JP7633603B2 - 撥水レンズ保護膜用樹脂組成物及び撥水レンズを保護する方法 - Google Patents

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Description

本発明は撥水レンズの周縁加工時にレンズ表面を保護するための撥水レンズ保護膜用樹脂組成物に関する。また、撥水レンズの周縁加工時に、加工装置にレンズを保持するために撥水レンズを保護する方法に関する。
眼鏡レンズは眼鏡フレームの枠形状に合うよう加工装置を用いて周縁を加工する。この加工装置は、一対のレンズチャック軸に眼鏡レンズを保持し、レンズチャック軸の回転によりレンズが回転され、砥石等の加工具がレンズに押し当てられることにより、レンズを所望の形状に加工する機械である。その際、眼鏡レンズには両面テープで冶具を貼り付け、その冶具を介してレンズチャック軸に保持される。
近年、水や油など汚れが付着しにくい撥水・撥油物質がレンズ表面にコーティングされた撥水レンズが多く使用されている。これらの撥水レンズはその表面が滑りやすいため、撥水処理が施されていないレンズと同様の加工法では両面テープの粘着力が不足し、レンズチャック軸の回転角度に対してレンズの回転角度がずれてしまう、いわゆる軸ずれが発生する問題があった。この軸ずれを防ぐ方法として、レンズ表面に一時的に保護膜を設ける手法が知られている。この手法では、レンズ表面に冶具固定用の両面テープ及びレンズ表面と良好な接着性を有する保護層を形成することで、レンズ加工時の軸ずれを防止できる。また、加工後はレンズから保護膜を容易に剥がすことができる。
上記の保護膜を形成するための組成物には、撥水レンズ表面に均一に塗工可能であること(塗工性)が求められる。加えて、本組成物から得られる保護膜には、加工時は撥水レンズから剥離せず、加工後は容易に剥離可能という適度な密着性を有すること(密着性)、保護膜剥離後にレンズの撥水性に影響を与えないこと(非汚染性)も必要とされる。尚、レンズに保護膜を形成後、周縁加工を行うまでには数ヶ月の期間が空く場合もあるため、保護膜には長期間保管を行っても密着性や非汚染性が変わらないことも求められる。
このような組成物として、特許文献1には、撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、一時的に保護膜を形成するための材料として、アクリル樹脂を有機溶剤に溶解した組成物が記載されている。
また、特許文献2には被着体から硬化物を剥離させる際に適度な剥離強度を有する保護膜を形成可能な材料として、アクリルオリゴマー、アクリルモノマー、チオール化合物及び光開始剤を組み合わせた組成物が記載されている。
特開2009-109611号公報 国際公開第2013/073364号
しかしながら、最近はコーティング表面の水滴の接触角が150°以上となる、いわゆる超撥水と呼ばれる撥水処理が増えており、このような処理が施された超撥水レンズに対しては、特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、塗工性、密着性及び非汚染性を並立できないという課題があった。
本発明は前記の従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に防汚性の高い超撥水レンズであっても均一に塗工可能であり、且つ、加工時は撥水レンズから剥離せず、加工後には容易に剥離可能な適度な密着性を有するとともに、剥離時の硬化膜の破断が生じない強靭性を有し、剥離後に基材の撥水性に影響を与えない保護膜を形成可能な樹脂組成物と、撥水レンズに保護膜を形成することで加工時のレンズの軸ずれを防止し、所望の形状へ加工できる方法を提供することである。
本発明は(A)重量平均分子量が250~30,000である多官能(メタ)アクリレートと、(B)多官能チオール化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)重量平均分子量が25,000~100,000でありフッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体を含有する樹脂組成物であって、前記(A)成分100質量部中に、(B)成分を0.5~30質量部、(C)成分を0.1~25質量部、(D)成分を0.1~25質量部含むことを特徴とする、撥水レンズ保護膜用樹脂組成物である。
また、本発明は撥水レンズに上記保護膜用樹脂組成物を塗布、硬化して得られる硬化膜を保護層として設けることにより、撥水レンズを保護する方法である。
本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物は、特に防汚性が高く、表面への塗工が困難な超撥水レンズであっても均一に塗工可能である。加えて、本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、撥水レンズに対して適度な密着力を有することから加工時の軸ずれを防止でき、保護膜を剥離した際に残渣なく容易に剥がすことができる。
本発明の実施例において、保護膜の保持力を評価するための試験方法を説明する概略説明図である。 本発明の実施例において、保護膜の保持力の評価方法を説明する概略説明図である。
以下に本発明について詳しく説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味する。また、本発明において数値範囲を示す「○○~××」とは、別途記載が無い限り、その下限値(「○○」)や上限値(「××」)を含む概念である。すなわち、正確には「○○以上××以下」を意味する。
