以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態に係る点火プラグ10の構成について、図1を参照しながら説明する。尚、図1においては、点火プラグ10を、後述の中心軸CXを含む面で切断した場合の断面が左側部分に示されている。ただし、点火プラグ10を構成する部材のうち中心電極30及び端子金具40については、断面ではなくそれぞれの外観が示されている。
点火プラグ10は、不図示の内燃機関の各気筒に設けられ、当該気筒の燃焼室において燃料への着火を行うための装置である。点火プラグ10は、絶縁碍子20と、中心電極30と、端子金具40と、主体金具50と、接地電極60と、を備えている。
絶縁碍子20は、例えばアルミナ等の絶縁材料により形成された筒状の部材である。絶縁碍子20には軸孔200が形成されている。軸孔200は、絶縁碍子20をその中心軸に沿って貫くように形成された貫通孔である。軸孔200の中心軸は、絶縁碍子20の中心軸と一致している。軸孔200の中心軸のことを、以下では「中心軸CX」とも表記する。絶縁碍子20を、中心軸CXに対し垂直に切断した場合の断面においては、軸孔200の形状は円形となっている。
中心電極30は、軸孔200のうち、中心軸CXに沿った一方側の端部(図1では下方側の端部)となる位置において、絶縁碍子20により保持されている金属製の部材である。中心電極30は棒状の部材であり、その大部分が軸孔200の内側に配置されている。中心電極30の一部は、軸孔200から絶縁碍子20の外側へと突出しており、その突出している部分の先端には放電チップ31が取り付けられている。
端子金具40は、軸孔200のうち、中心軸CXに沿った他方側の端部(図1では上方側の端部)となる位置において、絶縁碍子20により保持されている金属製の部材である。端子金具40は棒状の部材であり、その大部分が軸孔200の内側に配置されている。端子金具40の一部は、軸孔200から絶縁碍子20の外側へと突出している。この突出している部分は、不図示の外部電源から電圧が印加される電極端子となっている。
尚、絶縁碍子20のうち、中心軸CXに沿って中心電極30が取り付けられている方のことを、以下では「先端側」とも称する。また、絶縁碍子20のうち、中心軸CXに沿って端子金具40が取り付けられている方のことを、以下では「後端側」とも称する。
軸孔200のうち、端子金具40と中心電極30との間には、抵抗体71が配置されている。抵抗体71は、端子金具40から中心電極30に至る電路の電気抵抗を調整するために配置された部材である。抵抗体71は、粉末状のガラス及びジルコニアに対し所定量のカーボン粉末を添加した材料、により形成されている。抵抗体71の電気抵抗は、上記のカーボン添加量によって調整されている。端子金具40から中心電極30に至る電路に抵抗体71が配置されることで、点火プラグ10の火花放電に伴う電磁ノイズの発生が抑制される。抵抗体71と中心電極30との間は、導電性シール層72を介して電気的に接続されている。同様に、端子金具40と抵抗体71との間は、導電性シール層73を介して電気的に接続されている。導電性シール層72、73は、いずれも、粉末状のガラスに対し銅粉末を添加した材料により形成された、導電性を有する層である。
主体金具50は、絶縁碍子20の一部を外周側から覆うように設けられた筒状の部材である。主体金具50は、その全体が金属により形成されている。後に説明するように、主体金具50は、加締められることで絶縁碍子20に対し固定されており、その状態で絶縁碍子20を保持している。主体金具50は、嵌合部52と、フランジ部55と、挿入部56と、を有している。
嵌合部52は、内燃機関に対する点火プラグ10の取り付け時において、例えばプラグレンチのような工具と嵌合する部分である。中心軸CXに沿って見た場合における嵌合部52の形状は六角形である。本実施形態では、嵌合部52のうち互いに対向する二面間の幅(所謂「二面幅」)が16mmとっている。
フランジ部55は、内燃機関に点火プラグ10が取り付けられた際、内燃機関の外表面に対しガスケットGKを介して当接する部分である。フランジ部55は、嵌合部52よりも先端側となる位置に設けられており、外周側に向けて突出している。尚、フランジ部55と嵌合部52との間には変形部54が設けられているのであるが、これについては後述する。
