JP7635589B2 - 駆動力制御方法及び駆動力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動力制御方法及び駆動力制御装置に関する。
特許文献1では、車両の加速度変化を予測して、車両用シートによる乗員のサポート状態を変更して乗員の姿勢を安定させ、乗員の車酔いを抑制する車両用乗員姿勢制御装置が提案されている。特に、この車両用乗員姿勢制御装置では、車線変更時のように車両の操舵に伴う加速度が発生する前に、当該加速度に合わせて乗員の身体をサポートするように車両用シートの可動部(シートバック支持部及びアームレストなど)を操作する。
特開2007-71370号公報
しかしながら、特許文献1の装置では、車両用シートの可動を実現するための機械的構造を採用する必要があり、車両構造の複雑化及び製造コストの増大が懸念される。
したがって、本発明の目的は、より簡素な構成で車両の加速度変化に伴う乗員の車酔いを抑制することのできる駆動力制御方法及び駆動力制御装置を提供することにある。
本発明のある態様によれば、車両のピッチ角が所望の挙動をとるように、前輪に接続された第1駆動源及び後輪に接続された第2駆動源のそれぞれに対する駆動力配分を制御する駆動力制御方法が提供される。この駆動力制御方法では、車両に対する要求加速度に基づいて、該要求加速度に応じた前後加速度を打ち消す方向のピッチ変位を発生させるようにピッチレートを調節するピッチレート調節処理を実行する。そして、ピッチレート調節処理では、第1駆動源の駆動力と第2駆動源の駆動力の正負が相互に異なるように駆動力配分を制御することで前記ピッチレートを調節する。また、ピッチレート調節処理を、要求加速度の変化の指令が発せられた後であって前後加速度が実際に変化するタイミングの以前に実行する。
本発明によれば、より簡素な構成で車両の加速度変化に伴う乗員の車酔いを抑制することができる。
図1は、本発明の実施形態の駆動力制御方法が実行される車両の構成を説明する図である。 図2は、駆動力制御方法を実行する駆動力制御装置の機能構成を説明するブロック図である。 図3は、車両のピッチ運動を説明するための図である。 図4は、駆動力制御方法を説明するフローチャートである。 図5は、第1補正ピッチレートを設定した場合の車両の動作点を説明するマップである。 図6は、車両の加速時にピッチレート調節処理を実行した場合の制御結果を示すタイムチャートである。 図7は、車両の減速時にピッチレート調節処理を実行した場合の制御結果を示すタイムチャートである。 図8は、第2補正ピッチレートを適用した場合の制御結果の一例を示すタイムチャートである。
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の駆動力制御方法が実行される車両100の構成を説明する図である。
なお、本実施形態の車両100としては、駆動源としての駆動モータ10を備え、当該駆動モータ10の駆動力により走行可能な電気自動車又はハイブリッド自動車などが想定される。
駆動モータ10は、車両100の前方の位置(以下、「前輪側」と称する)に設けられ前輪11fを駆動する第1電動機としての前輪モータ10fと、後方の位置(以下、「後輪側」と称する)に設けられ後輪11rを駆動する第2電動機としての後輪モータ10rと、により構成される。
前輪モータ10fは、三相交流モータとして構成される。前輪モータ10fは、電源としてのバッテリからの電力の供給を受けて駆動力を発生する。前輪モータ10fで生成される駆動力は前輪変速機16f及び前輪ドライブシャフト21fを介して前輪11fに伝達される。また、前輪モータ10fは、車両100の走行時に前輪11fに連れ回されて回転する際に発生する回生駆動力を交流電力に変換する。なお、前輪モータ10fに供給される電力は、前輪インバータ12fにより調節される。特に、前輪インバータ12fは、車両100に要求される総駆動力(以下、「総要求駆動力Ffr」とも称する)及び前輪モータ10fに定められる配分比κに基づいた駆動力(以下、「前輪駆動力F」とも称する)で前輪モータ10fを駆動する。
