図面を参照して実施例のコネクティングロッドの製造方法(以下、単に製造方法と称することがある)について説明する。まず、図1を参照して、実施例の製造方法で製造されるコネクティングロッド10について説明する。なお、以下では、理解を助けるために、図中に示す座標におけるZ軸方向正側を単に「上」と表現することがあり、その反対方向のZ軸方向負側を単に「下」と表現することがある。
コネクティングロッド10は、キャップ部10cと、ロッド部10rと、を備えている。キャップ部10cは、2本のボルト2によって上方からロッド部10rに固定されている。キャップ部10cとロッド部10rとは、合わせ面4で互いに当接している。コネクティングロッド10の上側の端部には、シャフト貫通孔10sが形成されている。コネクティングロッド10の下側の端部には、ピストン貫通孔10pが形成されている。コネクティングロッド10は、車両に搭載されるエンジンを構成する部品である。エンジンに組み込まれる際、シャフト貫通孔10sには、クランクシャフト(図示省略)が挿通する。同様に、ピストン貫通孔10pには、ピストン(図示省略)が接続される。コネクティングロッド10は、ピストン貫通孔10pに接続されているピストンの往復運動を、シャフト貫通孔10sを挿通するクランクシャフトの回転運動に変換する。
以下、図2および図3を参照して、コネクティングロッド10を製造するための製造方法について説明する。この製造方法は、準備工程と、レーザ加工工程と、破断工程と、組立工程と、を備えている。準備工程では、コネクティングロッド10の母材となる半製品10оを用意する。図2に示されるように、半製品10оには、準備工程の段階で既にシャフト貫通孔10sが形成されている。
レーザ加工工程では、レーザ加工装置20によってシャフト貫通孔10sの内面にレーザ痕群8を形成する。レーザ痕群8は、複数のレーザ痕により構成されている。レーザ加工装置20は、シャフト貫通孔10sの軸方向(すなわち、図2の紙面奥手前方向)に沿って移動しながら複数のレーザ22をシャフト貫通孔10sの内面に照射する。レーザ加工装置20は、シャフト貫通孔10sの内面にシャフト貫通孔10sの軸方向に沿ってレーザ痕群8を形成する。レーザ加工装置20は、X軸方向の両側(すなわち、図2の紙面左右側)にレーザ22を照射する。レーザ加工装置20は、シャフト貫通孔10sの内面の対向する2箇所に、レーザ痕群8を形成する。
破断工程では、半製品10оの下側(すなわち、ロッド部10rに相当する部分)を固定した状態で、半製品10оの上側(すなわち、キャップ部10cに相当する部分)を上方に引っ張る。図2を参照して説明したように、シャフト貫通孔10sの内面には、レーザ加工工程において形成されたレーザ痕群8が形成されている。レーザ痕群8は、複数のレーザ痕によって構成されている。シャフト貫通孔10sの内面でレーザ痕群8が形成されている部位では、その強度が局所的に弱くなる。このため、半製品10оの上側が上方に引っ張られると、レーザ痕群8を起点として半製品10оが破断する。その結果、図3に示されるように、半製品10оは、シャフト貫通孔10sの内面の上側の一部を有するキャップ部10cと、下側の一部を有するロッド部10rに分割される。
図2および図3に示されるように、半製品10оには、上下方向に延びているボルト穴2hが形成されている。ボルト穴2hの上側の一部はキャップ部10cによって形成されており、下側の一部はロッド部10rによって形成されている。組立工程では、クランクシャフト(不図示)の一方側からロッド部10rを配置して、他方側からキャップ部10cを配置する。その結果、クランクシャフトがシャフト貫通孔10sに挿通する。その後、図1を参照して説明したように、2本のボルト2によってキャップ部10cとロッド部10rとを固定する。このように、実施例の製造方法は、準備工程、レーザ加工工程、破断工程および組立工程によって、シャフト貫通孔10sにクランクシャフトが挿通されたコネクティングロッド10(図1参照)を製造する。