挿入部56は、フランジ部55よりも更に先端側の部分であって、内燃機関に形成された不図示の挿入孔へと挿入される部分である。挿入部56の外周面には雄螺子561が形成されている。点火プラグ10が内燃機関に取り付けられる際には、嵌合部52が工具から受ける力により中心軸CXの周りに回転する。これにより、上記挿入孔の内周面に形成された雌螺子と、挿入部56の雄螺子561とが互いに螺合する。これにより、内燃機関に対して点火プラグ10が締結固定される。点火プラグ10が内燃機関に取り付けられた状態においては、主体金具50の電位は、内燃機関と同じ接地電位となる。
接地電極60は、主体金具50のうち先端側の端部から、更に先端側へと伸びるように形成された金属製の部材である。接地電極60は屈曲しており、その一部が、中心軸CXに沿って中心電極30の放電チップ31と対向した状態となっている。接地電極60のうち放電チップ31と対向する部分には、接地側チップ61が取り付けられている。接地側チップ61と放電チップ31との間に形成された隙間が、放電ギャップとなっている。
図1に示されるように、嵌合部52の内側においては、絶縁碍子20の外周面と主体金具50の内周面との間に環状空間SPが形成されている。環状空間SPは、中心軸CXを囲むように形成された環状の空間である。環状空間SPのうち先端側の端部は、絶縁碍子20の外周面に形成された突出部211(図2を参照)により区画されている。環状空間SPのうち後端側の端部は、主体金具50の加締め部51により区画されている。加締め部51は、主体金具50のうち嵌合部52よりも後端側の部分であって、加締められた際に内周側へと変形する部分である。
環状空間SPには、粉末状の滑石であるタルク材TCが充填されている。タルク材TCは、内燃機関に取り付けられた状態における点火プラグ10の耐衝撃性を高めると共に、内燃機関からのガスが後端側へと流出してしまうことを防止する役割を果たすものである。
環状空間SPのうち、中心軸CXに沿って先端側(つまり中心電極30側)の端部となる位置には、第1環状部材80が配置されている。また、環状空間SPのうち、中心軸CXに沿って後端側(つまり中心電極30とは反対側)の端部となる位置には、第2環状部材90が配置されている。これらはいずれも、中心軸CXを囲むように形成された円環状の部材であって、例えば炭素鋼のような硬質の金属材料によって形成されている。
中心軸CXを含む面に沿って切断した場合における第2環状部材90の断面形状は、円形となっている。一方、中心軸CXを含む面に沿って切断した場合における第1環状部材80の断面形状は、図2等に示されるように円形とは異なる形状となっている。当該断面形状の詳細については後に説明する。
主体金具50を絶縁碍子20に対し固定する方法について説明する。先ず、主体金具50に対し、その後端側から絶縁碍子20が挿入される。このとき、主体金具50の加締め部51は図1のように変形しておらず、後端側に向けて概ね直線状に伸びている。つまり、環状空間SPは、その後端側の部分が外部に向けて開放された状態となっている。
主体金具50のうち挿入部56の内周面には、内側に向けて突出する突起562が形成されている。主体金具50の内側に挿入された絶縁碍子20は、その外周面に形成された段差部分を突起562に当接させた状態で停止する。その後、環状空間SPには、第1環状部材80、タルク材TC、及び第2環状部材90が、この順で配置される。
続いて、フランジ部55の底面(ガスケットGKが当接する面)と、加締め部51の先端との間に、中心軸CXに沿ってこれらを圧縮する方向の力が加えられる。当該力によって、加締め部51は加締められて変形し、図1に示されるように内周側に向かうよう変位する。
また、嵌合部52とフランジ部55との間に形成された変形部54は、比較的薄肉となっているので、上記の力によって座屈する。これにより、加締め部51から突起562までの距離が短くなるので、タルク材TCを介した力によって絶縁碍子20は突起562に対し強く押し付けられた状態となる。以上のような方法で、主体金具50は、絶縁碍子20を外周側から保持するように加締められた状態となり、絶縁碍子20に対して固定される。