一方、後輪モータ10rは、三相交流モータとして構成される。後輪モータ10rは、電源としてのバッテリからの電力の供給を受けて駆動力を発生する。後輪モータ10rで生成される駆動力は後輪変速機16r及び後輪ドライブシャフト21rを介して後輪11rに伝達される。また、後輪モータ10rは、車両100の走行時に後輪11rに連れ回されて回転する際に発生する回生駆動力を交流電力に変換する。なお、後輪モータ10rに供給される電力は、後輪インバータ12rにより調節される。特に、後輪インバータ12rは、総要求駆動力Ffr及び後輪モータ10rに定められる配分比κに基づいた駆動力(以下、「後輪駆動力F」とも称する)で後輪モータ10rを駆動する。
さらに、車両100には、各種入力情報に基づいて、当該車両100の駆動力配分(すなわち、前輪駆動力F及び後輪駆動力F)を制御する駆動力制御装置としてのコントローラ50が設けられている。
コントローラ50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成され、以下で説明する車両制御における各処理を実行できるようにプログラムされている。特に、コントローラ50の機能は、車両コントローラ(VCM:Vehicle Control Module)、車両運動制御装置(VMC:Vehicle Motion Controller)、及びモータコントローラ等の任意の車載コンピュータ及び/又は車両100の外部に設置されるコンピュータにより実現することができる。なお、コントローラ50は一台のコンピュータハードウェアにより実現されても良いし、複数台のコンピュータハードウェアにより各種処理を分散させることで実現しても良い。
さらに、コントローラ50に入力される各種入力情報(推定値又は検出値)には、車両100に搭載されるアクセルペダルに対する操作量(以下、「アクセル開度APO」とも称する)、ピッチ角θ、及び車両100の前後方向における加速度(以下、「前後加速度a」とも称する)が含まれる。また、入力情報には必要に応じて、車両100の操舵角の検出値、車両100の走行路における路面勾配(勾配角)の検出値、及び/又は車両100の走行路における摩擦(路面μ)の検出値が含まれていても良い。
なお、本実施形態におけるアクセル開度APOは、車両100に要求される前後加速度aの値を表すパラメータである。一方で、車両100にいわゆる自動運転機能が搭載され、少なくとも要求加速度afrが所定の自動運転コントローラ(ADAS「Advanced Driver Assistance Systems」コントローラ又はAD「Autonomous Driving」コントローラなど)により決定される場合には指令駆動力に基づいて要求される前後加速度aの値が定まる。したがって、以下では、これを包括して「要求加速度afr」と表現する。
以下、コントローラ50の機能についてより詳細に説明する。
図2は、コントローラ50の構成を説明するブロック図である。図示のように、コントローラ50は、総要求駆動力演算部52と、基本駆動力配分部53と、要求加速度変化率演算部55と、ピッチレート調節部56と、を有する。
総要求駆動力演算部52は、アクセル開度APO及び適宜車速などの他のパラメータを入力として、車両100に求められる駆動力の総和である総要求駆動力Ffrを演算する。例えば、総要求駆動力演算部52は、アクセル開度APO及び車速に応じた適切な総要求駆動力Ffrを定めた所定マップを任意のメモリから読み出し、入力されたアクセル開度APO及び車速を当該マップに適用することで総要求駆動力Ffrを演算することができる。そして、総要求駆動力演算部52は、演算した総要求駆動力Ffrを、基本駆動力配分部53に出力する。
基本駆動力配分部53は、総要求駆動力演算部52からの総要求駆動力Ffrを入力として、所定の基本配分比κから、前輪駆動力Fの基本値(以下、「基本前輪駆動力Ff_b」とも称する)及び後輪駆動力Fの基本値(以下、「基本後輪駆動力Fr_b」とも称する)を演算する。ここで、基本配分比κは、車両100に係る車両特性が所望の特性をとるように、実験又はシミュレーションなどにより定められる配分比κの基本値である。なお、本実施形態で用いられる車両特性という用語には、主として、車両100の走行などの動作で消費されるエネルギーの効率に関する特性(燃費性能又は電費性能)、前輪11f又は後輪11rにおけるスリップのし難さに関する特性(スリップ性能)、及び要求加速度afrに対して前後加速度aの追従性(動力性能)などが含まれる。
