JP7601961B2 - マイクロミラーデバイス - Google Patents

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Description

本開示は、マイクロミラーデバイスに関する。
シリコン(Si)の微細加工技術を用いて作製される微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスの1つとしてマイクロミラーデバイス(マイクロスキャナともいう。)が知られている。このマイクロミラーデバイスは小型かつ低消費電力であることから、レーザーを使ったヘッドアップディスプレイ、網膜ディスプレイなどへの応用が期待されている。
画像表示のための光スキャン方式としては、これまで一般的であったラスタスキャン方式に対し、水平軸および垂直軸の両軸ともに正弦的な駆動を行い、リサージュ波形を描くことによって画面を網羅するリサージュスキャン方式が注目されている。リサージュスキャン方式は、レーザードライバのアルゴリズムは複雑であるが、ミラーを小型化でき、かつ駆動消費電力を抑えながら広い画角を実現することができる。
マイクロミラーの駆動方式は様々であるが、圧電体の変形を利用した圧電駆動方式は、他の方式に比べて発生するトルクが高く、高スキャン角が得られるとして有望視されている。
特許第6092713号公報および国際公開第2016/052547号には、ミラー部がトーションバーを介して1対の半環状圧電アクチュエータと接続され、トーションバーを軸としてミラー部を回転振動可能とした圧電方式のミラーデバイスが開示されている。特許第6092713号公報および国際公開第2016/052547号では、ミラー部を振動させる際に半環状圧電アクチュエータに発生する応力分布に対応して圧電膜を分割配置し、分割配置されたそれぞれの圧電膜にそれぞれ適切な極性の駆動信号を与えることで、効率的にミラーを駆動する方法が開示されている。
しかしながら、特許第6092713号公報および国際公開第2016/052547号に開示されているミラーデバイスは、1軸方向にしかスキャンできないため、1チップでは画像を表示することができない。
他方、特許第5151065号公報、特許第4984117号公報および特開2018-41085号公報には、マイクロミラーデバイスとして2次元スキャンが可能な圧電駆動方式の光スキャナが提案されている。
特許第5151065号公報には、ミラー部が第1軸に沿った第1の接続部を介して可動枠に接続されており、可動枠が可動枠を囲む固定枠に圧電アクチュエータを介して接続された構成の光スキャナが開示されている。可動枠と圧電アクチュエータは第1軸に直交する第2軸に沿った第2の接続部で接続されており、さらに圧電アクチュエータは第1軸に沿った第3の接続部で固定枠に接続されている。ミラー部を挟んで軸上に配置される2つの第3の接続部の各々に1対の可動部が接続され、計4つの可動部により、ミラー部を可動枠ごと2軸周りに振動させることで、光の2次元スキャン動作を実現している。
特許第4984117号公報には、ミラー部と、ミラー部を囲むように配置され、第1軸に沿って延びる第1トーションバーを介してミラー部と接続された第1のアクチュエータ部と、第1のアクチュエータ部の外側に配置され、第1トーションバーの軸上で第1アクチュエータに接続された内部可動枠と、内部可動枠を囲むように配置され、第2トーションバーを介して内部可動枠と接続された第2のアクチュエータ部とを備えた光スキャナが開示されている。第1アクチュエータがミラー部に第1軸周りのトルクを与え、第2のアクチュエータ部がミラー部に第2軸周りのトルクを与えることで、光の2次元スキャン動作を実現している。
特開2018-41085号公報では、ミラー部が第1のトーションバーを介してミラー部を囲む第1のフレーム装置(可動枠)と接続されており、第1のフレーム装置が第2のトーションバーで第1のフレーム装置を囲むアクチュエータ構造体に接続されている。さらにアクチュエータ構造体が第3のトーションバーでアクチュエータ構造体を囲む第2のフレーム装置に接続された構成が開示されている。アクチュエータ構造体には第1軸および第2軸に対称な4つの可動部が備えられており、この4つの可動部によりミラー部が2つの軸中心に回動されて光の2次元スキャン動作を実現している。
特許第5151065号公報、特許第4984117号公報および特開2018-41085号公報によれば、1チップで2次元スキャンが可能である。しかしながら、特許第5151065号公報、特許第4984117号公報および特開2018-41085号公報の光スキャナはいずれも2軸周りで各々に独立した回転運動をさせるため、各軸周りの回転を担当する2つのトーションバーを介して、少なくとも2つの矩形もしくは円環形状のアクチュエータ(あるいは可動枠)を、ミラーを囲うように配置している。そのため、全体のチップサイズが大型化している。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、2次元スキャンが可能であり、かつ小型なマイクロミラーデバイスを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
光を反射する反射面を有するミラー部と、
ミラー部を囲んで配置された環状のアクチュエータと、
ミラー部とアクチュエータとを、第1軸周りでミラー部が回動可能に接続する第1接続部と、
アクチュエータの外周に設けられた固定部と、
アクチュエータと固定部とを、第1軸と交差する第2軸周りでアクチュエータが回動可能に接続する第2接続部とを備え、
アクチュエータが、ミラー部に第1軸周りの回転トルクを作用させ、かつ、ミラー部に第2軸周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部を第1軸および第2軸周りに回転駆動するマイクロミラーデバイスであり、
アクチュエータが、振動板上に下部電極、圧電膜および上部電極が積層された圧電素子を備えた圧電アクチュエータであり、
上部電極が、ミラー部に第1軸周りに傾き振動を生じさせる第1共振モードで駆動させた場合の最大変位状態において、圧電膜の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する第1応力反転領域、およびミラー部に第2軸周りに傾き振動を生じさせる第2共振モードで駆動させた場合に圧電膜の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する第2応力反転領域で分離された複数の個別電極部からなり、圧電素子は、複数の個別電極部の各々により規定される複数の圧電部を含むマイクロミラーデバイス。
<2>
第1接続部は、ミラー部とアクチュエータと第1軸上で接続する<1>に記載のマイクロミラーデバイス。
<3>
第2接続部は、アクチュエータと固定部とを第2軸上で接続する<1>または<2>に記載のマイクロミラーデバイス。
<4>
上部電極は、複数の個別電極部として、少なくとも8つの個別電極部を備え、複数の個別電極部は、第1軸および第2軸に対称に配置されている<1>から<3>のいずれかに記載のマイクロミラーデバイス。
<5>
アクチュエータの複数の圧電部の各々に駆動信号を入力するための駆動回路を備えた<1>から<4>のいずれかに記載のマイクロミラーデバイス。