主体金具50が加締められた後の図1の状態においては、タルク材TCには圧縮力が加えられている。この状態におけるタルク材TCは、内燃機関からの振動を吸収するばねとして機能するため、点火プラグ10の耐衝撃性を高める機能を発揮する。また、タルク材TCは、圧縮されることによって緻密となるため、内燃機関からのガスが後端側へと流出してしまうことを防止するためのシール材としての機能をも発揮する。
第1環状部材80及びその近傍の構成について、図2等を参照しながら説明する。図2は、図1の一部を拡大して示す図である。図2において符号「210」が付されているのは、絶縁碍子20の外周面である。当該外周面のことを、以下では「外周面210」とも称する。
絶縁碍子20のうち、環状空間SPの先端側における端部の近傍となる位置には、突出部211が形成されている。突出部211は、中心軸CXに沿って先端側(つまり中心電極30側)に行くほど外周面210の径が大きくなるよう突出した部分である。図2の断面において、突出部211の外周面を示す線は、先端側に向けて突出する円弧状の曲線となっている。突出部211は、第1環状部材80を先端側から支持している。
図2に示される点線DL1は、突出部211のうち後端側の端部の位置を示している。点線DL1よりも後端側においては、絶縁碍子20の外周面210を示す線は、中心軸CXと平行に伸びる直線となっている。
図2において符号「520」が付されているのは、主体金具50の内周面である。当該内周面のことを、以下では「内周面520」とも称する。図2の断面において、主体金具50の内周面520を示す線は、中心軸CXと平行に伸びる直線となっている。
主体金具50のうち、嵌合部52に対し先端側において隣り合う部分、すなわち、図2において「符号53」が付されている部分では、中心軸CXに沿って先端側に行くほど、主体金具50の外周面の径が次第に小さくなっている。当該部分のことを、以下では「縮小部53」とも称する。
縮小部53は、図2に示される点線DL11の位置まで続いている。点線DL11よりも先端側の部分では、中心軸CXに沿って先端側に行くほど、主体金具50の外周面の径が次第に大きくなっており、図1に示される変形部54へと繋がっている。点線DL11は、縮小部53のうち、中心軸CXに沿って最も先端側となる部分の位置を示すもの、ということができる。図2の断面において、点線DL11から点線DL12までの範囲においては、縮小部53の外周面を示す線は円弧状の曲線となっている。点線DL12から点線DL13までの範囲においては、縮小部53の外周面を示す線は直線となっている。
図3には、中心軸CXを含む面に沿って切断した場合における、第1環状部材80の断面形状が示されている。先に述べたように、当該断面形状は、円形とは異なる形状となっている。第1環状部材80は、金具当接部81と、碍子当接部82と、凹部83と、を有している。
金具当接部81は、主体金具50の内周面520に当接する部分である。図3の点線DL21は、金具当接部81のうち、中心軸CXに沿って最も先端側となる部分の位置を示すものである。同図の点線DL22は、金具当接部81のうち、中心軸CXに沿って最も後端側となる部分の位置を示すものである。金具当接部81は、図2のように中心軸CXを含む面に沿って切断した場合の断面において、主体金具50の内周面520と平行な線となる形状を有している。具体的には、金具当接部81は、図2のように中心軸CXを含む面に沿って切断した場合の断面において、主体金具50の内周面520のうち金具当接部81に対向する部分、と平行な線となる形状を有している。本実施形態では、当該線は中心軸CXと平行な直線である。
このため、金具当接部81は、その全体が、主体金具50の内周面520に対して隙間なく当接している。つまり、金具当接部81は、その外側にある主体金具50に対して広く面で(断面においては線で)当接している。
碍子当接部82は、絶縁碍子20が有する突出部211の外周面に当接する部分である。図3の点線DL31は、碍子当接部82のうち、中心軸CXに沿って最も先端側となる部分の位置を示すものである。同図の点線DL32は、碍子当接部82のうち、中心軸CXに沿って最も後端側となる部分の位置を示すものである。碍子当接部82は、図2のように中心軸CXを含む面に沿って切断した場合の断面において、突出部211の外周面と平行な線となる形状を有している。具体的には、碍子当接部82は、図2のように中心軸CXを含む面に沿って切断した場合の断面において、突出部211の外周面のうち碍子当接部82に対向する部分、と平行な線となる形状を有している。本実施形態では、当該線は先端側に向けて突出する曲線となっている。