本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物は、下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を必須成分として含有する硬化性樹脂組成物である。
<(A)成分:多官能(メタ)アクリレート>
(A)多官能(メタ)アクリレートは、重量平均分子量(Mw)が250~30,000であり、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。尚、(A)成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(A)多官能(メタ)アクリレートの好ましい例として以下の一般式(式1)で表される化合物が挙げられる。
式中のaは、好ましくは2~30である。
は、炭素数2~300の炭化水素基若しくはエーテル酸素(-O-)およびヒドロキシル基(-OH)からなる群より選択される少なくとも1種を含む炭素数2~300の炭化水素基、イソシアヌレート環若しくはイソシアヌレート環と炭化水素基若しくは炭素数2~20の炭化水素基のみからなる基、又は、炭素数2~250の炭化水素基若しくはエーテル酸素(-O-)およびヒドロキシル基(-OH)からなる群より選択される少なくとも1種を含む炭素数2~250の炭化水素基である。Rは、水素原子またはメチル基である。
(A)多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートモノマーや、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応によって得られるエポキシ変性(メタ)アクリレート、ジイソシアネート化合物とジオール化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
これらの中でもウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。柔軟なウレタン結合を有する化合物を用いることで、硬化膜と撥水レンズとの密着力が向上し、加工時の軸ずれを抑制することができる。加えて、硬化膜の強靭性が向上し、剥離時の硬化膜の破断を抑制できる。
ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、UN-352(官能基数:2、Mw:3,000)、UN-333(官能基数:2、Mw:3,000)、UN-353(官能基数:2、Mw:5,000)、UN-1255(官能基数:2、Mw:8,000)、UN-6200(官能基数:2、Mw:6,500)、UN-6201(官能基数:2、Mw:1,600)、UN-9000PEP(官能基数:2、Mw:5,000)、UN-9200A(官能基数:2、Mw:15,000)、UN-3320HA(官能基数:6、Mw:1,500)、UN-904(官能基数:10、Mw:4,900)、UN-953(官能基数:20、Mw:14,000~40,000)、UN-954(官能基数:6、Mw:4,500)、UN-6305(官能基数:2、Mw:27,000)、H-219(官能基数:9、Mw:25,000~50,000)(以上はいずれも商品名、根上工業株式会社製)、EBECRYL230(官能基数:2、Mw:5,000)、EBECRYL9260(官能基数:3、Mw:1,500)、EBECRYL4666(官能基数:4、Mw:1,100)(以上はいずれも商品名、ダイセル・オルネクス株式会社製)、UX-4101(官能基数:2、Mw:6,500)、UX-6101(官能基数:2、Mw:6,500)(以上はいずれも商品名、日本化薬工業株式会社製)等が挙げられる。
(A)多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量は250~30,000であることが好ましく、より好ましくは500~15,000である。重量平均分子量が250未満であると、硬化膜と撥水レンズとの密着力が低下し、30,000を超えると、硬化膜の強靭性が不十分となり、剥離時に硬化膜が破断するため、撥水レンズから硬化膜を剥離する際の作業性が低下する。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8220GPCを用いて、カラムとして東ソー(株)製TSKgel HZM-Mを用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
(A)多官能(メタ)アクリレートの分子内の(メタ)アクリロイル基の数(官能基数)は、2以上であれば特に制限されないが、例えば、2~30である。上限値として、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、特に好ましくは8以下である。
(A)多官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)~(D)成分全量を基準として、70~97質量%であることが好ましく、より好ましくは75~95質量%である。(A)成分の含有量が70質量%以上の場合、硬化膜の強靭性が向上し、剥離時の硬化膜の破断を抑制するため、撥水レンズから硬化膜を剥離する際の作業性が向上する。97質量%以下の場合、硬化膜と撥水レンズとの密着力が適度に調整され、硬化膜を剥離することが容易となる。
<(B)成分:多官能チオール化合物>