<6>
駆動回路は、ミラー部を第1軸周りに傾き振動する第1共振モードで駆動し、かつ、ミラー部を第2軸周りに傾き振動する第2共振モードで駆動する駆動信号を複数の圧電部に入力する<5>に記載のマイクロミラーデバイス。
<7>
駆動回路は、駆動信号として、第1共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形と、絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形とが、互いに逆位相の関係にある第1駆動信号と、第2共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形と、絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形とが、互いに逆位相の関係にある第2駆動信号とを重畳した駆動信号を入力する<6>に記載のマイクロミラーデバイス。
本開示によれば、2次元スキャンが可能であり、かつ小型なマイクロミラーデバイスを提供することができる。
実施形態のマイクロミラーデバイスの平面図である。 マイクロミラーデバイスの一部の断面構造を示す図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体を上面側から見た斜視図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体の底面側から見た斜視図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体の平面図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体の底面図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体の左側面図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体の正面図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスの駆動回路との接続を模式的に示した図である。 実施形態のマイクロミラーデバイスにおける、第1軸周りのミラー部傾き振動を伴う第1共振モード時の形状変位のシミュレーション図である。 図10に示す第1共振モード時の形状変位によってアクチュエータに生じる面内応力分布を示す図である。 第1実施形態のマイクロミラーデバイスにおける、第2軸周りのミラー部傾き振動を伴う第2共振モード時の形状変位のシミュレーション図である。 図12に示す第2共振モード時の形状変位によってアクチュエータに生じる面内応力分布を示す図である。 第1軸周りの駆動時の電圧印加について説明するための図である。 第1軸周りの駆動時の印加駆動信号(電圧波形)を示す図である。 第2軸周りの駆動時の電圧印加について説明するための図である。 第2軸周りの駆動時の印加駆動信号(電圧波形)を示す図である。 参考例のマイクロミラーデバイスの平面図である。 参考例のマイクロミラーデバイスにおける、第1軸周りのミラー部傾き振動を伴う第1共振モード時の形状変位のシミュレーション図である。 参考例のマイクロミラーデバイスの第1軸周りの駆動時の駆動方法について説明するための図である。 参考例のマイクロミラーデバイスにおける、第2軸周りのミラー部傾き振動を伴う第2共振モード時の形状変位のシミュレーション図である。 参考例のマイクロミラーデバイスの第2軸周りの駆動時の駆動方法について説明するための図である。
以下、図面を参照して本開示の具体的な実施の態様について説明する。
図1は実施形態に係るマイクロミラーデバイスの平面図である。図2は、マイクロミラーデバイスの一部の断面構造を示す図である。図3は、マイクロミラーデバイス用の構造体を上面側から見た斜視図であり、配線構造を備えていない状態を示す。図4は、実施形態のマイクロミラーデバイス用の構造体を底面側から見た斜視図である。図5は、実施形態のマイクロミラーデバイス用の構造体の平面図であり、図6は、実施形態のマイクロミラーデバイス用の構造体の底面図である。図7は、マイクロミラーデバイス用の構造体の左側面図である。なお、マイクロミラーデバイスの構造体の右側面図は左側面図と同一である。図8は、実施形態のマイクロミラーデバイスの構造体の正面図である。なお、マイクロミラーデバイスの構造体の背面図は正面図と同一である。
本実施形態のマイクロミラーデバイス1は、ミラー部12と、ミラー部12を囲むように配置された環状のアクチュエータ14と、ミラー部12とアクチュエータ14とを接続する第1接続部21と、アクチュエータ14の外周に配置された固定部20と、アクチュエータ14と固定部20とを接続する第2接続部22とを備えている。
マイクロミラーデバイス1のサイズは、例えば、長さおよび幅寸法がそれぞれ1mm~10mm程度が一般的であるが、これよりも小さい構造でも大きい構造でもよく、特に制限されるものではない。また、アクチュエータの厚みについても、5μm~0.2mm程度が一般的であるが、作製できる範囲であればよく、特に制限されるものではない。
ミラー部12は、入射光を反射する反射面12aを有する。反射面12aは、ミラー部12の一面に設けられた、例えば、Au(金)およびAl(アルミニウム)等の金属薄膜から構成される。反射面12aを形成するためのミラーコーティングに用いる材料および膜厚は特に限定されず、公知のミラー材料(高反射率材料)を用いて様々な設計が可能である。
図1においては、略円形の反射面12aを有し、反射面12aと相似形の平面視形状のミラー部12を例示しているが、ミラー部12の平面視形状と、反射面12aの形状は一致していてもよいし、異なっていてもよい。ミラー部12および反射面12aの形状は、特に限定されない。例示した円形に限らず、楕円形、正方形、長方形および多角形など、様々な形状があり得る。
第1接続部21は、ミラー部12とアクチュエータ14とを接続し、ミラー部12を第1軸a1周りで回動可能に支持する。第1接続部21は、ミラー部12を挟んで対称にミラー部12の外周から第1軸a1に沿って外側に延設された1対の棒状部材であり、ミラー部12とアクチュエータ14とを第1軸a1上で接続する。第1接続部21を構成する1対の棒状部材のそれぞれの一端がミラー部12の外周に接続され、それぞれの他端がアクチュエータ14に接続されている。
第2接続部22は、アクチュエータ14と固定部20とを、アクチュエータ14を第2軸a2周りで回動可能に支持する。第2接続部22は、アクチュエータ14を挟んで対称に、アクチュエータ14の外周から第2軸a2に沿って外側に延設された1対の棒状部材であり、アクチュエータ14を固定部20とを第2軸a2上で接続する。第2接続部22を構成する1対の棒状部材のそれぞれの一端がアクチュエータ14の外周に接続され、それぞれの他端が固定部20に接続されている。
上記構成により、本実施形態においては、第1軸a1と第2軸a2とはミラー部12の略中心で交わっている。
ここで、第1軸a1は、ミラー部12の静止時の反射面12aを含む平面内にある。第2軸a2はこの平面内おいて、第1軸a1と交差する軸であり、ここでは第1軸a1と直交する軸である。第1軸a1と第2軸a2は、反射面12aの中心で交差していることが好ましいが、交差位置は中心からずれていても構わない。
