JP7630131B2 - 細胞機能の評価方法及び細胞解析装置 - Google Patents

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Description

本発明は細胞の機能を評価する方法及びそのための装置に関し、さらに詳しくは、幹細胞の機能を非侵襲で評価する方法及び装置に関する。
近年、再生医療・細胞治療の研究や産業化は急速に進展しており、それに伴い、細胞製剤の品質や安全性、有効性が的確に確保されるための評価方法の確立が求められている。細胞製剤は、動物特にヒト由来であることから、細胞の採取組織の由来や幹細胞の種類、製造方法は多種多様である。そのため、細胞製剤の特性に基づいた、柔軟で応用範囲が広く、且つ再現性のある合理的な評価方法の確立が求められている。
従来、細胞の機能を評価する方法としては、細胞に発現する特定の遺伝子やタンパク質の解析、細胞の遊走能や増殖能の解析、細胞が分泌する因子や細胞老化の解析、などがよく知られている。こうした細胞の形質や機能は、細胞製剤の治療効果と相関すると考えられている。但し、評価に使用した細胞をそのまま別の目的に使用する、例えば再生医療等製品として患者に投与する、ということを考えると、細胞に対して侵襲的な又は破壊的な処理を施す必要がある評価方法を利用することはできない。
細胞を非侵襲的に評価する方法としては、細胞を撮影した静止画像や動画から各種の特徴量を抽出し、その特徴量から細胞の状態を評価する方法がある。例えば特許文献1には、細胞画像から得られた様々な特徴量を所定の閾値と比較することで、細胞の状態の良否を判定する細胞評価装置が記載されている。この装置において細胞が「良い状態」とは、目的に応じて例えば、「よく増える状態」、「よく分化する状態」、「未分化細胞が多い状態」、「分化が起きにくい状態」、「細胞を選抜しやすい(クローニングしやすい)状態」などであることが示されている。
一方、細胞画像を非侵襲に評価する別の方法として、培養細胞の上清に含まれる細胞由来の分泌因子を解析することによって、細胞の分化状態などを評価する方法も知られている。例えば特許文献2には、細胞の分化状態を、培養上清に含まれる特定の成分の存在量から評価する方法が開示されている。これによれば、参照細胞と被検細胞とにおける特定成分の存在量を比較することにより、経時的な変化を追うことなく細胞の状態を評価することができる。
特許6448129号公報 特許6332440号公報 国際特許公開第2016/084420号 特許3471556号公報
永石、ほか10名、「アンビリカル・コード・イクストラクツ・インプループ・ダイアベティック・アブノーマリティーズ・イン・ボーン・マロー-デライブド・メゼンカイマル・ステム・セルズ・アンド・インクリーズ・ゼア・セラピュートリック・エフェクツ・オン・ダイアベティック・ネフロパシ(Umbilical cord extracts improve diabetic abnormalities in bone marrow-derived mesenchymal stem cells and increase their therapeutic effects on diabetic nephropathy)」、サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)、2017年、7(1)
しかしながら、既知の細胞非侵襲的な細胞評価方法では、培養中の細胞の状態を定量的に評価することはできるものの、細胞の具体的な機能を評価することはできない。そのため、従来の一般的な細胞機能の評価は、解析の経験や知識を有している担当者が細胞の観察画像や細胞状態の評価結果に基づいて感覚的に判断するというレベルに留まっていた。こうした評価方法では、その評価結果の信頼性や再現性が担当者の経験や知識等に大きく依存する。また、そうした評価が適切であったか否かの検証も難しい。
本発明はこうした従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、幹細胞について得られた画像情報に基づいて、該幹細胞の機能や能力を非侵襲で且つ定量的に評価することができる細胞機能の評価方法及び細胞解析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る細胞機能の評価方法の一態様は、幹細胞である被検細胞の細胞機能を評価する方法であって、
被検細胞を撮影した、該被検細胞の厚さを反映した情報を含む細胞画像を取得する画像取得ステップと、
前記細胞画像から、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する特徴量抽出ステップと、
前記被検細胞の特徴量に基づいて、該被検細胞の細胞機能を評価する評価ステップと、
を有するものである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る細胞解析装置の一態様は、幹細胞である被検細胞の細胞機能を評価する細胞解析装置であって、
被検細胞を撮影した、該被検細胞の厚さを反映した情報を含む細胞画像を取得する画像取得部と、
前記細胞画像から、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する特徴量抽出部と、
前記被検細胞の特徴量に基づいて、該被検細胞の細胞機能を相対的に評価する評価処理部と、
を備えるものである。
ここでいう「細胞機能」とはそのときの細胞の状態そのものではなく、細胞が有する能力や性能、或いは性質などであり、特に、再生医療や細胞治療に利用される場合において又はそれに利用するために培養・増殖する場合において有用な又は逆に不利に作用する機能力、性能、性質などである。具体的には例えば、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの、細胞機能の少なくともいずれか一つを含むものとすることができる。
本発明者らは、様々な実験や解析を繰り返し行うことによって、幹細胞の未分化性の維持、遊走性、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの、各種の細胞機能に関連する遺伝子の発現量の解析結果、或いは、細胞の遊走能の測定結果などと、非侵襲で以て得られる幹細胞の観察画像に基づいて求まる、幹細胞の輪郭部(周縁部)における厚さ方向の勾配や幹細胞の配向性(向きの揃い方)とが高い相関性を有することを見いだした。この知見に基づき、本発明の一態様である細胞機能の評価方法において特徴量抽出ステップでは、幹細胞の観察画像から、その被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配の程度を示す指標値と、被検細胞の配向性の程度を示す指標値とのいずれか一方又は両方を、被検細胞の特徴量として抽出する。そして、評価ステップでは、被検細胞の特徴量である指標値に基づいて、被検細胞の細胞機能を評価する。具体的には例えば、由来が異なる2種類の被検細胞について上記指標値の数値を比較し、いずれの細胞のほうが細胞機能が高いかの判断を下す。また、本発明の一態様である細胞解析装置では、CPU、RAM等を含むコンピュータ上で上記特徴量抽出ステップ及び評価ステップにおける処理が実施されるようにすることができる。
本発明の一態様に係る細胞機能の評価方法及び細胞解析装置によれば、幹細胞について非侵襲及び非破壊的に得られた画像情報に基づいて、該幹細胞の機能を定量的に評価することができる。こうした機能評価を数値を用いて行うことができるので、細胞の解析作業や評価作業の経験や知識が乏しい担当者であっても、的確で信頼性の高い評価を行うことができる。また、感覚に頼った評価にありがちな、人による結果のばらつきを回避するとともに、評価の理由等の検証作業も容易になる。また、細胞機能の評価の作業効率を向上させることもできる。
