワが発生しやすくなる虞がある。一方、結晶長周期Daが12.5nmより大きいと、PVAフィルム中のラメラ結晶の厚みが大きいか、またはラメラ結晶間の距離が長く非晶部が多い結晶構造であると推定される。前者の場合、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルム中のラメラ結晶が十分に溶解せず、光学フィルムを製造する際の延伸工程においてPVAフィルムの延伸張力が高くなりやすい。その結果、得られる光学フィルムの収縮応力が高くなる虞がある。後者の場合、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルムを水等の溶媒中に浸漬させたときにPVAフィルム中の非晶部が水を取り込みやすい。その結果、PVAフィルムが柔らかくなって、光学フィルムを製造する際の延伸工程においてPVAフィルムの延伸張力が低くなり、得られる光学フィルムの光学性能が不十分となる虞がある。
本発明において、水/メタノール混合溶媒中(体積比率:2/8)で行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Dsは、12.0nm以上であることが好ましい。また、結晶長周期Dsは18.0nm以下であることが好ましい。結晶長周期Dsの下限は13.0nmであることがより好ましい。結晶長周期Dsの上限は17.0nmであることがより好ましい。結晶長周期Dsが18.0nmを超えると、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルムを水等の溶媒中に浸漬させたときにPVAの分子鎖が広がりやすく、得られる光学フィルムの耐湿熱性が悪化する恐れがある。一方、結晶長周期Dsが12.0nm未満であると、光学フィルムを製造する際の膨潤工程において、PVAフィルムを水等の溶媒中に浸漬させたときにPVAフィルム中の非晶部に水が入り込みにくい。その結果、光学フィルムを製造する際の延伸工程においてPVAフィルムの延伸張力が高くなり、得られる光学フィルムの収縮応力が高くなる虞がある。
本発明において、結晶長周期Ds及び結晶長周期Daを調整し、結晶長周期の増加率を上記範囲にコントロールする方法には、(1)フィルムを製膜する際の吐出、乾燥、加熱条件の制御により、PVAの結晶状態を調整する方法、(2)PVAの種類(けん化度、変性量など)によって、PVAの分子鎖同士の相互作用の程度を調整しPVAフィルム中の非晶部の広がりを調整する方法、(3)可塑剤の添加などによって、ラメラ結晶のサイズを調整する方法、(4)架橋剤の添加などによってPVAの分子鎖間の架橋構造を調整し、PVAの結晶状態又は非晶部の広がりを調整する方法、及びこれらの組み合わせで調整する方法が挙げられる。
上記(1)の方法により、結晶長周期の増加率を上記範囲にコントロールする場合、フィルムを製膜する際の吐出条件は、例えば、製膜原液の揮発分率を10質量%以上、40質量%以下とすることが好ましい。また、膜状吐出装置の出口における剪断速度は75s-1以上で、1000s-1であることが好ましい。また、フィルムを製膜する際の乾燥条件は、例えば、製膜原液を流涎する支持体の表面温度は60℃以上であることが好ましく、100℃以下であることが好ましい。支持体上のPVA膜の非接触面側に吹き付ける熱風の温度は50℃以上であることが好ましく、150℃以下であることが好ましい。乾燥炉の温度又は乾燥ロールの平均温度(乾燥ロールの表面温度の平均値)は40℃以上であることが好ましく、110℃以下であることが好ましい。フィルムを製膜する際の加熱条件は、例えば、熱処理ロールの表面温度が135℃以下であることが好ましい。
上記(2)の方法により、結晶長周期の増加率を上記範囲にコントロールする場合、PVAのけん化度は、例えば、85モル%以上、95モル%以下であることが好ましい。また、PVAの変性量(ポリビニルアルコール単位以外のモノマーで変性された割合)は、例えば、0.3モル%以上、8モル%以下であることが好ましい。
上記(3)の方法により、結晶長周期の増加率を上記範囲にコントロールする場合、可可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して2質量部以上で、20質量部以下であることが好ましい。また、可塑剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジグリセリンを用いることが好ましい。
(PVA)
本発明のPVAフィルムが含有するPVAとして、ビニルエステルモノマーを重合して得られるビニルエステル重合体をけん化することにより製造された重合体を使用することができる。ビニルエステルモノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができる。上述の中でも、ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル重合体は、特に限定されないが、単量体として1種または2種以上のビニルエステルモノマーのみを用いて得られた重合体が好ましく、単量体として1種のビニルエステルモノマーのみを用いて得られた重合体がより好ましい。なお、ビニルエステル重合体は、1種または2種以上のビニルエステルモノマーと、1種または2種以上のビニルエステルモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
この他のモノマーとしては、エチレンが好ましい。すなわち、本発明のPVAフィルム中に含まれるPVAは、エチレン単位を含有することが好ましい。また、エチレン単位の含有量は、ビニルエステル重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、1モル%以上であることが好ましい。また、エチレン単位の含有量は、8モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。エチレン単位の含有量が上記範囲であることにより、得られる光学フィルムの光学性能と収縮応力を両立することができる。その理由は必ずしも明らかではないが、光学フィルムを製造する際の染色工程において、染色工程中の色素がPVAフィルム中の疎水性のエチレン単位に吸着しやすく、PVAフィルムに加えられる延伸応力によって吸着した色素の配向性が高められるためであると推測される。
