JP7615920B2 - ビスフェノールの製造方法並びにポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はビスフェノールの製造方法に関するものである。また、本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1及び2参照)。
特開昭62-138443号公報 特開2008-214248号公報
ビスフェノールの代表的な用途であるポリカーボネート樹脂は、無色かつ透明であることが求められる。ポリカーボネート樹脂の色調は、原料の色調の影響を大きく受ける。そのため、原料であるビスフェノールの色調も、無色であることが求められる。ここで、ビスフェノール粉末の色を直接定量することは困難であることから、溶媒に溶解した際の色調をビスフェノールの色調とすることがある。一方、ポリカーボネート樹脂の製造方法の中でも、特に溶融法は、ビスフェノールを高温にさらすことによって溶融させる工程を含む。そのため、ビスフェノールの色調は熱的な安定性も求められる。本発明では、溶融した状態の色調を「溶融色」と称する。
本発明者が従来の方法により市販のアセトンを用いてビスフェノールを製造したところ、ビスフェノールの溶融色が着色することが判明した。すなわち、従来の方法により製造されるビスフェノールは色調の熱的な安定性が十分ではないことが判明した。
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであって、溶融色が良好なビスフェノールの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このビスフェノールを用いた、色調に優れたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、予め硫酸を添加したケトンを原料に用いることで、ビスフェノールが溶融色に優れることを見出した。また、このビスフェノールを用いることで、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[5]に存する。
[1] ケトンと硫酸溶液を混合し、混合液を準備する準備工程と、前記混合液を芳香族アルコールとを酸触媒存在下反応させてビスフェノールを生成させる反応工程と、を含む、ビスフェノールの製造方法。
[2] 前記混合液は、ケトンに対する硫酸溶液に含まれる硫酸の質量比率が0.05以下である、[1]に記載のビスフェノ―ルの製造方法。
[3] 前記硫酸溶液に含まれる硫酸の濃度が、硫酸溶液全体に対して70質量%以上1
00質量%以下である、[1]又は[2]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4] 前記ケトンはアルデヒドを含有する、[1]乃至[3]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[5] 前記芳香族アルコールは、フェノール、クレゾール及びキシレノールから選択される群から選択される1種以上を含む、[1]乃至[4]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[6] 前記ビスフェノールが2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンである、[1]乃至[5]のいずれかに記載のビスフェノ―ルの製造方法。
[7] [1]乃至[6]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法により製造したビスフェノールを用いることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明の製造方法によれば、予め硫酸を添加したケトンを原料に用いることで、溶融色の良好なビスフェノールが提供される。また、このビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法によって、色調に優れたポリカーボネート樹脂が提供される。
更に、特許文献2に開示された従来法で用いられている次亜リン酸ナトリウムを使用しないことから、排水負荷も低減される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
[準備工程]
本発明の一実施形態であるビスフェノールの製造方法は、ケトンと硫酸溶液を混合し、混合液を準備する準備工程を含む。下記実施例に示される通り、通常工業的に製造されたケトンには微量のアルデヒドが含まれる。上記準備工程を含むことにより、ケトンに含まれるアルデヒド等の不純物の量が低減され、製造したビスフェノールの溶融色が良好になると推察される。例えば不純物がアセトアルデヒドである場合、アセトアルデヒドは硫酸により酸化して酢酸となるため、ビスフェノールの溶融色に対する悪影響が抑制される。
(ケトン)
ケトンは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
Figure 0007615920000001

一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、RとRとが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されたシクロアルキリデン基である。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基であってよく、炭素数1~6のアルキル基であってよい。
一般式(1)で表される化合物として、具体的には、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類;フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン類;シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。
(アルデヒド)
ケトンは、不純物として1種以上のアルデヒドを含有する場合がある。アルデヒドは、上記一般式(1)において、R及びRが、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基であり、少なくとも一方が水素原子である化合物を挙げることができる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基であってよく、炭素数1~6のアルキル基であってよい。
アルデヒドとして、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