本発明に係る細胞機能の評価方法を実施するための細胞解析装置の一実施形態の概略構成図。 本実施形態の細胞解析装置を利用して細胞機能の評価を行う際の作業手順及び処理の流れを示すフローチャート。 本実施形態の細胞解析装置における撮影動作及び画像再構成処理を説明するための概念図。 細胞の配向性スコアを算出する処理の概略フローチャート。 細胞の配向性スコアを算出する処理における一部の詳細なフローチャート。 本実施形態の細胞解析装置における微分処理で使用される微分フィルタの一例を示す図。 本実施形態の細胞解析装置における微分処理で使用される微分フィルタの他の例を示す図。 本実施形態の細胞解析装置において作成されるIHM位相像とそれから得られる微分画像の一例を示す図。 本実施形態の細胞解析装置における微分値ヒストグラムからの勾配スコア算出方法の一例の説明図。 本実施形態の細胞解析装置における微分値ヒストグラムからの勾配スコア算出方法の他の例の説明図。 本実施形態の細胞解析装置における微分値ヒストグラムからの勾配スコア算出方法の他の例の説明図。 本実施形態の細胞解析装置における微分値ヒストグラムからの勾配スコア算出方法の他の例の説明図。 本実施形態の細胞解析装置における配向性スコアの算出方法の説明図。 本実施形態の細胞解析装置における2種類のサンプルついての配向性の評価用画像の一例を示す図。 本実施形態の細胞解析装置における2種類のサンプルついての配向性スコアの比較例を示す図。 実験例における臍帯由来間葉系幹細胞の採取部位を説明するための細胞組織の光学顕微鏡観察画像。 一つの検体A由来の4種類の間葉系幹細胞についての、細胞表面抗原の発現の解析結果を示す図。 検体A由来の4種類の間葉系幹細胞についての、各種の細胞機能に関連する遺伝子発現量の定量結果を示す図。 検体A由来の4種類の間葉系幹細胞についての、スクラッチアッセイ法による遊走能の測定結果を示す図。 検体A由来の4種類のサンプルついて、本実施形態の細胞解析装置で算出される配向性スコア及び勾配スコアの比較を示す図。 検体B由来の4種類の間葉系幹細胞についての、細胞表面抗原の発現の解析結果を示す図。 検体B由来の4種類の間葉系幹細胞についての、各種の細胞機能に関連する遺伝子発現量の定量結果を示す図。 検体B由来の4種類の間葉系幹細胞についての、スクラッチアッセイ法による遊走能の測定結果を示す図。 検体B由来の4種類のサンプルついて、本実施形態の細胞解析装置で算出される配向性スコア及び勾配スコアの比較を示す図。 検体C由来の4種類の間葉系幹細胞についての、細胞表面抗原の発現の解析結果を示す図。 検体C由来の4種類の間葉系幹細胞についての、各種の細胞機能に関連する遺伝子発現量の定量結果を示す図。 検体C由来の4種類の間葉系幹細胞についての、スクラッチアッセイ法による遊走能の測定結果を示す図。 検体C由来の4種類のサンプルついて、本実施形態の細胞解析装置で算出される配向性スコア及び勾配スコアの比較を示す図。 検体D由来の4種類の間葉系幹細胞についての、細胞表面抗原の発現の解析結果を示す図。 検体D由来の4種類の間葉系幹細胞についての、各種の細胞機能に関連する遺伝子発現量の定量結果を示す図。 検体D由来の4種類の間葉系幹細胞についての、スクラッチアッセイ法による遊走能の測定結果を示す図。 検体D由来の4種類のサンプルついて、本実施形態の細胞解析装置で算出される配向性スコア及び勾配スコアの比較を示す図。
以下、本発明の一実施形態である細胞機能の評価方法について、添付図面を参照して説明する。
[本実施形態の細胞解析装置の構成]
図1は、本発明に係る細胞機能の評価を実施するための細胞解析装置の一実施形態の概略構成図である。
本実施形態の細胞解析装置は、顕微観察部1と、制御・処理部2と、ユーザインターフェイスである入力部3及び表示部4と、を備える。
本実施形態において、顕微観察部1はインライン型ホログラフィック顕微鏡であり、レーザダイオードなどを含む光源部10とイメージセンサ11とを備え、光源部10とイメージセンサ11との間に、細胞13を含む培養プレート12が配置される。
制御・処理部2は、顕微観察部1の動作を制御するとともに顕微観察部1で取得されたデータを処理するものであって、撮影制御部20と、ホログラムデータ記憶部21と、位相情報算出部22と、画像再構成部23と、再構成画像データ記憶部24と、微分画像作成部25と、勾配スコア算出部26と、配向性スコア算出部27と、細胞機能評価情報出力部28と、を機能ブロックとして備える。
通常、制御・処理部2の実体は、所定のソフトウェア(コンピュータプログラム)がインストールされたパーソナルコンピュータやより性能の高いワークステーション、或いは、そうしたコンピュータと通信回線を介して接続された高性能なコンピュータを含むコンピュータシステムである。即ち、制御・処理部2に含まれる各ブロックの機能は、CPU、RAM、HDDやSDDなどの外部記憶装置等を含むコンピュータ単体又は複数のコンピュータを含むコンピュータシステムに搭載されているソフトウェアを実行することで実施される、該コンピュータ又はコンピュータシステムに記憶されている各種データを用いた処理によって具現化されるものとすることができる。
本実施形態の細胞解析装置では、様々な細胞についての観察及び解析を行うことができるが、ここでは一例として、観察対象が多能性幹細胞の一つである間葉系幹細胞であるものとする。但し、後述するような細胞機能の評価は、間葉系幹細胞に限るものではなく、間葉系幹細胞と同様の又は類似した挙動を示す、それ以外の幹細胞にも適用することができる。
[細胞の撮影及びIHM位相像の取得]
図2は、本実施形態の細胞解析装置を用いた細胞機能の評価作業における作業手順及び処理の流れを示すフローチャートである。また図3は、撮影動作及び画像再構成処理を説明するための概念図である。
図3(a)は本実施形態の細胞解析装置において使用される培養プレート12の略上面図である。この培養プレート12には上面視円形状である6個のウェル12aが形成されており、その各ウェル12a内で細胞が培養される。ここでは、1枚の培養プレート12全体、つまりは6個のウェル12aを含む矩形状の範囲全体が観察対象領域である。顕微観察部1は、光源部10及びイメージセンサ11の組を4組備える。各組の光源部10及びイメージセンサ11はそれぞれ、図3(a)に示すように、培養プレート12全体を4等分した四つの4分割範囲81のホログラムデータの収集を担う。つまり、4組の光源部10及びイメージセンサ11が、培養プレート12全体に亘るホログラムデータの収集を分担する。
一組の光源部10及びイメージセンサ11が1回に撮影可能である範囲は、図3(b)及び(c)に示すように、4分割範囲81の中の1個のウェル12aを含む略正方形状の範囲82をX軸方向に10等分、Y軸方向に12等分して得られる一つの撮像単位83に相当する範囲である。一つの4分割範囲81は15×12=180個の撮像単位83を含む。四つの光源部10と四つのイメージセンサ11はそれぞれ、光源部10及びイメージセンサ11を含むX-Y面内で、4分割範囲81と同じ大きさである矩形の四つの頂点付近にそれぞれ配置されおり、培養プレート12上の異なる四つの撮像単位83についてのホログラムの取得を同時に行う。
ホログラムデータの収集に際し、オペレータはまず、観察対象である細胞13が培養されている培養プレート12を顕微観察部1の所定位置にセットし、該培養プレート12を特定する識別番号や測定日時などの情報を入力部3から入力したうえで測定実行を指示する。この測定指示を受けて撮影制御部20は、顕微観察部1の各部を制御して撮影を実行する(ステップS1)。
即ち、一つの光源部10は、微小角度(例えば10°程度)の広がりを持つコヒーレント光を培養プレート12の所定の領域(一つの撮像単位83)に照射する。培養プレート12上の細胞13を透過したコヒーレント光(物体光15)は、培養プレート12上で細胞13の周囲の領域(通常は培地)を透過した光(参照光14)と干渉しつつイメージセンサ11に到達する。物体光15は細胞13を透過する際に位相が変化した光であり、他方、参照光14は細胞13を透過しないので該細胞13に起因する位相変化を受けない光である。したがって、イメージセンサ11の検出面(像面)上には、細胞13により位相が変化した物体光15と位相が変化していない参照光14との干渉像、つまりホログラムがそれぞれ形成され、このホログラムに対応する2次元的な光強度分布データ(ホログラムデータ)がイメージセンサ11から出力される。
上述したように、四つの光源部10からは略同時に培養プレート12に向けてコヒーレント光が出射され、四つのイメージセンサ11では培養プレート12上の異なる撮像単位83に対応する領域のホログラムデータが取得される。一つの測定位置での測定が終了する毎に、光源部10及びイメージセンサ11は図示しない移動部により、X-Y面内で一つの撮像単位83に相当する距離だけX軸方向及びY軸方向にステップ状に順次移動される。これによって、4分割範囲81に含まれる180個の撮像単位83での測定が実施され、四組の光源部10及びイメージセンサ11全体で培養プレート12全体の測定が実行されることになる。このようにして顕微観察部1の四つのイメージセンサ11で得られたホログラムデータは、測定日時等の属性情報とともに、ホログラムデータ記憶部21に格納される。
上述したような一連の測定(撮影)が終了すると、位相情報算出部22はホログラムデータ記憶部21からホログラムデータを順次読み出し、光波の伝播計算処理(位相回復処理)を行うことで2次元的な各位置における位相情報及び振幅情報を復元する。これら情報の空間分布は撮像単位83毎に求まる。全ての撮像単位83の位相情報及び振幅情報が得られたならば、画像再構成部23は、その位相情報や振幅情報に基づいて、観察対象領域全体の位相像つまりはIHM位相像を形成する(ステップS2)。