この他のモノマーとしては、エチレン以外に、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等の炭素数3~30のオレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロールアクリルアミドまたはその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。なお、ビニルエステル重合体は、上述の他のモノマーのうちの1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
このエチレン以外の他のモノマーに由来する構造単位の割合は、本発明の効果を妨げない限り必ずしも制限されないが、ビニルエステル重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましく、0.1モル%以下であることがよりさらに好ましい場合もある。
PVAの重合度は、特に制限されないが、1,000以上であることが好ましい。また、PVAの重合度は、8,000以下であることが好ましい。PVAの重合度は、得られる光学フィルムの光学性能及び耐湿熱性を高める観点から、1,500以上であることがより好ましく、2,000以上であることがより好ましい。一方、重合度の上限は、PVAの生産性を高める観点から、5,000以下であることがより好ましく、4,000以下であることがさらに好ましい。
ここで、重合度とは、JIS K 6726-1994の記載に準じて測定される平均重合度を意味する。すなわち、本発明において、重合度(Po)は、PVAの残存酢酸基を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](デシリットル/g)から、次式により求められる。
重合度Po = ([η]×10/8.29)(1/0.62)
本発明において、PVAのけん化度の下限は、98.7モル%であることが好ましく、99.0モル%であることがより好ましく、99.5モル%であることがさらに好ましく、99.8モル%であることが特に好ましく、99.9モル%であることが好ましい。けん化度が、上記の下限以上であることにより、光学性能及び耐湿熱性に優れた光学フィルムが得られる。一方、けん化度の上限に特に制限はないが、PVAの生産性の観点から、99.99モル%以下であることが好ましい。
ここで、PVAのけん化度は、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステルモノマー単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して、ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。PVAのけん化度は、JIS K 6726-1994の記載に準じて測定することができる。
本発明のPVAフィルムは、1種類のPVAを単独で含有してもよいし、重合度、けん化度及び変性度等が互いに異なる2種以上のPVAを含有してもよい。
PVAフィルムにおけるPVAの含有量の割合の上限は、特に制限されない。一方、PVAの含有量の割合の下限は、50質量%であることが好ましく、80質量%であることがより好ましく、85質量%であることがさらに好ましい。
(可塑剤)
本発明のPVAフィルムは、可塑剤を含むことが好ましい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、光学フィルムを製造する際の延伸工程において、PVAフィルムの延伸性を高めることができる。可塑剤としては多価アルコールが好ましい。多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらの中でも、延伸性の向上効果の点からグリセリンが好ましい。可塑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
PVAフィルム中の可塑剤の含有量を調整することにより、ラメラ結晶の量又はラメラ結晶のサイズを調整することができる。PVAの分子鎖の一次構造にもよるが、一般に可塑剤を含まないPVAフィルムに比べ、少量の可塑剤を含むPVAフィルムは熱処理により結晶成長が進行しやすくなる。これは、少量の可塑剤により、PVAフィルム中のPVA分子が動きやすくなり、エネルギー的により安定な結晶構造をとりやすくなるためと推定される。そして、PVAフィルムの結晶成長が進行すると、PVAフィルム中のラメラ結晶のサイズが大きくなり、結晶長周期Daは大きくなる傾向にある。一方、PVAフィルムが過剰量の可塑剤を含むと、結晶成長が阻害されやすくなる。これはPVA分子の水酸基と相互作用する可塑剤の量が多くなり、PVA分子間の相互作用が弱まるためと推定される。また、PVAフィルムが可塑剤を含むと、PVフィルム中の非晶部が水を取り込みやすくなり、結晶長周期の増加率は大きくなる傾向がある。
PVAフィルム中のラメラ結晶のサイズを適切な範囲に調整し、結晶長周期Da及び結晶長周期の増加率を調整する観点からは、可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して2質量部以上であることが好ましい。また、可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して2質量部未満の場合、及び20質量部を超える場合のいずれも、PVAフィルム中のラメラ結晶のサイズか小さくなりすぎる傾向がある。その結果、結晶長周期Daが小さくなり、PVAフィルムの結晶長周期の増加率が所定の範囲外となる虞がある。可塑剤の含有量はPVA100質量部に対して、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましい。また、可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して17質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
(界面活性剤)
本発明のPVAフィルムは、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含む製膜原液を用いてPVAフィルムを製造することにより、PVAフィルム製膜性が向上する。その結果、PVAフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に使用する金属ロールやベルトからのPVAフィルムの剥離が容易になる。界面活性剤を含む製膜原液からPVAフィルムを製造する場合には、得られるPVAフィルム中には界面活性剤が含有される。
