JP7621925B2 - 缶胴用アルミニウム合金板 - Google Patents

缶胴用アルミニウム合金板 Download PDF

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Description

本発明は、缶胴用アルミニウム合金板に関する。
飲料用の包装容器として、有底円筒状の胴部と蓋部からなる2ピース缶が広く使用されてきた。近年では、リシールが可能なボトル缶も広く使用されている。缶胴の材料としては、AAもしくはJIS3000系(Al-Mn系)などのアルミニウム合金が汎用されている。缶胴は、一般に、次のような工程で製造される。まず、素材となるアルミニウム合金板を円板形状にブランキングし、得られたブランク材をカップ成形する。そして、成形されたカップを再絞り、しごき加工することで缶胴形状に成形する。この後、成形した缶胴に塗装およびベーキングを施す。ベーキングは塗装を焼き付ける工程であり、通常180℃から220℃の焼付け処理を1回もしくは複数回行い、トータルで180℃から220℃×3分から20分の処理を行う。その後、缶胴の開口部をネッキング加工により小径化した後、フランジ成形を行い、缶胴に内容物を充填した後、前記缶胴と缶蓋の巻締めを行い、洗浄を行って、DI缶が製造される。また、ボトル缶ではネジ成形、カール成形を行い、缶胴に内容物を充填した後、前記缶胴にキャップを取り付け、洗浄を行って製造される。
缶胴用アルミニウム合金板の製造方法としてはコストや生産性の観点から、熱間圧延以後に焼鈍工程を含まない製造工程(直通工程)で製造されることが一般的であるが、一部の強度が要求される用途には、例えば冷間圧延前もしくは冷間圧延途中に焼鈍工程を含む製造工程(中間焼鈍工程)で製造されることもある。例えば、非特許文献1には、Cuの添加量が0.2質量%以上の領域、とりわけ0.25質量%を超える領域になると、一定温度以上の中間焼鈍を施せば、Cu量の増加に応じて強度が向上することが記載されている。
軽金属 Vol41,No.2,団法人軽金属学会,1991年,p.102-107.
近年、内容物のガスボリューム増加やコストダウン、省資源化の観点から飲料容器の更なる高耐圧化、薄肉化が要求されており、缶胴用材料も高強度化していく必要がある。非特許文献1では、中間焼鈍を施す場合は容易に高強度が得られるとしている。しかしながら、中間焼鈍を行うとコストアップおよび製造に要するエネルギー消費が大きくなることに加え、しごき成形時の加工硬化が大きくなるため、その後の成形性、特にネック部、フランジ部、カール部等の成形性が十分に得られない場合がある。
上記に鑑み、本発明は、高強度かつしごき加工後の成形性に優れる缶胴用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
本発明に係る缶胴用アルミニウム合金板は、Si:0.1質量%以上0.6質量%以下、Fe:0.2質量%以上0.8質量%以下、Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.3質量%以下、Mg:1.2質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.01質量%以上0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。缶胴用アルミニウム合金板は、200℃、20分ベーキング後のアルミニウム合金板におけるCu固溶量が0.22質量%以上0.50質量%以下であり、200℃、20分ベーキング後の0.2%耐力が275MPa以上310MPa以下である。さらに缶胴用アルミニウム合金板は、元板厚から缶壁への加工率65%でDI成形し、200℃、20分ベーキングした後の缶壁0°位置の周方向耐力が295MPa以上350MPa以下、かつ周方向伸びが4.0%以上である。
本発明によれば、高強度かつしごき加工後の成形性に優れる缶胴用アルミニウム合金板を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る缶胴用アルミニウム合金板について説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための一例を例示するものであって、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。
本発明の一実施形態に係る缶胴用アルミニウム合金板は、例えば、Al-Mn-Mg系合金、Al-Mg-Mn系合金等からなる。Al-Mn-Mg系合金、Al-Mg-Mn系合金等としては、例えば、一般的なJIS合金、例えば3004、3104等が挙げられる。