各図において、ミラー部12の静止時における反射面12aの法線方向をz軸方向とし、第1軸a1と平行な方向をy軸方向、第2軸a2と平行な方向をx軸方向としている。
固定部20は、第2接続部22を介してアクチュエータ14を支持する。アクチュエータ14は第1接続部21を介してミラー部12を支持している。固定部20には、配線22および電極端子24等が設けられており、さらに図示しない電子回路が設けられていてもよい。
固定部20は、本例においては、アクチュエータ14を囲む枠部材(固定枠)である。固定部20は、第2接続部22を介してアクチュエータ14を支持可能な構成であれば、枠部材に限らず、第2接続部22のうちの一方と接続する第1の固定部と他方と接続する第2の固定部の2つの部材から構成されていてもよい。
アクチュエータ14は、ミラー部12を囲む環状の部材である。アクチュエータ14は、ミラー部12に第1軸a1周りの回転トルクを作用させ、かつ、ミラー部12に第2軸a2周りの回転トルクを作用させることによって、ミラー部12を第1軸a1および第2軸a2周りに2次元回転駆動する。本マイクロミラーデバイス1は、ミラー部12を2次元回転駆動させることにより、ミラー部12の反射面12aへの入射光を反射させて2次元走査(2次元スキャン)させることができる。ここで、環状とは、内側の領域を途切れなく囲む形状であればよく、内周および外周の形状は円形でなくてもよく、矩形状あるいは多角形状など、どのような形状であってもよい。本例では、アクチュエータの内周および外周は八角形状である。
2次元回転駆動の詳細については後述するが、本開示のマイクロミラーデバイスにおいては、ミラー部12を囲む1つの環状のアクチュエータ14によって、ミラー部12を2次元回転させることが可能である。従来の2つ以上のアクチュエータ(あるいは可動枠)を備えた構造と比較してデバイス全体を小型化することができる。
本例のマイクロミラーデバイス1において、ミラー部12、アクチュエータ14、固定部20、第1接続部21および第2接続部22は、第1軸a1および第2軸a2に線対称の構造で配置されている。かかる対称構造によって、中央のミラー部12に対して効率良く回転トルクを作用させることができる。
マイクロミラーデバイス1は、例えば、シリコン基板から半導体製造技術を利用して加工することにより、ミラー部12、アクチュエータ14、固定部20、第1接続部21、および第2接続部22等の要素が一体的に構成された構造物として作製することができる。
なお、固定部20は、ミラー部12、アクチュエータ14、第1接続部21および第2接続部22と比較して厚い(図3および図4参照)。すなわち、ミラー部12、アクチュエータ14、第1接続部21および第2接続部の厚みは、固定部20の厚み(z方向の厚み)と比較して薄く形成されている。これにより、アクチュエータ14、接続部21および接続部22が変形(例えば、曲げ変形あるいは捻れ変形)し易い構造となっている。ミラー部12、アクチュエータ14、および固定部20のうち、反射面、圧電膜、電極および配線等を除く基材部分をマイクロミラーデバイス用の構造体という。また、この構造体のうち、固定部20を除く部分が、構造体中の本体部分である。マイクロミラーデバイスの基本性能はこの本体部分の形状に依存し、固定部20の形状には依存しない。
アクチュエータ14は、圧電素子40を備えた圧電アクチュエータである。圧電素子40は、振動板30上に、下部電極31、圧電膜32および上部電極33が順に積層された積層構造を有する(図2参照。)。なお、図2において、視認容易のため、実際の膜厚比と異なる膜厚比で示している。上部電極および下部電極の「上部」および「下部」は、天地を意味するものではなく、圧電膜を挟む一対の電極のうち、振動板側に設けられている電極を下部電極、圧電膜を挟んで下部電極と対向して配置される電極を上部電極と称しているに過ぎない。
圧電素子40の上部電極33が、ミラー部12に第1軸a1周りに傾き振動を生じさせる第1共振モードで駆動させた場合の最大変位状態において、圧電膜32の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する第1応力反転領域、およびミラー部12に第2軸a2周りに傾き振動を生じさせる第2共振モードで駆動させた場合に圧電膜32の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する第2応力反転領域で分離された複数の個別電極部i1~i8からなり、圧電素子40は、複数の個別電極部i1~i8の各々により規定される複数の圧電部41~48を含む。図1中の個別電極部の分離領域Sは第1応力反転領域および/または第1応力反転領域に相当、以下において、応力反転領域Sという。各主応力および応力反転領域については後述する。
複数の圧電部41~48への所定の電圧印加に伴って圧電膜の変形によってアクチュエータ14が屈曲変位して駆動力を生じ、第1接続部21に回転トルクを発生させると共に第2接続部22に回転トルクを発生させることができる。本マイクロミラーデバイス1においては、上部電極33を第1共振モード時の応力分布および第2共振モード時の応力分布に応じて個別電極部を備えることで、1つの環状のアクチュエータ14を用いた2次元駆動を実現している。
詳細な個別電極部の配置について説明する。アクチュエータ14の上部電極33は、8個の個別電極部i1~i8からなる。各個別電極部i1~i8は互いに分離して形成されている。上部電極33が複数の個別電極部i1~i8に分離して形成されることによって、各々の個別電極部i1~i8で規定される圧電部41~48の各々を、独立して電圧制御することができる。個々の圧電部41~48は、個別電極部i1~i8と、対向する下部電極31と、個別電極部i1~i8と下部電極31との間に挟まれた圧電膜32により構成される。各個別電極部i1~i8および下部電極31は配線22および電極端子24(個別符号1~8およびGND)を介して駆動回路に接続される。
図9は、本例におけるマイクロミラーデバイス1の圧電素子40の各圧電部41~48と駆動回路50との電気的な配線構造を示すブロック図である。
圧電素子40は、下部電極31、圧電膜32および上部電極33を備えている。圧電素子40の各圧電部41~48の各個別電極部i1~i8はそれぞれ電極端子1~8に接続されており、下部電極31はすべての個別電極部に対して共通膜であり、接地用の電極端子GNDに接続されている。
なお、本実施形態においては、圧電膜32および下部電極31は、複数の圧電部に共通の膜として形成されているが、圧電膜32、あるいは圧電膜32と下部電極31も、上部電極33の個別電極部毎に分離されていてもよい。
本開示のマイクロミラーデバイスは、1つの環状のアクチュエータのみで2次元駆動ができるため、可動枠および第2のアクチュエータを持たない構造であるため、素子体積を小さく抑えることができる。
図10は、第1共振モードでミラー部12が第1軸a1周りに傾き振動する様子を示すシミュレーション図であり、ミラー部12が第1軸a1を中心として、x軸方向の一端x1が+z方向に、x軸方向の他端x2が-z方向に傾き変位した状態を示している。図10において、色の濃淡は変位量を示している。
