JP7617610B2 - フェニルエステルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フェノールと芳香族カルボン酸からフェニルエステルを製造する方法及びフェニルエステル化反応に用いる触媒に関する。
フェニルエステルを合成する反応は、電子材料、医薬品、農薬等の各種化学品の製造における主要構造を構成するための重要反応として知られている。
通常、フェノールと芳香族カルボン酸から直接的に脱水を伴ってフェニルエステルを得る反応は反応性が低いため、反応性を飛躍的に向上させるための添加剤または触媒を加えることが必要とされる。
例えば、フェニルエステル類の製造方法として、カルボン酸とクロロギ酸エステルを塩基存在下に混合したのちフェノールを加える方法が知られている(特許文献1)。あるいは、カルボン酸に各種スルホン酸を加えたのち、フェノールを作用させるフェニルエステルの製造方法も知られている(特許文献1)。
しかし、これら方法は、塩基や強酸を反応容器内に添加する必要があり、容器の腐食など生産プロセスとして問題がある。また、クロロギ酸エステルなどの添加剤を原料と同量使用する方法のため、目的化合物だけでなく添加剤由来の副生成物を大量に発生させる。したがって、生成物の精製処理に多くのエネルギーが必要で、精製処理の副産物の廃棄処理の手間と費用もかかる。
より添加剤を少なくフェニルエステルを製造する手法として、硫酸などの鉱酸にホウ酸を組み合わせたフェニルエステルの製造方法が報告されている(非特許文献1)。さらに硫酸、ホウ酸、ジアルキルマロン酸を組み合わせてカルボン酸とフェノールからフェニルエステルを製造する方法が知られている(特許文献2)。
しかし、これら方法も、硫酸を使用することから、製造容器の腐食と強酸の後処理の煩雑さにより、産業上有用な方法とは言えない。
塩基や強酸を用いない方法としてスカンジウムトリフレートを用いる酸無水物とフェノールとの反応によるフェニルエステルの製造方法が知られている(非特許文献2)。しかし、本方法はスカンジウム金属由来の化合物使用によるコストや脱水剤の使用による副生成物の大量発生といった問題が存在し、産業上不利な方法と言える。
特開2006-342150号公報 特開2011-105667号公報
Tetrahedron.Lett.1971,37,3453 J.Org.Chem.1996,61,4560
このように、従来の強酸、塩基、または金属錯体を用いた反応は、容器の腐食や副生廃棄物の処理といった、省エネルギーと品質の両面から課題がある。
さらに、原料に対し大きな割合で添加剤を加えるため、除去にかかるコスト、不純物としての製品への混入による製品の劣化と歩留まりの低下といった、省エネルギーと品質の両面から課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、強酸を使用する代わりにイオン交換樹脂を用い、金属フリーな条件下で、ホウ酸やアルコキシボランなどのホウ素含有触媒を共存させ、比較的温和な反応条件で効率的にフェノールと芳香族カルボン酸から直接的に脱水を伴ってフェニルエステルを合成する方法、及び強酸を使用しない条件下で、比較的温和な反応条件で効率的にフェノールと芳香族カルボン酸から直接的に脱水を伴ってフェニルエステルを合成できる、フェニルエステル化触媒を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕フェノール類と芳香族カルボン酸から脱水を伴って直接的にフェニルエステルを製造する方法であって、
前記有機化合物二種を、イオン交換樹脂とホウ素化合物とを含む触媒の存在下で接触させることを特徴とする、フェニルエステルの製造方法。
〔2〕前記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を表面に含むポリマーからなる、〔1〕に記載のフェニルエステルの製造方法。
〔3〕前記ホウ素化合物が、ホウ酸またはアルコキシボランから選ばれる、〔1〕又は〔2〕に記載のフェニルエステルの製造方法。
〔4〕前記ホウ酸またはアルコキシボランのうち、特に、下記式(i)で表されるホウ素化合物を用いる、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のフェニルエステルの製造方法。
Figure 0007617610000001
(式(i)中、Rは、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアルコキシ基である。
式(i)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基もしくは水酸基である。また、R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、式(i)中、R又はRのいずれか一方が水素原子であるか、または、R及びRが互いに結合して環を形成する場合には、Rは水酸基である。)
〔5〕 前記触媒に含まれるホウ素化合物の量が、フェノール類または芳香族カルボン酸のいずれか少ない方の基質1ミリモルに対して1~400mgの範囲であり、
前記触媒に含まれるホウ素化合物の量が、基質の総質量に対して0.01~20質量%である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のフェニルエステルの製造方法。
〔6〕 前記芳香族カルボン酸が下記式(1)に示す化合物であり、前記フェノール類が下記式(2)に示す化合物である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のフェニルエステルの製造方法。
Figure 0007617610000002
(式(1)中、R~R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はニトロ基を示す。これらの基はさらに、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、R~R、及びRから選ばれる二か所が互いに結合して環を形成してもよい。)
