JP7626371B2 - 球状黒鉛鋳鉄の金型鋳造品 - Google Patents
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Description
従来の球状化黒鉛鋳鉄の一般的な金属組織を図3に示す。図3に示すように、従来の球状化黒鉛鋳鉄は400個/mm2の球状黒鉛を有するのが一般的である。
また、球状黒鉛鋳鉄につき、以下に記載の特許文献・非特許文献に記載されているような試みもなされている。
特許文献4(特開2000-45011号公報)では、Cを3.10~3.90%、Siを2.5~4.00%、Mnを0.45%以下、Pを0.05%以下、Sを0.008%以下、Cuを0.5%以下、Moを0.3%以下、Mgを0.05%以下、Bi+Sb+ Tiを0.1%以下含有し、金型鋳造法によって鋳造して鋳造物中に超微細黒鉛組織を有するようにした球状黒鉛鋳鉄の鋳造方法が開示され、これにより、黒鉛粒数がほぼ1900個/mm2の超微細黒鉛組織を有するとともに、チル組織の発生が防止されするようにした球状黒鉛鋳鉄鋳物が提供されている。
ただ、この分類では必ずしも当てはまらない場合があるため、非特許文献2では、窒素をフリー窒素とそれ以外の窒素とに分類し、フリー窒素量の制御によりチルの長さを低減する試みがなされている。ここで、フリー窒素量は、全窒素量から介在物となっている介在物窒素量を差し引いた窒素量である。なお、ここで、介在物窒素量は、JIS G 1228(蒸留-中和滴定法)により測定されている。
また、上記製造方法を用いて製造した球状黒鉛鋳鉄の組織内における球状黒鉛の個数は少ない。そのため、強度、伸びなどの機械的特性が必ずしも所望するものではない。
また、特許文献3の技術においては酸化物と思われる白い粉の発生が認められ伸び特性に欠ける。
非特許文献2では、チル長さはフリー窒素の量に影響されることから、フリー窒素の除去により、チル長の低減を図っている。しかし、非特許文献2は、冷やし金を含むとは言え金型鋳造ではないにもかかわらずチルは発生している。すなわち、生型に比べてよりチルが発生しやすい金型にこの技術を適用すれば、よりチル長が長いチルが発生することを示唆している。また、組織内における球状黒鉛の個数、粒径については触れられていない。
特許文献3記載の球状黒鉛鋳鉄では、球状黒鉛の個数は2,000個/mm2以上を達成している。しかし、この技術は金型鋳造品の技術ではない。すなわち、金型鋳造品であって球状黒鉛の個数が2,000個/mm2以上のものは提供されていない。
特許文献4では、BiとSbを必須としている。
非特許文献3では、金型鋳造品の中で、表面、中心ともにチルの無い品物は、ブレーキキャリパーG(7.5kg、肉厚43mm)のみであり、モジュラスM(cm)(M=V/S,Vは体積、Sは表面積)が2を超えるものに限られている。
請求項2に係る発明は、Mが0.25cmから2.0cmである請求項1記載の球状黒鉛鋳鉄の金型鋳造品である。M=V/S(Vは製品体積(cm3)、Sは製品表面積(cm2 )
溶解行程においては、球状黒鉛鋳鉄の元湯原料を溶解する。
元湯原料としては、例えば、JISG5502に規定する原料を用いればよい。他の鋳鉄でも適用可能である。また、必要に応じて、他の元素を添加してもよい。また、組成範囲を適宜変えてもよい。
JISG5502に規定する例としてFCD400-15、FCD450-10、FCD500-7、FCD600-3、FCD700-2、FCD800-2、FCD400-15、FCD450-10、FCD500-7などがあげられる。
また、CE(炭素当量)を適宜、例えば、3.9~4.6に制御してもよい。
昇温は、元湯内から酸素の除去が止まる温度T0に達するまで行う。その温度T0に達した時点で昇温を停止し、T0において所定時間保温する。保温を続けると、ルツボ側面から気泡の発生が認められるためその時点で保温を停止する。通常、保温は2~10分の間で行われる。