組立工程でボルト2(図1参照)を締結する際、キャップ部10cは、ボルト2とともにシャフト貫通孔10sの軸方向に回転しようとする。先に述べたように、キャップ部10cとロッド部10rとは半製品10оを破断することで形成される。このため、キャップ部10cのキャップ破断面11cおよびロッド部10rのロッド破断面11rには、キャップ部10cの回転を規制する形状(例えば、位置決めボス)等を形成することができない。ボルト2によってキャップ部10cとロッド部10rとをボルト2で固定する際、キャップ部10cがロッド部10rに対して回転しやすい。すなわち、組立工程でキャップ部10cの位置が、ロッド部10rの位置に対してずれやすい。
キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれを抑制するための一つの方法として、キャップ部10cのキャップ破断面11cと、ロッド部10rのロッド破断面11rとの表面を粗くすることが考えられる。例えばキャップ破断面11cの表面が粗く、その表面に細かな突条が形成されている場合、破断したロッド破断面11rの表面には、キャップ破断面11cの突条と嵌合する凹部が形成される。すなわち、キャップ破断面11cとロッド破断面11rの表面が粗い場合は、キャップ部10cの位置が、ロッド部10rの位置に対してずれにくい。
しかしながら、キャップ破断面11cとロッド破断面11rとの表面が粗くなると、組立工程でボルト2を締結する際、大きな軸力が必要となる。
図4を参照して、実施例の製造方法のレーザ加工工程において形成されるレーザ痕群と、そのレーザ痕群を起点として破断することで形成される破断面の表面の形状との関係について説明する。図4(A)は、レーザ加工工程でレーザ痕群8が形成された、ロッド破断面11rの位置における断面図である。図4(A)のハッチングは、半製品10оの実断面を示している。
図4(A)に示されるように、レーザ痕群8は、第1レーザ痕群8aと、第2レーザ痕群8bと、を備えている。シャフト貫通孔10sの軸10a方向で半製品10оの中央部に設けられている第1レーザ痕群8aは、微小ピッチで各レーザ痕が形成されている。軸10a方向で半製品10оの両端部に設けられている第2レーザ痕群8bは、第1レーザ痕群8aよりも大きなピッチで各レーザ痕が形成されている。すなわち、レーザ痕群8は、軸10a方向における一部の範囲では、微小ピッチで形成され、他の一部の範囲では、微小ピッチよりも大きいピッチで形成されている。
図4(B)は、図4(A)のレーザ痕群8が形成された半製品10оを上述した破断工程で分割したロッド部10rを、図3のL1方向から観測したロッド破断面11rの表面の形状を示している。図4(B)に示されるように、ロッド破断面11rのうち第1レーザ痕群8aを起点に形成された第1破断面11aは、表面が滑らかとなっている。一方、ロッド破断面11rのうち第2レーザ痕群8bを起点に形成された第2破断面11bは、表面が粗くなっている。先に述べたように、表面が粗い第2破断面11bは、組立工程でキャップ部10cとロッド部10rの位置を規制するが、ボルト2の締結時の軸力を増加させる。一方、表面が滑らかな第1破断面11aは、ボルト2の締結時の軸力を低下させる。このように、実施例の製造方法は、ロッド破断面11rの軸10a方向における一部の範囲でキャップ部10c(図1参照)とロッド部10rとの位置を規制するとともに、軸10a方向における他の一部の範囲を滑らかにすることで、軸力の増加を抑制することができる。実施例の製造方法は、図4(B)に示されるように、ロッド破断面11rのうち、ボルト2(図1参照)の締結時に軸力がかかるボルト穴2hの周辺部を滑らかにすることで、ボルト2の締結時の軸力の増加を効果的に抑制することができる。また、実施例の製造方法は、軸力への寄与が少ない半製品10оの軸10a方向の端部の表面を粗くして、キャップ部10c(図1参照)とロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。