ケトン中のアルデヒドの含有量は、好ましくは5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。また、下限値は特に限定されないが、好ましくは0.1質量ppm以上であり、より好ましくは0.5質量ppm以上であり、さらに好ましくは1質量ppm以上である。アルデヒドの含有量の低いケトンを用いることで、溶融色の良好なビスフェノールを製造できる。また、得られたビスフェノールを用いて色調の優れたポリカーボネート樹脂を製造できる。ケトン中のアルデヒドの含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
(硫酸溶液)
ケトンと混合する硫酸溶液は、通常水を含むが、水等の他の成分を含まない硫酸であってよい。すなわち、硫酸溶液に含まれる硫酸の濃度は、硫酸溶液全体に対して70質量%以上であることが好ましく、71質量%以上であることがより好ましく、72質量%以上であることが特に好ましい。一方、通常100質量%以下であり、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが特に好ましい。硫酸の濃度が100質量%である場合、硫酸溶液は実質的に硫酸そのものを指す。
硫酸の濃度が上記範囲内であると、ケトンに含まれる不純物の量を十分低減することができる。また、90質量%以下であると、副反応を低減することができ、ビスフェノールの溶融色をより良好にすることができる。
ケトンと硫酸溶液の混合方法は特に限定されないが、ケトンを投入した反応槽に硫酸溶液を投入することが好ましい。
また、混合時の温度は特に限定されないが、室温であってよく、例えば25℃を挙げることができる。
ケトンと硫酸の混合割合は、ケトンに対する前記硫酸溶液に含まれる硫酸の質量比率が0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることが特に好ましい。また、0.00001以上であることが好ましく、0.00005以上であることがより好ましく、0.0001以上であることが特に好ましい。上記範囲内であると、ケトンに含まれる不純物の量を十分低減することができる。また、副反応を低減することができ、ビスフェノールの溶融色をより良好にすることができる。
[反応工程]
本発明の一実施形態であるビスフェノールの製造方法は、前記混合液と芳香族アルコールとを酸触媒存在下で反応させてビスフェノールを生成させる反応工程を含む。
製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
Figure 0007615920000002

~Rとしては、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、及びアミノ基から選択される。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換又は無置換のいずれであってもよい。また、アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分枝及び環状のいずれでもよい。R~Rの具体例としては、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基などが挙げられる。
これらのうちRとRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
とRは、上記一般式(1)のR及びRにおけるものと同義である。
上記一般式(2)で表される化合物として、具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも、好適なビスフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)又は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンであり、特に好ましくは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)である。
(芳香族アルコール)
ビスフェノールの製造に用いる原料芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
Figure 0007615920000003

一般式(3)において、R~Rは、上記一般式(2)のR~Rにおけるものと同義である。
とRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから水素原子であることが好ましい。また、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。例えば好適なものとして、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R及びRが、水素原子である化合物が挙げられる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基や炭素数1~6のアルキル基であってよい。
上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、ベンジルフェノール、フェニルフェノールなどが挙げられる。
中でも、フェノール、メチルフェノール及びジメチルフェノールからなる群から選択されるいずれかであることが好ましく、メチルフェノール又はジメチルフェノールがより好ましく、メチルフェノールがさらに好ましい。
芳香族アルコールとケトンを縮合させる反応において、ケトンに対する芳香族アルコールのモル比(芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)は、少ないとケトンが多量体化してしまうが、多いと芳香族アルコールを未反応のまま損失するため経済的ではなくなる。したがって、ケトンに対する芳香族アルコールのモル比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは2.0以上である。また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
(酸触媒)
ビスフェノールの製造に用いる酸触媒としては、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸などが挙げられる。これらのうち、副反応を抑制する観点から、特に塩酸又は塩化水素ガスが好ましい。
縮合反応に用いるケトンに対する酸触媒のモル比(酸触媒のモル数/ケトンのモル数)は、少ない場合は、縮合反応の進行とともに副生する水によって酸触媒が希釈されて反応に時間を要する。また、多い場合は、ケトンの多量体化が進行したり、生成したビスフェノールが分解する場合がある。これらのことから、縮合反応に用いるケトンに対する酸触
媒のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
(チオール)
反応工程において、ケトンと芳香族アルコールとを縮合させる際に、助触媒としてチオールを用いてもよい。