界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからのPVAフィルムの剥離性の観点などから、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えばラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などを挙げることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などを挙げることができる。
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
PVAフィルムが界面活性剤を含む場合、PVAフィルム中の界面活性剤の含有量の下限は、PVA100質量部に対して、0.01質量部であることが好ましく、0.02質量部であることがより好ましく、0.05質量部であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量を上記下限以上とすることで、PVAフィルムの製膜性及び剥離性がより向上する。一方、PVAフィルム中の界面活性剤の含有量の上限は、PVA100質量部に対して、0.5質量部であることが好ましく、0.3質量部であることがより好ましく、0.2質量部であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量を上記上限以下とすることで、界面活性剤がPVAフィルムの表面にブリードアウトしてブロッキングが生じ、取り扱い性が低下することを抑制することができる。
(他の添加剤等)
本発明のPVAフィルムには、さらに、充填剤、銅化合物などの加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、架橋剤、防かび剤、防腐剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤が必要に応じて適宜含有されていてもよい。
本発明のPVAフィルムにおける、PVA、可塑剤及び界面活性剤の合計の占める割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましい場合もある。本発明のPVAフィルムが、PVA、可塑剤及び界面活性剤から実質的に構成されていることで、本発明のPVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造した場合に、偏光性能に優れた偏光フィルムを得ることができる。
(形状・物性等)
本発明のPVAフィルムは、光学フィルムの材料として用いられる、いわゆる光学フィルム製造用の原反フィルムである。但し、本発明のPVAフィルムは、ロール状になっているものに限定されるものではない。
本発明のPVAフィルムの平均厚さは特に制限されない。PVAフィルムの平均厚さの下限は、1μmであることが好ましく、5μmであることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましく、15μmであることが特に好ましい。平均厚さが上記下限以上であることで、光学フィルムを製造する際の延伸工程において、PVAフィルムの破断を抑制することができる。一方、平均厚さの上限は、60μmであることが好ましく、50μmであることがより好ましく、45μmであることがさらに好ましく、35μmであることがよりさらに好ましい。平均厚さが上記上限以下であることで、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、「平均厚さ」とは、任意の5点で測定した厚さの平均値をいう(以下、平均厚さについて同様である。)。
本発明のPVAフィルムは、1層のPVA層からなる単層フィルムであってもよいし、1層のPVA層を含む多層フィルムであってもよい。但し、本発明のPVAフィルムを偏光フィルム製造用の原反フィルムとして用いる場合などは、単層フィルムであることが好ましい。本発明のPVAフィルムが多層フィルムのPVA層として含まれる場合、PVA層の平均厚さの下限は、1μmであることが好ましく、5μmであることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましく、15μmであることが特に好ましい。平均厚さが上記下限以上であることで、光学フィルムを製造する際の延伸工程において、PVAフィルムの破断を抑制することができる。また、PVA層の平均厚さの上限としては、60μmであることが好ましく、50μmであることがより好ましく、45μmであることがさらに好ましく、35μmであることがよりさらに好ましい。平均厚さが上記上限以下であることで、本発明の効果を十分に発揮することができる。
多層フィルムとは、2層以上の層を有するフィルムをいう。多層フィルムの層数は、5層以下であってよく、3層以下であってよい。多層フィルムとしては、基材樹脂層とPVA層との積層構造を有する積層フィルムが挙げられる。基材樹脂層の平均厚さは、例えば20μm以上であることが好ましい。また、基材樹脂層の平均の厚さは、例えば500μm以下であることが好ましい。多層フィルムにおける基材樹脂層は、PVA層とともに一軸延伸できるものであることが好ましい。基材樹脂層を構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリオレフィン等を用いることができる。なかでも、非晶質ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの共重合成分を共重合させた非晶質ポリエステルが好適に用いられる。基材樹脂層とPVA層との間には、接着剤層が設けられていてもよい。
本発明のPVAフィルムの幅は特に制限されず、その用途などに応じて決めることができる。例えば、PVAフィルムの幅の下限は3mが好ましい。幅の下限が3mであることで、近年、大画面化が進行している液晶テレビや液晶モニターの用途に好適である。一方、PVAフィルムの幅の上限は7mが好ましい。幅の上限を7mとすることで、実用化されている装置で偏光フィルムなどの光学フィルムを製造する場合に、効率的に延伸処理(一軸延伸処理)を行うことができる。
本発明のPVAフィルムの膨潤度は、得られる光学フィルムの生産性や光学性能の観点などから、140%以上であることが好ましい。また、本発明のPVAフィルムの膨潤度は400%以下であることが好ましい。膨潤度の下限は、170%であることがより好ましく、180%であることがさらに好ましく、190%であることが特に好ましい。また、膨潤度の上限は、220%であることがより好ましく、210%であることがさらに好ましい。PVAフィルムの膨潤度は、例えば、PVAフィルムの熱処理の温度を高めることによって、より小さい値に調整することができる。