酸素を除去する工程の後に、窒素の除去を行う。
非特許文献2では、フリー窒素の制御を行っている。ただ、非特許文献2は生型を対象としており、金型にそのままでは適用できず、金型に非特許文献2に記載のフリー窒素の制御を行っても球状黒鉛の個数の増加は必ずしも認められない。
金型の場合は、融解時発生窒素量を基準に窒素の制御を行うと、球状黒鉛の個数の増加を制御できることがわかった。
融解時発生窒素量は、鋳造品を溶解した際の融解時の窒素ガス量である。鋳鉄が固体から液体になった際に発生する窒素である。最終鋳造品で調べればよい。
具体的に次の手順で測定する。酸化膜除去のためFUJI STAR500(三共理化学)サンドペーパーにて表面の金属光沢がなくなるまで酸化膜を取り除いた後、マイクロカッター又は鉄筋カッターで切断し0.5-1.0gの試料とした。せん断した試料は油分除去のためアセトンで洗浄しドライヤーで数秒乾燥または真空乾燥した後分析を実施する。
分析は装置に電源を入れHeガスを送入し、システムチェックとリークチェックを行い異常が無いのを確認する。安定化した後、分析を開始する。分析するにあたっては、捨て分析、ブランク測定を行い、ゼロ点補正を行う。
ブランク分析は、初めに坩堝をセットし、助燃材(黒鉛パウダー)を約0.4g前後添加する。助燃材は合金中の窒素抽出率を向上させる目的で添加する。Heを流入しながらアウトガスのパージを行い、試料室内をHeガスで置換する。次いで予備加熱により黒鉛坩堝から発生する酸素、窒素を取り除くため分析温度と同条件以上の温度(例えば2163℃)で15秒加熱保持し坩堝から発生するガスを除去する。その後昇温条件で分析を行い得られる数値をブランクとしゼロ点ベースとなるように補正する。
検量線作成標準試料としてLECO製114-001-5(窒素8±2ppm、酸素115±19ppm)、502-873(窒素47±5ppm 酸素34±5ppm)、502-869(窒素414±8ppm 酸素36±4ppm)、502-416(窒素782±14ppm 酸素33±3ppm)を用いて各3回測定し得られた数値から検量線を作成する。
昇温分析では低融点物質から徐々に溶解していき、各温度毎に溶融した物質中に含まれる窒素が抽出され波形ピークが得られる。
波形ピークの総面積(ピーク強度値の総和)と分析によって得られる窒素量から単位面積当たりの窒素量を算出し、1250-1350℃付近の昇温初期に発生する窒素を数値化する。
以上の分析においても、鋳鉄が固体から液体になった際に発生する窒素の部分に着目すれば融解時発生窒素量も求めることができる。
冷却は、式1におけるT(℃)まで行うことが好ましい。T(℃)より低い温度まで冷却を行うと、逆に酸素の取り込みが始まってしまう。窒素、酸素の両方を最小とするためにT〈℃〉まで冷却することが好ましい。実務上の観点を考慮すると(T-15℃)±20(℃)まで冷却することが好ましい。
式(1) T=Tk-273(℃)
log([Si]/[C]2)=-27,486/Tk+15.47
式1におけるT(℃)まで冷却した時点で、球状化処理を行う。
ここで、球状化処理はMg添加により行うことが一般的である。他の方法(例えば、Ceを含む処理剤による球状化処理)によってもよい。
ただ、Ceに比べて、Mgの場合は、微細化の程度及び単位当たりの球状化炭素の数は圧倒的に優れている。
前記Mg含有処理剤は、Fe-Si-Mgが好ましい。特に、Fe:Si:Mg=50:50:(1~10)(質量比)の処理剤を用いることが好ましい。Mg比が1未満では、十分な球状化を行うことができない。また、10を超えると、泡立ちが生じてしまいガスの巻き込みを起こしてしまう。かかる観点から1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
酸素含有量が20ppm(質量)以下において前記球状化処理を行うことが好ましい。20ppm以下とすることにより微細な球状化黒鉛が得られる。