Figure 0007617610000003
(式(2)中、R~R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はニトロ基を示す。これらの基はさらに、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、R~R12、及びR13から選ばれる二か所が互いに結合して環を形成してもよい。)
〔7〕フェノールと芳香族カルボン酸からフェニルエステルを合成する際に、脱水を伴いながら直接的に合成するための触媒であって、イオン交換樹脂とホウ素化合物を構成要素として含むことを特徴とする、フェニルエステル化触媒。
〔8〕前記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を含有する強酸性のイオン交換樹脂からなる、〔7〕に記載のフェニルエステル化触媒。
〔9〕前記ホウ素化合物が、ホウ酸またはアルコキシボランから選ばれる、〔7〕又は〔8〕に記載のフェニルエステル化触媒。
〔10〕前記ホウ酸またはアルコキシボランのうち、特に、下記式(i)で表されるホウ素化合物を用いる、〔7〕~〔9〕のいずれかに記載のフェニルエステル化触媒。
Figure 0007617610000004
(式(i)中、Rは、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアルコキシ基である。
式(i)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基もしくは水酸基である。また、R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、式(i)中、R又はRのいずれか一方が水素原子であるか、または、R及びRが互いに結合して環を形成する場合には、Rは水酸基である。)
本発明によれば、イオン交換樹脂とホウ素化合物を構成要素として含む触媒を用い、強酸などの添加剤を併存させず、比較的温和な反応条件で効率的にフェノール類と芳香族カルボン酸から芳香族カルボン酸フェニルエステルを、脱水を伴い製造する方法、及び添加剤を併存させなくても、比較的温和な反応条件で効率的にフェノール類と芳香族カルボン酸から芳香族カルボン酸フェニルエステルを、脱水を伴い製造できる、イオン交換樹脂とホウ素化合物を構成要素として含む触媒を提供できる。
イオン交換樹脂とホウ素化合物を構成要素として含む触媒を用いた、本発明のフェニルエステルの製造方法の一実施の形態を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
本発明のフェニルエステルの製造方法は、フェノール類と芳香族カルボン酸から脱水を伴ってフェニルエステル類を製造する方法である。以下、フェノール類と芳香族カルボン酸を「基質」とも記す。
本発明のフェニルエステルの製造方法は、一実施の形態において、基質を、イオン交換樹脂とホウ素化合物から構成される触媒(以下、「エステル化触媒」とも記す。)の存在下でバッチ式反応器を用い、脱水条件下にて反応させ、所定の反応温度にてフェニルエステル類を生成する。
<エステル化触媒>
本発明におけるエステル化触媒は、イオン交換樹脂とホウ素化合物から構成される。添加剤を併存させなくても、効率的に、基質から脱水反応を伴ってフェニルエステルへと誘導できる。また、イオン交換樹脂とホウ素化合物は、反応前後で分解しないため、反応後に濾別及び溶液回収により、再利用できる。
イオン交換樹脂は、スルホン酸基が表面に配置されたスチレンを基本骨格とするポリマー樹脂が用いやすく、安定性が優れ回収と再使用が容易になる。そのようなポリマーとしては、スルホン酸基含有触媒用イオン交換樹脂をあげることができ、さらに、その中でも強酸性のスルホン酸基含有触媒用イオン交換樹脂をあげることができる。そのような樹脂の例として、オルガノ株式会社製のAmberlyst15DRY、Amberlyst15JWETを挙げることができる。Amberlyst15DRY、Amberlyst15JWETはカタログ品として、いずれも総交換容量が湿潤時で1以上、また、乾燥樹脂あたりでは4以上を有している。なお、総交換容量はイオンを実際に流通させ、交換量を滴定することで求める。樹脂は120℃以上で熱分解の恐れがあるため、反応温度を120℃より上げないように反応条件を設定することが望ましい。
ホウ素化合物はホウ酸からアルキル置換ホウ酸、アリール置換ホウ酸など、ホウ素―ヒドロキシル基の構造が1か所あれば、各種ホウ素化合物を利用することができ、芳香族カルボン酸とホウ素化合物が最初に反応してホウ酸エステルを生成し、これとフェノールが反応することでフェニルエステルが製造されると考えられる。したがって、ホウ素化合物のホウ素上は、ヒドロキシル基やアルコキシ基よりも、直接アルキル基やアリール基が置換したホウ素化合物のほうが、触媒活性の向上に寄与すると考えられる。
このようなホウ素化合物の一例として、下記式(i)で表されるホウ素化合物が挙げられる。
Figure 0007617610000005
式(i)中、Rは、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアルコキシ基である。
式(i)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基もしくは水酸基である。またR及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、式(i)中、R又はRのいずれか一方が水素原子であるか、または、R及びRが互いに結合して環を形成する場合には、Rは水酸基である。
において、アルキル基としては、例えば炭素数1~15の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-オクチル基等が挙げられる。アルキル基は、アリール基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