また、基本配分比κに関する具体的な値は車両100の仕様及び走行シーンにおいて適宜変更し得る。一例として、平坦な舗装道路を一定速度で直進するような場合には、好ましい車両特性を実現する観点から、前輪駆動力F及び後輪駆動力Fを相互に同一の値になるように、基本配分比κを50(前輪):50(後輪)に設定することができる。なお、車両特性を実現する観点から定まる基本配分比κに基づいて、車両100のピッチ角θの基本値(以下、「基本ピッチ角θ_b *」とも称する)、及びピッチレートωの基本値(以下、「基本ピッチレートω_b *」とも称する)が定まる。本実施形態のピッチ角θ及びピッチレートωの意義について説明する。
図3は、車両100のピッチ運動を模式的に示す図である。図示のように、本実施形態におけるピッチ角θは、車両100の重心G回りにおける水平方向に対するピッチ方向(重心Gを通り車幅方向に延びる軸回りの回転方向)の変位として定義される。特に、本実施形態では、ピッチ角θの符号は、車両100の前輪11fが持ち上がる方向(ノーズアップ方向)を正とし、後輪11rが持ち上げる方向(ノーズダウン方向)を負となるように設定される。さらに、ピッチレートωは、このピッチ角θの時間変化率(すなわち、ピッチ角速度)として定義される。そして、このピッチ角θ及びピッチレートωは、上述した駆動力の配分比κ及び種々の走行環境(路面凹凸、及び路面勾配など)に応じて変化する。言い換えれば、前輪駆動力F及び後輪駆動力Fのそれぞれの大きさ(駆動力配分)を操作することで、ピッチ角θ及びピッチレートωを制御することができる。
図2に戻り、基本駆動力配分部53は、演算した基本前輪駆動力Ff_b及び基本後輪駆動力Fr_bをピッチレート調節部56に出力する。
ピッチレート調節部56は、要求加速度afr、基本前輪駆動力Ff_b、及び基本後輪駆動力Fr_bを入力情報とする。そして、ピッチレート調節部56は、要求加速度afrに基づいて、車両100の加速時又は減速時における所定条件下で設定すべき補正前輪駆動力Ff_c及び補正後輪駆動力Fr_cを求める。特に、ピッチレート調節部56は、補正ピッチレートω_c *を定める後述のピッチレート調節処理を実行する。
そして、ピッチレート調節部56は、ピッチレートωをピッチレート調節処理で得られた補正ピッチレートω_c *に一致させる場合の前輪駆動力F及び後輪駆動力Fをそれぞれ、補正前輪駆動力Ff_c及び補正後輪駆動力Fr_cとして求める。
より詳細には、ピッチレート調節部56は、車両100の加速時又は減速時においてピッチレートωを補正ピッチレートω_c *に近づけるための補正前輪駆動力Ff_c及び補正後輪駆動力Fr_cを演算する。より詳細に、ピッチレート調節部56は、ピッチ角θを減少させる際(車両100をノーズダウンさせる際)には、補正ピッチレートω_c *が負の値となるように補正前輪駆動力Ff_c及び補正後輪駆動力Fr_cを演算する。また、ピッチレート調節部56は、ピッチ角θを増加させる際(車両100をノーズアップさせる際)には、補正ピッチレートω_c *が正の値となるように補正前輪駆動力Ff_c及び補正後輪駆動力Fr_cを演算する。
特に、ピッチレート調節部56は、所定の記憶領域から車両100の構造上定まるフロントサスペンションのアンチダイブ角φの情報を参照して、補正ピッチレートω_c *を定める。なお、当該アンチダイブ角φの情報は例えば工場出荷時などの初期に上記記憶領域に入力されるものである。
より具体的に、ピッチレート調節部56は、車両100のアンチダイブ角φが正である場合には、補正前輪駆動力Ff_cを増加方向、及び/又は補正後輪駆動力Fr_cを減少方向に定めることで補正ピッチレートω_c *を負の値とする(ノーズダウンさせる)。また、ピッチレート調節部56は、アンチダイブ角φが正である場合に、補正前輪駆動力Ff_cを減少方向、及び/又は補正後輪駆動力Fr_cを増加方向に定めることで補正ピッチレートω_c *を正の値とする(ノーズアップさせる)。特に、本実施形態のピッチレート調節部56は、アンチダイブ角φが正で車両100が加速状態(要求加速度afr>0)である場合には、後輪駆動力Fを負の値に設定することでピッチ角θを減少させるように補正ピッチレートω_c *を定める。さらに、本実施形態のピッチレート調節部56は、アンチダイブ角φが正で車両100が減速状態(要求加速度afr<0)である場合には、前輪駆動力Fを負の値に設定することでピッチ角θを増加させるように補正ピッチレートω_c *を定める。