即ち、画像再構成部23は撮像単位83毎に算出された位相情報の空間分布に基づいて、各撮像単位83のIHM位相像を再構成する。そして、その狭い範囲のIHM位相像を繋ぎ合わせるタイリング処理(図3(d)参照)を行うことで、観察対象領域つまりは培養プレート12全体についてのIHM位相像を形成する。そのIHM位相像を構成するデータは再構成画像データ記憶部24に保存される。なお、タイリング処理の際には撮像単位83の境界でのIHM位相像が滑らかに繋がるように適宜の補正処理を行うとよい。
上記のような位相情報の算出や画像再構成の際には、特許文献3、4等に開示されている周知のアルゴリズムを用いればよい。一般にIHM位相像では、透明であって光学顕微鏡では見えにくい細胞の輪郭(境界)やその内部の模様が見え易くなる。
なお、ホログラムデータに基づいて、位相情報のほかに、強度情報や、位相情報と強度情報とをマージした擬似位相情報なども併せて算出し、画像再構成部23はこれらに基づく再生像(IHM強度像、IHM擬似位相像)を作成することもできる。
次に、画像再構成部23は、作成されたIHM位相像について細胞が存在しないことが明確である背景領域を除去する処理を実行する(ステップS3)。
背景除去の手法としては様々な方法を採ることができるが、一例としては、テクスチャ解析を用いることができる。テクスチャ解析には大別して構造的テクスチャ解析と統計的テクスチャ解析とがあるが、画像内の局所的な部位の模様やパターンの特徴を抽出するには後者が適当である。統計的テクスチャ解析には、濃度ヒストグラムを用いる濃度ヒストグラム法、差分統計量を用いる濃度レベル差分法、同時生起行列を用いる空間濃度レベル依存法、濃度共起行列を用いる方法など、様々な方法があり、適宜の方法を選択すればよい。なお、背景領域として除去された部分は画素値を0等の固定値にすればよい。
具体的には、IHM位相像全体を複数の細かい小領域に区分し、その小領域毎に所定のテクスチャ解析を実行してテクスチャ特徴量を算出する。その小領域が背景領域のみである場合とその小領域に少なくとも細胞領域の一部が含まれる場合とではテクスチャ特徴量に明確な差異が生じるため、テクスチャ特徴量から背景領域に相当する小領域を見つけて除外すればよい。もちろん、こうした背景除去処理は必須ではなく省略してもよい。
さらに画像再構成部23は、背景除去処理後のIHM位相像に対しガウシアンフィルタ等を用いてノイズ成分を除去する処理を実行する(ステップS4)。このノイズ除去処理も上記背景除去処理と同様に、省略することができる。
以上の処理により、ノイズや背景が除去された、つまりは目的の細胞が良好に観測可能なIHM位相像が得られる。
[IHM位相像に基づく細胞の輪郭部の勾配スコア算出]
そのあと、作成されたIHM位相像に基づいて、細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配の程度を指標化した勾配スコアが算出される。
即ち、微分画像作成部25は、上述したようなノイズ等の除去後のIHM位相像の各画素の信号値(画素値)に対し微分フィルタを適用し、画素毎に微分値を算出する。そして、全ての画素の微分値から構成される微分画像を作成する(ステップS5)。微分フィルタとしては、例えば画像のエッジ検出によく利用されるラプラシアンフィルタを用いることができる。
図6は、上下左右の4近傍の画素を用いた、一般的な3×3画素のラプラシアンフィルタの一例である。また、図7(a)及び(b)に示した、垂直方向のフィルタと水平方向のフィルタとを組み合わせたソーベルフィルタを微分フィルタとして用いてもよい。画素毎に微分値が得られたならば、それを用いてIHM位相像に対応する微分画像を作成する。なお、ソーベルフィルタは後述する細胞の配向性スコアの算出の際にも利用される。
図8は、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(Umbilical Cord derived-Mesenchymal Stem Cells)のIHM位相像とそれから得られる微分画像の一例である。IHM位相像における各画素の信号値は、細胞を通過した光の位相遅れ量を示しており、それは細胞の光学厚さを反映している。したがって、各細胞の輪郭部の厚さ方向の勾配が急峻であるほど、その輪郭部に対応する画素の微分値は大きくなる。図8(b)の微分画像では表示輝度範囲を適当に調整しており、それによって各細胞の輪郭部分が内部側に比べて明瞭に描出されている。
勾配スコア算出部26は、微分画像を構成する全ての画素の微分値に基づいて、横軸が微分値、縦軸が出現数(画素数)である微分値ヒストグラムを作成する(ステップS6)。微分値の増加に対する出現数の変化の状況を視覚的に把握し易くするには、ヒストグラムの横軸をリニア軸、縦軸を対数軸とするとよい。
図9には微分値ヒストグラムの一例を示している。図中のA、Bは、培養条件(具体的には細胞を活性化する賦活剤の付与の有無)が相違する二つのサンプルを示している。図9に示すように、微分値ヒストグラムには、低微分値側(図では左方)のスロープが急峻で、高微分値側(図では右方)のスロープがなだらかである左右非対称のピークが現れる。このピークのピークトップを含む低微分値側の範囲に含まれる画素は、主として細胞ではない背景領域や細胞内で厚さが比較的平坦な部位に存在する画素であると考えられる。一方、高微分値側のなだらかなスロープの範囲に含まれる画素は、主として細胞の輪郭部に存在する画素であると考えられる。したがって、微分値ヒストグラムにおける高微分値側のスロープの傾斜の程度は、細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配の程度を反映している。
即ち、元のIHM位相像に現れている多数の細胞の中で、細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配が急峻である細胞の割合が多いほど、相対的に微分値が高い画素の割合が増えるということができる。そして、微分値が相対的に高い画素の割合が多いほど、微分値ヒストグラムにおけるピークの右側のスロープの傾斜が緩やかになる。図9では、サンプル1のピークのほうがサンプル2のピークに比べてスロープが緩やかであり、細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配が急峻である細胞の割合が多いということができる。そこで、本実施形態の細胞解析装置では、異なる微分値ヒストグラムにおいて上記スロープの傾斜の程度を互いに比較できるような指標値を、勾配スコアとして算出する。
具体的には、勾配スコア算出部26は、まず微分値ヒストグラムに対してばらつきや誤差を軽減するために微分値の変化方向に移動平均をとることでスムージング処理を実行する。微分値ヒストグラムにおいて細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配の差異が顕著に現れる高微分値範囲では、減少するスロープは指数関数で以て近似することができる。上述したように縦軸を対数軸とすると、上記スロープはほぼ直線的になるから、グラフ上で直線近似を行うことで指数関数の近似を行うことができる。そこで、ここでは、所定の高微分値範囲の中で任意の微分値を2個選択し、その2個の微分値の間におけるスロープを、y=a・e-bx(但し、a、bは任意の定数)の指数関数で近似する。即ち、スロープに対し最も近似誤差が小さくなる定数a、bを探索すればよい。このときに求まる指数部の定数bはスロープの勾配の程度を反映しており、それは各細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配の程度の傾向を反映しているから、この指数部の定数bを勾配スコアとすればよい。このときの勾配スコアは細胞の密度の影響を受けないため、異なるサンプル間の比較に都合がよい。
[勾配スコアの算出方法の他の例]
微分値ヒストグラムから勾配スコアを算出する際には、上記方法に限らず、以下のような他の方法によってもよい。
図10~図12は、勾配スコアの算出方法の他の例の説明図である。
図10では、微分値ヒストグラムのピークの半値幅を勾配スコアとしている。ここでいう半値幅とは、ピークのピークトップの出現数の1/2の出現数における微分値の幅であり、例えば図10では、サンプル1のピークに対し半値幅Wa、サンプル2のピークに対して半値幅Wbが求まる。但し、上述したように、ここで意味があるのは高微分値側のスロープのみであるから、ピークトップにおける微分値と、(ピークトップの出現数)×(1/2)を示す水平な線と微分値が高い側のスロープとが交差する点に対応する微分値との差分を半値幅の代わりに用いてもよい。