球状化処理を行った後に直ちに接種を行う。接種は、溶湯に例えば、Fe-Siを添加することにより行う。例えば、Fe-75Si(質量比)が好適に用いられる。
接種剤Fe-Si添加後鋳込みを行う。接種剤が拡散撹拌しない状態で鋳込みを行うことが好ましい。設備上の要因などを考慮して、例えば、10分以下、5分以下、1分以下、5秒以下と短時間化をはかることが好ましい。
ここで、Tp=1350-60M(℃)」
M=V/S
Vは製品体積(cm3)、Sは製品表面積(cm2)
Td=470-520M(℃)
M=V/S
Vは製品体積(cm3)、Sは製品表面積(cm2)
金型温度は、製品の体積に応じて制御を行うことが好ましい。金型温度を制御することにより球状化黒鉛をより微細かつ均一に形成することができる。
ただ、条件によっては湯周り不良を生ずるおそれがあるため、金型の最低温度は100℃とすることが好ましい。
接種処理は、Fe-Siを添加することにより行うことが好ましい。
Fe-Si添加後可及的速やかに行うことが好ましい。接種後短時間であるほどより微細でかつ単位面積当たりの球状化黒鉛が多くなる。短時間であるほどFe-Siの溶湯中への拡散が遅くなり、それに伴い球状化黒鉛の密度が高くなる。
装置などにも依存するが、例えば、10分以内に前記鋳込みを行うが好ましく、5分以内に行うことがより好ましく、30秒以内、5秒以内と、短くするほど好ましい。に行うことがさらに好ましい。Fe-Siが溶解後拡散前の状態で鋳込みを行うと、均一に溶解した場合よりも球状化黒鉛の個数は飛躍的に増加する。かかる状態をさらに促進するために撹拌を行わずに鋳込みを行うことが好ましい。
金型には、断熱性の塗型を塗布することが好ましい。特に、断熱性塗型が好ましく熱伝導率:0.42w/(m・K)以下が特に好ましい。具体的に断熱性の塗型を厚み0.4mm以上に塗布することが好ましい。
次の組成を有する原料を用いた。(質量%)
C:3.66、Si:2.58、Mn:0.09、P:0.022、S:0.006、残Fe
Tk=1698(K)
T=Tk-273=1425(℃)
昇温をさらに続けたところ、1510℃を超えた温度において、炉の耐熱材からの酸素の発生が認められた。そこで、1510℃において昇温を停止し、1510℃に5分間保温を行った(ここではスーパーヒートと称する。)。この期間は酸素が元湯から除去される期間である。
すなわち、スーパーヒートの後T℃まで直線的に徐冷するのではなく、一旦直線より速く冷却し、次いで、温度を上げた後に直線的に冷却した。かかる、徐冷を行うことにより、溶湯への大気成分の巻き込みを直線的に徐冷を行う場合よりも大きく低減させることができた。直線的に冷却しようとすると加温が必要となり、加温時に撹拌を行うことにより大気の巻き込みが生じるためと考えられる。スーパーヒート後は1460℃までは大気の巻き込みが生じないように自然冷却を行うことが好ましい。これにより、窒素の外部からの混入を減らすことができ、窒素の量、ひいては融解時発生窒素量をより正確に制御可能となり、低減させることができる。
溶湯温度の低下に伴い、溶湯への窒素の溶解度が減少するため、窒素が生じる。徐冷により窒素の溶湯への飽和量は低下し、不飽和窒素が溶湯から放出された。Tの温度まで冷却した時点で、溶湯から一部を取り出して酸素の含有量を分析したところ20ppm以下であった。
また、金型には、断熱性塗型0.4mm塗布した。塗型の熱伝導率は0.42w/(m・K)であった。
鋳込み温度Tpは、
M=V/S=0.34
Tp=1350-60M=1320℃
金型温度Tdは、
Td=470-520M=293.2(℃)
製品の組成は次の通りであった。(質量%)
C :3.61、Si:3.11、Mn:0.10、P:0.024、S:0.008、
Mg:0.018であった。
球状黒鉛は、非常に微細であり、均一に分布していた。球状化黒鉛の個数を数えたところ3222個/mm2であった。