一方、ピッチレート調節部56は、車両100のアンチダイブ角φが負である場合には、補正前輪駆動力Ff_cを減少方向、及び/又は補正後輪駆動力Fr_cを増加方向に定めることで補正ピッチレートω_c *を負の値とする(ノーズダウンさせる)。また、ピッチレート調節部56は、アンチダイブ角φが負である場合に、補正前輪駆動力Ff_cを増加方向、及び/又は補正後輪駆動力Fr_cを減少方向に定めることで補正ピッチレートω_c *を正の値とする(ノーズアップさせる)。特に、本実施形態のピッチレート調節部56は、アンチダイブ角φが正で車両100が加速状態(要求加速度afr>0)である場合には、前輪駆動力Fを負の値に設定することでピッチ角θを減少させるように補正ピッチレートω_c *を定める。さらに、本実施形態のピッチレート調節部56は、アンチダイブ角φが正で車両100が減速状態(要求加速度afr<0)である場合には、後輪駆動力Fを負の値に設定することでピッチ角θを増加させるように補正ピッチレートω_c *を定める。
そして、ピッチレート調節部56は、車両100の車両100の加速時又は減速時における後述の所定条件下では前輪インバータ12f及び後輪インバータ12rにそれぞれ、補正前輪駆動力Ff_c及び補正後輪駆動力Fr_cを出力する。一方、ピッチレート調節部56は、上記所定条件下以外では前輪インバータ12f及び後輪インバータ12rにそれぞれ、基本前輪駆動力Ff_b及び基本後輪駆動力Fr_bを出力する。
以下では、ピッチレート調節処理を含む本実施形態の駆動力制御方法のさらなる詳細を説明する。
図4は、本実施形態の駆動力制御方法を説明するフローチャートである。なお、コントローラ50(特にピッチレート調節部56)は、図4のフローチャートに示されるルーチンを所定の演算周期毎に繰り返し実行する。
図示のように、本実施形態のコントローラ50は、各種入力情報に基づいて、車両100が自動運転により動作しているか否かの判定(ステップS1000)、加速度変動(前後加速度aの変化率)が一定値以上であるか否かの判定(ステップS1100)、車両100の操舵角が一定値以下であるか否かの判定(ステップS1200)、車両100の路面勾配が一定値以下であるか否かの判定(ステップS1300)、及び車両100が走行する路面の摩擦(路面μ)が一定値以上であるか否かの判定(ステップS1400)を実行する。
そして、コントローラ50は、ステップS1000及びステップS1100の双方の判定結果が肯定的である場合にステップS1200以降の処理を実行する。一方、ステップS1000又はステップS1100の判定結果が否定的である場合には、ピッチレートωを基本ピッチレートω_b *に設定する(ステップS1700)。
さらに、コントローラ50は、ステップS1200~ステップS1400の各判定に係る判定結果がすべて肯定的である場合に、補正ピッチレートω_c *として第1補正ピッチレートω_c1 *に設定する。一方、これら各判定に係る判定結果の内の少なくとも一つが否定的である場合に、コントローラ50は、補正ピッチレートω_c *として第2補正ピッチレートω_c2 *に設定する。以下、第1補正ピッチレートω_c1 *及び第2補正ピッチレートω_c2 *の詳細について説明する。
図5は、第1補正ピッチレートω_c1 *を設定した場合の車両100の動作点の一例について説明するマップである。なお、本マップにおいては、各配分比κに応じて定まる動作点の集合を破線で表す。すなわち、各破線は各配分比κに応じて定まる一定のピッチレートωの動作点の集合を表す。特に、図5においては具体的な配分比κの値(50:50など)を記載しているが、これは理解の補助のために記載したものであり、本実施形態の構成を限定する趣旨ではない。
図5から理解されるように、第1補正ピッチレートω_c1 *は、車両100の加減速(前後加速度aの正負)に応じて乗員に作用する慣性力を打ち消すようにピッチ力を生じさせるように設定される。より詳細には、乗員にシートへの押し付け方向の慣性力が作用する車両100の加速時においては、これを打ち消す方向のピッチ力(乗員をシートから離間させる方向のピッチ力)を生じさせるべく、ピッチ角θを減少させるように(車両100をノーズダウンさせるように)、第1補正ピッチレートω_c1 *を定める(図5の(i)参照)。