助触媒としてチオールを用いることで、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの製造において、24体(2-(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン)の生成を抑え、44体(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン)の選択率を上げる効果と共に、ポリカーボネート樹脂製造時の重合活性を高め、得られるポリカーボネート樹脂の色調を良好なものとするという効果が得られる。このポリカーボネート樹脂製造時の重合活性の向上、得られるポリカーボネート樹脂の色調の改善効果が奏される理由の詳細は明らかではないが、チオールを用いることで、ポリカーボネート樹脂を製造する重合反応に対する阻害物の生成を抑制すると共に、色調悪化物の生成を抑制することができることによると推定される。
助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸や、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタンなどのアルキルチオールやメルカプトフェノールなどのアリールチオールなどが挙げられる。
縮合反応に用いるケトンに対するチオールのモル比(チオールのモル数/ケトンのモル数)は、少ないとチオールを用いることによるビスフェノールの反応選択性改善の効果が得られず、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトンに対するチオールのモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
(有機溶媒)
ビスフェノールの製造では、生成するビスフェノールを溶解ないし分散させるため、また、ビスフェノールを洗浄及び精製するために有機溶媒を使用することが出来る。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害せず、ビスフェノールを溶解した際に副反応を起こさないものなら特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられる。ここで、基質となる芳香族アルコール、ケトン、助触媒のチオール、及び、生成物であるビスフェノールは、有機溶媒から除かれる。ビスフェノールの生成反応には使用せず、洗浄及び精製する際に供給する溶媒はこの限りではなく、芳香族アルコールやケトンを溶媒として用いることもできる。これらの有機溶媒は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられ、これらの有機溶媒は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。芳香族炭化水素は、ビスフェノールの製造に使用した後、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。芳香族炭化水素を再利用する場合は、沸点が低いものが好ましい。好ましい芳香族炭化水素のひとつは、トルエンである。
脂肪族アルコールは、アルキル基とヒドロキシ基が結合したアルキルアルコールである。脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシ基が結合した1価の脂肪族アルコールでもよく、アルキル基と2個以上のヒドロキシ基が結合した多価の脂肪族アルコールであってもよい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分枝していてもよく、無置換であっても、アルキル基の炭素原子の一部が酸素原子によって置換されていてもよい。
脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシ基が結合したアルコールであることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基と1個のヒドロキシ基が結合したアルコールであることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基と1個のヒドロキシ基が結合したアルコールであることが更に好ましい。
具体的な脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどを挙げることができる。好ましい脂肪族アルコールのひとつは、メタノールである。
脂肪族炭化水素としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの炭素数5~18の直鎖状炭化水素、イソオクタンなどの炭素数5~18の分枝鎖状炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサンなどの炭素数5~18の環状炭化水素などが挙げられる。
縮合反応に用いるケトンに対する有機溶媒の質量比(有機溶媒の質量/ケトンの質量)は、多すぎると、ケトンと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、ケトンの多量体化が促進され、生成してくるビスフェノールが固化する場合がある。これらのことから、仕込み時のケトンに対する有機溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。また、その上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
なお、有機溶媒は、分割して供給してもよく、分割して供給する場合は、ケトンに対する、反応液の調製に用いられる有機溶媒の合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
生成するビスフェノールを有機溶媒に完全に溶解させずに分散させた方が、副反応を抑制でき、ビスフェノールが分解しにくい。また、反応終了後、反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時の濾液への損失)を低減できることからも、室温におけるビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。室温におけるビスフェノールの溶解度が低い有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、有機溶媒は、芳香族炭化水素を主成分として含むことが好ましい。
ビスフェノールを生成する工程や洗浄する工程などで用いる場合、操作温度よりも沸点が高いものを選択する必要がある。また、ビスフェノールを溶解させ、油相と水相とに2相分離させた状態で洗浄する場合、疎水性が高く、相分離が容易であることが好ましい。
(反応液の調製)
反応液の調製方法は、特に限定されず、ケトンと硫酸溶液とを混合した混合液に、芳香族アルコール及び酸触媒、並びに必要に応じて有機溶媒を順次供給する方法や、ケトンと硫酸溶液とを混合した混合液に、芳香族アルコール及び有機溶媒を混合し、その後酸触媒を供給する方法、芳香族アルコール及び塩化水素、並びに必要に応じて有機溶媒を混合し