凹部83は、第1環状部材80のうち、後端側にある第2環状部材90と対向する部分であって、先端側に向けて凹状に後退するように形成された部分である。
図3において一点鎖線で示される円CCは、第1環状部材80の断面形状を包含する外接円である。図3の断面において金具当接部81に対応する線の長さは、円CCの半径Rよりも長くなっている。
以上のような断面形状を有する第1環状部材80は、図4に示される方法を用いて形成することができる。先ず、円形の断面形状を有する環状部材80Aが用意される。環状部材80Aとしては、例えば、第2環状部材90と同一のものを用いることができる。
続いて、図4(A)に示されるように、下型110に設けられた凹部111の内側に、環状部材80Aが配置される。凹部111は、上面視において円環状となっている凹状の溝である。凹部111の底面S1の形状は、突出部211の外周面の形状と同じである。
続いて、図4(B)に示されるように、凹部111に対し上方から上型120が挿入される。上型120の先端面S2の形状は、図3に示される第1環状部材80のうち、凹部83及びその周囲の形状と同じである。上型120に対し下方側に向けた力を更に加えると、環状部材80Aは、上型120及び下型110に挟み込まれることで塑性変形して行く。最終的には、図4(C)に示されるように、環状部材80Aのうち先端側の部分は、凹部111の底面S1と同一の形状となる。また、環状部材80Aのうち後端側の形状は、上型120の先端面S2と同一の形状となる。このような方法で、環状部材80Aは第1環状部材80となる。
以上のように、第1環状部材80には、環状空間SPにおいてタルク材TCからの力を受けるよりも前の当初の段階から、金具当接部81と、碍子当接部82と、凹部83とが設けられている。
第1環状部材80が上記のような形状を有することの利点を説明するために、従来と同様の比較例について先ず説明する。図5に示されるように、この比較例では、第1環状部材80が、第2環状部材90と同様の円形の断面形状を有している。この比較例のその他の構成については、図2等に示される本実施形態の構成と同じである。
図5(A)には、主体金具50が加締められた直後における状態が示されている。先に述べたように、主体金具50が加締められると、タルク材TCには圧縮力が加えられる。このため、第1環状部材80は、タルク材TCから先端側に向かうような方向の力を受ける。尚、タルク材TCは、第1環状部材80と突出部211との間にも入り込んでいる。このため、第1環状部材80は、先端側に向かうような方向の力に加えて、タルク材TCから矢印AR1で示されるような力も受ける。
第1環状部材80は、タルク材TCからの力により、突出部211に対し押し付けられる。図5(A)の矢印AR2は、突出部211が、第1環状部材80から受ける力のうち中心軸CXに沿った成分を示している。
突出部211は、中心軸CXに沿って先端側に行くほど外周面210の径が大きくなるように傾斜している。このため、突出部211に押し付けられた第1環状部材80は、突出部211に沿って外側に移動しようとするので、主体金具50の内周面520に対し押し付けられる。また、第1環状部材80は、矢印AR1で示される力によって、内周面520に対し更に押し付けられる。図5(A)の矢印AR3は、主体金具50が第1環状部材80から受ける力を示している。このように、タルク材TCから力を受けた第1環状部材80は、主体金具50に対し外側へと押し拡げる方向の力を加える。
この比較例、及び本実施形態においては、主体金具50のうち第1環状部材80から力を受ける部分の近傍に、縮小部53の先端側端部、すなわち、主体金具50の肉厚が薄い部分が存在している。このため、加締めによる矢印AR3の力が大きくなると、図5(B)に示されるように、主体金具50が変形してしまう可能性がある。同図に示される例では、嵌合部52の外周面が、外側に向けて僅かに膨らむように変形している。尚、図5(B)においては、変形する前における当初の主体金具50の形状が点線で示されている。