一方、乗員をシートから離間させる方向の慣性力が作用する車両100の減速時においては、これを打ち消す方向のピッチ力(乗員をシートに押し付ける方向のピッチ力)を生じさせるべく、ピッチ角θを増加させるように(車両100をノーズアップさせるように)、第1補正ピッチレートω_c1 *を定める(図5の(ii)参照)。
次に、図6のタイムチャートを参照して、車両100の加速時に第1補正ピッチレートω_c1 *を設定した場合の制御結果のさらなる詳細について説明する。特に、図6(A)は前後加速度aの経時変化を示し、図6(B)はピッチ角θの経時変化を示している。
図示のように、車両100の加速が検出されるタイミング(時刻t2)の以前の時刻t1において第1補正ピッチレートω_c1 *が設定されることで、前後加速度aの増加に応じてピッチ角θが減少(ノーズダウン)する。
特に、本実施形態では、実際に加速が始まる時刻t2よりも前に、ピッチ角θの減少制御が開始される。これにより、車両100の乗員に対して、実際の前後加速度aの変化に先立ってピッチ角θの変化を認識させることができる。したがって、実際に前後加速度aが変化し始める時刻t2より後にピッチ角θが減少する場合(図6の破線グラフ)と比べて、乗員に前後加速度aの変化が生じることを認識させて、当該変化に対する準備を促すことができる。
さらに、図7は、車両100の減速時に第1補正ピッチレートω_c1 *を設定した場合の制御結果を説明する図である。
図示のように、車両100の減速が検出されるタイミング(時刻t2)の以前の時刻t1において第1補正ピッチレートω_c1 *が設定されることで、前後加速度aの減少に応じてピッチ角θが増加(ノーズアップ)する。
特に、図7に示す例でも、実際に減速が始まる時刻t2よりも前に、ピッチ角θの増加制御が開始される。これにより、車両100の乗員に対して、前後加速度aの変化が生じることを予め認識させて、当該変化に対する準備を促すことができる。
次に、第2補正ピッチレートω_c2 *について説明する。第2補正ピッチレートω_c2 *は、ステップS1200~ステップS1400の各判定の何れかの判定結果が否定的であった場合に設定される。特に、第2補正ピッチレートω_c2 *は、第1補正ピッチレートω_c1 *に比べてピッチ角θの減少量が抑制されるように設定される。
特に、コントローラ50は、操舵角が一定値を超える場合(ステップS1200のNo)に、ピッチレートωを第2補正ピッチレートω_c2 *に設定する。特に、第2補正ピッチレートω_c2 *の絶対値は、操舵角が大きいほど小さい値に設定される。
これにより、操舵角が大きくなる車両100の旋回時などにおいては、操舵角の大きさ(旋回の程度)に応じてピッチ変位を抑えて、いわゆるオーバーステア又はアンダーステアを回避することができる。
さらに、コントローラ50は、勾配角が一定値を超える場合(ステップS1300のNo)に、ピッチレートωを第2補正ピッチレートω_c2 *に設定する。特に、第2補正ピッチレートω_c2 *の絶対値は、勾配角が大きいほど小さい値に設定される。
これにより、車両100が登坂路を走行しているシーンにおいては、勾配角の大きさ(登坂路の傾斜の程度)に応じてピッチ変位を抑えて、勾配による意図しない車両100の前進又は後退を回避することができる。
また、コントローラ50は、走行路の摩擦(路面μ)が一定値未満である場合(ステップS1400のNo)に、ピッチレートωを第2補正ピッチレートω_c2 *に設定する。特に、第2補正ピッチレートω_c2 *の絶対値は、路面μが小さいほど小さい値に設定される。
これにより、車両100が滑りやすい路面を走行しているシーンにおいては、路面μの小ささ(滑りやすさ)に応じてピッチ変位を抑えて、車両100のスリップを回避することができる。
図8は、第2補正ピッチレートω_c2 *を適用した場合の制御結果の一例を示すタイムチャートである。なお、図8においては、参考のため、第1補正ピッチレートω_c1 *及び基本ピッチレートω_b *を適用した場合のピッチ角θの経時変化を部分的にそれぞれ、一点鎖線及び破線で示している。