具体的には、缶胴用アルミニウム合金板は、Si:0.1質量%以上0.6質量%以下、Fe:0.2質量%以上0.8質量%以下、Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.3質量%以下、Mg:1.2質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.01質量%以上0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。缶胴用アルミニウム合金板は、200℃、20分ベーキング後のアルミニウム合金板におけるCu固溶量が0.22質量%以上0.50質量%以下である。また缶胴用アルミニウム合金板は、200℃、20分ベーキング後の0.2%耐力が275MPa以上310MPa以下である。さらに缶胴用アルミニウム合金板は、元板厚から缶壁への加工率65%でDI成形し、200℃、20分ベーキングした後の缶壁0°位置の周方向耐力が295MPa以上350MPa以下、かつ周方向伸びが4.0%以上である。また、本発明に係る缶胴用アルミニウム合金板は、Znを不可避的不純物として含み、Zn:0.4質量%以下であってもよい。
このようにベーキング後のCu固溶量と、素材耐力とを所定の範囲に規制することで、直通工程によっても高強度な缶胴用アルミニウム合金板を得ることができる。さらに、缶胴の周方向耐力と伸びを所定の範囲に規制することで、缶胴用アルミニウム合金板を高強度化しても十分な成形性を確保することができる。これにより、中間焼鈍などの工程を必要とすることなく、従来のアルミニウム合金板よりも高強度でありながら、缶胴のフランジ成形性を確保した缶胴用アルミニウム合金板を得ることが可能となる。本発明の缶胴用アルミニウム合金板によれば、缶胴の更なる薄肉化、高耐圧化に対応することが可能となる。
以下、缶胴用アルミニウム合金板に含まれる各成分の含有量と、含有量の限定の理由について説明する。
(Si:0.1質量%以上0.6質量%以下)
Siは、アルミニウム合金中にAl-Fe-Mn-Si系晶出物を形成させ、しごき成形時に焼付きを抑制する効果がある。Siの含有量が0.1質量%未満の場合、晶出物が不足しその効果が得られない。一方、Siの含有量が0.6質量%を超える場合、熱間圧延までの工程でアルミニウム合金中に微細なAl-Fe-Mn-Si系析出物が多数生じて熱間圧延後の再結晶を阻害し、成形性を低下させる。したがって、Siの含有量は0.1質量%以上0.6質量%以下とする。Siの含有量の下限は、好ましくは0.2質量%以上、又は0.2質量%を超えてよい。またSiの含有量の上限は、好ましくは0.5質量%以下、又は0.4質量%以下であってよい。
(Fe:0.2質量%以上0.8質量%以下)
Feは、アルミニウム合金中にAl-Fe-Mn系、Al-Fe-Mn-Si系晶出物を形成させ、しごき成形時に焼付きを抑制する効果がある。Feの含有量が0.2質量%未満の場合、晶出物が不足しその効果が得られない。一方、Feの含有量が0.8質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の晶出物が大きく、また過剰に形成され、フランジ成形性を低下させる。したがって、Feの含有量は0.2質量%以上0.8質量%以下とする。Feの含有量の下限は、好ましくは0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよい。またFeの含有量の上限は、好ましくは0.7質量%以下、0.6質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
(Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下)
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が0.25質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶胴に成形されたときの缶体強度が不足する。一方、Cuの含有量が0.50質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、成形性が低下する。したがって、Cuの含有量は0.25質量%以上0.50質量%以下とする。Cuの含有量の下限は、好ましくは0.30質量%以上、又は0.32質量%以上であってよい。またCuの含有量の上限は、好ましくは0.45質量%以下、又は0.40質量%以下であってよい。
(Mn:0.7質量%以上1.3質量%以下)