図11では、微分値ヒストグラム上のピークの減少スロープにおける出現数の減少率を勾配スコアとしている。具体的には、所定の高微分値範囲において、任意のk個(但し、kは2以上の整数)の微分値を選択し、そのk個の微分値に対応する出現数の比率を勾配スコアとして算出する。一般的には図11に示すようにkは2でよく、二つの微分値D1、D2について、サンプル1のピークに対し出現数比Xa[%]、サンプル2のピークに対して出現数比Xb[%]が勾配スコアとして求まる。
図12では、一定の出現数差に対応する微分値の差分を勾配スコアとしている。具体的には、高微分値範囲のスロープに対応する出現数範囲において、任意のL個(但し、Lは2以上の整数)の出現数を選択し、そのL個の出現数に対応する微分値の差分(微分値の幅)を勾配スコアとして算出する。一般的には図12に示すようにLは2でよく、二つの出現数P1、P2について、サンプル1のピークに対し微分値差La、サンプル2のピークに対して微分値差Lbが求まる。なお、出現数の絶対値は細胞密度に依存するため、細胞密度の相違の影響を無くすには、例えば出現数を規格化するような処理を行うとよい。
また、本発明者の実験的な検討によれば、微分値ヒストグラムにおいて、細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配の差異が顕著に現れる高微分値範囲の中でも、その微分値が特に高い範囲では、出現数は細胞の数又はコンフルエンシ(画像面積全体に占める細胞の面積の割合)に比例することが分かっている。そのため、そうした高微分値範囲における出現数を細胞数又はコンフルエンシにより正規化すると、それらに依存しない勾配スコアとなる。
そこで、本装置による測定方法とは別の、つまりは独立した計測方法によって、観観察対象である細胞画像(IHM位相像)におけるコンフルエンシ又は細胞数を求める。計測方法としては例えば、血球計算盤によるセルカウント等を利用することができる。そして、微分値ヒストグラムにおいて高微分値範囲の中の任意の微分値における出現数を求め、この出現数を上記のように求めた細胞数又はコンフルエンシで除することにより、正規化した出現数を勾配スコアとして算出するようにしてもよい。
[IHM位相像に基づく細胞の配向性スコア算出]
次いで、IHM位相像において観測される多数の細胞の向きの揃い具合を指標化した配向性スコアが算出される。図3及び図4はIHM位相像から配向性スコアを算出する際の手順及び処理を示すフローチャート、図13は配向性スコアの算出方法の説明図である。
配向性スコア算出部27は、ステップS4でノイズ除去等がなされたIHM位相像を読み込み(ステップS21)、この画像を図13(a)に示すように、複数の矩形状の小領域に分割する(ステップS22)。図13(a)では、分割数は5×7=35であるが、これは一例であり、小領域の大きさ及び数は、位相像における細胞の大きさ、細胞密度などに応じて適宜に設定するとよい。
次に、配向性スコア算出部27は、分割により得られた小領域毎に、その小領域に含まれる細胞の配向の強さと向きとを算出する(ステップS23)。一つの小領域における処理を、図5により具体的に説明する。
配向性スコア算出部27はまず小領域画像を読み込み(ステップS31)、ノイズ除去処理を行う(ステップS32)。これはステップS4と同様の処理でよく、省略することもできる。そのあと、各画素の信号値(画素値)に対し微分フィルタ等を用いた輪郭検出処理を実行する。ここでは、上述した、図7(a)に示した垂直方向のソーベルフィルタを用いた垂直方向の輪郭検出と、図7(b)に示した水平方向のソーベルフィルタを用いた水平方向の輪郭検出とを画素毎に行い(ステップS33、S34)、その画素における輝度の変化の強さと向きとを算出する(ステップS35、S36)。
具体的には、或る一つの画素の信号値org(x, y)に対する垂直方向のソーベルフィルタによる処理後の信号値をsobelH(x, y)、水平方向のソーベルフィルタによる処理後の信号値をsobelV(x, y)としたとき、輝度変化の強さStrength(x, y)は次の(1)式で、輝度変化の向きAngle(x, y)は次の(2)式で算出することができる。
Strength(x, y)=√(sobelH(x, y)2+sobelV(x, y)2) …(1)
Angle(x, y)=tan-1(sobelH(x, y)/sobelV(x, y)) …(2)
小領域に含まれる全ての画素についてステップS33~S36の処理を実行したならば、輝度変化の向きの情報を細胞の向きの情報に変換するために、まず輝度変化の角度の分布を算出する(ステップS37)。そのためには、まず(2)式で求まる連続的な数値であるAngle(x, y)を、四捨五入等して例えば1degree毎などの一定の角度間隔の数値に変換する。そして、その変換後の角度の分布、つまりはヒストグラムを求める。その際には、角度毎に、輝度変化の強さStrength(x, y)が所定の閾値以上である画素の数を計数してその計数値を角度分布の頻度とすればよい。また、角度毎に、輝度変化の向きがその角度である全ての画素における輝度変化の強さStrength(x, y)の総和を計算し、その総和の値を角度分布における頻度として用いてもよい。
次いで、ステップS37で得られた角度分布の角度を90°回転させる(ステップS38)。これは、輝度の変化の向きと細胞の向きとは直交しているからである。なお、ここで想定している間葉系幹細胞の形状は細長い楕円状又は針状であり、その長手方向が細胞の向きである。もちろん、ステップS37とS38とはその順序を入れ替えることができる。そのあと、数値評価が可能であるように角度分布の頻度を正規化し(ステップS39)、さらに角度分布の移動平均を計算することでその分布の精度を高める(ステップS40)。
図13(d)には、細胞の向きが揃っている場合(13(b)参照)と不揃いである場合(13(c)参照)とのそれぞれの角度分布の一例を示している。この図のように、細胞の向きが全体的に揃っている場合には特定の角度における頻度が高くなるため、細胞の向きが揃っている場合と不揃いである場合とで頻度に差異が生じる。そこで、配向性スコア算出部27は、移動平均を行ったあとの角度分布において最も頻度が高い角度つまり最頻角を求め、これをその小領域における細胞の配向の向きと定める(ステップS41)。また、その最頻角に対応する頻度を、その小領域における細胞の配向の強さと定める(ステップS42)。
小領域毎に上記処理を実施することで、小領域毎に細胞の配向の向き及び強さを示す数値を求めることができる。配向性スコア算出部27は、位相像全体での細胞の配向性の傾向を示す配向性スコアとして、全ての小領域における配向性の強さの平均値を算出するとともに、配向性の強さの最大値を配向性スコアとして求める。また、ユーザが配向性を感覚的に評価するための評価用画像を作成する(ステップS24)。具体的には、小領域毎に、配向性の向きをベクトルの向き、配向性の強さをそのベクトルの長さ(スカラー量)とした2次元ベクトルで配向性スコアを可視化する。そして、IHM位相像の上に、その2次元ベクトルを重畳して表示した画像を、評価用画像として作成する。
図14は、細胞の向きが揃っている場合と不揃いである場合との2種類のサンプルついての配向性の評価用画像の一例を示す図である。IHM位相像上に小領域の区分を示し、さらに各小領域において配向性の強さと方向を示す直線を重ねて表示している。サンプル1よりもサンプル2のほうが局所的に見たときに細胞の向きが揃っている。この画像上の特徴の差異は各小領域に描かれている線の長さの違いに現れている。したがって、この評価用画像を表示部4に表示してユーザに提示することで、ユーザは感覚的に細胞の向きの揃い具合を把握することができる。
図15は、図14に示した2種類のサンプルについての配向性スコアの比較例を示す図である。上述した画像上の特徴の差異は、平均値、最大値の両方の配向性スコアに明確に現れている。即ち、配向性スコアによれば、細胞の向きの揃い具合を数値的に比較したり評価したりすることができる。
[細胞機能の評価]
細胞機能評価情報出力部28は、上述したように算出された勾配スコアや配向性スコア、さらには配向性に関連する評価用画像を所定の形式で表示部4に表示する。ユーザはこれらの表示に基づいて、細胞機能を評価する。ここで評価することが可能な細胞機能は、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能、という5種類を含むものとすることができる。また、細胞の肥大化や平坦化に関連する細胞骨格(アクチンフィラメント)の状態も併せて評価することができる。上記スコアを用いてこれら細胞の機能やその状態の評価が可能であることを、発明者らが行った実験結果に基づいて説明する。