アリール基としては、例えば炭素数6~20、好ましくは6~14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられる。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、アニシル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。アリール基は、アルキル基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基などが挙げられる。アルコキシ基は、アルキル基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
及びRにおいて、アルキル基としては、例えば炭素数1~15の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-オクチル基等が挙げられる。アルキル基は、アリール基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
アリール基としては、例えば炭素数6~20、好ましくは6~14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられる。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、アニシル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。アリール基は、アルキル基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
及びRが互いに結合して、R及びRそれぞれが結合した炭素原子とともに形成する環としては、芳香環でもよく脂環でもよい。芳香環としては、例えば炭素数6~20、好ましくは6~14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素環が挙げられる。脂環としては、例えば、炭素数3~10の単環、多環又は縮合環式の飽和炭化水素環が挙げられる。
また好ましい実施の形態において、ホウ素化合物はフェニルボロン酸、ホウ酸、イソプロピルボロン酸である。ホウ素化合物は2種以上のホウ素化合物を組み合わせて用いてもよい。
エステル化触媒は、上記のイオン交換樹脂とホウ素化合物とを溶媒中で混合することにより作製することができる。エステル化触媒の作製において用いるイオン交換樹脂、および、ホウ素化合物の量は、下記に説明するように基質に対してそれぞれ一定の範囲の量とすればよい。また、エステル化触媒を作製するための溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、オクタン、ヘプタンなどの脂肪族化合物、イソブチルメチルケトンなどのケトン類から広範に用いることができ、エステル合成反応の条件にて分解することなく、またエステル合成反応の反応条件にて液体状態である溶媒が好適に用いることができる。溶媒は、下記に説明するエステル化反応における液状媒体として用いることができるように、基質の総質量(フェノール類と芳香族カルボン酸との総質量)に対し、質量比で、0.1~1000倍とすることが好ましく、1~100倍とすることがより好ましい。イオン交換樹脂とホウ素化合物とを溶媒中で混合することにより得られたエステル化触媒を含む溶液は、そのままフェニルエステルを製造するための反応溶液として用いることができる。
<基質>
本発明の製造方法における基質は、フェノール類および芳香族カルボン酸である。芳香族カルボン酸は、本発明の製造方法においてフェニルエステルを製造可能なものであれば特に制限はない。また、フェノール類も各種置換基を有するアレノールであれば特に制限はない。
基質としては、例えば、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」とも記す。)、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」とも記す。)等の、芳香環にカルボン酸が接続された化合物(化合物1)、および、芳香環に各種置換基が接続されたアレノール化合物(化合物2)が挙げられる。
Figure 0007617610000006
Figure 0007617610000007
式(1)および式(2)中、R~R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はニトロ基を示す。これらの基はさらに、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
式(1)中、R~R、及びRから選ばれる二か所が互いに結合して環を形成してもよい。
式(2)中、R~R12、及びR13から選ばれる二か所が互いに結合して環を形成してもよい。
式(1)および式(2)中、R~R12、及びR13における置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、炭素数1~15の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-オクチル基等が挙げられる。
式(1)および式(2)中、R~R12、及びR13における置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~15の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピル基、t-ブチル基等が挙げられる。
基質の具体例としては、芳香族カルボン酸として、安息香酸、4-メチル安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸等が挙げられる。
また、フェノール類として、フェノール、4-メチルフェノール、4-メトキシフェノール、4-ブロモフェノール、4-ニトロフェノール等が挙げられる。
<エステル化>
基質をエステル化触媒の存在下で混合させることにより、基質同士が脱水を伴ってエステル化反応が進行する。