本例では、融解時発生窒素量を変化させ、融解時発生窒素量とチルの発生有無との関係
を調べた。
なお、実験は、実施例1と同様に行った。また、いずれの場合も金型表面に0.4mm
厚の断熱性の塗型を形成した。結果を以下に示す。
融解時発生窒素量 T 鋳込温度 チルの有無
(ppm) (℃)
1.05 1415 1303 有
1.15 1439 1436 有
0.89 1430 1316 無
0.93 1429 1390 有
0.22 1432 1310 無
0.63 1432 1315 無
0.37 1430 1312 無
上記結果に示す通り、融解時発生窒素量は0.9ppmを臨界値とし、それ以下に制御
した場合にはチルの発生が無かった。
なお、チルの発生が無い場合は、チルの発生が有る場合よりも球状黒鉛の個数ははるか
に多かった。
(比較例)
本例では、原料溶解後、1510℃まで昇温後、砂型に鋳込みを行った。すなわち、本例では砂型を用いた。他の点は実施例1と同様とした。
その結果を図2(b)に示す。
本例では1005個/mm2であった。
本例では、塗型を変えた実験を行った。
次の3種類の塗型につき実験を行った。他の条件は実施例1と同様である。
A 断熱性塗型(厚み0.4mm)熱伝導率:0.42W(m・K)
B 断熱性塗型(厚み0.7mm)熱伝導率:0.2W/(m・K)
C 断熱性塗型(厚み0.2mm)熱伝導率:0.85W/(m・K)
D カーボンブラック 熱伝導率:5.8W/(m・K)
Aは実施例1と同じである。
断熱性塗型(A-C)の場合は、いずれもチルの発生は認められなかった。ただ、厚みが0.2mmの場合は、球状黒鉛の数は、0.4mmの場合よりも少なく、かつ、粒径が大きかった。0.7mmの場合は、0.4mmとほぼ同様であった。
また、カーボンブラックの場合は、チルの発生は認められなかったが、0.2mm厚の断熱性塗型の場合よりもさらに球状黒鉛の数は少なかった。
(実施例4)
本例では、金型温度を、25℃~300℃の範囲で変化させた。
試験は、25℃、178℃、223℃、286℃、300℃の5点で行った。
なお、塗型は、断熱性の塗型を0.4mm塗布した。
他の点は実施例1と同様とした。
25℃の場合はチルの発生が認められた。他の温度についてはチルの発生は認められなかった。286℃の場合が一番粒径は小さかった。
(実施例5)
本例では、モジュラス(M)を0.25~2.0(cm)の範囲で変化させて金型鋳造品を製造した。
製造条件は、実施例1と同様である。
製造したそれぞれの金型鋳造品につき、球状黒鉛の個数を測定した。
その結果を、生型の場合とともに図3に示す。
なお、いずれの製品についてもチルの発生は認められなかった。
図3に示すように、モジュラス(M)が小さくとも1500個/mm2以上の微細な球状黒鉛を有する組織であった。
本例では、ナックルを試作し機械的特性を評価した。
なお、本例では、湯口にフィルターを設置して、異物を極力除去した。ただし、僅かに異物残留はしていた。
試験結果を、従来例とともに図4に示す。
ナックル試作品の機械的特性の評価としては、球状黒鉛鋳鉄の材質であるにもかかわらず鋳鋼品の機械的特性を示す結果であった。例えば、ナックル試作品の一つの引張強さ525N/cm2品は伸びが18.8%であり、一般の球状黒鉛鋳鉄では同等の伸びで比較すると引張強度が380N/cm2前後であることから、1.5倍の引張強度となり、鋳鋼に匹敵する機械的特性が得られた。
Claims (2)
- 融解時発生窒素量が0.9ppm(質量)以下であり、アズキャストの状態で、球状黒鉛の数が3000個/mm 2 以上でありチルを含まない球状黒鉛鋳鉄の金型鋳造品。
- Mが0.25cmから2.0cmである請求項1記載の球状黒鉛鋳鉄の金型鋳造品。M=V/S(Vは製品体積(cm3)、Sは製品表面積(cm2)
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