ここで、「PVAフィルムの膨潤度」とは、次式により求めた値をいう。
膨潤度(%)=100×N/M
式中、NはPVAフィルムから採取したサンプルを30℃の蒸留水中に30分間浸漬後、表面の水を除去した後のサンプルの質量(g)を表す。Mはそのサンプルを105℃の乾燥機で16時間乾燥した後のサンプルの質量(g)を表す。
本発明のPVAフィルムは、通常、実質的に延伸されていないフィルム(非延伸フィルム、未延伸フィルム)である。また、PVAフィルムの面内位相差は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。通常、本発明のPVAフィルムを延伸処理(一軸延伸処理又は二軸延伸処理)することなどにより、光学フィルムを得ることができる。
本発明のPVAフィルムによれば、光学性能に優れ、高温下における収縮応力が小さい光学フィルムを製造することができる。本発明のPVAフィルムにより製造できる光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられ、偏光フィルムであることが好ましい。
<PVAフィルムの製造方法>
本発明において、PVAフィルムの製膜方法は、PVAに溶媒、添加剤等を加えて均一化させた製膜原液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、乾湿式製膜法、ゲル製膜法(製膜原液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVA系重合体フィルムを得る方法)、あるいはこれらの組み合わせにより製膜する方法や、押出機などを使用して上記製膜原液を得てこれをTダイなどから押出すことにより製膜する溶融押出製膜法やインフレーション成形法など、任意の方法により製膜することができる。これらの中でも、流延製膜法及び溶融押出製膜法が、均質なフィルムを生産性よく得ることができるため、好ましい。以下、PVAフィルムの流延製膜法または溶融押出製膜法について説明する。
PVAフィルムを流延製膜法または溶融押出製膜法にて製膜する場合、上記の製膜原液は金属ロールや金属ベルトなどの支持体の上へ膜状に流涎され、加熱されて溶媒が除去されることにより、固化してフィルム化する。固化したフィルムは支持体より剥離されて、必要に応じて乾燥ロール、乾燥炉などにより乾燥されて、さらに必要に応じて熱処理されて、巻き取られることにより、ロール状の長尺のPVAフィルムを得ることができる。
支持体上に流涎された製膜原液(以下、「PVA膜」と称することがある)は、支持体上及びその後の乾燥工程で加熱乾燥される間に結晶化が進む。特に製膜原液が、揮発分率(水分率)の高い状態で加熱されることによって、製膜原液(PVA膜)におけるPVAの分子鎖の運動性が高くなり、結晶化が進む。その結果、PVAフィルム中のラメラ結晶の量が多くなり、結晶長周期Daは小さくなる傾向にある。ここで、乾燥速度が速すぎるとPVAフィルムの結晶化が十分に進行せず、ラメラ結晶の量が少なくなり結晶長周期Daは大きくなる傾向がある。一方、乾燥速度が遅すぎるとPVAフィルムの結晶成長が進み、ラメラ結晶のサイズが大きくなり、結晶長周期Daは大きくなる傾向がある。また、与える熱量が多すぎると、PVAフィルム中のラメラ結晶のサイズが大きくなり、結晶長周期Daが大きくなりすぎたり、結晶長周期の増加率が小さくなりすぎたりする傾向がある。
製膜原液の揮発分率(製膜時などに揮発や蒸発によって除去される溶媒等の揮発性成分の割合)は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましい。また、製膜原液の揮発分率は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。揮発分率が50質量%未満であると、製膜原液の粘度が高くなり、PVAフィルムの製膜が困難となる場合がある。一方、揮発分濃度が90質量%を超えると、粘度が低くなりPVAフィルムの厚さの均一性が損なわれやすい。
ここで、本発明における「製膜原液の揮発分率」とは、下記の式により求めた揮発分率をいう。
製膜原液の揮発分率(質量%)={(Wa-Wb)/Wa}×100
(式中、Waは製膜原液の質量(g)を表し、WbはWa(g)の製膜原液を105℃の電熱乾燥機中で16時間乾燥した時の質量(g)を表す。)
製膜原液の調整方法に特に制限はなく、例えば、PVAと可塑剤、界面活性剤などの添加剤を溶解タンク等で溶解させる方法や、一軸または二軸押出機を使用して含水状態のPVAを溶融混錬する際に、可塑剤、界面活性剤などと共に溶融混錬する方法などが挙げられる。
PVAフィルムを流延製膜法または溶融押出製膜法にて製膜する場合、上記の製膜原液は、膜状吐出装置から金属ロールや金属ベルトなどの支持体の上へ膜状に流涎され、加熱されて溶媒が除去されることにより、固化してフィルム化する。
本発明のPVAフィルムは、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)に浸漬する前後の結晶長周期の増加率が特定の範囲内にある。この増加率は、PVAフィルム中のラメラ結晶間に存在する非晶部におけるPVAの分子鎖の絡み合いの程度に影響を受けると推定される。そのため、製膜原液が強い剪断力を受ける、膜状吐出装置の出口における剪断速度を調整することで、PVAフィルムの結晶長周期の増加率を制御することができる。このような観点から、膜状吐出装置の出口における剪断速度は75s-1以上であることが好ましく、100s-1以上であることがより好ましく、125s-1以上であることがさらに好ましい。また、膜状吐出装置の出口における剪断速度は、1000s-1以下であることが好ましく、900s-1以下であることがより好ましく、800s-1以下であることがさらに好ましい。剪断速度が上記の上限以下であることで、結晶長周期の増加率が小さくなりすぎるのを防止することができる。一方、剪断速度が上記の下限以上であることで、結晶長周期の増加率が大きくなりすぎるのを防止することができる。
本発明において、膜状吐出装置の出口における剪断速度は、一般的なTダイやIダイの場合、ダイリップにおける製膜原液流路の壁面での剪断速度を指し、以下の式で計算できる。
γ=6Q/Wh
ここで、γは壁面での剪断速度(s-1)、Wはダイリップの幅(cm)、hはダイリップの開度(cm)、Qは製膜原液のダイリップからの吐出速度(cm/s)を意味する。