第1共振モードでミラー部12が第1軸a1周りに傾き振動して図10のように回転変位した状態にある時、アクチュエータ14は撓み変形する。そして、図11に示すように、アクチュエータ14の圧電膜には引張方向の応力(以下において、引張応力という。)σtがかかる引張応力領域t1と、圧縮方向の応力(以下において、圧縮応力という。)σcがかかる圧縮応力領域c1とが生じる。図11においては、引張応力がかかる部分を薄い灰色、圧縮応力がかかる部分を黒色で示している。なお、色密度が高い領域ほど応力が大きいことを示す。なお、圧電膜の各位置に生じる応力は振動に応じて時間変化する。図11は第1共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に圧電膜に生じる面内応力の状態を示している。
各部分が「圧縮応力」であるか「引張応力」であるかは、互いに直交する三つの主応力ベクトルの中から圧電膜の膜厚方向に略直交する平面内の二つの主応力を選び出し、そのうち絶対値が大きい方の方向(絶対値が最大の主応力成分の方向)で定められる。膜厚方向をz軸に取った場合において、膜厚方向の略直交する平面内の二つの主応力とは、x-y平面内に生じる応力である。応力方向の表記方法としては、外に向かう方向のベクトルを引張方向、内に向かう方向のベクトルを圧縮方向と定義する。
このように定義する理由は、概して圧電MEMSデバイスではアクチュエータ部の寸法が平面的であり、膜厚方向の応力がほぼ0とみなせるためである。「寸法が平面的」とは、平面方向の寸法に比べて高さが十分小さいことを意味する。上述した「x-y平面」の面方向が「圧電膜の膜厚方向に直交する面内方向」に相当する。応力は、部材が引っ張られる方向に力が加わる引張応力σtが正、圧縮させる方向に力が加わる圧縮応力σcが負として定義される。すなわち、絶対値が最大の主応力成分が正の領域とは引張応力が主である領域を意味し、絶対値が最大の主応力成分が負の領域とは圧縮応力が主である領域を意味する。また、「絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する応力反転領域」とは、引張応力領域と圧縮応力領域との境界を含む領域であって、引張応力から圧縮応力、もしくは圧縮応力から引張応力に変化する領域を意味する。
図11に示すように、アクチュエータ14の第1軸a1と交差する部分において、第1軸a1を挟んで隣接する領域は正負が異なる応力を示す。図中においては、第1軸a1を挟んで隣接する一方の領域が引張応力領域t1であり、他方の領域が圧縮応力領域c1である。第2軸a2と交差する部分において、第2軸a2を挟んで隣接する領域は同一符号の応力を示すが、第1軸a1に対称な領域は互いに正負が異なる応力を示す。第1共振モードでは、アクチュエータ14における応力分布は第2軸a2を中心に線対称となっている。
圧縮応力領域c1と引張応力領域t1との境界には応力の方向が徐々に変化していく、すなわち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する領域である第1応力反転領域が存在する。図11に示す6本の第1応力反転線r1のそれぞれが、第1応力反転領域の中心に位置する。
図12は、第2共振モードでミラー部12およびアクチュエータ14が第2軸a2周りに傾き振動する様子を示すシミュレーション図であり、ミラー部12およびアクチュエータ14が第2軸a2を中心として、アクチュエータ14のy軸方向の一端y1が+z方向に、y軸方向の他端y2が-z方向に傾き変位した状態を示している。図10と同様に図12において、色の濃淡は変位量を示している。
第2共振モードでミラー部12およびアクチュエータ14が第2軸a2周りに傾き振動して図12に示す回転変位した状態にある時、アクチュエータ14撓み変形する。そして、図13に示すように、アクチュエータ14の圧電膜には引張応力がかかる引張応力領域t2と圧縮応力がかかる圧縮応力領域c2とが生じる。図13においては、図11と同様に、引張応力が生じる部分を薄い灰色、圧縮応力が生じる部分を黒色で示している。なお、色密度が高い領域ほど応力が大きいことを示す。なお、圧電膜の各位置に生じる応力は振動に応じて時間変化する。図13は第2共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に圧電膜に生じる面内応力の状態を示している。
図13に示すように、アクチュエータ14の第2軸a2と交差する部分において、第2軸a2を挟んで隣接する領域は正負が異なる応力を示す。図中においては、図中においては、第2軸a2を挟んで隣接する一方の領域が引張応力領域t2であり、他方の領域が圧縮応力領域c2である。第1軸a1と交差する部分において、第1軸a1を挟んで隣接する領域は同一符号の応力を示すが、第2軸a2に対称な領域は互いに正負が異なる応力を示す。すなわち、第2共振モードでは、アクチュエータ14における応力分布は第1軸a1を中心に線対称となっている。
圧縮応力領域c2と引張応力領域t2との境界には応力の方向が徐々に変化していく、すなわち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する領域である第2応力反転領域が存在する。図13に示す6本の第2応力反転線r2のそれぞれが、第2応力反転領域の中心に位置する。
上部電極33の個別電極部i1~i8は、図11および図13に示す応力分布に関し、応力方向が異なる圧電膜の領域t1、t2、c1、c2の区分けに対応するように形成されている。個別電極部間は、第1応力反転線r1あるいは第2応力反転線r2を含む応力反転領域Sで分離されている(図1参照。)。本構成においては、6本の第1応力反転線r1のうち、第1軸a1上の2本を除く4本の第1応力反転線は第2応力反転線r2と一致しており、結果として、上部電極は8つの応力反転領域Sで分離されている。
このように分離された個別電極部i1~i8を備えたことにより、個別電極部i1~i8のそれぞれに、すなわち、圧電部41~48に独立して第1軸a1周りの駆動信号、および第2軸a2周りの駆動信号を入力することができる。それぞれの領域における第1共振モード時および第2共振モード時の応力に応じて駆動信号を入力することで、各領域を効率的に変位させることができ、第1軸周りおよび第2軸周りにトルクを生じさせることが可能となる。
共振モード振動による動作時(共振駆動時)の応力分布については、公知の有限要素法のソフトウエアを用い、デバイス寸法、材料のヤング率、およびデバイス形状等のパラメータを与え、モード解析法を使って解析することができる。デバイスの設計に際しては、共振モードによる駆動時の圧電膜内の応力分布を解析し、その解析結果を基に、応力分布における圧縮応力領域、引張応力領域の区分に対応させて、上部電極を個別電極部に区分けする。各個別電極部によって各圧電部が規定される。
各圧電部41~48には、第1共振モードおよび第2共振モードで駆動させるための駆動用の電力が駆動回路から供給される。アクチュエータ14に供給する駆動信号として、共振を励起する周波数の交流信号あるいはパルス波形信号を用いることができる。具体的な駆動信号について、駆動方法と共に以下に説明する。
駆動回路は、圧電素子の複数の圧電部の各々に対して、第1共振モードを駆動する第1駆動信号と、第2共振モードを駆動する第2駆動信号とを重畳した駆動信号を入力する。