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にAl-Fe-Mn系、Al-Fe-Mn-Si系晶出物を形成させ、しごき成形時に焼付きを抑制する効果がある。Mnの含有量が0.7質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分となるとともに、晶出物が不足し、しごき成形時に焼付きによる外観不良が発生する。一方、Mnの含有量が1.3質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の晶出物が大きく、また過剰に形成され、フランジ成形性を低下させる。したがって、Mnの含有量は0.7質量%以上1.3質量%以下とする。Mnの含有量の下限は、好ましくは0.8質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよい。またMnの含有量の上限は、好ましくは1.2質量%以下、又は1.2質量%未満であってよい。
(Mg:1.2質量%以上2.0質量%以下)
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が1.2質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶胴に成形されたときの缶体強度が不足する。一方、Mgの含有量が2.0質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、成形性が低下する。したがって、Mgの含有量は1.2質量%以上2.0質量%以下とする。Mgの含有量の下限は、好ましくは1.3質量%以上、又は1.3質量%を超えてよい。またMgの含有量の上限は、好ましくは1.8質量%以下、1.7質量%以下、又は1.6質量%以下であってよい。
(Cr:0.01質量%以上0.10質量%以下)
Crはアルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。その効果は0.01質量%以上の添加により得られる。一方、Cr含有量が0.10質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生じ、成形性を低下させる。したがってCrの含有量は0.01質量%以上0.10質量%以下とする。Crの含有量の下限は、好ましくは0.01質量%を超えてよい。またCrの含有量の上限は、好ましくは0.07質量%以下、0.05質量%以下、又は0.03質量%以下であってよい。
(Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下)
Tiは鋳塊結晶粒を微細化し、鋳造割れを抑制する効果がある。その効果は0.01質量%以上の添加により得られる。一方、Ti含有量が0.10質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生じ、成形性を低下させる。従って、アルミニウム合金中のTi含有量は0.01質量%以上0.10質量%以下とする。なお、Tiを添加する場合には、例えば鋳塊微細化剤(Al-TiもしくはAl-Ti-B等)として鋳造前の溶湯に添加してもよく、例えばTi:B=5:1の割合とした鋳塊微細化材を用いる場合はこの含有割合に応じたBも必然的に添加される。Tiの含有量の下限は、好ましくは0.01質量%を超えてよい。またTiの含有量の上限は、好ましくは0.08質量%以下、0.06質量%以下、又は0.04質量%以下であってよい。
(Zn:0.4質量%以下)
一般的に知られているように、アルミニウム合金板はZnを含んでいてよい。Znは0.4質量%以下の含有量であれば、アルミニウム合金板の材料特性、しごき加工後の缶特性に大きな影響を及ぼさない。Znは不可避不純物であるが、上記範囲内でZnを積極添加することもできる。Znの含有量の上限は、好ましくは0.3質量%以下、0.27質量%以下、0.25質量%以下、又は0.2質量%以下であってよい。またZnの含有量の下限は、例えば、0.1質量%以上であってよい。
(残部がAlおよび不可避的不純物)
アルミニウム合金板の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。不可避的不純物としては、例えばZr、B、V、Na、Ca、Ni、In、Sn、Gaなどが挙げられる。不可避不純物について許容される含有量は、例えばZr、V、Na、Ca、Ni、In、Sn、Gaなどそれぞれ0.05質量%以下であってよく、それらの合計で0.15質量%以下であってよい。また、前記範囲であれば、不可避不純物として含有した場合に限らず、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げることが抑制される。