製膜原液を流涎する支持体の表面温度は50℃以上であることが好ましい。また、製膜原液を流涎する支持体の表面温度は110℃以下であることが好ましい。表面温度が50℃未満の場合、製膜原液の乾燥に要する時間が長くなり生産性が低下する傾向がある。一方、表面温度が110℃を超える場合は、発泡等によりPVAフィルムの膜面に異常を生じやすくなる傾向がある。また、製膜原液が急速に乾燥されることにより、PVAフィルムの結晶化が十分に進行せず、ラメラ結晶の量が少なくなり結晶長周期Daは大きくなる傾向がある。PVAフィルムの結晶長周期の増加率を調節しやすくする観点から、支持体の表面温度は60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。また、支持体の表面温度は100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。
支持体上でPVA膜を加熱すると同時に、PVA膜の非接触面側の全領域に風速1~10m/秒の熱風を均一に吹き付けて、乾燥速度を調節してもよい。非接触面側に吹き付ける熱風の温度は、乾燥効率や乾燥の均一性などの点から、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また、非接触面に吹き付ける熱風の温度は、乾燥効率や乾燥の均一性などの点から、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
PVA膜は支持体上で好ましくは揮発分率5~50質量%にまで乾燥された後、剥離され、必要に応じてさらに乾燥される。乾燥の方法に特に制限はなく、乾燥炉や乾燥ロールに接触させる方法が挙げられる。複数の乾燥ロールで乾燥させる場合は、フィルムの一方の面と他方の面を交互に乾燥ロールに接触させることが、両面を均一化させるために好ましい。乾燥ロールの数は、3個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましく、5個以上であることがさらに好ましい。また、乾燥ロールの数は、30個以下であることがさらに好ましい。乾燥炉の温度又は乾燥ロールの平均温度(乾燥ロールの表面温度の平均値)の上限は、110℃であることが好ましく、100℃であることがより好ましく、90℃であることがより好ましく、85℃であることが更に好ましい。乾燥炉の温度又は乾燥ロールの平均温度が高すぎると、PVAフィルムの結晶成長が進み、PVAフィルム中のラメラ結晶のサイズが大きくなる傾向がある。その結果、結晶長周期Daが大きくなり、結晶長周期の増加率が小さくなりすぎる虞がある。一方、乾燥炉の温度又は乾燥ロールの平均温度の下限は、40℃であることが好ましく、45℃であることがより好ましく、50℃であることがさらに好ましい。乾燥炉の温度又は乾燥ロールの平均温度が低すぎると、PVAフィルムの結晶成長が不十分となり、PVAフィルム中のラメラ結晶のサイズが小さくなる傾向がある。その結果、結晶長周期Daが小さくなりすぎたり、結晶長周期の増加率が大きくなりすぎたりする虞がある。
乾燥後のPVAフィルムに対して、必要に応じてさらに熱処理を行うことができる。熱処理を行うことにより、PVAフィルムの強度、膨潤度、複屈折率などを調整することができる。熱処理を行うための熱処理ロールの表面温度は60℃以上であることが好ましい。また、熱処理ロールの表面温度は、135℃以下であることが好ましく、130℃であることがより好ましい。熱処理ロールの表面温度が高すぎると、与える熱量が多すぎてPVAフィルム中のラメラ結晶のサイズが大きくなり、結晶長周期Daが大きくなりすぎたり、結晶長周期の増加率が小さくなりすぎたりする傾向がある。
このようにして製造されたPVAフィルムは、必要に応じて、さらに、調湿処理、フィルム両端部(耳部)のカットなどを行い、円筒状のコアの上にロール状に巻き取られ、防湿包装されて、製品となる。
上述した一連の処理によって最終的に得られるPVAフィルムの揮発分率は必ずしも限定されないが、PVAフィルムの揮発分率は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、PVAフィルムの揮発分率は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
なお、本発明のPVAフィルムが多層フィルムである場合、例えば基材樹脂フィルム(基材樹脂層)上に製膜原液を塗布することによって多層フィルムを製造することができる。このとき、PVA層と基材樹脂層との間の接着性を改善するために、基材樹脂フィルムの表面を改質したり、基材樹脂フィルムの表面に接着剤を塗布したりしてもよい。
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムの製造方法は、上述したPVAフィルムを一軸延伸する工程を備える。以下には、光学フィルムの製造方法の一例として、偏光フィルムの製造方法を挙げて具体的に説明する。
偏光フィルムの製造方法としては、PVAフィルムをそれぞれ、染色する染色工程、一軸延伸する延伸工程、及び必要に応じてさらに、膨潤させる膨潤工程、架橋させる架橋工程、固定処理する固定処理工程、洗浄する洗浄工程、乾燥させる乾燥工程、熱処理する熱処理工程などを備える方法が挙げられる。この場合、各工程の順としては特に限定されないが、例えば、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、固定処理工程などの順に行うことができる。また、1つ又は2つ以上の工程を同時に行うこともでき、各工程を2回又はそれ以上行うこともできる。特に、本発明のPVAフィルムは膨潤工程での膨潤シワの発生を抑制することができるため、膨潤工程を有する偏光フィルムの製造方法に用いられるフィルムとして有用である。
膨潤工程は、水等を含む膨潤処理浴にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。膨潤処理浴の温度は、20℃以上であることが好ましく、22℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。また、膨潤処理浴の温度は、55℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることがさらに好ましい。また、膨潤処理浴に浸漬する時間は、例えば0.1分以上であることが好ましく、0.5分以上であることがより好ましい。膨潤処理浴に浸漬する時間は、例えば5分以下であることが好ましく、3分以下であることがより好ましい。なお、膨潤処理浴に用いる水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