この実験例における評価対象は、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(以下、UC-MSCと略すことがある)である。対象細胞の採取方法及び細胞機能の同定方法は以下の通りである。
図16は、細胞の採取部位の組織の光学顕微鏡観察画像である。これは臍帯の断面のヘマトキシリン・エオジン染色像である。
以下の説明では、臍帯の羊膜(Amniotic membrane)側の細切片から採取された細胞をAm-MSC、臍帯動脈・臍帯静脈近傍の間質組織(Wharton's jelly膠質)から採取された細胞をWj-MSCと表記するものとする。
臍帯の上記各部から採取された組織をそれぞれ3~5mm角程度の大きさに切断し、細胞培養用シャーレ中に載置した。このシャーレを37℃、5%CO2雰囲気のインキュベータ内に30分静置し、組織片が培養皿の底に付着した時点で、ウシ胎児血清(FBS)を含む基本培地を添加して培養を行った。組織片から遊出して培養皿に付着する細胞を回収し、以降、細胞の継代及び培養を行った。
継代を5回繰り返した培養細胞に対し、細胞機能に明らかな差異を生じさせるため、細胞賦活剤(Wharton's jelly由来抽出物、以下、WJと称すことがある)を添加したものと添加しないものとに分けて培養を行った。Am-MSCにWJを添加した細胞をAm-MSC+WJ、Wj-MSCにWJを添加した細胞をWj-MSC+WJと表記する。Am-MSC及びWj-MSCが参照細胞であり、Am-MSC+WJ及びWj-MSC+WJが被検細胞である。
(1)細胞表面抗原の発現
互いに異なる四つの検体(A、B、C、D)に由来する、上記Am-MSC、Wj-MSC、Am-MSC+WJ、及びWj-MSC+WJという4種類の細胞を含むサンプルについて、まず、既存の手法による細胞機能等の確認を実施した。
WJ添加又は非添加下で48時間培養した際の、UC-MSCの表面抗原の発現をフローサイトメトリで解析した。図17に、検体Aについての細胞表面抗原の発現の解析結果を示す。また、図21、図25、及び図29はそれぞれ、検体B、C、及びDについての細胞表面抗原の発現の解析結果である。これら各図面では、WJ無しをWJ-、WJ有りをWJ+で示している。また、CD(Cluster of Differentiation)90、CD73、CD105、CD34、CD45は抗原の種類である。
よく知られているように、左右二つに分かれているピークのうちの左方はアイソトープコントロール、右方が目的の抗原であり、抗原が発現しない場合には両ピークは重なる。
これら結果では、賦活剤非添加群であるAm-MSC、Wj-MSCのいずれにおいても、CD90抗原、CD73抗原、及びCD105抗原の3種類を発現する一方、CD34抗原及びCD45抗原を発現しなかった。賦活剤添加群であるAm-MSC+WJ、Wj-MSC+WJのいずれにおいても、同様に、CD90抗原、CD73抗原、及びCD105抗原の3種類を発現する一方、CD34抗原及びCD45抗原を発現しなかった。これらの結果は検体A、B、C、Dに共通してみられた。一般に、ヒト由来の間葉系幹細胞においては、CD90抗原、CD73抗原、及びCD105抗原が陽性、CD34抗原及びCD45抗原が陰性であると報告されている。上記解析結果はこの報告と一致しており、このことから、この実験で用いたUC-MSCはヒト由来の間葉系幹細胞の細胞表面抗原の特徴を有しており、またWJを添加してもその特徴が変化しないことが確認できた。
(2)各種細胞機能関連因子の核酸発現
賦活剤添加又は非添加の条件下で72時間培養を行ったあとのUC-MSCの各種機能に関連する核酸(遺伝子)発現を、リアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いて解析した。ここでは、UC-MSCの未分化関連因子(細胞未分化性の維持を示す因子)としてOCT4(Octamer-binding transcription factor 4)及びNANOGを、遊走能の高さを示す遊走能関連因子としてSDF-1(Stromal derived factor-1)及びCXCR4(C-X-C chemokine receptor type 4)を、組織修復能の高さを示す組織修復関連因子としてTGFβ(Transforming growth factor-β)を、細胞骨格関連因子としてαSMA(α-smooth muscle actin)を、血管新生関連因子としてVEGF(Vascular endothelial growth factor)を、免疫制御関連因子としてPD-L1(Programmed cell Death - Ligand 1)を解析した。このうち、VEGFは血管内皮細胞増殖因子であり、内皮細胞の分裂や遊走、分化などを誘導し、血管新生を促進するものである。また、PD-L1は免疫チェックポイント・タンパクで、免疫細胞に発現するPD-1受容体と協働し、免疫細胞の活性化(例えばT細胞応答)を抑制するものであり、間葉系幹細胞の免疫制御能に寄与する主要因子の一つとされる。また、αSMAは細胞の形状に関連する因子であり、細胞内に過剰に蓄積されることで細胞体が拡大・肥大化し、細胞の遊走能の低下をもたらすこと、或いは、生体内での細胞の標的臓器への分布が阻害されることが知られている(例えば非特許文献1参照)。
図18、図22、図26及び図30はそれぞれ、検体A、B、C、及びDについての細胞機能関連因子の核酸発現の解析結果を示すグラフである。
SDF-1及びTGFβの発現は、検体によってその増加量にばらつきはあるものの、検体A~Dのいずれにおいても賦活剤の添加によって発現の増加が確認できる。また、αSMAの発現は、検体A~Dのいずれにおいても賦活剤の添加によって発現が抑制されている。さらにまた、VEGF、PD-L1の発現は、検体CのWj-MSCを除き、検体A~Dのいずれにおいても、賦活剤の添加によって発現が増加している。検体CのWj-MSCでは、賦活剤の添加によって発現がやや低下しているものの、その低下は軽度である。
上記結果から、賦活剤を添加した細胞では、未分化性、細胞遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能が向上し、一方で、細胞の遊走性や配向性、細胞の肥大化や平坦化に関わるアクチン成分が低下することが示された。また、これら細胞の形態観察の結果から、賦活剤を添加した細胞は細長い紡錘形に変化しており、賦活剤の添加によって細胞の遊走能が向上したことが裏付けられている。
(3)細胞遊走能の計測
一般的なスクラッチアッセイ(Scratched assay)法により、細胞の遊走能の評価を行った。具体的には、各UC-MSCを直径35mmの培養皿で培養したあと、培養細胞に直行する線状の開放創を形成した。各細胞の9箇所の交点の領域について、開放創を形成した直後である0時間と、開放創を形成してから9時間培養したあととで、細胞が存在しない面積(遺残開放面積)を計測した。そして、9時間経過時点における遺残開放面積の、0時間における開放面積に対する比率を算出し、その創傷面積の遺残の程度から、UC-MSCの細胞遊走能を評価した。細胞の遊走能が高いほど開放領域の面積は小さくなる。
図19、図23、図27及び図31はそれぞれ、検体A、B、C、及びDについて、各細胞における9領域の定量値を示す箱ひげ図である。これら図から、検体BのAm-MSCを除き検体A~Dのいずれにおいても、賦活剤の添加群では非添加群と比べて遺残する開放創の面積が小さいことが分かる。また、検体BのAm-MSCでは、賦活剤非添加群と賦活剤添加群とで遺残する開放創の面積はほぼ同等である。こうした結果から、細胞の遊走能は、賦活剤の添加によって概ね向上することが確認できた。
(4)細胞の勾配スコア及び配向性スコア
賦活剤を細胞に添加してから48時間経過後、及び72時間経過後に取得した各条件のIHM位相像において、それぞれ中心部を含む15視野(培養皿の中心を含む半径約20mmの範囲内)を抽出し、上述した処理によって勾配スコア及び配向性スコアを算出した。図20、図24、図28及び図32はそれぞれ、検体A、B、C、及びDについて、4種類のMSCの勾配スコア及び配向性スコアを示す箱ひげ図である。勾配スコアは上述した微分値ヒストグラムにおけるピークのスロープの傾斜を示しているから、勾配スコアの減少は急峻な輪郭を持つ細胞が増加していることを示している。
これら図から、検体A~Dのいずれにおいても、賦活剤非添加群は時間の経過に伴って勾配スコアが上昇している、つまりは、細胞の光学厚みが減少していることが分かる。一方、賦活剤添加群は、時間の経過に伴う勾配スコアの上昇が抑制されていることが分かる。また、賦活剤添加群は賦活剤非添加群に比べると、48時間経過時点で既に勾配スコアが低下し、つまり細胞の光学厚みが増加しており、この傾向は、72経過時点でより顕著となっていることが分かる。即ち、賦活剤を添加したことにより、時間経過に伴う勾配スコアの減少が明確になっている。