図示のように、本実施形態の制御によれば、車両100の操舵角が一定値以上となったことが検出されると(時刻t3)、当該検出中における前後加速度aの増加によるピッチレート調節処理においてピッチレートωの目標値として第2補正ピッチレートω_c2 *が設定される。これにより、第1補正ピッチレートω_c1 *が設定される場合よりもピッチ角θの制御量が低減される。同様に勾配角が一定値以上となったことが検出されると(時刻t4)、当該検出中における前後加速度aの増加によるピッチレート調節処理において第2補正ピッチレートω_c2 *が設定され、ピッチ角θの制御量が低減される。さらに、路面μが一定値未満となってことが検出されると(時刻t5)、当該検出中における前後加速度aの増加によるピッチレート調節処理において第2補正ピッチレートω_c2 *が設定され、ピッチ角θの制御量が低減される。
以下、上述した本実施形態の構成による作用効果についてより詳細に説明する。
本実施形態では、車両100のピッチ角θが所望の挙動をとるように、前輪11fに接続された第1駆動源としての前輪モータ10f及び後輪11rに接続された第2駆動源としての後輪モータ10rのそれぞれに対する駆動力配分(F,F)を制御する駆動力制御方法が提供される。この駆動力制御方法では、車両100に対する要求加速度afrに基づいて、該要求加速度afrに応じた前後加速度aを打ち消す方向のピッチ変位を発生させるようにピッチレートωを調節するピッチレート調節処理(ステップS1500又はステップS1600)を実行する。そして、ピッチレート調節処理では、前輪モータ10fの駆動力(前輪駆動力F)と後輪モータ10rの駆動力(後輪駆動力F)を異なる向きに制御することでピッチレートωを調節する。
これにより、調節されたピッチレートωを実現するように前輪駆動力F及び後輪駆動力Fの相互の正負の関係を制御することで、前後方向の加減速に起因して乗員に作用する前後方向の慣性力を抑制し、ピッチ方向における乗員の頭部の揺れを抑制することができる。したがって、複雑な機械的構造を用いることなく、乗員の車酔いを抑制することのできる駆動力配分の制御ロジックが実現される。
特に、本実施形態では、ピッチレート調節処理を、要求加速度afrの変化の指令が発せられた後(図6又は図7の時刻t1以降)であって前後加速度aが実際に変化するタイミング(時刻t2)の以前に実行する。
これにより、車両100の乗員に対し、実際の前後加速度aの変化に先立ってピッチ角θの変化を認識させることを通じて、当該前後加速度aの変化が生じることを認識させることができる。したがって、乗員に予め前後加速度aの変化に対する備えを行う機会を与えることができるので、前後加速度aの変化による乗員への影響の軽減を図ることができる。
特に、ピッチレート調節処理では、前後加速度aが正であると(車両100の加速時であると)、後輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを負の値とし、前後加速度aが負であると(車両100の減速時であると)、前輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを正の値にする。なお、便宜上、以下ではこの制御ロジックを「第1ピッチ制御」とも称する。
これにより、アンチダイブ角φが正となる構造の車両100に対し、前後加速度aに応じて好適にピッチ角θを減少又は増加させるための具体的な制御態様が実現される。
また、ピッチレート調節処理では、前後加速度aが正であると(車両100の加速時であると)、前輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを負の値とし、前後加速度aが負であると(車両100の減速時であると)、後輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを正の値にする。なお、便宜上、以下ではこの制御ロジックを「第2ピッチ制御」とも称する。
これにより、アンチダイブ角φが負となる構造の車両100に対し、前後加速度aに応じて好適にピッチ角θを減少又は増加させるための具体的な制御態様が実現される。
さらに、ピッチレート調節処理では、車両100の前方側のサスペンションのアンチダイブ角φが正である場合には、前後加速度aが正であると、後輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを負の値とし、前後加速度aが負であると、前輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを正の値にする。一方で、車両100の前方側のサスペンションのアンチダイブ角φが負である場合には、前後加速度aが正であると、前輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを負の値とし、前後加速度aが負であると、後輪駆動力Fを負に設定することでピッチレートωを正の値にする。