た混合液に、ケトンと硫酸溶液とを混合した混合液を供給する方法等が挙げられる。
また、低温で原料を全て混合した後、ビスフェノールを生成する反応が起こる温度まで徐々に昇温して反応を調整することも出来る。
(反応条件)
ビスフェノールの生成反応の反応温度は、製造するビスフェノールの種類や製造スケール等に応じて適宜調整されるものであるが、-30℃~100℃が好ましい。ビスフェノールの生成反応は縮合反応であり、水が副生するため、水の沸点以下であることが好ましい。95℃以下、90℃以下の順でより好ましい。また、反応温度が低すぎると反応に要する時間が長時間化することから、-20℃以上、-15℃以上、-5℃以上、0℃以上の順でより好ましい。
生成反応の反応時間は、製造するビスフェノールの種類や反応温度、製造スケール等に応じて適宜調整されるものであるが、通常0.5時間~500時間である。生成反応の反応時間は、400時間以下や350時間以下としてもよいが、長すぎると生成したビスフェノールが分解することから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。
生成反応の反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧とすることができる。また、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、窒素、二酸化炭素、アルゴン雰囲気下等が挙げられる。
(精製方法)
反応工程で生成したビスフェノールをさらに精製してもよい。精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
晶析は複数回行ってもよい。しかし、晶析の際にビスフェノールが一部母液に溶解し損失となるため、好ましくは5回以下であり、より好ましくは3回以下である。
析出したビスフェノールは、芳香族炭化水素等を洗浄溶媒として用いて懸濁洗浄を行ったり、乾燥を行ってよい。乾燥の方法は減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができ、例えば、50~120℃で、2~15時間乾燥させることができる。
(ビスフェノールの用途)
ビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることから、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明の別の実施形態は、上記製造方法により製造されたビスフェノールを用いることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂の製造方法である。ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。
なお、ポリカーボネート樹脂の製造にはビスフェノールの1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上のビスフェノールを用いることで、共重合ポリカーボネート樹脂を製造することができる。また、上記ビスフェノール以外のジヒドロキシ化合物を併用して反応させることもできる。
上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上である。また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、ビスフェノール及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
触媒の使用量は、ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上である。また、その上限は、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分枝化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
上記ビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造において、重合反応温度は80~400℃、特に150~350℃とすることが好ましい。また、重合時間は、原料の比率や、所望とするポリカーボネート樹脂の分子量等によって適宜調整されるが、重合時間が長いと色調悪化などの品質悪化が顕在化するため、10時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。重合時間の下限は、通常0.1時間以上、或いは0.3時間以上である。
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
以下の実施例及び比較例において、オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、35質量%塩酸、98質量%硫酸、ドデカンチオール、試薬アセトン、アセトアルデヒド、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、アセトニトリル、酢酸、酢酸アンモニウム、ビスフェノールCは、富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
アセトアルデヒドを1質量%含有するアセトンは、所定量のアセトアルデヒドを試薬アセトンに供給することで、調製した。
各濃度の硫酸は、98質量%硫酸を適切な量の脱塩水で希釈することで、調製した。
[分析]
<試薬アセトン中のアセトアルデヒド>
試薬アセトン中のアセトアルデヒドの分析は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。試薬アセトン中のアセトアルデヒドの量は、30質量ppmであった。
・装置:島津製作所社製 GC-2014
Agilent FFAP 0.53mm×60m 1.0μm
・検出方法:FID
・気化室温度:150℃
・検出器温度:240℃
・分析時間0分から8分では、カラム温度を40℃に保ち、分析時間8~40分は毎分5℃でカラム温度を240℃まで徐々に昇温し、分析時間40分から50分はカラム温度を240℃に維持した。
・定量法:トルエンを内部標準とした内部標準方法
<ビスフェノールCの分析>
ビスフェノールCの組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。以下で、製造されるビスフェノールCの純度は通常99質量%以上であることから、この分析では得られた固体がビスフェノールCであることを確認するために用いた。
・装置:島津製作所社製「LC-2010A」
Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 250mm×3.0mmID・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル:脱塩水=1.500g:1mL:900mL:150mLの溶液
・分析時間0分では、溶離液組成はA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~41.67分はA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間41.67~50分はA液:B液=10:90に維持、
流速0.34mL/分にて分析した。
<pHの測定>
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METE ES-73」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
<電気伝導度>
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D-71」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
<ビスフェノールCの溶融色>
ビスフェノールCの溶融色は、日電理化硝子社製試験管「P-24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールCを20g入れて、190℃で30分間溶融させ、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数(APHA)を測定した。
<粘度平均分子量>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
<ペレットYI>
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計「CM-5」を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラス「CM-A212」を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス「CM-A124」をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板「CM-A210」を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
YIは、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
<実施例1>
(1-1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン5g、オルトクレゾール230g、ドデカンチオール2gを入れ、内温を30℃に維持しつつ、撹拌しながら35質量%塩酸210gを入れ、混合液A1とした。
次に、三角フラスコにアセトアルデヒドを1質量%含有するアセトン65g及び98質量%硫酸2.2gを入れて攪拌して混合液B1を得て、滴下ロートに入れた。
混合液A1を25℃に維持した状態で、該滴下ロート内の混合液B1を撹拌しながら1時間分かけて混合液A1へ滴下し、30℃に維持した状態で更に2時間撹拌し、ビスフェノールCの反応液C1を得た。
ビスフェノールCの反応液C1に25%水酸化ナトリウム溶液290gとトルエン250gを加えて撹拌し75℃まで昇温した後、中和により生成した塩化ナトリウムが溶け残っていたので、脱塩水を入れて完全に溶解させ、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相D1を得た。
75℃で、得られた有機相D1に、3質量%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相E1を得た。
有機相E1を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた。得られたビスフェノールC含有結晶を含む液を、減圧濾過により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ210gを得た。
温度計、ジャケット、及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下得られたビスフェノールC含有ケーキ210g、脱塩水100g及びトルエン420gを室温で入れ、75℃まで昇温した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相1をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相F1を得た。得られた水相1のpHは8.6であり、電気伝導度は130μS/cmであった。得られた有機相F1に、脱塩水100gを加え、30分間攪拌して、静置させて油水分離した。油水分離後、水相2をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相G1を得た。得られた水相2は62μS/cmとなったが、水相が10μS/cm以下になるまで、脱塩水100gで有機相の水洗を繰り返し、有機相H1を得た。
有機相H1を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた。得られたビスフェノールC含有結晶を含む液を、減圧濾過により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ170gを得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度90℃で軽沸分を留去することで、白色固体142gを得た。得られた白色固体の一部を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、ビスフェノールCであることを確認した。
(1-2)ビスフェノールCの色調
(1-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は40であった。
<実施例2>
(2-1)ビスフェノールCの製造
実施例1の(1-1)において、98質量%硫酸2.2gの代わりに、85質量%硫酸2.6gを用いた以外は、実施例1の(1-1)と同様に実施した。
(2-2)ビスフェノールCの色調
(2-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は25であった。
<実施例3>
(3-1)ビスフェノールCの製造
実施例1の(1-1)において、98質量%硫酸2.2gの代わりに、70質量%硫酸3.1gを用いた以外は、実施例1の(1-1)と同様に実施した。
(3-2)ビスフェノールCの色調
(3-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は34であった。
<比較例1>
(A-1)ビスフェノールCの製造