また、検体CのAm-MSCを除き、検体A~Dのいずれにおいても、賦活剤添加群は賦活剤非添加群に比べて、48時間経過後若しくは72時間経過後のいずれか一方、又はその両方において、配向性スコアが明確に上昇傾向を示している。検体CのAm-MSCについてのみ、賦活剤の添加による配向性スコアの変化は小さかった。配向性スコアが上昇していることは細胞の向きが揃うように変化していることを示している。
上述したように、賦活剤を添加することによって、細胞の勾配スコアが低下し、光学厚みが増加することが確認できた。細胞の勾配スコアは、検体A~Dのいずれにおいても明らかな低下がみられ、この勾配スコアの低下と、核酸発現において評価した未分化性関連因子、細胞遊走能関連因子、細胞骨格関連因子、組織修復関連因子の変化、及びスクラッチアッセイ法で確認した細胞遊走能、とは連動している。また、血管新生関連因子及び免疫制御関連因子については、全てではないものの、勾配スコアの低下と一部が明確に連動している。
一方、細胞の配向性スコアは、検体Cでは賦活剤を添加しても殆ど変化しなかったものの、そのほかの検体A、B(48時間経過後)、及びDにおいては賦活剤添加群において配向性が高まることが確認できた。検体C(特にWj-MSC)では、配向性のみならず、未分化性関連因子、遊走性関連因子、組織修復関連因子、血管新生関連因子、及び免疫制御関連因子の発現においても、他の検体と比較して変化が少ないか或いは異なる発現傾向を示している。こうしたことから、細胞の配向性が、細胞における未分化性関連因子、遊走性関連因子、組織修復関連因子、血管新生関連因子、及び免疫制御関連因子などの発現に影響を及ぼしている可能性も高いと推測される。
したがって、細胞の機能やその状態が不明であっても、参照細胞と被検細胞とで勾配のスコア及び配向性スコアを比較することによって、参照細胞に対して被検細胞の細胞未分化性、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの細胞の機能が高い状態にあるのか否かを評価することができる。
本実施形態の細胞解析装置において、細胞機能評価情報出力部28は、例えば被検細胞について求まった勾配スコアや配向性スコア、さらには配向性に関連する評価用画像と、参照細胞について求まった勾配スコアや配向性スコア、さらには配向性に関連する評価用画像とを、比較容易な所定の形式で表示部4に表示する(ステップS9)。このとき、IHM位相像のほか、ステップS5で作成された微分画像や、ステップS6で作成された微分値ヒストグラムなどを併せて表示するようにしてもよい。ユーザは、表示された勾配スコア、配向性スコア、或いは、評価用画像などに基づいて、参照細胞に対する被検細胞の細胞未分化性、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの細胞機能を相対的に評価する(ステップS10)。
上述したように細胞機能を評価する工程を終了したならば、例えば次のような工程を実施することができる。
即ち、細胞機能の評価結果に基づいて、細胞をソーティング(分取)する。細胞の分取には、例えば蛍光活性化セルソーティング装置(FACS)を用いることができる。そして、細胞機能の評価結果が異なる細胞を、それぞれ別の培養態様にて再度培養する。この培養を継代することによって、例えば遊走性が低い、組織修復機能が低いなど、移植に適さない細胞が次世代で育ってこない(接着又は増殖しない)ことを確認する。
このように、上述したような細胞機能の評価は、細胞機能の相違による増殖能力等を確認・検証するうえで有用である。
また、表示された画像やスコアに基づいてユーザつまり人間が細胞機能を評価するのではなく、例えば参照細胞と被検細胞とで勾配のスコア及び配向性スコアを比較してその大小関係を判定することにより、参照細胞に対する被検細胞の細胞未分化性、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの細胞機能を相対的に評価する処理を制御・処理部2において、つまりはCPU等を含むコンピュータ上で実施するようにしてもよい。その場合には、最終的な評価結果のみを表示部4に出力してもよいし、スコアや画像とともにその評価結果を出力してもよい。また、こうした判定や評価にはディープラーニング等の各種の機械学習の手法を用いることもできる。
なお、評価される被検細胞と参照細胞とは異なる種類の細胞であっても構わないが、実際の応用では、多くの場合、同種で培養条件が異なる細胞である。また当然、被検細胞と参照細胞とは一つずつである必要はなく、例えば三以上の被検細胞を相互に比較して、細胞機能の相対的な評価を行うようにしてもよい。また、参照細胞についての勾配スコアや配向性スコア、さらには配向性に関連する評価用画像などのデータは、予め評価基準として制御・処理部2に保存され、その保存されている評価基準と、被検細胞に対して顕微観察部1で得られたホログラムデータに基づいて新たに算出された勾配スコアや配向性スコアとが比較可能な形式で表示されるようにしてもよい。
また、図1に示した細胞解析装置では、制御・処理部2において全ての処理を実施しているが、一般に、ホログラムデータに基づく位相情報の計算や画像の再構成処理には膨大な量の計算が必要である。そこで、顕微観察部1に接続されたパーソナルコンピュータを端末装置とし、この端末装置と高性能なコンピュータであるサーバとがインターネットやイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されたコンピュータシステムを利用し、上記のような煩雑な計算や処理は高性能なコンピュータで行い、顕微観察部1の制御や処理後のデータを用いた表示処理などを比較的低性能のパーソナルコンピュータで実行するように役割を分けてもよい。
また上記実施形態の細胞解析装置では、顕微観察部1としてインライン型ホログラフィック顕微鏡を用いていたが、ホログラムが得られる顕微鏡であれば、オフアクシス(軸外し)型、位相シフト型などの他の方式のホログラフィック顕微鏡に置換え可能であることは当然である。
また、上記実施形態の細胞解析装置では、細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配のスコアと、細胞の配向性を示すスコアとの両方を算出してユーザに提示していたが、少なくともいずれか一方を算出してユーザに提示し、ユーザはそれに基づいて細胞機能を評価するものであってもよい。
細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配スコアを算出するには、細胞の観察画像が例えばIHM位相像のように厚さ方向の情報(つまりは3次元形状情報)を含んでいる必要がある。一方、細胞の配向性を示すスコアを算出するには、厚さ方向の情報は必要なく、細胞が明瞭に観察可能である画像が得られればよい。したがって、その場合には、顕微観察部1はホログラフィック顕微鏡である必要はなく、一般的な位相差顕微鏡などでも構わない。
また、上述した細胞機能評価方法は、次のような理由により、間葉系幹細胞以外の他の種類の幹細胞にも適用可能である。
即ち、本発明者らの検討によれば、細胞内のアクチンファイバが減少して平坦で広がった形状から細い紡錘形になるとともに細胞内小器官やタンパクの局在も変化して細胞の厚みが増し(勾配の増加)、その結果、核頂部近くの近傍側面に存在する、ずり応力を感知する機能がより鋭敏に働き、配向性が整い、細胞の遊走能や組織修復能が高まることが明らかとなった。つまり、細胞の遊走性や細胞修復能に関係しているのは、細胞のずり応力を感知する機能であることが予想され、ずり応力を感知する機能を評価する上で、配向性を評価することが重要であることが本発明により明らかになった。こうしたことから、間葉系幹細胞に限らず、ずり応力を感知する機能を有する細胞に対して本発明を適用し、細胞の遊走性や組織修復能等の細胞機能を評価できることは明らかである。
さらにまた、上記実施形態や各種の変形例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲でさらに適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明の一態様に係る細胞機能の評価方法は、幹細胞である被検細胞の細胞機能を評価する方法であって、
被検細胞を撮影した、該被検細胞の厚さを反映した情報を含む細胞画像を取得する画像取得ステップと、
前記細胞画像から、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する特徴量抽出ステップと、