破断工程で起点となるレーザ痕群を形成するレーザ加工工程の加工条件は、図4(A)に示したものに限定されない。図5~図13を参照して、レーザ加工工程の加工条件の変形例を説明する。
第1変形例のレーザ加工工程では、図5に示されるように、レーザ痕群80の端部に微小ピッチの第1レーザ痕群8aが形成されており、レーザ痕群80の中央部に第1レーザ痕群8aよりも大きなピッチで第2レーザ痕群8bが形成されている。これにより、第1変形例の製造方法は、例えばボルト2(図1参照)の例えば、締結時の軸力が大きい場合に、ロッド破断面11rのうち、ボルト2の締結時に軸力がかかるボルト穴2hの周辺部でキャップ部10c(図1参照)とロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。また、第1変形例の製造方法は、半製品10оの軸10a方向の端部の表面を滑らかにして、ボルト2の締結時の軸力が必要以上に増加することを抑制することができる。
第2変形例のレーザ加工工程では、図6に示されるように、レーザ痕群81の軸10a方向に2分割した一方側に微小ピッチの第1レーザ痕群8aが形成されており、他方側に第1レーザ痕群8aよりも大きなピッチで第2レーザ痕群8bが形成されている。図2を参照して説明したように、レーザ加工工程では、レーザ加工装置20が、軸10a方向に沿って移動しながら複数のレーザ22を照射する。このため、第2変形例のレーザ加工工程では、レーザ加工装置20は、レーザ22を照射するピッチを一度変更する。一方、上述した実施例と第1変形例のレーザ加工工程では、レーザ加工装置20は、レーザ22を照射するピッチを2度変更する。第2変形例の製造方法では、半製品10оを軸10a方向に3つに分割してレーザ痕のピッチを変更するレーザ痕群8、80を形成するレーザ加工工程に比して、レーザ加工工程を簡略化することができる。なお、第2変形例のレーザ加工工程では、図6に示されるように、Y軸方向負側(すなわち、図6の紙面上側)に第1レーザ痕群8aが形成されており、Y軸方向正側(すなわち、図6の紙面下側)に第2レーザ痕群8bが形成されている。しかしながら、別の変形例では、Y軸方向負側に第2レーザ痕群8bが形成されており、Y軸方向正側に第1レーザ痕群8aが形成されていてもよい。
第3変形例のレーザ加工工程では、図7に示されるように、軸10a方向におけるボルト穴2周辺にのみ微小ピッチの第1レーザ痕群8aが形成されており、軸10a方向における両端にはレーザ痕が形成されていない。すなわち、第3実施例の製造方法は、レーザ加工工程で、半製品10оの軸10a方向における一部の範囲では第1レーザ痕群8aが形成され、軸10a方向における他の一部の範囲ではレーザ痕群が形成されない。このように軸10a方向の一部にレーザ痕群82が形成されている半製品10оであっても、部分的に形成された第1レーザ痕群8aを起点として、半製品10оをロッド部10rとキャップ部10c(図3参照)に分割される。このため、軸10a方向における他の一部の範囲では、レーザ痕群の形成を省略してもよい。
レーザ痕群の形成が省略された範囲の破断面は、微小ピッチの第1レーザ痕群8aを起点に破断した破断面に比して表面が粗くなる。このため、レーザ痕群の形成が省略された範囲の破断面は、ボルト2(図1参照)締結時にキャップ部10cとロッド部10rの位置がずれることを抑制することができる。第3変形例のレーザ加工工程では、形成するレーザ痕群の軸10a方向の長さを短くすることで、レーザ痕群を形成する時間を短くすることができる。
また、第4変形例のレーザ加工工程では、図8に示されるように、半製品10оの軸10a方向の端部にのみ微小ピッチの第1レーザ痕群8aを形成し、ボルト穴2周辺のレーザ痕群の形成を省略してもよい。これにより、図5を参照して説明した第2変形例のレーザ痕群80と同様に、締結時の軸力が大きい場合に、ロッド破断面11rのうち、ボルト2の締結時に軸力がかかるボルト穴2hの周辺部でキャップ部10c(図1参照)とロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。