第1駆動信号は、互いに逆位相の駆動電圧波形を含み、そのうちの一方の位相の駆動電圧波形を、第1共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部に与え、他方の位相の駆動電圧波形を、上記瞬間に絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部に与える信号である。
第2駆動信号は、互いに逆位相の駆動電圧波形を含み、そのうちの一方の位相の駆動電圧波形を、第2共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部に与え、他方の位相の駆動電圧波形を、絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部に与える信号である。
従って、駆動回路50は、第1駆動信号として、第1共振モードで駆動した際の駆動振幅が最大となる瞬間における絶対値が最大の主応力成分の方向が同じ(符号が同じ)である領域に位置する圧電部には同位相の駆動信号波形を印加する。すなわち、圧縮応力領域に位置する圧電部同士には同位相の駆動信号波形が、引張応力領域に位置する圧電部同士には同位相の駆動信号波形が印加される。そして、駆動回路は、第1駆動信号として、第1共振モードで駆動した際の駆動振幅が最大となる瞬間における絶対値が最大の主応力成分の方向が異なる(符号が異なる)領域に位置する圧電部間には、逆位相の駆動信号波形を印加する。すなわち、圧縮応力領域と引張応力領域とでは逆位相の駆動信号波形が印加される。なお、同位相の駆動信号波形における振幅は圧電部同士で同一でもよいし、圧電部間で異なっていてもよい。
また、同時に、駆動回路50は、第2駆動信号として、第2共振モードで駆動した際の駆動振幅が最大となる瞬間における絶対値が最大の主応力成分の方向が同じである領域に位置する圧電部には同位相の駆動信号波形を印加する。すなわち、圧縮応力領域に位置する圧電部同士には同位相の駆動信号波形が、引張応力領域に位置する圧電部同士には同位相の駆動信号波形が印加される。そして、駆動回路は、第2駆動信号として、第2共振モードで駆動した際の駆動振幅が最大となる瞬間における絶対値が最大の主応力成分の方向が異なる領域に位置する圧力部間には、逆位相の駆動信号波形を印加する。すなわち、圧縮応力領域と引張応力領域とでは逆位相の駆動信号波形が印加される。なお、同位相の駆動信号における振幅は圧電部同士で同一でもよいし、圧電部間で異なっていてもよい。
各圧電部のそれぞれに、第1共振モード用の第1駆動信号および第2共振モード用の第2駆動信号が重畳された駆動信号を印加することにより、第1共振モードおよび第2共振モードを同時に励起することができる。上記駆動信号を各圧電部41~48に与え、アクチュエータ14を駆動させた場合、各振動の瞬間においてそれぞれの圧電膜に生じる主応力のうち絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部には正の電圧、絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部には負の電圧をそれぞれ印加することになる。歪の正負に応じた正負の電圧を印加することによって、非常に効率良く圧電力を変位に変換できる。従って、1つの環状のアクチュエータ14のみでミラー部12を2次元駆動することができる。
駆動方法の一例について、具体的に図14~図17を参照して説明する。図14は、第1共振モードを励起する際に同位相の駆動信号が入力される圧電部グループを示す図であり、図15はそれぞれの圧電部グループに入力される駆動信号の一例を示す。図16は、第2共振モードを励起する際に同位相の駆動信号が入力される圧電部グループを示す図であり、図17はそれぞれの圧電部グループに入力される駆動信号を示す。
図14において、第1共振モードを励起する際に、同位相の駆動信号が入力される第1グループの圧電部の個別電極部を右下がり斜線で示す。また、第1グループと逆位相の駆動信号が入力される第2グループの圧電部の個別電極部を右上がり斜線で示す。
第1グループの個別電極部i1、i4、i6、i7は、図11の引張応力領域t1に対応し、これらに図15に示す同位相の第1共振モード用の第1駆動信号Vaが入力される。そして、第2グループの個別電極部i2、i3、i5、i8は、図11の圧縮応力領域c1に対応し、これらには同位相の第1共振モード用の第1駆動信号Vbが入力される。図15に示すように、第1グループの圧電部に印加される駆動信号Vaと第2グループの圧電部に印加される駆動信号Vbとは同一の第1周波数fであって、互いに逆位相(位相差180°)の信号である。このような駆動信号を印加することにより、アクチュエータ14を第1軸a1周りに傾けるような歪が発生し、ミラー部12に第1軸a1周りの回転トルクが与えられる。
第1駆動信号Va、Vbはそれぞれ次のように表される。
a=αsin(2πft+π)
b=αsin2πf
上記の式中、αは電圧振幅、tは時間である。なお、式においてオフセット電圧は考慮していない。Vは第1駆動信号の基本電圧振幅値、αは第1駆動信号用の電圧振幅補正係数である。なお、各個別電極部に与えられる電圧振幅は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、圧電部毎でαの値は異なっていてもよい。各々の個別電極部に生じる応力の大きさに応じて電圧振幅が設定されていてもよい。例えば、個別電極部に生じる応力の大きさが大きいほど電圧振幅を大きくする、などである。
第1駆動信号VaおよびVbをまとめて一般化して示すと、
=αsin(2πft+βπ)と表すことができる。
ここで、βは第1駆動信号用の位相補正係数であり、第1の位相のVaの場合は1、第1の位相の逆位相である第2の位相のVbの場合は0である。
図16において、第2共振モードを励起する際に、同位相の駆動信号が入力される第3グループの圧電部の個別電極部を右下がり斜線で示す。また、第3グループと逆位相の駆動信号が入力される第4グループの圧電部の個別電極部を右上がり斜線で示す。
第3グループの個別電極部i1、i3、i6、i8は、図13の引張応力領域t2に対応し、これらに図17に示す同位相の第2共振モード用の第2駆動信号Vaが入力される。そして、第4グループの個別電極部i2、i4、i5、i7は、図13の圧縮応力領域c2に対応し、これらに同位相の第2共振モード用の第2駆動信号Vbが入力される。図17に示すように、第2駆動信号VaとVbとは同一の第2周波数fであって、互いに逆位相(位相差180°)の信号である。このような駆動信号を印加することにより、アクチュエータ14を第2軸a2周りに傾けるような歪みが発生し、結果としてミラー部12に第2軸a2周りの回転トルクが与えられる。
第2駆動信号Va、Vbはそれぞれ次のように表される。
a=αsin(2πft+π)
b=αsin2πf
上記の式中、αは電圧振幅、tは時間である。なお、式においてオフセット電圧は考慮していない。Vは第2駆動信号の基本電圧振幅値、αは第2駆動信号用の電圧振幅補正係数である。なお、各個別電極部に与えられる電圧振幅は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、圧電部毎でαの値は異なっていてもよい。各々の個別電極部に生じる応力の大きさに応じて電圧振幅が設定されていてもよい。例えば、個別電極部に生じる応力の大きさが大きいほど電圧振幅を大きくする、などである。