実施例1の(1-1)において、98質量%硫酸2.2gを供給しない以外は、実施例1の(1-1)と同様に実施した。
(A-2)ビスフェノールCの色調
(A-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は185であった。
<比較例2>
(B-1)ビスフェノールCの製造
実施例1の(1-1)において、98質量%硫酸2.2gの代わりに、50質量%硫酸4.3gを用いた以外は、実施例1の(1-1)と同様に実施した。
(B-2)ビスフェノールCの色調
(B-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は55であった。
実施例1~3、比較例1及び2において、アセトアルデヒドを含有するアセトンに供給した硫酸の濃度、アセトンに対する硫酸の質量比、得られたビスフェノールCの溶融色を表1に纏めた。表1より、アセトアルデヒドを含有するアセトンを用いるとビスフェノールの溶融色が悪化するが、予めアセトアルデヒドを含有するアセトンに硫酸を供給し、その硫酸の濃度が70質量%以上であり、アセトンに対する硫酸の質量比が0.03以下であると、良好な溶融色のビスフェノールが得られることが分かる。
Figure 0007615920000004
<実施例4>
(4-1)ビスフェノールCの製造
実施例1の(1-1)において、アセトアルデヒドを1質量%含有するアセトン65g及び98質量%硫酸2.2gの代わりに、試薬アセトン65g及び80質量%硫酸10mgを用いた以外は、実施例1の(1-1)と同様に実施した。
(4-2)ビスフェノールの色調
(4-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は15であった。
(4-3)ポリカーボネート樹脂の色調
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、(4-1)で得られたビスフェノールC100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び、400質量ppmの炭酸セシウム水溶液480μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶融した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内の精製ビスフェノールCと炭酸ジフェニ
ルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24800であり、ペレットYIは8.0であった。
<比較例3>
(C-1)
実施例4の(4-1)において、80質量%硫酸10mgを使用しないこと以外は、実施例4の(4-1)と同様に実施した。
(C-2)ビスフェノールCの色調
(C-1)でビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は25であった。
(C-3)ポリカーボネート樹脂の色調
(4-3)において、(4-1)で得られたビスフェノールCの代わりに(C-1)で得られたビスフェノールCを用いた以外は、(4-3)と同様に実施した。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは9.6であった。
<比較例4>
(D-1)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、クレゾール45.0g(0.42モル)、試薬アセトン18g(0.31モル)、トルエン6g、メルカプトプロピオン酸2.0gを入れて混合して、内温を25℃とした。そこへ35質量%の塩酸47gを加えた後、内温が30℃を越えないように、98%硫酸10gを滴下した(硫酸濃度は、下表の通り17質量%)。滴下後、25℃で6.5時間攪拌させ、スラリー状の反応液を得た。得られた反応液に水40gトルエン85gを加えた後、80℃に昇温してビスフェノールを完全に溶解させた。静置後、水相を除去し、有機相1を得た。得られた有機相1に重曹水溶液を加え中和した。静置後水相を除去して、有機相2を得た。得られた有機相2に水洗を行い、有機相3を得た。得られた有機相3を20℃まで冷却して、スラリー溶液を得た。得られたスラリー溶液をろ過し、ビスフェノールC含有ケーキを得た。得られたビスフェノールC含有ケーキをトルエンで懸濁洗浄して、乾燥させ、ビスフェノールC30gを得た。
(D-2)ビスフェノールの色調
(D-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は80であった。
実施例4及び比較例3、4において、用いたアセトン中のアセトアルデヒド量、アセトンに対する硫酸の質量比、得られたビスフェノールCの溶融色、得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIを表2に纏めた。表2より、硫酸を添加しない比較例3に比べて、
アセトアルデヒドが含まれるアセトンに予め硫酸を供給し、その硫酸の濃度が70質量%以上であり、アセトンに対する硫酸の質量比が0.03以下であると、良好な溶融色のビスフェノールが得られ、色調の良好なポリカーボネート樹脂が得られることが分かる。また、ケトン、芳香族アルコール及び酸触媒の混合液に、後から硫酸を添加する比較例4に比べて、顕著に良好な溶融色のビスフェノールが得られることが分かる。
Figure 0007615920000005

Claims (5)

  1. ケトンと硫酸溶液を混合し、混合液を準備する準備工程と、前記混合液と芳香族アルコールとを酸触媒存在下で反応させてビスフェノールを生成させる反応工程とを含み、前記混合液は、ケトンに対する硫酸溶液に含まれる硫酸の質量比率が0.05以下であり、前記硫酸溶液に含まれる硫酸の濃度が、硫酸溶液全体に対して70質量%以上100質量%以下である、ビスフェノールの製造方法。
  2. 前記ケトンはアルデヒドを含有する、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  3. 前記芳香族アルコールは、フェノール、クレゾール及びキシレノールから選択される群から選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記ビスフェノールが2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンである、請求項1乃至のいずれか1項に記載のビスフェノ―ルの製造方法。
  5. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によりビスフェノールを製造し、その製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
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