図9~図13を参照して、さらなる変形例の製造方法について説明する。図9~図13は、図2のL2方向から観測したシャフト貫通孔10sの内面に形成されたレーザ痕群の上下方向の位置を示している。図4~図8を参照して説明した実施例および変形例では、レーザ加工工程において、レーザ痕群はシャフト貫通孔10sの軸10a方向に沿って平坦に(すなわち、軸10a方向に平行に)形成されている。発明者らは、様々な加工条件で形成したレーザ痕群で破断実験を繰り返す中で、レーザ痕群を非平坦に(すなわち、軸10a方向に対して傾斜させて)形成した場合であっても、傾斜したレーザ痕群を起点に半製品10оを破断することができることを発見した。すなわち、本明細書では、「貫通孔の軸方向に沿って複数のレーザ痕を形成するレーザ加工工程」は、シャフト貫通孔10sの軸10a方向に沿って平行なレーザ痕群を形成するレーザ加工工程と、シャフト貫通孔10sの軸10a方向に沿って変化しているレーザ痕群を形成するレーザ加工工程と、を含む。
第5変形例のレーザ加工工程では、図9に示されるように、レーザ痕群84が、第1レーザ痕群8aと、第3レーザ痕群8cと、を備えている。第1レーザ痕群8aと第3レーザ痕群8cとは、ともに微小ピッチで形成されている。第3レーザ痕群8cは、Y軸方向正側(すなわち、図9の紙面右側)ほど上側に傾斜するように形成されている。第1レーザ痕群8aは、軸10a方向(すなわち、Y軸方向)に平行に形成されている。すなわち、第5変形例のレーザ加工工程は、軸10a方向における一部の範囲で、軸10a方向に平行に微小ピッチの第1レーザ痕群8aを形成する。第5変形例のレーザ加工工程は、軸10a方向における他の一部の範囲では、軸10a方向に対して傾斜した微小ピッチの第3レーザ痕群8cを形成する。先に述べたように、第1レーザ痕群8aを起点として破断した破断面の表面は滑らかとなり、ボルト2(図1参照)の締結時の軸力増加を抑制する。一方、軸10a方向に対して傾斜した第3レーザ痕群8cを起点に破断した破断面は、軸10a方向に対して傾斜する。軸10a方向に対して傾斜している破断面は、ボルト2の締結時のキャップ部10c(図1参照)の回転を規制する。軸10a方向に対して傾斜している破断面は、キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。なお、図9~図11では、理解を助けるため、第1レーザ痕群8aと軸10aとを、上下方向でずらして記載している。しかしながら、実際の第1レーザ痕群8aは、軸10aと上下方向で同じ位置に形成される。
また、図10に示されるように、第6変形例のレーザ加工工程で形成されるレーザ痕群85は、第1レーザ痕群8aと、第3レーザ痕群8cに加えて、さらに第4レーザ痕群8dを備えてもよい。その場合、第4レーザ痕群8dは、微小ピッチで形成され、Y軸方向負側(すなわち、図10の紙面左側)ほど上側に傾斜して形成されてもよい。レーザ痕群85の中央部に軸10a方向と平行に形成されている第1レーザ痕群8aを起点に破断した破断面によりボルト2(図1参照)の締結時の軸力増加を抑制する。レーザ痕群85の軸10a方向の端部に形成されている第3レーザ痕群8cと第4レーザ痕群8dとを起点に破断した破断面は、軸10a方向に対して傾斜する。レーザ加工工程でレーザ痕群85を形成して、半製品10о(図2参照)の軸10a方向の両端に傾斜している破断面を設けることで、キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。
さらに、図11に示されるように、第7変形例のレーザ加工工程で形成されるレーザ痕群86は、レーザ痕群85の第4レーザ痕群8dに代えて、軸10a方向におけるY軸方向負側(すなわち、図11の紙面左側)ほど下側に傾斜している第5レーザ痕群8eを備えてもよい。第5レーザ痕群8eも、第4レーザ痕群8dと同様に微小ピッチで形成されている。第5レーザ痕群8eを起点に破断した破断面は、軸10a方向に対して傾斜する。レーザ加工工程でレーザ痕群86を形成して、半製品10оの軸10a方向の両端に傾斜している破断面を設けることで、キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。