第2駆動信号VaおよびVbをまとめて一般化して示すと、
=αsin(2πft+βπ)と表すことができる。
ここで、βは第2駆動信号の位相補正係数であり、第1の位相のVaの場合は1、第1の位相の逆位相である第2の位相のVbの場合は0である。
圧電部毎に第1共振モード用の第1駆動信号および第2共振モード用の第2駆動信号が重畳された駆動信号が印加される。例えば、個別電極部i1にはVa+Va、個別電極部i2にはVb+Vb、個別電極部i3にはVb+Va、個別電極部i4にはVa+Vbが印加される。各圧電部、すなわち各個別電極部に印加する組み合わせを表1に示す。
なお、各圧電部の個別電極部in(ここでnは1~8)に印加される駆動信号は、下記一般式(1)で表すことができる。
Vin=αsin(2πft+βπ)+αsin(2πft+βπ) (1)
式(1)において、第1項は第1軸周りに傾き振動させるための第1駆動信号であり、第2項は第2軸周りに傾き振動させるための第2駆動信号である。
上記表1に示した例では、α、αを一定としているが、α、αを個別電極ごとに異ならせて、個別電極部に生じる応力の大きさが大きいほど電圧振幅を大きくすることにより、駆動効率をさらに高め、さらに消費電力を低減することが可能である。
以上のように、第1共振モードおよび第2共振モードでマイクロミラーデバイスを駆動する際にアクチュエータの圧電膜に生じる主応力のうち絶対値が最大の主応力成分の方向に応じた駆動信号を各圧電部に印加するように制御することで、非常に効率良く駆動することが可能となる。駆動回路は、各圧電部に上記駆動信号を入力するように構成される。
本実施形態においては、各圧電素子に含まれる複数の圧電部は、下部電極が共通電極となっている。したがって、下部電極を接地して、上部電極に所定の駆動信号(駆動電圧波形)を入力している。しかし、下部電極も個別電極である場合には、下部電極および上部電極間に駆動信号が印加できれば、下部電極、上部電極のどちらを接地電極として用いてもよい。
共振モードとしては、ミラー部12の軸周りの回転(傾き振動)を伴うもの以外に、垂直方向のピストン運動、平面内のねじれ運動などを伴うモードが存在する。しかしながら、本実施形態のマイクロミラーデバイス1では、傾き振動を伴う共振モードを用いてミラー部12を駆動する。
なお、第1軸周りにミラー部12を傾き振動する第1共振モードとしては、ミラー部12とアクチュエータ14とが逆位相で振動する共振モードは同位相で振動する共振モードと比較して共振振動のQ値が高く、さらに共振周波数が高いため、高速でスキャンすることに、より適している。なお、第1軸周りについては、ミラー部12とアクチュエータ14とが互いに逆位相で傾き振動する共振モードのうち最も低次モードで駆動することが、高いQ値が得られるため好ましい。
しかしながら、上記モードに限るものではなく。何次モードの共振モードを用いるかは、適宜設定すればよい。
また、第2軸周りにミラーを傾き振動する第2共振モードとしては、アクチュエータ14とミラー部12とが一体的に傾き振動する共振モードを用いる方が共振周波数が低く、低速の動作に適しているため好ましい。
しかしながら、上記モードに限るものではなく。何次モードの共振モードを用いるかは、適宜設定すればよい。
なお、どの次数の共振モードを用いるかによって、駆動時にアクチュエータに生じる応力分布は異なるため、駆動時に用いる共振モードを定めた上で、その共振モードでの応力分布に基づいて、個別電極部を配置する必要がある。本例においては、第1軸周りについては、ミラー部12とアクチュエータ14とが互いに逆位相で傾き振動する共振モードのうち最も低次モードを第1共振モードとし、第1共振モードより低周波数側で傾き振動を伴う共振モードのうち最も次数の小さい共振モードを第2共振モードとしている。
アクチュエータ14に備えられる圧電素子について説明する。既述の通り、圧電素子は下部電極31、圧電膜32および上部電極33の積層体構造を有する。
下部電極および上部電極の厚みには特に制限なく、例えば200nm程度である。圧電膜の厚みは10μm以下であれば特に制限なく、通常1μm以上であり、例えば、1~5μmである。下部電極、上部電極および圧電膜の成膜方法は、特に限定されないが、気相成長法であることが好ましく、特にはスパッタ法によって成膜することが好ましい。
下部電極の主成分は、特に制限はなく、Au、Pt、Ir、IrO、RuO、LaNiO、およびSrRuO等の金属または金属酸化物、並びに、これらの組合せが挙げられる。
上部電極の主成分は、特に制限なく、下部電極で例示した材料、Al、Ti、Ta、Cr、およびCu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、並びにこれらの組合せが挙げられる。
圧電膜としては、下記式で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物(P)を含むものが挙げられる。
一般式ABO (P)
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素。
B:Bサイトの元素であり、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Sb、Cr、Mo、W、Mn、Sc、Co、Cu、In、Sn、Ga、Zn、Cd、Fe、およびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素。
O:酸素元素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上記一般式で表されるペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、およびこれらの混晶系;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、ビスマスフェライト等の非鉛含有化合物、およびこれらの混晶系が挙げられる。
また、本実施形態の圧電膜は、下記式で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物(PX)を含むことが好ましい。
(Zr、Ti、Mb-x-y (PX)
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素。Mは、V、Nb、Ta、およびSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。
0<x<b、0<y<b、0≦b-x-y、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上述の一般式(P)および(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電膜は、高い圧電歪定数(d31定数)を有するため、かかる圧電膜を備えた圧電アクチュエータは、変位特性の優れたものとなる。なお、一般式(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物の方が一般式(P)で表されるものよりも圧電定数が高くなる。