この比較例では、第1環状部材80が円形の断面形状を有しているので、第1環状部材80は、その外側にある主体金具50に対して線で(断面においては点で)当接している。このため、第1環状部材80からの力(矢印AR3)は、主体金具50のうち狭小な範囲に集中して加えられる。主体金具50が受ける圧力が大きくなるので、図5(B)に示されるような局所的な主体金具50の変形は更に生じやすくなっている。
このような主体金具50の変形が生じると、内燃機関に対する点火プラグ10の取り付け時において、嵌合部52に対して工具を嵌合させることができなくなる等、工具との嵌合に支障が生じてしまう可能性がある。また、主体金具50の変形に伴ってタルク材TCが緩んでしまうので、タルク材TCのシール性能が低下し、内燃機関からのガスがタルク材TCを通過して外部へと流出してしまう可能性もある。
図5(A)の矢印AR3で示される力を低減し、主体金具50の変形を抑制するための対策としては、突出部の形状を、図6に示されるような形状とすることも考えられる。図6の比較例においては、突出部211の傾斜が緩やかとなっており、突出部211の外周面のうち第1環状部材80が当接する部分が、中心軸CXに対し概ね垂直となっている。この場合、突出部211に押し付けられた第1環状部材80が、突出部211に沿って外側に移動しようとする傾向は小さくなる。従って、主体金具50が第1環状部材80から受ける力(矢印AR3)を、図5(A)の場合に比べて小さくすることができる。
しかしながら、図6の比較例においては、中心軸CXに沿った第1環状部材80からの力(矢印AR2)を、突出部211が垂直に受けることとなる。この場合、突出部211に掛かる負担が大きくなる。加締めによる力の大きさによっては、図6(B)に示されるように、突出部211に亀裂CRが生じてしまう可能性がある。従って、主体金具50の変形を抑制するために、図6の構成を採用することは好ましくない。
そこで、本実施形態では、第1環状部材80の形状を図2等のように工夫することで、加締めの際における主体金具50の変形を抑制することとしている。図7には、本実施形態に係る主体金具50が加締められた直後における状態が、図5(A)と同様の方法により描かれている。
本実施形態においても図5の比較例と同様に、主体金具50が加締められると、第1環状部材80は、タルク材TCから先端側に向かう力(矢印AR1)を受ける。当該力によって、第1環状部材80は突出部211に押し付けられる。絶縁碍子20の突出部211は、第1環状部材80から矢印AR2で示される力を受ける。また、主体金具50の内周面520は、第1環状部材80から矢印AR3で示される力を受ける。
先に述べたように、本実施形態では、第1環状部材80に設けられた金具当接部81が、主体金具50の内周面520に対して広く面で(断面においては線で)当接している。このような構成においては、主体金具50に加えられる力(矢印AR3)は、金具当接部81の全体から分散して加えられることとなり、主体金具50が受ける圧力は図5(B)の場合に比べて小さくなる。その結果、主体金具50の変形が従来に比べて抑制される。
このような効果は、図3の断面において金具当接部81に対応する線の長さが長くなる程、大きく発揮される。本発明者らが行った実験等によれば、上記線の長さが、図3に示される円CCの半径Rよりも長くなっていれば、上記効果が十分に発揮されることが確認されている。
また、本実施形態では、第1環状部材80に設けられた碍子当接部82が、絶縁碍子20の突出部211に対しても広く面で(断面においては線で)当接している。突出部211に加えられる力(矢印AR2)についても、碍子当接部82の全体から分散して加えられることとなり、突出部211が受ける圧力は図5(B)や図6(B)の場合に比べて小さくなる。その結果、突出部211に亀裂CRが生じてしまうことを防止することもできる。
更に本実施形態では、第1環状部材80のうち後端側の部分に凹部83が形成されている。凹部83が、タルク材TCから先端側に向かう力を受けることにより、第1環状部材80は、主体金具50及び絶縁碍子20のそれぞれに対して確実に隙間なく押し付けられた状態となる。このため、内燃機関からのガスが外部に流出してしまうことは、タルク材TCのみならず第1環状部材80によっても防止される。