(ベーキング後のCu固溶量が0.22質量%以上0.50質量%以下)
200℃、20分のベーキング後のCu固溶量は、例えば、熱フェノール法にて定量分析を行うことにより測定される。即ち、熱フェノールによる残渣抽出法によって残渣抽出溶液を得て、その溶液中の元素量をICP発光分析法によって測定し、Cuの固溶量を求めることができる。ベーキング後のCu固溶量が0.22質量%未満ではDI成形後に缶壁の周方向伸びが不足し、フランジ成形性に劣る。0.50質量%以上では強度が過剰となり成形性が低下する。したがって、ベーキング後のCu固溶量は0.22質量%以上0.50質量%以下とする。ベーキング後のCu固溶量の下限は、好ましくは0.24質量%以上であってよい。またベーキング後のCu固溶量の上限は、好ましくは0.40質量%以下、又は0.30質量%以下であってよい。
なお、ベーキング条件は、温度が180℃以上220℃以下で、時間が3分以上20分以下であれば、測定されるCu固溶量の測定値に大きな影響を及ぼさない。また、Cu固溶量の測定は飲料缶を成形し、ベーキングを施した後の缶底ドーム部について行ってもよい。
(ベーキング後の0.2%耐力が275MPa以上310MPa以下)
200℃、20分のベーキング後の0.2%耐力が275MPa未満では缶体、特に缶底部の強度が不足し、内容物充填後の加熱殺菌や輸送・ハンドリング時等に容器の変形を生じる。310MPaを超えると強度が過剰なため、成形不良を生じやすくなる。したがってベーキング後の0.2%耐力は275MPa以上310MPa以下とする。ベーキング後の0.2%耐力の下限は、好ましくは280MPa以上、286MPa以上、又は289MPa以上であってよい。またベーキング後の0.2%耐力の上限は、好ましくは305MPa以下、300MPa以下、又は296MPa以下であってよい。
なお、ベーキング条件は、温度が180℃以上220℃以下で、時間が3分以上20分以下であれば、測定される0.2%耐力の測定値に大きな影響を及ぼさない。なお、ベーキング後の0.2%耐力と缶底硬度には相関があるため、飲料缶を成形し、ベーキングを施した後の缶底ドーム頂点部の圧延平行断面におけるマイクロビッカース硬さ測定(JIS Z2244)で、ベーキング後の0.2%耐力を代用してもよい。この場合、275MPa以上310MPa以下の0.2%耐力を満足する範囲は、荷重100gf、保持時間15秒の条件で測定したビッカース硬さ(HV0.1)として97以上113以下となる。ビッカース硬さの下限は、好ましくは99以上、102以上、又は103以上であってよい。またビッカース硬さの上限は、好ましくは111以下、108以下、又は107以下であってよい。
(DI成形およびベーキング後の缶壁0°位置の周方向耐力が295MPa以上350MPa以下かつ缶壁0°位置の周方向伸びが4.0%以上)
DI成形およびベーキング後の缶壁0°位置の周方向耐力及び缶壁0°位置の周方向伸びは以下のようにして測定される。元板厚から缶壁への加工率が65%となるようDI成形した缶に対して、200℃で20分のベーキングを行った後、缶壁の缶軸方向と圧延方向が平行となる位置を試験片の中心として、引張方向が缶周方向と平行になるよう、JIS 5号試験片の寸法を1/2に縮小した試験片を採取する。採取した試験片の引張試験(JIS Z2241)を行い、0.2%耐力を「缶壁0°位置の周方向耐力」、伸びを「缶壁0°位置の周方向伸び」とする。
なお、元板厚から缶壁へのDI成形の加工率が60%以上70%以下の範囲であれば試験結果に大きな影響を及ぼさない。また、ベーキング条件は、温度が180℃以上220℃以下で、時間が3分以上20分以下であれば試験結果に大きな影響を及ぼさない。
DI成形およびベーキング後の缶壁0°位置の周方向耐力が295MPa未満では缶壁強度が不足し、蓋やキャップを取り付ける際に胴部の変形などの不良を生じる。耐力が350MPaを超えるとフランジ成形の際に割れなどの成形不良を生じ、成形性に劣る。このため、缶壁0°位置の周方向耐力は295MPa以上350MPa以下とする。缶壁0°位置の周方向耐力の下限は、好ましくは300MPa以上、又は310MPa以上であってよい。また缶壁0°位置の周方向耐力の上限は、好ましくは340MPa以下、又は335MPa以下であってよい。
DI成形およびベーキング後の缶壁0°位置の周方向伸びが4.0%未満ではフランジ成形の際に割れなどの成形不良を生じ、成形性に劣る。このため、缶壁0°位置の周方向伸びは4.0%以上とする。缶壁0°位置の周方向伸びの下限は、好ましくは4.2%以上、又は4.4%以上であってよい。缶壁0°位置の周方向伸びの上限は、例えば6%以下であってよい。
(製造方法)
缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の一例について説明する。缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、第1工程である鋳造工程と、第2工程である均質化熱処理工程と、第3工程である熱間圧延工程と、第4工程である冷間圧延工程と、を含み、これらの工程をこの順に行うものである。
(第1工程から第2工程:鋳造工程、均質化熱処理工程)
第1工程は、目的の組成を有する鋳塊を半連続鋳造法にて作製する工程である。第2工程は、第1工程で作製されたアルミニウム合金の鋳塊に均質化熱処理を施す工程である。
第1工程では、例えば半連続鋳造法(DC(direct chill)鋳造)によりアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を得る。鋳塊の厚みは、例えば450mm以上650mm以下であってよい。次にこの鋳塊に対して面削と均質化熱処理を行い、鋳塊表層の不均一な組織となる領域の除去と鋳塊の偏析を均質化する第2工程を行う。第2工程では、面削後に、均質化熱処理を行い熱間圧延開始温度まで冷却してもよいし、あるいは均質化熱処理後、室温近く(例えば、100℃以下)まで冷却した後に面削を行い、熱間圧延開始温度まで再加熱してもよい。均質化熱処理は、例えば570℃以上620℃以下の温度範囲で、2時間以上10時間以下保持する条件で行ってよい。
(第3工程:熱間圧延工程)
第3工程は、第2工程で均質化熱処理を施されたアルミニウム合金の鋳塊を熱間圧延する工程である。熱間圧延により得る熱間圧延板の板厚は、通常、冷間圧延して得られる製品板の板厚から冷間圧延による総圧延率を逆算して設定する。
熱間圧延開始温度は、例えば450℃以上600℃以下であってよい。熱間圧延開始温度が450℃以上であれば、所望の熱間圧延巻取温度を確保することができる。また熱間圧延開始温度が600℃以下であると焼付きによる表面不良を抑制できる。なお、熱間圧延開始温度の下限は、好ましくは450℃以上、又は480℃以上であってよい。また熱間圧延開始温度の上限は、好ましくは550℃以下、又は530℃以下であってよい。
また、熱間圧延後にコイル状に巻き取った熱間圧延板の側面を接触式温度計で測定した温度(熱間圧延終了温度)が、例えば335℃以上450℃以下となるように熱間圧延を行ってよい。熱間圧延終了温度が335℃以上であると、熱間圧延板巻取後の冷却中にAl-Cu-Mg系化合物の析出が多くなることが抑制され、所定のCu固溶量を得ることができ、十分な強度が得られる。また450℃以下であると、圧延中に焼付きなどを生じることが抑制され、表面品質の低下が抑制される。熱間圧延終了温度の上限は、好ましくは420℃以下、400℃以下、又は380℃以下であってよい。熱間圧延終了温度の下限は、好ましく340℃以上、又は350℃以上であってよい。
(第4工程:冷間圧延工程)
第4工程は、第3工程で熱間圧延された熱間圧延板を冷間圧延する工程である。第4工程では、熱間圧延板を、焼鈍することなく冷間圧延して、所定の板厚のアルミニウム合金板に仕上げる。冷間圧延は、熱間圧延板が適切な荷重の範囲で製品板の板厚まで圧延されるように、所定の総圧延率となる複数回のパスを設定して行う。なお、パスとは、一対のワークロール間を板が1回通板して圧延されることをいう。
冷間圧延の総圧延率は、例えば80%以上90%以下としてよい。冷間圧延の総圧延率が80%以上であると、缶胴用アルミニウム合金板の強度が充分に得られ、DI成形及びベーキング後の缶胴の耐圧強度が充分に得られる。一方、総圧延率が90%以下であると、アルミニウム合金板の強度が過大となることが抑制され、成形性の低下が抑制される。冷間圧延の総圧延率の下限は、好ましくは82%以上であってよい。また、冷間圧延後の板厚は例えば0.2mm以上0.4mm以下であってよい。
缶胴用アルミニウム合金板の製造方法においては、冷間圧延後、必要に応じて仕上げ焼鈍を施してもよいが、仕上げ焼鈍を施さないほうが好ましい。なお、以上の缶胴用アルミニウム合金板の製造方法においては、第3工程より後、かつ、第4工程が終了するより前には、缶胴の塗装焼付け処理の到達温度を超える中間焼鈍を行わないものとする。
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(缶胴用アルミニウム合金板の作製)
表1に示す組成からなるアルミニウム合金(No.1からNo.5)について、前記第1工程から第3工程として示した方法半連続鋳造、均質化処理、面削、熱間圧延を行った。熱間圧延終了温度は330℃以上375℃以下とした。そして、得られた熱間圧延板を、中間焼鈍を施すこと無く、総圧延率87%で冷間圧延して厚み0.270mmの缶胴用アルミニウム合金板を得た。なお、No.1からNo.3が実施例に相当し、No.4及びNo.5は比較例に相当する。