染色工程は、二色性色素を含む溶液(染色処理浴)にPVAフィルムを接触させることにより行うことができる。二色性色素としてはヨウ素系色素を用いるのが一般的である。染色のタイミングとしては、一軸延伸前、一軸延伸時及び一軸延伸後のいずれの段階であってもよい。染色処理浴としては、ヨウ素-ヨウ化カリウムを含有する溶液が好ましく、この溶液は水溶液であることが好ましい。染色処理浴におけるヨウ素の濃度は0.01質量%以上であることが好ましい。また、ヨウ素の濃度は0.5質量%以下であることが好ましい。ヨウ化カリウムの濃度は0.01質量%以上であることが好ましい。また、ヨウ化カリウムの濃度は10質量%以下であることが好ましい。また、染色処理浴の温度は20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。染色処理浴の温度は50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。染色時間は0.2分以上であることが好ましい。また、染色時間は5分以下であることが好ましい。
PVAフィルム中のPVAを架橋させる架橋工程を行うことにより、高温で湿式延伸する際にPVAが水へ溶出するのを効果的に抑制することができる。この観点から架橋工程は染色工程の後であって延伸工程の前に行うのが好ましい。架橋工程は、架橋剤を含む水溶液(架橋処理浴)にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種又は2種以上を使用することができる。架橋処理浴における架橋剤の濃度は1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。また、架橋剤の濃度は15質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。架橋剤の濃度が上記範囲内にあることで、PVフィルムの延伸性を十分に維持することができる。架橋処理浴はヨウ化カリウム等を含有してもよい。架橋処理浴の温度は、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。また、架橋処理浴の温度は、60℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましい。温度を上記範囲内にすることでPVAフィルムを効率良く架橋することができる。
PVAフィルムを一軸延伸する延伸工程は、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸を含む水溶液(延伸処理浴)中で行うこともできるし、上述した染色処理浴中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また、乾式延伸法の場合は、室温(25℃)のまま延伸を行ってもよいし、加熱しながら延伸してもよいし、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うこともできる。これらの中でも、幅方向に均一性高く延伸することができることから湿式延伸法が好ましく、延伸処理浴中で一軸延伸するのがより好ましい。延伸処理浴におけるホウ酸の濃度は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、延伸処理浴におけるホウ酸濃度は、6.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、延伸処理浴はヨウ化カリウムを含有してもよく、ヨウ化カリウムの濃度は0.01質量%以上であることが好ましい。また、ヨウ化カリウムの濃度は、10質量%以下であることが好ましい。一軸延伸における延伸温度は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、一軸延伸における延伸温度は、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、75℃以下であることがさらに好ましい。
一軸延伸における延伸倍率(非延伸のPVAフィルムからの全延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から5倍以上であることが好ましく、5.5倍以上であることがより好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、延伸倍率は8倍以下であることが好ましい。
一軸延伸におけるPVAフィルムの最大延伸応力は、50N/mm以下であることが好ましく、25N/mm以下であることがより好ましく、15N/mm以下であることがさらに好ましく、10N/mm以下であることが特に好ましい。ここで、最大延伸応力とは、延伸処理浴において隣接するロール間にかかるPVAフィルムの延伸張力をPVAフィルムの断面積で除した値である。このとき、PVAフィルムの延伸張力は、延伸処理浴において隣接するロール間に設置したテンションロールによって計測することができ、延伸処理浴において3本以上のロールを用いたときはその中の最大の値が用いられるまた、PVAフィルムの断面積は、偏光フィルムの作製に供する前の未延伸のPVAフィルムから求められる。最大延伸応力を小さくすることによって、収縮応力の小さい偏光フィルムを得ることができる。また通常、最大延伸応力は1N/mm以上である。
長尺のPVAフィルムを一軸延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができる。偏光性能に優れる偏光フィルムが得られることから、長尺方向への一軸延伸が好ましい。長尺方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
偏光フィルムの製造にあたっては、PVAフィルムへの二色性色素(ヨウ素系色素等)の吸着を強固にするために、延伸工程の後に固定処理工程を行うことができる。固定処理に使用する固定処理浴としては、ホウ酸、硼砂等のホウ素化合物の1種又は2種以上を含む水溶液を使用することができる。また、必要に応じて、固定処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴におけるホウ素化合物の濃度は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、固定処理浴におけるホウ素化合物の濃度は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。ホウ素化合物の濃度を上記範囲内にすることで二色性色素の吸着をより強固にすることができる。固定処理浴の温度は、15℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。また、固定処理浴の温度は、60℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