図8には、主体金具50を加締めて絶縁碍子20に固定した際において、嵌合部52の二面幅がどの程度膨らむのかを測定した結果が示されている。図8の横軸に示される「硬材料」とは、主体金具50の材料が比較的硬質な場合、具体的には、一般的な冷鍛加工用金属材料製の主体金具50を冷鍛加工で作成した場合を表している。また、同横軸に示される「軟材料」とは、主体金具50の材料が比較的軟質な場合、具体的には、一般的な切削加工用金属材料製の主体金具50を切削加工で作成した場合を表している。図8の縦軸は、嵌合部52の二面幅が、主体金具50を加締める過程においてどの程度増加したのかを表している。「Th」は、上記二面幅の膨らみ量について許容される上限値を表している。本実施形態の構成では、上限値Thは0.08mmである。
図8の「A1」及び「B1」は、図5の比較例と同様に、断面形状が円形の第1環状部材80を用いた場合の、嵌合部52の二面幅の膨らみ量を表している。主体金具50の材料が比較的硬質な場合(A1)には、二面幅の膨らみ量は0.07mmであり、主体金具50の材料が比較的軟質な場合(B1)には、二面幅の膨らみ量は0.19mmであった。このように、第1環状部材80の断面形状が円形である場合には、主体金具50の材料が軟質になると、二面幅の膨らみ量は上限値Thを超えてしまうことが確認された。
図8の「A2」及び「B2」は、本実施形態(図3)の第1環状部材80を用いた場合の、嵌合部52の二面幅の膨らみ量を表している。主体金具50の材料が比較的硬質な場合(A2)には、二面幅の膨らみ量は0.02mmであり、主体金具50の材料が比較的軟質な場合(B2)には、二面幅の膨らみ量は0.06mmであった。このように、本実施形態の第1環状部材80を用いた場合には、主体金具50の材料が軟質及び硬質のいずれであっても、二面幅の膨らみ量が上限値Thよりも小さくなることが確認された。
図9の縦軸に示される「膨らみの低減量」とは、主体金具50を冷鍛加工で作成した場合(硬材料)において、比較例の第1環状部材80を本実施形態の第1環状部材80に置き換えることで、どの程度膨らみ量が低減したかを示すものである。この「膨らみの低減量」は、図8の例においては、「A1」の膨らみ量から「B1」の膨らみ量を差し引いて得られる値であって、本実施形態の第1環状部材80を採用することの効果の大きさを示すものである。図9には、嵌合部52の二面幅(横軸)を変化させた場合における、上記の「膨らみの低減量」の変化の例が示されている。尚、図9の各データに付されている「M10」等の文字は、雄螺子561の呼び径を表している。
図9に示されるように、雄螺子561の呼び径がM12よりも大きい場合、すなわち、嵌合部52の二面幅が16mmよりも大きい場合には、嵌合部52やその近傍部分の剛性が高くなるので、本実施形態の第1環状部材80を採用することの効果は小さくなる。一方、雄螺子561の呼び径がM12以下の場合、すなわち、嵌合部52の二面幅が16mm以下の場合には、小型化の代償として、嵌合部52やその近傍部分の剛性が低くなるので、本実施形態の第1環状部材80を採用することの効果は大きくなる。このように、本実施形態の第1環状部材80は、嵌合部52の二面幅が16mm以下の点火プラグ10に採用することが好ましい。
図2に示されるように、本実施形態の第1環状部材80は、その最も先端側となる部分が、点線DL13と点線DL12との間となるような位置に配置されている。第1環状部材80は、これとは異なる位置に配置されていてもよい。例えば、図10に示されるように、第1環状部材80のうち最も先端側となる部分が、点線DL11と点線DL12との間となるような位置に配置されてもよい。また、図11に示されるように、第1環状部材80のうち最も先端側となる部分が、点線DL13よりも後端側となるような位置に配置されてもよい。
ただし、いずれの場合であっても、第1環状部材80は、その最も先端側となる部分が、点線DL11よりも後端側となるような位置に配置されていることが好ましい。換言すれば、主体金具50が有する縮小部53のうち、中心軸CXに沿って最も先端側となる部分の位置(つまり、図2の点線DL11の位置)は、第1環状部材80のうち、中心軸CXに沿って最も先端側となる部分の位置よりも、更に先端側となる位置となっていることが好ましい。これは、点線DL11の位置においては、主体金具50の外径が最も小さくなっており、小さな力でも変形しやすくなっているからである。このような位置と重ならない範囲、すなわち、図2の点線DL11よりも後端側となる位置に第1環状部材80を配置することで、主体金具50の変形を十分に抑制することが可能となる。