(ベーキング後耐力)
表1の各条件で作製した缶胴用アルミニウム合金板について、200℃で20分のベーキングを施した後、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS 5号引張試験片を作製した。その後、JIS Z2241に準じて引張試験を行い、0.2%耐力を求め、ベーキング後耐力(MPa)とした。
(缶底硬度(推定値))
ベーキング後の0.2%耐力範囲である275MPa以上310MPa以下が、缶底のビッカース硬さ(HV)97以上113以下に相当することから、直線近似により、ベーキング後の0.2%耐力(ABYS)から缶底硬度としてビッカース硬さ(HV)の推定値を算出した。用いた近似式を以下に示す。
HV=ABYS×0.457-28.7
(Cu固溶量)
表1の各条件で作製した缶胴用アルミニウム合金板について、200℃で20分のベーキングを施した後、熱フェノール法にて定量分析を行うことによりCu固溶量を測定した。即ち、熱フェノールによる残渣抽出法によって残渣抽出溶液を得て、その溶液中の元素量をICP発光分析法によって測定して、Cu固溶量(質量%)を測定した。
(缶壁強度と缶周方向伸び)
表1の各条件で作製した缶胴用アルミニウム合金板を用い、一般的に用いられる缶胴成形装置(ボディメーカ)により元板厚から缶壁厚への加工率が65%となるようDI缶を作製し、実際の加工率は62%以上65%以下であった。この後、200℃で20分のベーキングを行った。
作製したDI缶の缶壁より、冷間圧延板の圧延方向と缶軸方向とが平行となる位置を中心としてJIS 5号試験片の寸法を1/2に縮小した引張試験片を引張方向が缶周方向となるよう採取した。採取した引張試験片に対して引張試験を実施して、0.2%耐力と破断までの伸びを測定し、それぞれ缶壁0°位置の周方向耐力(0.2%耐力(MPa))と缶壁0°位置の周方向伸び(伸び(%))とした。
Figure 0007621925000001
No.1からNo.3は所定の特性を満たしており、缶体強度およびフランジ成形性に優れると考えられる。No.4は熱間圧延終了温度が低いため、Cu固溶量が少なく、ベーキング後耐力が所定の範囲を下回っているため缶体強度が不足し、また缶壁0°位置周方向伸びが所定の範囲を下回っているためフランジ成形性に劣ると考えられる。No.5はベーキング後耐力が所定の範囲にあるため缶体強度は確保できるが、Cu量が所定の範囲を下回っているためCu固溶量が少なく、缶壁0°位置周方向伸びが所定の範囲を下回っているためフランジ成形性に劣ると考えられる

Claims (3)

  1. Si:0.1質量%以上0.6質量%以下、Fe:0.2質量%以上0.8質量%以下、Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.3質量%以下、Mg:1.2質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.01質量%以上0.05質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、
    200℃、20分ベーキング後のアルミニウム合金板におけるCu固溶量が0.22質量%以上0.50質量%以下であり、
    200℃、20分ベーキング後の0.2%耐力が275MPa以上310MPa以下であり、
    元板厚から缶壁への加工率65%でDI成形し、200℃、20分ベーキングした後の缶壁0°位置の周方向耐力が295MPa以上350MPa以下、かつ周方向伸びが4.0%以上である缶胴用アルミニウム合金板。
  2. Znを含み、Zn:0.3質量%以下である請求項1に記載の缶胴用アルミニウム合金板。
  3. 請求項1または2に記載の缶胴用アルミニウム合金板の製造方法であって、
    鋳造工程と、均質化熱処理工程と、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、を含み、これらの工程をこの順に行うものであり、
    前記熱間圧延工程は、熱間圧延開始温度が450℃以上600℃以下であり、熱間圧延終了温度が340℃以上450℃以下であり、
    前記冷間圧延工程は、総圧延率が80%以上90%以下である缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
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