また、図12に示されるように、第8変形例のレーザ加工工程で形成されるレーザ痕群87は、軸10a方向に対して傾斜している第6レーザ痕群8fと、第7レーザ痕群8gとを備えてもよい。第6レーザ痕群8fは、軸10a方向のY軸方向正側(すなわち、図12の紙面右側)ほど下側に傾斜している。第7レーザ痕群8gは、軸10a方向のY軸方向正側(すなわち、図12の紙面右側)ほど上側に傾斜している。第6レーザ痕群8fと、第7レーザ痕群8gとは、半製品10оの軸10a方向の中央部で交わっている。レーザ痕群87は、軸10a方向に平行なレーザ痕群を備えていない。第6レーザ痕群8fと、第7レーザ痕群8gとは、ともに微小ピッチで形成されている。第6レーザ痕群8fと第7レーザ痕群8gとを起点に破断した破断面は、軸10a方向に対して傾斜する。レーザ加工工程でレーザ痕群87を形成して、半製品10оの軸10a方向の両端に、傾斜している破断面を設けることで、キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。
さらに、図13に示されるように、第9変形例のレーザ加工工程で形成されるレーザ痕群88は、軸10a方向に対して傾斜している3個の第7レーザ痕群8hと、3個の第8レーザ痕群8iとを備えてもよい。第7レーザ痕群8hは、軸10a方向のY軸方向正側(すなわち、図13の紙面右側)ほど下側に傾斜している。第8レーザ痕群8iは、軸10a方向のY軸方向正側(すなわち、図12の紙面右側)ほど上側に傾斜している。レーザ痕群88には、第7レーザ痕群8hと第8レーザ痕群8iとが軸10a方向で交互に配置されている。軸10a方向に対して傾斜している複数のレーザ痕群を起点に破断した破断面は、軸10a方向に対して傾斜する。レーザ加工工程でレーザ痕群88を形成して軸10a方向に傾斜している破断面の数を増やすことで、キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれをさらに抑制することができる。
(第2実施例)
以下、図14~図16を参照して、第2実施例の製造方法について説明する。図14は、レーザ加工工程における半製品10оの正面図を示す。第2実施例におけるレーザ加工工程は、基本的には図2で説明したレーザ加工工程と同様である。第2実施例の製造方法では、レーザ加工装置20は、複数のレーザ22の双方を、一直線上に照射する。すなわち、複数のレーザ22の双方は、レーザ加工装置20によって、軸10aに直交する方向に沿って照射される。レーザ加工装置20は、軸10aを中心に矢印Rに沿って回転しながら軸10aの方向(すなわち、図14の紙面奥手前方向)に沿ってシャフト貫通孔10sの内側を移動する。
図15(A)は、シャフト貫通孔10sの内面のX軸方向正側(すなわち、図14の矢印L3の方向側)にレーザ22によって配列されるレーザ痕群を示す。図15(B)は、シャフト貫通孔10sの内面のX軸方向負側(すなわち、図14の矢印L4の方向側)にレーザ22によって配列されるレーザ痕群を示す。すなわち、図15(A)は、コネクティングロッド10の左右方向の右側において内面上にレーザ22が描く第1軌跡90aを示し、図15(B)は、左側において内面上にレーザ22が描く第2軌跡90bを示す。
図15(A)に示されるように、第1軌跡90aは、第1傾斜部91と第2傾斜部92とを備える。第1傾斜部91は、軸10aのキャップ部10c側に位置する端P1から第1軌跡90aの中央部に向かって軸10aに近づくように傾斜する。第1傾斜部91は、第1軌跡90aの中央部側の端において、第2傾斜部92と接続される。第2傾斜部92は、軸10aのキャップ部10c側に位置する端P2から第1軌跡90aの中央部に向かって軸10aに近づくように傾斜する。その結果、第1軌跡90aは、軸方向の両端P1,P2から中央部に向かって下向きに変位するV字形状を有する。別言すれば、第1軌跡90aは、ロッド部10r側に変位する凸形状を有する。