洗浄工程は、蒸留水、純水、水溶液等にフィルムを浸漬して行われることが一般的である。このとき、得られる偏光フィルムの偏光性能を向上させる観点からヨウ化カリウム等のヨウ化物を助剤として含有する水溶液(洗浄処理浴)を用いることが好ましい。ヨウ化物の濃度は0.5質量%以上であることが好ましい。また、ヨウ化物の濃度は10質量%以下とすることが好ましい。また、洗浄処理浴の温度は5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、15℃以上であることがさらに好ましい。また、洗浄処理浴の温度は50℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましく、40℃がさらに好ましい。洗浄処理浴の温度を上記範囲とすることで、得られる偏光フィルムの偏光性能をより高めることができる。
乾燥工程の条件は特に制限されないが、PVAフィルムの乾燥温度は30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、PVAフィルムの乾燥温度は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。上記範囲内の温度で乾燥することで、高温における寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
なお、位相差フィルム等、偏光フィルム以外の光学フィルムも、本発明のPVAフィルムを一軸延伸する工程を備える方法により製造することができる。具体的な製造方法は、本発明のPVAフィルムを用いること以外は、従来公知の方法を採用することができる。
本発明の光学フィルムが偏光フィルムである場合、偏光フィルムの二色性比(R)が100以上であることが好ましい。二色性比(R)は150以上であることがより好ましく、160以上であることがさらに好ましい。この二色性比(R)は、例えば、350以下であることが好ましく、300以下であることが好ましい。
偏光フィルムの二色性比(R)の算出方法は以下のとおりである。まず、表面反射を排除した透過率(T’)と単体透過率(T)との関係は下記式(a)で示される。このとき、偏光フィルムの屈折率は1.5であるとし、表面での反射率は4%であるとする。一方、透過率(T’)と偏光度(V)と二色性比(R)との関係は下記式(b)で示される。したがって、単体透過率(T)及び偏光度(V)を計測した上で、それらの値を用いて下記式(a)及び(b)を解くことで偏光フィルムの二色性比(R)を算出することができる。
T’=T/(1-0.04) ・・・(a)
R={-ln[T’(1-V)]}/{-ln[T’(1+V)]} ・・・(b)
偏光フィルムの二色性比(R)から、所定の単体透過率(T)のときの偏光度(V)を算出することができる。まず、上記式(a)から所定の単体透過率(T)のときの透過率(T’)を求める。そして、上記式(b)を変形した下記式(c)に、この透過率(T’)と二色性比(R)を代入した式を解くことで、所定の単体透過率(T)のときの偏光度(V)を求めることができる。本発明においては、この方法により、偏光フィルムの単体透過率(T)が44.0%のときの偏光度(V)を求めた。
T‘=[1-V]1/(R-1)/[1+V]R/(R-1) ・・・(c)
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面又は片面に、光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリレート系紫外線硬化型接着剤などを挙げることができる。すなわち、偏光板は、偏光フィルムと、この偏光フィルムの片面又は両面に直接又は接着剤層を介して積層された保護膜とを有する。
偏光板は、例えば、アクリル系等の粘着剤をコートした後、ガラス基板に貼り合わせてLCDの部品として使用することができる。なお、偏光板には、さらに、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等が貼り合わせられていてもよい。
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において採用された評価項目とその方法は、下記の通りである。
(1)PVAフィルムの結晶長周期Ds及びDa
以下の実施例及び比較例で得られたPVAフィルムについて、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)への浸漬前後で小角X線測定を行った。具体的には、まず、PVAフィルムを幅方向(TD方向)、機械流れ方向(MD方向)の区別無く、2cm×1cmのサイズに複数枚カットした。このカットしたPVAフィルムを、温度20℃、湿度65%の条件で24時間保管した後、測定セルに10枚積層し、測定サンプルとした。この測定サンプルに対して空気(温度20℃、湿度65%)中で小角X線散乱測定を行い、散乱曲線を得た。この散乱曲線のピークトップにおける散乱ベクトルq(nm-1)の値から、以下の式の通り結晶長周期Daを求めた。
結晶長周期Da(nm) = 2π/q
また、以下の実施例及び比較例で得られたPVAフィルムを幅方向(TD方向)、機械流れ方向(MD方向)の区別無く、2cm×1cmのサイズに複数枚カットした。このカットしたPVAフィルムを、水/メタノール混合溶媒(体積比率:2/8)に24時間浸漬した後、該混合溶媒で満たした測定セルに10枚積層し、測定サンプルとした。この測定サンプルに対して小角X線散乱測定を行い、散乱曲線を得た。この散乱曲線のピークトップにおける散乱ベクトルq(nm-1)の値から、以下の式の通り結晶長周期Dsを求めた。
結晶長周期Ds(nm) = 2π/q
(2)PVAフィルムの膨潤度
前記の方法にて、以下の実施例及び比較例で得られたPVAフィルムの膨潤度を求めた。
(3)偏光フィルムの作製
以下の実施例及び比較例で得られたPVAフィルムを用いて偏光フィルムを作製した。まず、25℃の純水(膨潤処理浴)中でPVAフィルムをMD方向に2.0倍延伸した後、ヨウ素を0.03質量%、ヨウ化カリウムを0.7質量%含む32℃の水溶液(染色処理浴)中で総延伸倍率が2.4倍になるように延伸した。続いて、ホウ酸を2.6質量%含む32℃の水溶液(架橋処理浴)中で総延伸倍率が3.0倍になるように延伸し、さらにホウ酸を2.8質量%、ヨウ化カリウムを5.0質量%含む58℃の水溶液(延伸処理浴)中で総延伸倍率が6.0倍になるまで延伸した。続いて、ホウ酸を1.5質量%、ヨウ化カリウムを2.5質量%含む22℃の水溶液(洗浄処理浴)中に5秒間浸漬し、80℃の乾燥炉で4分間乾燥させた。