図4を参照しながら説明したように、本実施形態の第1環状部材80は、円形の断面形状を有する環状部材80Aを、下型110と上型120との間で挟み込むことで形成される。このような態様に替えて、図12に示される方法で第1環状部材80が形成されてもよい。
図12の例では、先ず、三角形の断面形状を有する環状部材80Bが用意される。尚、上記断面形状における三角形のコーナー部分は、図12に示されるように曲線となっている。
図12(A)に示されるように、環状部材80Bは、タルク材TCが充填される前の環状空間SPの内側に配置される。このとき、環状部材80Bのうち上記三角形の1辺となる面が、主体金具50の内周面520に当接した状態とされる。
その後、環状空間SPに対し上方から上型130が挿入される。上型130の先端面S12の形状は、図3に示される第1環状部材80のうち、凹部83及びその周囲の形状と同じである。上型130に対し下方側に向けた力を更に加えると、環状部材80Bは、上型130の先端面S12、主体金具50の内周面520、及び絶縁碍子20の突出部211に挟み込まれることで塑性変形して行く。最終的には、図12(B)に示されるように、環状部材80Bのうち先端側の部分は、突出部211の外周面と同一の形状となる。また、環状部材80Bのうち後端側の形状は、上型130の先端面S12と同一の形状となる。このような方法で、環状部材80Bから第1環状部材80を形成してもよい。
第1環状部材80の断面形状としては、図3に示されるような断面形状に限らず、様々な断面形状を採用することができる。以下では、図13及び図14を参照しながら、第1環状部材80の断面形状において互いに異なる複数の変形例について説明する。図13及び図14では、それぞれの変形例について、図2と同様に中心軸CXを含む面で切断した場合の断面が示されている。
図13(A)に示される変形例では、第1環状部材80のうち、後端側にある第2環状部材90と対向する部分に、凹部83が形成されていない。代わりに、当該部分には、第2環状部材90側に向けて突出する凸部84が形成されている。このような構成においては、第1環状部材80の肉厚が厚くなるので、振動等に対する第1環状部材80の耐久性を十分に確保することが可能となる。
図13(B)に示される変形例では、第1環状部材80が凹部83を有する形状としながらも、中心軸CXに沿った第1環状部材80の寸法が、第1実施形態よりも大きくなっている。その結果、この変形例では、金具当接部81が、点線DL1よりも後端側となる位置まで伸びるように形成されている。換言すれば、金具当接部81が、突出部211が形成されている範囲よりも、中心軸CXに沿って第2環状部材90側となる位置まで伸びるように形成されている。このような構成においては、金具当接部81から主体金具50に加えられる力が、更に広い範囲で分散して加えられることとなるので、主体金具50の変形を更に抑制することが可能となる。
また、この変形例では、碍子当接部82も、点線DL1よりも後端側となる位置まで伸びるように形成されている。換言すれば、碍子当接部82が、突出部211が形成されている範囲よりも、中心軸CXに沿って第2環状部材90側となる位置まで伸びるように形成されている。このような構成においては、碍子当接部82から突出部211に加えられる力が、更に広い範囲で分散して加えられることとなるので、突出部211に亀裂CRが生じてしまうことをより確実に防止することが可能となる。
図14(C)に示される変形例では、第1環状部材80が有する凹部83の形状が、突出部211の外周面と同じ曲率を有する形状となっている。図14(D)に示される変形例では、第1環状部材80に凹部83が形成されていない。この変形例では、第1環状部材80のうち第2環状部材90と対向する部分の形状が、中心軸CXに対して垂直な平坦面となっている。図14(E)に示される変形例では、第1環状部材80の断面形状が、中心軸CXに沿って伸びる長円形(オーバル型)となっている。図14に示されるいずれの変形例においても、第1環状部材80には本実施形態と同様の金具当接部81が形成されており、金具当接部81の全体が主体金具50の内周面520に当接している。これにより、先に説明したものと同様の効果を奏することができる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。