(B)成分である多官能チオール化合物は、分子内にチオール基(-SH基)を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。尚、(B)成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(B)多官能チオール化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
(B)多官能チオール化合物の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して0.5~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0~25質量部である。(B)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して0.5質量部未満であると、硬化膜と撥水レンズとの密着力が過剰となり、硬化膜を剥離することが困難となり、30質量部を超えると、硬化膜の強靭性が不十分となり、剥離時に硬化膜が破断するため、撥水レンズから硬化膜を剥離する際の作業性が低下する。
(A)成分由来の(メタ)アクリロキシ基に対する(B)成分由来のチオール基の比率(以下、(B)/(A)官能基比)は、0.05~5.0であることが好ましく、より好ましくは0.10~3.0である。(B)/(A)官能基比が0.05未満であると、硬化膜と撥水レンズとの密着力が過剰となり、硬化膜を剥離することが困難であり、5.0を超えると、硬化膜の強靭性が不十分となり、剥離時に硬化膜が破断するため、撥水レンズから硬化膜を剥離する際の作業性が低下する。
<(C)成分:光重合開始剤>
(C)成分である光重合開始剤は、特に限定されず、公知の材料を用いることができる。尚、(C)成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(C)光重合開始剤の具体例としては、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系、芳香族ケトン系、キノン系、アルキルフェノン系、イミダゾール系、アクリジン系、フェニルグリシン系の光重合開始剤等が挙げられる。
(アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤)
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド基(>P(=O)-C(=O)-基)を有するものであり、具体例としては、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,6-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(「IRGACURE-TPO」(BASF社製))、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネイト、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(「IRGACURE-819」(BASF社製))、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
(オキシムエステル系光重合開始剤)
オキシムエステル系光重合開始剤は、オキシムエステル結合を有する光重合開始剤であり、具体例としては、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)(商品名:OXE-02、BASF社製)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-[O-(エトキシカルボニル)オキシム](商品名:Quantacure-PDO、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
(芳香族ケトン系光重合開始剤)
芳香族ケトン系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(「IRGACURE-651」(BASF社製))、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン(「IRGACURE-369」(BASF社製))、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン(「IRGACURE-907」(BASF社製))等が挙げられる。
(キノン系光重合開始剤)
キノン系光重合開始剤の具体例としては、2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等が挙げられる。
(アルキルフェノン系光重合開始剤)
アルキルフェノン系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾイン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(「IRGACURE-651」(BASF社製))、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(「IRGACURE-184」(BASF社製))、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(「IRGACURE-1173」(BASF社製))、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(「IRGACURE-2959」(BASF社製))、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(「IRGACURE-127」(BASF社製))等が挙げられる。