基質同士を脱水条件下接触させる方法としては、例えば、基質同士と、液状媒体を容器に収容し、空気下で撹拌する方法が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、イオン交換樹脂については、例えば、同量使用するフェノール類または芳香族カルボン酸1ミリモルに対して1~400mg、好ましくは10~200mg、より好ましくは50~150mgである。通常、基質としてのフェノール類と芳香族カルボン酸とは同量用いることが好ましい。しかしながら、フェニルエステルが製造できる限りにおいて、フェノール類と芳香族カルボン酸との割合は限定されない。フェノール類または芳香族カルボン酸のいずれか一方の使用量が少ない場合には、エステル化触媒の使用量は当該少ないほうの基質1ミリモルずつに対して上記範囲で用いればよい。
エステル化触媒の使用量が前記範囲の下限値以上であれば、基質のエステル化反応がより進みやすい。エステル化触媒の使用量が前記範囲の上限値を超えると、加えた触媒が攪拌を妨げ触媒活性が低下するおそれがある。
エステル化触媒の使用量は、ホウ素化合物については、例えば、基質の総質量(100質量%)に対して0.01~20質量%であり、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。
エステル化触媒の使用量が前記範囲の下限値以上であれば、基質のエステル化反応がより進みやすい。エステル化触媒の使用量が前記範囲の上限値を超えると、加えた触媒が攪拌を妨げ触媒活性が低下するおそれがある。
液状媒体としては、一般的な有機溶媒は全て用いることが出来、例えば、トルエン、オクタン等が挙げられる。これらの液状媒体は単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。
液状媒体の使用量は、基質の総質量に対し、質量比で、0.1~1000倍が好ましく、1~100倍がより好ましい。
エステル化反応の反応条件に特に制約はないが、反応温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは80~120℃である。
反応時間は、用いる触媒の量や反応温度等により左右され、一概に定めることはできないが、通常は1~40時間の範囲で、好ましくは6~18時間の範囲で行われる。
エステル化反応は、添加剤の不在下で行うことが好ましい。添加剤の不在下でエステル化反応を行うことにより、生成物の純度が高まる。また、反応終了後の精製時のエネルギー投入量を少なくできる。
エステル化反応は、脱水を伴う平衡反応であることが知られているため、ディーン・スタークのような反応系からの脱水を促す機構を組み込む反応装置を設計することが望ましい。例えば、反応容器の上部にモレキュラーシーブなどの乾燥剤を設置し、環流時に脱水を促進する機構を触媒と共に反応装置に組み込むことが有効である。
反応終了後、蒸留、クロマト分離、再結晶、昇華等の通常の方法によって、得られた生成物(フェニルエステル化合物等)を取り出すことができる。
<生成物>
上記のように基質のフェノール類と芳香族カルボン酸を液状媒体の存在下、所定の反応条件で脱水を伴ってエステル化することで、下記式(3)に示すようなフェニルエステル化合物が得られる。
Figure 0007617610000008
式(3)中、R~R12、及びR13は、それぞれ、前記と同義である。
得られるフェニルエステル化合物の具体例としては、安息香酸フェニル、安息香酸(4-メチル)フェニル、安息香酸(3-メチル)フェニル、安息香酸(2-メチル)フェニル、安息香酸(4-メトキシ)フェニル、安息香酸(4-ブロモ)フェニル、安息香酸(4-クロロ)フェニル、または安息香酸(4-ニトロ)フェニル等が挙げられる。
以上説明した本発明にあっては、前記したエステル化触媒を用いることで、添加剤を併存させなくても、比較的温和な条件下で効率的にフェノールをエステル化でき、フェニルエステル化合物を、脱水を伴いながら副生成物を出すことなく、高収率で得ることができる。
また、前記したエステル化触媒は、イオン交換樹脂とホウ素化合物であるので、エステル化する際に分解せず、再利用できる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
エステル化における転化率、収率は、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果を元に、以下の計算式により計算した。
転化率(%)=(1-残存した原料のモル数/使用した原料のモル数)×100
収率(%)=(目的化合物のモル数/使用した原料のモル数)×100
下記に、本発明のフェニルエステルの製造方法の一実施の形態における化学反応式を示す。
Figure 0007617610000009
(実施例1)
30φの試験管に撹拌子を入れ、イオン交換樹脂としてAmberlyst 15DRY(オルガノ製)114mgとホウ素化合物としてフェニルボロン酸30.5mgを入れ、さらに基質としてフェノール(東京化成工業株式会社製)を941mg、安息香酸(東京化成工業株式会社製)を1221mg入れ、液状媒体としてトルエン(ナカライテスク株式会社製)を5mL加え、モレキュラーシーブ4Aを備えた還流管に接続し、1気圧のアルゴン下10℃で16時間撹拌した。その後、内部標準としてn-テトラデカン(ナカライテスク株式会社製)を373.3mg加え、ガスクロマトグラフィー測定を行った。その結果、転化率は77%、安息香酸フェニルの収率は72%であり、その他に副生成物は検出されなかった。
(実施例2)
フェニルボロン酸の代わりにホウ酸を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は82%、安息香酸フェニルの収率は74%であった。
(実施例3)
イオン交換樹脂としてAmberlyst15DRYの代わりにAmberlyst15JWETを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は67%、安息香酸フェニルの収率は63%であった。この結果から、イオン交換樹脂はその樹脂内に水分を保有していても保有していなくても反応性には影響がない。