これにより、車両100のアンチダイブ角φが正又は負の何れの構造であっても、前後加速度aに応じて好適なピッチ角θの減少又は増加を実現するための具体的な制御態様が実現される。すなわち、アンチダイブ角φが正の車両100及び負の車両100の双方に用いることのできる汎用的なピッチ角θの制御ロジックを実現することができる。
また、本実施形態では、車両100の操舵角が大きいほど、車両100の勾配角が大きいほど、及び/又は車両100の走行路の摩擦が小さいほど、ピッチレートωの絶対値を小さくする。
これにより、ピッチレート調節処理の下においても、車両100の走行環境に応じてピッチ角θの挙動が車両特性を考慮して定まる基本ピッチ角θ_b *の挙動から過剰に離れてしまう事態の発生を抑制することができる。
また、車両100が自動運転により動作している場合にピッチレート調節処理を実行し、車両100が手動運転操作により動作している場合にピッチレートωを所定の基本ピッチレートω_b *に設定する(ステップS1700)。そして、基本ピッチレートω_b *を、車両100に対する要求加速度afrに基づいて所望の車両特性を得る観点から定まる基本駆動力配分(基本配分比κ)に応じて定める。
これにより、自動運転時においてピッチ方向における乗員の頭部の揺れを抑制し得るピッチ角θの制御を実現することができる。特に、自動運転時は、要求加速度afrの変化指令が運転者の操作(アクセルペダルへの操作など)に直結しない。このため、自動運転時には、乗員が前後加速度aの変化を予測し難いことが想定される。したがって、この場合にのみピッチ角θを基本ピッチ角θ_b *に対して変更するピッチレート調節処理を実行することで、乗員にとって想定外の前後加速度aの変化に伴う当該乗員の身体の揺れを好適に抑制することができる。一方で、乗員が前後加速度aの変化を予測し易い手動運転操作時において、前後加速度aの変化をより適切に予測した上でピッチレートωを制御することができる。一方、前後加速度aの変化が予測し難いシーンにおいては車両特性を重視したピッチレートωの制御を実行することで、車両100の挙動の安定化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、上記駆動力制御方法を実行するための駆動力制御装置としてのコントローラ50が提供される。
特に、コントローラ50は、車両100のピッチ角θが所望の挙動をとるように、前輪11fに接続された第1駆動源としての前輪モータ10f及び後輪11rに接続された第2駆動源としての後輪モータ10rのそれぞれに対する駆動力配分(F,F)を制御する駆動力制御装置として機能する。そして、コントローラ50は、車両100に対する要求加速度afrに基づいて、該要求加速度afrに応じた前後加速度aを打ち消す方向のピッチ変位を発生させるようにピッチレートωを調節するピッチレート調節部(ステップS1500又はステップS1600)を備える。そして、ピッチレート調節部は、前輪モータ10fの駆動力(前輪駆動力F)と後輪モータ10rの駆動力(後輪駆動力F)を異なる向きに制御することでピッチレートωを調節する。
これにより、上記駆動力制御方法を実行するために好適な制御装置の構成が実現されることとなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、コントローラ50(ピッチレート調節部56)が、車両100の構造から定まるアンチダイブ角φを参照して、上記第1ピッチ制御及び第2ピッチ制御を選択的に実行可能に構成される例を説明した。しかしながら、これに限られず、コントローラ50が、第1ピッチ制御及び第2ピッチ制御の何れか一方のみを実行可能に構成されても良い。これにより、予め把握されている車両100のアンチダイブ角φの正・負に応じて、それぞれに適したピッチ角θの制御ロジックを実装するコントローラ50を用いれば、実質的に本実施形態の駆動力制御方法において想定される作用効果が得られるとともに、コントローラ50に実装するプログラムの簡素化も図ることができる。