前記被検細胞の特徴量に基づいて、該被検細胞の細胞機能を評価する評価ステップと、
を有するものである。
(第2項)第1項に記載の方法において、前記特徴量抽出ステップでは、さらに、前記細胞画像から、被検細胞の配向性に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出することができる。
(第1項)本発明の一態様に係る細胞解析装置は、幹細胞である被検細胞の細胞機能を評価する細胞解析装置であって、
被検細胞を撮影した、該被検細胞の厚さを反映した情報を含む細胞画像を取得する画像取得部と、
前記細胞画像から、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する特徴量抽出部と、
前記被検細胞の特徴量に基づいて、該被検細胞の細胞機能を相対的に評価する評価処理部と、
を備えるものである。
(第12項)第11項に記載の装置において、前記特徴量抽出部は、さらに、前記細胞画像から、被検細胞の配向性に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出することができる。
(第項)第1項又は第2項に記載の細胞機能の評価方法において、前記細胞機能は、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、及び免疫制御能、のうちの少なくとも一つを含むものとすることができる。
(第1項)第11項又は第12項に記載の細胞解析装置において、前記細胞機能は、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、及び免疫制御能、のうちの少なくとも一つを含むものとすることができる。
第1項又は第2項に記載の細胞機能の評価方法及び第11項又は第12項に記載の細胞解析装置によれば、幹細胞について非侵襲及び非破壊的に得られた画像情報に基づいて、該幹細胞の機能、例えば未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などを定量的に評価することができる。こうした細胞機能の評価を数値を以て行うことができるので、細胞の解析作業や評価作業の経験や知識が乏しい担当者であっても、的確で信頼性の高い評価を行うことができる。また、担当者の感覚に頼った評価にありがちな、人による結果のばらつきを回避することができる。また、評価の理由等を検証する作業も容易になる。さらにまた、細胞機能の評価の作業効率を向上させることもできる。
(第項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の細胞機能の評価方法において、前記細胞画像は位相像であるものとすることができる。
(第1項)第11項~第13項のいずれか1項に記載の細胞解析装置において、前記細胞画像は位相像であるものとすることができる。
位相像では、一般に透明であって光学顕微鏡では見えにくい細胞を比較的明瞭に捉えることができる。したがって、第項に記載の細胞機能の評価方法及び第1項に記載の細胞解析装置によれば、被検細胞の特徴量を精度良く抽出し、その細胞の機能を的確に評価することができる。
(第項)第項に記載の細胞機能の評価方法において、前記画像取得ステップは、
被検細胞にレーザ光を照射し該被検細胞を通過した光と該被検細胞の周囲を通過した光との干渉光を検出してホログラムデータを取得する測定ステップと、
前記ホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、前記被検細胞についての位相像を作成する位相像作成ステップと、
を含むものとすることができる。
(第1項)第1項に記載の細胞解析装置において、前記画像取得部は、
被検細胞にレーザ光を照射し該被検細胞を通過した光と該被検細胞の周囲を通過した光との干渉光を検出してホログラムデータを取得する測定実行部と、
前記ホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、前記被検細胞についての位相像を作成する位相像作成部と、
を含むものとすることができる。
位相像作成ステップにおいてホログラムデータに基づいて作成される位相像は、被検細胞の2次元的な情報だけでなく細胞の厚さ方向の情報も含む。したがって、第項に記載の細胞機能の評価方法及び第1項に記載の細胞解析装置によれば、位相像から被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を精度良く抽出することができ、その情報に基づいて、上述した未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの細胞の機能を的確に評価することができる。
(第項)第1項~第項のいずれか1項に記載の細胞機能の評価方法において、
細胞機能が既知である参照細胞の細胞画像である参照画像を取得する参照画像取得ステップと、
前記参照画像から、前記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量に相当する特徴量を抽出する参照特徴量抽出ステップと、
をさらに有し、前記評価ステップでは、前記被検細胞に対する特徴量と前記参照細胞に対する特徴量とを比較することにより、該被検細胞の細胞機能を評価するものとすることができる。
(第1項)第1項~第1項のいずれか1項に記載の細胞解析装置において、前記評価処理部は、前記被検細胞に対する特徴量と、予め取得された、細胞機能が既知である参照細胞の細胞画像から抽出された特徴量と、を比較することにより、該被検細胞の細胞機能を相対的に評価するものとすることができる。
ここでいう参照細胞とは必ずしも被検細胞と異なる細胞でなくてもよい。即ち、例えば参照細胞の細胞画像は、被検細胞について過去に取得した細胞画像であってもよい。第項に記載の細胞機能の評価方法及び第1項に記載の細胞解析装置によれば、被検細胞が参照細胞と比較して、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの細胞機能が優れているのか或いは劣っているのかを的確に評価することができる。
(第項)第項又は第項に記載の細胞機能の評価方法において、前記特徴量抽出ステップは、
前記位相像から画素毎に空間的な微分値を求めて微分画像を生成する微分画像生成ステップと、
前記微分画像において被検細胞が含まれる細胞領域から該被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関連した情報を抽出する勾配情報抽出ステップと、
を含むものとすることができる。
(第1項)第1項又は第1項に記載の細胞解析装置において、前記特徴量抽出部は、前記位相像から画素毎に空間的な微分値を求めて微分画像を生成し、該微分画像において被検細胞が含まれる細胞領域から該被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関連した情報を抽出するものとすることができる。
項に記載の細胞機能の評価方法及び第1項に記載の細胞解析装置によれば、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を精度良く抽出することができ、その情報に基づいて、上述した未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、免疫制御能などの細胞の機能を的確に評価することができる。
(第項)第項に記載の細胞機能の評価方法において、
前記特徴量抽出ステップは、
前記微分画像における前記細胞領域に対応する画素数を算出する画素数取得ステップと、
前記位相像から細胞の数又はコンフルエンシを取得する細胞数/コンフルエンシ取得ステップと、
をさらに有し、前記画素数を前記細胞の数又はコンフルエンシで除することにより前記被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関連した情報を求めるものとすることができる。
(第1項)第1項に記載の細胞解析装置において、前記特徴量抽出部は、前記微分画像における前記細胞領域に対応する画素数を算出するとともに、前記位相像から細胞の数又はコンフルエンシを取得し、前記画素数を前記細胞の数又はコンフルエンシで除することにより前記被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関連した情報を求めるものとすることができる。
項に記載の細胞機能の評価方法及び第1項に記載の細胞解析装置によれば、評価対象である被検細胞や比較の基準となる参照細胞の密度が相違している場合であっても、的確に細胞機能の比較評価を行うことができる。
(第項)第2項に記載の細胞機能の評価方法において、前記特徴量抽出ステップは、