また、一般式(P)および(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電膜を備えた圧電アクチュエータは、駆動電圧範囲において、リニアリティの優れた電圧―変位特性を有している。これらの圧電材料は、本開示の技術を実施する上で良好な圧電特性を示すものである。
以下、本開示の実施例のマイクロミラーデバイスについて説明する。
「実施例」
以下の手順により図1に示した構成のマイクロミラーデバイスを実施例1として作製した。
-製造方法-
(工程1)Siハンドル層350μm、シリコン酸化物(SiO)ボックス層1μm、Siデバイス層100μmの積層構造を持つSOI(Silicon On Insulator)基板上に、スパッタ法で基板温度350℃にてTi層を30nm、Ir層を150nm形成した。Ti層およびIr層の積層構造が図2の下部電極31に相当する。
(工程2)上記で得られた、下部電極(Ti/Ir)が積層形成された基板上に、高周波(RF:radio frequency)スパッタ装置を用いて圧電膜を3μm成膜した。圧電膜用のスパッタ成膜のターゲット材料としてはPb1.3((Zr0.52Ti0.48)0.88Nb0.12)O3の組成のものを用いた。成膜圧力は2.2mTorr、成膜温度は450℃とした。得られた圧電膜は、Nbが原子組成比で12%添加されたNbドープPZT薄膜であった。
(工程3)上記で得られた圧電膜が形成された基板上に、リフトオフ法によってPt/Tiの積層構造による複数の個別電極部を含む上部電極をパターン形成した。
(工程4)その後、誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)ドライエッチングにより、圧電膜および下部電極をパターンエッチングした。
(工程5)さらに、テトラエトキシシランを原料とした化学気相堆積法(TEOS-CVD:tetraethoxysilane-chemical vapor deposition)法により、SiOからなる絶縁層を全面に成膜した後、ICPドライエッチングによって絶縁層をパターニングした。
(工程6)リフトオフ法によって、Au/Tiの積層構造をパターン形成し、ミラー部の反射面、電極パッドおよび配線層を形成した。
(工程7)シリコンのドライエッチプロセスによってデバイス層をパターンエッチングし、アクチュエータ、ミラー部および固定部材の形状を加工した。
(工程8)次に、基板の裏面からハンドル層を深堀反応性イオンエッチングした。基本的には、固定部材となる部分を残してハンドル層を除去した。
(工程9)最後に、裏面からボックス層をドライエッチングにより除去することにより、図1に示すマイクロミラーデバイス1を作製した。
上記作製工程においては、ミラー部の反射面を工程6で形成したが、電極パッドおよび配線層の材料とは異なる反射材料を用いて反射面を形成してもよく、その場合は、たとえば工程6に続いて、反射面をリフトオフ法などで形成してもよい。
本実施例のマイクロミラーデバイスの各要素のサイズは以下の通りとした。
ミラー部12の直径2.7mm、第1接続部21の第1軸a1方向に沿った長さ(ミラー外周からアクチュエータ内周までの長さ)0.77mm、第2軸a2方向の幅0.35mm、第2接続部22の第2軸a2方向に沿った長さ(アクチュエータ外周から固定部との接続点までの長さ)2.0mm、第1軸a1方向に沿った幅0.14mmとした。
ミラー部12、アクチュエータ14、第1接続部21および第2接続部の厚みはデバイス層の厚みと等しい。
本構成のマイクロミラーデバイスにおいて、高速駆動側の第1共振モードの周波数を20kHzとなるようにアクチュエータ14と接続部21のサイズを設定しており、第2共振モードとしては、第1共振モードより低周波数側で傾き振動を伴う共振モードのうち最も次数の小さい構成とした。
本実施例には、図14~図17を参照して説明した通り、第1共振周波数の第1駆動信号と第2共振周波数の第2駆動信号とを重畳した駆動信号により駆動した。
[参考例]
参考例のマイクロミラーデバイス101の平面図を図18に示す。参考例のマイクロミラーデバイスは、実施例と同様の作製手順で作製した。参考例のマイクロミラーデバイス101は、ミラー部112と、ミラー部112を囲むように配置された環状の第1アクチュエータ114と、第1アクチュエータ114を囲む環状の第2アクチュエータ116と、固定部120と、第1接続部121と、第2接続部122と、第3接続部123とを備えている。それぞれのアクチュエータ114、116は圧電素子を備えた圧電アクチュエータである。
第1アクチュエータ114は各々圧電素子を備えた一対の半環状アクチュエータ部114A、114Bを備え、その一対の半環状アクチュエータ部114A、114Bがミラー部112を囲むように第1接続部121によって第1軸a1上で接続されている。第2アクチュエータ116は各々圧電素子を備えた一対の半環状アクチュエータ部116A、116Bを備え、その一対の半環状アクチュエータ部116A、116Bが第1アクチュエータ部114を囲むように、第2接続部122によって第2軸a2上で接続されている。
第1アクチュエータ114および第2アクチュエータ116において、ハッチングで示す領域は、圧電素子の上部電極を構成する個別電極部である。半環状アクチュエータ部114A、114B、116A,116Bのそれぞれの上部電極はそれぞれ3つの個別電極部からなり、これによって規定される3つの圧電部を備える。第1アクチュエータ114は計6個の個別電極部ai1~ai3、bi1~bi3を備えている。第2アクチュエータ116は計6個の個別電極部ao1~ao3、bo1~bo3を備えている。
第1アクチュエータ114は第1軸a1周りの傾き振動の駆動を担当し、第2アクチュエータ116は、第2軸a2周りの傾き振動の駆動をそれぞれ担当する。
図19は、第1共振モードでミラー部112が第1軸a1周りに傾き振動する様子のシミュレーション図であり、ミラー部112が第1軸a1を中心として、x軸方向の一端x1が+z方向に、x軸方向の他端x2が-z方向に傾き変位した状態を示している。図19において、固定部は省略されており、色の濃淡は変位量を示している。
第1半環状アクチュエータ部114Aおよび114Bの個別電極部は、第1共振モードで第1アクチュエータを駆動した場合の最大変位状態において、第1アクチュエータの圧電膜の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の符号の正負に応じて設けられており、その応力反転領域で分離されている。
第2半環状アクチュエータ部116Aおよび116Bの個別電極部は、第2共振モードで第2アクチュエータを駆動した場合の最大変位状態において、第2アクチュエータの圧電膜の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の符号の正負に応じて設けられており、その応力反転領域で分離されている。
第1アクチュエータ114において、同位相で駆動される個別電極部を同一の斜線で示す。図20において、右下がり斜線で示した個別電極部ai1、ai3、bi2は、引張応力領域t1に対応する。図20において、右上がり斜線で示した個別電極部ai2、bi1、bi3は、圧縮応力領域c1に対応する。引張応力領域t1に対応する個別電極部と、圧縮応力領域c1に対応する個別電極部とで逆位相の第1共振モード用の第1駆動信号を印加する。