(イミダゾール系光重合開始剤)
イミダゾール系光重合開始剤の具体例としては、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体が例示され、より詳細には、2-(2-クロロフェニル)-1-〔2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニル-1,3-ジアゾール-2-イル〕-4,5-ジフェニルイミダゾール等の2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。
これらの中でも各種光源を用いた際の硬化性の観点から、芳香族ケトン系光重合開始剤を用いることが好ましい。
(C)光重合開始剤の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して0.1~25質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~20質量部である。(C)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、硬化不足となり、硬化膜と撥水レンズとの密着力低下や硬化膜の強靭性低下が生じるとともに、保護膜を剥離した際に未硬化成分の残渣により基材の撥水性が低下する。また、(C)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して25質量部を超えると、光重合開始剤が過剰となり、保護膜を剥離した際に光重合開始剤の残渣により基材の撥水性が低下する。
<(D)成分:フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体>
(D)成分であるフッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体は、公知の材料を用いることができる。尚、(D)成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(D)フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体の具体例としては、エチレン性不飽和化合物のブロック共重合体が挙げられる。フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体を用いることで、撥水レンズに保護膜形成用樹脂組成物を塗布した際に(D)成分が表面偏析し易くなり、撥水レンズへの塗工性を高めることができる。また、表面偏析性が高まることにより、塗膜内部の(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)多官能チオール化合物の硬化反応を(D)成分が阻害し難くなるため、より強靭性に優れた硬化膜が得られる。
(D)フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体の市販品としては、モディパーF206、モディパーF246、モディパーF3636(以上はいずれも商品名、日油株式会社製)等が挙げられる。
(D)フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体の重量平均分子量は25,000~100,000が好ましく、より好ましくは30,000~80,000である。重量平均分子量が25,000未満であると、保護膜を剥離した際に界面活性剤の残渣により基材の撥水性が低下し、100,000を超えると、撥水レンズへの塗工性が低下する。なお、重量平均分子量の測定方法は、(A)多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の測定方法と同一である。
(D)フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して0.1~25質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは1.0~15質量部である。(D)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、撥水レンズへの塗工性が不足し、25質量部を超えると、保護膜を剥離した際に界面活性剤の残渣により基材の撥水性が低下する。
<希釈剤>
本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物は、反応系を均一にし、塗工を容易にするために有機溶媒や反応性希釈剤で希釈して使用してもよい。そのような有機溶媒としては、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤及びエーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。反応性希釈剤としてはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を有する、単官能性の光重合性単量体を用いることができる。これらのうち、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。希釈剤の配合量は本発明の特性を損なわない範囲において任意に調整すれば良い。