前記細胞画像を複数の小領域に分割する画像分割ステップと、
前記小領域毎に、その小領域に含まれる各画素に対し微分フィルタを適用して輝度が変化する方向とその変化の大きさとを算出し、該小領域毎の輝度変化の方向及び大きさから前記被検細胞の配向性に関する情報を求める配向性情報算出ステップと、
を含むものとすることができる。
(第1項)第12項に記載の細胞解析装置において、前記特徴量抽出部は、前記細胞画像を複数の小領域に分割し、該小領域毎に、その小領域に含まれる各画素に対し微分フィルタを適用して輝度が変化する方向とその変化の大きさとを算出し、該小領域毎の輝度変化の方向及び大きさから前記被検細胞の配向性に関する情報を求めるものとすることができる。
項に記載の細胞機能の評価方法及び第1項に記載の細胞解析装置によれば、細胞の配向性、つまり細胞の向きの揃い具合に関する信頼性に足る定量的な情報を求めることができ、それにより、的確な細胞機能の評価を行うことができる。
(第10項)第1項~第項のいずれか1項に記載の細胞機能の評価方法において、前記幹細胞は間葉系幹細胞であるものとすることができる。
(第20項)第1項~第1項のいずれか1項に記載の細胞解析装置において、前記幹細胞は間葉系幹細胞であるものとすることができる。
10項に記載の細胞機能の評価方法及び第20項に記載の細胞解析装置によれば、特に、細胞の機能の評価を的確に行うことができる。
1…顕微観察部
10…光源部
11…イメージセンサ
12…培養プレート
12a…ウェル
13…細胞
14…参照光
15…物体光
2…制御・処理部
20…撮影制御部
21…ホログラムデータ記憶部
22…位相情報算出部
23…画像再構成部
24…再構成画像データ記憶部
25…微分画像作成部
26…勾配スコア算出部
27…配向性スコア算出部
28…細胞機能評価情報出力部
3…入力部
4…表示部

Claims (20)

  1. 幹細胞である被検細胞の細胞機能を評価する方法であって、
    被検細胞を撮影した、該被検細胞の厚さを反映した情報を含む細胞画像を取得する画像取得ステップと、
    前記細胞画像から、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する特徴量抽出ステップと、
    前記被検細胞の特徴量に基づいて、該被検細胞の細胞機能を評価する評価ステップと、
    を有する細胞機能の評価方法。
  2. 前記特徴量抽出ステップでは、さらに、前記細胞画像から、被検細胞の配向性に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する、請求項1に記載の細胞機能の評価方法。
  3. 前記細胞機能は、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、及び免疫制御能、のうちの少なくとも一つを含む、請求項1又は2に記載の細胞機能の評価方法。
  4. 前記細胞画像は位相像である、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞機能の評価方法。
  5. 前記画像取得ステップは、
    被検細胞にレーザ光を照射し該被検細胞を通過した光と該被検細胞の周囲を通過した光との干渉光を検出してホログラムデータを取得する測定ステップと、
    前記ホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、前記被検細胞についての位相像を作成する位相像作成ステップと、
    を含む、請求項に記載の細胞機能の評価方法。
  6. 細胞機能が既知である参照細胞の細胞画像である参照画像を取得する参照画像取得ステップと、
    前記参照画像から、前記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量に相当する特徴量を抽出する参照特徴量抽出ステップと、
    をさらに有し、前記評価ステップでは、前記被検細胞に対する特徴量と前記参照細胞に対する特徴量とを比較することにより、該被検細胞の細胞機能を評価する、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞機能の評価方法。
  7. 前記特徴量抽出ステップは、
    前記位相像から画素毎に空間的な微分値を求めて微分画像を生成する微分画像生成ステップと、
    前記微分画像において被検細胞が含まれる細胞領域から該被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を抽出する勾配情報抽出ステップと、
    を含む、請求項4又は5に記載の細胞機能の評価方法。
  8. 前記特徴量抽出ステップは、
    前記微分画像における前記細胞領域に対応する画素数を算出する画素数取得ステップと、
    前記位相像から細胞の数又はコンフルエンシを取得する細胞数/コンフルエンシ取得ステップと、
    をさらに有し、前記画素数を前記細胞の数又はコンフルエンシで除することにより前記被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を求める、請求項に記載の細胞機能の評価方法。
  9. 前記特徴量抽出ステップは、
    前記細胞画像を複数の小領域に分割する画像分割ステップと、
    前記小領域毎に、その小領域に含まれる各画素に対し微分フィルタを適用して輝度が変化する方向とその変化の大きさとを算出し、該小領域毎の輝度変化の方向及び大きさから前記被検細胞の配向性に関する情報を求める配向性情報算出ステップと、
    を含む、請求項に記載の細胞機能の評価方法。
  10. 前記幹細胞は間葉系幹細胞である、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞機能の評価方法。
  11. 幹細胞である被検細胞の細胞機能を評価する細胞解析装置であって、
    被検細胞を撮影した、該被検細胞の厚さを反映した情報を含む細胞画像を取得する画像取得部と、
    前記細胞画像から、被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する特徴量抽出部と、
    前記被検細胞の特徴量に基づいて、該被検細胞の細胞機能を相対的に評価する評価処理部と、
    を備える細胞解析装置。
  12. 前記特徴量抽出部は、さらに、前記細胞画像から、被検細胞の配向性に関する情報を該被検細胞の特徴量として抽出する、請求項11に記載の細胞解析装置。
  13. 前記細胞機能は、未分化性の維持、遊走能、組織修復能、血管新生能、及び免疫制御能、のうちの少なくとも一つを含む、請求項11又は12に記載の細胞解析装置。
  14. 前記細胞画像は位相像である、請求項11~13のいずれか1項に記載の細胞解析装置。
  15. 前記画像取得部は、
    被検細胞にレーザ光を照射し該被検細胞を通過した光と該被検細胞の周囲を通過した光との干渉光を検出してホログラムデータを取得する測定実行部と、
    前記ホログラムデータに基づく画像再構成処理を行い、前記被検細胞についての位相像を作成する位相像作成部と、
    を含む、請求項14に記載の細胞解析装置。
  16. 前記評価処理部は、前記被検細胞に対する特徴量と、予め取得された、細胞機能が既知である参照細胞の細胞画像から抽出された特徴量と、を比較することにより、該被検細胞の細胞機能を相対的に評価する、請求項11~15のいずれか1項に記載の細胞解析装置。
  17. 前記特徴量抽出部は、前記位相像から画素毎に空間的な微分値を求めて微分画像を生成し、該微分画像において被検細胞が含まれる細胞領域から該被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を抽出する、請求項14又は15に記載の細胞解析装置。
  18. 前記特徴量抽出部は、前記微分画像における前記細胞領域に対応する画素数を算出するとともに、前記位相像から細胞の数又はコンフルエンシを取得し、前記画素数を前記細胞の数又はコンフルエンシで除することにより前記被検細胞の輪郭部における厚さ方向の勾配に関する情報を求める、請求項17に記載の細胞解析装置。
  19. 前記特徴量抽出部は、前記細胞画像を複数の小領域に分割し、該小領域毎に、その小領域に含まれる各画素に対し微分フィルタを適用して輝度が変化する方向とその変化の大きさとを算出し、該小領域毎の輝度変化の方向及び大きさから前記被検細胞の配向性に関する情報を求める、請求項12に記載の細胞解析装置。
  20. 前記幹細胞は間葉系幹細胞である、請求項11~19のいずれか1項に記載の細胞解析装置。
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