第1傾斜部91と軸10aとの間には、第1傾斜角θ1が形成される。第2傾斜部92と軸10aとの間には、第2傾斜角θ2が形成される。なお、本実施例では、第1軌跡90aは、半製品10оの軸方向の中線C1を基準として軸10aの方向に対称形状を有している。その結果、第1傾斜角θ1は、第2傾斜角θ2と等しくなる。
同様に、図15(B)に示されるように、第2軌跡90bは、第3傾斜部93と第4傾斜部94とを備える。第3傾斜部93は、軸10aのロッド部10r側に位置する端P3から第2軌跡90bの中央部に向かって軸10aに近づくように傾斜する。第3傾斜部93は、第2軌跡90bの中央部側の端において、第4傾斜部94と接続される。第4傾斜部94は、軸10aのロッド部10r側に位置する端P4から第2軌跡90bの中央部に向かって軸10aに近づくように傾斜する。その結果、第2軌跡90bは、軸方向の両端P1,P2から中央部に向かってキャップ部10c側に変位するV字形状を有する。別言すれば、第2軌跡90bは、上向きに突出する凸形状を有する。
第3傾斜部93と軸10aとの間には、第3傾斜角θ3が形成される。第4傾斜部94と軸10aとの間には、第4傾斜角θ4が形成される。なお、本実施例では、第2軌跡90bは、半製品10оの軸方向の中線C1を基準として軸10aの方向に対称形状を有している。その結果、第3傾斜角θ3は、第4傾斜角θ4と等しくなる。
図14を参照して説明したように、レーザ加工装置20は、その左右方向に一直線上に延びる複数のレーザ22を照射しながら矢印Rの方向に回転する。その結果、図14の矢印L3の方向(すなわち、右方向)に照射されるレーザ22と矢印L4の方向(すなわち、左方向)に照射されるレーザ22とは、軸10aを基準として点対称に変位する。このため、図15に示されるように、第1軌跡90aは、第2軌跡90bに対して、軸10aを基準とする対称形状を有する。別言すれば、第1軌跡90aが描くV字形状と、第2軌跡90bが描くV字形状と、は変位する向きは互いに反対側であるものの、同様の形状を有している。そのため、第1傾斜角θ1は、第3傾斜角θ3と等しくなり、第2傾斜角θ2は、第4傾斜角θ4と等しくなる。
図16を参照して、本実施例の製造方法によって製造されたコネクティングロッド10について説明する。コネクティングロッド10のシャフト貫通孔10sの内側には、すべり軸受け31が配置される。すべり軸受け31は、シャフト貫通孔10sの軸10aに沿って延びる円筒形状を有している。すべり軸受け31の内側には、クランクシャフト40が配置される。すべり軸受け31は、クランクシャフト40を、コネクティングロッド10に対して回転可能に固定する部材である。すべり軸受け31とシャフト貫通孔10sの内面との間には、隙間50が設けられている。この隙間50には、オイルが充填され、シャフト貫通孔10sの内面と、すべり軸受け31の外面31sとの間の摩擦を低減する。
すべり軸受け31は、円筒形状を半分に分割した、キャップ側部材31cとロッド側部材31rとで構成される。このため、各部材31c,31rは、半円筒形状を有する。クランクシャフト40に対してすべり軸受け31とコネクティングロッド10とを固定する際、クランクシャフト40の下方にロッド部10r及びロッド側部材31rが配置される。次いで、クランクシャフト40の上方にキャップ部10c及びキャップ側部材31cが配置される。その後、組立工程でボルト2(図1参照)が上方から締結される。これにより、円筒形状を有するクランクシャフト40の全周を覆うように、すべり軸受け31、コネクティングロッド10を固定することができる。