本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料などの着色剤、安定剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。
<保護膜の形成>
本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物を用いて保護膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ディップコート、スプレーコート、スピンコートなどの方法を挙げることができる。本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物を用いて形成される保護膜の厚みは、特に制限されないが、レンズの周縁加工時の軸ずれ防止や、加工及び保管時の傷つき防止の観点から、10μm以上である方が好ましい。一方、塗膜の厚みは、レンズ中心を特定する際位置ずれが生じないように、100μm以下であることが好ましい。
本発明の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物を塗布した後に、基材上に塗布された当該組成物を紫外線などの活性エネルギー線を照射して保護膜を得ることができる。活性エネルギー線照射工程で用いられる光源としては、例えばUV-LED(紫外線LED)、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、気体レーザー、固体レーザー、電子線照射装置などが挙げられる。
中でも従来のUVランプ等と比較して消費電力が大幅に少なく、光源から発生する熱量がUVランプと比較して特に少ないUV-LEDが好ましく、さらにはそのピーク照度が可視光に近い395nm以上であるUV-LEDを用いることで紫外線照射時の撥水レンズへの影響を抑制し、撥水層におけるクラックの発生を抑制することが出来る。
<(A)成分:多官能(メタ)アクリレート>
A-1:エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート(ブレンマーPDBE-200A 日油株式会社製:2官能、重量平均分子量541)
A-2: ウレタンアクリレート(アートレジンUN-333 根上工業社製:2官能、重量平均分子量3,000)
A-3: ポリエーテル系ウレタンアクリレート(アートレジンUN-1255 根上工業社製:2官能、重量平均分子量8,000)
A-4: ポリカーボネート系ウレタンアクリレート(アートレジンUN-9200A 根上工業社製:2官能、重量平均分子量15,000)
A-5: 脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL4666 ダイセル・オルネクス社製:4官能、重量平均分子量1,100)
A’-1:エチレングリコールジメタクリレート(ライトエステルEG 共栄社化学株式会社製:2官能、重量平均分子量198)
A’-2:ウレタンアクリレート(紫光UV-3700B 三菱ケミカル株式会社製:2官能、重量平均分子量38,000)
<(B)成分:多官能チオール化合物>
B-1:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(DPMP SC有機化学株式会社製:6官能、重量平均分子量783)
B-2:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(TMMP SC有機化学株式会社製:3官能、重量平均分子量399)
<(C)成分:光重合開始剤>
C-1:2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン(OMNIRAD651 IGM社製)
<(D)成分:フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体>
D-1:フッ素系ブロックコポリマー(モディパーF206 日油株式会社製、重量平均分子量38,000)
D-2:フッ素系ブロックコポリマー(モディパーF246 日油株式会社製、重量平均分子量25,000)
D-3:フッ素系ブロックコポリマー(モディパーF3636 日油株式会社製、重量平均分子量77,000)
D’-1:ポリエーテル変性シリコーンオイル(DOWSIL L-7001 ダウ・東レ株式会社)
<希釈剤>
MEK:メチルエチルケトン
IPAC:イソプロピルアセテート
BA:ブチルアクリレート
表1~3に示す配合比で(A)~(D)成分及び希釈剤を混合容器へ投入し、室温(23℃)、紫外線カット下でスリーワンモーターを用いて均一になるまで撹拌することで、撥水レンズ保護膜用樹脂組成物のサンプルを得た。得られた実施例及び比較例の各撥水レンズ保護膜用樹脂組成物に対して以下の塗工性、密着性(保持力、剥離性、強靭性)及び非汚染性の評価を行った。その結果を表1~3に示す。
[超撥水レンズへの保護膜形成]
評価には純水の接触角が150°以上となる超撥水層を備えたプラスチックレンズ(直径75mm)を用いた。この超撥水レンズに対し、実施例及び比較例の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物をディップコート法により硬化後膜厚が20μmとなるようにコートした。コート後、室温(23℃)、紫外線がカットされた空間で10分間静置し乾燥させ、LED紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社製Unijet E110IIHD―395)を用い、照度500mW/cmになるようレンズとの距離を調節して片面ずつ照射した。尚、超撥水レンズの接触角は、対象レンズ表面に純水1μLの液滴を接触させ、その時のレンズと液滴のなす角度により算出した。