(比較例1)
触媒のうち、イオン交換樹脂を用いず、あとは実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は0%であった。
(比較例2)
溶剤をトルエンに代えてシクロペンチルメチルエーテルにした以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、安息香酸フェニルは未検出であった。
(比較例3)
反応温度を80℃にした以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は10%、安息香酸フェニルの収率は8%であった。
基質としてフェノールを用いた実施例1~3及び比較例1~3の結果を表1に示す。
Figure 0007617610000010
基質としてフェノールの芳香環上に各種置換基が置換した基質でのエステル化反応を、フェノールの代わりに各種置換フェノールを用いたほかは実施例1と同様の条件にて実施した実施例4~9を表2に示す。
Figure 0007617610000011
(実施例10)
フェノールの代わりに4-アセトアミドフェノールを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は10%、目的物であるエステルの収率は5%であった。
(比較例4)
触媒のうち、ホウ素化合物を用いず、あとは実施例10と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は0%であった。
実施例1~3と実施例10、及び比較例1~3と比較例4の対比から、イオン交換樹脂とホウ素化合物を最適化して導入した触媒を用い、脱水を促す反応容器と反応温度でエステル化反応を実施することで、フェニルエステルを高収率で得ることができることが確認できた。
実施例4~9の結果から、各種置換フェノールと置換芳香族カルボン酸においても本触媒系が有効なことが確認できた。
フェニルエステルを合成する反応は、電子材料、医薬品、農薬等の各種化学品の製造における主要構造を構成するための重要反応として知られている。そして、本発明によれば、フェノールと芳香族カルボン酸を原料として、副生成物が水のみで、単純な触媒混合により、脱水を伴いながらフェニルエステル化合物を効率的に製造できるので、本発明は、医薬品、農薬等の中間体や樹脂の原料等の分野を中心に幅広く活用することができる。

Claims (5)

  1. フェノール類と芳香族カルボン酸から脱水を伴って直接的にフェニルエステルを製造する方法であって、
    前記芳香族カルボン酸が下記式(1)に示す化合物であり、前記フェノール類が下記式(2)に示す化合物であり、
    前記フェノール類と芳香族カルボン酸とを、強酸性のスルホン酸基含有触媒用のイオン交換樹脂と、ホウ酸またはアルコキシボランから選ばれるホウ素化合物と、を含む触媒およびトルエンの存在下で接触させて80℃を超えて120℃以下で反応させることを特徴とする、フェニルエステルの製造方法。
    Figure 0007617610000012
    (式(1)中、R~R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はニトロ基を示す。これらの基はさらに、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子の置換基を有していてもよい。また、R~R、及びRから選ばれる二か所が互いに結合して環を形成してもよい。)
    Figure 0007617610000013
    (式(2)中、R~R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はニトロ基を示す。これらの基はさらに、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子の置換基を有していてもよい。また、R~R12、及びR13から選ばれる二か所が互いに結合して環を形成してもよい。)
  2. 前記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を表面に含むポリマーからなる、請求項1に記載のフェニルエステルの製造方法。
  3. 前記ホウ酸またはアルコキシボランとして、下記式(i)で表されるホウ素化合物を用いる、請求項1又は請求項2に記載のフェニルエステルの製造方法。
    Figure 0007617610000014
    (式(i)中、Rは、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアルコキシ基である。
    式(i)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基もしくは水酸基である。また、R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、式(i)中、R又はRのいずれか一方が水素原子であるか、または、R及びRが互いに結合して環を形成する場合には、Rは水酸基である。)
  4. 前記芳香族カルボン酸が安息香酸であり、前記フェノール類がフェノールである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフェニルエステルの製造方法。
  5. 前記触媒に含まれるホウ素化合物の量が、フェノール類または芳香族カルボン酸のいずれか少ない方の基質1ミリモルに対して1~400mgの範囲であり、
    前記触媒に含まれるホウ素化合物の量が、基質の総質量に対して0.01~20質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフェニルエステルの製造方法。
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