先に述べたように、キャップ部10cとロッド部10rとは半製品10оを破断することで形成される。図16に示されるように、シャフト貫通孔10sの内面には、各部10c、10rの合わせ面4の境界部E1,E2が露出する。境界部E1,E2には、破断工程で形成されるバリ、また、組立工程で生じる各部10c、10rのずれにより、段差が生じやすい。当該段差は、すべり軸受け31の外面31sを損傷させるおそれがある。外面31sが損傷すると外面31sが粗くなる。その結果、隙間50を充填するオイルが流れにくくなり、クランクシャフト40の回転効率が低下するおそれがある。
仮に各軌跡90a、90bが上方に突出するV字形状を有する場合、各境界部E1,E2は、ともに中線C2に対して上方に距離D1だけ変位することになる。その場合、各境界部E1,E2同士のキャップ部10c側の周方向の距離は、シャフト貫通孔10sの内周の半分よりも短くなる。先に述べたように、シャフト貫通孔10sの内側には、すべり軸受け31が配置される。各境界部E1,E2同士の周方向のキャップ部10c側の距離が短くなると、すべり軸受け31の周方における両端は、シャフト貫通孔10sの内面のロッド部10r側に対して同時に突出することになる。この場合、すべり軸受け31の上部(特に、キャップ側部材31c)の外面31sが、ロッド部10rと干渉しやすい。特に、ロッド部10rが各境界部E1,E2と干渉すると、外面31sが傷つきやすい。すなわち、各軌跡90a、90bが上方に突出するV字形状を有する場合、すべり軸受け31の外面31sが損傷しやすい。
本実施例の製造方法では、第1軌跡90aは、上方に突出するV字形状を有し、第2軌跡90bは、下方に突出するV字形状を有する。その結果、図16に示されるように、X軸方向正側(すなわち、図16の紙面右側)に位置する境界部E1は、軸10aを通過する中線C2に対して上方に距離D1だけ変位する。一方、反対側(すなわち、図16の紙面左側)に位置する境界部E2は、軸10aを通過する中線C2に対して下方に距離D2だけ変位する。すなわち、本実施例の製造方法によれば、各境界部E1,E2同士のキャップ部10c側の周方向の距離は、シャフト貫通孔10sの内周の半分に保持されやすい。
さらに、先に述べたように、第1軌跡90a、第2軌跡90bに対して、互いに軸10aを基準とした点対称形状を有する。そのため、距離D1は距離D2と等しくなる。すなわち、各境界部E1,E2同士のキャップ部10c側の周方向の距離は、シャフト貫通孔10sの内周の半分に保持される。これにより、すべり軸受け31の一方の部材31c、31rが、各部10c、10rの一方の内面側から、他方の内面側に突出しにくい。すなわち、すべり軸受け31の外面31sと、各境界部E1,E2とが干渉しにくい。すなわち、本実施例の製造方法によれば、上述した各軌跡90a、90bがともにキャップ部10c側に変位するV字形状を有する構成に比して、すべり軸受け31の外面31sへの損傷を低減することができる。また、先に述べたように、各軌跡90a、90bが傾斜部を有することで、キャップ部10cとロッド部10rの位置ずれを抑制することができる。
実施例および各変形例の留意点について以下に述べる。破断工程で形成されるキャップ破断面11c、ロッド破断面11rの表面形状は、半製品10оを構成する材質、形状、環境温度等、破断工程における引っ張り荷重、速度等によって異なる。そのため、レーザ加工工程の加工条件は、上述した各変形例の加工条件を互いに組み合わせて適用してもよい。また、各レーザ痕群のシャフト貫通孔10sの軸10a方向の長さおよび軸10aに対して傾斜させる角度についても、変更可能である。
第2実施例では、各軌跡90a、90bは、中線C1を基準として軸10a方向に対称な形状を有していたが、変形例では、各軌跡90a、90bは、非対称な形状を有してもよい。
また、各軌跡90a、90bの形状は、V字形状に限定されず、例えばW字形状のように、中央部に向かってキャップ部10c側に変位する複数の傾斜部と、中央部に向かってロッド部10r側に変位する複数の傾斜部と、を備えてもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。