10 駆動モータ
10f 前輪モータ
10r 後輪モータ
11f 前輪
11r 後輪
12f 前輪インバータ
12r 後輪インバータ
50 コントローラ
52 総要求駆動力演算部
53 基本駆動力配分部
55 要求加速度変化率演算部
56 ピッチレート調節部
100 車両

Claims (8)

  1. 車両のピッチ角が所望の挙動をとるように、前輪に接続された第1駆動源及び後輪に接続された第2駆動源のそれぞれに対する駆動力配分を制御する駆動力制御方法であって、
    前記車両に対する要求加速度に基づいて、該要求加速度に応じた前後加速度を打ち消す方向のピッチ変位を発生させるようにピッチレートを調節するピッチレート調節処理を実行し、
    前記ピッチレート調節処理では、前記第1駆動源の駆動力と前記第2駆動源の駆動力の正負が相互に異なるように前記駆動力配分を制御することで前記ピッチレートを調節し、
    前記ピッチレート調節処理を、前記要求加速度の変化の指令が発せられた後であって前記前後加速度が実際に変化するタイミングの以前に実行する、
    駆動力制御方法。
  2. 請求項に記載の駆動力制御方法であって、
    前記ピッチレート調節処理では、
    前記前後加速度が正であると、前記第2駆動源の駆動力を負に設定することで前記ピッチレートを負の値とし、
    前記前後加速度が負であると、前記第1駆動源の駆動力を負に設定することで前記ピッチレートを正の値とする、
    駆動力制御方法。
  3. 請求項に記載の駆動力制御方法であって、
    前記ピッチレート調節処理では、
    前記車両の前方側のサスペンションのアンチダイブ角が正である場合には、
    前記前後加速度が正であると、前記第2駆動源の駆動力を負に設定することで前記ピッチレートを負の値とし、
    前記前後加速度が負であると、前記第1駆動源の駆動力を負に設定することで前記ピッチレートを正の値とし、
    前記アンチダイブ角が負である場合には、
    前記前後加速度が正であると、前記第1駆動源の駆動力を負に設定することで前記ピッチレートを負の値とし、
    前記前後加速度が負であると、前記第2駆動源の駆動力を負に設定することで前記ピッチレートを正の値とする、
    駆動力制御方法。
  4. 請求項1~の何れか1項に記載の駆動力制御方法であって、
    さらに、前記車両の操舵角が大きいほど、前記ピッチレートの絶対値を小さくする、
    駆動力制御方法。
  5. 請求項1~の何れか1項に記載の駆動力制御方法であって、
    さらに、前記車両の走行路の勾配角が大きいほど、前記ピッチレートの絶対値を小さくする、
    駆動力制御方法。
  6. 請求項1~の何れか1項に記載の駆動力制御方法であって、
    さらに、前記車両の走行路の摩擦が小さいほど、前記ピッチレートの絶対値を小さくする、
    駆動力制御方法。
  7. 請求項1~の何れか1項に記載の駆動力制御方法であって、
    前記車両が自動運転により動作している場合に前記ピッチレート調節処理を実行し、
    前記車両が手動運転操作により動作している場合に前記ピッチレートを所定の基本ピッチレートに設定し、
    前記基本ピッチレートを、前記車両に対する要求加速度に基づいて所望の車両特性を得る観点から定まる基本駆動力配分に応じて定める、
    駆動力制御方法。
  8. 車両のピッチ角が所望の挙動をとるように、前輪に接続された第1駆動源及び後輪に接続された第2駆動源のそれぞれに対する駆動力配分を制御する駆動力制御装置であって、
    前記車両に対する要求加速度に基づいて、該要求加速度に応じた前後加速度を打ち消す方向のピッチ変位を発生させるようにピッチレートを調節するピッチレート調節部を備え、
    前記ピッチレート調節部は、
    前記第1駆動源の駆動力と前記第2駆動源の駆動力の正負が相互に異なるように前記駆動力配分を制御することで前記ピッチレートを調節し、
    前記ピッチレートの調節を、前記要求加速度の変化の指令が発せられた後であって前記前後加速度が実際に変化するタイミングの以前に実行する、
    駆動力制御装置。
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