[塗工性評価]
前述したディップコート法により超撥水レンズへ撥水レンズ保護膜用樹脂組成物をコートし、硬化させた。ハジキが見られた場合、レンズ端部からコートされていない部分の最大の幅をハジキの大きさとして計測し、以下の通り評価した。尚、塗工性はハジキの大きさが10mm以下を合格とした。
◎:ハジキ無し。
○:端部からコートできていない部分が5mm以下である。
△:端部からコートできていない部分が5mmより大きく10mm以下である。
×:端部からコートできていない部分が10mmより大きい。
[保持力評価]
レンズの周縁加工時の軸ずれ評価として、超撥水レンズへ形成した保護膜の保持力を評価した。保持力評価はJIS-Z0237に準拠し、荷重を変更して行った。温度:23℃、相対湿度:50%環境下で3ヶ月保管した保護膜形成済み超撥水レンズの中心部に幅24mm、長さ130mmの粘着テープ(ニチバン社製CT405AP-24)を貼り付ける(図1参照)。この時、粘着テープ上とレンズ凹部の中心部で重なるよう油性ペンで印をつける。粘着テープのレンズに貼り付けた端部と反対側の端部に重さ14.7Nの荷重をかけ、10分間後に凸面と凹面の印にずれが生じた距離を測定した(図2参照)。得られた測定結果について以下の通り評価した。尚、保持力測定結果は2.0mm以下を合格とした。
◎:保持力測定結果が0.0mmである。
○:保持力測定結果が0.0mmより大きく、0.5mm以下である。
△:保持力測定結果が0.5mmより大きく2.0mm以下である。
×:保持力測定結果が2.0mmより大きい。
[剥離性]
温度:23℃、相対湿度:50%環境下で3ヶ月保管した保護膜形成済み超撥水レンズの端部に粘着テープ(ニチバン社製CT405AP-24)を貼り付けた後、手でテープを剥離した。同位置で粘着テープの貼付・剥離を繰り返し、保護膜が剥離するまでに必要なテープの剥離回数を確認し、以下の通り評価した。尚、剥離性は〇又は△を合格とした。
〇:1回のテープ剥離で保護膜を剥離できる。
△:2~5回のテープ剥離で保護膜を剥離できる。
×:5回以上のテープ剥離を行っても保護膜を剥離できない。
[強靭性]
温度:23℃、相対湿度:50%環境下で3ヶ月保管した保護膜形成済み超撥水レンズの端部に粘着テープ(ニチバン社製CT405AP-24)を貼り付けた後、手でテープを剥離した。剥離した保護膜の形状を確認し、以下の通り、評価した。尚、強靭性は〇又は△を合格とした。
〇:保護膜に亀裂がない。
△:保護膜に30mm未満の亀裂がある。
×:保護膜が破断し、1回のテープ剥離では保護膜を剥離できない。
[非汚染性]
温度:23℃、相対湿度:50%環境下で3ヶ月保管した保護膜形成済み超撥水レンズから保護膜を剥離した後、レンズに対し油性マジック(寺西化学工業社製マジックインキ(黒))でレンズに線を引いた際のインクのハジキを観察し、以下の通り評価した。尚、保護膜を形成する前のレンズ表面は油性マジックのインクをはじくが、レンズ表面に汚染物質が残っていると撥水性が低下する。尚、非汚染性は〇又は△を合格とした。
〇:直線で描いたインクが点状になる。
△:直線で描いたインクが細い線状になる。
×:直線で描いたインクにハジキが見られない。
表1、2の結果から、実施例1~19の樹脂組成物はいずれも超撥水レンズに対する塗工性が良好であった。また、実施例1~19の樹脂組成物を硬化させて得られた保護膜は温度:23℃、相対湿度:50%環境下で3ヶ月保管後においても、超撥水レンズに対する適度な密着性を有しており、保持力、剥離性及び強靭性が高いレベルで並立されていた。さらに、保護膜剥離後の超撥水レンズの撥水性低下も抑えられており、非汚染性にも優れていた。
一方、表3の結果から、比較例1、2では、(A)成分の重量平均分子量が過小、又は過大であるため、得られた保護膜の超撥水レンズに対する保持力、或いは強靭性が不足していた。比較例3、4では、(B)成分の含有量が過少、又は過多であるため、得られた保護膜の超撥水レンズからの剥離性、或いは強靭性が不足していた。比較例5では、(C)成分の含有量が過少であるため、得られた保護膜の超撥水レンズに対する保持力、強靭性及び非汚染性が不足していた。比較例6では、(C)成分の含有量が過多であるため、得られた保護膜の非汚染性が不足していた。比較例7、9、10では、(D)成分の含有量が過少、(D)成分としてシリコン系界面活性剤を使用、或いは(D)成分を含有していないため、超撥水レンズへの塗布性が不足していた。比較例8では(D)成分の含有量が過多であるため、得られた保護膜の非汚染性が不足していた。

Claims (2)

  1. 以下の(A)~(D)成分を含有することを特徴とする樹脂組成物であって、
    前記(A)成分100質量部に対して、(B)成分を0.5~30質量部、(C)成分を0.1~25質量部、(D)成分を0.1~25質量部含むことを特徴とする、撥水レンズ保護膜用樹脂組成物。
    (A)成分:重量平均分子量が250~30,000である多官能(メタ)アクリレート
    (B)成分:多官能チオール化合物
    (C)成分:光重合開始剤
    (D)成分:重量平均分子量が25,000~100,000であり、フッ素系セグメントと非フッ素系セグメントからなるブロック共重合体
  2. 撥水レンズに請求項1に記載の撥水レンズ保護膜用樹脂組成物を塗布、硬化してなる保護膜を設けることにより、撥水レンズを保護する方法。

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