(4)偏光フィルムの作製におけるPVAフィルムの最大延伸応力
上記偏光フィルムの作製において、延伸処理浴において隣接するロール間にかかるPVAフィルムの延伸張力を、その間に設置したテンションロールによって計測し、PVAフィルムの断面積で除した値を最大延伸応力とした。このとき、PVAフィルムの断面積は偏光フィルムの作製に供する前の未延伸のPVAフィルムから求めた。
(5)偏光フィルムの光学性能
得られた偏光フィルムの幅方向(TD方向)の中央部から、偏光フィルムの機械流れ方向(MD方向)に4cm、幅方向(TD方向)に1.5cmの長方形の測定サンプルを採取した。この測定サンプルに対して、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った上で、単体透過率及び偏光度を測定した。上述した方法により、単体透過率44.0%の偏光度を算出した。
(6)高温下における偏光フィルムの収縮応力
収縮応力は島津製作所製の恒温槽付きオートグラフAG-Xを用いて測定した。測定には20℃/20%RHで18時間調湿した偏光フィルム(長さ方向15cm、幅方向1.5cm)をチャック(チャック間隔5cm)に取り付け、引張り開始と同時に、80℃へ恒温槽の昇温を開始した。偏光フィルムを1mm/minの速さで引張り、張力が2Nに到達した時点で引張りを停止し、その状態で4時間後までの張力を測定した。このとき、シャフトの熱膨張によってチャック間の距離が変わるため、チャックに標線シールを貼り、ビデオ式伸び計TR ViewX120Sを用いてチャックに貼り付けた標線シールが動いた分だけチャック間の距離を修正できるようにして測定を行った。なお、4時間後の張力の測定値から初期張力2Nを差し引いた値を変更フィルムの収縮力とし、その値をサンプル断面積で除した値を収縮応力(N/mm)と定義した。
<実施例1>
ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られたPVA(けん化度99.9モル%、重合度2400)100質量部、可塑剤としてグリセリン14質量部、界面活性剤としてラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部、及び水からなる揮発分率73質量%の製膜原液を調整した。この製膜原液をろ過したものを、Tダイから剪断速度207s-1で支持体(表面温度90℃)上に、膜状に吐出し、支持体上で、支持体との非接触面の全体に85℃の熱風を5m/秒の速度で吹き付けて乾燥した。次いで、支持体から剥離して、PVAフィルムの一方の面と他方の面とが各乾燥ロールに交互に接触するように第1乾燥ロールから熱処理ロールの直前にある最終乾燥ロール(第19乾燥ロール)までの間で更に乾燥した後、最終乾燥ロールから剥離した。このとき、第1乾燥ロールから最終乾燥ロールまでの各乾燥ロールの表面温度の平均値が70℃となるようにした。最後に表面温度104℃の熱処理ロールで熱処理を行った後、ロール状に巻き取ってPVAフィルム(厚み45μm、幅3.3m)を得た。
得られたPVAフィルムに対して小角X線散乱測定を行った結果、結晶長周期Daは12.6nmであり、結晶長周期Dsは16.8nmであり、結晶長周期の増加率は0.33であった。また、PVAフィルムの膨潤度を測定した結果、197%であった。
さらに、得られたPVAフィルムを用いて偏光フィルムを作製した。このとき、最大延伸応力は9.0N/mmであった。得られた偏光フィルムの光学性能を測定した結果、単体透過率43.8%、偏光度99.935%であり、単体透過率44.0%のときの偏光度は99.873%と算出された。また、偏光フィルムの収縮応力を測定した結果、43.7N/mmだった。
<実施例2、実施例3及び比較例1~4>
PVAの種類、可塑剤量及び製造条件を表1のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPVAフィルムを得た。なお、表1ではエチレン単位の含有量が3モル%のエチレン変性を「ΔEt3」と略記した。
得られたPVAフィルム及び偏光フィルムの評価結果を表1に示す。また、実施例1~3及び比較例1~3で得られた偏光フィルムについて、単体透過率が44.0%のときの偏光度を収縮応力に対してプロットしたグラフを図2に示す。なお、比較例4のPVAフィルムは30℃の蒸留水中で溶解したため、膨潤度が測定できなかった。また、比較例4のPVAフィルムは25℃の純水(膨潤処理浴)中で溶解したため、偏光フィルムを作製できなかった。
Figure 0007601876000001
表1及び図2から明らかなように、本発明のPVAフィルムから製造された偏光フィルムは光学性能に優れ、高温下における収縮応力が小さい。
1 散乱曲線のピークトップ
2 散乱曲線のピークトップにおける散乱ベクトルqを設定する際の補助線
3 散乱曲線のピークトップにおける散乱ベクトルq

Claims (7)

  1. 水/メタノール混合溶媒中(体積比率:2/8)で行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Dsと、前記混合溶媒に浸漬する前に行った小角X線散乱測定から求められる結晶長周期Daとが以下の式を満たす、ポリビニルアルコールフィルム。
    0.3≦(Ds-Da)/Da<0.5
  2. 前記結晶長周期Daが10.0~12.5nmである、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  3. 前記ポリビニルアルコールフィルム中に含まれるポリビニルアルコールがエチレン単位を含有し、その含有量が1~8モル%である、請求項1または請求項2に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  4. フィルムの平均厚さが15~60μmである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  5. 光学フィルム製造用の原反フィルムである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸する、光学フィルムの製造方法。
  7. ポリビニルアルコールフィルムを膨潤させる膨潤工程を含む、請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。

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