図19に示すように、ミラー部112を第1軸a1周りに傾き振動させるために、第1アクチュエータ114の各圧電部に対して駆動信号を入力した。ここでは、右下がり斜線で示す個別電極部ai1、ai3およびbi2に、図15に示すVa、右上がり斜線で示す個別電極部ai2、bi1およびbi3に、図15に示すVbの高速駆動信号を入力した。すなわち、個別電極部ai1、ai3およびbi2と個別電極部ai2、bi1およびbi3とには、同一の高速周波数であって、互いに逆位相の駆動信号を入力した。
図21は、第2共振モードでミラー部112および第1アクチュエータ114が第2軸a2周りに傾き振動する様子のシミュレーション図であり、ミラー部112および第1アクチュエータ114が第2軸a2を中心として、第1アクチュエータ114のy軸方向の一端y1が+z方向に、y軸方向の他端y2が-z方向に傾き変位した状態を示している。図19と同様に図21において、色の濃淡は変位量を示している。
図21に示すように、第1アクチュエータ114およびミラー部112を第2軸a2周りに傾き振動させるために、第2アクチュエータ116の各圧電部に対して駆動信号を入力した。ここでは、右下がり斜線で示す個別電極部ao1、ao3およびbo2に、図17に示すVa、右上がり斜線で示す個別電極部ao2、bo1およびbo3に、図17に示すVbの低速駆動信号を入力した。すなわち、個別電極部ao1、ao3およびbo2と個別電極部ao2、bo1およびbo3とには、同一の低速周波数であって、互いに逆位相の駆動信号を入力した。
実施例、参考例のマイクロミラーデバイスについて、第1共振周波数および第2共振周波数を測定した。また、それぞれ第1共振周波数および第2共振周波数の駆動波形を用いて第1共振モードおよび第2共振モードで駆動させた場合における第1軸a1周りに45°スキャンさせるために必要な第1駆動信号の電圧振幅、第2軸a2周りに30°スキャンさせるために必要な第2駆動信号の電圧振幅を調べた。結果を表1に示す。光学スキャン角度は、レーザーをマイクロミラーデバイスのミラー部の反射面に垂直入射し、スキャンラインの長さを、定規などを用いて測定し、幾何学的関係からスキャンの全角度を求める方法により測定した。
表1において、構造体の本体部サイズとは、固体枠の内周のx方向長さ×y方向長さである。
実施例と参考例は、同一の大きさのミラー部を備えたマイクロミラーデバイスであるが、実施例は参考例よりも構造体の本体部サイズを小さくすることができた。
なお、本開示の技術の実施に際しては、本実施例の構成および製造方法に限定されず、基板の材料、電極材料、圧電材料、膜厚、成膜条件などは、目的に応じて適宜選択することができる。
2019年4月26日に出願された日本国特許出願2019-086635号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (7)

  1. 光を反射する反射面を有するミラー部と、
    前記ミラー部を囲んで配置された環状のアクチュエータと、
    前記ミラー部と前記アクチュエータとを、第1軸周りで前記ミラー部が回動可能に接続する第1接続部と、
    前記アクチュエータの外周に設けられた固定部と、
    前記アクチュエータと前記固定部とを、前記第1軸と交差する第2軸周りで前記アクチュエータが回動可能に接続する第2接続部とを備え、
    前記アクチュエータが、前記ミラー部に前記第1軸周りの回転トルクを作用させることにより、前記第1軸周りに傾き振動を生じさせる第1共振モードで前記ミラー部を回転駆動し、かつ、前記ミラー部に前記第2軸周りの回転トルクを作用させることにより、前記第2軸周りに傾き振動を生じさせる第2共振モードで前記ミラー部を回転駆動するマイクロミラーデバイスであり、
    前記アクチュエータ、振動板上に下部電極、圧電膜および上部電極が積層された圧電素子を備え、さらに、前記上部電極は、分離された複数の個別電極部からなり、かつ、前記圧電素子は、前記複数の個別電極部の各々により規定される複数の圧電部を含む圧電アクチュエータであり、
    記第1共振モードで回転駆動させた場合の最大変位状態において、前記圧電膜の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する全ての第1応力反転領域、および前記第2共振モードで回転駆動させた場合前記圧電膜の面内方向に生じる主応力のうち、絶対値が最大の主応力成分の正負が反転する全ての第2応力反転領域であって、有限要素法のソフトウエアを用い、デバイス寸法、材料のヤング率、およびデバイス形状のパラメータを与え、モード解析法を使って導出された、全ての第1応力反転領域および全ての第2応力反転領域において、前記上部電極における前記複数の個別電極部が分離されているマイクロミラーデバイス。
  2. 前記第1接続部は、前記ミラー部と前記アクチュエータと前記第1軸上で接続する請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
  3. 前記第2接続部は、前記アクチュエータと前記固定部とを前記第2軸上で接続する請求項1または2に記載のマイクロミラーデバイス。
  4. 前記上部電極は、前記複数の個別電極部として、少なくとも8つの個別電極部を備え、前記複数の個別電極部は、前記第1軸および前記第2軸に対称に配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロミラーデバイス。
  5. 前記アクチュエータの前記複数の圧電部の各々に駆動信号を入力するための駆動回路を備えた請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロミラーデバイス。
  6. 前記駆動回路は、前記第1軸周りに傾き振動を生じさせる前記第1共振モードで前記ミラー部を駆動し、かつ、前記第2軸周りに傾き振動を生じさせる前記第2共振モードで前記ミラー部を駆動する駆動信号を前記複数の圧電部に入力する請求項5に記載のマイクロミラーデバイス。
  7. 前記駆動回路は、前記駆動信号として、前記第1共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に前記絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形と、前記絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部に
    印加する駆動電圧波形とが、互いに逆位相の関係にある第1駆動信号と、前記第2共振モードで駆動した際の振動振幅が最大となる瞬間に前記絶対値が最大の主応力成分が正となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形と、前記絶対値が最大の主応力成分が負となる領域に位置する圧電部に印加する駆動電圧波形とが、互いに逆位相の関係にある第2駆動信号とを重畳した駆動信号を入力する請求項6に記載のマイクロミラーデバイス。
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